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システム改修の要件ヒアリングの録音から、要件メモと次回の確認質問を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

情報システム部門が利用部門から受ける改修・帳票追加・権限変更の要件ヒアリングを、Teams 会議の文字起こしから決まった形の要件メモにします。困りごと、やりたいこと、対象、決まったこと、未決事項、次回の確認質問に分け、改修依頼の台帳へ登録します。

サマリー
利用ツール
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
対象業界
IT・SaaS/教育/自治体/製造/金融
対象部門
情報システム
対象業務
書類作成/記録・議事録作成
主な課題
属人化している/引き継ぎができていない/確認ミスが多い
AIで行う処理
抽出
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
SaaS追加(小)
人間の確認
条件付き
現在工数
30h/月
AI導入後
8h/月
想定削減
73%
年間削減
264h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 利用部門から相談のメールまたはチャットが届き、担当者が Teams 会議を設定する
  2. 会議でヒアリングを行う。担当者は話を聞きながら手元でメモを取る
  3. 会議の後、メモだけでは足りないところを録画や文字起こしで聞き返す
  4. 聞いた内容を、担当者それぞれのやり方で要件メモにまとめる
  5. 足りない点に気づいたものは、利用部門へメールで問い合わせる
  6. 要件メモの要点を改修依頼の台帳に転記する
  7. 設計や見積もりの段階で、別の担当者や開発会社が台帳とメモを読んで作業を進める
導入後(After)
  1. 人相談を受けたら、Copilot を「会議中および会議後」に設定した Teams 会議を設定する
  2. 人会議の冒頭で文字起こしを開始し、ヒアリングに集中する(手元のメモは最小限にする)
  3. 人会議が終わったら、会議チャットまたは[要約]タブから Copilot を開き、課で共通の指示文を貼り付けて送る
  4. 自動Copilot が文字起こしから要件を6つの欄に分けて抜き出し、発言者と時刻を添えた表にする
  5. 自動Copilot が聴取項目の一覧と照らし、話に出なかった項目と、次回の確認質問の案を表にする
  6. 人担当者が「決まったこと」の各行を、時刻をたよりに文字起こしで確かめる
  7. 人次回の確認質問から、本当に聞くものを選ぶ
  8. 人表を Excel で開き、改修依頼の台帳へ貼り付ける
  9. 人要件メモを利用部門の担当者へ送り、内容の確認を依頼する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 利用部門から相談のメールまたはチャットが届き、担当者が Teams 会議を設定する
  2. 会議でヒアリングを行う。担当者は話を聞きながら手元でメモを取る
  3. 会議の後、メモだけでは足りないところを録画や文字起こしで聞き返す
  4. 聞いた内容を、担当者それぞれのやり方で要件メモにまとめる
  5. 足りない点に気づいたものは、利用部門へメールで問い合わせる
  6. 要件メモの要点を改修依頼の台帳に転記する
  7. 設計や見積もりの段階で、別の担当者や開発会社が台帳とメモを読んで作業を進める

(a)記録の粒度が担当者ごとに違う。 4番目のまとめ方が人によって違います。ある担当者は「帳票に項目追加」とだけ書き、別の担当者は会議の発言を順番に書き写します。前者は短すぎ、後者は何が決まったのかが見つかりません。

(b)聞き漏れが後工程で見つかる。 「その帳票を使うのは何人か」「権限は課全体か特定の係か」「いつまでに必要か」。聞くべきことは毎回ほぼ同じなのに、聞けたかどうかを確かめる手順がありません。 漏れは設計や開発会社の見積もりの段階で見つかり、そこから利用部門に聞き直すので、1往復で1〜2週間が消えます。

(c)「決まった」の認識が食い違う。 担当者が「検討します」と言ったことを、利用部門は「やってもらえる」と受け取ります。記録に「決定」と「要望」の区別が無いと、どちらの理解が正しかったのかを後から確かめられません。

(d)担当が替わると経緯が分からない。 人事異動や担当替えがあると、台帳の数行とばらばらのメモしか残りません。なぜその仕様になったのかが分からず、同じことを利用部門に聞き直すことになります。

