AIアイデアソンを社内で開く5工程|出た案を業務に移す

「AI活用の案を出す場を社内で開くよう言われたが、何から決めればよいのか分からない」「前にアイデアソンを開いたが、出た案がその後どうなったのか誰も知らない」。AI推進やDX推進の担当者から、こうした声がよく届きます。催しを開くこと自体は、実はそれほど難しくありません。つまずくのは、たいてい開いた後です。アイデアソンは、盛り上がる場を作ることではありません。本当は、まだ誰も気づいていないAIの使いどころを掘り出し、業務の持ち主に渡すまでの仕組みです。この記事では、AIの使いどころを出す社内の催しに絞って、企画から当日、選別、本番化までを5つの工程で整理します。
カメ先生アイデアソンは、たくさん案を出す催しだと思われがちなんだ。でも本当に効くのは、出た案のうち1つでも2つでも、翌月の業務で使われ始めることなんだよ。
カメ子案の数より、業務に残った数を見る、ということですか。
カメ先生そう。だから当日より、前と後の設計が大事でね。題材を業務の側から決めて、試作に使ってよいデータの線を先に引き、選んだ案を誰が引き取るかまで決めてから開くんだ。
カメ子開く前に、終わり方まで決めておくんですね。
- アイデアソンは案を出す場ではなく、AIの使いどころを掘り出して業務の持ち主に渡す仕組み。題材は業務の側から決める
- 試作に社外秘のデータを使うかどうかの線は、募集の前に決める。運営は案の束ねや重複の整理にAIを使える
- どの案を本番にするかはAIに判断させない。選んだ案を引き取る部門と持ち主を、催しの前から用意しておく
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アイデアソンは、AIの使いどころを掘り出す社内の催し
アイデアソンは、アイデアとマラソンを合わせた造語で、決まった時間の中で集中して案を出し合う催しを指します。本来は題材を問わない形式ですが、この記事で扱うのは、社員が自分の業務のどこにAIを使えるかを出し合い、その場で簡単な試作まで進める社内の催しです。表彰や景品の設計、社外の参加者を集めるイベントの運営には触れません。
なぜ社内でこの形が求められるのでしょうか。生成AIを全社に配っても、使われ方は人によって大きく差が出ます。使いこなす人は自分で使いどころを見つけますが、多くの人は「自分の仕事のどこに使えるのか」が分からないまま止まっています。アイデアソンは、業務を知っている人に、使いどころを考える時間と相手を与えるための場です。
要望を受け付ける窓口との違いも押さえておきます。窓口は、社員がすでに困っていることを受け取る仕組みです。一方のアイデアソンは、本人も困りごととして気づいていない使いどころを、他部門の人やAIに詳しい人と話すことで掘り出します。窓口が「来たものを選ぶ」仕組みなら、アイデアソンは「まだ無いものを出す」仕組みです。
この違いから、成果の測り方も決まります。出た案の数は目安にすぎません。見るべきは、選ばれた案のうち何件が業務の持ち主に引き取られ、何件が実際の業務で使われ始めたかです。この2つの数字を、開く前に成果の物差しとして決めておくことが、以下の5つの工程すべての前提になります。
アイデアソン・ハッカソン・勉強会の違い
社内でAIの活用を広げる催しには、アイデアソンのほかに、ハッカソンと勉強会があります。どれも社員を集めて行う点は同じですが、目的と、終わったときに手元に残るものが違います。どれを開くかは、今の社内の段階で決めます。
| 形 | 主な目的 | 向いている段階 | 終わったときに残るもの | 参加者に要る技能 |
|---|---|---|---|---|
| アイデアソン | AIの使いどころの案を出し、簡単な試作で確かめる | 道具は配ったが、使いどころが見えていない | 業務の困りごと、AIでの解き方の案、指示文や画面の試作 | 自分の業務を説明できること |
