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大学の教員が書いたシラバスを学内の記載要領に照らして点検し、直しの案を付けて教務の担当へ返す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

教員が教務システムに入力したシラバスを、学内の記載要領に照らして項目ごとに点検します。到達目標の書き方、成績評価の割合、授業外学修の時間の不備を拾い、直しの案を付けて教務の担当へ返します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
対象業界
教育
対象部門
総務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
人手が足りない/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
校正
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 教員が教務システムの入力画面にシラバスを入力し、提出する
  2. 教務課の担当が、提出済みのシラバスを1件ずつ画面で開く
  3. 到達目標の数と書き方、成績評価の方法と割合、授業計画の回数、授業外学修の記載を、記載要領と見比べながら読む
  4. 評価の割合を足し算し、単位数と授業時間から授業外学修の時間が足りているかを確かめる
  5. 気づいた不備を、教員ごとにメールの文面に書き起こす
  6. メールで教員に修正を依頼し、修正の提出を待つ
  7. 修正されたシラバスを再び開き、直っているかを確かめてから公開の手続きに回す
導入後(After)
  1. 人教員が教務システムの入力画面にシラバスを入力し、提出する
  2. 自動毎日夕方、提出済み・未点検のシラバスを教務システムから表の形で書き出し、共有フォルダに置く
  3. 自動プログラムが数字の点検を行う(評価の割合の合計、授業外学修の時間、授業計画の回数、到達目標の個数)
  4. 自動Azure OpenAI が言葉の点検を行い、記載要領の項目ごとに不備の候補、原文の箇所、直しの案を返す
  5. 自動プログラムが、AIの挙げた原文の箇所がシラバスに実在するかを照合し、照合できない指摘を外す
  6. 自動数字の点検と言葉の点検をまとめ、教員ごとの依頼文の下書きを作る
  7. 人教務の担当が一覧で指摘を読み、採る・直す・外すを選ぶ
  8. 人採った指摘で依頼文を確定し、教員へ送る
  9. 人修正されたシラバスは、もう一度同じ点検を通してから公開の手続きに回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 教員が教務システムの入力画面にシラバスを入力し、提出する
  2. 教務課の担当が、提出済みのシラバスを1件ずつ画面で開く
  3. 到達目標の数と書き方、成績評価の方法と割合、授業計画の回数、授業外学修の記載を、記載要領と見比べながら読む
  4. 評価の割合を足し算し、単位数と授業時間から授業外学修の時間が足りているかを確かめる
  5. 気づいた不備を、教員ごとにメールの文面に書き起こす
  6. メールで教員に修正を依頼し、修正の提出を待つ
  7. 修正されたシラバスを再び開き、直っているかを確かめてから公開の手続きに回す

(a)数字の食い違いが見落とされる。 評価の割合は「定期試験50%、レポート30%、平常点30%」のように合計が110%になっていても、文字として読むと気づきにくい項目です。授業外学修の時間も、単位数と授業の時間から差し引いて計算しなければ分かりません。読む作業と計算する作業が混ざっているので、どちらも粗くなります。

(b)職員によって指摘の細かさが違う。 「理解する」を到達目標に書いたシラバスを、ある職員は差し戻し、別の職員は通します。同じ学部の教員でも、点検した職員によって扱いが変わります。 教員からは「去年は何も言われなかった」と返され、説明に時間を取られます。

(c)依頼の文面を書くのに時間がかかる。 不備を見つけたあと、どの項目が要領のどの規定に当たるのか、どう直せばよいのかを、教員が読んで分かる文に書く必要があります。見つける時間より書く時間のほうが長いシラバスも珍しくありません。

(d)全件を丁寧に読むのは続かない。 締切の直後は1日に数十件が届きます。忙しい週ほど、到達目標の書き方のような言葉の点検から省かれます。 数字の点検だけが残り、記載要領の趣旨である「学生に分かる書き方」が置き去りになります。

