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銀行の継続的顧客管理で顧客から返送された確認書の回答を、登録情報・取引の状況と照らして判定し、追加の確認が要る顧客と理由を担当へ出す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

継続的顧客管理で顧客から返送された確認書の回答を、登録情報と取引の集計に照らして項目ごとに判定し、追加の確認が要る顧客と、その理由・確認する質問の案を担当へ出します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Power Automate
対象業界
保険/金融
対象部門
法務
対象業務
内容確認・チェック/分類・仕分け
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/属人化している
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
180h/月
AI導入後
60h/月
想定削減
67%
年間削減
1,440h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 顧客管理のシステムで、点検に回った回答の一覧を開く
  2. 1件ずつ、回答と登録情報を見比べる
  3. 情報系のデータで、その顧客の直近の取引の明細を開き、入出金の様子を見る
  4. 回答と取引の様子が合っているかを判断する
  5. 追加の確認が要ると判断したら、理由と確認する事項を書いて営業店へ回す
  6. 要らないと判断したら、登録情報を更新して完了にする
  7. 点検の結果を表に1行残す
導入後(After)
  1. 自動毎朝、前日までに返送された回答のうち点検に回るものを、顧客管理のシステムから取り出す
  2. 自動情報系のデータで、その顧客の取引を決まった項目で集計する
  3. 自動中継の処理が、氏名・口座番号を記号に置き換え、回答・登録情報・取引の集計を項目ごとに並べる
  4. 自動生成AIが、項目ごとに `consistent`/`updated`/`inconsistent`/`insufficient` を付け、理由と確認する質問の案を返す
  5. 自動中継の処理が、理由に書かれた数字が集計と一致するか、禁じた理由が使われていないかを照合する
  6. 自動項目ごとの判定から、`no_followup`/`update_only`/`followup` を規則で決める
  7. 人担当が、`followup` と、照合で引っかかったものを読み、追加確認に回すかを決める
  8. 人担当が、`update_only` を一覧で確かめ、登録情報を更新する
  9. 人追加確認に回すものは、理由と質問の案を直して営業店へ回す
  10. 人コンプライアンス統括部が、週に1回、`no_followup` から抜き取って点検する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 顧客管理のシステムで、点検に回った回答の一覧を開く
  2. 1件ずつ、回答と登録情報を見比べる
  3. 情報系のデータで、その顧客の直近の取引の明細を開き、入出金の様子を見る
  4. 回答と取引の様子が合っているかを判断する
  5. 追加の確認が要ると判断したら、理由と確認する事項を書いて営業店へ回す
  6. 要らないと判断したら、登録情報を更新して完了にする
  7. 点検の結果を表に1行残す

(a)1件ごとに明細を見に行く。 3番目で、担当は明細の画面を開いて数か月分をスクロールし、入金元がどれくらいあるか、海外送金があるかを目で数えています。 12分のうち、ここがいちばん長い時間です。

(b)追加確認に回す基準が担当によって違う。 ある担当は「職業が学生で、月の入金が多い」を回し、別の担当は回しません。同じ回答でも、誰が点検したかで結果が変わります。 コンプライアンス統括部が後から見ても、なぜ回したのか、なぜ回さなかったのかが分かりません。

(c)理由が営業店に伝わらない。 5番目の理由は「取引の状況を確認してください」の一言になりがちで、営業店は何を顧客に聞けばいいのか分からないまま電話をかけます。 顧客は同じ説明を二度求められることになります。

(d)更新で済むものまで回る。 転職や引っ越しで回答が変わっただけの顧客が、「登録と違う」という理由で追加確認に回ることがあります。 営業店の手間と、顧客の不信感だけが増えます。

