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外国人の患者が持参する英文の紹介状・診療記録・処方記録を読み取り、既往歴・服薬・アレルギーを受付の登録項目と医師向けの要約にそろえる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

外国人の患者が持参する英文の紹介状・診療記録・処方記録を読み取り、既往歴・服薬・アレルギーを受付の登録項目に写します。あわせて、原文の語を添えた日本語の要約を医師向けに下書きし、窓口の職員が確かめてから渡します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
AWS Textract/Azure AI/Google Document AI
連携・自動化
Python
対象業界
介護/医療
対象部門
総務
対象業務
データ入力・転記/要約
主な課題
人手が足りない/入力作業が多い/確認ミスが多い
AIで行う処理
読み取り(OCR)
主な効果
入力漏れ削減/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
80h/月
AI導入後
30h/月
想定削減
63%
年間削減
600h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 患者から書類を受け取り、スキャンする。スマートフォンの画面のものは、写真を送ってもらう
  2. 書類を1点ずつ読み、氏名、生年月日、既往歴、現在の服薬、アレルギーを探す
  3. 見つけた内容を受付の登録画面と問診票に写す。薬の名前は英語のまま写す
  4. 医師向けに日本語の要約を手書きかWordで作り、カルテに取り込む
  5. 書類に書いていない項目を、問診で聞き直すためにメモする
  6. 医師に口頭で補足し、必要なら医療通訳を手配する
導入後(After)
  1. 人患者から書類を受け取り、スキャンするか、写真を受付の端末から取り込む
  2. 自動保存をきっかけに処理が動き、形式・ページ数・パスワードの有無を確かめる
  3. 自動OCRが書類を読み、キーと値、表、質問への答え、信頼度を返す
  4. 自動書類の種類を分け、氏名・生年月日・既往歴・服薬・アレルギーを受付の項目にそろえる
  5. 自動アレルギーは `documented` / `documented_none` / `not_documented` / `ambiguous` のどれかを付ける
  6. 自動薬は原文の名前・用量・単位・回数をそのまま残し、略語の意味を添える
  7. 自動原文の語を括弧で添えた、医師向けの日本語の要約を下書きする
  8. 人窓口の職員が、アレルギーと服薬の行を書類の画像と1行ずつ見比べる
  9. 人要約を確かめて医師に渡し、`not_documented` の項目を問診で聞き直す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 患者から書類を受け取り、スキャンする。スマートフォンの画面のものは、写真を送ってもらう
  2. 書類を1点ずつ読み、氏名、生年月日、既往歴、現在の服薬、アレルギーを探す
  3. 見つけた内容を受付の登録画面と問診票に写す。薬の名前は英語のまま写す
  4. 医師向けに日本語の要約を手書きかWordで作り、カルテに取り込む
  5. 書類に書いていない項目を、問診で聞き直すためにメモする
  6. 医師に口頭で補足し、必要なら医療通訳を手配する

(a)必要な項目がどこにあるか分からない。 紹介状の書き方は国と医療機関ごとに違います。アレルギーが冒頭にある紹介状もあれば、最後のページの Past Medical History の中に1行だけ書かれていることもあります。1点ごとに全文を読むことになります。

(b)「記載なし」と「なし」が混ざる。 書類にアレルギーの記載が見当たらないとき、受付の画面には「なし」と入れてしまいがちです。本当は「書類からは分からない」で、問診で聞き直す項目です。

(c)薬の名前と用量を写し間違える。 手書きの処方記録の Metoprolol 25mg BID を 50mg と読む、Levothyroxine 50mcg の mcg を mg と写す。英語に慣れた職員でも、略語と単位は読み落とします。

(d)医師向けの要約に時間がかかる。 窓口の職員が医学英語を日本語にするのは負担が大きく、混んでいる時間帯は要約が間に合わないまま診察が始まり、医師が診察室で英文を読むことになります。