  1. 【人】 教員が教務システムの入力画面にシラバスを入力し、提出する
  2. 【自動】 毎日夕方、提出済み・未点検のシラバスを教務システムから表の形で書き出し、共有フォルダに置く
  3. 【自動】 プログラムが数字の点検を行う(評価の割合の合計、授業外学修の時間、授業計画の回数、到達目標の個数)
  4. 【自動】 Azure OpenAI が言葉の点検を行い、記載要領の項目ごとに不備の候補、原文の箇所、直しの案を返す
  5. 【自動】 プログラムが、AIの挙げた原文の箇所がシラバスに実在するかを照合し、照合できない指摘を外す
  6. 【自動】 数字の点検と言葉の点検をまとめ、教員ごとの依頼文の下書きを作る
  7. 【人】 教務の担当が一覧で指摘を読み、採る・直す・外すを選ぶ
  8. 【人】 採った指摘で依頼文を確定し、教員へ送る
  9. 【人】 修正されたシラバスは、もう一度同じ点検を通してから公開の手続きに回す

7番目が、この設計の分かれ目です。 担当はシラバスを最初から読むのではなく、指摘の一覧から読みます。 指摘ごとに原文の箇所が付いているので、全文を開くのは判断に迷ったときだけです。

3番目をプログラムに置いているのも意図してのことです。 割合の合計や時間の計算は答えが一つに決まるので、AIに任せる理由がありません。 AIに渡すのは、言葉で判断するしかない項目だけです。

02今回想定するシステム構成

構成図
教務システム(シラバスの入力・公開)
   │  毎日夕方に提出済み・未点検のものを書き出し
   ▼【トリガー】共有フォルダへの書き出し(タイマーで取り込み)
Azure Functions
   ├──▶ 数字の点検(評価の割合・授業外学修の時間・授業計画の回数・到達目標の個数)
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry)
   │   記載要領の項目ごとの言葉の点検
   │   ① 到達目標の主語と行動の書き方   ② 評価方法と到達目標の対応
   │   ③ 授業外学修の具体性             ④ 表記の統一
   ▼
Azure Functions ── 原文の箇所の照合、依頼文の下書きの組み立て
   ▼
【教務の担当が一覧で採否を選ぶ】
   ▼
メール(教員への修正の依頼)/教務システム(公開の手続き)
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Azure Functions(取り込み、数字の点検、照合、下書きの組み立て)Azure Logic Apps
保管SharePoint(書き出した表、点検結果、採否の記録)学内のファイルサーバー
教務既存の教務システム(シラバスの入力・公開)―

教務システムは、新しく足すものではありません。 この構成は書き出された表を読むだけで、教務システムには書き込みません。 シラバスの本文を直すのは教員で、公開の手続きは担当が行います。

生成AIを Azure OpenAI にするのは、学内の契約と取り決めに乗せやすいためです。 公式のページでは、プロンプトと出力は他のお客様に提供されず、OpenAI にも提供されず、モデルやサービスの改善に使われないとされています。シラバスはいずれ公開される文書ですが、提出から公開までの間は教員の下書きで、担当教員の氏名も入っています。 学外のサービスに出すなら、どこで処理されるかを決めておく必要があります。

出力の形を固定するために、構造化出力を使います。 公式のページでは、構造化出力は推論の呼び出しで指定した JSON スキーマに従わせる機能で、Chat Completions API では response_format、Responses API では text.format でスキーマを定義するとされています。指摘の一覧を表に並べる構成なので、項目がそろわない出力は使えません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎日夕方の定時に、提出済み・未点検のシラバスを書き出すことを起点にします。 教員が提出した瞬間に点検を走らせる作り方もありますが、教務システムの多くは提出の通知を外へ送る仕組みを持っていません。1日1回の書き出しなら、どの教務システムでも組めます。

書き出しのファイルが共有フォルダに置かれたら、Azure Functions のタイマーで取り込みます。取り込みが終わったファイルは処理済みのフォルダへ移します。 移すのは全件の点検が終わったときだけにし、途中で止まったら翌日にもう一度読みます。

締切の直後だけは、1日に2回書き出す運用にしてもかまいません。 担当が翌朝に指摘の一覧を読めることが目標で、書き出しの回数はそれに合わせて決めます。

修正されて再提出されたシラバスも、同じ経路で点検します。 再提出かどうかは書き出しの「提出回数」の列で分かるので、一覧で区別して表示します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
シラバス科目コード、科目名、担当教員、単位数、授業の形態、開講期、到達目標、授業計画(回ごと)、授業外学修、成績評価の方法と割合、教科書、提出回数教務システムの書き出し
科目の情報授業の形態(講義・演習・実験・実技)、1回の授業時間、回数、卒業要件上の区分教務システムの科目マスタ
記載要領項目ごとの規定と、良い例・悪い例教務委員会が決めた文書を項目ごとに分けたもの
単位の計算の規則授業の形態ごとに、1単位を何時間の授業とするか学則・履修規程
前年度のシラバス同じ科目の前年度の本文と、そのときの指摘教務システムの書き出しと、点検結果の保管

