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交代勤務の申し送りを音声で残して、次の担当が読める要点にする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

交代前の申し送りを録音し、文字起こしして、案件ごとの要点と未完了事項に整理します。担当者の作業は、話しながらメモを取ることから、整理された内容を確かめて補うことに変わります。

サマリー
利用ツール
Azure AI/ChatGPT/Claude/Gemini/Google Apps Script/Google Vertex AI/Make/Microsoft Copilot/n8n/Power Automate
対象業界
EC/保険/小売/金融
対象部門
カスタマーサポート/品質管理
対象業務
要約/記録・議事録作成
主な課題
問い合わせが多い/属人化している/引き継ぎができていない
AIで行う処理
要約
主な効果
品質標準化/属人化解消/教育コスト削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
SaaS追加(小)
人間の確認
条件付き
現在工数
45h/月
AI導入後
15h/月
想定削減
67%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 交代の15分前に、前の勤務者が申し送る案件を頭の中で整理する
  2. 交代の時刻に、次の勤務者と口頭で申し送りを行う
  3. 次の勤務者が手元のノートにメモを取る
  4. 前の勤務者が、申し送りノートに要点を書く
  5. 分からない点があれば、その場で質問する
  6. 前の勤務者が退勤する
  7. 次の勤務者が、CRMで該当ケースを開いて内容を確かめる
  8. 記載が足りない部分は、前の勤務者へ電話またはチャットで確認する
導入後(After)
  1. 前の勤務者が、交代前に申し送りを録音しながら話す(相手がいなくてもよい)
  2. 自動録音を文字起こしする
  3. 自動案件ごとに内容を分ける
  4. 自動案件ごとに「状況」「約束したこと」「期限」「注意点」に整理する
  5. 自動未完了の約束を一覧にする
  6. 自動ケース番号が読み取れたものを、CRMのケースと突き合わせる
  7. 自動聞き取れなかった箇所と、案件を特定できなかった発言を分けて示す
  8. 前の勤務者が、整理された内容を確認して補う
  9. 次の勤務者が、出勤時に一覧を読む
  10. 不明点があれば、その場で質問する(前の勤務者がまだ在席している)
  11. 自動申し送りの記録を保存し、CRMのケースにリンクする
各工程の詳しい説明を読む
  1. 交代の15分前に、前の勤務者が申し送る案件を頭の中で整理する
  2. 交代の時刻に、次の勤務者と口頭で申し送りを行う
  3. 次の勤務者が手元のノートにメモを取る
  4. 前の勤務者が、申し送りノートに要点を書く
  5. 分からない点があれば、その場で質問する
  6. 前の勤務者が退勤する
  7. 次の勤務者が、CRMで該当ケースを開いて内容を確かめる
  8. 記載が足りない部分は、前の勤務者へ電話またはチャットで確認する

問題は5つあります。

(a)話す側と書く側が同時に動けない。 説明しながらノートに書くことはできません。結果として、どちらかが犠牲になります。

(b)交代の時刻は必ず忙しい。 電話が鳴っている最中に申し送りが始まります。中断が入り、途中から再開すると1件抜けます。

(c)口頭の情報がCRMに残らない。 「この顧客は前回も同じ件で電話してきている」という文脈は、ケースの記録には書かれません。

(d)人によって申し送る内容が違う。 経験の長いリーダーは背景まで伝えますが、新しいリーダーは「未対応3件です」で終わります。

(e)退勤後に確認の連絡が発生する。 分からない点を前の勤務者に聞くため、休憩中や退勤後に電話がかかります。

  1. 前の勤務者が、交代前に申し送りを録音しながら話す(相手がいなくてもよい)
  2. 【自動】 録音を文字起こしする
  3. 【自動】 案件ごとに内容を分ける
  4. 【自動】 案件ごとに「状況」「約束したこと」「期限」「注意点」に整理する
  5. 【自動】 未完了の約束を一覧にする
  6. 【自動】 ケース番号が読み取れたものを、CRMのケースと突き合わせる
  7. 【自動】 聞き取れなかった箇所と、案件を特定できなかった発言を分けて示す
  8. 【人】 前の勤務者が、整理された内容を確認して補う
  9. 【人】 次の勤務者が、出勤時に一覧を読む
  10. 【人】 不明点があれば、その場で質問する(前の勤務者がまだ在席している)
  11. 【自動】 申し送りの記録を保存し、CRMのケースにリンクする

