Media > AI活用ユースケース > 購買 > 仕入先との価格交渉の会議から、合意事項と持ち帰りを交渉記録にまとめる

仕入先との価格交渉の会議から、合意事項と持ち帰りを交渉記録にまとめる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

仕入先とのオンライン商談の文字起こしから、誰が何を提示し、何を合意し、何が持ち帰りかを決まった形の交渉記録にまとめ、合意事項の確認メール案も作ります。記録は仕入先別の交渉履歴に1行ずつ残します。

サマリー
利用ツール
ChatGPT/Claude/Gemini/Google Apps Script/Power Automate
対象業界
商社/宿泊/小売/製造/飲食
対象部門
購買
対象業務
要約/記録・議事録作成
主な課題
属人化している/引き継ぎができていない/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
要約
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
既存ツールのみ(小)
人間の確認
条件付き
現在工数
37.5h/月
AI導入後
12h/月
想定削減
68%
年間削減
306h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 仕入先とオンライン会議で商談する。担当者は画面を見ながら手元にメモを取る
  2. 会議の後、メモと記憶を頼りに、提示された条件と決まったことを書き出す
  3. 前回の記録を探して開き、どこまで話が進んでいたかと照らし合わせる
  4. 合意した事項を仕入先に伝える確認メールを書く。送るかどうかは担当者が決める
  5. 合意した単価や納品条件を、発注の担当と店舗向けの連絡に回す
  6. 仕入先から返事が来たものは、担当者のメールの中に残る
導入後(After)
  1. 人会議の冒頭で、出席者と今日の論点を口頭で述べ、Google Meet の文字起こしと自動メモ生成を開始する
  2. 人会議の終わりに、決まったことと持ち帰りを口頭で読み上げて確かめる
  3. 自動会議の後、文字起こしと自動メモが主催者のドライブの「Google Meet」フォルダに保存される
  4. 人交渉記録のひな形をコピーし、Gemini のサイドパネルで文字起こしを指定して、決まった指示を貼る
  5. 自動Gemini が、提示・合意・持ち帰りを分けた交渉記録の表と、確認メール案を出す
  6. 人担当者が、金額・数量・日付を文字起こしの該当箇所と見比べ、表を直す
  7. 人確認メール案を直して、仕入先へ送る
  8. 自動ひな形のメニューから Apps Script を動かし、表の行を仕入先別の交渉履歴へ転記する
  9. 人仕入先から返信が来たら、交渉履歴の「相手確認」の欄を埋める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 仕入先とオンライン会議で商談する。担当者は画面を見ながら手元にメモを取る
  2. 会議の後、メモと記憶を頼りに、提示された条件と決まったことを書き出す
  3. 前回の記録を探して開き、どこまで話が進んでいたかと照らし合わせる
  4. 合意した事項を仕入先に伝える確認メールを書く。送るかどうかは担当者が決める
  5. 合意した単価や納品条件を、発注の担当と店舗向けの連絡に回す
  6. 仕入先から返事が来たものは、担当者のメールの中に残る

(a)記録の形が担当者ごとに違う。 単価だけを書く人、経緯まで書く人、相手の発言を書かずに結論だけを書く人がいます。同じ仕入先でも、担当が変わった月から記録の読み方が変わります。

(b)「提示」と「合意」が区別されていない。 メモには「単価 480円」とだけあり、それが相手の提示なのか、こちらが受け入れた値なのかが後から分かりません。数か月後に価格の話が出たとき、担当者自身も判断がつかないことがあります。

(c)持ち帰りが消える。 「社内で確認して来週お返事します」という相手の持ち帰りは、メモに残りにくい発言です。自社の持ち帰りも同じで、期限が書かれないまま次の会議を迎えます。

(d)確認メールが出ていない。 忙しい週は4番を省きます。後で認識が食い違ったとき、手元にあるのは自社のメモだけです。 相手にとってはそのメモを見たことがなく、「言った・言わない」の話になります。

  1. 【人】 会議の冒頭で、出席者と今日の論点を口頭で述べ、Google Meet の文字起こしと自動メモ生成を開始する
  2. 【人】 会議の終わりに、決まったことと持ち帰りを口頭で読み上げて確かめる
  3. 【自動】 会議の後、文字起こしと自動メモが主催者のドライブの「Google Meet」フォルダに保存される
  4. 【人】 交渉記録のひな形をコピーし、Gemini のサイドパネルで文字起こしを指定して、決まった指示を貼る
  5. 【自動】 Gemini が、提示・合意・持ち帰りを分けた交渉記録の表と、確認メール案を出す
  6. 【人】 担当者が、金額・数量・日付を文字起こしの該当箇所と見比べ、表を直す
  7. 【人】 確認メール案を直して、仕入先へ送る
  8. 【自動】 ひな形のメニューから Apps Script を動かし、表の行を仕入先別の交渉履歴へ転記する
  9. 【人】 仕入先から返信が来たら、交渉履歴の「相手確認」の欄を埋める

