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治験の実施医療機関から届く重篤な有害事象の報告から、社内の安全性情報の報告書の下書きを作り、記載の欠けと報告期限の区分を担当者が確かめられるようにする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

治験の実施医療機関から届く重篤な有害事象の報告と、症例データの記録をもとに、社内の安全性情報の報告書の下書きを作ります。あわせて、追加で問い合わせるべき欠けた項目と、報告期限の区分の候補を一覧にして担当者に渡します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
対象業界
医療/製造
対象部門
研究開発
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる/確認ミスが多い
AIで行う処理
生成
主な効果
入力漏れ削減/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★★★★
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 実施医療機関から重篤な有害事象の報告が届き、受付の担当者が受付日と報告の識別番号を管理表に記録する
  2. 安全性情報の担当者が報告を開き、治験・被験者識別コード・事象名・発現日・重篤と判断した理由を読み取る
  3. EDC を開き、その被験者の投与の記録、併用薬、検査値、既往歴を探す
  4. 前の報告がある場合は社内の報告書を開き、新しく分かったことを見比べる
  5. 社内の報告書の項目を埋め、経過の要約を書く
  6. 欠けている項目を書き出し、実施医療機関への問い合わせの文面を作る
  7. 治験薬概要書の副作用の一覧を開き、その事象が記載されているかを確かめる
  8. 医学的な評価の担当者に回し、評価と報告期限の区分の確認を受ける
導入後(After)
  1. 人受付の担当者が報告を受領用の場所に保存し、受付日時と報告の識別番号を記録する
  2. 自動保存をきっかけに処理が動き、報告の本文を取り出す
  3. 自動被験者識別コードで EDC の記録を引き、前回までの社内の報告書の確定版を引く
  4. 自動治験薬概要書の副作用の一覧(その時点の版)を引く
  5. 自動AI が、社内の様式の項目の下書き、経過の要約の下書き、欠けている項目、判断の材料を返す
  6. 自動プログラムが、受付日時から期限の候補日を計算し、前回からの変更点を並べる
  7. 人安全性情報の担当者が下書きを報告の原本と照らして直し、問い合わせの文面を確定する
  8. 人医学的な評価の担当者が、重篤性・予測可能性・因果関係を評価し、報告期限の区分を確定する
  9. 【人/自動】 確定した内容を安全性情報の管理システムへ登録する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 実施医療機関から重篤な有害事象の報告が届き、受付の担当者が受付日と報告の識別番号を管理表に記録する
  2. 安全性情報の担当者が報告を開き、治験・被験者識別コード・事象名・発現日・重篤と判断した理由を読み取る
  3. EDC を開き、その被験者の投与の記録、併用薬、検査値、既往歴を探す
  4. 前の報告がある場合は社内の報告書を開き、新しく分かったことを見比べる
  5. 社内の報告書の項目を埋め、経過の要約を書く
  6. 欠けている項目を書き出し、実施医療機関への問い合わせの文面を作る
  7. 治験薬概要書の副作用の一覧を開き、その事象が記載されているかを確かめる
  8. 医学的な評価の担当者に回し、評価と報告期限の区分の確認を受ける

(a)経過の要約を起こすのに時間がかかる。 報告の文章、EDC の記録、前回の報告を行き来しながら、時系列を組み直して書くところに時間の大半が使われます。 施設ごとに書き方が違うので、どこに何が書かれているかを毎回探します。

(b)問い合わせるべき項目を見落とす。 第一報で投与の最終日が書かれていない、検査値の単位が無い、事象の発現日と入院日が逆になっている。気づくのは評価の担当者に回したあとで、問い合わせが1往復遅れます。

(c)期限の区分の確認が人によって違う。 死亡やそのおそれのある症例かどうか、治験薬概要書から予測できるかどうかで、期限は7日と15日に分かれます。治験薬概要書は改訂されるので、どの版で照らしたかが記録に残っていないことがあります。