  1. 【人】 患者から書類を受け取り、スキャンするか、写真を受付の端末から取り込む
  2. 【自動】 保存をきっかけに処理が動き、形式・ページ数・パスワードの有無を確かめる
  3. 【自動】 OCRが書類を読み、キーと値、表、質問への答え、信頼度を返す
  4. 【自動】 書類の種類を分け、氏名・生年月日・既往歴・服薬・アレルギーを受付の項目にそろえる
  5. 【自動】 アレルギーは documented / documented_none / not_documented / ambiguous のどれかを付ける
  6. 【自動】 薬は原文の名前・用量・単位・回数をそのまま残し、略語の意味を添える
  7. 【自動】 原文の語を括弧で添えた、医師向けの日本語の要約を下書きする
  8. 【人】 窓口の職員が、アレルギーと服薬の行を書類の画像と1行ずつ見比べる
  9. 【人】 要約を確かめて医師に渡し、not_documented の項目を問診で聞き直す

8番目が、この設計の分かれ目です。 職員はすべての項目を同じ重さで見るのではなく、アレルギーと服薬の行だけは画像と1行ずつ見比べ、それ以外は根拠の文字列と並べて流し見ます。 誤りが患者の安全に直結する項目に、確認の時間を集めます。

5番目の4つの区分が、この構成の背骨です。 「書類からは分からない」を独立した値として持つことで、問診で聞き直す項目が自動で残ります。

02今回想定するシステム構成

構成図
患者の英文の書類(紹介状・退院時の要約・検査の結果・処方記録)
   ▼【トリガー】受付フォルダ(Amazon S3)への保存
AWS Lambda ── 形式・ページ数・サイズ・パスワードの確認
   ▼
AWS Textract(StartDocumentAnalysis:FORMS/TABLES/QUERIES)
   │   患者情報のキーと値、薬の一覧の表、質問への答え、信頼度
   ▼
Claude API ── 受付の項目にそろえ、医師向けの要約を下書きする
   │   ① 患者の特定   ② 既往歴と診断   ③ 服薬(名前・用量・単位・回数)   ④ アレルギーの区分
   ▼
Python ── 受付の登録済みの値(氏名・生年月日)と照らし、確認の印を付ける
   ▼
【窓口の職員がアレルギーと服薬の行を画像と照合】
   ├──▶ 受付の登録画面と問診票(下書き)
   └──▶ 医師向けの要約 → 電子カルテへ取り込み
役割想定する製品代替候補
OCRAWS Textract(StartDocumentAnalysis/GetDocumentAnalysis)Azure AI Document Intelligence、Google Document AI
生成AIClaude API(項目の整形、アレルギーの区分、医師向けの要約の下書き)OpenAI API、Gemini API
差異計算Python(受付の登録済みの値との照合、確認の印)受付の仕組みの照合の機能
連携AWS Lambda(保存と完了の通知を起点に処理を動かす)Amazon EventBridge
保管Amazon S3(書類、読み取り結果、要約の下書き)院内のファイルサーバー

電子カルテと受付の登録画面は、新しく足すものではありません。 この構成は下書きを作るところまでで、電子カルテへは職員が確認した要約をPDFとして取り込みます。 電子カルテへ直接書き込む連携は作りません。

OCRに AWS Textract を選ぶのは、書類が英文だからです。 公式の上限の表で、対応言語は英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語とされ、日本語は読めません。 手書きの文字が読めるのは英語だけで、医師の手書きの処方記録も英語なら読む対象になります。

使う機能は、文書の分析の非同期版 StartDocumentAnalysis です。 FORMS で Patient Name: DOB: のような患者情報を、TABLES で薬の一覧や検査の結果の表をセルごとに、QUERIES で What allergies does the patient have? のような質問への答えを受け取ります。紹介状は手紙の形で書かれていることが多いので、質問が効きます。

質問は英語の文書でしか使えません。 フランス語やスペイン語の書類では質問を外し、キーと値と表と全文で読みます。同期の処理はPDF1ページまでなので、数ページになる退院時の要約に合わせて非同期で読みます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

受付フォルダ(Amazon S3)に書類が保存されたことを起点にします。 受付でスキャンしたもの、受付の端末で撮影した写真、アシスタンス会社からメールで届いたPDFを、受付番号の名前のフォルダに入れます。保存の通知で AWS Lambda が動きます。

事前に届く書類は、来院の前に処理を終えておきます。 アシスタンス会社から前日に送られてきた診療記録は、その日のうちに読み取りと要約の下書きまで済ませ、来院時には職員の確認だけが残るようにします。

