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監査法人との打合せの Teams 会議の記録から、論点・監査法人の見解・自社の宿題と期限を議事録にまとめ、論点管理表の更新案を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

監査法人との打合せを自社主催の Teams 会議で行い、文字起こしと会議のチャットから、論点ごとの監査法人の見解と双方の宿題・期限を議事録にまとめます。論点管理表と比べ、更新が要る行だけの更新案を作ります。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
対象業界
IT・SaaS/商社/小売/製造
対象部門
経理/財務
対象業務
要約/記録・議事録作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
要約
主な効果
入力漏れ削減/属人化解消/工数削減
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
SaaS追加(小)
人間の確認
必須
現在工数
15h/月
AI導入後
6h/月
想定削減
60%
年間削減
108h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 担当者が打合せの前に、扱う論点の一覧を作り、監査法人の主査にメールで送る
  2. 打合せ中、担当者が議論を聞きながら手元でメモを取る
  3. 打合せの後、メモを見ながら論点ごとの自社の説明と監査法人の見解を議事録に書く
  4. 見解の言い回しがあいまいだった箇所を、経理部長に確かめる。必要なら監査法人の主査にメールで確かめる
  5. 論点管理表を開き、論点ごとに見解・状態・次の期限を書き換える
  6. 依頼された資料を一覧にし、担当者と子会社の経理に期限を付けて知らせる
  7. 議事録を経理部長と関係者に配る
導入後(After)
  1. 人担当者が打合せを自社の主催で設定し、監査法人の出席者を招待する
  2. 人担当者が打合せの前日に、論点の一覧(論点の番号・論点名・現在の状態)を会議のチャットに貼る
  3. 人打合せの始めに文字起こしを開始する
  4. 人打合せの終わりに、担当者が宿題を読み上げて確かめる(「論点3、減損の兆候の判定資料、当社、来週金曜」)
  5. 【人/AI】 担当者が、監査法人打合せ用のエージェントに会議を指定して、議事録と更新案を作らせる
  6. 【AI】 論点ごとの自社の説明・監査法人の見解と確度・宿題を拾い、論点管理表と比べて更新が要る行だけを並べる
  7. 人担当者が、見解の行を根拠の時刻で文字起こしと照らし、議事録と更新案を直す
  8. 人経理部長が見解の確度を確かめ、担当者が論点管理表を更新し、宿題を担当者に知らせる
各工程の詳しい説明を読む
  1. 担当者が打合せの前に、扱う論点の一覧を作り、監査法人の主査にメールで送る
  2. 打合せ中、担当者が議論を聞きながら手元でメモを取る
  3. 打合せの後、メモを見ながら論点ごとの自社の説明と監査法人の見解を議事録に書く
  4. 見解の言い回しがあいまいだった箇所を、経理部長に確かめる。必要なら監査法人の主査にメールで確かめる
  5. 論点管理表を開き、論点ごとに見解・状態・次の期限を書き換える
  6. 依頼された資料を一覧にし、担当者と子会社の経理に期限を付けて知らせる
  7. 議事録を経理部長と関係者に配る

(a)見解の言い回しが担当者次第になる。 「問題ないと思います」「審査に確認します」「その方向で検討してください」は、メモでは同じ「OK」になりがちです。どの言葉で言われたかが残っていないと、決算の直前に「合意していたはず」と「まだ確認中だった」が食い違います。 4番の確かめは、この食い違いを先回りして潰す作業です。

(b)宿題が会話の中に埋もれる。 依頼は「では、それも次回までに」の一言で出ます。誰が、何を、いつまでに出すのかがはっきりしないまま打合せが終わり、6番の一覧から落ちます。 子会社に頼む資料ほど、連絡が遅れたぶん期限に間に合いません。

(c)論点管理表の更新が遅れる。 5番は打合せが続く週には翌日以降に回ります。管理表が古いまま次の打合せの論点の一覧を作り、解決済みの論点を議題に載せたり、確認待ちの論点を落としたりします。

(d)記録の書き方が人に付く。 議事録の書き方は担当者ごとに違い、担当替えのたびに過去の議事録から論点の経緯を読み取るのに時間がかかります。 四半期をまたぐ論点ほど、前任者の書き方に引きずられます。

