Media > AI活用ユースケース > マーケティング > テレビ・ラジオのCMの原稿を、放送局の考査で指摘されやすい表現と広告主の表記ルールに照らして入稿前に校正する

テレビ・ラジオのCMの原稿を、放送局の考査で指摘されやすい表現と広告主の表記ルールに照らして入稿前に校正する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

放送局へ入稿する前のテレビ・ラジオのCMの原稿を、放送基準、過去の考査の指摘、広告主の表記ルールの3つに照らして校正します。指摘ごとに根拠と直しの案を付け、考査の担当と制作の担当が入稿前に直せるようにします。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
対象業界
不動産/小売/広告
対象部門
マーケティング
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
人手が足りない/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
校正
主な効果
品質標準化/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
24h/月
想定削減
60%
年間削減
432h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 制作の担当が、CMの原稿(ナレーション、スーパー、映像の説明)を共有フォルダに置く
  2. 考査対応の担当が原稿を開き、ナレーションとスーパーを1行ずつ読む
  3. 最大級の表現、効能効果の言い方、比較の言い方、価格の示し方など、考査で聞かれそうな箇所に印を付ける
  4. 広告主の表記ルール(商品名の正式表記、登録商標、価格の示し方、注釈の文言)を開いて、表記を見比べる
  5. 過去の考査の指摘の表を検索し、似た表現で指摘を受けたことがないかを探す
  6. 気づいた点を、根拠と直しの案を添えて制作の担当にメールで返す
  7. 直った原稿を確かめ、裏付けの資料をそろえて放送局へ入稿する
導入後(After)
  1. 人制作の担当が、CMの原稿を所定のフォルダに置き、案件管理の表に広告主・商品・放送局・尺を入れる
  2. 自動原稿が置かれたことを検知し、原稿をナレーション・スーパー・映像の説明の行に分ける
  3. 自動広告主の表記ルールのうち、機械的に決まるもの(商品名の正式表記、登録商標の記号、価格の示し方の型)をプログラムで照合する
  4. 自動過去の考査の指摘の記録から、同じ商品分野・同じ表現の型のものを引く
  5. 自動Azure OpenAI が原稿を放送基準・過去の指摘・広告主の表記ルールに照らし、指摘、根拠、直しの案、考査で聞かれそうな裏付けの資料を返す
  6. 自動プログラムが、指摘の引用が原稿に実在するか、根拠の番号が実在するかを照合する
  7. 人考査対応の担当が指摘の一覧を読み、採る・直す・外すを選ぶ
  8. 人採った指摘を制作の担当へ返し、広告主のルールに当たるものは広告主と相談する
  9. 人直った原稿と裏付けの資料をそろえて放送局へ入稿し、考査の結果を記録に足す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 制作の担当が、CMの原稿(ナレーション、スーパー、映像の説明)を共有フォルダに置く
  2. 考査対応の担当が原稿を開き、ナレーションとスーパーを1行ずつ読む
  3. 最大級の表現、効能効果の言い方、比較の言い方、価格の示し方など、考査で聞かれそうな箇所に印を付ける
  4. 広告主の表記ルール(商品名の正式表記、登録商標、価格の示し方、注釈の文言)を開いて、表記を見比べる
  5. 過去の考査の指摘の表を検索し、似た表現で指摘を受けたことがないかを探す
  6. 気づいた点を、根拠と直しの案を添えて制作の担当にメールで返す
  7. 直った原稿を確かめ、裏付けの資料をそろえて放送局へ入稿する

(a)過去の指摘を探しきれない。 指摘の表は数年分で千行を超え、書き方もばらばらです。「売上No.1」で検索しても、「販売数第1位」で記録された行は出てきません。 探しきれなかった指摘を、別の局でまた受けることになります。

(b)担当者によって見る深さが違う。 健康食品の原稿で効能効果の言い方に敏感な担当もいれば、不動産の原稿で価格の示し方に詳しい担当もいます。誰が見たかで、入稿前に拾える指摘が変わります。 差し戻しを受けてから気づくのは、その担当の得意でない分野です。