自動化されるのは「文字起こし」「案件ごとの整理」「未完了の抽出」の3つです。残るのは「何を引き継ぐかを決めること」と「内容を確かめること」です。

録音のタイミングを交代の30分前にずらせる点が、この構成のいちばんの効果です。 忙しい交代時刻に説明する必要がなくなります。

02今回想定するシステム構成

構成図
申し送りの録音(スマートフォンまたはPCのマイク)
   │
   ▼
SharePoint の録音フォルダ ──【ファイル作成をトリガー】
   │
   ▼
Azure AI Speech 高速文字起こし(話者分離あり)
   │
   ▼
Claude API(案件ごとの整理・未完了の抽出)
   │
   ├──▶ 案件ごとの要点
   ├──▶ 未完了の約束の一覧
   └──▶ 聞き取れなかった箇所/案件不明の発言
   │
   ▼
申し送り一覧 ──【前の勤務者が確認・補記】
   │
   ▼
Teams へ投稿 + CRM のケースにリンク + SharePoint へ保存
役割想定する製品代替候補
生成AIClaude API(最小構成では Claude のプロジェクト)ChatGPT、Gemini、Microsoft Copilot
OCRAzure AI Speech(音声の文字起こし)Google Vertex AI、Amazon Transcribe
ワークフローPower AutomateMake、n8n、Google Apps Script
保管SharePoint ドキュメントライブラリGoogle ドライブ
通知TeamsSlack、メール

最小構成では、連携は要りません。 スマートフォンの録音アプリで録音し、文字起こししたテキストを生成AIに貼るところから始められます。ここが★2にとどまる理由です。 難しいのは技術ではなく、録音を業務の手順に組み込むことです。

コンタクトセンター向けのSaaSと比べてください。 通話の録音・文字起こし・要約を標準で備えた製品があります。自前で組む価値があるのは、扱いたいのが通話ではなく「オペレーター同士の申し送り」だからです。 通話録音の対象外になる部分です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

録音ファイルが指定のフォルダに置かれたときが起点です。

Power Automate の SharePoint コネクタには「ファイルが作成されたとき」というトリガーが用意されています。録音アプリからSharePointの指定フォルダへ保存する運用にすれば、保存した時点で処理が始まります。

「交代の時刻になったら」を直接のトリガーにしないでください。録音が終わっていない状態で処理が始まります。

半自動化では、次の2つを追加します。

  • 交代の30分前に、録音を促す通知を出す
  • 録音が置かれないまま交代時刻を過ぎたら、リーダーへ通知する

2つ目が運用の要です。 録音しない日が続くと、この仕組みは自然に使われなくなります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
申し送りの録音前の勤務者が話した音声(5〜10分)録音アプリ → SharePoint
シフト情報日付、シフト区分、前後の担当者名勤怠システムまたはシフト表
当該シフトのケース一覧ケース番号、顧客名、状態、最終更新CRM
前回の申し送り直前のシフトの申し送り結果SharePoint
用語の置換辞書社内の略語、商品名、システム名品質管理(新しく作る

「当該シフトのケース一覧」を一緒に渡すことが、この構成の精度を決めます。

録音だけを渡すと、AIは「タナカ様の件ですが」という発言から顧客を推測しようとします。CRM側にある確定情報を一緒に渡せば、推測させる余地が減ります。

置換辞書は必ず作ってください。 コンタクトセンターの申し送りは略語だらけです。

話される言葉正しい表記
ジコウケ事故受付
ニンテイ損害認定
サンテイ査定
シーアールCRMのケース

これを直さないと、案件の特定に失敗します。

Step3

データの取得方法を決める

録音: 録音アプリからSharePointへ保存します。スマートフォンの標準アプリで十分です。 専用の機材を買う必要はありません。

文字起こし: Azure AI Speech の高速文字起こしAPIを使います。エンドポイントは https://<リソース名>.cognitiveservices.azure.com/speechtotext/transcriptions:transcribe?api-version=2025-10-15 の形式で、対象は長さ5時間未満・サイズ500MB未満の音声ファイルです。申し送りの録音は5〜10分なので、この範囲に十分収まります。

localesja-JP を指定します。話者分離を使う場合は、diarizationenabledmaxSpeakers を指定します。

{
  "locales": ["ja-JP"],
  "diarization": { "enabled": true, "maxSpeakers": 2 }
}

話者分離を有効にする場合、ステレオ音声で channels[0,1] に設定することはできません。 複数チャネルの拡張はサポートされていないためです。録音はモノラルで取ってください。

