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新卒採用の学生からの質問に、卒業年度ごとの募集要項と選考案内を根拠にチャットで答え、個別の相談を採用担当へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

新卒採用の学生から採用サイトのチャットに届く「選考は何回ありますか」「配属は希望できますか」といった質問に、その学生の卒業年度とコースの募集要項・選考案内・採用FAQだけを根拠に答えます。個別の事情の相談と、案内に無い質問は採用担当へ回します。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
宿泊/小売/物流/飲食
対象部門
採用
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
人手が足りない/問い合わせが多い/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
対話
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 採用サイトのフォーム、就職情報サイトのメッセージ、メールのいずれかに質問が届く
  2. 採用担当が、平日の朝と夕方に受信箱を見に行く
  3. 学生の卒業年度とコースを、文面や応募の記録から確かめる
  4. その年度の募集要項と選考案内、採用FAQを開いて、該当する記載を探す
  5. 記載が無ければ、店舗運営部や労務の担当に確認する
  6. 返信を書く。言い回しに迷うものはチームで相談する
  7. 返信する。夜と土日に届いた質問は、翌営業日以降になる
導入後(After)
  1. 人学生が採用サイトのチャットを開き、卒業年度とコースを選ぶ
  2. 自動中継プログラムが、選ばれた年度とコースを検索の絞り込み条件に変える
  3. 自動学生が質問を書くと、中継プログラムが引き継ぎの規則に当たるかを先に見る
  4. 自動当たらなければ、検索基盤が年度とコースで絞った文書から根拠を探して答えを作る
  5. 自動答えに出典(案内の名前と該当箇所)を付けて返す
  6. 自動根拠が見つからない、または根拠の当たり方が弱いときは、答えずに担当者へ回すと伝える
  7. 自動引き継ぎの質問を、会話の記録と一緒に採用担当の受付の一覧へ入れる
  8. 人採用担当が、本人確認のできる経路(採用マイページのメッセージ等)で返事をする
  9. 人週に1回、答えられなかった質問を見て、案内とFAQに足すかを決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 採用サイトのフォーム、就職情報サイトのメッセージ、メールのいずれかに質問が届く
  2. 採用担当が、平日の朝と夕方に受信箱を見に行く
  3. 学生の卒業年度とコースを、文面や応募の記録から確かめる
  4. その年度の募集要項と選考案内、採用FAQを開いて、該当する記載を探す
  5. 記載が無ければ、店舗運営部や労務の担当に確認する
  6. 返信を書く。言い回しに迷うものはチームで相談する
  7. 返信する。夜と土日に届いた質問は、翌営業日以降になる

(a)答えるまでに時間がかかる。 学生は複数の会社を同時に受けていて、返事の遅い会社から順に優先度を下げます。金曜の夜に届いた「締切はいつですか」に月曜に返すと、締切が過ぎていることがあります。

(b)年度を取り違える。 担当者は今年の本選考と来年のインターンシップを同時に回しています。手元に開いていた案内が別の年度のものだった、という答え間違いが起きます。 質問の文面に卒業年度が書かれていないことも多く、確かめる手間がかかります。

(c)同じ質問に、担当者ごとに違う言い方で答える。 配属や転勤のように、言い方で受け取り方が変わる質問ほど、担当者の言葉がそのまま会社の約束に聞こえます。 案内に書いていないことを、親切のつもりで言ってしまうこともあります。

(d)答えてはいけない話が混ざる。 「家族の事情で地元を離れられない」「持病があって夜の勤務が心配」のような個別の相談は、一律の案内で答えるものではありません。 他の質問と同じ受信箱に入るので、急ぐべき相談が埋もれます。

(e)答えた内容が残らない。 返信はフォーム、就職情報サイト、メールに分かれて残り、どの質問が何回来たかを数える人がいません。 毎年同じ質問に同じ手間で答え、案内のほうは直らないままです。

  1. 【人】 学生が採用サイトのチャットを開き、卒業年度とコースを選ぶ
  2. 【自動】 中継プログラムが、選ばれた年度とコースを検索の絞り込み条件に変える
  3. 【自動】 学生が質問を書くと、中継プログラムが引き継ぎの規則に当たるかを先に見る
  4. 【自動】 当たらなければ、検索基盤が年度とコースで絞った文書から根拠を探して答えを作る
  5. 【自動】 答えに出典(案内の名前と該当箇所)を付けて返す
  6. 【自動】 根拠が見つからない、または根拠の当たり方が弱いときは、答えずに担当者へ回すと伝える
  7. 【自動】 引き継ぎの質問を、会話の記録と一緒に採用担当の受付の一覧へ入れる
  8. 【人】 採用担当が、本人確認のできる経路(採用マイページのメッセージ等)で返事をする
  9. 【人】 週に1回、答えられなかった質問を見て、案内とFAQに足すかを決める

