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取引先との契約交渉の Teams 会議の記録から、条項ごとの合意・持ち帰り・相手方の主張を交渉記録にまとめ、修正案に反映する点を法務担当に示す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

取引先との契約交渉の Teams 会議の記録から、条項ごとの合意・持ち帰り・相手方の主張を交渉記録にまとめます。そのうえで、次の修正案に反映する点を一覧にし、法務の担当者に示します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
対象業界
IT・SaaS/商社/広告/製造
対象部門
法務
対象業務
要約/記録・議事録作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
要約
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
SaaS追加(小)
人間の確認
必須
現在工数
40h/月
AI導入後
14h/月
想定削減
65%
年間削減
312h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 営業の担当が会議を設定し、法務の担当と相手方を招く
  2. 法務の担当は、会議中にメモを取りながら交渉に加わる
  3. 会議の後、メモと録画を見返し、条項ごとに相手方の主張と自社の回答を書き出す
  4. 決まったことと持ち帰りを分け、持ち帰りの持ち主(自社か相手方か)と期限を書く
  5. 営業の担当に「この理解で合っているか」をチャットで確かめる
  6. 交渉記録を審査の依頼のフォルダに保存する
  7. 交渉記録を見ながら、Word の契約書の案に修正を入れ、次の修正案を作る
導入後(After)
  1. 人法務の担当が会議を主催し、前日に「今回扱う条項の一覧」を会議のチャットに貼る
  2. 人会議の冒頭で、文字起こしを交渉記録に使うことを相手方に伝え、了解を得てから文字起こしを始める
  3. 人会議の最後に、法務の担当が「今日の確認事項」を条項の番号ごとに読み上げ、相手方に確かめる
  4. 人会議の後1時間以内に、法務の担当が「交渉記録エージェント」で、その会議を指定して作らせる
  5. 自動エージェントが、条項ごとに相手方の主張(引用と理由)と自社の回答を拾う
  6. 自動エージェントが、条項ごとに「合意」「持ち帰り(自社)」「持ち帰り(相手方)」「主張のみ」を付ける
  7. 自動エージェントが、自社の出席者の発言のうち、譲歩に当たるものを拾う
  8. 自動エージェントが、次の修正案に反映する点の一覧を出す
  9. 人法務の担当が、合意と譲歩を文字起こしで確かめる
  10. 人営業の担当に、譲歩の欄を確かめてもらう
  11. 人法務の担当が、交渉記録を保存し、修正案を Word で作る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 営業の担当が会議を設定し、法務の担当と相手方を招く
  2. 法務の担当は、会議中にメモを取りながら交渉に加わる
  3. 会議の後、メモと録画を見返し、条項ごとに相手方の主張と自社の回答を書き出す
  4. 決まったことと持ち帰りを分け、持ち帰りの持ち主(自社か相手方か)と期限を書く
  5. 営業の担当に「この理解で合っているか」をチャットで確かめる
  6. 交渉記録を審査の依頼のフォルダに保存する
  7. 交渉記録を見ながら、Word の契約書の案に修正を入れ、次の修正案を作る

(a)合意の線が人によって違う。 相手方の「その方向で社内を説得してみます」を、合意と書く担当者もいれば、持ち帰りと書く担当者もいます。合意と書かれた条項は修正案に反映され、相手方から「まだ決めていない」と戻ってきます。

(b)営業の譲歩が法務に届かない。 法務の担当が別の条項の話に集中しているあいだに、営業が「その条件で結構です」と言っていることがあります。メモに残らず、5番目の確認でも営業が言い忘れれば、修正案に反映されません。 相手方は合意済みと考えているので、次の会議でもめます。

(c)相手方の主張の理由が残らない。 「30日では短い」とだけ書き、なぜ短いのか(社内の承認の手続きに時間がかかるのか、移行先のシステムの都合か)が書かれていません。理由が分からないと、修正案で出す代わりの案が作れません。

(d)見返しに時間がかかる。 交渉の会議では、条項の話が行き来します。責任の上限の話の途中で、データの返却の話になり、また戻る。 条項ごとに整理し直すには、録画をほぼ全部見直すことになります。