  1. 【自動】 毎朝、前日までに返送された回答のうち点検に回るものを、顧客管理のシステムから取り出す
  2. 【自動】 情報系のデータで、その顧客の取引を決まった項目で集計する
  3. 【自動】 中継の処理が、氏名・口座番号を記号に置き換え、回答・登録情報・取引の集計を項目ごとに並べる
  4. 【自動】 生成AIが、項目ごとに consistent/updated/inconsistent/insufficient を付け、理由と確認する質問の案を返す
  5. 【自動】 中継の処理が、理由に書かれた数字が集計と一致するか、禁じた理由が使われていないかを照合する
  6. 【自動】 項目ごとの判定から、no_followup/update_only/followup を規則で決める
  7. 【人】 担当が、followup と、照合で引っかかったものを読み、追加確認に回すかを決める
  8. 【人】 担当が、update_only を一覧で確かめ、登録情報を更新する
  9. 【人】 追加確認に回すものは、理由と質問の案を直して営業店へ回す
  10. 【人】 コンプライアンス統括部が、週に1回、no_followup から抜き取って点検する

7番目が、この設計の分かれ目です。 追加確認に回すかを決めるのは担当で、AIの判定は回す候補とその理由を示すところまでです。 担当が読むのは理由の組(回答と数字)で、明細を開くのは、理由に納得できないときだけにします。

6番目を規則で決めているのも、意図してのことです。 どの判定の組み合わせを追加確認に回すかは、行内の継続的顧客管理の方針で決まり、後から変わります。 AIには項目ごとの事実の判定をさせ、回すかどうかの線は規則の側に置きます。

02今回想定するシステム構成

構成図
【入力】点検に回った確認書の回答(顧客管理のシステム)
   ▼【トリガー】毎朝、前日までの回答を取り出す
情報系のデータ ── 顧客ごとに取引を決まった項目で集計
   ▼
中継の処理(Azure Functions)
   ├── 氏名・口座番号を記号に置き換える
   ├── 回答・登録情報・取引の集計を項目ごとに並べる
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry。構造化出力)
   │  項目ごとの判定/理由(回答と数字の組)/確認する質問の案
   ▼
中継の処理 ── 理由の数字と集計の照合、禁じた理由の検出、規則で振り分け
   ▼
【人】担当が followup と照合の引っかかりを読み、追加確認に回すかを決める
   ├──▶ 営業店へ(理由と質問)
   └──▶ 登録情報の更新
【人】コンプライアンス統括部が no_followup を抜き取って点検
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Azure Functions(記号の置き換え、項目の並べ替え、照合、規則での振り分け)Power Automate
集計行内の情報系のデータベース(顧客ごとの取引の集計)取引モニタリングのシステムの集計機能
画面点検画面(行内のWebアプリ)顧客管理のシステムの画面に組み込む

顧客管理のシステムと勘定系には、この構成から書き込みません。 登録情報の更新と営業店への回付は、担当が既存の画面で行います。顧客リスク評価の格付も、この構成からは変えません。

生成AIは、Azure OpenAI の構造化出力で呼びます。 Microsoft Learn では、構造化出力を使うとモデルは推論 API 呼び出しの一部として指定した JSON スキーマの定義に従うとされ、有効な JSON は保証するがスキーマへの厳密な準拠はできなかった以前の JSON モードとは対照的だと説明されています。項目ごとの判定と理由の組を、規則で読める形で受け取るために使います。

金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(令和8年3月31日)は、継続的な顧客管理として、 調査の対象及び頻度を含む方針を決めて実施すること、調査の過程での照会や調査結果を適切に管理し、関係する役職員と共有すること、確認の頻度を顧客のリスクに応じて異にすること、確認した顧客情報等を踏まえて顧客リスク評価を見直すことを挙げています。この構成は、そのうち「確認した顧客情報を読み、次に何を確かめるかを決める」部分の手間を受け持ちます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎朝7時に、前日までに返送された回答のうち点検に回るものを取り出します。 回答は日中に少しずつ届きますが、取引の集計は前日の締めの後のデータで行うので、1日1回にそろえます。

取り出す条件は、今の点検の対象と同じにします。 回答が登録と違うもの、自由記入があるもの、顧客リスク評価が中以上のもの、の3つです。登録から変わりのない低リスクの回答は、これまでどおり機械で完了させます。