| ハッカソン | 決まった課題に対し、動く仕組みを作り切る | 使いどころの候補があり、作れる人がいる | 動く試作品と、作る中で分かった課題 | 仕組みを組み立てる技能 |
| 勉強会 | 道具の使い方や注意点を学ぶ | 使い方そのものが広まっていない | 参加者の知識と、社内の決まりの理解 | 特になし |
表のとおり、アイデアソンに向くのは、道具は行き渡ったのに使われ方が広がらない段階です。まだ使い方が分からない人が多いなら、先に勉強会を開いたほうが案の質が上がります。反対に、作りたいものがすでに決まっているなら、ハッカソンで作り切るほうが早いでしょう。
実際には、この3つを組み合わせる会社が多く見られます。事前に勉強会で道具の使い方をそろえ、アイデアソンで案を出し、選ばれた案だけをハッカソンや開発の案件に回す、という流れです。1回の催しで全部をやろうとしないことが、それぞれの質を保つこつです。
公開された社内の例から見える形
各社が公式に公開している例を見ると、社内の催しの形はさまざまです。日立ソリューションズは2025年9月17日の発表で、生成AIの社内利用を広げる施策として活用のアイデアコンテストを開き、グループから1,000件を超える応募があったと公表しました。4月に募集を始め、6月の書類の予選で約100件に絞り、社員の投票と事務局の書類審査で20件、9月の発表形式の最終審査で10件を選んでいます。
同じ発表によると、募集の期間中に、案を具体化する手法やAIを使う業務の見極め方を学ぶ事前のセミナーを開き、延べ約850人が参加しました。最終審査の観点は「実現可能性」「効果」「発展性と横展開可能性」の3つです。社内の利用率は2024年6月の約20%から2025年9月初めの約85%に上がったとありますが、発表自体がさまざまな施策の効果としており、催し単独の効果ではありません。
東京電力ホールディングスの例は、支援した会社が2024年9月27日に公開した事例として紹介されています。それによると、事前に約450人が参加する勉強会を開いたうえで、業務での生成AIの活用案を社内から募り、約170件が集まりました。4つの観点で一次の評価をし、3段階で絞り込んで最終的に2件を選び、技術の検証を進めているとされます。
開発者向けに開いた例もあります。クラウド事業者の公式ブログ(2026年3月24日)によると、キヤノンのイメージング事業本部は2025年6月から12月までの約6か月、約20人の技術者が3〜4人ずつ5チームに分かれて生成AIの催しに取り組みました。作る前に、完成したときの発表文とよくある質問を先に書く手法で、顧客にとっての価値を確かめてから試作に入っています。どの例も、当日の前に学ぶ場を置き、当日の後は段階を分けて絞っている点が共通しています。
開いても業務に残らない、よくある終わり方
社内のアイデアソンは、開くこと自体はうまくいくことが多い催しです。参加者は楽しみ、発表は盛り上がり、アンケートの満足度も高く出ます。それでも半年後に振り返ると、業務で使われている案が1つも無い、ということが珍しくありません。よくある終わり方を並べます。
- 題材を「AIで何かできないか」とだけ示し、どの業務の話かを決めずに開く(案が散らばり、引き取る部門が決まらない)
- 試作に使ってよいデータを決めずに開き、当日になって顧客の資料を画面に貼る参加者が出る
- 発表の場で優秀な案を選んで終わり、選んだ案を誰が引き取るかを決めていない
- 試作を作った参加者本人が、通常の業務に戻ったまま案の持ち主にされる
- 選ばれなかった案をそのまま捨て、次の催しで同じ案がまた出てくる
この5つに共通するのは、催しの当日だけを設計して、前と後を設計していないことです。当日の進め方は、どの会社でも似た形に落ち着きます。差が出るのは、題材とデータの線を決める前の工程と、選んだ案を業務に渡す後の工程です。