(c)表記ルールの確認が漏れる。 尺違いや局ごとの差し替えの版は、元の原稿から一部を直して作ります。直した箇所の周りだけ見て、商品名の表記や注釈の文言が古い版のまま残っていることがあります。

(d)差し戻しは入稿の遅れになる。 考査の差し戻しを受けると、原稿を直し、広告主の確認を取り、映像やナレーションを直すこともあります。放送開始が迫った時期の差し戻しは、キャンペーンの開始そのものを遅らせかねません。

  1. 【人】 制作の担当が、CMの原稿を所定のフォルダに置き、案件管理の表に広告主・商品・放送局・尺を入れる
  2. 【自動】 原稿が置かれたことを検知し、原稿をナレーション・スーパー・映像の説明の行に分ける
  3. 【自動】 広告主の表記ルールのうち、機械的に決まるもの(商品名の正式表記、登録商標の記号、価格の示し方の型)をプログラムで照合する
  4. 【自動】 過去の考査の指摘の記録から、同じ商品分野・同じ表現の型のものを引く
  5. 【自動】 Azure OpenAI が原稿を放送基準・過去の指摘・広告主の表記ルールに照らし、指摘、根拠、直しの案、考査で聞かれそうな裏付けの資料を返す
  6. 【自動】 プログラムが、指摘の引用が原稿に実在するか、根拠の番号が実在するかを照合する
  7. 【人】 考査対応の担当が指摘の一覧を読み、採る・直す・外すを選ぶ
  8. 【人】 採った指摘を制作の担当へ返し、広告主のルールに当たるものは広告主と相談する
  9. 【人】 直った原稿と裏付けの資料をそろえて放送局へ入稿し、考査の結果を記録に足す

9番目の「考査の結果を記録に足す」が、この構成を育てる段です。 局から受けた指摘を決まった形で記録に入れるたびに、4番目で引ける過去の指摘が増えます。記録の書き方がそろうほど、次の原稿の校正が当たるようになります。

3番目をプログラムに置いているのも、意図してのことです。 商品名の正式表記や登録商標の記号は、辞書と照合すれば答えが一つに決まります。AIに任せると、正しい表記を別の言い方に直す失敗が混ざります。

02今回想定するシステム構成

構成図
原稿(Word/PDF)+案件管理の表(広告主・商品・局・尺)
   │
   ▼【トリガー】所定のフォルダへの原稿の保存
Azure Functions
   ├──▶ 原稿をナレーション・スーパー・映像の説明の行に分ける
   ├──▶ 広告主の表記ルールの機械的な照合(辞書)
   └──▶ 過去の考査の指摘の記録から、商品分野・表現の型で引く
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)
   │   ① 放送基準に照らした指摘    ② 過去の指摘と同じ型の表現
   │   ③ 広告主の表記ルール        ④ 考査で聞かれそうな裏付けの資料
   ▼
Azure Functions ── 引用と根拠の番号の照合、指摘の一覧の作成
   ▼
【考査対応の担当が採否を選ぶ】
   ▼
制作の担当へ返す/広告主と相談/放送局へ入稿 → 考査の結果を記録へ
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Azure Functions(原稿の分割、表記の照合、過去の指摘の抽出、照合)Azure Logic Apps
保管SharePoint(原稿、指摘の一覧、採否の記録、考査の結果の記録)社内のファイルサーバー
案件管理既存の案件管理の表(広告主・商品・局・尺)既存の業務システム

案件管理の表と原稿の共有フォルダは、新しく足すものではありません。 この構成は原稿を読むだけで、原稿そのものは書き換えません。 直すのは制作の担当で、広告主の確認も人が取ります。

放送基準は、民放連のページで公開されている版を使います。 公式のページでは2023年5月24日改正・2024年4月1日施行とされ、広告に関する規定は第13章「広告の責任」から第18章「広告の時間基準」までに並んでいます。条文には番号が付いているので、指摘の根拠を番号で示せます。 ただし、各局はこれに加えて自局の基準と考査の運用を持っています。放送基準だけを照らせば考査を通るわけではありません。

