受入検査の記録と仕入先の不適合の履歴から、品目ごとの検査の厳しさを見直す
受入検査の記録と不適合の履歴を品目ごとに集計し、検査の厳しさを見直す候補を出します。何年も不適合の出ていない品目と、不適合が続いている品目を分けて、全数・抜取・無検査の区分を変える提案まで作ります。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Microsoft Copilot
- 連携・自動化
- Google Apps Script/Make/n8n/Power Automate/Python
- 対象業界
- 医療/建設/物流/製造/飲食
- 対象部門
- 品質管理/購買
- 対象業務
- 内容確認・チェック/集計・分析
- 主な課題
- データ分析に時間がかかる/判断に時間がかかる/属人化している
- AIで行う処理
- 判定
- 主な効果
- 判断支援/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- SaaS追加(小)
- 人間の確認
- 必須
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 生産管理システムから、前月の受入検査の記録をロット単位で書き出す
- 品質管理システムから、同じ期間の不適合報告を書き出す
- 表計算ソフトに貼り付け、品目コードで並べ替える
- 品目ごとに、受入ロット数、合格したロット数、不適合の件数を数える
- 不適合報告の本文を1件ずつ読み、何の不適合だったのか(寸法か、外観か、書類か)を分ける
- 品目マスタの現在の区分と見比べ、緩められそうな品目と戻すべき品目を書き出す
- 品質保証の責任者に説明する資料を作り、会議にかける
- 自動月初の定時にワークフローが動き、前月分の受入検査記録と不適合報告を書き出す
- 自動品目マスタから現在の検査区分、除外リスト、直近のリセット事由を読む
- 自動品目ごとに実績を集計する(受入ロット数、連続合格ロット数、不適合件数、合格率)
- 自動不適合報告の本文を5つの区分(寸法・外観・材質・数量・書類)に分ける
- 自動集計値を基準表に当て、`relax` / `keep` / `tighten` / `hold` を機械的に決める
- 自動除外リストに載っている品目を、提案の対象から外す
- 自動候補に添える説明文の下書きを作り、見直し候補の一覧にまとめる
- 人担当者が一覧を開き、`relax` と `tighten` のものだけ根拠を確かめる
- 人品質保証の責任者へ承認を依頼する
- 人承認されたものだけが「反映待ち一覧」に載り、担当者がマスタを書き換える
- 自動緩めた品目は監視期間に入り、不適合が出たら次の月に `tighten` で出てくる
各工程の詳しい説明を読む
- 生産管理システムから、前月の受入検査の記録をロット単位で書き出す
- 品質管理システムから、同じ期間の不適合報告を書き出す
- 表計算ソフトに貼り付け、品目コードで並べ替える
- 品目ごとに、受入ロット数、合格したロット数、不適合の件数を数える
- 不適合報告の本文を1件ずつ読み、何の不適合だったのか(寸法か、外観か、書類か)を分ける
- 品目マスタの現在の区分と見比べ、緩められそうな品目と戻すべき品目を書き出す
- 品質保証の責任者に説明する資料を作り、会議にかける
(a)4番目で終わってしまう。 数える作業が重く、そこまでで力尽きます。数字は出るのに、見直しの提案まで進まない月が続きます。 表計算の式を組んでも、書き出しの列が月によって変わって壊れます。
(b)5番目が人によって違う。 「ねじ山がつぶれていた」を寸法とするか外観とするかは、読む人によって分かれます。同じ不適合が、担当者が代わると別の区分に入ります。 半年後に集計し直すと、前回と違う傾向が出てきます。
(c)実績をどこから数えるかが決まっていない。 仕入先を切り替えた品目や、図面を改訂した品目でも、切り替え前の合格実績をそのまま足してしまいます。中身が変わった後の実績が12ロットしかないのに、「50ロット連続合格」と書かれた提案が出てきます。
(d)緩めた後を追っていない。 抜取に落とした品目が、その後どうなったかを見る仕組みがありません。不適合が出ても、区分を戻す話にならないまま次の点検まで放置されます。 戻す動線が無い状態です。
- 【自動】 月初の定時にワークフローが動き、前月分の受入検査記録と不適合報告を書き出す