(d)報告が重なる週に後回しが起きる。 40件は月をならした数で、複数の施設から同じ週に届くことがあります。期限の短いものから手を付けたくても、どれが短いかを確かめるまでに時間がかかります。

  1. 【人】 受付の担当者が報告を受領用の場所に保存し、受付日時と報告の識別番号を記録する
  2. 【自動】 保存をきっかけに処理が動き、報告の本文を取り出す
  3. 【自動】 被験者識別コードで EDC の記録を引き、前回までの社内の報告書の確定版を引く
  4. 【自動】 治験薬概要書の副作用の一覧(その時点の版)を引く
  5. 【自動】 AI が、社内の様式の項目の下書き、経過の要約の下書き、欠けている項目、判断の材料を返す
  6. 【自動】 プログラムが、受付日時から期限の候補日を計算し、前回からの変更点を並べる
  7. 【人】 安全性情報の担当者が下書きを報告の原本と照らして直し、問い合わせの文面を確定する
  8. 【人】 医学的な評価の担当者が、重篤性・予測可能性・因果関係を評価し、報告期限の区分を確定する
  9. 【人/自動】 確定した内容を安全性情報の管理システムへ登録する

7番目が、この設計の分かれ目です。 下書きを読むだけで済ませず、原本の報告と1項目ずつ照らします。 経過の要約は読みやすく書かれるほど、原本に無い言葉が混ざっても気づきにくくなります。

8番目を自動にしないのは、意図してのことです。 期限の区分は、評価の結果から規則で決まります。AIが出すのは評価の材料と、評価を入れたら決まる区分の早見だけです。

02今回想定するシステム構成

構成図
実施医療機関からの報告(第一報・追加の報告)
   │  受付の担当者が受領用の場所へ保存(受付日時を記録)
   ▼【トリガー】保存
Azure Functions
   ├──▶ 本文の取り出し(Word・PDF・表計算のファイル)
   ├──▶ EDC から被験者の記録を取得
   ├──▶ 前回までの社内の報告書(確定版)を取得
   └──▶ 治験薬概要書の副作用の一覧(その時点の版)を取得
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)
   │   項目の下書き/経過の要約の下書き/欠けている項目/判断の材料
   ▼
Azure Functions ── 期限の候補日の計算、前回からの変更点
   ▼
【安全性情報の担当者が原本と照らす】
   ▼
【医学的な評価の担当者が評価し、期限の区分を確定】
   ▼
安全性情報の管理システムへ登録
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)のリージョンの Standard デプロイClaude API、Gemini API
連携Azure Functions(取り出し、照合、期限の候補日の計算)Azure Logic Apps
保管Azure Blob Storage(報告の原本、下書き、確定版、入出力の控え)社内の文書管理
記録の参照既存の EDC と安全性情報の管理システム―

EDC と安全性情報の管理システムは、新しく足すものではありません。 この構成は EDC を読むだけで、安全性情報の管理システムへは人が確定したものだけを登録します。AI の出力を直接書き込む経路は作りません。

生成AIを Azure OpenAI にするのは、データの扱いを社内の取り決めに乗せやすいためです。 Microsoft Learn のデータ、プライバシー、セキュリティのページでは、プロンプトと出力は他のお客様に提供されず、OpenAI にも提供されず、モデルやサービスの改善に使われないとされています。また、グローバルやデータ ゾーンのデプロイの種類を使う場合を除き、プロンプトと応答はお客様が指定した地域内で処理されるとされています。治験の被験者の記録を扱うので、デプロイの種類はリージョンの Standard にします。

出力の形は、構造化出力で固めます。 公式のページでは、構造化出力ではモデルが指定した JSON スキーマの定義に従い、有効な JSON を保証するがスキーマに厳密に従えなかった以前の JSON モードとは違うとされています。Chat Completions API では response_format、Responses API では text.format にスキーマを書きます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