3番目が、この設計の分かれ目です。 個別の相談や選考結果の問い合わせは、検索にかける前に規則で取り出します。 検索してから判断すると、それらしい案内の一節を根拠に答えてしまうからです。

9番目で、AIの答えられる範囲が広がります。 答えられなかった質問は、案内に書かれていないことの一覧です。足すかどうかを決めるのは採用担当で、AIに案内を書き足させることはしません。

02今回想定するシステム構成

構成図
採用サイトのチャット(ログイン不要)
   │  ① 卒業年度とコースを選ぶ  ② 質問を書く
   ▼
中継プログラム(Cloud Run)
   ├──▶ 引き継ぎの規則に当たるか(キーワードと分類)
   │       当たる → 受付の一覧へ(担当が本人確認のできる経路で返事)
   ▼  当たらない
Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッド
   │   絞り込み:grad_year・course・status
   │   データストア:募集要項/選考案内/採用FAQ/配属と勤務地の案内
   ▼  答え・出典・根拠の強さ
中継プログラム ── 根拠が弱ければ答えずに引き継ぐ
   ▼
チャットに返す / 会話の記録を保管・集計
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、チャット画面と検索基盤と受付の一覧をつなぐ)Node.js で同じものを書く
集計BigQuery(会話の記録の保管と、答えられなかった質問の月次集計)Google スプレッドシート
保管Cloud Storage(案内の文書の原本とメタデータ)─

採用管理システムにはつなぎません。 このチャットは名乗らない学生が使うので、選考の状況を引く経路そのものを持たせないのが安全です。本人に関わる質問は、採用担当が採用管理システムを見ながら、本人確認のできる経路で答えます。

土台になるのは、Vertex AI Search の answer メソッドです。 公式のドキュメントには「Vertex AI Search is being renamed to Agent Search.」と書かれており、製品は Agent Search へ改称されつつあります。 本記事では両方の名前を併記します。answer メソッドは、データストアから根拠を探して答えを作り、答えの文ごとに出典を示すことができます。

データストアは Cloud Storage のフォルダから作ります。 非構造化の文書として PDF、HTML、DOC、TXT、PPTX を取り込め、文書ごとにメタデータを JSONL で付けられます。 卒業年度とコースを、このメタデータに持たせます。Cloud Storage の取り込みは1回だけか定期の同期かを選べるので、案内を差し替えたら同期で反映します。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

学生がチャットに質問を書いたときに動きます。 最初の画面で卒業年度とコースを選んでもらい、選ぶまでは質問欄を開きません。年度を選ばずに質問できる作りにすると、検索の範囲を切れません。

コースは「全国コース」「地域限定コース」「まだ決めていない」の3つから選びます。まだ決めていない学生には、両方のコースの文書を検索の範囲に入れ、答えをコースごとに分けて返します。 どちらか一方で答えると、違うコースの条件を自分のことだと受け取ります。

1つの会話は、同じ年度とコースのまま続けます。 answer メソッドはセッションを使った複数回のやり取りに対応しており、前の質問を踏まえて次の質問を言い換えて検索します。途中で年度を変えたいときは、会話を新しく始めてもらいます。 1つの会話の中で年度を切り替えられる作りにすると、前の年度の質問を踏まえた言い換えが、新しい年度の検索に混ざります。

チャットは24時間開けておきます。 夜と土日に答えられることが、この構成のいちばんの価値だからです。そのかわり、引き継いだ質問には「採用担当者から、翌営業日以降に回答します」と、返事の時期を必ず示します。 時期を書かないと、学生は同じ質問をフォームとメールに重ねて送ります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
学生の質問質問の文面、選んだ卒業年度とコース、会話の中の前の質問採用サイトのチャット
募集要項募集するコース、仕事の内容、勤務地、労働条件、就業場所と業務の変更の範囲人事部が管理する正本
選考案内選考の流れ、各段階の提出物、締切、日程の決め方同上
採用FAQ過去に多かった質問と、人事部が確定した答え同上
配属と勤務地の案内最初の配属の決め方、異動の考え方、コースごとの転居の有無人事部と店舗運営部で確定したもの
引き継ぎの規則担当へ回す質問の種類と、その見分け方採用担当が決めて持つ一覧