点検の期日も、取り出すときに付けます。 金融庁のFAQは、継続的顧客管理において、顧客リスク評価の見直し手続に係る期日管理や期日までに見直しができない顧客の管理が重要であるとしています。回答の受付日から決まった日数で期日を付け、点検画面で期日の近いものを上に並べます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
確認書の回答職業、勤務先、取引の目的、主な入金の出どころ、年収の帯、海外送金の予定と送金先の国、自由記入顧客管理のシステム
登録情報前回までの職業・勤務先・取引の目的・年収の帯、口座開設の時期、顧客リスク評価顧客管理のシステム
取引の集計直近6か月の月ごとの入出金の件数、金額の帯、入金元の数、現金の入出金の割合、海外送金の件数と送金先の国情報系のデータ
前回の点検の結果前回の判定、追加確認の有無と結果点検結果の表
判定の規則と質問の一覧項目ごとの判定の観点、使ってはいけない理由、営業店で使う質問の定型コンプライアンス統括部が用意する一覧

質を決めるのは、取引の集計の項目です。 集計の項目が少ないと、回答と照らす数字が無く、ほとんどの回答が「判断できない」になります。 逆に明細をそのまま渡すと、生成AIが数え間違えます。項目を決めて機械で集計することが、この構成の土台です。

取引の集計は、たとえば次の形で渡します。

項目値
月ごとの入金の件数(直近6か月)3, 2, 3, 4, 2, 3
月ごとの入金の金額の帯20〜30万円が中心
入金元の数(6か月)2
現金の入出金の割合出金の約6割が現金
海外送金の件数(6か月)0
口座開設からの年数4年

金額は帯で渡します。 1円単位の金額は判定に要らず、生成AIへ送る情報を減らせます。 帯の区切りはコンプライアンス統括部が決め、すべての顧客で同じにします。

顧客リスク評価が高の顧客には、確認書の項目を足しています。 金融庁のFAQは、高リスク顧客について、通常の確認項目に加えて例えば1年ごとに、資産・収入の状況、資金源、商流等を確認することなどを挙げています。足した項目も同じ形で項目ごとに並べ、高リスクの顧客だけ判定の項目が増えるようにします。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
回答と登録情報顧客管理のシステムの出力を、中継の処理が受け取る判定の対象
取引の集計情報系のデータベースで、決まった問い合わせを毎朝流す回答と照らす数字
前回の点検の結果点検結果の表を、顧客の番号で引く前回と同じ食い違いが続いているか
判定の規則と質問の一覧コンプライアンス統括部の一覧指示と照合

集計の問い合わせは、コンプライアンス統括部と情報系の担当が一緒に作り、版を付けて管理します。 集計の定義が変わると、同じ回答でも判定が変わります。 どの版の集計で判定したかを、判定の結果と一緒に残します。

前回の点検の結果は、前回の判定の要約だけを渡します。 前回「追加確認の結果、取引の目的は家族からの仕送りと確認」となっていれば、今回も同じ入金元の数を食い違いとして挙げずに済みます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 記号への置き換え … 氏名を {NAME}、口座番号を {ACCT}、勤務先の名称を {EMP1} に置き換えます
  2. 項目の並べ替え … 回答・登録情報・集計を、職業・取引の目的・入金の出どころ・海外送金の4つの項目ごとに並べます
  3. 登録との差分の付与 … 回答と登録が違う項目に、機械で「変更あり」の印を付けます
  4. 自由記入の分離 … 自由記入は回答の項目と分けて渡し、項目の回答を上書きさせません
  5. 集計の欠けの確認 … 集計が取れなかった項目は、空ではなく「集計なし」と明示します
  6. 国籍・在留資格の扱い … 回答にあっても、判定の入力からは外します