来院してから受け取る書類は、受付から診察までの待ち時間で処理します。 読み取りから要約の下書きまでが待ち時間に収まるかを、試すときに必ず測ります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
英文の書類紹介状、退院時の要約、検査の結果、処方記録。PDFまたは写真受付フォルダ(Amazon S3)
読み取り結果キーと値、表とセル、質問への答え、全文、それぞれの信頼度AWS Textract
受付の登録済みの値氏名(パスポートの表記)、生年月日、受付番号、書類の言語受付の患者登録の画面
院内の一覧医学略語の一覧(BID、PRN、HTN など)、要約の書式院内で用意する一覧

質を決めるのは、受付の登録済みの値です。 書類の患者と受付の患者が同じ人かを、氏名と生年月日の2つで照らします。 家族の書類が混ざることがあるので、照合を省きません。

医学略語の一覧は、院内の薬剤部と一緒に作ります。 一覧にある略語だけ意味を添え、一覧に無い略語は原文のまま残して印を付けます。

Step3

データの取得方法を決める

読み取りは StartDocumentAnalysis にS3の場所と FeatureTypes を渡して始めます。完了は NotificationChannel に指定した Amazon SNS のトピックに通知され、状態が SUCCEEDED なら GetDocumentAnalysis で結果を取ります。

指定するもの値理由
FeatureTypesFORMS、TABLES、QUERIES(英語のとき)患者情報、薬の一覧の表、手紙の形の紹介状
QueriesConfig質問の文と Alias の組答えを受付の項目名で受け取る
ClientRequestToken受付番号とファイルのハッシュ同じ書類で二重に読み取りを始めない
JobTag受付番号完了の通知から患者を引く
KMSKeyId院内の鍵読み取り結果を院内の鍵で暗号化する
Alias質問の文
PATIENT_NAMEWhat is the patient's full name?
PATIENT_DOBWhat is the patient's date of birth?
ALLERGIESWhat allergies does the patient have?
CURRENT_MEDICATIONSWhat medications is the patient currently taking?
DIAGNOSISWhat is the diagnosis?
PAST_HISTORYWhat is the patient's past medical history?
REFERRING_DOCTORWho is the referring physician?
LETTER_DATEWhat is the date of this letter?

質問の答えは要約の材料の1つにすぎません。 答えが見つからなければ空のまま返り、空の答えは「書類に書かれていない」の候補として扱い、全文で確かめてから not_documented にします。 薬の一覧は質問の答えより TABLES の表のほうが確実で、行ごとに名前・用量・回数が分かれたまま取れます。

結果は1回最大1,000ブロックで区切られます。NextToken が返る限り呼び直し、退院時の要約の後半のページが抜けないようにします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … JPEG、PNG、PDF、TIFF であることを確かめます。スマートフォンの HEIC の写真は JPEG に変換します
  2. パスワードの確認 … PDFはパスワードで保護されていてはいけないとされています。患者向けのポータルから出したPDFは保護されていることがあるので、その場で患者に解除してもらいます
  3. サイズとページ数の確認 … 非同期の処理で、PDFとTIFFは500MB・3,000ページ、JPEGとPNGは10MBまでです
  4. 写真の解像度の確認 … 文字の高さは最小15ピクセルで、150 DPIで8ポイントの文字に相当します。処方記録の小さな字は、画面を撮った写真では下回りやすいので、受付の端末で撮り直します
  5. 書類の言語の確認 … 受付で患者に確かめ、6言語に入らない書類は読み取りに回しません
  6. 識別番号の伏せ字 … 保険の証券番号、国民識別番号、医療機関の患者番号は、生成AIへ渡す前に下4桁以外を伏せます

4番目がいちばん効きます。 服薬の行が unreadable になる多くは、スマートフォンの画面をさらに撮った写真です。受付で「PDFを送ってください」と頼める仕組みを先に作ります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、読み取り結果から受付の項目を取り出し、アレルギーに区分を付け、原文の語を添えた日本語の要約を下書きすることです。 判断はさせません。

項目取り出し方判断できないときの扱い
患者の氏名・生年月日原文のまま。生年月日は順序が決まるときだけ解釈03/04/1980 のように順序が決まらなければ ambiguous
既往歴・診断原文の病名と、日本語の訳を並べる略語が一覧に無ければ原文のまま印を付ける
服薬名前・用量・単位・回数・経路を原文のまま分けて持つ用量や単位が読めなければ unreadable
アレルギー4つの区分のどれかと、原文の文字列区分が決まらなければ ambiguous
紹介元医療機関名、医師名、書類の日付書類の日付が無ければ空