報告が受領用の場所に保存されたことを起点にします。 保存するのは受付の担当者で、保存と同時に受付日時と報告の識別番号を記録します。 この受付日時が、期限の候補日を計算する起点になります。

起点の日付を AI に決めさせないのが、この構成の前提です。 施行規則第273条は、治験の依頼をした者が事項を「知つたとき」から定められた期間内に報告することを求めています。いつを「知った日」とするかは、自社の手順書で決めることです。 システムはその手順に沿って記録された日時を使い、本文の日付を起点にしません。

届いた順に1件ずつ処理し、まとめて夜に流すことはしません。 7日の期限に当たりうる報告は、1日待つだけで余裕が大きく減ります。報告が届いて数分で下書きが出る状態を目指します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
報告の原本第一報・追加の報告。事象名、発現日、重篤と判断した理由、経過、処置、転帰、治験責任医師の評価受領用の場所
受付の記録受付日時、報告の識別番号、第一報か追加の報告か受付の記録
被験者の記録被験者識別コード、年齢層、性別、治験薬の投与の記録、併用薬、既往歴、検査値EDC
前回までの報告書同じ事象の社内の報告書の確定版安全性情報の管理システム
治験薬概要書の副作用の一覧その時点で有効な版と版番号文書管理
社内の様式の定義項目の一覧と、経過の要約の書き方の決まり安全性情報の担当部署が定める

質を決めるのは、下の2つです。 治験薬概要書の版が引けないと、予測可能性の材料を出すときに、どの版で照らしたかが残りません。 様式の定義が無いと、経過の要約が担当者ごとの書き方に戻ります。

被験者の氏名や診療録の番号は入力に含めません。 治験では、実施医療機関から依頼者へ届く記録は被験者識別コードで管理されます。報告の原本に氏名が書かれていた場合は、前処理で外します。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
報告の本文受領用の場所のファイル事象の記述、経過、評価
投与の記録・併用薬・検査値EDC の出力時系列の組み立てと、報告との突き合わせ
前回の確定版安全性情報の管理システム新しく分かったことの見分け
副作用の一覧文書管理の最新版予測可能性の材料
様式の定義設定ファイル出力の項目

EDC からは、その被験者の記録だけを取ります。 治験全体の記録を渡すと、ほかの被験者の記録が混ざります。被験者識別コードで絞り、事象の発現日の前後の期間に限ります。 期間は治験ごとに設定します。

前回の確定版は、人が確定したものだけを取ります。 前回の下書きを渡すと、前回 AI が書いた誤りを今回の材料にしてしまいます。下書きと確定版を別の場所に置くのは、このためです。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … Word・PDF・表計算のファイルから本文を取り出します。画像だけの PDF は取り出せないので、担当者へ戻します
  2. 識別情報の除去 … 氏名・診療録の番号・生年月日が書かれていれば外し、被験者識別コードに置き換えます
  3. 第一報か追加の報告かの判定 … 受付の記録の区分を使います。本文から推し量りません
  4. 被験者の照合 … 報告の被験者識別コードと治験の識別番号で EDC を引きます。一致しなければ処理を止めます
  5. 期間の切り出し … EDC の記録を、発現日の前後の設定した期間に絞ります
  6. 治験薬概要書の版の固定 … 受付日時の時点で有効な版を引き、版番号を入力に添えます
  7. 前回との差分の準備 … 前回の確定版の項目を並べ、今回の報告の項目と比べられる形にします

2番目を軽く見ないでください。 施設によっては、報告の余白や添付の検査結果に氏名が残っていることがあります。外部のサービスに渡すのは、報告に必要な範囲だけです。

4番目で止めるのは、取り違えがいちばん重い失敗だからです。 被験者識別コードの書き間違いで別の被験者の記録を引くと、別人の投与歴で経過の要約が書かれます。 一致しないものは下書きを作らず、受付の担当者に戻します。

