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是正処置報告書が出されたときに、原因の掘り下げ・対策・効果の確認の記載が社内基準を満たすかを判定し、差し戻しの指摘を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

製造部門が是正処置報告書を提出したときに、原因の掘り下げ・対策・効果の確認の記載が社内の判定基準を満たしているかを項目ごとに判定し、足りない項目には差し戻しの指摘文の案を付けて品証の担当者に回します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
医療/建設/物流/製造
対象部門
品質管理
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
判定
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
45h/月
AI導入後
15h/月
想定削減
67%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 製造課の担当者が報告書を Word で作り、PDFにして SharePoint の提出ライブラリへ置き、品証にメールで知らせる
  2. 品証の担当者が不適合の台帳を開き、元の不適合の内容(何が、どれだけ、どこで起きたか)を確かめる
  3. 報告書を頭から読み、欄ごとに足りているかを判断する
  4. 足りない点があれば、指摘をメールに書いて製造課へ差し戻す
  5. 足りていれば受理とし、台帳の状態を「効果確認待ち」に変える
  6. 効果の確認の期日が来たら、製造課に結果の報告を求める
導入後(After)
  1. 人製造課の担当者が報告書をPDFにし、提出ライブラリへ置く(CAPA番号を列に入れる)
  2. 自動ファイルの作成をきっかけにフローが動き、不適合の台帳から該当する行を引く
  3. 自動報告書のPDFと台帳の内容と判定基準をプロンプトに渡し、8項目の判定をJSONで受け取る
  4. 自動項目ごとの判定から、`accept_candidate` / `return_candidate` / `needs_expert` を規則で決める
  5. 自動足りない項目について、差し戻しの指摘文の案を作る
  6. 自動品証の担当者に承認依頼を送る。判定の一覧と指摘文の案を付ける
  7. 人担当者が報告書と判定を見比べ、指摘文を直して「差し戻し」か「受理」を選ぶ
  8. 自動結果に応じて、台帳の状態を更新し、製造課へ指摘文または受理の連絡を送る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 製造課の担当者が報告書を Word で作り、PDFにして SharePoint の提出ライブラリへ置き、品証にメールで知らせる
  2. 品証の担当者が不適合の台帳を開き、元の不適合の内容(何が、どれだけ、どこで起きたか)を確かめる
  3. 報告書を頭から読み、欄ごとに足りているかを判断する
  4. 足りない点があれば、指摘をメールに書いて製造課へ差し戻す
  5. 足りていれば受理とし、台帳の状態を「効果確認待ち」に変える
  6. 効果の確認の期日が来たら、製造課に結果の報告を求める

(a)差し戻しの基準が担当者で違う。 品証の3人のうち、ベテランの1人は「なぜ」が人のミスで止まった報告書を必ず返しますが、ほかの2人は通すことがあります。製造課の側は、誰に当たるかで書き直しの手間が変わることを知っています。

(b)対策と原因の対応を見落とす。 発生原因に3つの要因が挙がっているのに、恒久対策が1つの要因にしか触れていない報告書は珍しくありません。欄ごとに読むと、それぞれの欄は埋まっているので見落とします。

(c)効果の確認が書かれていない。 「対策後の不良の推移を確認する」とだけあり、何をもって効いたとするのか、いつ判断するのかが書かれていないものが通ると、6番目の段階で誰も判定できません。結果として、効果の確認が終わらない案件が台帳に残り続けます。

(d)差し戻しの文面を毎回書いている。 指摘の書き方も担当者ごとで、「もう少し掘り下げてください」のような何を直せばよいか分からない差し戻しが往復を増やしています。

  1. 【人】 製造課の担当者が報告書をPDFにし、提出ライブラリへ置く(CAPA番号を列に入れる)
  2. 【自動】 ファイルの作成をきっかけにフローが動き、不適合の台帳から該当する行を引く
  3. 【自動】 報告書のPDFと台帳の内容と判定基準をプロンプトに渡し、8項目の判定をJSONで受け取る
  4. 【自動】 項目ごとの判定から、accept_candidate / return_candidate / needs_expert を規則で決める
  5. 【自動】 足りない項目について、差し戻しの指摘文の案を作る
  6. 【自動】 品証の担当者に承認依頼を送る。判定の一覧と指摘文の案を付ける
  7. 【人】 担当者が報告書と判定を見比べ、指摘文を直して「差し戻し」か「受理」を選ぶ
  8. 【自動】 結果に応じて、台帳の状態を更新し、製造課へ指摘文または受理の連絡を送る