  1. 【人】 法務の担当が会議を主催し、前日に「今回扱う条項の一覧」を会議のチャットに貼る
  2. 【人】 会議の冒頭で、文字起こしを交渉記録に使うことを相手方に伝え、了解を得てから文字起こしを始める
  3. 【人】 会議の最後に、法務の担当が「今日の確認事項」を条項の番号ごとに読み上げ、相手方に確かめる
  4. 【人】 会議の後1時間以内に、法務の担当が「交渉記録エージェント」で、その会議を指定して作らせる
  5. 【自動】 エージェントが、条項ごとに相手方の主張(引用と理由)と自社の回答を拾う
  6. 【自動】 エージェントが、条項ごとに「合意」「持ち帰り(自社)」「持ち帰り(相手方)」「主張のみ」を付ける
  7. 【自動】 エージェントが、自社の出席者の発言のうち、譲歩に当たるものを拾う
  8. 【自動】 エージェントが、次の修正案に反映する点の一覧を出す
  9. 【人】 法務の担当が、合意と譲歩を文字起こしで確かめる
  10. 【人】 営業の担当に、譲歩の欄を確かめてもらう
  11. 【人】 法務の担当が、交渉記録を保存し、修正案を Word で作る

3番目の読み上げが、この設計の分かれ目です。 合意は、会議の最後に双方が言葉で確かめたものに限ります。読み上げで相手方が「はい」と言った条項だけが合意になる、という線を、AIにも人にも同じように引きます。

8番目は「反映する点」の一覧で、修正案そのものではありません。 条文を書き直すのは法務の担当者です。AIに条文を書かせると、まだ持ち帰りの条項まで書き換えた案が出ます。

02今回想定するシステム構成

構成図
会議の前日:今回扱う条項の一覧(条項の番号・見出し・自社の案の要点)を会議のチャットへ
   ▼
Teams 会議(自社の法務が主催。相手方の了解を得て文字起こしを開始)
   │  最後に、確認事項を条項の番号ごとに読み上げる
   ▼【トリガー】会議の終了と文字起こしの保存
Microsoft Copilot(Agent Builder で作る交渉記録エージェント)
   │  知識:その契約の交渉の会議(会議を指定)
   │        交渉中の契約書の案(SharePoint のフォルダ)
   │        交渉方針の手引と、交渉記録の様式(埋め込んだ文書)
   ├──▶ 条項ごとの記録(相手方の主張と理由/自社の回答/区分)
   ├──▶ 自社の発言の中の譲歩
   └──▶ 修正案に反映する点の一覧
   ▼【法務の担当が文字起こしと照らし、営業が譲歩を確かめる】
交渉記録(Word)を審査の依頼のフォルダへ/修正案は法務の担当が作る
役割想定する製品代替候補
処理Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot。Teams 会議の Copilot と、Agent Builder で作る交渉記録エージェント)ChatGPT Enterprise、Gemini、Claude
会議Microsoft Teams(文字起こし)Zoom の文字起こし
保管SharePoint(審査の依頼のフォルダ、交渉中の契約書の案)-

新しく足すのは、契約グループ5名の Copilot のライセンスと、交渉記録エージェントだけです。 相手方にも営業の担当にも、ライセンスは要りません。Teams 会議の Copilot は、会議の参加者のうち Copilot のライセンスを持つ人が、自分にだけ見えるプロンプトを送れるとされています。

最初に決めるのは、交渉の会議を自社の法務が主催することです。 公式のページでは、参加者の組織の外で主催された会議では Copilot が動かないとされています。相手方の会議に乗ると、この構成は使えません。

エージェントは Agent Builder で作ります。 知識として Teams の会議を5つまで指定でき、SharePoint のファイルを100まで指定できます。1件の契約の交渉は2回から4回なので、その契約の会議だけを指定し、前回までの交渉の流れも読ませます。 契約ごとに指定を入れ替えます。

Teams 会議の Copilot だけでも、記録の下書きは作れます。 会議の後に会議のチャットや「まとめ」のタブから Copilot を開いて質問できます。ただし、前回までの会議や契約書の案と並べるにはエージェントが要ります。 最小構成は会議の Copilot、半自動化はエージェント、と分けます(第8章・第9章)。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