2番目が、この構成の精度を決めます。 会議の終わりに「本日は、〇〇の単価を4月納品分から480円とすること、納品は火曜と木曜、最低発注数量は御社で持ち帰り、で合っていますか」と読み上げてもらうだけで、文字起こしの中に、合意の根拠になる一続きの発言が残ります。 AIはそこを基準に表を作れます。

6番目は省けません。 話し言葉の数字は聞き違いが起きやすく、単価と数量の単位も会話の中では省かれます。人が見るのは、表の中の数字と日付だけに絞ります。 文章全体の読み直しは要りません。

02今回想定するシステム構成

構成図
仕入先とのオンライン商談(Google Meet)
   │  冒頭で出席者と論点を述べ、終わりに合意事項を読み上げる
   ▼【会議の終了】
文字起こし・自動メモ(主催者のドライブ「Google Meet」フォルダ)
   ▼
交渉記録のひな形(Google ドキュメント)
   │  サイドパネルで文字起こしを @ で指定し、決まった指示を貼る
   ▼
Gemini ── 交渉記録の表と確認メール案を作る
   │   ① 出席者と論点   ② 提示(誰が・何を)   ③ 合意
   │   ④ 持ち帰り(自社/仕入先・期限)   ⑤ 聞き取れなかった箇所
   ▼
【人が数字と日付を文字起こしと見比べて直す】
   ├──▶ 確認メールを仕入先へ送る(送信は人)
   └──▶ Apps Script ── 表の行を仕入先別の交渉履歴へ転記
役割想定する製品代替候補
処理Gemini(Google Workspace。ドキュメントのサイドパネル)Microsoft 365 の生成AI(Teams の文字起こしと組み合わせる)、ChatGPT、Claude
連携Google Apps Script(交渉記録の表を交渉履歴へ転記)手作業での転記、Power Automate
文字起こしGoogle Meet の文字起こしMicrosoft Teams の文字起こし、Zoom の文字起こし
保管Google スプレッドシート(仕入先別の交渉履歴)Excel、既存の購買管理システムのメモ欄

新しく契約するものはありません。 文字起こしと Gemini を使える Google Workspace のエディションであれば、足すのは交渉記録のひな形と、交渉履歴のスプレッドシートと、短い Apps Script だけです。

入力の土台は、Google Meet の文字起こしです。 ヘルプによると、文字起こしは会議の主催者の Google ドライブの「Google Meet」フォルダに保存され、会議ごとのサブフォルダが作られます。主催者、共同主催者、文字起こしを開始した人にメールが送られ、Google カレンダーの予定にも添付されます。対応言語には日本語が含まれています。

ただし、文字起こしに入るのは会議で話された言葉だけです。 チャットのメッセージは入りません。画面共有した見積書や、チャットに貼った単価は記録に残らないということで、第5章の「読み上げ」はこの穴を埋めるためでもあります。

自動メモ生成(Gemini のメモ)は補助に使います。 会議の終了後すぐにメモのドキュメントが生成され、「クイックメモ」と、概要・決定事項・次のステップ・詳細を含む「完全なメモ」の2つのタブを持つとされています。便利ですが、15分から8時間までの会議向けで、欄の並びも交渉記録用ではありません。短い電話代わりの商談でも残る文字起こしを主にし、メモは照合の材料にします。

加工は、Google ドキュメントのサイドパネルの Gemini で行います。 右上の「Gemini に相談」から開き、「@」でドライブのファイルを指定して、「@ファイル名に基づいて」と頼めます。文字起こしのファイルをひな形の中から指定できるので、コピーして貼る手間がありません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

会議が終わり、文字起こしがドライブに保存されたことを起点にします。 ヘルプには、長時間の会議の文字起こしは処理に時間がかかるとあります。会議の直後に開いてまだ無ければ、主催者に届くメールを待ってから始めます。

記録を作るのは、その日のうちにします。 確認メールは相手の記憶が新しいうちに届けるほど、返信での訂正が正確になります。翌日にまとめて作る運用にすると、第3章の(d)に戻ります。