質を決めるのは、配属と勤務地の案内です。 学生がいちばん多く聞くのに、募集要項には短くしか書かれていないことが多い。ここが文書として確定していないと、AIは答えられないか、別の文書の一節からそれらしく答えます。 店舗運営部と確定させてから載せます。

募集要項の「変更の範囲」は必ず入れます。 厚生労働省は、2024年4月から募集の際に明示する労働条件として、従事すべき業務の変更の範囲と、就業の場所の変更の範囲が加わったとしています。転勤の質問への答えは、この記載とずれてはいけません。

Step3

データの取得方法を決める

文書は Cloud Storage のフォルダに置き、メタデータの JSONL と一緒にデータストアへ取り込みます。 1文書ごとに次のメタデータを付けます。

メタデータ値の例使いどころ
grad_year2027、2028卒業年度で検索の範囲を切る
coursenational、regional、commonコースで範囲を切る。両コースに共通なら common
statuspublished、draft、archived公開中の版だけを検索させる
doc_typerequirements、selection_guide、faq、placement出典の表示と、集計
valid_until案内の有効期限(数値の日付)期限切れの案内を外す

絞り込みに使う項目は、データストアのスキーマで「Indexable」にします。 指定しないと、メタデータを付けていても絞り込みに使えません。絞り込みの式は ANY() による完全一致と、AND・OR・NOT の組み合わせで書けます。

grad_year: ANY("2028") AND course: ANY("regional", "common") AND status: ANY("published")

common を必ず ANY() に入れます。 選考の流れや提出物のようにコースで変わらない案内は common で1つだけ持ち、同じ文書をコースごとに複製しません。 複製すると、片方だけ直して食い違う版が残ります。

valid_until を数値で持つと、比較の演算子(<、>= など)で期限切れを外せます。締切の過ぎた選考案内を、答えの根拠にしないためです。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 年度とコースの確認 … チャットで選んだ値を、決まった値の一覧と照らします。一覧に無い値なら会話を始めません
  2. 個人情報の除去 … 質問の文面から、氏名、電話番号、メールアドレス、学籍番号らしい文字列を伏せてから検索にかけます
  3. 引き継ぎの規則の照合 … 選考の結果、本人の状況、健康や家族の事情、ハラスメントの相談、内定の辞退に当たる語を見ます
  4. 質問の長さの確認 … 長すぎる質問は、最初の数百字だけで検索し、続きは担当へ回す候補にします
  5. 絞り込みの式の組み立て … 年度・コース・公開の状態・有効期限から式を作ります。学生の書いた文字を式に混ぜません

3番目を軽く見ないでください。 「面接に落ちたらもう一度受けられますか」は一般の案内で答えられますが、「先週の面接の結果はまだですか」は本人の選考の話です。似た言葉で中身が違うので、迷うものは担当へ回す側に倒します。

5番目は、検索の範囲を学生に操作させないためです。 式に学生の入力が入ると、「2029年度の案内も含めて」のような文面で範囲が広がるおそれがあります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、絞り込んだ文書の中から根拠を探し、学生の質問に案内の言葉で答えることだけです。

質問の種類答え方根拠にする文書
選考の流れ・回数案内のとおりに段階を並べる選考案内
提出物・締切締切の日付は文書のまま写す選考案内
日程の決め方予約の方法と変更の手続きを示す選考案内、FAQ
配属・転勤コースごとの記載をそのまま示す配属と勤務地の案内、募集要項
待遇初任給・休日・手当は募集要項の記載だけ募集要項
仕事の内容募集要項と、公開している職種の説明募集要項、FAQ

待遇の行は、書いてあることしか答えません。 「残業はどのくらいですか」に、募集要項の平均の時間外労働の記載があればそれを示し、無ければ「担当者から回答します」と返します。 店舗による違いを推測で補うことはさせません。

させないこと理由
選考の結果、本人の状況への回答本人を確かめられない窓口だから
案内に無い条件の約束(「希望の店舗に配属されます」など)担当者の言葉以上に、会社の約束に聞こえる
個別の事情の相談への回答一律の案内で答えるものではない
学生の家族・出身地・思想などを聞くこと公正な採用選考の観点から、収集してはいけない情報がある
他社との比較根拠を持たない

