データの民主化はAIだけでは進まない|現場に開く前の3つの線

「日本語で聞けば誰でも集計できるAIを入れたので、これでデータの民主化は進むはずだ」「分析の担当者に頼まなくても、現場が自分で数字を出せるようになる」。データ活用の推進を任された経営企画や情報システムの担当者から、こうした期待を聞きます。聞き方の壁が低くなったのは事実なので、期待が高まるのはもっともです。ところが、道具を配っただけで開いた会社では、同じ質問に違う数字が返り、確かめの問い合わせが増えるといったことが起きています。データの民主化は、道具を配ることではありません。本当は、誰が聞いても同じ問いに同じ数字が返るように、開く前に線を引くことです。この記事では、開いたあとに起きる4つのことと、開く前に引く3つの線、開く順番と検算の持ち場を整理します。
カメ先生データの民主化というのは、分析の担当者だけが触れていた集計や問い合わせを、現場の社員にも開くことなんだ。日本語で聞けるAIが出てきて、話が一気に現実になったんだよ。
カメ子聞き方の壁がなくなったのなら、あとは全員に使えるようにするだけではないのですか。
カメ先生壁が低くなった分、開いたあとに起きることも一気に増えるんだ。同じ質問に違う数字が返ったり、見せてはいけない行が見えたりね。どの表を開くか、指標の意味、数字の確かめ役は、AIではなく人が決めることなんだよ。
カメ子開く前に決めておくことが、思っていたより多いのですね。
- 日本語で聞けるAIは聞き方の壁を下げたが、違う数字・定義の二重化・見てはいけない行・問い合わせの増加は、開いたあとに増える
- 開く前に引く線は3つ。どの表を開くか、指標の定義をどこまで固めるか、誰にどの行まで見せるか
- AIには答えに使った表と条件を出させる。表の選定・指標の定義・数字の検算の持ち場は人が決める
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データの民主化とは:集計と問い合わせを、分析担当の外に開くこと
データの民主化は、社内のデータを分析の担当者や情報システムの部署だけでなく、現場の社員が自分で集計し、問い合わせられるようにする取り組みを指す言葉です。営業の担当者が自分の担当地域の受注の推移を、マーケの担当者が施策ごとの問い合わせ数を、誰かに頼まず自分で出せる状態を目指します。
考え方そのものは新しくありません。現場が自分で集計する道具は以前からあり、自分で操作できる集計の画面を配る取り組みも長く続いてきました。ただ、画面の操作や問い合わせの言語を覚える必要があり、実際に使いこなす人は一部に限られていました。現場の多くは、画面に用意された数字を眺めるだけか、分析の担当者に集計を頼む形のままで、自分で問いを立てて数字を出す人は増えにくかったのです。
この記事で扱うのは、集計と問い合わせの利用者を全社に広げる判断です。予測のモデルを現場の社員に作らせる話は、自動で予測モデルを作る道具を扱った別の記事で書いています。予測のモデルは受け取るときの確かめ方がまったく違うので、ここでは扱いません。
データの持ち主を中央に置くか部門に置くかという組織の形の話も、データメッシュを扱った別の記事に譲ります。ここで考えるのは、持ち主の置き方が決まった会社でも決まっていない会社でも避けて通れない、「開く前にどこに線を引くか」です。
日本語で聞けるAIで変わったこと、変わらないこと
変わったのは、聞き方の壁です。日本語で「先月の地域別の問い合わせ件数を出して」と聞けば、AIが表を選び、集計の命令を組み立てて、表とグラフを返す仕組みが、集計の製品やデータの置き場の製品に載るようになってきました。操作を覚えなくても、質問できれば答えが返ります。集計の画面を1枚ずつ作って配っていた頃と比べると、現場の社員が自分で問いを立て、その場で答えを見られる範囲は大きく広がりました。