文字起こしは、会議ごとに担当者が自分で開始します。 主催者向けの管理機能がオンのときは、開始できるのは主催者と共同主催者だけとされています。仕入先との商談の予定は、購買の担当者自身が主催者として作ることを決まりにしておきます。

最初からすべてを自動で起動する設計にはしません。 交渉記録のひな形をコピーして指示を貼る操作は人が行います。1件あたり1分程度の操作で、どの会議を交渉記録にするかを人が選べるほうが、社内の打ち合わせまで履歴に入ってしまう事故を防げます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
文字起こし会議で話された言葉。冒頭の出席者紹介と、終わりの読み上げを含む主催者のドライブの「Google Meet」フォルダ
自動メモ概要、決定事項、次のステップ(15分以上の会議のみ)同じフォルダの会議ごとのサブフォルダ
前回の交渉記録同じ仕入先の直近の交渉記録。未完了の持ち帰りを含む仕入先別の交渉履歴
会議の基本情報仕入先名、仕入先コード、日付、自社の出席者、対象の品目担当者がひな形に書く

質を決めるのは、いちばん上の文字起こしに何が話されているかです。 ツールの設定よりも、会議の冒頭と終わりの話し方で決まります。冒頭で「本日は△△食品の営業部の□□様と、弊社購買部の〇〇で、鶏もも肉の単価と納品日についてご相談します」と言うだけで、誰が話しているかの手がかりと、論点の一覧が文字起こしの最初に入ります。

前回の交渉記録を入れるのは、持ち帰りを閉じるためです。 前回、仕入先が「最低発注数量は社内で確認します」と持ち帰っていたなら、今回の会議でその答えが出たかを確かめます。出ていなければ、今回の表にも持ち帰りとして引き継ぎます。

仕入先コードは担当者が書きます。 AIに文字起こしから会社名を読ませると、「△△さん」「△△食品さん」「△△フーズ」と表記がぶれ、交渉履歴で同じ仕入先の行が分かれます。

Step3

データの取得方法を決める

文字起こしは、ひな形の中のサイドパネルから「@」で指定します。 ファイルを開いてコピーする必要はありません。前回の交渉記録も同じように指定できます。

取るものどこから何に使うか
文字起こし全文「@」で指定した文字起こしのファイル提示・合意・持ち帰りの抽出と、根拠の発言の引用
自動メモの決定事項・次のステップ「@」で指定したメモのファイル文字起こしから拾った合意と食い違いがないかの照合
前回の持ち帰り前回の交渉記録のファイル、または履歴から写した行今回の会議で閉じたかどうかの確認

自動メモは、照合にだけ使います。 メモの決定事項を交渉記録の合意欄にそのまま移すことはしません。メモも生成されたもので、ヘルプにも正確性が保証されない場合があると書かれています。文字起こしの発言という一次の材料に戻れる形を保ちます。

会議の参加者に仕入先がいるので、文字起こしとメモの共有範囲を先に確かめます。 自動メモの共有は「すべての招待済みゲスト(組織外含む)」「組織内の招待済みゲスト」「主催者と共同主催者のみ」から選べるとされています。交渉記録の材料にする以上、自社の内部で扱うものとして、組織外に共有しない設定にします。 相手と共有するのは、人が直した確認メールだけです。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 会議の種類の確認 … 仕入先との商談か。社内の打ち合わせなら交渉記録を作らない
  2. 文字起こしの範囲の確認 … 仕入先が退出した後の社内の相談が文字起こしに続いていないか。続いていれば、その部分を指示の対象から外す
  3. 出席者の確認 … 冒頭で出席者が述べられているか。述べられていなければ、担当者がひな形に出席者を書く
  4. チャット・画面共有の確認 … 単価や数量をチャットに貼ったり、見積書を画面で見せたりした場合は、その内容を担当者がひな形に書き足す
  5. 前回の持ち帰りの転記 … 交渉履歴から、この仕入先の未完了の持ち帰りを写す
  6. 読み上げの有無の確認 … 会議の終わりに合意事項を読み上げたか。していなければ、確認メールで相手に確かめる項目が増えることを担当者が承知しておく

2番目を軽く見ないでください。 仕入先が会議から抜けた後、「さっきの480円は、まだ下がる余地がありそうだね」と自社の担当者どうしで話すことがあります。文字起こしは主催者が止めるまで続くので、この発言も入ります。 そのまま指示に渡すと、自社の本音が交渉記録に書かれ、確認メール案にまで混ざるおそれがあります。社内の相談を始める前に文字起こしを止めることを、運用の決まりにします。