生成AIを Azure OpenAI にするのは、広告主の未発表の情報を扱うためです。 公式のページでは、プロンプトと出力は他のお客様に提供されず、OpenAI にも提供されず、モデルやサービスの改善に使われないとされています。発売前の商品名やキャンペーンの価格は、広告主から預かった秘密の情報です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

所定のフォルダに原稿が保存されたことを起点にします。 入稿の締切は局ごと・案件ごとにばらばらで、まとめて夜に流すと、締切の当日に置かれた原稿の校正が間に合いません。置かれた原稿から順に、1件ずつ動かします。

保存のたびに Azure Functions が原稿を読み、案件管理の表から広告主・商品・放送局・尺を引きます。案件管理の表に行が無い原稿は、校正を始めずに制作の担当へ戻します。 広告主が分からないと、照らす表記ルールが決まらないからです。

同じ原稿の版が何度も置かれることがあります。 ファイル名と案件の番号で版を区別し、前の版との差分の行には印を付けて指摘の一覧に出します。尺違いや局ごとの差し替えでは、直した行の周りに古い表記が残る失敗が多いからです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
CMの原稿ナレーション、スーパー(テロップ)、映像の説明、尺、版原稿の共有フォルダ
案件の情報広告主、商品、商品分野、放送局、放送の期間案件管理の表
放送基準広告に関する条文(番号付き)民放連の公開している放送基準を条文ごとに分けたもの
過去の考査の指摘局、日付、商品分野、指摘された原文、指摘の要旨、直した後の文言、表現の型考査対応の担当が記録する表
広告主の表記ルール商品名の正式表記、登録商標、価格の示し方、注釈の文言、使ってはいけない言い方広告主から受け取ったルールを項目ごとに分けたもの

質を決めるのは、過去の考査の指摘の記録です。 放送基準の条文は誰でも読めますが、どの局がどの表現にどう反応したかは、自社にしか残っていません。 記録には「表現の型」の列を足し、superlative(最大級)、efficacy(効能効果)、comparison(比較)、price(価格)、testimonial(体験談・証言)、science_claim(調査や学術用語の引用)のような決まった値を入れます。

表現の型の列が無いと、似た指摘を引けません。 「売上No.1」と「販売数第1位」は文字が違っても型は同じ superlative です。型で引けば、言い回しの違う過去の指摘も出てきます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
原稿の本文共有フォルダの Word/PDF校正の対象
広告主・商品・局・尺案件管理の表(案件の番号で引く)照らすルールの選択
放送基準の条文条文ごとに分けた表指摘の根拠
過去の指摘指摘の記録の表を、商品分野と表現の型で絞る同じ型の表現の検出
表記ルール広告主ごとの表表記の照合と指摘の根拠

過去の指摘は、全部をAIに渡しません。 商品分野で絞り、さらに原稿に含まれる表現の型で絞ります。原稿の表現の型は、前段で辞書(「No.1」「第1位」「いちばん」「日本一」「最高」など)に当たった語から決めます。 辞書に当たらない型はAIが拾うので、過去の指摘は同じ商品分野の直近のものを一定の件数だけ足します。

放送基準は、第13章から第18章までの条文と、商品分野に関わる条文だけを渡します。 健康食品の原稿なら第16章を、不動産の原稿なら第17章を必ず入れます。全条文を毎回渡すと、番組の基準の条文を根拠にした的外れな指摘が混ざります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 行への分割 … 原稿をナレーション・スーパー・映像の説明の行に分け、行番号を振ります
  2. 版の差分 … 同じ案件の前の版があれば、変わった行に印を付けます
  3. 表記の機械的な照合 … 広告主の表記ルールの辞書で、商品名の正式表記、登録商標の記号、価格の示し方の型(税込の表示など)を照合します
  4. 表現の型の当たり付け … 最大級・比較・効能効果などの語の辞書に当たった行に、型の印を付けます
  5. 過去の指摘の抽出 … 商品分野と表現の型で、過去の考査の指摘を引きます
  6. 注釈の対応 … スーパーの注釈(「※自社調べ」「※個人の感想です」など)が、どの行の表現に付いているかを対応させます