会議が終わり、文字起こしが保存されたことを起点にします。 Teams 会議の Copilot は、会議が終わった後に質問するには文字起こしが必要とされています。相手方の了解が得られず文字起こしをしなかった会議は、この構成に乗りません。

文字起こしを前提にするため、法務の担当者の会議ポリシーで Copilot を「会議中と会議後」に固定します。 管理者の会議ポリシーで Copilot を「On with saved transcript required」にすると、主催者の会議オプションが「会議中と会議後」になり、主催者は変えられないとされ、これが既定の値です。

ただし、文字起こしを始めるのは相手方の了解を得てからです。 公式のページでは、Copilot を「会議中のみ」にした場合、会議の後に保存されない音声の処理で動くとされています。相手方が記録を嫌う場合は、この設定に切り替えて会議中だけ使い、記録は従来どおり担当者のメモで作ります。 その会議は、この構成の対象から外します。

エージェントを動かすのは、会議の後1時間以内の手作業です。 法務の担当者は、会議の記憶が新しいうちに出力を確かめます。翌日に回すと、出力の正しさを自分の記憶で確かめられなくなります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
文字起こし発言者と時刻の付いた会議の発言Teams 会議の記録
会議のチャット前日に貼った今回扱う条項の一覧、会議中に貼られた条文の案会議のチャット
前回までの会議同じ契約の過去の交渉の会議の文字起こしTeams 会議の記録
契約書の案いま相手方と交わしている最新の案SharePoint の交渉中の契約のフォルダ
交渉方針の手引条項ごとの自社の基本の案、譲れる範囲の考え方、譲歩に当たる言い回しの例エージェントの知識(文書)
交渉記録の様式条項ごとの記録の欄、譲歩の欄、反映する点の欄同上

質を決めるのは、2行目の条項の一覧です。 会議の中で条項の番号が言葉になれば、AIは発言を正しい条項に振り分けられます。一覧には番号・見出し・自社の案の要点の3つだけを書き、冒頭に件数を書きます。

【10/8 A社 利用契約 交渉 第2回 扱う条項(4件)】
第12条 損害賠償の上限   自社案:直近12か月の利用料の総額
第15条 再委託           自社案:事前の通知で足りる
第18条 監査             自社案:第三者の認証の報告書の提出で代える
第22条 データの返却     自社案:契約終了後30日以内

交渉方針の手引は、法務部長と作ります。 条項ごとに自社の基本の案を書き、「それで結構です」「御社の案で進めましょう」「その線で社内を通します」のような譲歩に当たる言い回しの例を並べます。例が無いと、AIは営業の相づちと譲歩を区別できません。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
文字起こしと会議のチャットエージェントの知識に、その契約の会議を指定する条項ごとの主張・回答・区分・譲歩を拾う
契約書の案エージェントの知識に、交渉中の契約のフォルダを指定する条項の番号と現在の文言を確かめる
手引と様式エージェントに埋め込んだ文書区分の付け方と、出力の形

会議は、Agent Builder の知識で「その契約の交渉の会議」を個別に指定します。 「自分の Teams のチャットと会議」をまとめて選ぶと、すべての会議の文字起こしと予定表を探すとされています。別の顧客との交渉が混ざると、A社の会議でB社の条件を引くことが起きます。必ず個別に指定します。

契約書の案は、契約ごとのフォルダの中で最新の版だけを置きます。 古い版が同じフォルダにあると、どの版の条文を前提にした記録かがぶれます。古い版は「履歴」のフォルダに移します。

「指定した知識だけを使う」設定を有効にします。 Agent Builder の「Only use specified sources」は、指定した知識を優先させる設定で、一般的な知識を完全には止めないとされています。指示の側でも「一般的な契約の慣行で補わない」と書いておきます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 会議を自社の法務が主催する … 営業や相手方から届いた招待は使わず、法務で設定し直します
  2. 扱う条項の一覧を前日にチャットへ貼る … 番号・見出し・自社の案の要点の3つだけにします
  3. 会議の冒頭で、記録に使うことを相手方に伝える … 了解が得られてから文字起こしを始めます
  4. 条項を番号で呼ぶ … 「では第12条、損害賠償の上限について」と、条項に入るたびに番号を言います
  5. 最後に確認事項を読み上げる … 条項の番号ごとに「第12条は直近12か月の利用料の総額で合意、第15条は御社の持ち帰りで、来週金曜までにご回答」と一文で言います