4行目は、AIが会話を続けようとして起きます。 「地元で働きたい」という学生に、気を利かせて「ご実家はどちらですか」と聞き返すことがあります。厚生労働省は、本籍地や家族の職業などの「本人に責任のない事項」や、宗教や支持政党などの「本来自由であるべき事項」は、職務を遂行できるかとは関係がないとしています。勤務地の希望は聞いても、その理由を聞き出さないよう指示に書きます。

複数回のやり取りでは、言い換えにも気をつけます。 answer メソッドは前の質問を踏まえて次の質問を言い換えて検索します。「全国コースの初任給は」の次に「地域限定は?」と聞かれれば、地域限定コースの初任給として探してくれます。便利な一方で、前の質問の条件を引きずることがあります。 抜き取りで、続けて聞かれた質問の答えが、言い換えた条件どおりになっているかを見ます。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの promptSpec.preamble に、次の内容を入れます。

あなたは食品スーパーの新卒採用チームの案内係です。
新卒採用に応募を考えている学生の質問に、検索された案内の文書だけを根拠に答えてください。

【答え方】
- 検索結果に書かれていることだけを答えてください。書かれていなければ
  「その点は案内に記載がないため、採用担当者から回答します」と答えてください。
- 締切、日付、金額、回数は、文書の表記のまま写してください。言い換えや計算をしないでください。
- 配属、転勤、勤務地については、コースごとの記載をそのまま示してください。
  「希望が通ります」「転勤はありません」など、文書に無い言い切りをしないでください。
- 2つのコースの文書が検索された場合は、コースごとに分けて答えてください。
- 答えは3〜6文、です・ます調で、学生にとって次に何をすればよいかが分かる形にしてください。

【答えないこと】
- 選考の結果、選考の進み具合、本人の評価には答えないでください。
- 健康、家族、経済的な事情などの個別の相談には答えず、採用担当者へつなぐと伝えてください。
- 学生の家族、出身地、本籍、宗教、支持政党、思想について、質問をしないでください。
  勤務地の希望を聞くことはあっても、その理由を尋ねないでください。
- 他社との比較や、採用の可能性の見込みを答えないでください。
- 案内を書き換える提案や、文書に無い例外の扱いを答えないでください。

「文書に無い言い切りをしない」を書かないと、配属の質問で最も起きます。 案内に「本人の希望を考慮して決定します」とあると、AIは「希望が通ります」と言い換えます。考慮すると通るは違うので、言い換えそのものを禁じます。

あわせて、answer メソッドの設定で次を有効にします。

設定値目的
includeCitationstrue答えの文ごとに出典を示す
ignoreAdversarialQuerytrue範囲を広げようとする質問に答えを作らない
ignoreNonAnswerSeekingQuerytrue挨拶や雑談に答えを作らない
ignoreLowRelevantContenttrue関係の薄い文書から無理に答えを作らない
searchSpec.searchParams.filter前処理で組んだ式年度・コース・公開の状態で範囲を切る
Step7

出力形式を固定する

中継プログラムは、answer メソッドの応答から次の形の記録を作ります。 チャットに返すのは answer_text と citations だけです。

{
  "session_id": "",
  "grad_year": "2028",
  "course": "regional",
  "question_masked": "",
  "route": "answered | escalated_rule | escalated_no_answer | escalated_low_support",
  "answer_text": "",
  "citations": [ { "doc_type": "placement", "title": "", "uri": "", "snippet": "" } ],
  "support_score": 0.0,
  "escalation": { "reason": "", "category": "selection_status | personal | not_in_docs | other" },
  "created_at": ""
}

1つ目の理由は、route で答えた経路を分けられることです。 規則で回したもの、根拠が無くて回したもの、根拠が弱くて回したものを分けて数えると、どこを直せば答えられる質問が増えるかが見えます。

2つ目は、support_score で答えを止められることです。 answer メソッドは、答えがデータストアの内容にどれだけ裏付けられているかを0〜1の値で返せます。この値が自社で決めた境目を下回ったら、答えを表示せずに引き継ぎます。 境目は、最初の1か月の記録を見て決めます。