総務省の令和7年版情報通信白書(2025年公表)では、AI・データ解析の専門家が在籍していると答えた日本企業は20.6%にとどまります。分析の担当者に頼む形では、頼める相手そのものが社内にいない会社が多いということです。現場が自分で聞ける仕組みに期待が集まるのは、この事情があるからです。
変わらないのは、データの中身です。売上の表に返品が含まれているか、問い合わせの件数に重複が含まれているか、どの日付で締めているか。こうした決まりが表のどこにも書かれていなければ、AIは推測で表を選び、推測で条件を付けます。聞き方が易しくなっても、データの決まりが書かれていなければ、答えの正しさは上がらないのです。
もう1つ変わらないのは、誰が何を見てよいかの決まりです。人事の情報や個人の成績、取引先ごとの値引きの条件のように、見る人を限るべきデータは、聞き方が易しくなると、むしろ見えやすくなります。開く前に線を引く理由は、ここにあります。
開いたあとに起きること1:同じ質問に違う数字が返る
最初に起きやすいのは、同じ質問に違う数字が返ることです。営業部が聞いた「先月の受注額」と、経営企画が聞いた「先月の受注額」が違う。原因をたどると、AIが別々の表を選んでいた、あるいは同じ表でも片方は税込み、片方は税抜きで集計していた、ということが起きます。
質問の言い方が少し違うだけでも、AIが選ぶ表や条件は変わることがあります。「受注」と「成約」、「先月」と「直近1か月」のような違いです。人なら同じ意味だと分かる言い換えでも、AIの側では別の集計になり得ます。同じ人が同じ質問をしても、日を変えると答えが揺れることもあります。
2026年に米国で開かれた、データの加工の道具の利用者会議についての報告記事では、ある小売企業の担当者が、指標の定義が食い違ったまま整っていないデータにAIをつないだ結果、「矛盾した回答をより速く届ける」状態になった経験を紹介していました。道具の性能ではなく、つなぐ前の整え方の問題として語られています。
違う数字が2つ出回ると、会議はどちらの数字が正しいかの確かめで終わります。確かめる役がいなければ、声の大きい部署の数字が通ります。数字が揃わないことそのものより、どちらが正しいかを決める人がいないことが、民主化を止めるのです。
開いたあとに起きること2:定義が二重になる
2つ目は、指標の定義が二重になることです。現場の社員がAIに聞いた数字を資料に載せると、その数字の数え方が、そのまま部署の中の定義として使われ始めます。一方で、経営会議の資料は分析の担当者が決めた定義で作られていて、2つの定義が並んで走ります。
たとえば「有効な問い合わせ」の数え方です。分析の担当者は営業から除外の連絡があったものを除いて数えていても、現場がAIに聞くと、問い合わせの表の件数がそのまま返ることがあります。名前は同じで数え方が違う指標が、気づかれないまま2つになるのが、この問題の厄介なところです。
定義が二重になると、数字を見比べるたびに説明が要ります。「営業部の資料では120件ですが、定義が違うので経営会議の資料では95件です」と毎月説明していると、やがてどちらの数字も信用されなくなります。説明の手間は分析の担当者に集まり、本来の分析に使える時間が削られていきます。定義が2つあることに気づかないまま、違う数字をもとに2つの部署が別々の手を打つことも起こり得ます。
指標の定義書に何を書くかは、指標の定義の項目を扱った別の記事で整理しています。この記事で考えるのは、その定義を、AIが答えるときに使わせる仕組みになっているか、そして定義が決まっていない指標をどう扱うかです。
開いたあとに起きること3:見てはいけない行が見える
3つ目は、見てはいけない行が見えることです。売上の表に個人の営業成績の列があったり、顧客の表に個人の連絡先が含まれていたりすると、表ごと開いた時点で、それを見る権限のない社員にも答えが返る可能性があります。