  1. 【人】 相談を受けたら、Copilot を「会議中および会議後」に設定した Teams 会議を設定する
  2. 【人】 会議の冒頭で文字起こしを開始し、ヒアリングに集中する(手元のメモは最小限にする)
  3. 【人】 会議が終わったら、会議チャットまたは[要約]タブから Copilot を開き、課で共通の指示文を貼り付けて送る
  4. 【自動】 Copilot が文字起こしから要件を6つの欄に分けて抜き出し、発言者と時刻を添えた表にする
  5. 【自動】 Copilot が聴取項目の一覧と照らし、話に出なかった項目と、次回の確認質問の案を表にする
  6. 【人】 担当者が「決まったこと」の各行を、時刻をたよりに文字起こしで確かめる
  7. 【人】 次回の確認質問から、本当に聞くものを選ぶ
  8. 【人】 表を Excel で開き、改修依頼の台帳へ貼り付ける
  9. 【人】 要件メモを利用部門の担当者へ送り、内容の確認を依頼する

6番目が、この設計の分かれ目です。 Copilot の抜き出しは、そのまま台帳に載せません。「決まったこと」だけは、1行ずつ根拠の発言を確かめます。 ここを省くと、第3章の(c)の食い違いを、今度はAIが作ることになります。

9番目も省かないでください。 記録が決まった形になったことで、相手が数分で読めるようになり、確認の依頼が現実的な手間に収まります。

02今回想定するシステム構成

構成図
利用部門からの相談(メール・チャット)
   ▼
Teams 会議(Copilot:会議中および会議後)
   │  冒頭で文字起こしを開始
   │  文字起こし:発言者とタイムスタンプ付き。録画と一緒に OneDrive/SharePoint に保存
   ▼【会議の後】会議チャットまたは[要約]タブ
Microsoft 365 Copilot(Teams 会議の Copilot)
   │  課で共通の指示文を貼り付け
   │  ① 要件メモの表(6つの欄、発言者、時刻)
   │  ② 聴取項目の点検表(話に出たか、次回の確認質問)
   ▼
【人】「決まったこと」を文字起こしで確かめる/確認質問を選ぶ
   ▼ 表を「Excel で開く」
改修依頼の台帳(SharePoint 上の Excel)
   ▼
利用部門へ要件メモを送り、確認を依頼
役割想定する製品代替候補
処理Microsoft 365 Copilot(Teams 会議の Copilot で要件の抜き出しと点検)ChatGPT Enterprise、Gemini、Claude
文字起こしTeams の文字起こしZoom の文字起こし、議事録作成の専用サービス
台帳Excel(SharePoint 上の改修依頼台帳)SharePoint リスト、Backlog、Jira

新しく足すのは、Copilot のライセンスだけです。 Teams、Excel、SharePoint はそのまま使い、台帳の列の取り決めを第7章の形にそろえるのが準備作業です。

土台になるのは、Teams の文字起こしです。 会議中に発言された内容をリアルタイムで書面に記録し、参加者は会議の後に、タイムスタンプと話者の帰属とともにトランスクリプトを見られます。 トランスクリプトは会議の録画と一緒に OneDrive と SharePoint に保存され、対応言語には日本語(日本)が含まれます。この構成で「決まったこと」を確かめられるのは、発言者と時刻が残るからです。

文字起こしは、開催者ごと・ユーザーごとのポリシー設定です。 会議に文字起こしを含めるには開催者の設定がオンである必要があり、記録や文字起こしを開始するユーザーの設定もオンである必要があります。 また、録画が有効でも文字起こしがオフだと、録画の横にトランスクリプトのファイルは保存されません。 録画だけでは、この構成は動きません。

会議の後に Copilot を使うには、会議オプションの Copilot を「会議中および会議後」にしておきます。 管理者のポリシーには「オンで、トランスクリプトの保存が必須」という値があり、これが既定値で、開催者の会議オプションは「会議中および会議後」になり、開催者は変更できません。 「会議中のみ」は会議後に保存されない一時的な音声データに頼るため、会議の後の抜き出しには使えません。

Copilot は、会議チャットと[要約]タブから開けます。 会議が終わった後に発言内容について質問するには、トランスクリプトが利用可能である必要があります。 回答が表の形になっていれば「Excel で開く」を、1,300文字を超える場合は「Word で開く」を選べます。台帳への登録に使うのは、この「Excel で開く」です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

ヒアリングの Teams 会議が終わったことを起点に、担当者が Copilot を開きます。 自動で動く仕組みは作りません。会議の後、その日のうちに担当者が指示文を貼り付けて送るのが、この構成のトリガーです。