3つ目は、citations を学生に見せられることです。 「選考案内(2028年卒)の『提出物』の項」と出典が付けば、学生は自分で案内を読み直せます。

引き継いだ質問は、受付の一覧に次の形で入れます。

列中身
受付日時学生が質問した日時
年度・コース2028/regional
引き継ぎの理由personal(家族の事情に触れる相談)
質問(伏せた後)会話の中の質問を順に
チャットが返した文「採用担当者から回答します」まで
対応の状態未対応/マイページで受信/返信済み

「チャットが返した文」を残すのは、学生が何を言われたかを担当者が知るためです。 同じ説明を重ねたり、チャットと違うことを言ったりするのを防ぎます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
採用サイトのチャット中継プログラムのAPI質問を受け、答えと出典を返す
Vertex AI Search(Agent Search)answer メソッドの呼び出し絞り込みの式とセッションを渡し、答えを受け取る
受付の一覧書き込み引き継ぎの質問と会話の記録を入れる
Cloud Storage文書の配置案内の原本とメタデータを置き、同期で反映する
BigQuery書き込み会話の記録を保管し、月次で集計する

引き継ぎのとき、チャットでは連絡先を聞きません。 学生には「採用マイページのメッセージから、同じ質問を送ってください」と案内し、本人確認のできる経路に移ってもらいます。 採用担当は受付の一覧で会話の記録を見ておき、メッセージが届いたらすぐ答えられるようにします。

Step9

人が確認する

AIの答えを、送る前に人が見ることはしません。 その代わり、答える範囲を公開の案内に限り、引き継ぎと記録の点検で守ります。

  1. 引き継ぎを毎日見る … escalated_rule を最優先にします。個別の相談が含まれるためです
  2. 答えた会話を週に1回抜き取る … answered から数十件を選び、出典と答えがずれていないかを見ます
  3. 答えられなかった質問を週に1回見る … escalated_no_answer を種類ごとに数え、案内やFAQに足すかを決めます
  4. 案内を差し替えたら確かめる … 同期のあと、よく聞かれる質問を数件投げ、新しい版で答えるかを見ます

2番目で見るのは、配属と待遇の答えを優先します。 ずれたときに学生の受け取り方が大きく変わる種類だからです。

引き継ぎへの返事の目安は、2営業日以内です。 受付の一覧で、マイページにメッセージが届いたのに返していないものを毎朝数えます。チャットが速く答えるほど、引き継いだ質問の遅さが目立ちます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
年度の案内がまだ公開されていないその年度は選べないようにし、公開予定の時期だけを示す
答えが出ない(根拠が見つからない)「採用担当者から回答します」と返し、escalated_no_answer で受付の一覧へ
根拠の裏付けが弱い答えを表示せず、escalated_low_support で引き継ぐ
学生が氏名や連絡先を書き込んだ伏せた文面で記録し、引き継ぎの案内をする
1つの質問に複数の問いが入っている答えられる部分だけ答え、残りを引き継ぐ
選考の結果や本人の状況を聞かれた規則で引き継ぎ、本人確認のできる経路を案内する
検索基盤が応答しない「時間をおいて再度お試しください」と返し、問い合わせフォームを示す
内定者が手続きの質問をしてきた内定者向けの窓口を案内し、選考の案内では答えない
保護者から質問が届いた一般の案内には答え、本人に関わる話は本人からの連絡を案内する
案内どうしが食い違っている回答を止め、文書の担当者へ知らせる

最後の行は、早く直すほど効きます。 募集要項とFAQで締切が違うと、AIはどちらかを根拠に答えます。食い違いはAIの誤りではなく、文書の側の誤りです。

Step11

記録を残す

  • 会話ごとの年度・コース、伏せた後の質問の文面、答え、出典、support_score
  • 使った絞り込みの式と、その時点のデータストアの文書の版
  • 引き継いだ理由と、採用担当が返事をした日時
  • 抜き取りで見つけた答えのずれと、直した内容
  • 月ごとの route の件数と、答えられなかった質問の種類

2つ目で「その時点の文書の版」を残すのは、案内が年度の途中で変わるためです。 締切が延びた、選考の回数が変わった、といった差し替えの前後で、学生にどの版で答えたかが分からないと、問い合わせに説明できません。

04実装レベルの3段階

最小構成:案内の文書を生成AIに貼り、採用担当が返信の下書きを作らせる / 1件ごとの根拠探しと下書き
半自動化:上記+検索基盤に案内を載せ、採用担当が社内で使う回答の検索にする / 根拠探しと下書き。返信は人
本格構成:上記+採用サイトのチャットで学生に直接答え、引き継ぎと記録を自動で回す / 一般の質問への回答と、引き継ぎの振り分け