集計の画面を配る形では、画面を作る人が見せる列を選んでいたので、見せてはいけない列は画面に載りませんでした。日本語で自由に聞ける形では、画面を作る人という関門がなくなり、表に入っている列はすべて質問の対象になり得ます。
行の単位で見せる範囲を分けたい場合もあります。支店長には自分の支店の数字だけ、部長には自部署の数字だけを見せたい、という場合です。この行の単位の制御を、AIの問い合わせでも同じように効かせられるかは、使う製品と設定によって変わります。開く前に、情報システムの部署と一緒に実際に試して確かめます。試すときは、支店長の立場で他の支店の数字を聞く、というように、見えてはいけない答えをわざと引き出す質問を用意しておくと、設定の抜けに気づきやすくなります。
見てはいけない行が一度でも見えると、その後は開く範囲を狭める方向に振れます。狭めすぎると、現場は元の頼み方に戻り、民主化は止まります。見せる範囲は開く前に一度で決めておくほうが、後から狭めるより、結果として広く開けるのです。
開いたあとに起きること4:問い合わせがむしろ増える
4つ目は、分析の担当者への問い合わせが、減るどころか増えることです。現場が自分で数字を出せるようになると、「AIが出したこの数字は合っていますか」「会議の資料と違うのはなぜですか」という確かめの問い合わせが届くようになります。
以前は、分析の担当者が集計を頼まれ、自分で数字を出して渡していました。開いたあとは、他の人が出した数字の確かめを頼まれる形に変わります。他人が出した数字の確かめは、自分で出すより時間がかかることが多く、担当者の負担はかえって重くなることがあります。
問い合わせの窓口が決まっていないと、確かめの依頼は、詳しそうな人に個別に届きます。結果として特定の人に問い合わせが集まり、その人が異動すると誰も答えられなくなります。個別に答えた内容は記録に残らないので、同じ確かめの依頼が別の部署から何度も届き、そのたびに一から調べ直すことにもなります。問い合わせの中身が定義の見直しにつながらず、同じ食い違いが残り続けます。
問い合わせが増えること自体は、現場が数字を使い始めた証拠でもあります。問題は、増えることを見込まずに開くことです。開く前に、問い合わせを誰が受け、どこまでを答え、どこからを定義の見直しに回すかを決めておきます。持ち場の分け方は、後の節で述べます。
線1:どの表を開くか
ここからは、開く前に引く3つの線です。1つ目は、どの表を開くかの線です。社内にあるすべての表を一度に開くのではなく、AIが答えに使ってよい表を選び、それ以外は答えに使わせないようにします。
開く表を選ぶ目安は3つです。その表の持ち主が決まっていること、列の意味が文書で書かれていること、更新の頻度と締めの日が決まっていることです。3つがそろわない表は、どれだけ現場の要望が強くても、最初の段階では開きません。
同じ内容の表が複数ある場合は、1つに決めます。売上の表が、会計の仕組みから出したものと、営業の管理の仕組みから出したものの2つある、ということはよくあります。どちらを正とするかを決めないまま両方を開くと、同じ質問に違う数字が返る原因になります。
どの表を開くかを、AIに決めさせてはいけません。AIは表の名前と列の名前から使えそうな表を推測できますが、どの表が社内で正とされているか、どの表が古いまま放置されているかは知りません。表の候補の一覧をAIに下書きさせるのはよいとして、開く表の決定は、データの持ち主と推進の担当者が行うようにします。
線2:指標の定義をどこまで固めてから開くか
2つ目は、指標の定義の線です。売上、受注、有効な問い合わせ、商談化の割合など、よく聞かれる指標について数え方を文書で決め、AIが答えるときにその定義を使わせる仕組みにしてから開きます。たとえば「有効な問い合わせ」なら、どの表の件数を数えるか、営業から除外の連絡があったものを除くか、同じ会社からの重複をどう数えるか、どの日付で月を区切るかを1行ずつ書きます。