どれも、会議の進め方の決まりです。 システムの前処理ではなく、人が会議の中で行う前処理です。この構成では、ここを整えるほうが指示を工夫するより効きます。

5番目の読み上げは、交渉の作法としても効きます。 相手方にとっても、何が決まったかを会議の中で確かめられる場面です。「いえ、第12条はまだ社内の確認が要ります」と言われれば、その場で持ち帰りに直せます。 読み上げなかった会議では、合意の判断が後に残ります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、会議で言葉にされたことを条項ごとに拾い、決まった区分を付けることだけです。

拾うもの拾い方拾えないときの扱い
相手方の主張相手方の発言を言葉どおりに引用する「主張の発言なし」
主張の理由相手方が述べた理由を引用する理由が述べられていなければ「理由の発言なし」
自社の回答自社の出席者の回答の要点「回答の発言なし」
区分合意/持ち帰り(自社)/持ち帰り(相手方)/主張のみ手引に当てはまらなければ「判断できない」
自社の譲歩自社の出席者の発言のうち、手引の譲歩の言い回しに当たるもの言い回しが曖昧なら「譲歩の可能性」
持ち帰りの期限期限と持ち主期限が言われていなければ「要確認」
修正案に反映する点合意した条項と、自社の譲歩があった条項持ち帰りの条項は「反映しない(持ち帰り中)」
させないこと理由
主張を言い換えて要約する相手方の言葉の強さが変わる。引用は言葉どおり
条文の書き直し条文を作るのは法務の担当者
合意を推し量る読み上げで確かめていないものを合意にしない
相手方の主張の妥当性の評価受け入れるかは法務の責任者が決める
一般的な契約の慣行での補い会議で言われていないことを書かない

区分の行がいちばん大事です。 合意とするのは、会議の最後の読み上げで相手方が確認した条項だけと手引に書いておきます。相手方の「その方向で検討します」は持ち帰り(相手方)、自社の「社内で確認します」は持ち帰り(自社)です。

譲歩の行は、営業の発言のために置いています。 法務の担当は、自分が言ったことは覚えています。覚えていないのは、隣の営業が言ったことです。

Step6

指示内容を固定する

あなたは法務部の契約グループの担当者を手伝い、取引先との契約交渉の会議の
交渉記録と、次の修正案に反映する点の一覧を作る立場です。
指定した会議の文字起こしと会議のチャット、交渉中の契約書の案、
埋め込んだ交渉方針の手引と様式だけを見てください。
一般的な契約の慣行や、他の取引先の交渉の内容で補わないでください。

【拾うもの】
- 条項ごとに、条項の番号、相手方の主張(引用)、主張の理由(引用)、
  自社の回答の要点、区分、根拠の時刻。
- 自社の出席者の発言のうち、手引の譲歩の言い回しに当たるもの(発言者・引用・時刻)。
- 持ち帰りの持ち主と期限。
- 次の修正案に反映する点。

【区分の付け方】
- 合意:会議の最後の確認事項の読み上げで、相手方が確認した条項だけ。
- 持ち帰り(相手方):相手方が検討する、社内で確認すると述べた条項。
- 持ち帰り(自社):自社の出席者が検討する、確認すると述べた条項。
- 主張のみ:主張が述べられたが、どちらも持ち帰りと述べていない条項。
- 判断できない:上のどれにも当てはまらない場合。迷ったときに「合意」を選ばないでください。

【厳守事項】
- 相手方の主張と理由は、言葉どおりに引用してください。要約したり、強めたり弱めたりしないでください。
- 理由が述べられていなければ「理由の発言なし」としてください。推し量って書かないでください。
- 条項は、会議のチャットの一覧にある番号で特定してください。特定できない発言は「要確認」としてください。
- 条文を書き直したり、修正案の文言を作ったりしないでください。
- 相手方の主張が妥当かどうかを書かないでください。
- 持ち帰りの期限が発言に無い場合は「要確認」としてください。
- 修正案に反映する点には、合意の条項と、自社の譲歩があった条項だけを並べてください。