質を決めるのは、記載要領を項目ごとに分けた形です。 十数ページの文書をそのままAIに渡すと、どの規定を根拠にしたのかが指摘に残りません。規定ごとに rule_id を振り、本文と良い例・悪い例を1行ずつ持たせます。 指摘には必ずこの rule_id を付けさせます。

単位の計算の規則は、学則・履修規程から取ります。 大学設置基準は、1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容で構成することを標準とし、授業の方法に応じて、おおむね15時間から45時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって1単位とすると定めています。何時間の授業を1単位とするかは大学ごとに違うので、自校の規程の数字を設定に持たせます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
提出済み・未点検のシラバス教務システムの書き出し(表の形)点検の対象
科目の授業の形態と時間教務システムの科目マスタ授業外学修の時間の計算
記載要領の規定項目ごとに分けた表(教務課で管理)言葉の点検の基準
前年度のシラバスと指摘点検結果の保管同じ不備のくり返しの把握

書き出しの列は、教務システムの入力画面の項目にそろえます。 到達目標を1つの欄にまとめて入力させている教務システムでは、番号や改行で分けて取り込みます。分けられないときは、到達目標の個数の点検を外し、言葉の点検だけを行います。

授業計画は、回ごとの行として取ります。 「第1回〜第15回」が1つの欄に詰め込まれていると、回数が足りているかが分かりません。入力画面が回ごとに分かれていないなら、それ自体を記載要領の改善として教務委員会に上げます。

前年度のシラバスは、同じ科目コードと担当教員の組で引きます。 担当が変わった科目は前年度と比べても意味がないので、比べません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 項目の分割 … 到達目標を番号と改行で分け、授業計画を回ごとに分けます
  2. 数字の取り出し … 成績評価の割合を「方法」と「%」の組にします。「%」が無い記載は数字の点検から外し、言葉の点検に回します
  3. 評価の割合の合計 … 合計が100%でなければ、数字の不備として記録します
  4. 授業外学修の時間の計算 … 単位数 × 45時間から、授業の時間(1回の時間 × 回数)を差し引いた時間を、学修に必要な時間の目安として出します
  5. 授業計画の回数 … 回ごとの行が規定の回数そろっているかを数えます
  6. 到達目標の個数 … 記載要領の範囲(3〜5個)に入っているかを数えます
  7. 表記の機械的な点検 … 全角・半角の混在、「です・ます」と「だ・である」の混在を規則で拾います

4番目の計算は、プログラムだけで行います。 たとえば講義の2単位の科目で、自校の規程が「15時間の授業で1単位」なら、授業は30時間、学修全体は90時間で、授業の外に60時間が必要という目安になります。 これを15回で割れば1回あたり4時間です。シラバスに「各回1時間の予習」としか書かれていなければ、数字の不備として出します。 学修時間の扱いをどこまで厳しく見るかは、自校の規程と教務委員会の取り決めに合わせます。

数字の不備は、この段階で確定させます。 AIには「数字の点検の結果」として渡し、AIが数字を計算し直さないようにします。

Step5

AIに処理させる

させるのは、言葉で判断するしかない項目について、記載要領の規定に照らした不備の候補を挙げ、原文の箇所と直しの案を付けることです。

見るもの判定の仕方判断できないときの扱い
到達目標の主語学生を主語にしているか。「本授業では〜を扱う」は授業の説明で目標ではない主語が読み取れなければ unclear
到達目標の行動「理解する」「知る」ではなく、確かめられる行動で書かれているか分野の慣行で判断が分かれるものは unclear
評価方法と到達目標の対応どの到達目標をどの評価方法で確かめるかが読み取れるか対応の記載が無ければ missing
平常点の中身「平常点」の内訳(発言、小テスト、提出物など)が書かれているか出席だけを評価に入れている記載は rule_conflict として人へ
授業外学修の具体性回ごとに、何を(予習・復習・課題)どれだけするかが書かれているか「予習・復習をすること」だけなら vague
表記記載要領の用字用語(「授業外学修」「成績評価」など)にそろっているか固有の用語か判断できなければ外す