Step5

AIに処理させる

させるのは、下書きの生成と、欠けている項目の書き出しです。 評価そのものはさせません。

見るものさせること判断できないときの扱い
報告の経過と EDC の記録時系列に並べた経過の要約の下書き日付が無い出来事は「日付不明」と書く
社内の様式の項目報告と EDC から項目を埋める書かれていなければ空にし、欠けた項目に入れる
欠けている項目いま問い合わせるべきものと、追加の報告を待つものに分ける迷うものは「いま問い合わせる」に入れる
重篤と判断した理由報告に書かれた理由をそのまま写す書かれていなければ空
治験責任医師の因果関係の評価報告の文言をそのまま写す書かれていなければ空
副作用の一覧との照合一覧に同じ・近い記載があれば、その文と版番号を並べる見つからなければ「一覧に該当の記載なし」
前回からの変更新しく分かったことを箇条書きにする前回が無ければ「第一報」

右端の列が、この構成で大事な区別です。 書かれていない項目は空にし、推測した値で埋めません。 投与の最終日が無いときに EDC の最後の来院日で埋める、転帰が無いときに「回復」と書く、どちらも起きやすい失敗です。

副作用の一覧との照合は、材料を並べるところで止めます。 「一覧に記載あり」という結論は書かせず、一覧の該当の文を写させます。 事象名が似ていても、程度や発現の仕方が違えば、予測できるとは言えないことがあるからです。

させないこと理由
重篤性の判定治験責任医師の判断と、依頼者の医学的な評価で決める
予測可能性の結論治験薬概要書との照合は医学的な判断を含む
因果関係の評価依頼者としての評価は評価の担当者が行う
報告期限の区分の確定上の3つの評価を受けて、規則で決まる
起点の日付の決定受付の記録を使う
用語のコード化既存の管理システムの担当者が行う

4行目がいちばん誤解されやすいところです。 報告に「死亡」と書かれていれば7日だと AI に書かせたくなりますが、施行規則第273条では、副作用によるものと疑われ、かつ予測できないものであることが条件に入っています。 予測できるかどうかは評価の結果なので、AI が区分を決めると評価を先取りすることになります。

Step6

指示内容を固定する

あなたは製薬会社の安全性情報の担当部署で、治験の重篤な有害事象の
社内の報告書の下書きを作る立場です。
渡す資料だけを使い、書かれていないことを推測で埋めないでください。

【渡す資料】
- 報告の本文(第一報または追加の報告)
- 被験者の記録(投与の記録、併用薬、既往歴、検査値)
- 前回までの社内の報告書の確定版(あれば)
- 治験薬概要書の副作用の一覧(版番号つき)

【作るもの】
1. 社内の様式の各項目の値
2. 経過の要約(時系列。日付のある出来事から順に)
3. 欠けている項目と、その分け方
   - ask_now:いま実施医療機関に問い合わせるべきもの
   - wait_followup:追加の報告で届くのを待つもの
4. 判断の材料
   - 報告に書かれた重篤と判断した理由(原文のまま)
   - 治験責任医師の因果関係の評価(原文のまま)
   - 副作用の一覧の中で、事象と同じ・近い記載の文(原文のまま)と版番号
5. 前回の確定版から新しく分かったこと

【厳守事項】
- 書かれていない項目は null にし、missing_items に入れてください。
  ほかの資料や一般的な経過から補って埋めないでください。
- 投与の最終日、転帰、検査値の単位が無いとき、別の日付や値で
  代用しないでください。
- 報告の本文と被験者の記録で日付や値が食い違うときは、
  どちらかを選ばず、conflicts に両方を書いてください。
- 重篤かどうか、予測できるかどうか、因果関係があるかどうか、
  報告期限が何日かを書かないでください。
- 副作用の一覧に記載があるかの結論を書かないでください。
  近い記載の文を写すだけにしてください。
- 迷う項目は ask_now に入れてください。
- 経過の要約には、資料に無い医学的な解釈を書かないでください。
- 各項目の evidence には、根拠にした文をそのまま写してください。