6番目を軽く見ないでください。 国や地域に係るリスクは、行内の顧客リスク評価の仕組みで、定めた方法で評価済みです。 生成AIに国籍を渡すと、取引と回答に食い違いが無くても、属性だけを理由に追加確認を勧める判定が混ざります。 海外送金の送金先の国は取引の事実なので渡しますが、理由にできるのは回答との食い違いだけにします。

5番目は、「数字が無い」と「数字が0」を分けるためです。 海外送金の集計が取れなかった顧客を0件として渡すと、「海外送金の予定あり」と回答した顧客が食い違いに見えます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、4つの項目それぞれについて、回答と登録情報と集計を照らし、判定と理由を書くことです。

判定意味例
consistent回答が登録と同じで、集計とも合う取引の目的が給与の受取で、入金元が勤務先1件
updated回答が登録と違うが、集計と合い、事情の変化として読める職業が会社員から自営業に変わり、入金元が増えた
inconsistent回答と集計が合わない海外送金の予定なしと回答したが、6か月に海外送金が5件
insufficient回答が空、または判断に足りない取引の目的が「その他」で自由記入も無い

updated と inconsistent の境目が、この構成でいちばん大事な判断です。 回答が変わったこと自体は理由になりません。変わった回答が集計と合うかどうかで分けます。合うなら更新で済み、合わないなら確認が要ります。

させないこと理由
疑わしい取引かどうかを判断する届出の判断は行内の所定の手続きで行う
顧客リスク評価を変える・勧める評価の見直しは行内の方針と手続きで行う
取引の制限・謝絶を勧める合理的な理由なく謝絶等を行わないことが求められている
国籍・氏名・年齢を理由にする属性だけを理由にした確認は、顧客の不利益になる
集計に無い数字を作る明細を推測して数えない
回答の意図を推測して補う「生活費」を「家族への仕送り」と読み替えない

3行目は、金融庁のガイドラインの記述に沿っています。 ガイドラインは、自らが定める適切な顧客管理を実施できないと判断した顧客・取引等について、取引の謝絶を行うこと等を含めリスク遮断を図ることの検討を挙げる一方、マネロン・テロ資金供与対策の名目で合理的な理由なく謝絶等を行わないこととしています。生成AIの判定が謝絶の入口にならないよう、出力の選択肢にそもそも入れません。

Step6

指示内容を固定する

あなたは銀行の継続的顧客管理で、顧客から返送された確認書の回答を点検する担当を補助します。
渡すのは、1人の顧客の【回答】【登録情報】【取引の集計】【前回の点検の結果】です。
追加の確認が要るかを決めるのは担当です。あなたは項目ごとの判定と理由を書きます。

【項目】occupation(職業)/purpose(取引の目的)/source(主な入金の出どころ)/
        overseas(海外送金の予定)

【judgment の選び方】
- consistent ..... 回答が登録と同じで、取引の集計とも合う
- updated ........ 回答が登録と違うが、取引の集計と合い、事情の変化として読める
- inconsistent ... 回答と取引の集計が合わない
- insufficient ... 回答が空、または判断に足りない
回答が登録と違うというだけで inconsistent にしないでください。
迷ったときに consistent を選ばないでください。

【厳守事項】
- 理由には、どの回答と、取引の集計のどの数字が合わないのかを、1組ずつ書いてください。
  数字は【取引の集計】に書かれた値をそのまま写してください。計算や推測をしないでください。
- 「集計なし」の項目は、0件として扱わないでください。
- 国籍・氏名・年齢・性別を理由にしないでください。
- 疑わしい取引かどうか、顧客リスク評価を変えるべきか、取引を制限・謝絶すべきかは書かないでください。
- 回答の意図を推測して補わないでください。「生活費」は「生活費」として扱ってください。
- 前回の点検で確認済みの事情があれば、同じ点を inconsistent にせず、その旨を書いてください。
- questions には、営業店が顧客に聞く質問の案を、【質問の一覧】の定型をもとに書いてください。
  顧客を疑っていると受け取られる言い回しは使わないでください。

