生成AIのユースケースを絞る3つの物差し|最初の3件の選び方

「生成AIの使いどころを各部署に出してもらったら、百件近く集まって、どこから手を付ければいいか分からなくなった」「経営からは早く成果を出せと言われるが、最初に選ぶ数件を間違えたら、そのまま全社の評価が決まってしまいそうで怖い」。AI推進や情シスの担当者から、こうした声が届きます。候補が集まらないのではなく、集まりすぎて決められない。全社で入れる段階に進んだ会社ほど、この状態に行き当たります。ユースケース選びは、良い案を探す作業ではありません。本当は、候補を同じ物差しで並べ、やらない理由まで説明できる形で、最初の3件に絞る作業です。この記事では、集め方、3つの物差し、定義書の項目、断り方の順に整理します。
カメ先生ユースケースは、生成AIを業務のどこで、誰が、何のために使うかを1件ずつ言葉にしたものなんだ。全社で入れるときは、その候補が多すぎて選べなくなるのが普通なんだよ。
カメ子良さそうな案から順に試していけばいいのではないですか。
カメ先生良さそうに見えるかどうかは、出した人の熱意や声の大きさで変わってしまう。だから、効果・実現のしやすさ・間違えたときの重さの3つの物差しで、同じように並べるんだ。
カメ子物差しで並べたあと、選ばなかった案を出した部署には、どう説明すればいいのでしょうか。
- ユースケースは「誰が・どの業務の・何の作業を・どこまで」の単位で書く。道具の名前や部署の名前のままでは比べられない
- 物差しは効果の大きさ・実現のしやすさ・間違えたときの重さの3つ。点数を足して決めず、重さから順に足切りする
- 候補の言い換えや束ね、定義書の下書きはAIに任せる。どれを採り、どれをやらないかはAIに任せず人が決め、理由を物差しの言葉で返す
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ユースケースは「誰が・何を・どこまで」の単位で書く
ユースケースという言葉は、使う人によって大きさがばらばらです。「営業でのAI活用」のような部署の名前の大きさもあれば、「商談の記録を要約する」のような作業の大きさもあります。大きさが揃っていない候補は、同じ物差しで比べられません。最初に、1件の大きさを決めておく必要があります。
この記事では、ユースケースを「誰が、どの業務の、何の作業を、AIにどこまで任せるか」の4つで書けるものと決めます。たとえば「営業担当が、商談の後に、記録の要約と次の連絡の下書きを作る。送るかどうかは本人が決める」です。4つのうち1つでも空いている候補は、まだユースケースになっていないと扱います。
道具の名前もユースケースではありません。「対話のAIを全員に配る」は、配る判断であって、使いどころではないからです。配った後の使われ方を広げる話は、社内の活用事例を横に広げる工程を扱った別の記事で整理しています。この記事は、配る前、あるいは配った直後に、組織として最初に力を入れる使いどころを選ぶ段階に絞ります。
また、この記事は事例の一覧を並べるものではありません。他社の事例は候補を出す手がかりにはなりますが、その会社の業務と材料の上で成り立っています。自社の候補を、自社の物差しで絞る手順のほうを扱います。
数字で見る現在地:使う会社は増え、組織の取組で止まる
総務省が2026年7月に公表した令和8年版の情報通信白書は、日本の企業で生成AIを何らかの業務で利用していると答えた割合が86.4%になったと報告しています。前の年度の調査の55.2%から大きく上がり、米国やドイツ、中国との差は小さくなりました。生成AIの活用方針を「積極的に活用する」か「領域を限定して利用する」と答えた割合も、49.7%から68.9%に上がっています。
一方で、同じ白書は、生成AIによる業務の変革について、日本では「組織的な取組はない」と答えた割合が約3割弱と、他の3か国より高いとしています。業務類型では「議事録・メール作成補助」の活用が約7割で最も高いとされています。個人の作業の補助としては広がったものの、組織として力を入れる使いどころを選ぶ段階で止まっている会社が少なくないと読めます。