【社内の様式の定義】{form_definition}
【報告の本文】{report_text}
【被験者の記録】{edc_extract}
【前回の確定版】{previous_final}
【副作用の一覧】{rsi_list}(版番号:{ib_version})

「別の日付や値で代用しない」を明記しないと、もっともらしく埋めます。 EDC には来院日や採血日が並んでいるので、投与の最終日が無いと、最後の来院日を投与の最終日として書きます。 書かれていないことを示すのは空欄で、埋まった値ではありません。

「食い違うときは両方を書く」も同じ理由です。 報告では発現日が5日、EDC では6日となっていることがあります。どちらかを選ばせると、食い違いがあったという事実が消え、問い合わせの機会がなくなります。

Step7

出力形式を固定する

次の形の JSON で受け取ります。 スキーマは構造化出力で指定し、すべての項目を必須にして、値が無いときは null を返させます。

{
  "report_id": "",
  "subject_code": "",
  "report_type": "initial | followup",
  "fields": [
    { "name": "", "value": null, "evidence": "" }
  ],
  "narrative_draft": "",
  "missing_items": [
    { "name": "", "bucket": "ask_now | wait_followup", "reason": "" }
  ],
  "conflicts": [
    { "name": "", "report_value": "", "edc_value": "" }
  ],
  "materials": {
    "seriousness_reason_quote": "",
    "investigator_causality_quote": "",
    "rsi_quotes": [""],
    "ib_version": ""
  },
  "changes_from_previous": [""],
  "inquiry_draft": ""
}

1つ目の理由は、空欄を空欄のまま運べることです。 スキーマで全項目を必須にし、値の型を null との組み合わせにしておくと、「書かれていない」が null として届きます。 自由な文章で受けると、空欄が「不明」「記載なし」「—」と揺れ、プログラムで数えられません。

2つ目は、評価の材料と評価の結果を別の場所に置けることです。 materials は AI が写した原文で、評価の結果は人が別の項目に入れます。期限の区分は、その人の入力からプログラムが決めます。

評価の担当者が入れる値プログラムが出す期限の区分の候補
副作用の疑いあり・予測できない・死亡または死亡につながるおそれ7日
副作用の疑いあり・予測できない・入院または入院期間の延長、障害など15日
副作用の疑いあり・予測できる・死亡または死亡につながるおそれ15日
それ以外個別の報告の対象外の候補(定期報告の対象かを別に確かめる)

この表は施行規則第273条第1項の区分を写したもので、外国での使用で生じた症例などは別の行が要ります。 社内の手順書に合わせて表を持ち、AI のプロンプトには入れません。

3つ目は、conflicts と missing_items から問い合わせが組めることです。 inquiry_draft は、ask_now と conflicts だけを使って書かせます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
受領用の場所Azure Functions のトリガー報告の保存を検知する
EDC既存の出力の仕組み被験者の記録を読む
安全性情報の管理システム読み取りのみ前回の確定版を引く
文書管理読み取りのみ治験薬概要書の副作用の一覧と版番号
Azure OpenAIAPI 呼び出し下書き、欠けた項目、判断の材料
安全性情報の管理システム人による登録確定したものだけを入れる

安全性情報の管理システムへは、この構成から書き込みません。 登録は確定版を人が入れます。AI の出力を自動で登録すると、原本と照らす前の値が規制当局への報告の元データになります。