「判断できないときの扱い」の列がいちばん大事です。 到達目標の書き方は分野によって慣行が違い、芸術や体育の実技の科目では「理解する」に代わる言い方が定まっていないこともあります。判断に迷うものは不備と言い切らず、unclear として担当に回します。

させないこと理由
授業の内容や水準の評価教員と学部が決めること。記載要領の点検とは別の話
シラバス全体の書き直し学生に示すのは教員の名前の文書。直すのは教員本人
割合や時間の計算プログラムで確定させた。計算し直すと結果が二つになる
原文に無い記述の補完書かれていない評価方法を推測で埋めると、不備が消える
教員の名前を出した評価指摘はシラバスの記載に対して行う

2行目がいちばん起きやすい失敗です。 直しの案を求めると、AIは到達目標を全部書き換えた文を返しがちです。案は1つの指摘につき1か所、原文の言い回しを残した最小の直しにします。

Step6

指示内容を固定する

あなたは大学の教務課で、教員が提出したシラバスの書き方を、
学内の記載要領に照らして点検する立場です。
授業の内容や水準が適切かは判断しないでください。
見るのは、記載要領の規定どおりに書かれているかだけです。

【点検する項目】
1. 到達目標の主語(学生を主語にしているか)
2. 到達目標の行動(確かめられる行動で書かれているか)
3. 成績評価の方法と到達目標の対応
4. 平常点の中身(内訳が書かれているか)
5. 授業外学修の具体性(回ごとに何をどれだけするか)
6. 表記(記載要領の用字用語にそろっているか)

【status の選び方】
- missing ....... 規定が求める記載が無い
- vague ......... 記載はあるが、規定が求める具体さに足りない
- rule_conflict . 記載が規定と食い違っている
- unclear ....... 分野の慣行などで、不備かどうか判断がつかない
迷ったときは unclear を選んでください。

【厳守事項】
- 指摘には、根拠にした規定の rule_id を必ず付けてください。
  記載要領に無い基準で指摘しないでください。
- quote には、シラバスの原文をそのまま写してください。
  要約したり言い換えたりしないでください。
- suggestion は、1つの指摘につき1か所の最小の直しにしてください。
  原文の言い回しをできるだけ残し、全体を書き直さないでください。
- 書かれていない評価方法や学修内容を、推測で補わないでください。
- 成績評価の割合と授業外学修の時間は【数字の点検の結果】をそのまま使い、
  計算し直さないでください。
- 授業の内容、難易度、教員の専門性について書かないでください。
- 不備が無い項目は、指摘を作らないでください。

【記載要領の規定】{rules}
【科目の情報】{course_info}
【数字の点検の結果】{numeric_checks}
【シラバス】{syllabus}

「規定の rule_id を必ず付ける」を最初に置くのは、指摘の根拠を記載要領に縛るためです。 何も言わなければ、AIは一般的な「良いシラバス」の基準で指摘を増やします。記載要領に無い指摘は、教員から見れば教務課の好みでしかありません。

「原文をそのまま写す」は、後段の照合のための指示です。 言い換えた引用は原文と照合できず、どこを直せばよいのかが教員に伝わりません。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。

{
  "course_code": "",
  "submission_no": 1,
  "findings": [
    {
      "item": "objective_subject | objective_verb | assessment_mapping | participation_detail | study_outside_class | wording",
      "rule_id": "",
      "status": "missing | vague | rule_conflict | unclear",
      "quote": "",
      "suggestion": "",
      "reason": ""
    }
  ],
  "summary_for_staff": ""
}

1つ目の理由は、指摘を一覧で並べられることです。 担当はシラバスごとではなく、指摘ごとに採否を選びます。item と status で並べ替えれば、rule_conflict から先に読めます。

2つ目は、照合ができることです。 quote はプログラムがシラバスの原文と突き合わせ、一致しない指摘は一覧に出しません。 AIが原文に無い文を引用して指摘を作る失敗を、ここで止めます。

3つ目は、rule_id で集計できることです。 どの規定の不備が多いかを月ごとに数えれば、入力画面の注意書きや記載要領の説明会で何を伝えるべきかが分かります。

構造化出力のスキーマでは、公式のページにあるとおり、すべての項目を必須にし、オブジェクトには additionalProperties: false を設定します。 指摘が無い項目を空にしたいときは、項目を省くのではなく、配列を空で返させます。