白書はさらに、業務の変革に向けた環境整備として、生成AIの活用を検討するためのノウハウを学ぶ環境や、生成AIが参照できる社内データの仕組みの整備が、他の3か国より顕著に低いと書いています。使いどころを選ぶ物差しを持たないまま、個人の工夫に任されている姿が浮かびます。
この数字が示すのは、使う人が増えた後の段階では、何に組織として力を入れるかを決めないと、使い方が個人の範囲から出ないということです。最初の3件を選ぶ作業は、個人の便利さを、組織の成果に変える入り口にあたります。
- 白書の数字は、総務省「令和8年版 情報通信白書(概要)」(2026年7月)によります。調査の対象や設問は白書の原文で確かめてください
- 利用の割合は「何らかの業務で利用している」の回答で、利用の深さや効果の大きさを示すものではありません
候補が百件集まっても決まらない、3つの理由
候補を広く募ると、数十件から百件を超える案が集まることがあります。それでも決まらないのには、よくある理由が3つあります。1つ目は、候補の大きさがばらばらなことです。部署全体の話と1つの作業の話が並んでいると、比べること自体ができません。
2つ目は、同じ案が別の言葉で何度も出ていることです。「議事録をまとめる」「会議の記録を要約する」「打ち合わせのメモを整える」は、ほぼ同じ作業です。束ねずに並べると、候補の数だけが多く見え、選ぶ側は全体を見渡せなくなります。束ねると、百件の候補が三十件ほどに減ることも珍しくありません。
3つ目は、物差しが決まっていないことです。物差しが無いと、選ぶ場の議論は、出した部署の熱意、役職の高さ、声の大きさで決まりがちです。そうして選ばれた案が失敗すると、次の候補を出す部署が減ります。選ばれなかった部署にも、理由を説明できなくなります。
この3つは、集め方、束ね方、物差しの決め方で、それぞれ防げます。以下では、集める段階から順に見ていきます。順番を飛ばして物差しだけを先に作っても、大きさの揃わない候補が並んでいれば、物差しは当てられません。
集め方:現場からと、上からの2つの経路
候補を集める経路は2つあります。1つは現場からです。各部署に、日々の作業で時間がかかっているもの、繰り返しが多いものを出してもらいます。現場の候補は具体的で、効果を測りやすい反面、部署の中で閉じた小さな案に偏りがちです。
もう1つは上からです。経営や事業の責任者が、今期の重点に関わる業務を候補として出します。上からの候補は会社の方針と合いやすい反面、作業の単位まで降りておらず、「営業の生産性を上げる」のような大きな話になりがちです。上からの候補は、現場の担当と一緒に作業の単位まで分けてから並べます。
どちらの経路でも、集める書式を最初に決めておきます。誰が、どの業務の、何の作業を、どこまで任せたいか。今の1回あたりの時間と、月の回数。使う材料のデータ。この程度の欄があれば、集めた段階で大きさが揃います。自由記述だけで集めると、後で揃え直す手間がかかります。
業務を一から書き出して洗い出す方法や、社内で催しを開いて案を出し合う方法もありますが、それぞれ別の記事の範囲になります。ここで大事なのは、集める段階で、物差しに必要な数字を一緒に出してもらうことです。
集めた候補をAIで束ね、言い換える
集めた候補を束ねる作業は、生成AIに任せやすい所です。候補の一覧を渡し、同じ作業を指していると思われるものをまとめさせます。言葉の揺れが大きい候補ほど、人が読んで束ねると時間がかかるため、AIの下書きが役に立ちます。
ただし、束ねた理由を必ず書かせます。どの候補とどの候補を、どの点が同じだと見て束ねたのかを1行ずつ出させます。理由の書けない束ね方は、担当者が見直して戻します。見た目の言葉が似ているだけで、使う材料や任せる範囲が違う候補が、一緒にされていることがあるからです。