- 【自動】 品目マスタから現在の検査区分、除外リスト、直近のリセット事由を読む
- 【自動】 品目ごとに実績を集計する(受入ロット数、連続合格ロット数、不適合件数、合格率)
- 【自動】 不適合報告の本文を5つの区分(寸法・外観・材質・数量・書類)に分ける
- 【自動】 集計値を基準表に当て、
relax/keep/tighten/holdを機械的に決める - 【自動】 除外リストに載っている品目を、提案の対象から外す
- 【自動】 候補に添える説明文の下書きを作り、見直し候補の一覧にまとめる
- 【人】 担当者が一覧を開き、
relaxとtightenのものだけ根拠を確かめる - 【人】 品質保証の責任者へ承認を依頼する
- 【人】 承認されたものだけが「反映待ち一覧」に載り、担当者がマスタを書き換える
- 【自動】 緩めた品目は監視期間に入り、不適合が出たら次の月に
tightenで出てくる
5番目を機械の規則で決めているのが、この設計の要です。 不適合の内容を区分することはAIにさせますが、その結果を「緩めてよい」と読み替えるのは基準表の仕事です。 基準が変われば直すのは表だけで、過去の集計をやり直す必要がありません。
10番目を自動にしないでください。 承認が下りた後も、マスタの書き換えは人が行います。承認とマスタ更新を一本につなぐと、押し間違いが即座に検査の省略になります。 歩留まりの話ではなく、不良が客先に出るかどうかの話なので、ここだけは二重にします。
02今回想定するシステム構成
毎月1日の定時(前月分の受入検査記録が確定した後) │ ▼【トリガー】スケジュールで起動 Power Automate ├──▶ 受入検査記録・不適合報告・品目マスタを書き出す ▼ Python ── 品目ごとに集計する(数を数えるのはここだけ) │ ① リセット起点の決定 ② 連続合格ロット数 ③ 不適合の件数 │ ④ 合格率 ⑤ 除外リストの照合 ▼ Microsoft Copilot ── 不適合の本文を5区分に分け、説明文の下書きを作る │ (数は数えない。緩める・戻すの判定もしない) ▼ Python ── 集計値を基準表に当て、proposal を決めて一覧にまとめる ▼ Power Automate ── 承認 - 開始して承認を待機(品質保証の責任者) ▼ 【承認されたものだけ「反映待ち一覧」へ】 ├──▶ 担当者が検査区分マスタを書き換える └──▶ 緩めた品目は監視期間に入る
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 処理 | Microsoft Copilot | Claude API、OpenAI API |
| 集計 | Python | Google Apps Script |
| 連携 | Power Automate | Make、n8n |
生産管理システムと品質管理システムは、新しく足すものではありません。 どちらからも読み出すだけです。品目マスタも読み取りだけで、書き換えは承認後に人が行います。
Microsoft Copilot は、Microsoft 365 アプリに組み込まれたAIの機能です。 Excel では「データを分析し、分析情報を生成し、数式とビジュアルを作成します」とされていますが、この構成では集計をCopilotにさせません。 件数と連続回数は Python で確定させます。
ライセンスによって、組織のデータの渡し方が変わります。 Copilot Chat(基本)と Microsoft 365 Copilot(基本)は Microsoft Graph 経由で組織データを使えないとされており、プロンプトでコンテンツをアップロードするか、開いているコンテンツで使うか、組織のコンテンツにアクセスできる従量課金制エージェントを使う必要があります。Microsoft 365 Copilot(Premium)は Microsoft Graph と Work IQ を介して自動で取り込みます。この構成は前者を前提に、不適合報告の抜粋をファイルで渡します。
承認は Power Automate の「承認 - 開始して承認を待機」アクションで作ります。 任意のフローに追加すると、ドキュメントやプロセスの承認を管理できるとされています。承認者は、電子メールの受信ボックスからも承認センターからも返信できます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