数字の点検の結果は、AIの出力とは別に、プログラムが次の形で持ちます。

{
  "course_code": "",
  "assessment_total": 110,
  "assessment_ok": false,
  "required_outside_hours": 60,
  "stated_outside_hours": 15,
  "outside_hours_ok": false,
  "plan_rows": 15,
  "plan_ok": true,
  "objective_count": 2,
  "objective_count_ok": false
}

AIの出力と分けておくのは、数字の不備は確定した事実で、言葉の不備は候補だからです。 一覧の表示も分け、数字の不備は採否を選ばずにそのまま依頼文に入れます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
教務システム書き出しファイルの読み取り提出済み・未点検のシラバスと科目の情報
Azure OpenAIAPI呼び出し(構造化出力)言葉の点検と直しの案
SharePointファイルの保存点検結果、指摘の一覧、採否の記録、依頼文の下書き
メール担当が確定した依頼文を送る教員への修正の依頼

教務システムには書き込みません。 点検の結果をシラバスの欄に書き戻すと、教員の入力と教務課の指摘が同じ場所に混ざります。公開の手続きも、担当が教務システムの画面で行います。

依頼文は下書きまでで、送信は担当が行います。 自動で送ると、外したはずの指摘が教員に届くことがあります。教員との関係は、毎年続くものです。

依頼文の下書きは、教員ごとに1通にまとめます。複数の科目を担当している教員には、科目ごとに見出しを分けた1通にします。科目ごとに別のメールが何通も届くと、教員はどれから直せばよいか分からなくなります。

Step9

人が確認する

担当が見るのは、指摘の一覧です。 シラバスを最初から読むのではなく、指摘ごとに原文の箇所と直しの案を読み、採る・直す・外すを選びます。

  1. rule_conflict を先に見る … 規定と食い違う記載です。出席だけを評価に入れているような記載は、学部の教務委員と相談が要ることもあります
  2. unclear は学部の慣行に照らして決める … 実技の科目の到達目標のように、分野で書き方が違うものです。判断したら、その判断を記載要領の補足として残します
  3. missing と vague は直しの案を読む … 案が原文の趣旨を変えていないかを確かめます
  4. 依頼文を確定する … 採った指摘だけで文面を組み直し、送ります

2番目の判断を残すのが、属人化を減らす仕組みです。 「実技の科目では『〜を演奏できる』を到達目標の書き方として認める」のような判断を補足に書き足し、次からは規定としてAIに渡します。担当ごとに違っていた線引きが、記載要領の側にたまっていきます。

目標は、240件をならして1件5分です。 不備の無いシラバスは一覧を流し見て終わり、指摘の多いものだけに時間を使います。

Step10

例外に対処する

起きること対応
到達目標が1つの欄に詰め込まれ、分けられない個数の点検を外し、言葉の点検だけを行う。一覧に「分割不可」と表示
成績評価に「%」が書かれていない数字の点検から外し、missing として言葉の点検に回す
授業計画の回数が規定と違う集中講義や隔週の科目は科目マスタの回数を基準にする。マスタに無ければ担当へ
シラバスが英語で書かれている英語の科目用の記載要領で点検する。要領が無ければ数字の点検だけにする
quote が原文と一致しない指摘を一覧に出さず、件数だけを記録する
同じ科目が複数の教員の共同担当依頼文の宛先を科目責任者にし、写しを共同担当者へ
書き出しのファイルが空・壊れている処理済みへ移さず、教務システムの担当へ知らせる
Azure OpenAI が応答しない数字の点検の結果だけで一覧を作り、言葉の点検は翌日に再実行

上から3行目までが大半を占めます。 どれもAIの問題ではなく、入力画面と科目マスタの作りの問題です。 直すほうが、指示を工夫するより効きます。

5行目の件数は、毎月見てください。 一致しない引用が増えたら、書き出しの文字コードや改行の扱いが変わった可能性があります。

Step11

記録を残す

  • 書き出したシラバスの表と、点検に使った記載要領の版
  • 数字の点検の結果(評価の割合の合計、授業外学修の時間、授業計画の回数、到達目標の個数)
  • AIへの入力と出力のJSONの全文
  • 担当の採否の記録 … どの指摘を採り、直し、外したか、その理由
  • 教員へ送った依頼文と、再提出されたシラバスとの対応
  • 規定ごとの指摘の件数と、採られた割合