理由は2つです。担当者が覚えているうちなら、抜き出しを確かめるために文字起こしを開く回数が減ります。 そして、次回の確認質問を早く送れます。 1週間後に問い合わせても、相手も会議の中身を忘れています。

もう1つの前提は、会議を設定する時点で決まります。 Copilot の会議オプションが「会議中および会議後」になっていなければ、会議の後には使えません。管理者のポリシーが既定値のままなら、この設定は開催者が変えられない形で入ります。 ポリシーを変えている組織では、情報政策課の5名に割り当てるポリシーを確かめてください。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
会議の文字起こし発言、発言者、タイムスタンプTeams の文字起こし(Copilot が会議の中で参照する)
会議チャット会議中に貼られた画面のURLや帳票名、補足Teams の会議チャット
聴取項目の一覧課で決めた10項目(下の表)指示文に書き込んでおく
相談の件名台帳の受付番号と、利用部門・担当者名担当者が指示文の冒頭に書く

質を決めるのは、3つ目の聴取項目の一覧です。 これが無いと、Copilot は「話に出たこと」を整理するだけで、「話に出なかったこと」を指摘できません。 聞き漏れを減らすという目的は、この一覧を持って初めて果たせます。

番号聴取項目聞けていないと何が起きるか
1対象の画面・帳票・データ何を直すのかが決まらない
2使う人(課・係・人数)権限の範囲と影響が読めない
3発生の頻度と件数手作業のままでよいかが判断できない
4今のやり方(代わりの手段)改修しない場合の影響が分からない
5困っている理由と、起きている問題別の解決策を検討できない
6期限と、その理由法令改正か内部の都合かで扱いが変わる
7権限・閲覧できる範囲個人情報を見せすぎる改修になる
8他の課・他のシステムへの影響別の課の帳票が崩れる
9出力の形式と項目の並び作り直しになる
10承認する人作った後で上司に覆される

画面名は、聞き取りでいちばん誤りやすい部分です。 会議チャットに書いてもらえば、Copilot はそちらも参照します。

Step3

データの取得方法を決める

データの取得に、プログラムは使いません。 文字起こしは、Copilot が会議の中で参照します。会議チャットと[要約]タブのどちらから Copilot を開いても、トランスクリプトが利用可能である限り、Copilot はチャットとトランスクリプトの両方を情報源に使えます。

取るものどこから何に使うか
文字起こし会議のトランスクリプト6つの欄の抜き出しと、発言者・時刻の記録
会議チャット会議チャット画面名・帳票名の正しい表記
発言の前後トランスクリプトの画面担当者が「決まったこと」を確かめる

文字起こしを書き出して別の場所に貼り付けることはしません。 手元にファイルが残り、保存の管理が二重になるからです。

注意が要るのは、定期的な会議で同じヒアリングを続ける場合です。定期的な会議での Copilot との以前の会話履歴は、シリーズの後の会議で文字起こしされた場合、使用できなくなるとされています。2回目のヒアリングでは、前回の要件メモを台帳から開き、前回の未決事項を指示文に貼り付けます。 前回の会話を Copilot が覚えている前提で組まないでください。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 件名を先に書く … 指示文の冒頭に、台帳の受付番号、利用部門、担当者名を書きます。台帳の行と会議を結びつける鍵になります
  2. 冒頭で名乗ってもらう … 会議の最初に、参加者に所属と名前を一言ずつ話してもらいます。会議室から複数人が1台の端末で参加する場合、発言者の表示だけでは誰の発言か分からないためです
  3. 画面名はチャットに書いてもらう … 対象の画面・帳票の名前は、口頭だけでなく会議チャットにも書いてもらいます
  4. 前回の未決事項を用意する … 2回目以降のヒアリングでは、前回の未決事項と確認質問を台帳から写しておきます
  5. 雑談の範囲を区切る … 同じ会議で別の相談も話した場合は、どこからどこまでがこの相談かを、指示文で時刻を示して伝えます

2番目を軽く見ないでください。 係員の「それでいいです」と課長の「それで進めてください」は、同じ同意ではありません。 名乗りが残っていれば区別できます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、文字起こしに書かれている発言を6つの欄に振り分けることと、聴取項目のうち話に出なかったものを挙げることだけです。