もう1つ、見落とされやすい終わり方があります。参加者が催しの後に自分の職場へ戻ったとき、上司がその案を知らない、という形です。参加者を出す部門の責任者に、題材と所要時間、終わった後に何が起きるかを事前に伝えておかないと、選ばれた案でさえ職場で後回しになります。
以下の5つの工程は、この前と後に重心を置いて組んでいます。工程1と2が企画、工程3が当日、工程4が選別、工程5が本番化にあたります。工程5の受け皿を用意できないうちは、工程1に進まないというのが、この記事でいちばん伝えたい順番です。
工程1:題材を業務の側から決める
最初の工程は題材を決めることです。ここで「AIで何ができるか」から始めると、道具の機能の紹介のような案ばかりが並びます。題材は、AIの機能ではなく、業務の側から決めます。たとえば「月末の請求の確認」「問い合わせへの一次の返答」「営業日報のまとめ」のように、特定の部門の特定の作業を題材にします。
題材を業務の側から決めると、引き取る部門が最初から決まります。請求の確認を題材にすれば、案の引き取り手は経理です。これが、工程5で案を渡すときの受け皿になります。題材を決めるときに、その業務の責任者から「良い案が出たら引き取る」という約束をもらっておくと、催しの後の動きがまったく変わります。
題材の数は、1回の催しで2〜3つに絞るのが扱いやすい大きさです。題材が多すぎると、1つの題材に集まる人が少なくなり、案の比べようがなくなります。題材ごとに、その業務の今の手順を1枚にまとめた資料を用意しておくと、他部門の参加者も話に入りやすくなります。
題材の候補を集める段階では、社内の要望の窓口に届いている声が役に立ちます。要望として届いているのに、どう解けばよいかが決まっていない業務は、アイデアソンの題材に向いています。窓口での採点や着手の順番の決め方は、社内のAIの要望を受け付けて選ぶ仕組みの記事に譲ります。
工程1の続き:試作に使ってよいデータの線を先に引く
題材と同じくらい大事なのが、試作に使ってよいデータの線です。当日、参加者は実際の業務の資料で試したくなります。そのほうが案の良し悪しがすぐ分かるからです。しかし、顧客の個人情報や取引先から預かった資料を催しの場で使ってよいかは、その場では決められません。募集の前に線を引いておきます。
線は3段に分けると決めやすくなります。1段目は、公開済みの情報や、架空の値で作った見本のデータ。2段目は、社内向けだが個人情報や取引先の秘密を含まない資料。3段目は、顧客の個人情報、取引先の秘密、未発表の数字です。催しで使ってよいのは1段目と2段目まで、3段目は架空の値に置き換えて使う、と決めておくのが無難です。
使う道具も決めておきます。会社が契約していて、入力が学習に使われない設定を確かめた道具だけを使う、と決めます。参加者が個人の契約の道具を持ち込むと、2段目の資料でも社外に出ることがあります。当日は、使ってよい道具の一覧を最初に示します。
- 見本のデータは運営が用意する。参加者に作らせると、本物の資料を少し書き換えただけのものが混ざる
- 画面の写しを発表資料に貼るときも、同じ線が効く。発表資料の置き場も先に決める
- 線に迷う資料は使わない、と決めておく。当日に判断を求められる運営の負担が減る
この線は、情報の管理を担う部門と一緒に決め、募集の案内に書きます。案内に書いておけば、参加者は使いたい資料を事前に選べます。線を当日に説明するだけでは、準備してきた資料が使えないと分かって、案の出発点から崩れることがあります。
工程2:業務を知る人と作れる人を同じ組にする
2つ目の工程は、参加者の選び方と組み方です。アイデアソンでいちばん効くのは、その業務を毎日やっている人と、AIの道具を使いこなせる人を同じ組にすることです。業務を知る人だけでは解き方が出ず、道具に詳しい人だけでは業務に合わない案になります。