3番目の結果は、この段階で確定させます。 正式表記と違う商品名は、AIに聞くまでもなく不一致です。AIには「表記の照合の結果」として渡し、同じ点を重ねて指摘させません。

6番目は、テレビの原稿で特に効きます。 「満足度95%」というナレーションに対し、調査の主体・時期・対象を示すスーパーが同じ場面に出ているかを確かめます。注釈がどの行に付いているかが分からないと、AIは注釈の有無を判断できません。

Step5

AIに処理させる

させるのは、原稿の行ごとに、3種類の根拠に照らした指摘の候補を挙げ、直しの案と、考査で求められそうな裏付けの資料を付けることです。

見るもの判定の仕方判断できないときの扱い
最大級またはこれに類する表現放送基準(124)、医薬品・化粧品は(131)。過去の指摘の同じ型裏付けの有無が原稿から分からなければ needs_evidence
効能効果の言い方医薬品・化粧品は(132)、健康食品は(136)商品の区分(医薬品か健康食品か)が分からなければ unclear
他を誹謗・排斥する表現放送基準(101)比較の対象が特定できなければ unclear
体験談・証言放送基準(102)。「個人の感想」の注釈の有無証言者の実在が原稿から分からなければ needs_evidence
調査・学術用語の引用放送基準(127)。注釈の有無と中身調査の中身が分からなければ needs_evidence
誤認させる表現放送基準(122)。価格・期間・条件の示し方条件の全体が原稿に無ければ unclear
広告主の表記ルール機械的に照合できなかった言い回しのルールルールに無い表記は指摘しない

needs_evidence が、この構成でいちばん大事な区別です。 「No.1」や「満足度95%」は、裏付けの資料があれば表現として使えることもある、というのが考査の実際です。AIに裏付けの有無は分かりません。 「表現を変える」と「資料をそろえる」のどちらにするかは人が決めるので、AIはどんな資料を聞かれそうかを挙げるところまでにします。

させないこと理由
考査を通るかどうかの判断局ごとに判断が違い、決めるのは放送局
原稿全体の書き直し原稿は広告主と制作が合意したもの。直すのは制作の担当
裏付けの資料があるかの推測有無は広告主に確かめる。推測で「問題なし」にしない
法令違反かどうかの断定法令の当てはめは法務・広告主の判断
表記の照合の重ねての指摘プログラムで確定させた。重ねると一覧が二重になる

3行目がいちばん起きやすい失敗です。 「No.1」の行に「調査に基づく表示であれば問題ありません」と書かれると、担当は資料を確かめないまま通してしまいます。AIの出力に「問題ありません」と書かせない指示を、プロンプトに入れます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは広告会社の考査対応の担当として、放送局へ入稿する前の
CMの原稿を校正する立場です。
放送してよいかの判断はしないでください。それは放送局の考査が決めます。
あなたの仕事は、考査で指摘されそうな箇所と、広告主の表記ルールと
違う箇所を、根拠を付けて挙げることです。

【根拠の種類】
- broadcast_standard ... 放送基準の条文(番号で示す)
- past_finding ......... 過去の考査の指摘(記録の番号で示す)
- client_rule .......... 広告主の表記ルール(ルールの番号で示す)

【status の選び方】
- revise ......... 表現を直したほうがよい
- needs_evidence . 裏付けの資料があれば使える可能性がある。資料の確認が要る
- unclear ........ 商品の区分や条件が原稿から分からず、判断がつかない
迷ったときは unclear を選んでください。