欄入れるもの入れる条件
現状の困りごと今起きている問題、手間、ミス利用部門の発言にあるもの
やりたいこと改修・追加・変更の要望「〜したい」「〜できると助かる」
対象画面・帳票・データ・権限の名前話された呼び名のまま
決まったこと両者が同意した事項同意の発言が残っているものだけ
未決事項検討中、持ち帰り、意見が分かれたもの「検討します」「確認します」を含む
次回の確認質問聴取項目のうち話に出なかったものへの質問点検表から作る

最も気をつけるのは「決まったこと」の条件です。 担当者が「対応できると思います」と言っただけでは決定ではなく、相手の「それでお願いします」と担当者の「そのように進めます」という往復があって初めて置きます。 未決事項に入りすぎた行を人が決定に上げるほうが、その逆より安全です。

「対象」を呼び名のまま書かせるのも意図してのことです。 「住民の一覧のやつ」を正式な画面名へ直させると、それらしい別の画面の名前に置き換わることがあります。 対応は担当者が登録時に付けます。

させないこと理由
改修するかどうかの判断予算・体制・他の相談との兼ね合いで決まる
着手の順番・優先度課の方針で決める。本記事の範囲外
工数・費用の見積もり文字起こしからは根拠が取れない
画面名・帳票名の言い換え別の画面に置き換わる
話に出ていない仕様の補完「一般的にはこうする」で埋めると、聞き漏れが消える
発言の要約による言い換え決定の条件が変わる

5行目がいちばん起きやすい失敗です。 「帳票に項目を足したい」とだけ話された相談で、出力形式を聞いていないのに「PDFで出力する」と書き足す、というものです。書き足した瞬間、それは聞き漏れではなくなり、次回の確認質問からも消えます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは市の情報政策課で、利用部門から受けたシステム改修の要件ヒアリングを
記録する立場です。この会議の文字起こしと会議チャットだけを見て、
次の2つの表を作ってください。推測で埋めないでください。

【この相談】受付番号:{受付番号}/利用部門:{課・係}/担当:{担当者名}
【対象とする範囲】{開始時刻}〜{終了時刻}(指定が無ければ会議全体)
【前回の未決事項】{前回の未決事項。初回は「なし」}

■ 表1:要件メモ
列は「欄」「番号」「内容」「発言者」「時刻」「根拠の発言」の6つです。
欄は次の6つだけを使ってください。
  現状の困りごと/やりたいこと/対象/決まったこと/未決事項/次回の確認質問

【欄の振り分けのきまり】
- 「決まったこと」には、利用部門と情報政策課の両方が同意した発言が
  文字起こしに残っているものだけを入れてください。
  片方の発言だけのもの、「検討します」「たぶんできます」「確認します」を
  含むものは「未決事項」に入れてください。迷ったら未決事項です。
- 「対象」には、画面・帳票・データ・権限の名前を、話された呼び名のまま
  書いてください。正式な名前に直したり、似た名前に置き換えたりしないでください。
  会議チャットに名前が書かれていれば、そちらの表記を使ってください。
- 「根拠の発言」には、その行の根拠にした発言を文字起こしから
  そのまま写してください。言い換えないでください。
- 話に出ていない内容を書き足さないでください。一般的な進め方や、
  よくある仕様で埋めないでください。
- 改修するかどうか、優先度、工数、費用は書かないでください。
- 前回の未決事項のうち、この会議で結論が出たものは「決まったこと」に、
  出なかったものは「未決事項」にもう一度入れてください。

■ 表2:聴取項目の点検
列は「番号」「聴取項目」「状態」「時刻」「次回の確認質問」の5つです。
次の10項目それぞれについて、状態を「聴取済み」「一部」「未聴取」から
1つ選んでください。
  1 対象の画面・帳票・データ  2 使う人(課・係・人数)  3 発生の頻度と件数
  4 今のやり方(代わりの手段) 5 困っている理由と問題    6 期限とその理由
  7 権限・閲覧できる範囲      8 他の課・他システムへの影響
  9 出力の形式と項目の並び    10 承認する人
- 「聴取済み」は、その項目について具体的な答えの発言があるものです。
- 「一部」は、話題には出たが、数・範囲・期限などが決まっていないものです。
- 「未聴取」は、話に出ていないものです。
- 「一部」と「未聴取」には、利用部門に送る確認質問を1つずつ書いてください。
  質問は、はい・いいえでは答えられない形にしてください。
- 「聴取済み」の行の次回の確認質問は空欄にしてください。