言い換えもAIに任せられます。「営業でAIを使いたい」のような大きな候補を、誰が、何の作業を、どこまで、の形に書き直した案を複数出させます。出してきた部署の担当者がその中から近いものを選べば、元の意図を外さずに大きさを揃えられます。
この段階で、AIに候補の良し悪しを判断させないことが大切です。束ねる、言い換える、欄の抜けを指摘する、までにとどめます。良さそうな順に並べさせると、物差しを当てる前に順位が付き、その順位が会議で独り歩きします。AIに任せるのは候補を揃えるところまでと決めておきます。
3つの物差しの全体像
揃えた候補に、3つの物差しを当てます。効果の大きさ、実現のしやすさ、間違えたときの重さです。どの物差しも、点数を付ける前に、何を見て判断するかの問いを決めておきます。問いが無いまま点数を付けると、付ける人ごとに意味がずれます。
| 物差し | 見ること | 判断の問い | 書き方 |
|---|---|---|---|
| 効果の大きさ | 1回の作業時間、月の回数、関わる人数 | うまくいったとき、月に何時間が戻るか | 時間の数字で書く。金額に換えるのは後 |
| 実現のしやすさ | 材料のデータ、手元の道具、担い手 | 今ある材料と道具で、3か月以内に試せるか | 足りない物を名前で書く |
| 間違えたときの重さ | 取り消せるか、社外に出るか、人が確かめるか | AIが間違えたとき、誰にどんな損が出るか | 重・中・軽の3段階と、その理由 |
3つの物差しは、見る人の役割も違います。効果の大きさは業務の担当者が、実現のしやすさは情シスやAI推進の担当が、間違えたときの重さは業務の責任者と法務やリスク管理の担当が、主に判断します。1人ですべての物差しを当てると、自分の得意な物差しに引っ張られます。
以下では、物差しを1つずつ見ていきます。どれも、生成AIの性質に合わせた見方が必要です。生成AIは、同じ入力でも出力が揺れ、もっともらしい間違いを出すことがあります。この性質を前提に物差しを当てないと、試してから想定外の問題が出ます。
物差しを当てる前に、記入の練習を1回しておくと揃いやすくなります。束ねた候補から5件ほどを選び、担当者が別々に3つの物差しを当てて、結果を見比べます。同じ候補で判断が割れた所が、問いの言葉が曖昧な所です。割れた所の問いを書き直してから、残りの候補に当てると、後の議論で物差しそのものを疑われずに済みます。
物差し1:効果の大きさは、回数と1回の時間で測る
効果の大きさは、うまくいったときに戻る時間で測ります。1回の作業にかかる時間と、月に何回その作業が起きるか、その作業をする人が何人いるかを、かけ算して出します。1回は短くても回数と人数が多い作業は、全体で戻る時間が大きくなります。
気を付けたいのは、戻る時間は作業の全部ではないことです。生成AIが下書きを作っても、人が読んで直す時間が残ります。戻る時間は、今の時間から、AIの下書きを確かめて直す時間を引いて見積もります。確かめる時間を見込まないと、試した後に効果が小さく見えて失望されます。
効果を最初から金額に換えないことも大切です。時間を金額に換える段階で、人件費の置き方によって数字が大きく動き、候補どうしの比べ方が見えにくくなるからです。最初は時間のまま並べ、選んだ後の報告で金額に換えます。
時間で測れない効果もあります。対応の質が揃う、新人が早く一人前になる、といったものです。こうした効果は無理に時間に直さず、別の欄に言葉で書いておきます。ただし、言葉でしか書けない効果だけの候補は、最初の3件には入れにくいと考えておきます。成果を説明しにくいからです。
物差し2:実現のしやすさは、材料・道具・担い手で見る
実現のしやすさは、3つの点で見ます。1つ目は材料のデータです。AIに読ませる資料や記録が、すでに電子の形で、読める場所にあるか。紙のままの資料や、個人の手元に散らばった記録が材料なら、整えるだけで時間がかかります。