【厳守事項】
- 指摘には、根拠の種類と番号を必ず付けてください。
  渡した条文・記録・ルールに無い根拠で指摘しないでください。
- quote には、原稿の該当する行の文言をそのまま写し、line_no を付けてください。
- suggestion は、その行の最小の直しにしてください。
  原稿全体の書き直しや、別の訴求の提案はしないでください。
- 裏付けの資料があるかどうかを推測しないでください。
  「問題ありません」「通ります」と書かないでください。
- needs_evidence のときは、考査で求められそうな資料を evidence_needed に
  具体的に書いてください(調査の主体・時期・対象・方法など)。
- 法令に違反するかどうかを断定しないでください。
- 【表記の照合の結果】にある点は、重ねて指摘しないでください。
- 指摘が無い行には、何も作らないでください。

【案件の情報】{case_info}
【放送基準の条文】{standards}
【過去の考査の指摘】{past_findings}
【広告主の表記ルール】{client_rules}
【表記の照合の結果】{dictionary_checks}
【原稿(行番号付き)】{script_lines}

「問題ありません」と書かせない指示を独立させているのは、それが一番危ない出力だからです。 指摘が無い行に何も書かないのと、「問題ない」と書くのとでは意味が違います。前者は「見つからなかった」、後者は「確かめた」に読めます。

evidence_needed を具体的に書かせるのは、広告主への確認を一度で済ませるためです。 「裏付けの資料を確認してください」だけでは、広告主から届くのは調査の結果の数字だけで、調査の時期や対象が抜けます。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。

{
  "case_id": "",
  "script_version": "",
  "findings": [
    {
      "line_no": 0,
      "line_type": "narration | super | visual",
      "quote": "",
      "expression_type": "superlative | efficacy | comparison | testimonial | science_claim | price | other",
      "status": "revise | needs_evidence | unclear",
      "basis_type": "broadcast_standard | past_finding | client_rule",
      "basis_ref": "",
      "suggestion": "",
      "evidence_needed": "",
      "reason": ""
    }
  ]
}

1つ目の理由は、根拠の種類で並べ替えられることです。 broadcast_standard の指摘は直さなければ考査で止まる可能性が高く、client_rule は広告主と相談して決めるもので、担当が読む順番と、返す相手が違います。

2つ目は、照合ができることです。 quote と line_no はプログラムが原稿と突き合わせ、basis_ref は渡した条文・記録・ルールの番号に実在するかを確かめます。どちらかが合わない指摘は一覧に出しません。 存在しない条文番号を根拠にした指摘を、ここで止めます。

3つ目は、expression_type で考査の傾向を数えられることです。 月ごとに、どの型の指摘が採られ、考査でどの型の差し戻しを受けたかを数えれば、制作の担当向けの注意書きに何を書くべきかが分かります。

構造化出力のスキーマでは、公式のページにあるとおりすべての項目を必須にし、additionalProperties: false を設定します。 evidence_needed が要らない指摘では空の文字列を返させ、項目そのものは省かせません。

指摘の一覧は、担当が次の形で読みます。

【案件】〇〇食品 青汁 30秒 テレビ 第3版
 行12 ナレーション「飲み始めて、朝がすっきり」
   型:efficacy / status:revise / 根拠:放送基準(136)
   案:「毎朝の一杯を、続けやすく」
 行15 スーパー「愛用者満足度95%」
   型:science_claim / status:needs_evidence / 根拠:過去の指摘 K-0412
   要る資料:調査の主体・時期・対象者数・設問、「愛用者」の定義
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
原稿の共有フォルダファイルの保存の検知と読み取り原稿の取得
案件管理の表読み取り広告主・商品・局・尺
Azure OpenAIAPI呼び出し(構造化出力)指摘、根拠、直しの案、要る資料
SharePointファイルの保存指摘の一覧、採否の記録、考査の結果の記録
メール・チャット通知指摘の一覧ができたことを考査対応の担当へ知らせる

原稿には書き込みません。 指摘を原稿のコメントとして書き込む作り方もありますが、採否を選ぶ前の指摘が制作の担当や広告主に見えてしまいます。 指摘の一覧は別のファイルにし、採ったものだけを担当が返します。