1つの組は3〜5人が目安です。先に挙げたキヤノンの例も3〜4人の組でした。組の中に、題材の業務の担当者を最低1人、道具を使える人を1人入れ、残りは他部門の人にします。他部門の人は、担当者が当たり前だと思っている手順に「なぜそうするのか」と問いを立てる役割を担います。
参加の呼びかけ方にも工夫が要ります。自由参加にすると、もともとAIに関心の高い人ばかりが集まります。それ自体は悪くありませんが、題材の業務の担当者が来なければ案は業務に残りません。題材の部門には、責任者を通じて担当者の参加を頼む、という形を組み合わせます。
参加者の上司には、所要時間と、終わった後に起きることを先に伝えます。催しの当日だけでなく、選ばれた場合は工程5で数週間ほど試作の手直しに関わる可能性がある、ということまで伝えておきます。後から時間を求めると、上司の了解が取れずに案が止まります。
工程2の続き:事前の準備は業務の書き出しから
当日の質を決めるのは、事前の準備です。公開された例でも、事前に勉強会やセミナーを置いている会社が目立ちました。ただし、準備の中身を道具の使い方の説明だけにすると、当日は機能の紹介のような案ばかりになります。準備で大事なのは、題材の業務の手順を、参加者が当日までに書き出しておくことです。
書き出す項目は多くありません。その作業の始まりと終わり、途中で使う資料、時間がかかっている手順、間違いが起きやすい手順、の4つです。担当者が1枚に書き、他の参加者は当日までに読んでおきます。これだけで、当日の最初の1時間を業務の説明に使わずに済みます。
道具の使い方の準備は、会社が使ってよいと決めた道具に絞ります。指示文の書き方、資料を読ませるときの注意、出てきた答えの確かめ方の3点を短く伝えます。工程1で決めたデータの線は、この準備の場でもう一度説明すると、当日の迷いが減ります。
準備の場は、30分から1時間の短いもので足ります。長い研修にすると参加の敷居が上がります。研修の中身そのものの組み立て方は、生成AIの研修の中身を決める記事に詳しくまとめています。ここでは、あくまで当日の案の質を上げるための準備と考えます。
工程3:当日の進め方
3つ目の工程が当日です。半日から1日の枠で開くことが多く、進め方はおおむね次の流れに落ち着きます。時間は半日で開く場合の目安です。
題材の業務の書き出しを見ながら、組の中で時間がかかる手順と間違いが起きやすい手順に印をつけます。ここではまだ解き方を考えません。
印をつけた手順ごとに、AIで解けそうな案を数多く出します。良し悪しの判断は後に回し、似た案もそのまま並べます。
組の中で、効果が大きく、試作で確かめやすい案を選びます。選んだ理由を1行で書きます。
会社が使ってよいと決めた道具で指示文や簡単な画面を作り、見本のデータで動かします。うまくいかない点も記録します。
困りごと、解き方、試作の結果、確かめきれなかったことの4つを、1組5分程度で発表します。
この流れで大事なのは、案を広げる時間と絞る時間を分けることです。同時に進めると、最初に出た声の大きい案に議論が寄ります。案を広げる間は誰の案も否定しない、という決まりを最初に伝えます。
試作の時間は、当日の中でいちばん長く取ります。案を言葉で語るだけでは、良さそうに聞こえても実際に動くかは分かりません。短い時間でも見本のデータで動かしてみると、AIがうまく扱えない手順や、人が確かめないと危ない手順がはっきりします。これが工程4の選別の材料になります。
発表では、うまくいったことより、確かめきれなかったことを必ず言ってもらいます。確かめきれなかった点が書かれていない案は、選別の後に想定外の手間が出ます。発表の型を最初に示しておくと、発表の質がそろい、比べやすくなります。
運営の側がAIを使うところ
運営の側も、AIを使うと作業が大きく減ります。使いどころは3つあります。1つ目は、出た案の束ねです。各組が出した案を一覧にして読ませ、同じ困りごとを扱う案をまとめさせます。数十件の案でも、似たもの同士が並ぶと全体が見やすくなります。