2つ目は手元の道具です。会社がすでに契約している生成AIの道具で、その作業が試せるか。新しい道具の契約や、社内のシステムとのつなぎ込みが要る候補は、実現までの時間が長くなります。最初の3件は、今の道具の範囲で試せるものから選ぶと、早く結果が出ます。
3つ目は担い手です。その作業を試し、結果を記録し、うまくいかないときに直す人が、その部署にいるか。担い手がいない候補は、どれだけ効果が大きく見えても、試した後に止まります。担い手の時間も見ておきます。試しの期間中、週に何時間をその作業の記録と直しに使えるかを、その人の上長と合わせておかないと、通常の業務に押されて記録が途切れます。担い手は名前で書けるかどうかで判断します。
材料と道具と担い手のうち、何が足りないかを名前で書いておくと、今は採らない候補にも次に何が揃えば試せるかが残ります。AIエージェントに任せる場合の、業務ごとの向き不向きは、エージェントの入り口になる業務を扱った別の記事に一覧があります。ここでは、今ある物で試せるかだけを見ます。
物差し3:間違えたときの重さは、取り消せるかで決める
生成AIは、もっともらしい間違いを出すことがあります。そのため、間違えたときに何が起きるかを、他の物差しより先に見ておく必要があります。重さを決める問いは、主に3つです。間違いを後から取り消せるか、出力が社外に出るか、出す前に人が確かめるか、です。
社内の会議の記録の要約は、間違えても読み手が気付いて直せます。重さは軽です。顧客に送るメールの下書きは、送る前に人が読むなら中、そのまま送るなら重です。同じ作業でも、人が確かめる段があるかどうかで重さが変わります。重さは作業ではなく、作業と確かめ方の組み合わせで決まります。
契約や法令に関わる判断、価格の決定、人の評価、個人の情報を扱う作業は、取り消しが難しく、社外にも影響が出ます。こうした作業は、最初の3件には入れません。入れるとしても、AIには材料の整理までを任せ、判断は人が行う形に作業を区切り直します。
重さは、業務の責任者と、法務やリスク管理の担当が一緒に決めます。AIに重さを判断させることはできません。どんな損が誰に出るかは、業務と取引先の事情を知る人でなければ分からないからです。重さを決めるのは、間違いの責任を負う人と決めておきます。
点数を足さず、重さから順に足切りする
3つの物差しを当てたら、点数を足し合わせて順位を付けたくなります。しかし、合計の点数で決めると、効果が非常に大きければ、重さが重い候補でも上位に来てしまいます。間違えたときの損は、効果の大きさで打ち消せるものではありません。
そこで、物差しを当てる順番を決め、順に足切りします。最初に重さで、重の候補を外します。次に実現のしやすさで、3か月以内に試せない候補を外します。最後に、残った候補を効果の大きさで並べます。足切りの順番を決めておけば、選ばなかった理由を1つの言葉で返せます。
重の候補を外す。作業を区切り直せば中や軽になるものは、区切り直した形で戻す。
今ある材料・道具・担い手で3か月以内に試せない候補を外し、足りない物を記録する。
残った候補を、確かめる時間を引いた後の戻る時間で並べる。
上位の候補から、次の節の組み合わせの考え方で3件を選ぶ。
足切りで外した候補は、捨てるのではなく、外した理由と一緒に一覧に残します。重さで外した候補は、確かめ方を変えれば戻せるかもしれません。実現のしやすさで外した候補は、材料が揃えば次の回で試せます。
足切りの線をどこに引くかも、先に決めておきます。たとえば実現のしやすさを「3か月以内に試せるか」で切るなら、その3か月は今期の計画の区切りと合わせます。線を候補を見てから決めると、残したい候補に合わせて線が動きます。線は物差しを当てる前に、責任者の承認を取って決めておきます。
最初の3件の組み合わせ方
効果の順に上から3件を取れば済むように見えますが、組み合わせも見ておきます。上位の3件が同じ部署に偏ると、成果は出てもその部署の話で終わり、他の部署に広がりません。3件は、できれば異なる部署や異なる種類の作業から選びます。