【出力】
1. 条項ごとの記録(表。一覧の件数と同じ数)
2. 自社の発言の中の譲歩(表)
3. 持ち帰りの一覧(相手方の分と自社の分を分けて)
4. 修正案に反映する点(条項の番号/現在の案の要点/反映する内容/根拠の時刻)
5. 担当者への注意(要確認・判断できない・譲歩の可能性の箇所)

この指示は、エージェントの指示として Agent Builder に書いておきます。 担当者は会議ごとに「今日のA社の交渉の記録を作って」と頼むだけにします。毎回指示を貼り直すと、人によって指示が変わります。

「迷ったときに合意を選ばない」を明記しているのは、誤りの重さが左右で違うからです。 持ち帰りを合意と取り違えれば、修正案で相手方の検討中の条項を書き換え、相手方の信頼を損ねます。 合意を持ち帰りと取り違えても、次の会議で確かめれば済みます。

Step7

出力形式を固定する

エージェントには、表の形で返させます。 この構成ではシステムへの自動登録をしないため、JSON ではなく、法務の担当と営業が読んで直しやすい表を出力の形にします。

【条項ごとの記録(4件)】
| 条項 | 相手方の主張(引用) | 理由(引用) | 自社の回答 | 区分 | 時刻 |
| 第12条 | 「上限は年間の利用料の2倍にしていただきたい」 | 「社内の基準で、2倍を下回ると決裁が通りません」 | 12か月分を維持 | 持ち帰り(相手方) | 00:12:30 |
| 第22条 | 「30日では短いです」 | 「移行先の選定に通常60日かかります」 | 60日で検討 | 持ち帰り(自社) | 00:38:05 |

【自社の発言の中の譲歩】
| 発言者 | 引用 | 条項 | 時刻 |
| 営業 | 「監査は、報告書の提出で足りなければ、年1回の訪問でも結構です」 | 第18条 | 00:29:50 |

1つ目の理由は、根拠の時刻で文字起こしに戻れることです。 Copilot は、応答に使った情報源を示すとされています。法務の担当は時刻から発言を開き、引用が言葉どおりかを確かめます。

2つ目は、主張と理由を別の列に置けることです。 理由が書かれていれば、修正案で出す代わりの案が作れます。第12条なら「2倍を下回ると決裁が通らない」という理由に対して、上限の対象を限る案を考えられます。

3つ目は、譲歩を独立した表にできることです。 条項ごとの記録の中に埋もれさせると、営業は自分の発言を探しません。譲歩の表だけを営業に見せ、「この発言で合っているか、法務と相談済みか」を確かめてもらいます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Teams 会議エージェントの知識に会議を指定文字起こしと会議のチャットを読む
契約書の案エージェントの知識にフォルダを指定条項の番号と現在の文言を読む。書き込まない
交渉記録法務の担当が Word の様式に貼って整える審査の依頼のフォルダに保存する
譲歩の確認法務の担当が Teams のチャットで営業に送る譲歩の表だけ

契約書の案には、エージェントから書き込みません。 条文を書き直すのは法務の担当者で、修正履歴を付けて Word で作ります。 反映する点の一覧は、その作業の手元に置く確認表です。

相手方には、交渉記録を送りません。 交渉記録は社内の記録です。相手方に確かめるのは、会議の最後の読み上げと、修正案の送付のときの説明で行います。

Step9

人が確認する

この構成では、全件を人が確かめます。 交渉の記録は、修正案と次の交渉の土台になるからです。

  1. 合意の条項を先に見る … 読み上げで相手方が確認した発言を、文字起こしで確かめます
  2. 譲歩の表を営業に確かめてもらう … 発言の意図と、法務と事前に相談した範囲かを聞きます
  3. 相手方の主張と理由の引用を確かめる … 根拠の時刻から発言を開きます
  4. 持ち帰りの期限の「要確認」を埋める … 期限が言われていなければ、相手方に確かめる連絡を営業に頼みます
  5. 手引の範囲を超える譲歩があれば、法務部長に上げる … その譲歩を認めるか、次の会議で戻すかを決めます