【回答】{answers}
【登録情報】{profile}
【取引の集計】{aggregates}
【前回の点検の結果】{previous}
【質問の一覧】{question_templates}

「回答が登録と違うというだけで inconsistent にしない」を明記しないと、変更のあった回答がほぼすべて食い違いになります。 第3章の(d)の、更新で済むものまで回る状態がそのまま再現されます。

「迷ったときに consistent を選ばない」は、反対側の失敗を止めるための一文です。 迷うものは insufficient か inconsistent に寄せ、担当の目に入る側に置きます。 見逃しより、担当が読んで戻すほうが安全です。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。

{
  "customer_ref": "{ID1}",
  "items": [
    {
      "item": "occupation | purpose | source | overseas",
      "judgment": "consistent | updated | inconsistent | insufficient",
      "answer_quote": "",
      "data_points": [ { "field": "", "value": "" } ],
      "reason": ""
    }
  ],
  "previous_context_used": false,
  "questions": [ { "item": "", "text": "" } ]
}

1つ目の理由は、data_points で理由の数字を照合できることです。 field は集計の項目名、value はその値です。中継の処理が集計の実際の値と一致するかを確かめ、合わなければその項目を担当に回します。 生成AIが数字を作った場合、ここで見つかります。

2つ目は、項目ごとの判定を規則で読めることです。 振り分けの規則は、たとえば次のとおりです。

振り分け条件
followupinconsistent が1つでもある、または顧客リスク評価が高で insufficient が1つでもある
update_onlyupdated があり、inconsistent と insufficient が無い
no_followupすべて consistent
担当へ回すdata_points の照合が合わない、禁じた理由が検出された

この表はコンプライアンス統括部が決め、版を付けて管理します。 継続的顧客管理の方針が変われば、直すのはこの表だけで、生成AIへの指示は変えません。

3つ目は、questions で営業店に渡す中身がそろうことです。 第3章の(c)の「取引の状況を確認してください」の一言が、項目ごとの具体的な質問に変わります。

構造化出力では、すべてのフィールドを必須にし、additionalProperties: false を設定する必要があります。文字列の pattern などはサポートされないため、data_points の値の形の確認は中継の処理の側で行います。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
顧客管理のシステム毎朝の出力を受け取る回答・登録情報・顧客リスク評価
情報系のデータベース決まった問い合わせで集計顧客ごとの取引の集計
Azure OpenAIAPI呼び出し(構造化出力)項目ごとの判定・理由・質問の案
点検画面中継の処理が書き込む振り分けと理由、期日
点検結果の表担当の決定時に書き込む判定・担当の決定・回付先

禁じた理由の検出は、中継の処理で機械的に行います。 reason の文に、国籍・在留資格・年齢などの語が含まれていれば、その顧客を担当へ回し、判定には使いません。

Step9

人が確認する

追加確認に回すかを決めるのは担当で、読む順番を決めておきます。

  1. 照合で引っかかったものを先に見る … 数字が集計と合わないもの、禁じた理由が出たものです。明細を開いて自分で判断します
  2. followup の理由を読む … 回答と数字の組に納得できるかを見ます。納得できれば、質問の案を直して営業店へ回します
  3. update_only を一覧で確かめる … 更新の内容が回答どおりかを見て、登録情報を更新します
  4. 決定を記録する … 回したか、回さなかったか、その理由を一言残します

4番目の「回さなかった理由」が、後から効いてきます。 ガイドラインは、調査の過程での照会や調査結果を適切に管理し、関係する役職員と共有することを求めています。AIが followup としたのに担当が回さなかった記録は、判定の規則を見直す材料になります。

コンプライアンス統括部は、週に1回、no_followup から20件を抜き取ります。 回答と集計を自分で照らし、見逃しが無いかを確かめます。 見逃しが見つかれば、集計の項目か指示のどちらに原因があるかを分けて直します。