2つの表のほかには、何も書かないでください。

「迷ったら未決事項です」を明記しないと、決定が増えます。 会議の終わりには「では、そういう方向で」といった曖昧なまとめが入ることが多く、何も言わなければ、そこを根拠に決定として拾います。禁じたいのは、雰囲気で決まったことにする判断そのものです。

「根拠の発言」を写させているのは、担当者の確認を速くするためです。 時刻だけでは、トランスクリプトを開いて探す手間が残ります。根拠の文が表の中にあれば、多くの行は表を読むだけで確かめられます。 写しと元の発言が違っていれば、その行は疑ってかかります。

質問を「はい・いいえで答えられない形」にさせるのは、 「権限は課全体でよいですか」では「はい」で終わるからです。「どの係の何人が見る必要がありますか」なら、数と範囲が同時に返ってきます。

Step7

出力形式を固定する

Copilot には、2つの表で返させます。 表の形になっていれば「Excel で開く」が使えるからです。台帳に貼るときの列の定義は、次のとおりです。

{
  "receipt_no": "受付番号",
  "department": "利用部門(課・係)",
  "owner": "情報政策課の担当者",
  "meeting_date": "ヒアリングの日付",
  "memo": [
    { "section": "現状の困りごと | やりたいこと | 対象 | 決まったこと | 未決事項 | 次回の確認質問",
      "no": 1, "content": "", "speaker": "", "time": "", "evidence": "" }
  ],
  "coverage": [
    { "item_no": 1, "item": "対象の画面・帳票・データ",
      "status": "聴取済み | 一部 | 未聴取", "time": "", "question": "" }
  ],
  "verified_by": "決まったことを確かめた担当者",
  "sent_to_requester": "要件メモを利用部門へ送った日",
  "requester_confirmed": "利用部門が確認した日"
}

memo は表1、coverage は表2に当たります。台帳の Excel では、memo を「要件メモ」シートに1行1項目で、coverage を「聴取点検」シートに1行1項目で貼り、どちらにも受付番号の列を付けます。 台帳の本体シートには、受付番号ごとに1行で、決まったことと未決事項の件数、未聴取の件数だけを数式で出します。

1つ目の理由は、欄が固定され、担当者ごとの粒度の違いがなくなることです。 後から読む人は、どの相談でも「決まったこと」の欄だけを見れば足ります。

2つ目は、evidence と time で、決定の根拠を後から確かめられることです。 担当が替わっても、なぜその仕様になったのかを、発言まで遡って読めます。第3章の(d)への答えがここにあります。

3つ目は、coverage で聞き漏れを数えられることです。 未聴取の多い相談は、設計の前にもう一度聞きます。最後の3列は人が埋め、設計に回すのは requester_confirmed まで埋まった相談だけにします。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Teams 会議会議オプションCopilot を「会議中および会議後」にし、文字起こしを開始する
Teams の文字起こしCopilot が会議の中で参照発言・発言者・時刻を抜き出しに使う
Microsoft 365 Copilot会議チャットまたは[要約]タブ指示文を送り、2つの表を受け取る
Excel(改修依頼台帳)「Excel で開く」から貼り付け表1と表2を台帳のシートへ
利用部門メールまたはチャット要件メモを送り、確認を依頼する

この構成では、台帳への書き込みを自動化しません。 貼り付けるのは、担当者が「決まったこと」を確かめた後です。確かめる前の表が台帳に入る経路をあらかじめ作らないことで、未確認の決定が設計に流れるのを防ぎます。

指示文の最後に「2つの表のほかには、何も書かないでください」と書くのは、前置きの文章が付くと表の形が崩れ、貼り付けの手間が増えるからです。 要件メモを文書で送りたい場合は「Word で開く」を使います。

Step9

人が確認する

人が確かめるのは、「決まったこと」の全行と、次回の確認質問の取捨です。 他の欄は流し読みで足ります。

  1. 「決まったこと」を1行ずつ確かめる … 根拠の発言を読み、両者の同意があるかを見ます。写しが元の発言と違うもの、片方の発言しか無いものは、未決事項へ移します
  2. 「対象」の呼び名に、正式な画面名・帳票名を添える … 台帳の別の列に、担当者が正式な名前を書きます。呼び名の列は消さずに残します
  3. 次回の確認質問を選ぶ … 案のうち、本当に聞くものを残します。会議の後に自分で分かったもの、他の課に聞くべきものは外します
  4. 利用部門へ送る … 要件メモと確認質問を送り、決まったことに相違がないかを確かめてもらいます
  5. 直した行を記録する … Copilot の出力から、どの行をどの欄へ移したかを台帳の備考に残します