話者分離が必要かどうかは、運用によって変わります。 前の勤務者が1人で話す形なら、話者分離は不要です。2人の会話として録音するなら有効にします。

ケース一覧: CRMのAPIから、当該シフトの時間帯に更新されたケースを取得します。顧客の個人情報は渡しません。 渡すのは、ケース番号・状態・種別・最終更新時刻までにとどめます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 置換辞書の適用 … 略語と社内用語を正しい表記に直します
  2. 無音区間の除去 … 録音の冒頭と末尾の無音を落とします
  3. フィラーの削除 … 「えーと」「あのー」を削ります。意味に影響しません
  4. ケース番号の正規化 … 「シーエス1234」「CS-1234」を同じ形にそろえます
  5. CRMのケース一覧との突き合わせ … 文字起こしに現れたケース番号を照合します
  6. 時間の表現の正規化 … 「明日の午前中」を日付に直します(録音日時を基準にする

6番目に注意してください。 「明日」「来週」は、録音した日が分からないと意味が定まりません。 録音ファイルのタイムスタンプを一緒に渡してください。

Step5

AIに処理させる

処理内容
案件の分割話された内容を案件ごとに分ける
要点の整理案件ごとに「状況」「約束したこと」「期限」「注意点」に分ける
未完了の抽出「折り返す」「確認して連絡する」といった約束を拾う
案件不明の発言の分離どの案件か特定できない発言を分けて示す
聞き取れなかった箇所の明示文字起こしが不確かな箇所を示す
全体の注意事項の抽出案件に紐づかない連絡(システム障害など)を分ける

AIに次のことをさせないでください。

させないこと理由
対応の良し悪しの評価申し送りは評価の材料ではない。録音されなくなる
案件の優先順位付け現場の事情を知らない。人が決める
録音にない内容の補完「おそらく◯◯だと思われます」は引き継ぎを壊す
顧客への対応方針の提案この構成の役割ではない
ケース番号の推測番号が読み取れないものは「不明」とする

「対応の良し悪しを評価させない」ことが、この構成では特に重要です。 申し送りの録音が評価に使われると分かった瞬間に、現場は当たり障りのないことしか話さなくなります。 そうなれば、引き継ぎたかった情報こそが失われます。この点は、導入時に現場へ明示してください。

Step6

指示内容を固定する

あなたは、コンタクトセンターの申し送りを整理する担当者です。
交代前の申し送りの文字起こしを、案件ごとの要点に整理してください。

【厳守事項】
- 対応の良し悪しを評価しないでください。
  「対応が適切でした」「確認が不足しています」と書かないでください。
  話された内容を整理するだけにしてください。
- 案件の優先順位を付けないでください。
  「最優先で対応すべきです」と書かないでください。
- 文字起こしにない内容を補わないでください。
  述べられていない項目は "不明" と記入してください。
  「おそらく」「と思われます」という表現を使わないでください。
- ケース番号は、文字起こしに現れたものだけを使ってください。
  読み取れない場合は case_id を null にし、
  unmatched に発言をそのまま入れてください。
  顧客名からケース番号を推測しないでください。
- 顧客への対応方針を提案しないでください。
- 「折り返す」「調べて連絡する」「確認する」のように、
  まだ終わっていない約束は、すべて open_items に入れてください。
  期限が述べられていない場合は due に "期限の指定なし" と入れてください。
- 文字起こしが不確かな箇所(聞き取れていないと判断した箇所)は、
  unclear に該当部分をそのまま入れてください。
  意味が通るように直さないでください。
- 案件に紐づかない連絡(システム障害、人員の変更など)は、
  general_notes に分けてください。

【今回のシフト】
日付: {shift_date}
シフト区分: {shift_type}
前の勤務者: {from_operator}
次の勤務者: {to_operator}