月に1回、前月分の受入検査記録が確定した後に動かします。 締めの前に動かすと、月末に入った受入が集計から漏れ、連続合格の数が1つずれます。この構成では、1ロットのずれが提案の中身を変えます。
毎日動かす必要はありません。検査の区分は決めたら数か月から数年そのままにする設定で、日次で候補を出しても待ち行列が伸びるだけです。
ただし例外が1つあります。不適合が出た品目は、月初を待たずにその場で tighten の候補を立てます。 緩めた品目に不適合が出たとき、次の月初まで抜取のままにする理由がありません。不適合報告の登録を、もう1つのトリガーにします。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 受入検査の記録 | 品目コード、ロット番号、検査日、合否、数量 | 生産管理システム |
| 不適合報告 | 報告番号、品目コード、仕入先コード、発生日、不適合の本文 | 品質管理システム |
| 品目マスタ | 品目コード、名称、現在の検査区分、決めた日、監視期間の期限 | 品目マスタ |
| 除外リスト | 安全にかかわる品目、法規制のある品目、顧客指定のある品目 | 自社で用意する一覧 |
| リセット事由 | 仕入先の変更、製造ロット系列の変更、仕様変更の発生日 | 購買システム、設計変更の記録 |
| 判定基準表 | 緩める条件、戻す条件、判断保留の条件 | 自社の検査基準(品質保証が決める) |
下の3つが無いと、この構成は動きません。 除外リストが無ければ緩めてはいけない品目が候補に載り、リセット事由が無ければ古い実績が足され、判定基準表が無ければ提案が作れません。どれも人が用意する表です。
不適合報告の本文は、原文のまま渡します。 要約された文面では、区分の根拠にできる語句が落ちます。「表面に0.3ミリのキズ」が「外観不良」に置き換わると、判別できません。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| ロット単位の合否 | 生産管理システムの受入検査テーブル | 受入ロット数、連続合格数、合格率 |
| 不適合報告の本文 | 品質管理システムの報告テーブル | 内容の区分、説明文の下書き |
| 現在の検査区分 | 品目マスタ | 提案の起点。緩める先と戻す先 |
| 仕入先の変更日 | 購買システムの発注履歴 | リセット起点の候補 |
| 図面改訂の日付 | 設計変更の記録 | リセット起点の候補 |
取り出し方はCSVの書き出しで足ります。 月に1回しか動かさないので、定時の書き出しを共有フォルダに置く方式で十分です。
リセット起点は、候補のうち最も新しい日付を採ります。 仕入先を変えた日、製造ロット系列が変わった日、図面を改訂した日のうち、いちばん後の日です。その日より前の合否は集計から外します。
電子で取れない事由もあります。 製造所の移転や金型の作り直しは、仕入先からの連絡文書にしか残っていないことがあります。取れないものは、品目マスタに手で入れる欄を作ります。 無視すると、第3章の(c)がそのまま残ります。
AIへ渡す前に整形する
- 期間の切り出し … 直近24か月分の受入検査記録と不適合報告を対象にします
- リセット起点の決定 … 仕入先変更・ロット系列変更・仕様変更の最新日を求めます
- 起点より前の除外 … 起点より前のロットを集計から落とします
- 母数の確認 … 起点以降の受入ロット数を数えます。12未満なら、この時点で判断保留です
- 連続合格ロット数の算出 … 直近の不適合から後ろのロット数を数えます
- 不適合件数の算出 … 直近12か月と直近24か月で、それぞれ件数を数えます
- 除外リストの照合 … 該当する品目に印を付け、緩める提案の対象から外します
- 監視期間の確認 … 前回緩めた品目が監視期間の中にあるかを見ます
4番目を飛ばさないでください。 月に1回しか受入の無い品目では、24か月あっても20ロット程度しかありません。母数が足りない品目に「不適合0件だから緩める」と書くのは、偶然を根拠にすることです。
7番目の除外は、AIに渡す前に行います。 除外リストの品目も不適合の区分は付けますが、提案の欄は最初から空にします。 緩める候補として画面に出た時点で、承認する側が迷います。
AIに処理させる
させるのは2つだけです。不適合報告の本文を5つの区分に分けることと、候補に添える説明文の下書きを作ることです。
| 区分 | 何を入れるか | 迷いやすい例 |