7番目が、この設計の分かれ目です。 AIの判定は下読みであり、受理も差し戻しも人が決めます。品証の担当者がしなくてよくなるのは、欄の間を行き来して抜けを探す作業と、指摘文を一から書く作業です。

4番目を規則で決めているのも意図してのことです。 どの項目が欠けたら差し戻すかは品証の方針で、後から変わります。AIにはその方針を持たせず、項目ごとの事実だけを返させます。

02今回想定するシステム構成

構成図
是正処置報告書(Word の様式 → PDF)
   ▼【トリガー】SharePoint の提出ライブラリへのファイルの作成
Power Automate(クラウド フロー)
   ├──▶ ファイル コンテンツの取得(PDF)
   ├──▶ 不適合の台帳(SharePoint リスト)から CAPA 番号の行を取得
   ├──▶ 判定基準の文書(8項目と「足りている」の目安)を取得
   ▼
AI Builder のプロンプト(「プロンプトを実行する」、JSON 出力)
   │   ① 問題の記述   ② 暫定処置   ③ 発生原因   ④ 流出原因
   │   ⑤ 恒久対策と原因の対応   ⑥ 水平展開   ⑦ 効果の確認   ⑧ 標準類の改訂
   ▼
Power Automate ── 規則で受理候補/差し戻し候補/専門家確認を決める
   ▼
【品証の担当者が承認】(開始してテキストの承認を待機)
   ▼
台帳の状態の更新/製造課への差し戻し・受理の連絡(Outlook)
役割想定する製品代替候補
ワークフローPower Automate(クラウド フロー)Make、n8n
生成AIAI Builder のプロンプト(「プロンプトを実行する」アクション、JSON 出力)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude API
保管SharePoint のライブラリ(提出された報告書)とリスト(不適合の台帳)Dataverse
承認Power Automate の承認(開始してテキストの承認を待機)Teams のアダプティブ カード

新しく足すのは、フローと判定基準の文書だけです。 提出ライブラリと不適合の台帳は今のものを使い、台帳に「AI判定」「判定日」「差し戻し回数」の3列を足します。

フローの起点は SharePoint コネクタのトリガーです。 SharePoint コネクタには「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」というトリガーがあり、ライブラリで項目が作成されたときに動いてライブラリの列に格納されているプロパティのみを返すとされています。中身は「ファイル コンテンツの取得」を足し、返された「ファイル識別子」で取り出します。

判定は、Power Automate の中から AI Builder のプロンプトを呼びます。 「プロンプトを実行する」アクション(2025年5月以降、旧名「プロンプトを使用して GPT でテキストを作成する」から改称)で、作っておいたプロンプトを選びます。プロンプトは Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限または容量帯域幅調整の対象となる場合があるとされています。導入前に、自社の環境の地域で使えるかを確かめます。

報告書はPDFにして渡します。 プロンプトの「画像またはドキュメント」の入力が通常受け付けるのは PNG、JPG、JPEG、PDF で、Word のファイルはプロンプトの設定でコード インタープリターを有効にした場合に対応するとされています。提出の段階でPDFにしてもらうのが最も手間がかかりません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

提出ライブラリにファイルが作成されたことを起点にします。 SharePoint コネクタの「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」を使い、対象のライブラリを指定します。「作成または変更されたとき」は使いません。 品証が列を書き換えるたびにフローが動き、同じ報告書を何度も判定することになるからです。

再提出は、新しいファイルとして置いてもらいます(ファイル名の末尾に版の番号を付ける)。上書きにすると作成のトリガーが動かず、修正版が判定されません。

提出のときに入力してもらう列は2つだけです。CAPA番号(台帳の行と結びつける)と版(初回か再提出か)です。CAPA番号が空のまま置かれたものは判定せず、提出者に入力を求める連絡を返します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
是正処置報告書PDF。8つの欄(問題の記述、暫定処置、発生原因、流出原因、恒久対策、水平展開、効果の確認、標準類の改訂)提出ライブラリ
元の不適合の内容不適合の区分(工程内/顧客苦情/受入)、品番、数量、発生日、品証が登録した現象の記述、重大度不適合の台帳
前の版の判定再提出のとき、前の版でどの項目を差し戻したかと指摘文不適合の台帳の「AI判定」列
判定基準8項目それぞれの「足りている」の目安と、足りない例品証が作る判定基準の文書