放送局への入稿は、この構成の外です。 入稿の経路や形式は局ごとに決まっており、この構成は入稿の手前までを受け持ちます。 考査の結果は、担当が記録の表に入れます。

Step9

人が確認する

考査対応の担当が、指摘の一覧を読んで採否を選びます。 原稿を最初から読むのではなく、指摘ごとに原稿の行と根拠を読みます。

  1. broadcast_standard の revise を先に見る … 健康食品の効能効果のような指摘です。直しの案が訴求を変えすぎていないかも見ます
  2. needs_evidence は広告主に資料を求めるかを決める … evidence_needed を読み、資料があれば表現を残し、無ければ表現を変えます
  3. client_rule は広告主の担当に確かめる … ルールの解釈が分かれるものは、広告主の判断に従います
  4. unclear は商品の区分や条件を確かめる … 医薬品か健康食品かで、使える言い方が変わります
  5. 考査の結果を記録に入れる … 局から受けた指摘を、表現の型・原文・直した後の文言とともに記録します

5番目を省かないでください。 この構成の精度は、過去の指摘の記録の厚さで決まります。差し戻しを受けた指摘も、通った表現も、決まった形で残します。

目標は、180件をならして1件8分です。 指摘の少ないラジオの読み原稿は数分で終わり、健康食品や不動産の原稿に時間を使います。

Step10

例外に対処する

起きること対応
案件管理の表に行が無い原稿校正を始めず、制作の担当へ戻す
原稿が画像だけのPDFで文字が取れない文字の入った版を求める。取れないまま進めない
商品の区分(医薬品・医薬部外品・化粧品・健康食品)が分からない効能効果の指摘をすべて unclear にし、担当が広告主に確かめる
広告主の表記ルールが届いていない放送基準と過去の指摘だけで校正し、一覧に「表記ルール未登録」と表示
quote や basis_ref が照合できない指摘を一覧に出さず、件数だけを記録する
同じ案件の版が短い間に何度も置かれる最新の版だけを校正し、古い版の処理は止める
局ごとに扱いの違う表現過去の指摘の局名を一覧に出し、入稿先の局の記録を優先して読む
Azure OpenAI が応答しない表記の照合と過去の指摘の抽出の結果だけで一覧を作り、再実行する

上から3行目までが大半を占めます。 どれもAIの問題ではなく、案件の情報と原稿の受け渡しの問題です。 商品の区分を案件管理の表の列にしておくだけで、unclear はかなり減ります。

Step11

記録を残す

  • 原稿の各版と、校正に使った放送基準の版・表記ルールの版
  • 表記の照合の結果と、引いた過去の指摘の一覧
  • AIへの入力と出力のJSONの全文
  • 担当の採否の記録 … どの指摘を採り、直し、外したか、その理由
  • 広告主に求めた資料と、届いた資料の対応
  • 考査の結果 … 局、日付、指摘の有無、指摘の要旨、表現の型、直した後の文言

最後の行が、次の校正の材料になります。 考査の結果を入れるときに表現の型を付けておけば、次に同じ型の表現が出たとき、局ごとの反応まで含めて引けます。

採否の記録で、外された指摘が多い型を月ごとに見ます。 外される型は、AIの読み方か、渡している条文の範囲に問題があります。

04実装レベルの3段階

最小構成:条文と表記ルールと原稿を手でAIの画面に貼り、指摘を出させる / 1件ごとの放送基準と表記ルールの校正
半自動化:上記+原稿の保存を起点に動かし、表記の照合と指摘の一覧を書き出す / 校正と一覧化
本格構成:上記+過去の考査の指摘を表現の型で引き、引用と根拠を照合し、考査の結果を記録に戻す / 校正の全体と、指摘の記録の蓄積