|---|---|---|
| 寸法 | 寸法、公差、形状、反り、ねじのピッチが図面と合わない | 「ねじ山がつぶれている」は寸法 |
| 外観 | キズ、打痕、さび、汚れ、塗装、印字のかすれ | 「変色」は原因が材質でも外観のまま |
| 材質 | 材質、成分、硬さ、強度、試験値が仕様と合わない | 「硬度が規格下限を下回る」は材質 |
| 数量 | 数量の過不足、員数違い、入り数の相違 | 「1箱だけ数が足りない」は数量 |
| 書類 | 試験成績書、検査成績書、ラベル、表示の不備や不足 | 「成績書の押印漏れ」は書類 |
判断できないものには区分を付けません。 本文が「不良のため返品」だけの報告は、読み取れる情報がありません。unclassifiable にして人へ回します。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 件数、率、連続合格回数を数えること | 数は Python が確定させる。AIが数えると集計と食い違う |
| 検査の区分を緩める・戻すの判定 | 基準表に当てて機械が決める。基準は自社の取り決め |
| 基準そのものを作ること | 何ロットで緩めるかは品質保証が決める。AIに案を出させない |
| 不適合の原因や責任の推定 | 報告に書かれていないことを書く。是正処置の話と混ざる |
| 品目をまたいだ傾向の記述 | 「この仕入先は全体的に」は根拠を追えない |
1行目がいちばん起きやすい失敗です。 集計値をそのまま引用させないと、「直近20ロット程度は合格が続いています」といった、数え直した数字が入ります。 一覧と本文で数字が違う資料は、承認の場で信用されません。
指示内容を固定する
あなたは品質保証部門で、受入検査の不適合報告を読み、内容を区分する立場です。
本文だけを見て区分してください。原因や責任を推定しないでください。
【区分】次の6つから1つだけ選びます。
- dimension ..... 寸法、公差、形状、反りが図面や仕様と合わない
- appearance .... キズ、打痕、さび、汚れ、塗装、印字など外観の不良
- material ...... 材質、成分、硬さ、強度、試験値が仕様と合わない
- quantity ...... 数量の過不足、員数違い、入り数の相違
- document ...... 成績書、ラベル、表示の不備や不足
- unclassifiable 上のどれにも当てはまらない、または本文から読み取れない
迷ったときに、それらしい区分を選ばないでください。unclassifiable にしてください。
【厳守事項】
- 件数、率、連続合格の回数といった数値を、自分で数えないでください。
集計は別に済んでいます。あなたが数えた数値は使いません。
- 検査を緩める、強化する、据え置くという提案を書かないでください。
区分の変更は、別に定めた基準表に従って機械が決めます。
- 基準そのもの(何ロットで緩めてよいか等)を書かないでください。
- 本文に無いことは「記載なし」とし、原因や責任を推定しないでください。
- evidence には区分の根拠にした本文の語句をそのまま写し、要約しないでください。
- 1件に複数の不適合があれば、要素ごとに分けて並べてください。
- draft_comment は2文から3文で。集計値は数値と単位をそのまま写し、
計算し直さないでください。
- draft_comment に「緩めてよい」「問題ない」と書かないでください。事実だけを書き、
責任者に確かめてほしい点は points_for_reviewer に短く並べてください。
【不適合報告(原文)】{nc_reports}
【この品目の集計値(計算済み。引用のみ可)】{metrics}
【この品目の現在の検査区分とリセット事由】{current_level}
「自分で数えないでください」を最初に書かないと数えます。 不適合報告を5件渡せば、指示が無い限り「5件」と書きます。それ自体は正しくても、集計側が同じ報告を1件として扱っていれば、数が食い違います。
「緩めてよいと書かない」も同じ理由です。 合格が続いている品目の情報を渡すと、何も言わなければ結論まで書きます。結論の代わりに、責任者が見るべき点を並べさせます。
出力形式を固定する
次の形のJSONで受け取ります。
{
"item_code": "",
"period": "2026-04 .. 2026-09",
"nonconformities": [