質を決めるのは、いちばん下の判定基準です。 「原因が十分に掘り下げられていること」と書くだけでは、AIも人も同じように判断できません。「なぜの最後が『人が注意を怠った』『教育不足』で終わっていないこと。終わっている場合は、なぜ注意を怠れる仕組みだったのかまで書かれていること」のように、足りない例を一緒に書きます。

元の不適合の内容を渡すのは、報告書の「問題の記述」と照らすためです。 品証が登録した数量や品番と、報告書に書かれた内容が食い違っていることがあり、報告書だけを読んでいては気づけません。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどのアクションで
報告書のファイル提出ライブラリトリガーが返すファイル識別子 →「ファイル コンテンツの取得」
CAPA番号と版提出ライブラリの列トリガーが返すプロパティ
不適合の台帳の行SharePoint のリスト「複数の項目の取得」を CAPA 番号で絞る
判定基準の文書品証のライブラリに置いたテキスト「ファイル コンテンツの取得」

判定基準はプロンプトの本文に直接書かず、ファイルから読み込んで入力として渡します。 基準を直すたびにプロンプトを作り直さなくて済み、どの版の基準で判定したかをログに残せます(第7章「保存・ログ」)。

台帳の行は、CAPA番号で1件に絞れたときだけ先へ進めます。 0件や2件以上のときは判定せず、品証に知らせます(第7章「例外処理」)。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. ファイル形式の確認 … PDFであることを確かめます。Word のまま置かれたものは提出者にPDFでの再提出を求めます
  2. サイズとページ数の確認 … プロンプトに渡すファイルは合計が 25 MB 未満、ドキュメントは 50 ページ未満である必要があります。是正処置報告書は数ページなので通常は収まりますが、写真や測定データを大量に貼った報告書は超えることがあります
  3. 添付資料の分離 … 測定データやグラフを本体に貼り込まず、別ファイルにしてもらいます。大きなドキュメントから抽出された情報が不正確または不完全である可能性があり、特にテーブル行の場合とされているため、本体を短く保ちます
  4. 版の確認 … 版が2以上なら、前の版の判定と指摘文を台帳から読み込みます
  5. 重大度の確認 … 台帳の重大度が最も高い区分(顧客に流出した安全関連など)のものは、判定はしても needs_expert を必ず付けます

2番目と3番目は、提出の様式の側で直します。 判定の精度を上げようとするより、報告書の本体を8つの欄に絞り、証拠の資料は別に添付するルールにするほうが確実です。

Step5

AIに処理させる

させるのは、8項目それぞれについて、判定基準に照らした状態と、根拠にした報告書の文を返すことだけです。

項目判定の観点(判定基準の文書に書く内容の例)
① 問題の記述何が・いつ・どこで・どれだけ起きたかがあるか。台帳の内容と食い違いがないか
② 暫定処置流出を止める処置と、その範囲(在庫・仕掛・出荷済み)が書かれているか
③ 発生原因なぜの最後が人の注意や教育で止まっていないか。仕組みの原因まで書かれているか
④ 流出原因なぜ検査や工程で止められなかったかが、発生原因とは別に書かれているか
⑤ 恒久対策と原因の対応③と④に挙がった原因それぞれに対策があるか。「教育」「注意喚起」だけで終わっていないか
⑥ 水平展開同じ原因が起きうる他の品番・工程・設備への展開の要否が書かれているか
⑦ 効果の確認何を測り、何をもって効いたとし、いつ判断するかがあるか
⑧ 標準類の改訂作業標準・検査基準などの改訂の要否と、改訂する文書名が書かれているか

状態は4つです。sufficient(足りている)、insufficient(書かれているが基準に届かない)、missing(書かれていない)、cannot_judge(技術的な内容で、記載の形式からは判断できない)です。

cannot_judge を置くのが要点です。 「熱処理の条件が原因」と書かれていても、それが正しいかは記載からは分かりません。AIに原因の正しさを判断させると、もっともらしい書き方の報告書が通り、正しくても書き方の素朴な報告書が返されます。 正しさの判断が要る項目は、迷わず専門家へ回させます。

させないこと理由
原因の推定が技術的に正しいかの判断記載から判断できない。専門家の領域
受理か差し戻しかの結論品証の方針で決める。規則と人が持つ
足りない内容をAIが書き足す製造課の調査を経ていない原因や対策が報告書に入る
重大度の付け直し台帳の値をそのまま使う