4番目は、文字起こしがチャットを含まないことから来る作業です。 数字を画面や文字で見せた会議ほど、話し言葉には「この金額で」としか残りません。

Step5

AIに処理させる

させるのは、文字起こしから発言を拾い、決まった欄に振り分けることだけです。 何が得な条件か、受けるべきかは考えさせません。

欄入れるもの入れてよい条件
提示どちらかが出した条件(単価、納期、数量、支払条件など)誰の発言かが分かること。分からなければ「発言者不明」
合意双方が受け入れた条件双方が受け入れたことを示す発言が、文字起こしにあること
持ち帰り(自社)自社が確認して返事をすること返事の期限が話されていれば書く。無ければ「期限の発言なし」
持ち帰り(仕入先)仕入先が確認して返事をすること同上
前回からの持ち越し前回の持ち帰りのうち、今回答えが出たもの・出なかったもの前回の記録と照らして判断する
聞き取れなかった箇所数字や品目が文字起こしで不自然なところ推測で直さず、そのまま引用する

合意の欄の条件が、この構成でいちばん大事な区別です。 「前向きに検討します」「その方向で」「社内で相談します」は、合意ではありません。 持ち帰りか、提示に対する反応です。合意に入れてよいのは、「では480円でお願いします」「それで結構です」のように、受け入れたことが言葉として残っているものだけにします。

迷ったときは、合意ではなく提示か持ち帰りに置かせます。 合意でないものを合意と書くほうが、逆の失敗より重くなります。確認メールに「合意しました」と書いて送れば、相手が訂正しない限り、それが事実として扱われていくからです。

させないこと理由
条件を受け入れるべきかの判断交渉の判断は担当者と上長のもの。この構成の役割ではない
金額の計算・単位の換算1キロあたりとケースあたりを揃えると、話されていない数字が生まれる
聞き取れなかった数字の補完前後から推測した値が、そのまま確認メールに載る
発言者の推測話し方や内容から「たぶん仕入先」と決めない
自社の内部の相談を記録すること仕入先の退出後の発言は、交渉記録にも確認メールにも入れない

2行目が起きやすい失敗です。 「1ケース10キロで4,800円」と話されていると、表に「1キロあたり480円」と書き足します。計算は合っていても、相手と話したのはケースの値段で、キロの値段ではありません。 確認メールには話された単位のまま載せます。

Step6

指示内容を固定する

交渉記録のひな形の最後に、次の指示を貼っておきます。サイドパネルの履歴はドキュメントを開き直すと消えるとヘルプにあるため、指示はひな形の中に置き、毎回コピーして使います。

あなたは購買部門で、仕入先との商談の記録を作る立場です。
@(今回の文字起こし)と @(前回の交渉記録)だけを材料にしてください。
自動メモがある場合は @(自動メモ)を照合にだけ使い、そこから合意を拾わないでください。

【今回の会議の情報】
仕入先コード:{supplier_code} 仕入先名:{supplier_name}
日付:{date} 自社の出席者:{our_members} 対象品目:{items}

【作るもの】
1. 交渉記録の表(次の列、この順)
   区分|論点|内容|提示した側|期限|根拠の発言
   区分は 提示/合意/持ち帰り(自社)/持ち帰り(仕入先)/持ち越し/聞き取り不明 のどれか
   論点は 価格/納期/数量/支払条件/品質・規格/その他 のどれか
   提示した側は 自社/仕入先/発言者不明 のどれか
2. 仕入先への確認メールの下書き(合意と持ち帰りだけを書く)

【区分の選び方】
- 合意:双方が受け入れたことを示す発言が文字起こしにある場合だけ。
  「前向きに検討」「その方向で」「相談します」は合意にしないでください。
- 迷ったら合意にせず、提示か持ち帰りにしてください。
- 会議の終わりに読み上げた内容がある場合は、それを合意の根拠として優先してください。
  読み上げと会議中の発言が食い違う場合は、両方を書き、区分を 聞き取り不明 にしてください。
- 前回の持ち帰りで、今回答えが出なかったものは 持ち越し にしてください。

【厳守事項】
- 金額・数量・日付は、話された数字と単位のまま書いてください。
  計算・換算・丸めをしないでください。1キロあたりの値を書き足さないでください。
- 数字が不自然なとき(桁が合わない、前後で違う)は、直さずに 聞き取り不明 に入れてください。
- 根拠の発言には、文字起こしの該当する文をそのまま写してください。要約しないでください。
- 誰の発言か文字起こしから分からないときは、提示した側を 発言者不明 にしてください。
  話し方や内容から推測しないでください。
- 仕入先が退出した後の自社の相談、自社の希望価格や上限の話は、表にもメールにも書かないでください。
- 条件を受け入れるべきか、得か損かは書かないでください。
- 確認メールには「聞き取り不明」の行を入れず、担当者への注意として表の下に列挙してください。
- 確認メールは「本日の打ち合わせで確認した内容は次のとおりと理解しております。
  認識に相違がございましたらご指摘ください」の趣旨で締めてください。