すべての指標の定義を決めてから開こうとすると、いつまでも開けません。最初は、経営会議や部の会議で毎月使う指標だけに絞って定義を固めます。10個前後に絞れば、定義の文書も短く済み、AIへの渡し方も確かめやすくなります。
定義を決めていない指標を聞かれた場合の扱いも、先に決めます。定義のない指標は答えないようにするか、答える場合は「この数字は定義が決まっていない指標で、表の件数をそのまま数えたものです」と添えさせるかです。定義のない数字が、定義のある数字と同じ顔で返ることを防ぐのが目的です。
定義は一度決めて終わりではありません。現場が聞く質問を見ていると、定義を決めておくべき指標が新しく見えてきます。聞かれた質問の記録から、よく聞かれるのに定義がない指標を洗い出す作業はAIに下書きさせられます。定義を決めるのは、その指標を使う部署の責任者と推進の担当者です。
線3:誰にどの行まで見せるか
3つ目は、見せる範囲の線です。開く表を決めたら、その表のどの列とどの行を、誰に見せるかを決めます。個人の成績、個人の連絡先、取引先ごとの条件のように見せる相手を限るべき列は、最初から答えに使わせない形にしておくのが確かです。
行の単位の範囲は、組織の単位で決めるのが分かりやすい方法です。全社員が見られる数字、部の中で見られる数字、役職者だけが見られる数字の3段ほどに分け、表ごとにどの段に当たるかを決めます。段を細かく分けすぎると、設定の確かめが追いつかなくなります。
見せる範囲は、AIの設定だけでなく、元の表の権限とそろっているかを確かめます。元の表を開けない社員が、AIを通すと中身の集計を見られる、という状態は避けます。開く前に、権限の違う社員の立場で同じ質問をして、返る答えが違うことを実際に確かめておきます。
見せる範囲の決定は、AIに任せません。どのデータを誰に見せるかは、会社の情報の扱いの決まりと、データの持ち主の判断で決まります。AIに頼むのは、表の中で個人を特定できそうな列の候補の洗い出しまでにとどめます。
開く順番:部署と表を段階で広げる
3つの線を引いたら、開く順番を決めます。全社に一度に開くのではなく、部署と表を段階で広げます。
数字をよく使い、定義を決めやすい部署を1つ選ぶ。開く表は、線1の条件を満たす数枚に絞る。
最初の1か月は、現場が聞いた質問と返った答えを推進の担当者が読み、違う数字や定義のない指標が出ていないかを確かめる。
記録から見えた食い違いをもとに、指標の定義を足し、見せる範囲を直す。直した内容と理由は記録に残す。
最初の部署で食い違いが落ち着いたら、同じ表を使う隣の部署に広げ、必要な表を足す。
問い合わせの件数と、確かめられた答えの割合が、あらかじめ決めた水準に届いたら全社に広げる。
最初の部署は、マーケや営業のように、毎月同じ指標を見ていて数字の食い違いにすぐ気づける部署が向いています。数字にふだん触れていない部署から始めると、違う数字が返っても誰も気づきません。
開き方の具体的な手順は製品ごとに違います。たとえば、ある集計の製品で会話型の分析を開く手順は、その製品を扱った別の記事で整理しています。この記事では、どの製品を使う場合にも共通する、開く順番の考え方にとどめます。
段階ごとの期間は、あらかじめ決めすぎないほうがよいでしょう。食い違いが落ち着くまでの期間は、表の数と部署の数字の使い方で変わります。期間ではなく、次に進む条件を決めておくほうが確かです。
AIに答えの根拠を出させる:使った表と条件
開くときの設定として、AIに答えの根拠を出させることは欠かせません。数字と一緒に、どの表を使い、どんな条件で絞り込み、どう集計したかを答えに添えさせます。根拠が出ない答えは、社内の資料に載せない決まりにします。
根拠が出ていれば、同じ質問に違う数字が返ったときに、どこが違うのかをすぐに見比べられます。「税込みの表を使った」「返品を除いていない」といった違いが、答えを見た現場の社員自身にも分かります。確かめの問い合わせの多くは、根拠を読めば現場で片づきます。