{ "nc_id": "", "supplier_code": "",
"category": "dimension | appearance | material | quantity | document | unclassifiable",
"evidence": "" }
],
"draft_comment": "",
"points_for_reviewer": []
}
集計値と判定は、このJSONに入れません。 受入ロット数も連続合格ロット数も proposal も、Python が別に持ちます。AIの出力は区分と文章だけです。 層を分けておけば、基準を変えても作り直すのは判定の側だけです。
判定は、次の基準表に当てて機械的に決めます。 表の数字は例です。自社の品質保証が決め、決めた日付とあわせて残します。
| 現在の区分 | 緩める条件(すべて満たすこと) | 1段戻す条件 |
|---|---|---|
| 全数 | 受入ロット12以上、連続合格12以上、直近12か月の不適合0件、除外リストに無い | 直近12か月に不適合1件以上で全数のまま |
| 抜取 | 受入ロット24以上、連続合格24以上、直近24か月の不適合0件、除外リストに無い | 直近12か月に不適合1件で全数へ |
| 無検査 | これ以上は緩めない | 不適合1件で抜取へ。重欠点なら全数へ |
| 共通 | 受入ロットが12未満なら判断保留 | 監視期間中の不適合は即座に元の区分へ |
(受入ロット数と連続合格は、リセット起点より後だけを数えます。)
proposal は relax / keep / tighten / hold の4つです。hold(判断保留)を必ず置いてください。 母数が足りない品目を keep にまとめると、「見たが変えなかった」と「まだ判断できない」が同じ欄に入ります。
監視期間は、緩めた品目に付ける期限です。 全数から抜取に落とした品目には、6か月のあいだ watch の印を付けます。この期間に不適合が1件でも出たら、基準表の条件にかかわらず元の区分へ戻します。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 生産管理システム | CSVの書き出し | 受入検査の合否をロット単位で取る |
| 品質管理システム | CSVの書き出し | 不適合報告の本文を取る |
| 品目マスタ | 読み取りのみ | 現在の区分、除外の印、監視期間 |
| Microsoft Copilot | ファイルを渡して実行 | 不適合の区分と説明文の下書き |
| Power Automate | 承認 - 開始して承認を待機 | 責任者へ承認を依頼する |
| 検査区分マスタ | 人の手 | 承認後に担当者が書き換える |
承認アクションでは、承認の種類、タイトル、割り当て先、詳細を設定します。 割り当て先に入れた電子メールアドレスへ承認要求が送られ、承認の種類はドロップダウンから選ぶほか、カスタム値の入力で独自の値を作れるとされています。詳細の欄は Markdown で書式を設定できるため、集計値と下書きを読める形で載せられます。
承認の後の分岐は、条件アクションで作ります。 「応答承認者の応答」が「承認」と等しいかを見て分かれます。承認された側では「応答承認者名」と「応答のコメント」を反映待ち一覧に書き込み、却下された側ではコメントだけを記録します。
マスタへの書き込みは行いません。 承認が下りても、出力は反映待ち一覧までです。区分を変えるのは担当者の操作にして、いつ誰が変えたかを残します。
人が確認する
人が開くのは relax と tighten のものだけです。 keep は件数を見るだけ、hold は母数が足りない理由の欄だけを見ます。全件を開く設計にすると、第10章の9.0時間には収まりません。
tightenを先に見る … 不適合が出ている品目です。緩めたまま放置している品目が無いかを確かめますrelaxの根拠を確かめる … リセット起点が正しいか、除外リストの漏れが無いかを見ます。合格が続いている理由が「受入が少ないから」でないかを見ます- 区分の付き方を確かめる …
evidenceを読み、寸法と外観の取り違えが無いかを見ます - 承認へ回す … 説明文の下書きを直し、責任者へ承認を依頼します
2番目を省かないでください。 緩める提案は、不良が客先まで流れる経路を1本増やす判断です。承認する責任者は数字を見ますが、リセット起点までは見られません。