アレルギーの4つの区分は次のとおりです。

区分付ける条件
documented物質と反応が書かれている(Penicillin - rash)
documented_none無いことが明記されている(NKDA、No known allergies)
not_documentedアレルギーについての記載が書類のどこにも無い
ambiguousAllergies: see attached のように、別の書類を指している

NKDA は「薬のアレルギーが知られていない」で、食物やラテックスについては何も言っていません。 documented_none の範囲を scope: drug として残し、食物のアレルギーは not_documented のまま問診で聞く項目にします。

させないこと理由
国内の商品名への置き換え同じ名前で別の成分の薬がある。薬剤師が行う
用量・単位・回数の書き換えmcg を mg に、BID を「1日1回」にする誤りが量を変える
飲み合わせや禁忌の評価医師と薬剤師の判断
記載の無いアレルギーを「なし」とすること問診で聞き直す機会を失う
診断の推測、追加の検査の提案医師の判断

2行目の誤りは、日本語にする段階で起きます。 「1日2回」と訳したつもりで「1日1回」と書く、0.5mg の小数点を落とす。要約では、薬の行に必ず原文の文字列を括弧で並べます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは病院の国際診療の窓口で、外国人の患者が持参した英文の書類を
受付の項目にそろえ、医師向けの要約を下書きする担当です。
OCRの読み取り結果だけを使ってください。推測で埋めないでください。
あなたは診断・処方・薬の評価をしません。

【取り出す項目】
patient(氏名・生年月日)、history(既往歴・診断)、
medications(服薬)、allergies(アレルギー)、referral(紹介元)。
各項目に raw(読んだ文字列そのまま)、status、source を入れてください。

【アレルギーの区分】
- documented ....... 物質と反応が書かれている
- documented_none .. 無いことが明記されている(NKDA、No known allergies など)。
                      scope に drug / food / all のどれが明記されているかを入れる
- not_documented ... アレルギーについての記載がどこにも無い
- ambiguous ........ 別の書類を指している、または読み方が複数ある
記載が見当たらないことを「アレルギーなし」としないでください。

【服薬の扱い】
- name、dose、unit、frequency、route を原文のまま分けてください。
- 単位(mg、mcg、g、mL、IU)と回数の略語(QD、BID、TID、QID、PRN)を
  書き換えないでください。略語の意味は abbreviation_note に別に書いてください。
- 一覧に無い略語は意味を書かず、unknown_abbreviation に入れてください。
- 国内の商品名に置き換えないでください。
- 読めない文字を、よくある用量で埋めないでください。status を unreadable にしてください。

【要約の書き方】
- 日本語で書き、病名・薬の名前・用量・アレルギーは原文の文字列を括弧で添えてください。
- 「書類からは分からない項目」を最後に箇条書きにしてください。
- 診断の推測、検査や治療の提案、薬の評価を書かないでください。

【厳守事項】
- 伏せ字(****)を復元しないでください。
- 書類の患者が誰かを推測しないでください。氏名と生年月日は原文のまま返してください。
- 英文の医療の書類でないと判断した場合は document_type を other としてください。

【読み取り結果】{textract_result}
【医学略語の一覧】{abbreviation_list}

「よくある用量で埋めない」を明記しないと、読めない数字を埋めます。 Metoprolol __mg の空白に、もっともらしい数字を入れます。もっともらしいほど、職員が画像と見比べるときに見落とします。

Step7

出力形式を固定する

Claude API の構造化出力(output_config.format に json_schema を指定)で、次の形のJSONを受け取ります。

{
  "reception_id": "",
  "patient": { "name_raw": "", "dob_raw": "", "dob": "", "status": "" },
  "allergies": {
    "category": "documented | documented_none | not_documented | ambiguous",
    "scope": "drug | food | all | unknown",
    "items": [ { "substance_raw": "", "reaction_raw": "", "source": "" } ]
  },
  "medications": [
    { "name_raw": "", "dose_raw": "", "unit_raw": "", "frequency_raw": "",
      "route_raw": "", "abbreviation_note": "", "status": "ok | unreadable", "source": "" }
  ],
  "history": [ { "term_raw": "", "term_ja": "", "source": "" } ],
  "unknown_abbreviation": [],
  "summary_ja_draft": "",
  "not_in_documents": []
}