根拠の読み方は、現場の社員にも短く教えます。使った表の名前、絞り込みの条件、集計の期間の3か所を見れば、多くの食い違いには気づけます。集計の命令そのものを読めなくても、この3か所は読めます。
AIに根拠を書かせても、根拠が正しいかは別の問題です。AIが「返品を除いた」と書いていても、実際の集計の命令が除いていないこともあり得ます。重要な数字は、根拠の文だけでなく、元の表の数字で確かめる人を決めておくようにします。
- 根拠の出し方は製品によって違います。答えに使った表や集計の命令を表示できるかは、開く前に実際に試して確かめてください。
- 根拠を出す設定にしても、社員が読まなければ意味がありません。資料に数字を載せるときは根拠の3か所を書き写す決まりにしておくと、読む習慣がつきます。
検算と問い合わせの持ち場を決める
開いたあとに増える問い合わせと、数字の確かめを誰が受けるかを、開く前に決めておきます。持ち場を分けると、次のようになります。
| 持ち場 | 受け持つこと | AIに任せてよいこと | 人が決めること |
|---|---|---|---|
| 現場の社員 | 自分の質問の答えの根拠を読む。資料に載せる数字の根拠を書き写す | 集計と表・グラフの作成 | 資料に載せるかどうか |
| 部署の窓口 | 部署の中の確かめの問い合わせを最初に受ける | 根拠の見比べの下書き | 定義の見直しに回すかどうか |
| 推進の担当者 | 質問と答えの記録を読み、食い違いを集める | 記録からよく聞かれる指標を洗い出す | 開く表と見せる範囲の見直し案 |
| データの持ち主 | 表の中身と指標の定義に責任を持つ | 列の説明の下書き | 指標の定義と開く表の決定 |
部署の窓口は、分析の専門家である必要はありません。根拠の3か所を読み、定義の文書と見比べられる人であれば務まります。窓口が一次の問い合わせを受けることで、分析の担当者やデータの持ち主に届くのは、定義の見直しが必要な問い合わせだけになります。
検算の持ち場で大事なのは、どの数字を誰が確かめるかを、数字の使い道で分けることです。部署の会議で使う数字は部署の窓口が、経営会議や社外に出す数字はデータの持ち主か分析の担当者が確かめる、というように決めておきます。
持ち場の表は、開く範囲を広げるたびに見直します。部署を足せば窓口が増え、表を足せば持ち主が増えます。持ち場が決まらない部署には、まだ開かないと決めておくと、広げる速さを自然に抑えられます。
定着の数え方:使われた回数より、確かめられた答えの割合
開いたあとに民主化が進んでいるかをどう数えるかも、先に決めておきます。よく使われるのは、質問の回数や使った社員の数です。これらは使われているかの目安にはなりますが、正しく使われているかは分かりません。
回数と合わせて数えたいのは、資料に載った数字のうち、根拠が添えられ、定義と照らして確かめられたものの割合です。質問の回数が増えても、この割合が下がっていれば、確かめられていない数字が社内に増えていることになります。
問い合わせの中身も数えます。問い合わせのうち、根拠を読めば現場で解決できたもの、定義の見直しに回したもの、見せる範囲の見直しに回したものに分けて数えると、次に直すべき線が見えてきます。定義の見直しが多ければ線2を、見せる範囲の問い合わせが多ければ線3を直します。
数えた結果を読むのは推進の担当者ですが、集計そのものはAIに下書きさせてかまいません。ただし、何を定着とみなすかの基準は、AIではなく推進の責任者が決めるようにします。基準を決めずに回数だけを追うと、使われているのに信用されない仕組みが残ります。数え始めは月に1回、推進の担当者が資料に載った数字を10件ほど抜き出し、根拠と定義を照らして確かめる、という小さな点検から始めれば十分です。
開くときによくあるつまずき
開く前後で、よく見かけるつまずきを挙げます。自社の計画に当てはまるものがないかを確かめてください。