3行目がいちばん起きやすい失敗です。 指摘文の案を作らせると、「たとえば治具の位置決めピンを追加するなど」と対策そのものを提案し始めます。 製造課はそれをそのまま書き写し、調べていない対策が報告書に載ります。指摘文は「何が足りないか」までにとどめさせます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは品質保証部で、製造課から提出された是正処置報告書を受理する前に、
記載が社内の判定基準を満たしているかを下読みする担当です。
受理か差し戻しかは決めません。項目ごとの状態だけを返してください。

【判定する8項目】
1. problem(問題の記述) 2. containment(暫定処置)
3. root_cause(発生原因) 4. escape_cause(流出原因)
5. countermeasure(恒久対策と原因の対応) 6. horizontal(水平展開)
7. effectiveness(効果の確認) 8. standards(標準類の改訂)
各項目の「足りている」の目安は、【判定基準】に書かれたものだけを使ってください。

【status の選び方】
- sufficient .... 判定基準の目安を満たす記載がある
- insufficient .. 記載はあるが目安に届かない
- missing ....... その項目の記載がない、または「特になし」「別途」だけ
- cannot_judge .. 技術的な正しさの判断が要り、記載の形式からは決められない
迷ったときに sufficient を選ばないでください。

【厳守事項】
- 報告書に書かれていないことを補わないでください。記載がなければ missing です。
- 原因や対策が技術的に正しいかを評価しないでください。
- 「教育を実施」「注意喚起」「周知徹底」だけの対策は、目安に照らして判定してください。
- countermeasure では、root_cause と escape_cause に挙がった原因を1つずつ並べ、
  それぞれに対応する対策の文があるかを書いてください。
- problem では、【元の不適合】の品番・数量・発生日と食い違う記載があれば挙げてください。
- evidence には、判定の根拠にした報告書の文をそのまま写してください。要約しないでください。
- comment_draft には、何が足りないかだけを書いてください。
  対策や原因の候補を提案しないでください。
- 前の版の指摘がある場合は、各指摘が今回の版で解消したかを resolved に書いてください。
- 回答に JSON マークダウンを含めないでください。

【元の不適合】{nc_record}
【判定基準】{criteria}
【前の版の指摘】{previous_findings}
【報告書】(ドキュメント入力)

「対策や原因の候補を提案しない」を明記しないと、指摘文が助言になります。 助言は親切に見えますが、調査していない原因が報告書に入る経路になります。

「回答に JSON マークダウンを含めない」は、Microsoft のページにある対処をそのまま入れたものです。 JSON出力のプロンプトで「JSON を生成できませんでした」と出るとき、モデルが JSON をメタデータで囲んでいる可能性があり、この指示を足すよう案内されています。

Step7

出力形式を固定する

プロンプトの出力を JSON にし、形式を「カスタム」で固定します。 既定の「自動検出」は、テストのたびに形式が更新されます。JSON の例を編集すると形式は Custom になり、プロンプトを保存すると形式がロックされ、フローで使うときはその形式が使われるとされています。

{
  "capa_no": "",
  "revision": 1,
  "items": [
    { "item": "root_cause", "status": "sufficient | insufficient | missing | cannot_judge",
      "evidence": "", "comment_draft": "" }
  ],
  "cause_countermeasure_map": [
    { "cause": "", "countermeasure_evidence": "", "covered": "yes | no" }
  ],
  "record_mismatch": [ { "field": "", "record": "", "report": "" } ],
  "previous_findings": [ { "item": "", "resolved": "yes | no | partly" } ]
}

items には8項目を並べます。フィールド キーのない配列(["abc","def"] のような形)は JSON 形式の定義としてサポートされていないとされているため、配列の要素は必ずキーを持つオブジェクトにします。

1つ目の理由は、判定と結論を別の層に置けることです。 フローは items を読み、次の規則で結論を決めます。

条件結論
cannot_judge が1つでもある、または重大度が最上位needs_expert
③⑤⑦のいずれかが insufficient か missing、または covered に no があるreturn_candidate
それ以外で missing があるreturn_candidate
すべて sufficientaccept_candidate

③⑤⑦を重く扱うのは、品証の方針の例です。 原因・対策・効果の確認の3つが欠けた報告書を受理すると、後で効果の判定ができなくなります。どの項目を重く扱うかは、この表を変えるだけで変えられます。