2つ目は、重複の整理です。過去の催しで出た案や、要望の窓口に届いている声と照らして、同じ案がすでに出ていないかを探させます。見つかったら、過去の案がどうなったかを発表者に伝えられます。3つ目は、試作の下書きです。運営が事前に題材ごとの簡単な試作の下書きを作っておくと、当日の試作の時間を短くできます。
ただし、AIに束ねさせた結果はそのまま使いません。どの案とどの案を同じと見たかを、根拠として原文のまま並べさせ、運営の人が読んで確かめます。言葉が似ているだけで中身が違う案を、AIが同じものとしてまとめてしまうことがあるからです。
束ねや重複の整理で扱う案には、参加者の名前や所属が入っています。運営がAIに読ませるときも、工程1で決めたデータの線が効きます。会社が使ってよいと決めた道具を使い、案の一覧を個人の契約の道具に貼らない、という決まりは運営にも当てはまります。
工程4:選別で、案を3つの行き先に分ける
4つ目の工程は選別です。発表を聞いて優秀な案を選ぶだけでは、選ばれなかった案の行き先が決まりません。選別は、案ごとに行き先を3つのどれかに決める作業と考えます。3つの行き先とは、本番に向けて進める、要望の窓口に回して順番を待つ、記録に残して今回は見送る、です。
本番に向けて進める案は、ごく少数に絞ります。公開された例でも、約170件から2件、1,000件超から10件と、最後に残る数は多くありません。本番化には、案を引き取る部門の手間と費用がかかります。引き取る部門が受け止められる数を、選別の前に決めておくと、選びすぎを防げます。
要望の窓口に回す案は、良い案だが今すぐは手が回らないものです。窓口に回すときは、発表の内容と試作の結果を添えて、他の要望と同じ土俵で順番を待ってもらいます。窓口の側での採点や順番の決め方は、この記事では繰り返しません。
選別の場には、題材の業務の責任者に必ず同席してもらいます。案を引き取るかどうかを決めるのは、その業務の責任者だからです。運営やAI推進の担当者だけで選ぶと、選んだ案を持っていった先で「うちでは使えない」と言われることがあります。
どの案を本番にするかをAIに判断させない
選別の作業にも、AIを使いたくなる場面があります。案の数が多いときに評価の観点を示して点数をつけさせれば、短い時間で並べられます。しかし、どの案を本番に進めるかを、AIに判断させてはいけません。判断に要るのは、引き取る部門の人手、予算、他の案件との兼ね合い、その業務の危うさといった社内の事情だからです。
AIに手伝わせてよいのは、判断の材料をそろえるところまでです。たとえば案ごとに、どの業務の手順を変えるのか、試作で確かめたこと、確かめきれなかったこと、使うデータの段、の4点を一覧にさせます。一覧の各項目には、発表のどこに書かれていたかを根拠として添えさせ、人が発表資料で確かめます。
人が確かめる範囲も、選別の前に決めておきます。少なくとも、使うデータの段と、確かめきれなかったことの2つは、人が発表資料を読んで確かめると決めます。この2つは、本番化の手間と危うさを大きく左右するのに、AIの要約では抜け落ちやすい項目です。
選んだ理由は、案ごとに一文で残します。選ばれなかった案にも、なぜ今回は見送ったのかを一文で書きます。先に挙げた東京電力の例でも、選ばれなかった案に事務局が評価を返していたとされます。理由が残っていれば、次の催しで同じ案が出たときに、前回の判断と比べて考えられます。
工程5:本番化は、受け皿と持ち主を決めて渡す
最後の工程が本番化です。ここでいう本番化は、案を業務の持ち主に渡し、その部門の業務として試し始めることを指します。渡すときに決めることは3つあります。案の持ち主、試す期間、続けるか止めるかを決める日です。
案の持ち主は、試作を作った参加者ではなく、引き取った部門の人にします。参加者は通常の業務に戻るため、持ち主にすると手が回らなくなります。参加者は、持ち主を支える相談役として一定の期間だけ関わるという形にし、その時間を上司に了解してもらいます。