2つ目に「記載要領の版」を残すのは、要領が年度ごとに改められるためです。 前年度の点検結果を見返すときに、当時の規定が分からないと、指摘が正しかったかを判断できません。

最後の行は、記載要領を直す材料になります。 採られた割合が低い規定は、AIの読み方か、規定の書き方のどちらかに問題があります。 担当が毎回外している指摘は、規定の文言を見直す合図です。

04実装レベルの3段階

最小構成:記載要領とシラバスを手でAIの画面に貼り、指摘を出させる / 1件ごとの言葉の点検
半自動化:上記+教務システムの書き出しを取り込み、数字の点検と言葉の点検の結果を一覧に書き出す / 点検と指摘の一覧化
本格構成:上記+原文の照合、前年度の指摘との比較、教員ごとの依頼文の下書きまで出す / 点検の全体と、依頼文の作成

最小構成では件数がさばけません。 1件ずつ貼り付けるので、240件には使えません。確かめるための段階です。 半自動化で、1件15分が8分程度になります。 読む作業と計算は自動になりますが、指摘を依頼文に書き起こす作業が残ります。本格構成で5分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、教員ごとに複数の科目の指摘をまとめた依頼文を作る作業が、手作業では時間がかかるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の一覧を1学期分見ると、どの規定の指摘が採られ、どれが外されているかが分かります。外されている規定を直してから本格構成に進むほうが、教員に届く指摘の質がそろいます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
240 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
5 分
現在  240件 × 15分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 240件 × 5分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価3,000円)
144万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 授業科目が千を超え、教務の部署が教員の提出したシラバスを1件ずつ読んで記載要領との食い違いを返している大学・短期大学・専門職大学。学部・研究科ごとに提出の締切をずらし、年度途中の担当交代や授業計画の変更も含めて、点検が一年中続いている場合。点検する職員によって返す指摘の細かさがばらつき、教員から「去年は言われなかった」と言われている場合。シラバスを教務システムから表の形で書き出せる場合。
向いていない
  1. 授業科目が数十で、担当者が全件を読んでも負担にならない場合。シラバスが紙や自由書式の文書で集められ、項目ごとに分かれていない場合(まず入力の様式をそろえるのが先です)。なお、授業の内容や水準が適切か、単位の付け方が妥当かという教育上の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 昨年度に点検したシラバスから30件を選ぶ(うち数件は、当時不備を返したものを入れる)
  2. 記載要領を項目ごとに分け、規定に番号を振る
  3. 社内で利用を認められた Azure OpenAI の画面に、記載要領と1件のシラバスを貼り付ける
  4. 「記載要領の規定に照らして、到達目標の書き方、評価方法との対応、授業外学修の具体性の不備を挙げてください。根拠の規定の番号と原文の箇所を付け、直しの案は1か所ずつ、全体を書き直さないでください。授業の内容は評価しないでください」と指示する
  5. 評価の割合の合計と授業外学修の時間は、表計算で別に計算する
  6. 出てきた指摘を、当時の担当の指摘と突き合わせる

30件は必ずやってください。 ワークフローを組む前に、記載要領の規定だけで指摘が出せるのかを確かめます。

出てきた内容判断
当時の担当と同じ指摘が出た書き出しとの連携に進む
記載要領に無い指摘が多い指示の書き方で直る。規定の番号を必須にする
実技・演習の科目で指摘が外れる記載要領の補足が先。 分野ごとの書き方を決める

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、担当ごとに線引きが違っていた理由が1つ分かったということです。 その場合は、学部の教務委員と書き方の例を決め、規定の補足に入れてから同じ30件で試し直してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
記載要領に無い基準で指摘が増えるrule_id を必須にし、無い指摘は一覧に出さない
直しの案が全文の書き直しになる1指摘につき1か所の最小の直しと明記する
引用が原文と一致しないquote を原文と照合し、一致しないものを外す
AIが評価の割合を計算し直す数字の点検の結果を渡し、計算し直さないと明記する
実技・演習の科目で指摘が外れる分野ごとの書き方の例を記載要領の補足に入れる
到達目標が1つの欄に詰め込まれている入力画面を番号ごとの欄に分けるよう教務委員会へ上げる
1単位あたりの授業時間を誤って設定する学則・履修規程の数字を、授業の形態ごとに設定に持たせる
英語のシラバスに日本語の規定を当てる英語の科目用の記載要領を用意するか、数字の点検だけにする
依頼文が自動で送られる下書きまでにする。 送信は担当が行う
担当の判断が残らないunclear の判断を記載要領の補足に書き足す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、AIが「良いシラバス」の一般論で動いたときに起きます。根拠を記載要領の規定に縛り、直しを最小にするかどうかで、教員に受け入れられるかが決まります。