Step10

例外に対処する

起きること対応
取引の集計が取れない(口座の統合直後など)「集計なし」として渡し、判定は担当へ回す
回答の項目がほとんど空insufficient として、営業店からの再送付の候補にする
自由記入に、回答の項目と矛盾する内容がある項目の回答を優先して判定し、自由記入は理由に引用して担当へ回す
data_points の値が集計と合わない判定に使わず、担当が明細を見て判断する
禁じた理由が reason に出た判定に使わず、担当へ回す。指示の見直しの記録に残す
構造化出力が拒否・不完全で返る1回だけ再実行し、続けば担当が従来どおり点検する
長期不稼働の口座点検の対象から外し、行内の別の管理に回す
API が応答しない当日分を翌朝に回し、期日の近いものは担当が手で点検する

7行目は、金融庁のFAQの考え方に沿っています。 FAQは、1年以上不稼働の口座等の長期不稼働口座について、ほかの顧客とは異なる管理が必要となるものの、定期的な情報更新は不要となるとしています。対象から外す条件は、行内の方針で決めてください。

Step11

記録を残す

  • 回答・登録情報・取引の集計(記号に置き換えた後のもの)と、集計の版
  • 生成AIが返したJSONと、照合の結果
  • 振り分けの結果と、そのときの振り分けの規則の版
  • 担当の決定(回した/回さなかった)と、その理由
  • 営業店へ回した理由と質問、営業店からの確認の結果
  • コンプライアンス統括部の抜き取りの結果
  • 記号と元の値の対応表(行内にだけ置く)

集計の版と規則の版を残すのは、後から判定を説明するためです。 検査や内部監査で「なぜこの顧客を追加確認に回さなかったのか」と問われたとき、そのときの集計の定義と規則が残っていなければ、説明できません。

04実装レベルの3段階

最小構成:集計を手で出し、回答と一緒に生成AIの画面に貼って判定させる / 1件ごとの項目の判定
半自動化:上記+毎朝の集計と回答の取り出し、API の呼び出し、判定の一覧化 / 集計・判定・一覧化
本格構成:上記+数字の照合、禁じた理由の検出、規則での振り分け、点検画面、質問の案、抜き取りの支援まで / 点検の振り分けから営業店への回付の準備まで

最小構成では、集計を手で出すので件数がさばけません。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件12分が7分程度になります。 明細を見に行く時間は無くなりますが、判定の一覧から1件ずつ回すかを決め、理由と質問を書く作業が残ります。本格構成で4分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、振り分けと質問の案が、1件ずつの手作業だからです。 半自動化の段階で、2か月は回してください。 その間に、担当が判定を覆した件数を項目ごとに数えると、集計の項目の足りないところと、指示の弱いところが分かれて見えます。 規則での振り分けは、それを見てから決めます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
900 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
4 分
現在  900件 × 12分 ÷ 60 = 180 時間/月
導入後 900件 × 4分 ÷ 60 = 60 時間/月
月間削減時間
120h
削減率
67%
年間削減時間
1,440h
年間金額換算(時間単価3,500円)
504万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 顧客リスク評価に応じて、顧客へ確認書(お取引目的等のご確認)を定期的に送り、毎月数百件以上の回答がWebや郵送で返ってくる地域銀行・信用金庫・信用組合。回答を1件ずつ登録情報と取引の明細に照らして読み、追加の確認が要るかを担当者の経験で決めていて、担当ごとに判断がばらついている場合。取引の集計(入出金の件数・金額の帯・海外送金の有無)を情報系のデータから出せて、行内で Microsoft Azure の利用が認められている場合。
向いていない
  1. 確認書の回答が月に数十件で、担当者が全件を読んでも負担になっていない場合。取引のデータを顧客ごとに集計して渡せず、生成AIに明細そのものを読ませることになる場合。疑わしい取引の届出の要否や、顧客リスク評価の格付そのものを自動で決めたい場合(本記事は追加の確認が要るかの振り分けまでを扱う)。なお、顧客リスク評価の見直し、取引の制限・謝絶、疑わしい取引の届出の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月点検した回答から60件を選ぶ(うち20件は、当時追加確認に回したもの)
  2. 60件それぞれについて、取引の集計を情報系のデータから手で出す(第7章の6項目)
  3. 氏名・口座番号・勤務先を記号に置き換える
  4. 行内で利用が認められた生成AIの画面に、1件ずつ回答・登録情報・集計を貼る
  5. 「4つの項目それぞれについて、consistent/updated/inconsistent/insufficient を判定し、回答と集計の数字の組で理由を書いてください。回答が登録と違うだけで inconsistent にしないでください。国籍や年齢を理由にしないでください」と指示する
  6. 当時の担当の判断と突き合わせる