最小構成では件数がさばけず、過去の指摘も使えません。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件20分が12分程度になります。 読む作業と表記の照合は自動になりますが、過去の指摘の検索が手作業で残ります。本格構成で8分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、過去の指摘を表現の型で引く作業が、手作業ではいちばん探しきれない部分だからです。 段階を飛ばさないでください。 本格構成に進む前に、過去の指摘の記録に表現の型の列を足し、数年分の行に型を付け直す作業が要ります。 この作業を半自動化の期間に進めておきます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
180 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
8 分
現在  180件 × 20分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 180件 × 8分 ÷ 60 = 24 時間/月
月間削減時間
36h
削減率
60%
年間削減時間
432h
年間金額換算(時間単価3,500円)
151万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 複数の広告主のテレビ・ラジオのCMを扱い、尺違い・局ごとの差し替え・キャンペーンの期間違いで、毎月百件を超える原稿を放送局へ入稿している広告会社。放送局の考査で差し戻しを受けた表現が担当者の記憶にしか残っておらず、同じ指摘を別の案件でまた受けている場合。広告主ごとに商品名の表記・価格の示し方・注釈の文言の決まりがあり、確認が担当者任せになっている場合。
向いていない
  1. 扱う広告主が数社で、CMの本数が月に数本しかない場合。過去の考査の指摘が記録として残っておらず、照らす相手が放送基準の条文しかない場合(まず指摘の記録を作るのが先です)。なお、放送してよいかの判断は放送局の考査が行うもので、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去半年に考査で差し戻しを受けた原稿から20件、差し戻しの無かった原稿から10件を選ぶ
  2. 放送基準の第13章から第18章までの条文を、番号付きで1つの文書にまとめる
  3. 社内で利用を認められた Azure OpenAI の画面に、条文、その広告主の表記ルール、原稿1件を貼り付ける
  4. 「放送基準の条文と表記ルールに照らして、考査で指摘されそうな行を挙げてください。根拠の条文の番号を付け、直しの案は行ごとの最小の直しにしてください。通るかどうかは判断しないでください。裏付けが要るものは、要る資料を書いてください」と指示する
  5. 出てきた指摘を、実際の考査の指摘と突き合わせる

30件は必ずやってください。 ワークフローを組む前に、実際に差し戻しを受けた箇所を入稿前に拾えたかを確かめます。

出てきた内容判断
差し戻しを受けた箇所の多くを拾えた過去の指摘の記録の整理と、連携に進む
「問題ありません」と書かれた行がある指示の書き方で直る。書かせない指示を独立させる
局ごとの細かい扱いが拾えない過去の指摘の記録が先。 放送基準だけでは足りない

3行目が出るのは当然です。 局ごとの扱いは、放送基準の条文には書かれていません。それを埋めるのが自社の考査の記録で、この試験はその記録の価値を確かめる試験でもあります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
「問題ありません」と書かれた行を通してしまう書かせない指示を独立させ、出力に含まれたら一覧で警告する
存在しない条文番号を根拠にするbasis_ref を渡した条文の番号と照合し、合わないものを外す
直しの案が訴求そのものを変える行ごとの最小の直しと明記する
過去の指摘を言い回しの違いで引けない記録に表現の型の列を足し、型で引く
注釈のスーパーがどの表現に付くか分からない前処理で行と注釈を対応させる
商品の区分が分からず効能効果の指摘が外れる案件管理の表に商品の区分の列を足す
尺違いの版に古い表記が残る版の差分の行に印を付け、全行を照合し直す
全条文を渡して番組の条文で指摘される第13章から第18章と、商品分野の条文に絞る
指摘が広告主に先に見えてしまう原稿には書き込まず、別の一覧にする
考査の結果が記録に戻らない入稿の手順に、結果の記録を入れる

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、AIが「確かめた」ように見える出力を作ったときに起きます。確かめたのではなく、候補を挙げただけだと分かる出力の形にしておくことで、担当の確認が省かれなくなります。

最後の行は、半年たつと効いてきます。 考査の結果が戻らないと、過去の指摘の記録は導入した時点のまま止まり、新しく扱い始めた商品分野では何も引けなくなります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 広告主の発売前の商品名、キャンペーンの価格と期間、調査の結果、出演者の名前、考査でのやり取りです。