1番目を省かないでください。 決定の誤りは、利用部門との約束の誤りです。確かめる前の決定を相手に送ると、AIが作った約束を情報政策課が引き受けることになります。

目標は、1件あたり12分です。 抜き出しの確認に8分、質問の取捨に2分、送信と貼り付けに2分という内訳です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
文字起こしを開始し忘れた会議の後の Copilot は使えない。手元のメモから従来どおり作り、会議の設定を見直す
録画はしたが文字起こしがオフだった録画の横にトランスクリプトのファイルは保存されない。録画だけでは抜き出せない
開催者が Copilot をオフにしていた録画と文字起こしもオフになる。会議テンプレートとポリシーで防ぐ
端から端まで暗号化された会議だったTeams 会議の Copilot は使えない。機密度の高い相談は、この構成の対象から外す
「Excel で開く」が出ない秘密度ラベルや、チャット・トランスクリプトのコピーと転送の無効化でエクスポートできない。表を目で見て台帳に入力する
定期的な会議の2回目以降以前の会話履歴は使えない前提。前回の未決事項を指示文に貼る
トランスクリプトが削除された会議の後の Copilot は使えない。要件メモは削除の前に台帳へ移しておく
対面だけのヒアリング対象外。会議室から Teams 会議に入って文字起こしを開始する運用に寄せる
1回の会議に複数の相談指示文で時刻の範囲を区切り、相談ごとに送り直す
抜き出しが空、または表にならない文字起こしが短すぎるか、話が相談に入っていない。指示文を送り直し、だめなら手で作る

上から4行目までは会議の設定の問題です。 会議テンプレートに Copilot の設定を含められるので、ヒアリング用のテンプレートで大半を防げます。

5行目にも注意が要ります。 開催者が参加者にコピーや転送を制限できるかは管理者が選べ、その設定は既定でオンです。 ヒアリングでは制限をかけない、と課で決めておきます。

Step11

記録を残す

  • 会議の録画とトランスクリプト(OneDrive/SharePoint に録画と一緒に保存される)
  • Copilot が返した2つの表の、貼り付ける前の原文(台帳の別シートに日付つきで残す)
  • 担当者が直した記録 … どの行を、どの欄からどの欄へ移したか
  • 正式な画面名・帳票名と、話された呼び名の対応
  • 利用部門へ送った日と、確認が返ってきた日、指摘された相違
  • 相談ごとの未聴取の件数と、そのうち次回のヒアリングで埋まった件数

「貼り付ける前の原文」を残すのは、抜き出しの誤りの傾向を見て指示文を直すためです。

トランスクリプトの保存期間は、組織のレコーディングのポリシーで決まります。 文字起こしが自動的に期限切れになるかどうかは、レコーディングのポリシーで管理するとされています。期限が来ると、決定の根拠の発言も消えます。 台帳の evidence 列に根拠の文を写しておくのは、そのための備えでもあります。

04実装レベルの3段階

最小構成:過去の会議で Copilot に指示文を送り、当時のメモと比べる / 1件ごとの抜き出しの試行
半自動化:上記+ヒアリング用の会議テンプレート、共通の指示文、台帳のシートの取り決め / 抜き出し、聞き漏れの点検、台帳への貼り付けの型
本格構成:上記+台帳への登録と利用部門への確認依頼を、ワークフローでつなぐ / 登録と確認依頼の送付