「前向きに検討は合意にしない」を名指しで書かないと、合意に入ります。 日本語の商談は、はっきり受け入れる言葉を避けて進むことが多く、何も言わなければ前後の流れから「合意した」と読みます。合意と判断する言葉の例ではなく、合意でない言葉の例を挙げるほうが効きます。

「自社の希望価格や上限の話を書かない」は、前処理で外し損ねたときの二重の守りです。 文字起こしの切り方を間違えても、確認メールに自社の本音が載ることは避けます。

確認メールの締めの一文を指定しているのは、この文面が相手に訂正を求めるものだからです。 「合意しました」と言い切る文より、「相違があればご指摘ください」と返事の余地を残す文のほうが、相手からの訂正が返ってきやすくなります。 返信が来て初めて、記録は双方の確認を経たものになります。

Step7

出力形式を固定する

サイドパネルに出させるのは、決まった列の表です。 Apps Script がその表を読んで交渉履歴に転記するので、列の並びと区分の語を固定します。

列値例
区分提示/合意/持ち帰り(自社)/持ち帰り(仕入先)/持ち越し/聞き取り不明合意
論点価格/納期/数量/支払条件/品質・規格/その他価格
内容話された数字と単位のまま鶏もも肉 1ケース10キロ 4,800円(4月納品分から)
提示した側自社/仕入先/発言者不明仕入先
期限話された期限。無ければ「期限の発言なし」期限の発言なし
根拠の発言文字起こしの文をそのまま「では4月納品分から4,800円でお願いします」

交渉履歴に転記するときは、Apps Script が1行を次の形にそろえます。

{
  "record_id": "",
  "supplier_code": "",
  "meeting_date": "YYYY-MM-DD",
  "our_owner": "",
  "category": "提示 | 合意 | 持ち帰り(自社) | 持ち帰り(仕入先) | 持ち越し | 聞き取り不明",
  "topic": "価格 | 納期 | 数量 | 支払条件 | 品質・規格 | その他",
  "content": "",
  "proposed_by": "自社 | 仕入先 | 発言者不明",
  "due": "",
  "evidence": "",
  "checked_by_owner": true,
  "mail_sent_at": "",
  "supplier_confirmed_at": "",
  "transcript_link": ""
}

1つ目の理由は、交渉を「論点」で追えることです。 同じ仕入先の価格の行だけを並べれば、半年分の提示と合意の流れが1枚で読めます。後任が最初に見るのは、この並びです。

2つ目は、mail_sent_at と supplier_confirmed_at を別の列にしていることです。 確認メールを送っただけの合意と、相手が返信で確かめた合意は、後で食い違いが出たときの重みが違います。 履歴の上で区別しておけば、相手確認の済んでいない合意を週に1回洗い出せます。

3つ目は、transcript_link で元の会議に戻れることです。 履歴の1行から、文字起こしのファイルを開いて根拠の発言を確かめられます。

聞き取り不明 の行も履歴に残します。 確認メールには載せませんが、担当者がどう直したかを後から追えるようにするためです。担当者が直した行は category を直した後の区分にし、元の区分は保存・ログ側に残します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Google Meet会議の機能文字起こしと自動メモをドライブに保存する
交渉記録のひな形Google ドキュメントサイドパネルの Gemini で表とメール案を作る
仕入先別の交渉履歴Apps Script の転記表の行を履歴の末尾に追加する
メール担当者の手作業確認メールを直して送る
受発注システム既存の入力経路合意した条件を人が登録する

Apps Script は、ひな形のドキュメントの中の表を読み、スプレッドシートに行を足すだけです。 ドキュメントの表は行数を数え、行とセルを取り出して文字列として読めます。スプレッドシートの appendRow は、シートの現在のデータ範囲の末尾に1行を追加します。必要なのはこの2つだけで、外部のサービスは呼びません。

転記は、担当者が表を直した後に、メニューから手で動かします。 表ができた瞬間に自動で転記すると、確かめる前の数字が履歴に入ります。人が数字を見たという印(checked_by_owner)が付いた行だけを転記する条件をスクリプトに入れます。