目標は、180品目をならして1品目3分です。 開くのは2割前後という想定で、それより多い月は、基準表が緩すぎるか、除外リストが足りていません。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 受入ロット数が12未満 | hold。母数が足りないことを理由として書く |
| リセット事由が取れない | 品目マスタの手入力欄を見る。空なら hold |
| 不適合報告の本文が短すぎる | unclassifiable。区分を付けずに担当者へ回す |
| 1件の報告に複数の不適合 | 要素ごとに分けて並べる。まとめない |
| 除外リストに載っていない安全部品 | relax を出す前に、除外の抜けを疑う |
| 品目コードが変わっている | 旧コードとの対応表を引く。引けなければ hold |
| 承認が返ってこない | 期限を切って督促し、期限切れは据え置きとして記録する |
| 承認が30日を超える | 承認データを Microsoft Dataverse に保存する構成にする |
| 要求を出し間違えた | 承認の作成(v2)では取り消しがサポートされている |
| 緩めた直後に不適合 | 監視期間の規則で即座に戻す。基準表の条件を待たない |
下から3行目は、この構成でいちばん詰まりやすいところです。 承認者が1名で月に数十件が回ると、返事が来ないまま月が変わります。フローの実行期間が30日を超える可能性がある場合は、承認データを Microsoft Dataverse に保存するとされており、元のフローの実行がタイムアウトした後でも応答で動くフローを作れます。要求を送るフローと、応答で処理を行うフローの2つに分ける形です。
取り消しができることも効きます。 送信したユーザーは要求を取り消すことができ、取り消した要求は履歴のタブで確認できます。
記録を残す
- 集計に使った受入検査記録と不適合報告の元データ(月ごと)
- 品目ごとの集計値と、そのとき適用した基準表の版
- AIが付けた区分と
evidence、人が直した記録(どちらへ変えたか) proposalと、承認の結果・承認者名・コメント・承認日時- マスタを書き換えた日時と操作した人
- 緩めた品目の監視期間と、その期間に起きた不適合
2行目の「基準表の版」が、後からいちばん効きます。 基準を12ロットから24ロットに変えると、過去の提案の意味が変わります。当時どの基準で緩めたのかが残っていないと、見直しの範囲が決まりません。 4行目の承認の記録も、品質の記録として残す前提で設計してください。
04実装レベルの3段階
最小構成では20品目が限界です。 集計を手でやるので、180品目には使えません。区分の質を確かめるための段階です。 半自動化で、1品目9分が3分程度になります。 集計と候補の抽出が自動になり、残るのは候補の確認と承認依頼です。本格構成にしても、人が確認する3分は減りません。 減るのは承認のやり取りと監視期間の追跡にかかる時間で、これは1品目あたりの数字に表れない部分です。 この記事が想定するのは半自動化です。 承認フローまで一度に組むより、候補の一覧を3か月出して、基準表が妥当かを確かめるほうが先です。 基準が固まらないうちに承認フローをつなぐと、承認する側が毎月違う基準の提案を見ることになります。
05工数削減シミュレーション
導入後 180件 × 3分 ÷ 60 = 9 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 購買品目が数百から数千あり、品目マスタに検査の区分は入っているが、決めた当時から見直されていない製造業。受入検査の合否がロット単位で電子的に残っており、不適合報告も文章で蓄積されている場合。検査の区分を変える権限を持つ品質保証の責任者が決まっていて、承認の記録を残せる場合。
- 購買品目が数十で、担当者が全品目の状態を覚えていられる場合。受入検査の記録がロット単位で残っておらず、合否の履歴をさかのぼれない場合。全品目が顧客指定または法規制で検査方法を固定されていて、変えられる余地が無い場合。なお、検査を緩めてよいかという品質上の判断そのものは、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 直近24か月の受入検査記録と不適合報告から、20品目分だけ抜き出す(緩めてよさそうな品目と、不適合が続いている品目を混ぜる)