【このシフトで更新されたケース一覧】
{case_list}

【申し送りの文字起こし】
{transcript}

「対応の良し悪しを評価しない」の1行が、この構成が使われ続けるかどうかを決めます。 技術的な制約ではなく、運用上の制約です。

「顧客名からケース番号を推測しない」も必ず入れてください。 同姓の顧客は必ずいます。推測で紐づけると、別の案件の記録に申し送りが入ります。

Step7

出力形式を固定する

自由文ではなく、案件ごとの固定項目を持つJSONで返させます。

{
  "shift_date": "",
  "shift_type": "",
  "from_operator": "",
  "to_operator": "",
  "cases": [
    {
      "case_id": "",
      "customer_label": "",
      "situation": "",
      "promised": "",
      "due": "",
      "caution": "",
      "quoted_text": "",
      "confidence": "high | medium | low"
    }
  ],
  "open_items": [
    {
      "case_id": "",
      "action": "",
      "due": "",
      "owner": ""
    }
  ],
  "general_notes": [],
  "unmatched": [],
  "unclear": []
}

open_items を独立して持つのが、この構成の中心です。 案件ごとの要点に埋め込むと、次の勤務者が全件を読まないと未完了が分かりません。 一覧として切り出しておけば、出勤して最初に見るのはここだけで済みます。

unmatched には、どの案件か特定できなかった発言をそのまま入れます。 捨てないでください。「あの件、やっぱり無理そうです」という発言は、案件が特定できなくても引き継ぐ価値があります。

unclear は、文字起こしが不確かな箇所です。 電話の音が入る環境で録音するため、聞き取れない箇所は必ず出ます。意味が通るように直させないでください。 直された文は、直されたことが分からなくなります。

customer_label は顧客名そのものではなく、CRMのケースから引いた表示名を入れます。 文字起こしの顧客名をそのまま保存すると、誤変換された名前が記録に残ります。

Step8

システムへ連携する

最小構成では連携はありません。録音を文字起こしし、テキストを生成AIに貼って作業します。

半自動化では、次をつなぎます。

つなぐ先内容
SharePoint録音ファイルの受け取り、申し送り記録の保存
Azure AI Speech文字起こし
CRM(読み取り)当該シフトのケース一覧の取得
CRM(書き込み)申し送り記録へのリンクの登録
Teams次の勤務者への通知、未完了一覧の投稿
勤怠システム(読み取り)シフトと担当者の突き合わせ

CRMのケース本文を自動更新しないでください。 申し送りは前の勤務者の主観を含みます。ケースの記録に混ぜると、顧客に開示する場面で問題になります。 リンクを張るにとどめ、申し送りは別の場所に保存します。

Teamsへの投稿は自動化してよい部分です。 次の勤務者が出勤前にスマートフォンで読めることに意味があります。

Step9

人が確認する

申し送りの内容の確認は、必ず前の勤務者が行います。

確認する点誰が
1unclear(聞き取れていない箇所)前の勤務者(退勤前に補う)
2unmatched(案件が特定できない発言)前の勤務者(どの案件か指定する)
3open_items(未完了の約束)の漏れ前の勤務者
4confidence: low の案件前の勤務者
5case_id の紐づけ前の勤務者
6受け取った内容の不明点次の勤務者(前の勤務者が在席中に質問する

1〜5を退勤前に行うことが、この構成の前提です。 退勤してからでは直せません。整理にかかる時間を3分程度と見込んで、交代の30分前に録音する運用にしてください。

6の「在席中に質問する」を成立させることが、実は最大の効果です。 現在は退勤後に電話しています。録音を前倒しすれば、次の勤務者は出勤時にはすでに内容を読んでいます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
録音が置かれない交代時刻にリーダーへ通知する。督促の仕組みがないと運用が止まる
録音が途中で切れている文字起こしの末尾を unclear に入れる。前の勤務者が補う
周囲の電話の音で聞き取れないunclear に入れる。直させない
ケース番号が読み取れないcase_id を null にし unmatched へ入れる
同姓の顧客が複数いる推測で紐づけない。 前の勤務者が指定する
申し送る案件がない日「申し送りなし」の記録を残す。録音しない日と区別する
引き継ぎ相手が急に変わったシフト情報を手で直す。勤怠システムの反映が遅れることがある
文字起こしAPIが失敗した録音は残っているので再実行する。録音ファイルを消さない
システム障害など案件外の連絡general_notes に分ける。案件に紐づけない
顧客のクレーム内容が含まれる保存先の閲覧権限を限定する。全社共有にしない
録音が10分を大きく超えた分割して処理する。話が長いのは引き継ぎ件数が多い合図でもある
前の勤務者が補記せずに退勤した未確認の状態で次の勤務者へ渡す。「未確認」と明示する
Step11

記録を残す

  • 録音ファイル(保存期間を定める
  • 文字起こしの原文
  • 整理された申し送り(案件ごとの要点、未完了一覧)
  • 前の勤務者が補記・修正した内容と、修正前後
  • 次の勤務者が既読にした時刻
  • open_items のその後の完了状況
  • 置換辞書の変更履歴