2つ目は、cause_countermeasure_map で原因と対策の対応が一覧になることです。 第3章の(b)は、欄ごとに読むと見落とす問題でした。原因を1行ずつ並べ、対策の文が付いているかを表にすれば、no の行が一目で分かります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
提出ライブラリSharePoint のトリガー「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」報告書の提出を検知し、CAPA番号と版を取る
不適合の台帳SharePoint のアクション元の不適合の内容を読み、承認後に状態・AI判定・判定日を書く
AI Builder のプロンプト「プロンプトを実行する」8項目の判定をJSONで返す
品証の担当者承認「開始してテキストの承認を待機」推奨テキストに指摘文の案を入れ、担当者が編集して応答する
製造課Outlook のメール送信承認された指摘文または受理の連絡を送る

人の確認には、承認アクションの「推奨テキスト」を使います。 Microsoft のページでは、プロンプトの後に「開始してテキストの承認を待機」を置き、推奨テキストに生成されたテキストを入れると、割り当てられたレビュー担当者が Power Automate の承認の画面でテキストを確認し、必要に応じて編集して応答できる手順が示されています。指摘文を直したうえで差し戻しを選べるので、この業務にそのまま合います。

台帳への書き込みは、承認の後だけです。 AIの判定が出た時点では、台帳の「AI判定」列に下読みの結果を書くだけにし、状態(受理/差し戻し)は人の応答を受けてから変えます。

Step9

人が確認する

全件を人が確認します。 AIの判定だけで受理する経路は作りません。そのうえで、確認の重さを結論ごとに変えます。

  1. needs_expert を先に見る … 技術的な判断が要る項目があるもの。品証の担当者だけで決めず、生産技術や設計の担当に見てもらいます
  2. return_candidate の根拠を確かめる … evidence の文を報告書の該当箇所と並べて読みます。missing の項目が本当に書かれていないかを確かめます
  3. 指摘文を直す … 案は「何が足りないか」までなので、製造課の事情を知る担当者が、伝わる言い方に直します
  4. accept_candidate も報告書を通して読む … 下読みで抜けがないと出ていても、受理の判断は人がします

4番目を省かないでください。 AIは書かれたことしか見ないので、報告書全体がもっともらしく書かれていても中身が薄いものを見抜けません。下読みで時間が浮くのは、欄の間を行き来する作業です。読むこと自体は残ります。

目標は、1件をならして15分です。 抜けを探す作業が下読みに置き換わり、指摘文は直すだけになるという想定です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
CAPA番号が空、または台帳に無い判定せず、提出者に番号の入力を求める
同じCAPA番号の行が台帳に2件以上ある判定せず、品証に台帳の重複を知らせる
Word のまま提出された判定せず、PDFでの再提出を求める
合計 25 MB 以上、または 50 ページ以上判定せず、添付資料を別ファイルに分けて再提出を求める
処理が 100 秒を超えてタイムアウト画像やドキュメントの処理は最大100秒に制限されている。1回だけ再実行し、それでも失敗したら人へ
JSON を生成できない再実行。続く場合はプロンプトの指示を見直す
地域の制限や使用制限で呼び出しが失敗する下読みなしで担当者へ回す。提出の受付は止めない
前の版の判定が台帳に無い初回として判定し、担当者に「前回の指摘との照合なし」と表示する

いちばん下から2つ目が大事です。 AIの呼び出しが失敗しても、報告書の受付と品証への通知は必ず行います。 下読みが無い報告書は、今までどおり人が読めば済みます。AIが止まったせいで報告書が誰にも届かない、という状態だけは作りません。

Step11

記録を残す

  • 提出された報告書のPDF(版ごと。上書きしない)
  • プロンプトが返したJSONの全文と、そのとき使った判定基準の文書の版
  • フローが規則で決めた結論(accept_candidate など)
  • 人の応答 … 受理か差し戻しか、指摘文をどう直したか
  • 差し戻しの回数と、再提出で解消した項目
  • AIの判定と人の判断が食い違った件 … どの項目で、どちらに変えたか