60件は必ずやってください。 確かめたいのは、「当時追加確認に回した20件が inconsistent か insufficient で出るか」「更新で済んだものが updated で出るか」の2点です。

出てきた内容判断
回した20件が拾われ、更新で済んだものが updated になった集計の自動化と連携に進む
変更のあった回答がほぼすべて inconsistent になった指示の書き方で直る。構成は有効
理由に集計に無い数字が出た照合で拾える。指示を直して構成は有効
回した20件の多くが consistent になった集計の項目が足りない。 当時の担当が何を見て回したかを聞き取る

4行目が出ることは珍しくありません。 当時の担当は、集計の6項目以外のもの(入金元の名前、時間帯、営業店の印象)を見て判断していることがあります。それを聞き取って集計の項目に足すことが、この構成をいちばん強くします。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
回答が変わっただけで食い違いになるupdated を分け、集計と合うかで判定すると指示に書く
理由に集計に無い数字が出るdata_points を集計と照合し、合わなければ担当へ回す
明細を渡して数え間違える集計は機械で行い、生成AIに計算させない
国籍などの属性が理由になる判定の入力から外し、reason の語を機械で検出する
「集計なし」が0件として扱われる欠けを明示して渡す
謝絶や取引制限が勧められる出力の選択肢に入れない
前回確認済みの事情が毎回食い違いになる前回の点検の結果を要約して渡す
営業店への質問が顧客を疑う言い回しになる質問の一覧の定型をもとに書かせ、担当が直す
判定の規則が担当ごとに変わる規則はコンプライアンス統括部が版を付けて管理する
見逃しに気づけないno_followup を週に1回抜き取る

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「回答と数字の組」という判定の根拠が崩れたときに起きます。根拠の数字を機械で照合できる形にしてあるかどうかで、運用に乗るかが決まります。

4行目は、件数が少なくても重い失敗です。 属性を理由にした追加確認は、顧客にとって説明のつかない連絡になります。 指示で禁じるだけでなく、入力から外し、出力を機械で検出する、の3重で止めてください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 顧客の職業・勤務先・年収の帯・取引の目的・資金の出どころ、取引の集計、顧客リスク評価です。顧客の財産と生活にかかわる情報が中心です。

  1. 氏名・口座番号・勤務先の名称を送らない … 記号に置き換え、対応表は行内にだけ置きます。 判定に要るのは、回答の内容と集計の数字です
  2. 明細を送らない … 集計した数字だけを渡し、取引の相手先の名前や1件ごとの金額は送りません
  3. データの扱いを契約の文書で確かめる … Microsoft Learn では、プロンプトと出力は他のお客様に利用されず、OpenAI に提供されず、モデルやサービスの改善に使われないとされています。一方で、不正使用の監視のためにプロンプトと出力のサンプルが人間のレビュー用に保存される場合があり、管理対象のお客様は不正使用の監視の変更を申請できるとされています。行内の情報管理の担当と、どちらで運用するかを決めてください
  4. 処理の場所を選ぶ … グローバルや DataZone のデプロイの種類を使うと、指定した地域の外で処理されることがあります。行内の規程に合わせて選んでください
  5. 判定を謝絶の入口にしない … 振り分けの結果は「追加の確認が要るか」までです。顧客リスク評価の見直し、取引の制限、疑わしい取引の届出は、行内の所定の手続きで人が判断します
  6. 見逃しを人が点検する … no_followup の抜き取りを止めないでください。AIの判定に寄せるほど、見逃しは誰の目にも入らなくなります