「修正前後」を残すことが、精度の改善に直結します。 どの項目がよく直されているかが分かれば、プロンプトと置換辞書のどちらを直すべきかが判断できます。

録音の保存期間を必ず定めてください。 申し送りの録音には顧客の情報と、オペレーターの発言が含まれます。無期限に残す理由はありません。 整理後のテキストを残し、録音は一定期間で削除する設計にしてください。

open_items の完了状況を追うと、引き継ぎ漏れの実数が分かります。 「未完了として引き継いだが、3日経っても完了していない」件数は、この構成を入れる前には測れなかった数字です。

04実装レベルの3段階

最小構成:録音を手で文字起こしし、生成AIに貼って整理させる / 整理
半自動化:録音の保存をトリガーに、文字起こしから整理・Teams投稿までを自動化する / 上記+文字起こし・通知
本格構成:上記+CRMのケース一覧との突き合わせ+未完了の追跡+録音の督促 / 引き継ぐ内容を決めること以外

半自動化で効果の大半が出ます。 15分が6分程度になります。本格構成で5分ですが、本格構成の価値は時間より「未完了が追えること」にあります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
12 名
月間件数
180 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
5 分
現在  180件 × 15分 ÷ 60 = 45 時間/月
導入後 180件 × 5分 ÷ 60 = 15 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
67%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価3,000円)
108万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 24時間または複数シフトで回すコンタクトセンター・受付部門で、交代のたびに口頭と手書きメモで引き継いでいる組織。1回の交代で引き継ぐ案件が5件以上あり、持ち越し案件の対応漏れが実際に起きていること。
向いていない
  1. シフトが1日1回の交代で、引き継ぎ件数が数件に収まる場合。すでにCRMのケース管理で申し送りが完結している場合。録音の取得について従業員の同意が得られない場合。

07最小構成で試す方法

  1. 1つのシフトで、1週間だけ録音してみる(スマートフォンの録音アプリでよい)
  2. 文字起こしサービスでテキストにする
  3. 当該シフトのケース一覧と一緒に生成AIへ貼り、整理させる
  4. 前の勤務者が、整理結果と自分の記憶を比べる

見るのは次の4点です。

見る点判断
案件ごとに分けられているか分けられていれば、この構成は使える
未完了の約束を拾えているかここが拾えなければ意味がない。最重要
聞き取れなかった箇所を unclear にしているか直していたら危険。プロンプトを強める
対応の評価を書いていないか書いていたら、プロンプトを強める

あわせて、次の2つの数字を出してください。

  1. 1回の申し送りで引き継いでいる案件数の実数
  2. 未完了として引き継いだ約束のうち、次のシフトで完了しなかった件数

6の数字が、この構成の価値を測る指標です。 時間短縮より、引き継ぎ漏れが減ることのほうが現場には効きます。 導入前に測っておかないと、後から比べられません。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
録音されない日が出る交代時刻に督促を出す。これがないと1か月で止まる。最重要
評価に使われると疑われる用途を明示する。人事評価・品質評価には使わないと決めて周知する
略語が誤変換される置換辞書を作る。運用しながら育てる
「明日」「来週」が日付にならない録音日時を一緒に渡す
同姓の顧客を取り違える推測させない。unmatched に入れる
聞き取れない箇所を直されるプロンプトで禁止する。unclear にそのまま入れさせる
周囲の電話の音が入る録音場所を決める。完全な静音は求めない
話者分離でエラーになるモノラルで録音する。ステレオ+話者分離の組み合わせは制約がある
前の勤務者が補記せずに退勤する交代の30分前に録音する運用にする
CRMのケース本文に自動で書き込む書き込まない。主観を含む内容を顧客記録に混ぜない
録音を無期限に保存する保存期間を定める。整理後のテキストだけ残す
申し送りが長くなりすぎる件数の多さが原因。録音の問題ではない

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 申し送りの音声、顧客のケース情報、オペレーターの氏名。顧客の音声そのものは扱いません。