2つ目で判定基準の版を残すのは、基準が後から変わるためです。 「教育だけの対策は不可」と基準を厳しくした月の前後で、判定の意味が変わります。

最後の行は、判定基準を直す材料になります。 人が sufficient を insufficient に変えることが続く項目は、基準の文書の目安が甘いか、足りない例が書かれていません。 毎月の集計で見て、基準のほうを直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:判定基準と報告書を手でAIの画面に渡し、8項目を判定させる / 1件ごとの下読み
半自動化:上記+提出ライブラリを起点にフローを動かし、台帳を読み、判定と指摘文の案を承認に回す / 下読み・結論の候補・指摘文の案・承認後の台帳更新
本格構成:上記+効果の確認の期日に結果の報告を催促し、提出された効果の確認の結果も同じ仕組みで判定する / 是正処置の受理から効果の判定までの一連

本記事の想定は半自動化です。 1件45分が15分になる見込みは、この段階を前提にしています。 本格構成で効果の確認まで広げると、UC-0114 の進捗管理と重なります。 期日の管理はそちらの仕組みに任せ、この構成は「提出された文書の判定」に専念させるほうが、作り直しが少なく済みます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
45 分
1件あたり導入後時間
15 分
現在  60件 × 45分 ÷ 60 = 45 時間/月
導入後 60件 × 15分 ÷ 60 = 15 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
67%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価4,000円)
144万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 複数の工場・製造課から是正処置報告書が毎月数十件提出され、品質保証部の少人数が受理の可否を判断している製造業・医療機器・建設資材などの企業。報告書の書式は決まっているが、原因の掘り下げの深さや効果の確認の書き方が担当者ごとにばらつき、差し戻しの基準が品証の担当者によって違う場合。SharePoint と Power Automate をすでに社内で使っている場合。
向いていない
  1. 是正処置報告書が月に数件しかなく、品証の責任者が全件を読める場合。報告書を紙で回しており、電子化の予定がない場合。原因が技術的に難しく、記載の形式ではなく原因そのものの正しさを評価する必要がある案件(解析が要る案件は技術の専門家が見るべきで、この構成は代わりになりません)。

07最小構成で試す方法

  1. 先月までの是正処置報告書から20件を選ぶ(差し戻したものと、そのまま受理したものを半々にする)
  2. 品証の3人で、8項目の「足りている」の目安と足りない例を、A4で2枚程度に書き出す
  3. Copilot Chat などの手元のAIの画面に、判定基準と報告書のPDFを1件ずつ渡す
  4. 「判定基準に照らし、8項目それぞれを足りている/足りない/書かれていない/判断できないで判定し、根拠の文を写してください。対策を提案しないでください」と指示する
  5. 当時の差し戻しの判断と突き合わせる

2番目がいちばん時間のかかる作業で、いちばん効く作業です。 書き出す過程で、3人の基準が違っていたことがはっきりします。

出てきた内容判断
当時差し戻した項目が insufficient か missing で出たフローの構築に進む
当時受理したものに抜けが出た当時の見落としか、基準が厳しすぎるか。3人で話し合って基準を決める
根拠の文を写さず要約で返す指示の書き方で直る。構成は有効

2行目が出たときがこの試行の収穫です。 AIの誤りとして片付けず、受理してよかったのかを3人で確かめてください。

試すときは、社内で使ってよいAIの画面に限ります。 是正処置報告書には品番や顧客名が入るため、個人の契約のAIサービスに貼り付けるのは避けます。手元の環境で使えるものが無ければ、品番と顧客名を伏せた報告書で試します。 伏せても、原因と対策の対応や効果の確認の書き方は判定できます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
「教育を実施」だけの対策が sufficient になる足りない例を判定基準に書く。 目安だけでは通る
指摘文が対策の提案になる「何が足りないかだけ」と明記し、承認の段階で人が確かめる
原因の正しさまで判定してしまうcannot_judge を用意し、正しさの判断を専門家に回す
根拠の文が要約されていて報告書のどこか分からない「そのまま写す」と指示し、写していない判定は人が読み直す
Word のまま置かれて判定されない様式の段階でPDF化を決める。コード インタープリターに頼らない
測定データを貼った報告書でページ数が上限を超える本体と添付を分ける運用にする
再提出のたびに前の指摘を確かめ直している前の版の判定を台帳に残し、resolved で照合させる
修正版を上書きして判定されない版ごとに新しいファイルで置くルールにする
判定基準を変えたのに過去の判定と比べてしまう判定に使った基準の版をログに残す
承認依頼が溜まって提出から受理まで延びる承認依頼の滞留を週1回数え、担当を割り振り直す