問い合わせの文面も、送るのは人です。 実施医療機関とのやり取りは記録に残る正式な連絡なので、下書きを直して担当者が送ります。

Step9

人が確認する

人の確認は2段に分けます。 1段目は安全性情報の担当者、2段目は医学的な評価の担当者です。

  1. 原本との照合 … 下書きの各項目を、evidence の文と原本で照らします。evidence が原本に見つからない項目は、値を消します
  2. 欠けた項目の振り分けの確認 … wait_followup に入ったもののうち、評価に要るものを ask_now へ移します
  3. 食い違いの確認 … conflicts の項目は、両方の値を残したまま問い合わせに入れます
  4. 評価 … 医学的な評価の担当者が、重篤性・予測可能性・因果関係を入れます。期限の区分はこの入力から決まります
  5. 直した箇所の記録 … どの項目を、どう直したかを残します

1番目を省かないでください。 経過の要約は文章として整っているほど、原本との違いに気づきにくくなります。項目ごとに根拠の文を突き合わせる手順を、確認の画面に組み込みます。

目標は、40件をならして1件30分です。 第一報は項目が少なく短く済み、追加の報告で経過が長くなったものは時間がかかります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
被験者識別コードが EDC と一致しない下書きを作らず、受付の担当者に戻す
画像だけの PDF で本文が取れない担当者が読み、手で起こす。施設に電子のファイルで送ってもらう
治験薬概要書の版が引けない照合の材料を出さず、ib_version を空にして担当者へ
報告と EDC の値が食い違うconflicts に両方を書き、問い合わせに入れる
同じ報告が二度届く報告の識別番号と受付の記録で照合し、二重に下書きを作らない
氏名などの識別情報が残っている前処理で外し、外した箇所を記録に残す
AI の応答が無い・形が崩れる受領用の場所に残し、担当者に手作業で回す。期限の候補日の計算は止めない
期限の候補日が迫っている下書きの有無にかかわらず、担当者と評価の担当者に知らせる

最後の2行が、この構成でいちばん大事な例外です。 AI が止まっても、期限の計算と通知は受付の記録から独立して動かします。 下書きの仕組みが止まったことで期限を落とすと、元の手作業より悪くなります。

Step11

記録を残す

  • 報告の原本と、受付日時・報告の識別番号・第一報か追加の報告か
  • AI に渡した入力の全文(識別情報を外したもの)と、使った治験薬概要書の版番号
  • AI が返した JSON の全文と、呼び出した日時・デプロイ名
  • 人が直した項目の記録 … どの項目を、どの値からどの値に変えたか
  • 評価の担当者が入れた評価と、そこから決まった期限の区分
  • 問い合わせを送った日時と、追加の報告で埋まった項目

治験薬概要書の版番号を残すのは、予測可能性の判断が版に依存するためです。 改訂で副作用の一覧が変わると、同じ事象でも区分が変わりえます。当時どの版で照らしたかが残っていないと、後から確かめられません。

直した記録は、指示の見直しの材料になります。 同じ項目が毎回直されているなら、様式の定義かプロンプトの書き方に理由があります。

04実装レベルの3段階

最小構成:報告と EDC の抜粋を手で渡し、下書きを作らせる / 経過の要約と項目の下書き
半自動化:上記+受領用の場所を起点に本文を取り出し、EDC の記録を自動で引く / 読み込みと下書きの一覧化
本格構成:上記+前回の確定版との差分、治験薬概要書の版の固定、期限の候補日の計算と通知 / 下書きから評価の手前までの全体