最小構成では、返信は速くなっても夜と土日は埋まりません。 人が送る形のままだからです。確かめるための段階です。 半自動化で、1件6分が4分程度になります。 根拠を探す時間が減りますが、返信の作成と送信は残ります。本格構成で2分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、一般の質問への返信そのものが人の手から外れるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で採用担当が検索を使うと、答えられない質問と、文書どうしの食い違いが先に見つかります。それを直してから学生に開くほうが、最初の数週間の答え間違いが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
600 件
1件あたり現在時間
6 分
1件あたり導入後時間
2 分
現在  600件 × 6分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 600件 × 2分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価3,000円)
144万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 店舗や拠点が多く、新卒の配属先・転勤の有無・勤務地のコースについての質問が多い小売業・飲食業など。インターンシップ、本選考、内定者のフォローが年間を通じて並行し、2つの卒業年度の質問が同時に届く場合。募集要項・選考案内・採用FAQが文書としてそろっていて、卒業年度ごとに版を分けて管理できる場合。採用担当が少人数で、夜間や土日の質問に翌営業日まで返せていない場合。
向いていない
  1. 新卒の採用人数が年に数名で、質問が月に数十件に収まる場合。募集要項が求人媒体の原稿しかなく、社内に正本の案内文が無い場合(先に文書を整えるほうが効果が大きい)。質問の大半が本人の選考状況や合否の問い合わせで占められている場合(本人確認のできる窓口が要る。UC-0075の構成が近い)。待遇の条件が個別に決まり、一律の案内として書けない場合。

07最小構成で試す方法

  1. 先月届いた質問から40件を選ぶ(配属・待遇・締切の質問と、個別の相談を必ず混ぜる)
  2. 今年度の募集要項・選考案内・採用FAQを1つの文書にまとめる
  3. 手元の生成AIのサービスに文書を貼り付け、1件ずつ質問する
  4. 「この文書に書かれていることだけで答えてください。書かれていなければ『記載がない』と答えてください。選考の結果や個別の事情には答えないでください」と指示する
  5. 出てきた答えを、当時担当者が返した答えと突き合わせる

40件は必ずやってください。 チャットを作る前に、「案内の文書だけで、どこまで答えられるのか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時と同じ内容を案内の言葉で答えたデータストアと絞り込みの組み立てに進む
文書に無いことを言い切った指示の書き方で直る。構成は有効
記載が無く答えられない質問が多い配属と勤務地の案内の整備が先。 AIの問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、学生が知りたいことと、会社が書いていることのずれが1つ見つかったということです。 足りない記載を書き起こし、同じ40件でもう一度試してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
来年度の案内で今年度の学生に答える年度を選ばせてから質問欄を開き、grad_year で絞る
メタデータを付けたのに絞り込めないスキーマで Indexable にする
配属の質問で「希望が通ります」と言い切る文書に無い言い切りを禁じ、抜き取りで配属の答えを優先して見る
選考の結果の問い合わせに案内で答える検索の前に規則で取り出す
コースを決めていない学生に片方の条件で答える両コースを検索し、コースごとに分けて返す
締切の過ぎた案内を根拠にするvalid_until で外し、status を archived にする
共通の案内を複製して食い違うcommon で1つだけ持つ
学生の入力で検索の範囲が広がる絞り込みの式に学生の文字を混ぜない
地元の希望の理由を聞き返す理由を尋ねないと指示に書く
続けて聞かれた質問で前の条件を引きずる抜き取りで言い換えの結果を確かめる
引き継いだ質問への返事が遅れるマイページの受信と返信の状態を毎朝数える
答えられない質問が減らない週に1回、種類ごとに数えて案内に足す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも年度の取り違えで、AIの精度ではなく検索の範囲の問題です。 絞り込みが効いていないまま公開すると、正しい言葉で違う年度の締切を答えます。

最後の行は、運用に乗るかを決めます。 答えられない質問を見ないままにすると、引き継ぎの割合が下がらず、採用担当の手は減りません。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 学生の質問の文面、選んだ卒業年度とコース、会話の記録。質問の中に、氏名・学校名・連絡先、健康や家族の事情が書き込まれることがあります。