組み合わせの考え方の1つは、役割の違う3件にすることです。1件目は、早く結果が出る軽い候補。2件目は、効果が大きく、成果を説明しやすい候補。3件目は、他の部署でも同じ形で使える、横に広げやすい候補です。早く出る1件で信頼を作り、大きい1件で投資を説明し、広げやすい1件で次につなぐ形です。
白書で最も活用が多いとされた議事録やメールの補助のような作業は、軽くて早く出る候補になりやすい一方で、すでに個人で使われていることが多く、組織として選ぶ意味が薄れます。3件すべてをこの種類にすると、個人の範囲から出ない状態が続きます。
3件に絞るのは、試した結果を丁寧に記録し、次の候補を選ぶ材料にするためです。同時に10件を試すと、どれも記録が浅くなり、どれが効いたのか分からなくなります。試しを支える側の手も限られます。設定の相談、うまくいかないときの直し、結果の取りまとめを、AI推進の担当が3件分なら見られても、10件分は見られないことが多いはずです。3件は少なすぎるのではなく、学ぶために絞った数です。
ユースケース定義書の項目表
選んだ3件は、1件ずつユースケースの定義書に落とします。定義書は、試す前に関係者が同じものを見て、何をどこまで試し、何が起きたら止めるかを揃えるための1枚です。次の項目を、空欄なく埋めます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 名前 | 誰が・どの業務の・何の作業を、の1行 |
| 任せる範囲 | AIにどこまで任せ、どこから人が行うか |
| 材料 | AIに読ませるデータと、読ませないデータ |
| 道具 | 使う生成AIの道具と、その設定 |
| 確かめ方 | 出力を誰が、いつ、何を見て確かめるか |
| 効果の見込み | 今の時間・回数・人数と、戻る時間の見積もり |
| 重さ | 間違えたときの影響と、重・中・軽の判断の理由 |
| 担い手と責任者 | 試す人、記録する人、止める判断をする人の名前 |
| 止める条件 | どんな間違いが何件起きたら止めるか |
| 見直しの時期 | 結果を評価して続けるかを決める日 |
定義書の下書きは、AIに作らせてかまいません。集めたときの書式と、物差しを当てた記録を渡せば、項目を埋めた下書きが出ます。ただし、任せる範囲、重さ、止める条件の3項目は、AIの下書きを使わず、人が書きます。この3つは、間違いの責任を誰がどこまで負うかを決める項目だからです。
定義書は、試した後の評価にもそのまま使います。効果の見込みの欄に、実際に戻った時間を書き足し、止める条件に当たった件数を記録します。試す前と後を同じ紙で比べられることが、次の候補を選ぶときの一番の材料になります。
定義書の置き場所と書式は、3件で同じにします。部署ごとに別の書式で書くと、試した後に比べられなくなります。置き場所は、関係者が読めて、変更の記録が残る場所にします。試しの途中で任せる範囲を広げたくなったら、定義書を書き直し、誰がいつ変えたかを残してから広げます。
定義書を書くときの落とし穴
定義書は1枚で済む分、書き方の甘さがそのまま試しの失敗につながります。よく見かける落とし穴を挙げておきます。
- 任せる範囲を「AIで効率化」とだけ書き、どこから人が行うかが決まっていない
- 確かめ方の欄が「担当者が確認」だけで、何を見て確かめるかが書かれていない
- 止める条件が無く、間違いが続いても誰も止める判断ができない
- 効果の見込みに、確かめる時間を引く前の時間を書いている
- 読ませないデータを決めておらず、個人の情報や社外秘の資料が材料に混ざる
中でも多いのは、止める条件が抜けることです。試しを始めると、関係者は成果を出したい気持ちになり、間違いが出ても続けたくなります。止める条件を試す前に決めておくことで、続けるかどうかの判断が気分に左右されなくなります。