誤りが起きた場合のリスクは、確認が要る顧客を見逃すことと、確認の要らない顧客に連絡が行くことの2つです。 前者は数字の照合と抜き取りで、後者は updated の区別と属性の排除で止めます。どちらも、判定の根拠を回答と数字の組に限ることから出ています。

10まず何から始めるか

1週目:集計の6項目を決める

コンプライアンス統括部と情報系の担当で、判定に使う取引の集計の項目を決めます。直近に追加確認に回した回答を10件ほど見て、担当が明細のどこを見ていたかを聞き取ります。

2週目:60件で試す

先月の回答から60件を選び、集計を手で出して生成AIの画面で判定させます。当時回した20件が拾われるか、更新で済んだものが updated になるかを見ます。

3週目:規則と禁じる理由を決める

振り分けの規則(第7章の表)と、使ってはいけない理由の一覧を、コンプライアンス統括部で決めます。ここで、謝絶や取引制限を出力に入れないことも確認します。

4週目:行内の取り決めを確かめる

顧客の情報を外部のサービスへ送る条件を、情報管理の担当と確かめます。第13章の1番目から4番目が相談の材料です。

2か月目: 集計の問い合わせと中継の処理を作り、半自動化を回します。担当が判定を覆した件数を項目ごとに数えます。3か月目以降: 照合と振り分け、点検画面、no_followup の抜き取りを足し、1件12分が何分になったかを実測します。担当ごとの追加確認に回す割合のばらつきが小さくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
継続的な顧客管理として、調査の対象及び頻度を含む方針を決定し実施すること、調査の範囲・手法等が取引実態や取引モニタリングの結果等に照らして適切か継続的に検討すること、調査の過程での照会や調査結果を適切に管理し関係する役職員と共有すること、確認の頻度を顧客のリスクに応じて異にすること、確認した顧客情報等を踏まえ顧客リスク評価を見直すこと。適切な顧客管理を実施できない顧客・取引等について謝絶等を含むリスク遮断を検討する一方、合理的な理由なく謝絶等を行わないこと金融庁: マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(令和8年3月31日)2026-10-07
高リスク先1年に1度・中リスク先2年に1度・低リスク先3年に1度といった頻度で情報更新を行うことが考えられること(例であり、これに限らない)。高リスク顧客について、通常の確認項目に加えて例えば1年ごとに資産・収入の状況、資金源、商流等を確認することなどが考えられること。顧客リスク評価の見直し手続に係る期日管理や期日までに見直しができない顧客の管理が重要であること。長期不稼働口座等は異なる管理が必要となるものの定期的な情報更新は不要となること。調査に応じない顧客や郵送物が届出住所に到達しない顧客の扱い金融庁: マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)(令和8年3月31日)2026-10-07
構造化出力で、モデルが指定した JSON スキーマの定義に従うこと。有効な JSON は保証するがスキーマへの厳密な準拠はできなかった以前の JSON モードとの違い。すべてのフィールドを必須にすること。additionalProperties: false を設定すること。文字列の pattern などがサポートされないことMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-07
プロンプトと出力が他のお客様に利用されず、OpenAI に提供されず、モデルやサービスの改善に使われないこと。グローバル・DataZone 以外ではお客様が指定した地域内で処理されること。不正使用の監視でプロンプトと出力のサンプルが人間のレビュー用に保存されることがあり、管理対象のお客様は不正使用の監視の変更を申請できることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-07

追加の確認の要否、顧客リスク評価の見直し、取引の謝絶や疑わしい取引の届出は、法令と金融庁のガイドライン、行内の方針に照らして、所定の手続きで判断してください。 本記事は公開仕様と金融庁の公表資料で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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