  1. 広告主との契約で、外部のサービスで扱ってよいかを確かめる … 広告主の未発表の情報を預かっています。Azure OpenAI で処理することを、広告主との取り決めで確認してから始めます
  2. 処理の地域を決めておく … 公式のページでは、グローバルやデータ ゾーンのデプロイの種類を使う場合を除き、プロンプトと応答は指定した地域内で処理されるとされています。どのデプロイの種類を使うかを、社内の取り決めに書きます
  3. 考査の判断を代替しない … この構成が出すのは指摘の候補です。放送してよいかを決めるのは放送局で、広告の内容に責任を持つのは広告主です
  4. 法令の当てはめを担当に任せきりにしない … 健康食品や医薬品、不動産の広告は、放送基準の前に法令の規制があります。unclear が続く商品分野は、広告主の法務や専門家に確認する流れを作ります
  5. 局とのやり取りの記録の扱い … 過去の考査の指摘は、局とのやり取りの記録です。社外に出す資料に、局名と指摘の中身をそのまま載せないでください
  6. 出演者の情報を入力に混ぜない … 出演者の契約条件や連絡先は、校正に要りません

誤りが起きた場合のリスクは、考査で止まる表現を見落として入稿することと、裏付けを確かめずに表現を残すことの2つです。 前者は過去の指摘の記録を厚くすることで、後者は needs_evidence を「問題なし」と混ぜない設計で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:過去の考査の指摘を整える

過去2年分の考査の指摘の記録に、表現の型の列を足します。全部を一度に付け直す必要はありません。 差し戻しの多い健康食品・化粧品・不動産の分野から付けます。

2週目:30件で試す

差し戻しを受けた原稿20件と受けなかった原稿10件で、社内で認められた Azure OpenAI の画面で校正させます。実際の差し戻しの箇所を拾えたか、「問題ありません」と書かれた行が無いかを最優先で見ます。

3週目:原稿の様式と案件の情報をそろえる

制作の担当と、ナレーション・スーパー・映像の説明を分けた原稿の様式を決めます。案件管理の表に、商品の区分の列を足します。 広告主の表記ルールを、項目ごとの表に分けます。

4週目:保存から一覧までをつなぐ

Azure Functions で原稿の保存を検知し、行への分割、表記の照合、AIの校正、指摘の一覧までを作ります。この時点では過去の指摘を引かず、放送基準と表記ルールだけで一覧を作ります。

2か月目: 過去の指摘を表現の型で引く処理と、引用・根拠の照合を足します。3か月目以降: 入稿の手順に考査の結果の記録を入れ、表現の型ごとの採られた割合と差し戻しの件数を毎月見ます。1件20分が何分になったかを実測し、差し戻しを受ける型が入稿前の指摘に先回りされるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
放送基準が2023年5月24日改正・2024年4月1日施行であること。広告は真実を伝えるものでなければならないこと(89)、他を誹謗・排斥・中傷してはならないこと(101)、虚偽の証言や証言者の明らかでないものは取り扱わないこと(102)、視聴者に錯誤を起こさせる表現の禁止(122)、最大級またはこれに類する表現の原則禁止(124)、統計・学術用語・文献を引用して実際以上に科学的と思わせる表現の禁止(127)、医薬品・化粧品の効能効果の表現が法令の範囲を超えてはならないこと(131)(132)、健康食品で医薬品的な効能・効果を表現してはならないこと(136)。広告に関する規定が第13章から第18章にあること日本民間放送連盟: 放送基準2026-10-08
構造化出力が指定した JSON スキーマに従わせる機能で、Chat Completions API では response_format、Responses API では text.format でスキーマを定義すること。すべてのフィールドを必須にし、additionalProperties: false を設定することMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-08
プロンプトと出力が他のお客様や OpenAI に提供されず、モデルやサービスの改善に使われないこと。グローバルやデータ ゾーンのデプロイの種類を除き、指定した地域内で処理されることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-08

各放送局は、放送基準に加えて自局の基準と考査の運用を持っています。 本記事は民放連の放送基準で確認できた範囲だけを扱っています。法令の当てはめは、広告主と専門家に確認してください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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