2番目と5番目を省かないでください。 営業の譲歩は、修正案を出す前に法務が知らないと取り返しがつきません。譲歩を認めないと決めた場合、次の会議の冒頭で、営業から相手方に伝え直してもらいます。

目標は、1回あたり21分です。 録画の見返しが無くなり、確かめる箇所が時刻で示されることで、見る場所が決まります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
相手方が主催した会議だったCopilot は動かない。担当者のメモで作り、次回から自社で主催する
相手方が文字起こしに同意しなかったこの構成の対象から外し、従来どおりメモで作る
条項の番号が言われなかった「要確認」が増える。次回から番号で呼ぶ
会議中に条文の案がチャットに貼られた貼られた案を引用させ、どの版の案かを担当者が確かめる
前回の会議で合意した条項が蒸し返された前回の会議も知識にあるので、「前回は合意」と並べて出させる
英語で交渉した文字起こしの対応する言語には英語も日本語も含まれる。話し言葉の設定を英語にし、引用は英語のまま残す
会議の途中で文字起こしが止まった止まった後の発言は拾えない。出力の最後の時刻を見て、メモで補う
同じ日に別の顧客の会議もあった知識に指定する会議を、その契約の会議だけにしてから作らせる
読み上げの前に相手方が退出した読み上げで確認できていないので、合意の条項は0件になる。 営業から確認事項をメールで送り、返事をもって合意とする
相手方が読み上げの一部だけを否定した否定された条項は持ち帰り(相手方)に直す。否定の発言を引用として残させる
契約書の案の条項の番号が版の改訂でずれた一覧の番号と案の番号が合わなくなる。会議の前日に、最新の版の番号で一覧を作り直す

上から1行目は、交渉の主導権の話でもあります。 大手の顧客ほど、自社の会議の招待を送ってきます。営業から「議事の記録のため、こちらで会議を設定させてください」と最初に伝える決まりにします。

読み上げの前に相手方が退出する行も、思ったより多く起きます。 交渉の会議は時間が押しがちで、相手方の役職者が先に抜けます。読み上げは会議の終わりではなく、終わる10分前に置くと決めておくと防げます。

Step11

記録を残す

  • 会議の文字起こしと、会議のチャットに貼った条項の一覧
  • エージェントの出力(条項ごとの記録・譲歩・持ち帰り・反映する点)の全文
  • 法務の担当が直した箇所 … どの区分を、どちらに変えたか
  • 営業の譲歩の確認の結果と、法務部長の判断
  • 修正案の版と、反映した点の対応
  • 契約ごとの「判断できない」と「要確認」の件数

エージェントの出力は、交渉記録とは別に保存します。 Copilot とのやり取りの履歴は、文字起こしが使えなくなると消えるとされています。出力を Word の別ファイルとして、審査の依頼のフォルダに置きます。

4つ目の記録は、後の紛争で効きます。 契約の後に解釈で争いになったとき、どの会議で、誰が、どの言葉で譲ったかが条項ごとに追えます。

04実装レベルの3段階

最小構成:会議の Copilot に手引を貼り、条項ごとの記録と譲歩を表にさせる / 1回の会議の記録の一次整理
半自動化:上記+その契約の会議と契約書の案を知識に持つエージェントで作る / 前回までの交渉と並べた記録と、反映する点の一覧
本格構成:上記+審査の依頼のリストへの記録の登録と、営業への譲歩の確認の依頼を Power Automate で行う / 記録の保管と確認の依頼の送付