- 表計算ソフトで、品目ごとの受入ロット数と不適合件数を手で数える
- 不適合報告の本文だけを Microsoft Copilot に渡し、5区分に分けさせる
- 出てきた区分を、担当者が読んで付けた区分と突き合わせる
- 基準表の案を1枚作り、2番の集計値を当てて
relax/keep/tighten/holdを手で決める
3番と5番を分けて行うのが要点です。 区分をAIに任せられるかと、基準表が使いものになるかは別の問題です。一度に試すと、どちらが原因で結果が合わないのかが分かりません。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 担当者の区分とほぼ一致した | 集計の自動化に進む。 区分の部分は使える |
| 寸法と外観の取り違えが多い | 指示の書き方で直る。迷いやすい例を指示に足す |
基準表を当てると大半が hold になった | 母数が足りない。条件を緩めるのではなく、対象品目を絞る |
3行目が出たら、それは失敗ではありません。 受入の回数が少ない品目が多いという、自社の実態が1つ分かったということです。その場合は、受入が月1回以上ある品目に対象を絞ってから進めてください。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| AIが件数を数えて一覧と食い違う | 数えることを明示的に禁じる。 集計値は引用のみ可とする |
| AIが緩める・戻すの結論を書く | 判定は基準表に当てて機械で決める。結論を書かせない |
| 基準をAIに考えさせてしまう | 何ロットで緩めるかは品質保証が決める。表を先に作る |
| リセット起点を取り違える | 仕入先・ロット系列・仕様の変更の最新日を採る。取れない事由は手入力欄を |
| 母数が足りない品目を緩めてしまう | hold を必ず設ける。受入ロット12未満は判断しない |
| 除外リストが未整備のまま始める | 安全・法規制・顧客指定の品目を先に洗い出す。抜けたまま relax が出ると危険 |
| 承認を経ずにマスタが変わる | 書き換えは人の操作にする。承認とマスタ更新を直結させない |
| 承認が返ってこないまま月が変わる | 期限を切り、30日を超える場合は Dataverse に保存する構成にする |
| 緩めた後を追っていない | 監視期間を付ける。期限を切らずに緩めない |
| 寸法と外観の区分が揺れる | 迷いやすい例を指示に書く。evidence を必ず出させる |
| 出力が月によって揺れる | 既定ではリアルタイム ルーターがモデルを選ぶ。指示を厳密に書き、揺れを前提に確認する |
| Excel で Copilot が使えない | コンテンツを分析する接続エクスペリエンスがオフだと使えない。設定を確認する |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「AIに任せる範囲を広げすぎた」という同じ形をしています。数えることと決めることを機械と人に分け、AIには読むことと書くことだけを残すと、運用に乗ります。
下の2行は、着手の前に確かめてください。 接続エクスペリエンスのプライバシー制御のうち、コンテンツを分析する接続エクスペリエンスをオフにすると、Excel、OneNote、Outlook、PowerPoint、Word で Copilot 機能を使用できなくなるとされています。組織の設定しだいで、検証が始まる前に止まります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 仕入先ごとの不適合の履歴、品目ごとの検査の合否、どの品目の検査を緩めたかという情報です。
- 仕入先の不適合履歴は、取引に直結する情報です … 特定の仕入先の不適合が続いているという記録は、外に出れば取引の継続そのものに関わります。 仕入先コードを必要な範囲を超えて渡さないでください
- どの品目を無検査にしたかは、社外に出してはいけない情報です … この一覧は、自社の受入検査の穴を並べた表でもあります。閲覧を品質保証と購買に限ってください
- 検査を緩める判断は、人が決めます … この構成が出すのは、集計した事実と基準表に当てた結果までです。緩めてよいかという判断は品質保証の責任者が決めることで、AIも基準表も代替しません
- 承認の記録を、品質の記録として残してください … 不良が流出したとき、いつ誰の承認で緩めたのかを説明する必要があります。承認者名とコメントと日時を残します