受発注システムへは書き込みません。 合意した単価を発注に反映するのは、既存の手順どおり人が行います。記録の誤りが、そのまま発注の金額になる経路を作らないためです。

Step9

人が確認する

人が確かめるのは、表の中の数字・単位・日付と、区分が合意になっている行です。 文章全体を読み直す必要はありません。

  1. 合意の行を先に見る … 根拠の発言を読み、本当に双方が受け入れた言葉かを確かめます
  2. 数字と単位を見比べる … 内容の列の金額・数量・日付を、文字起こしの該当箇所と比べます。話し言葉の数字は聞き違いが多いので、ここは必ず見ます
  3. 聞き取り不明の行を片付ける … 自分の記憶と見積書で直すか、確認メールで相手に尋ねる項目に回します
  4. 確認メール案を直す … 合意と持ち帰りが表と一致しているかを見て、宛名と文面を整えます。送信は人が行います
  5. 判定を直したら記録する … どの行を、どの区分からどの区分に変えたかを残します

1番目を省かないでください。 合意の欄に入った1行は、確認メールを通じて相手への約束になります。「前向きに検討します」が合意として送られると、訂正のやり取りが1往復増えるだけでなく、相手の信用を損ねます。

目標は、1件8分です。 表の数字の確認に4〜5分、確認メールの手直しに2分、転記の操作に1分。それ以上かかる会議は、冒頭の出席者紹介か終わりの読み上げが抜けていることが多いので、話し方の側を直します。

Step10

例外に対処する

起きること対応
文字起こしが保存されないヘルプでは、主催者と開始者の両方のドライブに十分な容量がある場合にのみ記録できるとされる。容量を確かめ、その回は担当者の口述メモから作る
15分未満の短い商談自動メモは作られない。文字起こしだけで作る
対面や電話で交渉した文字起こしが無い。担当者が会議の後に要点を口述した文章を入力にする
チャットや画面で数字を見せた文字起こしに残らない。前処理で担当者が書き足す
仕入先の退出後も文字起こしが続いた該当部分を外してから指示を貼る。外し損ねた場合も指示で除外する
読み上げと会議中の発言が食い違う両方を表に書き、聞き取り不明にする。確認メールで相手に確かめる
発言者が分からない発言者不明のまま残す。推測で埋めない
相手が確認メールに返信しない1週間後に交渉履歴の未確認の合意を洗い出し、担当者が再度確かめる
相手が返信で内容を訂正した交渉履歴の該当行を直し、訂正のメールへのリンクを残す

上から3行目は、例外というより日常です。 仕入先との交渉のすべてがオンライン会議になるわけではありません。入力が口述メモに変わっても、表の形と確認メールの流れは同じにしておくと、交渉履歴に穴が開きません。

最後の2行が、この構成で「言った・言わない」を防ぐ部分です。 相手の返信が無いまま残った合意は、まだ自社だけの理解です。 履歴の上で未確認と分かるようにしておくことが、後の食い違いへの備えになります。

Step11

記録を残す

  • 文字起こしと自動メモのファイル(ドライブの「Google Meet」フォルダのまま。移動しない)
  • Gemini が出した交渉記録の表の元の版と、担当者が直した後の版
  • 担当者が区分や数字を直した記録 … どの行を、どちらに変えたか
  • 送った確認メールと、仕入先からの返信
  • 交渉履歴の各行と、元の文字起こしへのリンク
  • 仕入先ごとの「聞き取り不明」の件数

2つ目で元の版を残すのは、指示を直すときの材料にするためです。 担当者の手直しが多い型(たとえば「検討します」が合意に入る)が見えれば、指示に名指しで足すべき言葉が分かります。

最後の行は、会議の進め方を見直す材料になります。 特定の仕入先との会議だけ聞き取り不明が多いなら、回線の状態か、数字を画面で見せる習慣に理由があります。読み上げの徹底を頼むほうが、指示を直すより効きます。

04実装レベルの3段階

最小構成:空のドキュメントでサイドパネルに文字起こしを指定し、表を作らせる / 1件ごとの交渉記録の下書き
半自動化:上記+指示を入れたひな形と、Apps Script による交渉履歴への転記 / 記録の形の統一と、履歴への蓄積
本格構成:上記+未確認の合意と期限切れの持ち帰りを週に1回洗い出し、担当者に知らせる / 持ち帰りと相手確認の追いかけ