最小構成では件数がさばけません。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件90分が50分程度になります。 EDC を開いて探す時間が減りますが、前回との見比べと治験薬概要書の照合が手作業で残ります。本格構成で30分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の段階で、どの施設の報告が取り出しに失敗するか、どの項目で食い違いが多いかが先に分かります。そこを施設への依頼や様式の定義で直してから本格構成に進むほうが、確認の手戻りが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
90 分
1件あたり導入後時間
30 分
現在  40件 × 90分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 40件 × 30分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価4,500円)
216万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 複数の治験を並行して依頼している製薬会社・医療機器メーカー・開発業務受託機関の安全性情報の担当部署。実施医療機関から重篤な有害事象の報告が毎月数十件届き、第一報と追加の報告をもとに社内の報告書を手で起こしている場合。症例データの管理システム(EDC)と治験薬概要書の最新版を社内で参照でき、Microsoft Azure の利用について社内の取り決めと手順書の整備ができる場合。
向いていない
  1. 治験が1本だけで重篤な有害事象の報告が年に数件の場合。社内の報告書の様式や記載の手順が決まっておらず、下書きを当てる型が無い場合。治験の依頼者と実施医療機関との契約で、報告の内容を外部のクラウドサービスで処理することが認められていない場合。なお、重篤性・予測可能性・因果関係の評価と、規制当局への報告の要否・期限の判断は医学的な評価を担う担当者と責任者が行うもので、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去3か月の重篤な有害事象の報告から、確定済みの10件を選ぶ(第一報と追加の報告がそろったもの、食い違いがあったものを入れる)
  2. 被験者識別コード以外の識別情報が無いことを確かめる
  3. 社内で利用を認められた Azure OpenAI の環境で、1件ずつ報告と EDC の抜粋を渡し、第7章の指示で下書きを作らせる
  4. 出てきた下書きを、当時の確定版と項目ごとに突き合わせる
  5. 欠けた項目の振り分けを、当時実際に問い合わせた項目と比べる

10件は必ず確定版のあるものを使ってください。 正解が手元にあるので、下書きが原本に無い値で埋めていないかを1件ずつ確かめられます。

出てきた内容判断
確定版と同じ項目が埋まり、欠けた項目も当時の問い合わせと重なる連携の構築に進む
書かれていない項目を別の日付や値で埋めた指示の書き方で直る。構成は有効
経過の要約に原本に無い医学的な解釈が入る様式の定義を細かくし、解釈を書く欄を無くす

2行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、どの項目で代用が起きやすいかが分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
書かれていない項目を別の値で埋める指示で禁じ、evidence が原本に無い値を消す
報告と EDC の食い違いが片方に寄るconflicts に両方を残させる
期限の区分を AI が書くスキーマに区分の項目を作らない。区分は人の評価からプログラムで決める
起点の日付を本文から拾う受付の記録の日時だけを使う
治験薬概要書の古い版で照らす受付日時の時点の版を固定し、版番号を残す
別の被験者の記録を引く被験者識別コードと治験の識別番号の両方で照合し、一致しなければ止める
前回の下書きを材料にする確定版だけを引く。下書きと確定版の保存先を分ける
経過の要約に解釈が混ざる様式で事実の欄と評価の欄を分け、AI は事実の欄だけを書く
氏名が添付に残っている前処理で外し、外した記録を残す
AI が止まると期限の通知も止まる期限の計算と通知を独立させる
問い合わせが自動で送られる下書きまでにする。 送るのは人

上の4行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「AI が分かっているように見える」ところから出発しています。分からないものを空欄で返させ、決めるべきものは人とプログラムに置くことで、運用に乗るかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 被験者識別コードで管理された被験者の健康の記録(事象、検査値、既往歴、投与の記録)と、開発中の治験薬の情報です。

  1. 識別情報を渡さない … 被験者識別コード以外の識別情報を前処理で外します。外したことを記録に残します
  2. 処理の地域を固定する … 公式のページでは、グローバルやデータ ゾーンのデプロイの種類を使う場合を除き、地域内で処理されるとされています。リージョンの Standard デプロイを使い、社内の取り決めに書きます
  3. 不正使用の監視の扱いを確かめる … 公式のページでは、不正使用の可能性が検出されるとプロンプトと出力のサンプルがレビューの対象に選ばれ、必要に応じて人のレビュー担当者が確認するとされています。管理対象のお客様は、不正使用の監視の変更を申請できるとされているので、被験者の記録を扱う前に申請の要否を検討します
  4. 評価を AI に寄せない … 重篤性・予測可能性・因果関係の評価と報告の要否は、医学的な評価の担当者と責任者が決めます。 この構成が出すのは材料と下書きだけです
  5. 期限を守る仕組みを AI の外に置く … PMDA の FAQ では、施行規則第273条の期限に遅れた場合は速やかに報告し、遅延の原因を特定して再発防止策を立て、遅延理由書を出すことが求められています。下書きの仕組みが止まっても、期限の通知は止めません
  6. 契約と同意の範囲を確かめる … 実施医療機関との契約や被験者への説明の内容で、外部のクラウドサービスでの処理が認められているかを確かめます