本記事の想定は半自動化です。 1回60分が21分になるのは、録画の見返しと、条項ごとに並べ直す作業が無くなるからです。 本格構成で条文の書き直しまで自動にすることは勧めません。 修正案は、合意の内容をどの文言で書くかという法務の仕事そのものです。反映する点の一覧までをAIに任せ、条文は人が書きます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
60 分
1件あたり導入後時間
21 分
現在  40件 × 60分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 40件 × 21分 ÷ 60 = 14 時間/月
月間削減時間
26h
削減率
65%
年間削減時間
312h
年間金額換算(時間単価4,500円)
140万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 法人の顧客と、サービスの利用契約・個別の取引条件・秘密保持や情報セキュリティの条項を Teams 会議で交渉することが多いSaaS企業・メーカー・商社・広告会社。交渉の会議に営業と法務が同席し、どの条項で何が決まり何が持ち帰りになったかを法務の担当者が記憶とメモから整理して修正案に反映している場合。営業がその場で示した譲歩が後から法務に伝わる、ということが起きている場合。法務の担当者が Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot)を使える場合。
向いていない
  1. 契約の交渉がほぼメールと修正履歴のやり取りだけで、会議を開かない場合。交渉の会議の多くを相手方が主催する場合(Copilot が使えない)。相手方が文字起こしを残すことに同意しない場合。なお、条項を受け入れるか、どこまで譲るか、契約として成立したかの判断は、法務の責任者と権限を持つ人が行います。この構成は記録を助けるもので、判断は代替しません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の交渉の会議のうち、文字起こしが残っている会議を5つ選ぶ(うち1つは、後でもめた交渉を入れる)
  2. 会議の後に、会議のチャットか「まとめ」のタブから Copilot を開く
  3. 交渉方針の手引の区分の付け方と、譲歩の言い回しの例を Copilot に貼る
  4. 「この会議を条項ごとに、相手方の主張と理由を引用し、合意・持ち帰り・主張のみに分けて表にしてください。合意は最後の読み上げで相手方が確認したものだけです。自社の出席者の発言のうち譲歩に当たるものを別の表にしてください」と指示する
  5. 出てきた表を、当時の担当者が作った交渉記録と突き合わせる

後でもめた交渉は必ず入れてください。 もめた原因が、合意の取り違えか、営業の譲歩の見落としかが、表に出るかを確かめます。

出てきた内容判断
当時の記録に無かった営業の譲歩が出たエージェントに進む
相手方の「検討します」が合意になった指示の区分の定義が効いていない。書き方で直る
条項がばらばらで、ほとんど「要確認」会議の進め方が先。 番号で呼ぶ

1行目が出たら、この構成の価値はそこにあります。 法務の担当が気づかなかった譲歩は、記録を作る人の注意力では拾えないものだからです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
相手方の「検討します」が合意になる合意を読み上げで確認したものに限ると手引と指示に書く
営業の相づちが譲歩になる手引に譲歩の言い回しの例を並べる。曖昧なものは「譲歩の可能性」
相手方の主張が丸められる言葉どおりの引用を指示し、時刻で確かめる
理由が推し量って書かれる「理由の発言なし」を指示で明記する
相手方の主催で Copilot が使えない自社の法務が主催することを、交渉の最初に伝える
別の顧客の会議の内容が混ざる知識の会議をその契約の会議だけに指定する
古い版の契約書が参照されるフォルダには最新の版だけを置く
一般的な契約の慣行で補われる「Only use specified sources」と、指示の「補わない」を両方入れる
定期的な会議で前回の履歴が消える交渉の会議は1回ずつ設定し、出力を別ファイルで保存する
AIに条文を書かせたくなる反映する点の一覧まで。 条文は人が書く

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、会議の空気を合意として読む失敗です。人も同じ失敗をしますが、AIは同じ失敗を毎回同じように繰り返します。定義を手引に書き、迷ったら合意にしない向きを決めておけば、毎回同じように防げます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 取引先の名前、契約の条件(責任の上限、価格、データの取り扱い)、交渉方針、相手方の社内の事情、出席者の発言です。交渉方針は、相手方に知られてはならない自社の営業秘密です。