最小構成では、記録の形がそろいません。 担当者が毎回自分で指示を書くので、表の列が少しずつ変わります。確かめるための段階です。 半自動化で、1件25分が8分になります。本記事の想定はこの段階です。 差が大きいのは、思い出して書き出す作業が、表の数字を見比べる作業に置き換わるからです。 本格構成では、記録の後の追いかけが自動になります。 工数の削減は小さく、効くのは持ち帰りの取りこぼしです。半自動化の履歴が3か月分たまり、区分の付け方が安定してから進みます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
90 件
1件あたり現在時間
25 分
1件あたり導入後時間
8 分
現在  90件 × 25分 ÷ 60 = 37.5 時間/月
導入後 90件 × 8分 ÷ 60 = 12 時間/月
月間削減時間
25.5h
削減率
68%
年間削減時間
306h
年間金額換算(時間単価3,500円)
107万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 仕入先との価格・納期・取引条件の商談をオンライン会議で行うことが多く、月に数十件以上ある購買部門。飲食チェーンやホテルの本部で食材・備品をまとめて購買している場合や、製造業・小売業・商社で仕入先が多い場合。交渉の記録が担当者の手帳やメールに散らばり、担当替えのたびに経緯が分からなくなっている場合。Google Workspace を使っており、会議の文字起こしと Gemini を使えるエディションを契約している場合。
向いていない
  1. 仕入先が数社に限られ、交渉が年に数回しかない場合。商談の大半が対面や電話で、会議の文字起こしが残らない場合。価格が市況に連動して自動的に決まる契約が中心で、交渉そのものが少ない場合。なお、提示された条件を受け入れるかどうかの判断や、値上げ依頼が妥当かの分析は、この構成では行いません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の仕入先との商談から、文字起こしが残っているものを5件選ぶ(うち2件は、後で認識が食い違ったことが分かっているものを入れる)
  2. その5件について、担当者が当時書いたメモと、送った確認メールを集める
  3. Google ドキュメントに空のひな形を作り、サイドパネルで文字起こしを「@」で指定する
  4. 「この会議について、提示・合意・持ち帰り(自社)・持ち帰り(仕入先)を分けて表にしてください。前向きに検討は合意にしないでください。数字は話されたまま書き、計算しないでください」と指示する
  5. 出てきた表を、当時のメモと確認メールと突き合わせる

5件で十分です。 ここで確かめたいのは、「提示と合意を分けられるか」の1点です。

出てきた内容判断
当時のメモより持ち帰りが多く拾えたひな形と指示を固め、半自動化に進む
検討しますが合意に入った指示に名指しで書き足せば直る。構成は有効
誰の発言かがほとんど分からない会議の冒頭の話し方を先に変える。 AIの問題ではない

3行目が出ても、失敗ではありません。 冒頭の出席者紹介と終わりの読み上げを決まりにしてから、次の月の5件で同じことを試してください。話し方を変えた後の文字起こしで、表の質がどこまで変わるかを見るのが、この段階の目的です。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
「前向きに検討」が合意に入る合意でない言葉を指示に名指しで書く。 迷ったら提示か持ち帰りに置く
単位を換算して、話していない数字が出る計算・換算・丸めを禁じ、話された単位のまま書かせる
チャットで見せた単価が記録に無い文字起こしは話された言葉だけ。数字は口頭でも言う
誰の発言かが分からない冒頭で出席者を述べる。分からない行は発言者不明のまま
仕入先の退出後の社内の相談が混ざる社内の相談の前に文字起こしを止める。 指示でも除外する
自動メモが組織外に共有される共有範囲を組織内または主催者のみに設定する
指示が毎回変わり、表の列がずれる指示はひな形の中に置く。 サイドパネルの履歴は開き直すと消える
確かめる前の表が履歴に入る転記は人がメニューから動かし、確認済みの行だけにする
確認メールが出ないまま合意が残る送信日と相手の確認日を別の列にし、週に1回未確認を洗い出す
短い商談で自動メモが無い15分から8時間までの会議向け。文字起こしを主にする

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、AIが気を利かせて「分かりやすく」書こうとすることから出ています。話されたことを話されたまま置く、という指示の側の決まりで守ります。

5行目は、一度起きると重い失敗です。 自社の上限の価格が確認メールに載って仕入先に届けば、取り消せません。運用の決まりと指示の除外の二重にしておいてください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 仕入先との価格、数量、支払条件などの取引条件と、会議での発言そのものです。自社の購買の方針や、社内で話した上限の価格が混ざることもあります。