本記事の想定は半自動化です。 抜き出しと点検は Copilot が行い、台帳への貼り付けと利用部門への送付は担当者が行います。1件45分が12分になるのは、この段階です。 差が大きいのは、録画の聞き返しと、6つの欄への書き起こしがなくなるからです。 本格構成は、月の件数が大きく増えてから考えれば足ります。 台帳への登録を Power Automate などのワークフローでつなぐ構成が考えられますが、会議の Copilot の回答を自動で受け取る部分は、利用環境に応じた個別の作り込みが必要です。一方で、決定を確かめる前に台帳へ入る経路ができると、第7章で防いだ事故が戻ってきます。自動化するのは、確かめた後の登録と送付に限ってください。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を2〜3か月回すと、未聴取になりやすい項目が見え、会議の進め方に組み込めます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
45 分
1件あたり導入後時間
12 分
現在  40件 × 45分 ÷ 60 = 30 時間/月
導入後 40件 × 12分 ÷ 60 = 8 時間/月
月間削減時間
22h
削減率
73%
年間削減時間
264h
年間金額換算(時間単価4,000円)
106万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 情報システム部門が数名で、利用部門からのシステム改修・帳票追加・権限変更の相談を月に数十件受けている自治体の情報政策課、学校法人の情報センター、金融機関や製造業の情報システム部門。ヒアリングを Teams 会議で行うことが多く、記録の書き方が担当者ごとに違う場合。聞き漏れが設計やテストの段階で見つかり、利用部門へ聞き直す手戻りが続いている場合。Microsoft 365 を使っており、情報システム部門の担当者に Copilot のライセンスを付けられる場合。
向いていない
  1. ヒアリングの大半が窓口での立ち話や電話で、Teams 会議として開く運用に変えられない場合。改修の相談が月に数件で、担当者1名が経緯をすべて覚えていられる場合。要件定義を外部の開発会社がすべて担い、情報システム部門が記録を持たない場合。なお、改修するかどうか、どの順番で着手するかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月のヒアリングのうち、文字起こしが残っている会議を5件選ぶ(うち2件は、後で聞き漏れが見つかったものを入れる)
  2. その5件について、担当者が当時作った要件メモと台帳の行を用意する
  3. 会議のチャットまたは[要約]タブから Copilot を開き、第7章の指示文を貼り付けて送る
  4. 表1の「決まったこと」を、当時のメモと突き合わせる
  5. 表2の「未聴取」と「一部」が、後で見つかった聞き漏れを言い当てているかを見る

5件は必ずやってください。 仕組みを課に広げる前に、「聴取項目の一覧で、聞き漏れを事前に言い当てられるのか」を確かめます。

出てきた内容判断
後で見つかった聞き漏れが「未聴取」に出た聴取項目の一覧は有効。 課の標準の手順にする
未決のものが「決まったこと」に入った指示文の条件で直る。構成は有効
聞き漏れが「聴取済み」と出た聴取項目の一覧が粗い。 項目を分けて具体的にする

3行目は珍しくありません。 「使う人」を聞いても係ごとの人数までは聞いていなかった漏れは「聴取済み」に見えます。一覧をどこまで細かくすべきかが分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
「検討します」が決定として拾われる両者の同意の発言があるものだけを決定に。 迷ったら未決事項と指示文に書く
会議の後に Copilot が使えないCopilot を「会議中および会議後」に。文字起こしの開始を忘れない
録画はあるのに抜き出せない文字起こしがオフだとトランスクリプトは保存されない。両方をオンに
画面名が別の画面に置き換わる呼び名のまま書かせる。 正式な名前は担当者が別の列に添える
話に出ていない仕様が書き足される補完を禁じる。書き足すと聞き漏れが点検表から消える
誰の同意か分からない冒頭で所属と名前を名乗ってもらう
表が崩れて「Excel で開く」が出ない表のほかに何も書かせない。コピーの制限がかかっていないかも確かめる
2回目のヒアリングで前回の続きにならない以前の会話履歴は使えない前提。前回の未決事項を貼る
聴取項目の一覧が粗く、漏れが「聴取済み」になる最小構成の結果を見て、項目を具体的に分ける
利用部門への確認を省く決定は相手の確認までが1セット。 台帳の列で管理する

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも会議の後では取り返せないので、指示文と会議テンプレートで始める前に塞ぎます。

下の2行も早く効いてきます。 一覧が粗いと点検表は「全部聞けています」と返し続け、確認を省くと一方的な記録が積み上がります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 利用部門の業務の内容、システムの画面名と構成、権限変更の相談に含まれる職員の氏名と所属、場合によっては住民・学生・顧客の情報が画面に表示される業務の説明です。