- プロンプトと応答は保存され、管理の対象になります … 管理者はコンテンツ検索や Microsoft Purview で表示・管理できるとされています。アイテム保持ポリシーで保持や削除を決められます
- AIの学習には使われないことを、社内に説明してください … Microsoft Graph 経由でアクセスされるプロンプト、応答、データは、基礎となる大規模言語モデルのトレーニングには使用されないとされています。仕入先の情報を渡してよいかの議論は、ここから始めてください
- 監査の記録を残せる状態にしてください … Microsoft Purview の監査では、プロンプトと応答が統合監査ログにキャプチャされます
誤りが起きた場合のリスクは、緩めてはいけない品目を緩めることと、実績のある品目を全数のまま抱え続けることの2つです。 前者は除外リストの抜けとリセット起点の取り違えから、後者は判断保留の放置から起きます。どちらも表の整備の問題です。
10まず何から始めるか
1週目:判定基準表を作る
品質保証と購買で集まり、何ロット連続で合格したら緩めるのか、何件の不適合で戻すのかを決めます。 決めたら日付を入れて1枚の表にします。数字に自信が無くても構いません。表が無いまま集計を始めると、出てきた数字の使い道が決まりません。
2週目:除外リストを作る
安全にかかわる品目、法規制のある品目、顧客指定のある品目を洗い出します。全品目を一度に見る必要はありません。 月に受入のある180品目から始めます。品質協定や顧客の図面に指定がある品目は、購買の担当者に聞くのが速い方法です。
3週目:20品目で試す
直近24か月の記録から20品目を抜き出し、不適合報告の本文をAIに渡して区分させます。担当者が付けた区分と突き合わせ、寸法と外観の取り違えがどれくらいあるかを見ます。 あわせて基準表を手で当て、判断保留がどれくらい出るかを数えます。
4週目:集計を自動にする
受入検査記録と不適合報告の書き出しから、品目ごとの集計までをスクリプトにします。この時点では提案を出さず、集計値だけを一覧にします。 リセット起点が正しく決まっているかを、この段階で確かめます。
2か月目: 基準表を当てて proposal を出し、候補の一覧を毎月作ります。承認フローはまだつなぎません。3か月目以降: 一覧を3か月分見て基準表を直し、そのうえで承認フローをつなぎます。監視期間の追跡を組み込み、緩めた品目が戻る動線が動いた時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| Excel でのデータの分析と数式の作成。基本ライセンスが Microsoft Graph 経由で組織データを使えないこと。既定でリアルタイム ルーターがモデルを選ぶこと | Microsoft Learn: Microsoft Copilot とは? | 2026-09-28 |
| プロンプト・応答・データが基礎となる大規模言語モデルのトレーニングに使用されないこと。接続エクスペリエンスの設定で Excel の Copilot が使えなくなること | Microsoft Learn: Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ | 2026-09-28 |
| 「承認 - 開始して承認を待機」アクションと承認センター。承認の種類・タイトル・割り当て先・詳細の設定と Markdown 書式。「応答承認者の応答」による分岐。30日超は Microsoft Dataverse に保存。取り消しの対応 | Microsoft Learn: 承認ワークフローを作成し、テストします | 2026-09-28 |
| プロンプトと応答が統合監査ログにキャプチャされること。アイテム保持ポリシーで保持・削除できること | Microsoft Learn: 生成AIアプリに対する Microsoft Purview の保護 | 2026-09-28 |
検査の区分を変える基準と、緩めてよい品目の範囲は、自社の品質保証で決めてください。 本記事は自社の検査基準を運用する前提で書いており、抜取検査の規格に基づく手順ではありません。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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