誤りが起きた場合のリスクは、原本に無い値が報告書に残ることと、期限を落とすことの2つです。 前者は evidence との照合で、後者は期限の仕組みの独立で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:様式の定義と受付の記録をそろえる

社内の報告書の項目と、経過の要約の書き方の決まりを1枚の定義にします。受付日時の記録の仕方も、手順書の「知った日」の決め方に合わせて確かめます。

2週目:確定済みの10件で試す

確定版のある10件で下書きを作らせ、項目ごとに突き合わせます。原本に無い値で埋めていないかを最優先で見ます。

3週目:品質保証の部署と工程を決める

下書きを使う工程を手順書にどう書くか、誰がどこで確かめた記録を残すかを、品質保証の部署と決めます。 ここが決まらないうちに連携を組むと、使えない仕組みになります。

4週目:受領から下書きまでをつなぐ

受領用の場所を起点に本文を取り出し、EDC の記録を引いて下書きを出すところまで作ります。この時点では、安全性情報の担当者が従来どおり自分でも書き、下書きと比べます。

2か月目: 前回の確定版との差分と、治験薬概要書の版の固定を足します。期限の候補日の計算と通知を、下書きの仕組みとは別に動かします。3か月目以降: 1件90分が何分になったかを実測し、直した記録から様式の定義とプロンプトを見直した時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
治験の依頼をした者又は自ら治験を実施した者が、治験使用薬について定められた事項を知ったときに期間内に厚生労働大臣に報告すること。治験薬概要書等から予測できない副作用の疑いのうち死亡・死亡につながるおそれのある症例が7日、入院又は入院期間の延長・障害などと、予測できる死亡・死亡につながるおそれのある症例が15日であること。発現症例一覧等を1年ごとに報告すること(第273条)e-Gov 法令API: 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則2026-10-08
治験責任医師が、治験使用薬の副作用によると疑われる死亡その他の重篤な有害事象の発生を認めたときは、直ちに実施医療機関の長に報告するとともに治験依頼者に通知すること(第48条第2項)。治験依頼者が予測できないものを知ったときに治験責任医師と実施医療機関の長に通知すること(第20条第3項)e-Gov 法令API: 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令2026-10-08
施行規則第273条の報告期限に遅れた場合に、速やかに報告し、遅延した旨を連絡し、遅延の原因の特定と再発防止策の策定・実施、遅延理由書の提出が求められることPMDA: 治験副作用・不具合等報告、治験定期報告に関するFAQ2026-10-08
構造化出力でモデルが指定した JSON スキーマに従うこと。Chat Completions API では response_format、Responses API では text.format にスキーマを書くこと。すべてのフィールドを必須にし、null との共用体型で省略可能な値を表せること。additionalProperties: false を設定することMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-08
プロンプトと出力が他のお客様に利用されず、OpenAI に提供されず、モデルやサービスの改善に使われないこと。グローバル・データ ゾーン以外のデプロイの種類では指定した地域内で処理されること。不正使用の可能性が検出されるとサンプルがレビューの対象になり、必要に応じて人のレビュー担当者が確認すること。管理対象のお客様が不正使用の監視の変更を申請できることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-08

重篤性・予測可能性・因果関係の評価と、報告の要否・期限は、自社の手順書と医学的な評価の担当者・責任者が決めてください。 本記事は公開されている法令と公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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