  1. 交渉方針の手引の閲覧を絞る … エージェントに埋め込んだ文書は、エージェントを使えるすべての人がその内容にアクセスできるとされています。エージェントは契約グループの5名だけに共有し、営業には共有しません
  2. 知識に入れる会議を絞る … Copilot は、利用者が少なくとも閲覧の権限を持つデータだけを示すとされています。権限の範囲で何でも探せるので、その契約の会議だけを指定します
  3. 相手方の了解を得てから文字起こしを始める … 相手方の出席者の発言を記録することになるので、会議の冒頭で毎回伝えます
  4. 交渉記録を相手方に送らない … 社内の記録として扱い、相手方とのやり取りは修正案と会議で行います
  5. データの扱いを確かめておく … Microsoft の公式ページでは、プロンプト、応答、Microsoft Graph で参照したデータは基盤のモデルの学習に使われないとされています。秘密保持契約で、相手方の情報を社内のどの仕組みで扱ってよいかが決まっていることがあるので、照らしておきます
  6. 判断を自動で確定させない … 合意の区分も譲歩の扱いも、法務の担当と責任者が決めます

誤りが起きた場合のリスクは、持ち帰りを合意として修正案に入れることと、営業の譲歩を見落とすことの2つです。 前者は合意の定義が緩いと起き、後者は譲歩の言い回しの例が無いと起きます。どちらも手引で定義し、人が文字起こしで確かめることで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:交渉方針の手引に2つを書き足す

手引に、区分の定義(合意は読み上げで確認したものだけ)と、譲歩に当たる言い回しの例を書き足します。法務部長と、交渉の多い営業の担当2名で作ります。

2週目:5つの会議で試す

先月の交渉の会議を5つ選び、会議の Copilot に手引を貼って、条項ごとの記録と譲歩を表にさせます。後でもめた交渉で、当時の記録に無かった譲歩が出るかを最優先で見ます。

3週目:会議の進め方を決める

交渉の会議を法務が主催すること、冒頭で記録に使うことを伝えること、最後に確認事項を読み上げることを、営業部長と法務部長で決めます。営業から顧客に伝える文面も用意します。

4週目:エージェントを作る

Agent Builder で交渉記録エージェントを作り、指示・手引・様式を入れて、契約グループの5名にだけ共有します。会議ポリシーで Copilot を「On with saved transcript required」にし、5名に当てます。

2か月目: すべての交渉の会議で使い、「判断できない」と「譲歩の可能性」の件数を数えます。3か月目以降: 1回60分が何分になったかを実測し、営業の譲歩が修正案の前に法務に届くようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
会議の後に Copilot に質問するには文字起こしが必要なこと。会議のチャットや「まとめ」のタブから Copilot を開けること。応答に使った情報源を示すこと。社外が主催する会議では Copilot が動かないこと。文字起こしが使えなくなると Copilot が使えず履歴も消えることMicrosoft Support: Get started with Copilot in Microsoft Teams meetings2026-10-08
ライセンスを持つ参加者が自分にだけ見えるプロンプトを送れること。「会議中のみ」では会議の後に保存されない音声の処理で動くこと。会議ポリシーの On with saved transcript required が既定で、主催者の会議オプションが「会議中と会議後」に固定されることMicrosoft Learn: Manage Microsoft Copilot in Teams meetings and events2026-10-08
Agent Builder の知識に、Teams の会議を5つまで、SharePoint のファイルを100まで指定できること。「自分の Teams のチャットと会議」を選ぶとすべての文字起こしと予定表を探すこと。埋め込んだファイルはエージェントを使えるすべての人がアクセスできること。「Only use specified sources」は指定した知識を優先させる設定で、一般的な知識を完全には止めないことMicrosoft Learn: Add knowledge sources to an agent in Agent Builder2026-10-08
Microsoft 365 Copilot が Microsoft Copilot に改称されたこと。利用者が少なくとも閲覧の権限を持つデータだけを示すこと。プロンプト・応答・Microsoft Graph で参照したデータが基盤のモデルの学習に使われないことMicrosoft Learn: Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot2026-10-08
文字起こしが主催者と開始する人の両方のポリシーで決まること。文字起こしが録画とともに OneDrive と SharePoint に保存されること。対応する言語に日本語と英語が含まれることMicrosoft Learn: Manage transcription and captions for Teams meetings2026-10-08

合意の成否、譲歩の可否、条文の文言は、法務の責任者と権限を持つ人が決めてください。 本記事は公開されている製品の仕様で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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