読ませないデータの欄も、空けたままにしがちです。材料の欄に何を読ませるかは書いても、何を読ませないかは書かれていないことが多いのです。顧客の個人の情報、未公表の数字、契約の条件など、業務で扱うが読ませない物を、名前で書いておきます。
確かめ方の欄も、具体的に書くほど試しが進みます。「担当者が確認」ではなく、「要約に出てきた金額と日付を、元の記録と1件ずつ突き合わせる」のように、何を何と比べるかまで書きます。確かめる項目が決まっていれば、確かめる時間も測れ、効果の見込みの欄の数字が正しかったかも分かります。
やらない候補の断り方
最初の3件を選ぶことは、残りの候補をやらないと決めることでもあります。候補を出した部署への返し方を誤ると、次の回で候補が出てこなくなります。断り方は、選び方と同じくらい丁寧に決めておきます。
返し方は、3つの行き先に分けます。1つ目は保留で、実現のしやすさで外した候補です。何が揃えば次の回で試せるかを添えて返します。2つ目は個人の利用に任せる候補で、効果が小さく軽い作業です。組織の試しには入れないが、各自が使ってよい範囲であることを伝えます。3つ目はやらない候補で、重さで外したものです。やらない理由は、どんな間違いがどこに損を出すかの言葉で返します。
理由は、物差しの言葉で返すことが大切です。「優先度が低い」「今回は見送り」だけでは、出した部署は何を直せばよいか分かりません。足切りのどの段で外れたかを伝えれば、候補を直して次の回に出し直せます。外した理由を一覧として公開しておくのも、選び方への納得につながります。一覧には、候補の名前、出した部署、外れた段、次に何が揃えば戻せるか、の4つを並べておけば足ります。次の回の候補を集めるとき、この一覧が出し直しの入口になります。
やらない判断はAIに任せません。断りの文面の下書きはAIに作らせてもよいですが、どの候補をやらないかと、その理由は、物差しを当てた人が決めて、責任者の名前で返します。断る理由に責任者の名前が付くことで、選び方が信頼されるようになります。
決める場と、AIに任せない範囲
最後に、誰がどこで決めるかを決めておきます。物差しを当てる作業は、AI推進や情シスの担当が取りまとめても、最初の3件を決めるのは、業務の責任者とAI推進の責任者が同席する場にします。業務の責任者がいない場で決めると、試しの担い手を出してもらえません。
AIに任せる範囲は、ここまでの節で見てきたとおりです。候補の言い換え、重複の束ね、欄の抜けの指摘、定義書と断りの文面の下書きです。どの候補を採るか、どれをやらないか、重さの判断、止める条件は、AIに任せないと、決める場の約束として書いておきます。
決めた結果と理由は、記録に残します。どの候補を、どの物差しのどの段で選び、あるいは外したか。その記録があれば、次の回で物差しの置き方そのものを見直せます。たとえば、重さで外しすぎて試せる候補が減ったなら、確かめ方を足して戻す、といった調整ができます。
見直しは、3件の試しの結果が出る3か月後を目安に置きます。続ける、広げる、止めるを、定義書の記録をもとに決め、次の3件を選びます。この繰り返しで、物差しそのものが、自社の業務に合う形に育っていくことが、最初の3件を丁寧に選ぶ一番の意味です。
まとめ
生成AIのユースケース選びで詰まるのは、候補が足りないからではなく、大きさの揃わない候補が多すぎて、同じ物差しで比べられないからです。候補は「誰が・どの業務の・何の作業を・どこまで任せるか」の単位に揃え、効果の大きさ、実現のしやすさ、間違えたときの重さの3つの物差しを当てます。点数を足さず、重さ、実現のしやすさの順に足切りしてから効果で並べ、役割の違う3件を選びます。選んだ3件は定義書1枚に落とし、止める条件まで決めてから試します。候補の言い換えや束ね、定義書の下書きはAIに任せ、どれを採り、どれをやらないかはAIに任せず、責任者が物差しの言葉で理由を返す。この分担が、次の3件を選ぶ材料を残していきます。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