1つ目の理由は、アレルギーの区分を文字列ではなく決まった値で持てることです。 受付の画面の「アレルギー」欄に何を出すかを、区分ごとに決めておけます。

category受付の画面への出し方
documented物質と反応を原文のまま。赤い印を付ける
documented_none「書類に記載なし(原文:NKDA)」と範囲を添える
not_documented「未確認」。問診票の先頭に聞き直す項目として出す
ambiguous「要確認」。参照先の書類を探す

2つ目は、薬の行を _raw の項目に分けて持てることです。 職員は画像の行と JSON の行を左右に並べ、名前・用量・単位・回数を1つずつ見比べられます。 要約の文章の中から数字を探すより、確かめる時間が短くなります。

3つ目は、not_in_documents で問診で聞き直す項目が残ることです。 要約を読んだ医師が、何が書類から分かっていて何が分かっていないかを、最初の1分で把握できます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
受付フォルダ(Amazon S3)保存の通知書類の保存を検知して AWS Lambda を動かす
AWS TextractAPI呼び出し(非同期)読み取りを始め、完了の通知で結果を取る
Claude APIAPI呼び出し項目の整形、アレルギーの区分、要約の下書き
受付の患者登録の画面読み取り氏名と生年月日を引いて照らす
確認用の画面書き込み画像と項目を左右に並べて表示する
電子カルテ既存の文書の取り込み職員が確認した要約のPDFを取り込む

電子カルテへは、この構成から直接書き込みません。 アレルギーの欄や薬の欄に読み取りの結果が確認を経ずに入ると、誤りが処方の画面まで一息に進みます。 職員が確認した要約を、既存の文書の取り込みの手順で入れます。

Step9

人が確認する

窓口の職員は、アレルギーと服薬の行を書類の画像と1行ずつ見比べます。 既往歴と紹介元は、根拠の文字列と並べて流し見ます。

  1. 患者の特定を確かめる … 書類の氏名と生年月日が受付の登録と合っているか。合わなければ、家族の書類が混ざっていないかを患者に聞きます
  2. アレルギーの区分を確かめる … documented_none は原文で範囲を確かめ、not_documented は問診票の先頭に置きます
  3. 服薬を1行ずつ照合する … 名前・用量・単位・回数を画像と見比べ、unreadable は患者に薬の現物か写真を見せてもらいます
  4. 要約を確かめて医師に渡す … 原文の文字列と訳が合っているかを見ます

3番目の照合を省かないでください。 この構成で誤りが患者に届くとしたら、ほとんどがここです。1件15分の大半をここに使う想定です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
パスワードで保護されたPDF読めない。患者に解除してもらうか、紙で出してもらう
6言語に入らない書類(中国語など)読み取りに回さず、医療通訳の手配の台帳へ
英語以外の5言語の書類質問を外し、キーと値と表と全文で読む
写真の文字が小さい最小15ピクセルを下回るものは unreadable。撮り直す
ジョブが FAILED または PARTIAL_SUCCESSStatusMessage と Warnings のページ番号を記録し、そのページを職員が読む
氏名・生年月日が受付と合わない処理を止め、職員が患者に確かめる
急患で待ち時間が無い読み取りを待たず、職員が書類を医師に直接渡す
画像の検査結果(CD・フィルム)この構成の対象外。放射線科の取り込みの手順へ

下から2行目を最初に決めてください。 急いでいる患者に、仕組みの処理を待たせる理由はありません。この構成は、待ち時間がある受診のためのものです。

Step11

記録を残す

  • 元の書類ファイルと、受け取った日時、受付番号、受け取った経路
  • AWS Textract が返したJSONの全文と、使った質問の一覧
  • Claude API が返したJSONと、要約の下書き
  • 職員が直した箇所の記録 … アレルギーの区分、薬の行、要約のどこを直したか
  • 医師へ渡した要約の版と、電子カルテへ取り込んだ日時