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「AIにどこまで判断させるか」の線引きから出ています。記載の有無と基準への当てはめはAI、原因の正しさと受理の判断は人という線を、プロンプトとフローの両方で守ります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 不適合の内容、品番、数量、顧客名(苦情の場合)、工程や設備の情報、場合によっては作業者の氏名です。

  1. 作業者の氏名を報告書に書かない様式にする … 原因の欄に個人名が入ると、判定のログに「誰がミスをしたか」の記録が残り続けます。 様式では「A班の作業者」のように役割で書くことにします
  2. 顧客名は台帳の側で持ち、報告書には書かない … 苦情の是正処置では顧客名が入りがちです。プロンプトに渡す範囲を減らします
  3. AIの判定だけで受理しない … 是正処置の受理は品質マネジメントの記録そのものです。審査で「誰が受理を判断したか」を問われたときに、人の承認の記録を出せるようにします
  4. 差し戻しの連絡を自動で送らない … 製造課との関係に関わります。送るのは人が承認したものだけです
  5. 判定基準の文書を管理文書として扱う … 改訂の履歴を残し、品証の責任者の承認を経て変えることにします
  6. プロンプトの地域と使用制限を確かめる … AI Builder のプロンプトは一部の地域に限定されるとされています。データがどの地域で処理されるかを、情報システム部門と確かめてから使い始めます

誤りが起きた場合のリスクは、足りない報告書を受理することと、足りている報告書を差し戻すことの2つです。 前者は効果の確認ができない是正処置を残し、後者は製造課の不信を招きます。どちらも人の承認で止める設計にしてあります。

10まず何から始めるか

1週目:判定基準を書き出す

品証の3人で、8項目それぞれについて「足りている」の目安と足りない例を書き出します。過去に差し戻した報告書を並べ、なぜ返したかを言葉にするのがいちばん早い方法です。

2週目:20件で試す

差し戻したものと受理したものを10件ずつ選び、手元のAIの画面で判定させます。当時の判断と食い違った件を3人で読み、基準を直します。

3週目:様式を整える

報告書をPDFで出すこと、CAPA番号と版を列に入れること、作業者の氏名を書かないこと、添付資料を分けることを製造課に伝えます。ここが決まらないうちにフローを作ると、例外処理ばかりが動きます。

4週目:フローをつなぐ

提出ライブラリのトリガーから、台帳の読み込み、プロンプトの実行、承認までをつなぎます。最初の1か月は、承認で人が判定をどう直したかを毎週数えます。

2か月目以降: 人が判定を覆した項目を集計し、判定基準の文書を直します。差し戻しの往復の回数が減り、3人の差し戻しの傾向がそろった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
Power Automate のフローにプロンプトをアクションとして追加できること。アクション名が2025年5月以降「プロンプトを実行する」に変更されたこと。Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動くこと、一部の地域に限定され、使用制限または容量帯域幅調整の対象となる場合があること。「開始してテキストの承認を待機」の推奨テキストに生成テキストを入れ、レビュー担当者が承認の画面で確認・編集して応答できることMicrosoft Learn: Power Automate でプロンプトを使用する2026-10-07
プロンプトの出力に JSON を選べること。既定の形式が自動検出で、JSON の例を更新すると Custom になり、保存すると形式がロックされること。「JSON を生成できませんでした」の対処として「回答に JSON マークダウンを含めないでください」を加える案内。フィールド キーのない JSON 形式の定義がサポートされないことMicrosoft Learn: JSON 出力2026-10-07
画像またはドキュメント入力のファイルの種類が通常 PNG、JPG、JPEG、PDF で、Word 等はコード インタープリター有効時に対応すること。合計 25 MB 未満、50 ページ未満、処理は最大100秒であること。大きなドキュメントでは特にテーブル行の抽出が不正確・不完全になる可能性があること。モデルによりトークン数と課金のレベルが異なることMicrosoft Learn: プロンプトに入力を追加する2026-10-07
SharePoint コネクタのトリガー「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」がライブラリ列のプロパティのみを返し、「ファイル コンテンツの取得」で中身を取得できること。「ファイルが作成または変更されたとき (プロパティのみ)」が変更のたびにも動くことMicrosoft Learn: SharePoint コネクタ2026-10-07

判定基準の中身(何をもって原因の掘り下げが足りているとするか)は、各社の品質マネジメントの規程で決めてください。 本記事は Microsoft の公開ドキュメントで確認できた範囲の仕様だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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