試す期間は、1〜3か月ほどに区切ります。その間に試作を実際の業務で動かし、時間がどれだけ減ったか、確かめる手間がどれだけ増えたかを記録します。期間の終わりに、続ける・手直しして続ける・止める、のどれにするかを、引き取った部門の責任者が決めます。
渡した後の進み具合は、運営が月に1回ほど確かめます。持ち主が決まっていても、通常の業務に押されて試す作業が止まることがあります。止まっていたら何が足りないのかを聞き、人手が足りないのか、道具の権限が足りないのかを切り分けます。
試作から本番に移すと変わること
催しの試作は、見本のデータと少ない手順で動くように作られています。本番の業務に移すと、条件がいくつも変わります。本物の資料を使うこと、例外の多い手順を扱うこと、使う人が増えること、他の仕組みとつなぐことです。試作で動いたことは、本番で動くことの証拠にはなりません。
とくに気をつけたいのが、使うデータの段が変わることです。催しでは1段目と2段目の資料で試しても、本番では3段目の資料を扱う案が少なくありません。本番に移す前に、情報の管理を担う部門と、その資料を道具に読ませてよいかを確かめ直します。催しで決めた線を、そのまま本番に持ち込まないことが大切です。
試作から本番への移り方そのものには、それだけで大きな論点があります。成功の基準の決め方、試作と本番で要件が変わるところ、止めるときの残し方は、実証実験が本番に進まない原因を扱った記事にまとめています。ここでは、催しから出た案に特有の点だけを押さえます。
催しから出た案に特有なのは、作った人と使う人と持ち主が別の人になりやすいことです。試作を作った参加者は他部門の人かもしれません。本番に移すときは、試作の指示文や手順を、持ち主が自分で直せる形に書き直してもらいます。作った人しか直せない試作は、その人が異動した時点で止まります。
選ばれなかった案と、次の回への残し方
催しで出た案のうち、本番に進むのはわずかです。残りの案をどう扱うかで、次の催しの質が変わります。選ばれなかった案は、困りごと・解き方・試作の結果・見送った理由の4点をそろえて、社内の置き場に残すようにします。
残した案の一覧は、次の催しの題材を決めるときの材料になります。同じ困りごとが何度も出ているなら、その業務は題材として取り上げる価値があります。また、以前は道具の力が足りずに見送った案が、道具の更新で解けるようになることもあります。見送った理由が残っていれば、その見直しができます。
参加者への返し方も決めておきます。選ばれなかった案の参加者に、理由とともに結果を返すと、次の催しにも参加してもらいやすくなります。結果を返さない催しは、2回目から人が集まりにくくなります。返すのは、選別の日から2週間以内を目安にします。
催しを続けるなら、回ごとに振り返る数字を決めます。出た案の数、本番に向けて進めた案の数、持ち主が決まった案の数、3か月後に業務で使われている案の数の4つです。最後の数字が0の回が続くなら、当日ではなく、工程1の題材の決め方か、工程5の受け皿を見直します。うまくいった使い方を集めて他部門に広げる工夫は、社内のAI活用事例を集める記事に譲ります。
まとめ
社内のAIアイデアソンは、案を数多く出すための催しではなく、まだ誰も気づいていないAIの使いどころを掘り出して、業務の持ち主に渡すための仕組みです。題材を業務の側から決め、試作に使ってよいデータの線を先に引き、業務を知る人と作れる人を組み、当日は広げる時間と絞る時間を分け、選別では案ごとに行き先を決め、本番化では持ち主と期間と決める日をそろえて渡します。運営は案の束ねや重複の整理にAIを使えますが、どの案を本番にするかは引き取る部門の責任者が決めます。開く前に終わり方まで決めておくことが、出た案を業務に残すいちばんの近道です。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