4つ目は、指示と略語の一覧を直す材料になります。 同じ略語で毎回直しているなら一覧に足し、not_documented を documented_none に直した記録が続くなら、指示の書き方を見直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:書類を手でAIの画面に貼り、項目と区分を取り出させる / 1件ごとの項目の取り出し
半自動化:上記+受付フォルダを起点に AWS Textract で読み、確認用の画面に画像と項目を並べ、要約の下書きまで出す / 読み取り、項目の整形、区分、要約の下書き
本格構成:上記+アシスタンス会社からの事前の書類の自動の取り込み、医療通訳の手配の台帳との連携 / 来院前の準備の全体

本記事の想定は半自動化です。 読み取りと要約の下書きが自動になり、職員はアレルギーと服薬の照合と、要約の確認を行います。1件40分が15分になるのはこの段階です。 本格構成でも、電子カルテへの直接の書き込みは足しません。 足すのは来院前の準備の部分で、確認の工程は残します。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
120 件
1件あたり現在時間
40 分
1件あたり導入後時間
15 分
現在  120件 × 40分 ÷ 60 = 80 時間/月
導入後 120件 × 15分 ÷ 60 = 30 時間/月
月間削減時間
50h
削減率
63%
年間削減時間
600h
年間金額換算(時間単価3,000円)
180万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 観光地や空港の近く、外国人の居住者が多い地域の病院・診療所で、海外の医療機関の英文の紹介状や診療記録を持参する患者が月に数十人以上いる場合。医事課や国際診療の窓口の職員が、英文の書類から既往歴・服薬・アレルギーを探して受付の画面に写し、医師に口頭で伝えている場合。旅行保険のアシスタンス会社から英文の診療記録が事前に送られてくる場合。外国人の入居者を受け入れる介護施設が、母国の診療記録を受け取っている場合。
向いていない
  1. 書類が中国語・韓国語・ベトナム語・タイ語などで届く場合(この構成のOCRは英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語しか読めず、手書きは英語のみです)。日本語の紹介状が中心の場合(UC-0326 の構成が向きます)。英文の書類を持参する患者が月に数人で、目で見て足りる場合。なお、診断、処方、薬の飲み合わせの判断、国内で使える薬への置き換えは医師と薬剤師が行うもので、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去の英文の紹介状と処方記録から15件を選ぶ(NKDA のもの、アレルギーの記載が無いもの、手書きの処方記録を必ず入れる)
  2. 氏名と識別番号を黒く塗ったコピーを作る
  3. 院内で利用を認められた生成AIの画面に1件ずつ貼り付け、「既往歴、服薬、アレルギーを取り出してください。アレルギーは『記載あり』『無いと明記』『記載が無い』『不明確』に分けてください。薬の用量・単位・回数を書き換えないでください」と指示する
  4. 出てきた結果を、当時の受付の登録と医師の記録に突き合わせる

15件は必ずやってください。 仕組みを組む前に、アレルギーの区分を正しく付けられるかを確かめます。

出てきた内容判断
4つの区分が当時の記録と合ったOCRのAPIと確認用の画面に進む
記載が無いものを「なし」とした指示の書き方で直る。直るまで先に進まない
手書きの処方記録で用量が読めない患者に薬の現物を見せてもらう運用を先に決める

2行目は、直るまで何度でも試してください。 この構成でいちばん重い誤りで、ここが直らないなら仕組みにする意味がありません。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
記載の無いアレルギーが「なし」になるnot_documented を独立した区分にする。 指示と受付の画面の両方で守る
NKDA を食物も含めて「なし」とするscope を持たせ、薬の範囲だけと明記する
mcg と mg、BID と TID を書き換える原文の文字列を別の項目に残し、意味は別に添える
読めない用量をもっともらしい数字で埋めるunreadable にさせる。画像と照合する
海外の商品名を国内の商品名に置き換える置き換えを禁じ、薬剤師に回す
家族の書類が混ざる氏名と生年月日で受付の登録と照らす
パスワード付きのPDFで止まる受付でその場で解除してもらう
中国語の書類を読ませて失敗する6言語以外は医療通訳の手配へ回す
急患で処理を待ってしまう待ち時間のある受診だけを対象にする
要約がそのままカルテに入る職員の確認を経た版だけを取り込む