  1. ヒアリングで個人の情報を読み上げない … 画面の説明のために、実在の住民や学生のデータを画面共有で見せたり読み上げたりしないでください。文字起こしに残り、録画と一緒に保存されます。 説明には架空のデータか、項目名だけを使います
  2. Copilot はユーザーのアクセス許可の範囲で動く … Copilot は、ユーザーのアクセス許可によってスコープが決まるアクセスで動くとされています。逆に、台帳を置く SharePoint の権限が広すぎると、要件メモが庁内の広い範囲から見えます
  3. 組織のアカウントでサインインして使う … Microsoft Entra アカウントでサインインすると、Copilot はエンタープライズデータ保護の対象になります。個人のアカウントで同じ操作をさせないでください
  4. 機密度の高い相談は対象から外す … セキュリティの設定や不正アクセスへの対応に関わる相談は、端から端まで暗号化された会議で行い(Copilot は使えません)、記録は手で作ります
  5. この構成は改修の判断を代替しない … 改修するか、どの順番で着手するか、費用をかけるかは、情報システム部門と利用部門が決めることです
  6. トランスクリプトの保存期間を決めておく … 期限切れになるかどうかはレコーディングのポリシーで管理されます。決定の根拠をどこまで残すかは、文書の保存の規程とあわせて決めてください

誤りが起きた場合のリスクは、決まっていないことを決まったこととして記録することと、聞けていないことを聞けたこととして記録することの2つです。 前者は利用部門との約束の食い違いになり、後者は設計の手戻りになります。前者は人の確認で、後者は聴取項目の一覧で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:聴取項目の一覧を決める

過去に聞き直しが発生した相談を持ち寄り、何を聞き漏らしていたかを並べます。第7章の10項目を下書きに、課の相談に合わせて足し引きします。

2週目:過去の5件で試す

文字起こしが残っている過去の会議から5件を選び、会議の Copilot に指示文を送ります。後で見つかった聞き漏れが「未聴取」に出るか、未決のものが「決まったこと」に入っていないかを最優先で見ます。

3週目:会議テンプレートと台帳のシートを整える

ヒアリング用の会議テンプレートを作り、Copilot の設定を含めます。あわせて、台帳に「要件メモ」と「聴取点検」のシートを足し、受付番号の列でつなぎます。

4週目:新しいヒアリングで回し始める

新しく受けるヒアリングから、この手順で要件メモを作ります。最初の1か月は、Copilot の原文と担当者が直した記録を必ず残します。

2か月目: 直した記録を見て、指示文の条件を直します。利用部門への確認依頼を手順に組み込みます。3か月目以降: 未聴取になりやすい項目を会議の進め方に組み込み、1件45分が何分になったかを実測します。未聴取の件数が安定して少なくなり、設計の段階での聞き直しが減った時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-25/最終更新:2026-09-25
確認した内容情報源確認日
文字起こしが会議中の発言をリアルタイムに記録し、会議後にタイムスタンプと話者の帰属とともに見られること。トランスクリプトが録画と一緒に OneDrive と SharePoint に保存されること。文字起こしが開催者ごと・ユーザーごとのポリシー設定で、開催者と開始するユーザーの両方の設定がオンである必要があること。録画が有効でも文字起こしがオフだとトランスクリプトのファイルが保存されないこと。対応言語に日本語(日本)が含まれること。開催者がコピーや転送を制限できるかを管理者が選べ、既定でオンであること。期限切れをレコーディングのポリシーで管理することMicrosoft Learn:Teams 会議の文字起こしとキャプションを管理する2026-09-25
会議の Copilot に「会議中および会議後」と「会議中のみ」があり、後者は会議後に保存されない一時的な音声データに頼ること。開催者が Copilot をオフにすると録画と文字起こしもオフになること。ポリシー値「オンで、トランスクリプトの保存が必須」が既定値で、開催者が変更できないこと。会議テンプレートに Copilot を含められること。端から端まで暗号化された会議では使えないこと。アドオンの Copilot ライセンスが前提であることMicrosoft Learn:Teams の会議やイベントで Microsoft Copilot を管理する2026-09-25
Copilot がユーザーのアクセス許可によってスコープが決まるアクセスで動くこと。Microsoft Entra アカウントでサインインするとエンタープライズデータ保護の対象になること。ライセンスによって組織データの使い方が異なることMicrosoft Learn:Microsoft Copilot とは?2026-09-25
会議の後に会議チャットと[要約]タブから Copilot を使えること。会議後の質問にはトランスクリプトが必要なこと。回答が表の形なら「Excel で開く」、1,300文字を超えれば「Word で開く」を選べること。秘密度ラベルやコピー・転送の無効化でエクスポートできないこと。定期的な会議で以前の会話履歴が後の会議で使えなくなることMicrosoft サポート:Microsoft Teams 会議で Copilot の使用を開始する2026-09-25

ライセンスや会議ポリシーは、組織の契約と管理者の設定で変わります。 本記事は上記のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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