7行目は、気づきにくい失敗です。 講義と演習で1単位あたりの授業時間が違う大学では、形態を取り違えるだけで授業外学修の時間がすべてずれます。設定は科目マスタの授業の形態の列から引き、手で入れないでください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 公開前のシラバスの本文、担当教員の氏名、科目の情報です。学生の個人情報は扱いません。

  1. 学生の情報を入力に混ぜない … 前年度の履修者数や成績の分布は点検に要りません。書き出しの列を、シラバスの項目と科目の情報に限ります
  2. 処理の地域を決めておく … 公式のページでは、グローバルやデータ ゾーンのデプロイの種類を使う場合を除き、プロンプトと応答は指定した地域内で処理されるとされています。どのデプロイの種類を使うかを、学内の情報の取り決めに書きます
  3. 授業の内容に踏み込まない … この構成は記載要領の点検で、授業の内容や水準を評価するものではありません。教員の教育の自由に関わる部分に、AIの指摘を使わないでください
  4. 指摘を教員の評価に使わない … 不備の件数は記載要領を直す材料で、教員を並べて比べる資料にしません
  5. 直すのは教員本人にする … 直しの案は案で、教務課がシラバスの本文を書き換えないでください。 学生に示すのは教員の名前の文書です
  6. 入出力の保存先を絞る … 公開前の下書きと採否の記録は、教務課の担当だけが読める場所に置きます

誤りが起きた場合のリスクは、不備を見落としたまま公開することと、記載要領に無い指摘を教員に返すことの2つです。 前者は数字の点検をプログラムに置くことで、後者は rule_id と原文の照合で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:記載要領を規定ごとに分ける

教務委員会が決めた記載要領を、規定ごとに分けて番号を振ります。規定ごとに、良い例と悪い例を1つずつ付けます。 例が付けられない規定は、担当ごとに解釈が分かれている規定です。

2週目:30件で試す

昨年度に点検したシラバスから30件を選び、学内で認められた Azure OpenAI の画面で言葉の点検をさせます。当時の担当の指摘と突き合わせ、記載要領に無い指摘が出ていないかを最優先で見ます。

3週目:数字の点検を作る

評価の割合の合計、授業外学修の時間、授業計画の回数、到達目標の個数を、教務システムの書き出しから計算するプログラムを作ります。1単位あたりの授業時間は、学則・履修規程の数字を授業の形態ごとに設定します。

4週目:書き出しから一覧までをつなぐ

Azure Functions で書き出しを取り込み、数字の点検と言葉の点検を一覧に書き出すところまで作ります。この時点では依頼文を作らず、指摘の一覧だけを担当が読みます。

2か月目: 原文の照合と依頼文の下書きを足し、担当の採否を記録します。3か月目以降: 規定ごとの採られた割合を見て、記載要領と補足を直します。1件15分が何分になったかを実測し、unclear の判断が補足にたまってきた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容で構成することを標準とし、授業の方法に応じ、授業時間外に必要な学修等を考慮して、おおむね15時間から45時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって1単位とすること(第21条)。大学は授業の方法及び内容並びに1年間の授業の計画をあらかじめ明示し、学修の成果に係る評価の基準をあらかじめ明示すること(第25条の2)。法令APIの最終更新の施行日が2026-09-04であることe-Gov 法令API: 大学設置基準2026-10-08
構造化出力が指定した JSON スキーマに従わせる機能で、Chat Completions API では response_format、Responses API では text.format でスキーマを定義すること。すべてのフィールドを必須にし、additionalProperties: false を設定することMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-08
プロンプトと出力が他のお客様や OpenAI に提供されず、モデルやサービスの改善に使われないこと。グローバルやデータ ゾーンのデプロイの種類を除き、指定した地域内で処理されることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-08

記載要領の規定や1単位あたりの授業時間は、各大学の学則・履修規程と教務委員会の決定に合わせてください。 本記事は大学設置基準で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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