  1. 文字起こしと自動メモの共有範囲を確かめる … 文字起こしは組織内の招待者が見られる形でカレンダーに添付され、自動メモは組織外を含む共有も選べるとされています。交渉の材料は組織外に共有しない設定を購買部の決まりにします
  2. 会議の参加者に文字起こしと記録の作成を伝える … 自動メモの作成中は参加者全員に通知され、画面に鉛筆のアイコンが出るとされています。冒頭で「記録のため文字起こしを使います」と一言伝えます
  3. 確認メールを自動で送らない … 出すのは下書きまでです。相手への約束になる文面なので、送信は人が行います
  4. この構成は交渉の判断を代替しません … 提示された条件を受けるか、どこまで譲るかは担当者と上長が決めます。値上げ依頼の妥当性の分析は UC-0057 の領域です
  5. 取引の法令上の扱いは、交渉記録と別に確かめる … 公正取引委員会のページでは、中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり必要な説明を行わなかったりするなど一方的に代金を決めることが、委託事業者の禁止行為として示されています。対象となる取引では、協議の経緯を記録に残すこと自体に意味があります。 ただし、どの取引が対象になるかの判断は、この構成では行いません
  6. 交渉履歴の閲覧範囲を購買部に限る … 仕入先ごとの価格の推移がまとまった一覧です。営業部門や店舗と共有するのは、合意した条件だけにします

誤りが起きた場合のリスクは、合意していないことを合意として相手に送ることと、社内の話を相手に送ることの2つです。 前者は区分の付け方で、後者は文字起こしの切り方で起きます。どちらも確認メールを人が送る前に止められるので、そこを省かない設計にします。

10まず何から始めるか

1週目:会議の話し方を決める

購買部の4名で、会議の冒頭で出席者と論点を述べること、終わりに合意と持ち帰りを読み上げること、社内の相談の前に文字起こしを止めることを決めます。文字起こしと自動メモの共有範囲の設定もここで確かめます。

2週目:5件で試す

先月の商談の文字起こしから5件を選び、サイドパネルで表を作らせます。当時のメモと比べ、「検討します」が合意に入っていないか、単位を換算していないかを最優先で見ます。

3週目:ひな形と交渉履歴を作る

指示を入れた交渉記録のひな形と、仕入先別の交渉履歴のスプレッドシートを作ります。列の並びと区分の語を、この時点で固定します。

4週目:転記をつなぐ

Apps Script で、確認済みの行だけを交渉履歴に転記するメニューを作ります。この時点では、確認メールは今までどおり担当者が書いてもかまいません。

2か月目: 確認メール案を使い始め、送信日と相手の確認日を履歴に記録します。1件あたりの時間を担当者ごとに測ります。3か月目以降: 未確認の合意と期限切れの持ち帰りを週に1回洗い出します。担当替えのときに、後任が交渉履歴だけで前任の経緯を追えた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-25/最終更新:2026-09-25
確認した内容情報源確認日
文字起こしが主催者のドライブの「Google Meet」フォルダの会議ごとのサブフォルダに保存されること。主催者・共同主催者・開始者にメールが送られ、カレンダーの予定に添付されること。対応言語に日本語が含まれること。対象のエディション。管理機能がオンのとき開始できるのが主催者と共同主催者のみであること。会議で話された言葉のみが含まれ、チャットは含まれないこと。両方のドライブに容量がある場合にのみ記録できること。長時間の会議は処理に時間がかかることGoogle Meet ヘルプ: 文字起こし2026-09-25
自動メモ生成の開始方法、保存先、共有範囲の3つの選択肢。「クイックメモ」と「完全なメモ」の2タブ構成。15分から8時間までの会議向けであること。正確性が保証されない場合があること。会議の終了後すぐに生成されること。参加者全員に通知され鉛筆のアイコンが表示されること。対象エディションまたは Google AI プランが必要なことGoogle Meet ヘルプ: 自動メモ生成2026-09-25
ドキュメントのサイドパネルを「Gemini に相談」から開けること。「@」でドライブのファイルを指定できること。対象のプランが必要なこと。履歴がドキュメントを開き直すと失われることGoogle ドキュメント ヘルプ: Gemini2026-09-25
appendRow がシートの現在のデータ範囲の末尾に行を追加することApps Script: Sheet2026-09-25
ドキュメントの表の行数、行、セル、文字列を取り出すメソッドがあることApps Script: Table2026-09-25
中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり必要な説明を行わなかったりするなど一方的に代金を決定することが、委託事業者の禁止行為とされていること公正取引委員会: 委託事業者の禁止行為2026-09-25

どの取引が取適法の対象になるかは、自社の法務と確かめてください。 本記事は公正取引委員会のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0228)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次