- 日本語で聞けるAIを入れたことを、民主化の完了として発表する
- 社内のすべての表を一度に開き、同じ内容の表が2つ残ったままになる
- 定義の決まっていない指標の数字が、経営会議の資料の数字と並んで使われる
- 元の表を開けない社員が、AIを通すと中身を集計できる状態のまま開く
- 確かめの問い合わせの窓口を決めず、詳しい1人に問い合わせが集まる
- 質問の回数だけを定着の目安にして、確かめられた答えの割合を見ない
並べてみると、どのつまずきもAIの性能の問題ではありません。どの表を開くか、定義をどこまで固めるか、誰に見せるかという3つの線と、確かめの持ち場を決めないまま開いたことから起きています。
つまずきに気づいたら、開く範囲を一度に狭めるより、問題の出た表と部署だけを止めて直します。全体を止めると、現場は元の頼み方に戻り、開き直すときに説明の手間が倍になります。
つまずきの記録は、次に開く部署への説明にも使えます。「この部署ではこういう食い違いが出たので、この定義を先に決めた」と伝えれば、次の部署は同じつまずきを避けられます。
開く前の確認項目のチェックリスト
最後に、現場に開く前に確かめる項目をまとめます。1つでも答えられない項目があれば、その表や部署はまだ開かずに、先に線を引き直します。
- AIが答えに使ってよい表を選び、それ以外の表を答えに使わせない設定にした
- 開く表ごとに、持ち主・列の意味・更新の頻度と締めの日が文書になっている
- 同じ内容の表が複数ある場合、どれを正とするかを決めた
- 毎月使う指標に絞って定義を決め、AIがその定義で答える仕組みにした
- 定義のない指標を聞かれたときの扱い(答えないか、注記を添えるか)を決めた
- 見せる相手を限る列と行を決め、権限の違う社員の立場で試して確かめた
- 答えに使った表・条件・期間をAIに出させる設定にした
- 部署の窓口・推進の担当者・データの持ち主の持ち場を決めた
- 最初に開く部署と、次の段階に進む条件を決めた
- 定着を、質問の回数と確かめられた答えの割合の両方で数えると決めた
このチェックリストの項目のうち、AIに任せてよいのは、表の候補の一覧や、個人を特定できそうな列の洗い出しの下書きまでです。どの表を開くか、指標の定義、数字の検算の持ち場は、人が決めます。線を引くのは人、線の内側で集計を返すのがAIという分担が、民主化を長続きさせます。
チェックリストは、開く範囲を広げるたびに使い直します。新しい部署に広げる前、新しい表を足す前に、同じ項目を確かめます。項目の答えを記録に残しておけば、担当者が替わっても、なぜその表を開き、なぜその列を見せていないのかを後から追えます。
チェックリストを通す会議には、データの持ち主と推進の担当者に加えて、最初に開く部署の窓口も呼びます。窓口が項目の意味を知っていれば、開いたあとに届く確かめの問い合わせにも、同じ物差しで答えられます。反対に、推進の担当者だけでチェックリストを埋めると、現場の使い方と合わない線が引かれやすくなります。項目ごとに誰が答えたかを残しておくと、線を引き直すときに相談する相手も分かります。
まとめ
日本語で聞けるAIは、データを現場に開くときの聞き方の壁を下げました。しかし道具を配っただけで開くと、同じ質問に違う数字が返り、定義が二重になり、見てはいけない行が見え、確かめの問い合わせがむしろ増えます。開く前に引く線は、どの表を開くか、指標の定義をどこまで固めるか、誰にどの行まで見せるかの3つです。1つの部署と数枚の表から始め、質問と答えの記録を読みながら段階で広げます。AIには答えに使った表と条件を出させ、表の選定・指標の定義・数字の検算の持ち場は人が決める。定着は質問の回数だけでなく、確かめられた答えの割合で数える。この線を先に引いておけば、データの民主化は、AIだけに頼らずに進められます。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