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「空欄」や「無い」の扱いから生まれます。「分からない」を値として持てるかどうかで、運用に乗るかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 患者の氏名、生年月日、既往歴、診断、服薬、アレルギー、紹介元の医療機関と医師の名前です。

  1. 病歴は要配慮個人情報に当たる … 個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、要配慮個人情報に病歴が含まれ、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはならないとされています(法令に基づく場合などの例外があります)。受付で書類を受け取るときの説明と同意の取り方を、院内の手順にそろえます
  2. 外部のサービスへ送る範囲を限る … 識別番号は伏せ字にし、受付の項目と要約に要らない部分を後段に流しません。 どのクラウドのどの地域で処理するかも、院内の規程で決めます
  3. 読み取り結果を院内の鍵で暗号化する … StartDocumentAnalysis の KMSKeyId を指定すると、出力先のバケットのオブジェクトがその鍵で暗号化されます
  4. 診断・処方・薬の評価をさせない … この構成が出すのは、書類に何が書いてあるかと、書類からは分からない項目です
  5. 電子カルテへ直接書き込まない … 確認を経た要約だけを、既存の取り込みの手順で入れます
  6. 保存期間を決める … 読み取り結果と要約の下書きを、元の書類と同じ扱いで管理し、期限が来たら消します

誤りが起きた場合のリスクは、アレルギーや服薬を誤って伝え、それが処方に影響することです。 多くは「分からない」を「無い」とすることと、単位や回数の書き換えから起きるので、その2つを設計で止め、残りを職員の照合で拾います。

10まず何から始めるか

1週目:院内の手続きを確かめる

情報システムの担当と、診療の書類を外部のクラウドで処理してよいか、どの範囲までかを確かめます。患者への説明と同意の取り方もあわせて決めます。

2週目:15件で試す

過去の書類から15件を選び、院内で認められた生成AIの画面でアレルギーの区分と服薬を取り出させます。記載の無いアレルギーを「なし」としないかを最優先で見ます。

3週目:医学略語の一覧と受付の画面の出し方を決める

薬剤部と略語の一覧を作り、4つのアレルギーの区分を受付の画面にどう出すかを決めます。not_documented を問診票の先頭に出す形を、看護部とも合わせます。

4週目:受付フォルダから確認用の画面までをつなぐ

S3、Lambda、Textract、Claude API をつなぎ、画像と項目を左右に並べる画面まで作ります。この時点では要約を出さず、項目の照合だけを回します。

2か月目: 要約の下書きを足し、医師に読んでもらって書式を直します。3か月目以降: 事前に届く書類の処理を足し、1件40分が何分になったかを実測します。医師が診察の前に要約を読み、問診で聞き直す項目が最初から分かっている状態になった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
対応する形式がJPEG、PNG、PDF、TIFFであること。同期はPDF1ページ・10MB、非同期はPDFとTIFFで500MB・3,000ページ、JPEGとPNGで10MBであること。PDFはパスワードで保護できないこと。対応言語が英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語で、質問の検出は英語の文書だけであること。手書きは英語のみであること。文字の最小の高さが15ピクセル(150 DPIで8ポイント相当)であることAWS: Set Quotas in Amazon Textract2026-10-07
StartDocumentAnalysis の FeatureTypes(TABLES/FORMS/QUERIES ほか)、QueriesConfig、ClientRequestToken、JobTag、KMSKeyId、NotificationChannel で Amazon SNS に完了を通知することAWS: StartDocumentAnalysis2026-10-07
GetDocumentAnalysis の JobStatus(SUCCEEDED/FAILED/PARTIAL_SUCCESS ほか)、MaxResults(最大1,000)と NextToken、StatusMessage、WarningsAWS: GetDocumentAnalysis2026-10-07
質問の応答が QUERY と QUERY_RESULT のブロックで返り、別名(Alias)と信頼度を持つこと。答えが見つからなければ空のまま返ることAWS: Queries2026-10-07
構造化出力を output_config.format に json_schema を指定して受け取れることClaude Docs: Structured outputs2026-10-07
要配慮個人情報に病歴が含まれること。法第20条第2項で、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはならないとされること個人情報保護委員会: 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)2026-10-07

診断、処方、薬の置き換えは、医師と薬剤師が行うものです。 本記事は書類の読み取りと受付・要約の下書きまでを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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