  1. 従業員の録音への同意 … オペレーターの発言を録音します。目的・保存期間・閲覧範囲を明示し、同意を得てください。 就業規則または労使での取り決めが必要になる場合があります
  2. 評価への不使用を明示する … 人事評価・品質評価に使わないことを、文書で明示してください。 これがないと、率直な申し送りが録音されなくなります
  3. 顧客情報の入力 … 申し送りには顧客名・契約内容・クレーム内容が含まれます。個人情報保護委員会は、個人データを含むプロンプトの入力について、応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合に個人情報保護法違反となる可能性があると注意喚起しています。 学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選んでください
  4. 保存期間の設定 … 録音は一定期間で削除します。整理後のテキストとは別に期間を定めてください
  5. 閲覧範囲の限定 … 申し送りにはクレームの内容が含まれます。全社共有のフォルダに置かないでください
  6. CRMへの自動書き込みを避ける … 主観を含む内容を顧客の記録に混ぜると、開示請求の場面で扱いに困ります
  7. 要約による情報の欠落 … 要約は必ず何かを落とします。原文(文字起こし)を残し、いつでも遡れるようにしてください
  8. 評価・判断をさせない … 対応の良し悪し、優先順位、顧客への方針は、AIに出力させない設計にしてください
  9. 自動実行してよい範囲 … 文字起こし、整理、通知までです。引き継ぐ内容の決定と確認は、必ず人が行います

誤りが起きた場合のリスクは、引き継ぎ漏れによる顧客対応の失敗です。折り返しの約束が伝わらなければ、顧客は再度電話します。この構成は引き継ぎ漏れを減らすためのものですが、整理結果を無条件に信じると、かえって漏れが増えます。 前の勤務者による確認を必ず挟んでください。

10まず何から始めるか

1週目:現状の引き継ぎ漏れを数える

次の2つを、記録から数えてください。

  • 1回の申し送りで引き継いでいる案件数
  • 未完了として引き継いだ約束のうち、次のシフトで完了しなかった件数

2つ目が導入前の基準値になります。 ここを測らずに始めると、効果を「感覚」でしか語れません。

2週目:1つのシフトで録音してみる

スマートフォンの録音アプリで十分です。1週間分の録音を集めて、文字起こしの精度を確かめてください。 略語の誤変換を書き出せば、置換辞書の原型になります。

3週目:整理させて、前の勤務者と突き合わせる

ケース一覧と一緒に生成AIへ貼り、整理させます。未完了の約束を拾えているか、対応の評価を書いていないかを必ず確かめてください。

4週目:運用の取り決めを作る

技術より先に、次を決めてください。

  • 録音の目的(評価に使わないことを明示する
  • 録音の保存期間
  • 閲覧できる範囲
  • 録音しなかった場合の扱い

これを決めずに始めると、現場の協力が得られません。

2か月目:文字起こしから通知までを自動化する

録音の保存をトリガーに、文字起こし・整理・Teams投稿までをつなぎます。あわせて、録音が置かれなかったときの督促を必ず作ってください。

3か月目以降: CRMとの突き合わせと、未完了の追跡を追加します。15分が何分になるかを実測し、あわせて引き継ぎ漏れの件数の変化を追ってください。 時間より、こちらの数字のほうが現場の納得を得られます。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-18/最終更新:2026-09-18
確認した内容情報源確認日
Azure AI Speech の高速文字起こしAPIが、長さ5時間未満・サイズ500MB未満の音声ファイルを対象とすること。localesja-JP を指定できること。diarizationenabledmaxSpeakers を指定して話者分離を有効にできること。話者分離を有効にした場合、ステレオ音声で channels[0,1] に設定できないこと。エンドポイントが https://<リソース名>.cognitiveservices.azure.com/speechtotext/transcriptions:transcribe?api-version=2025-10-15 の形式であることMicrosoft Learn:高速文字起こし API を使用する2026-09-18
Power Automate の SharePoint コネクタに「ファイルが作成されたとき」のトリガーが用意されていることMicrosoft Learn:SharePoint コネクタのアクションとトリガー2026-09-18
Claude のプロジェクトに参照用の文書をアップロードして、そのプロジェクト内の会話で読ませられることClaude Help Center: What are projects?2026-09-18

従業員の発言を録音する仕組みです。 録音の目的・保存期間・閲覧範囲について、導入前に従業員へ明示し、同意を得てください。 就業規則や労使協定での取り決めが必要かどうかは、社内の労務担当および社会保険労務士に確認してください。人事評価・品質評価に使わないことを文書で明示することを強く勧めます。 申し送りには顧客の個人情報が含まれます。外部の生成AIサービスへの入力可否は、自社の情報管理規程と委託先の契約条件を確認してください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。引き継ぎ漏れの減少幅は、自社の実測値から算出してください。

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