  1. 選考の情報に触れない … このチャットは名乗らない学生が使います。採用管理システムにつながないことで、本人の選考の状況が漏れる経路をそもそも作りません
  2. 聞いてはいけないことを聞かない … 厚生労働省は、公正な採用選考の基本として、本人の適性・能力に基づいた基準とすることを挙げ、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などは原則として収集が認められないとしています。AIが会話の流れで家族や出身地を聞き返さないよう指示し、抜き取りで確かめます
  3. 書き込まれた個人情報を残しすぎない … 検索にかける前に伏せ、記録にも伏せた後の文面を残します。個別の事情は、本人確認のできる経路で採用担当が受けます
  4. 募集要項と答えをずらさない … 就業の場所と業務の変更の範囲は、募集の際に明示する労働条件です。転勤の質問への答えが募集要項の記載とずれないよう、根拠を募集要項に置きます
  5. AIが答えていることを学生に示す … チャットの最初に、AIが案内の文書から答えること、個別の相談は担当者が受けることを書きます
  6. 案内の正本を人事部が持つ … データストアに載せる文書は、人事部が確定した版だけにします。AIに案内を書かせて載せることはしません

誤りが起きた場合のリスクは、違う年度や違うコースの条件を伝えることと、本人に関わる話に一般の案内で答えることの2つです。 前者は絞り込みで、後者は検索の前の引き継ぎの規則で防ぎます。どちらもAIに判断させない場所で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:案内の文書を集めて版を分ける

今年度と来年度の募集要項・選考案内・採用FAQを集め、年度とコースごとに分けます。 両コースに共通の部分は1つにまとめます。配属と勤務地の案内が無ければ、店舗運営部と書き起こす日程を決めます。

2週目:40件で試す

先月の質問から40件を選び、手元の生成AIに案内を貼って答えさせます。文書に無いことを言い切っていないか、個別の相談に答えていないかを最優先で見ます。

3週目:引き継ぎの規則を決める

どの質問を担当へ回すかを、採用チームで決めます。 選考の結果、本人の状況、健康や家族の事情、内定の辞退は必ず入れます。あわせて、引き継いだ学生を採用マイページへ案内する文面を作ります。

4週目:データストアを作り、社内で使う

Cloud Storage に文書とメタデータを置き、Vertex AI Search(Agent Search)のデータストアを作ります。この時点では学生に開かず、採用担当が返信の根拠を探すのに使います。

2か月目: 中継プログラムとチャット画面を作り、support_score の境目を決めて、採用サイトに公開します。route ごとの件数を毎週数えます。3か月目以降: 答えられなかった質問を案内に足し、1件6分が何分になったかを実測します。引き継ぎの割合が下がり、夜と土日の質問にその場で答えられている時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-05/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ改称されつつあること。answer メソッドがセッションによる複数回のやり取りと質問の言い換えに対応すること。includeCitations、ignoreAdversarialQuery、ignoreNonAnswerSeekingQuery、ignoreLowRelevantContent、promptSpec.preamble、searchSpec.searchParams の filter。答えの裏付けを0〜1の値で返せることGoogle Cloud: Agent Search の answer メソッド2026-10-05
Cloud Storage などからデータストアを作れること。PDF、HTML、DOC、TXT、PPTX を取り込めること。メタデータを JSONL で付けられること。取り込みを1回または定期の同期から選べることGoogle Cloud: Agent Search の検索データストアの作成2026-10-05
絞り込みに使う項目をスキーマで Indexable にすること。ANY() の完全一致、AND・OR・NOT、数値の比較の演算子Google Cloud: Agent Search のメタデータによる絞り込み2026-10-05
公正な採用選考の基本が、応募者に広く門戸を開くことと、本人の適性・能力に基づいた基準とすること。本籍地や家族の職業など本人に責任のない事項、宗教や支持政党など本来自由であるべき事項が職務の遂行と関係がないこと。社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などは原則として収集が認められないこと厚生労働省: 公正な採用選考の基本2026-10-05
2024年4月1日から、募集の際に明示する労働条件に、従事すべき業務の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約の更新の基準が加わったこと厚生労働省: 職業安定法施行規則改正(労働条件明示等)2026-10-05

募集の際の労働条件の明示と、採用選考での個人情報の扱いは、自社の労務の担当と、必要に応じて社会保険労務士に確認してください。 本記事は厚生労働省のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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