  1. 【人】 担当者が打合せを自社の主催で設定し、監査法人の出席者を招待する
  2. 【人】 担当者が打合せの前日に、論点の一覧(論点の番号・論点名・現在の状態)を会議のチャットに貼る
  3. 【人】 打合せの始めに文字起こしを開始する
  4. 【人】 打合せの終わりに、担当者が宿題を読み上げて確かめる(「論点3、減損の兆候の判定資料、当社、来週金曜」)
  5. 【人/AI】 担当者が、監査法人打合せ用のエージェントに会議を指定して、議事録と更新案を作らせる
  6. 【AI】 論点ごとの自社の説明・監査法人の見解と確度・宿題を拾い、論点管理表と比べて更新が要る行だけを並べる
  7. 【人】 担当者が、見解の行を根拠の時刻で文字起こしと照らし、議事録と更新案を直す
  8. 【人】 経理部長が見解の確度を確かめ、担当者が論点管理表を更新し、宿題を担当者に知らせる

1番目が、この設計の前提です。 Teams 会議の Copilot は、参加者の組織の外で主催された会議では動かないとされています。監査法人が主催する会議に招かれる形では、自社の担当者の Copilot は使えません。監査法人の主査に、定例の打合せは自社で設定することを最初に頼みます。

4番目が、いちばん効く工夫です。 宿題を打合せの中で声に出して確かめれば、文字起こしに持ち主と期限がはっきり残ります。 AIに会話の流れから宿題を推し量らせるより確実です。

02今回想定するシステム構成

構成図
打合せの前日:論点の一覧(番号・論点名・現在の状態)を会議のチャットへ
   ▼
Teams 会議(自社が主催。文字起こしを開始)
   │  終わりに宿題を読み上げて確かめる
   ▼【トリガー】会議の終了と文字起こしの保存
Microsoft Copilot(Agent Builder で作る監査法人打合せ用のエージェント)
   │  知識:その週の打合せ(会議を指定)
   │        論点管理表(SharePoint のリスト。読むだけ)
   │        議事録の様式と、見解の確度の分け方の手引
   ├──▶ 論点ごとの自社の説明と監査法人の見解(確度・引用の時刻付き)
   ├──▶ 宿題(自社/監査法人、持ち主と期限)
   └──▶ 論点管理表の更新案(変わる行だけ)
   ▼【担当者が文字起こしと照らし、経理部長が確度を確かめる】
議事録(Word)を関係者へ/論点管理表を人が更新
役割想定する製品代替候補
処理Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot。Teams 会議の Copilot と、Agent Builder で作る監査法人打合せ用のエージェント)ChatGPT Enterprise、Gemini、Claude
会議Microsoft Teams(文字起こし)Zoom の文字起こし
管理表SharePoint のリスト(論点管理表)-

新しく足すのは、決算・開示グループ5名の Copilot のライセンスと、監査法人打合せ用のエージェントだけです。 監査法人の出席者にも、経理部長にも、ライセンスは要りません。Teams 会議の Copilot は、会議の参加者のうち Copilot のライセンスを持つ人が、自分にだけ見えるプロンプトを送れるとされています。

エージェントは Agent Builder で作ります。 知識として Teams の会議を5つまで、SharePoint のリストを1つまで指定でき、リストは2万行・生の文字で50MBまでとされています。論点管理表のリストを知識に入れれば、現在の状態と比べた更新案が作れます。 会議は毎週入れ替えて指定します。

Teams 会議の Copilot だけでも議事録は作れます。 会議の後に会議のチャットや「まとめ」のタブから Copilot を開いて質問できます。ただし、論点管理表と比べるにはリストを知識に持つエージェントが要ります。 最小構成は会議の Copilot、半自動化はエージェント、と分けます(第8章・第9章)。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

打合せが終わり、文字起こしが保存されたことを起点にします。 Teams 会議の Copilot は、会議が終わった後に質問するには文字起こしが必要とされています。文字起こしを開始し忘れた打合せは、この構成に乗りません。

文字起こしの開始を忘れないように、会議ポリシーで Copilot を「会議中と会議後」に固定します。 管理者の会議ポリシーで Copilot の設定を「On with saved transcript required」にすると、主催者の会議オプションの Copilot が「会議中と会議後」になり、主催者は変えられないとされ、これが既定の値です。担当者が主催する打合せに、このポリシーを当てます。

打合せの主催者は、必ず自社の担当者にします。 監査法人の会計士から会議の招待が届いた場合も、自社で会議を設定し直して招待を送り返すことを、監査法人の主査と最初に取り決めます。監査法人の会議に乗ると、文字起こしの保存先も監査法人の側になり、自社の Copilot からは使えません。

エージェントを動かすのは、担当者が打合せの直後に行う手作業です。 会議の終了を検知して自動で動かす仕組みは作りません。打合せの後1時間以内に担当者が作らせる、という決まりにします。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
文字起こし発言者と時刻の付いた打合せの発言Teams 会議の記録
会議のチャット前日に貼った論点の一覧、打合せ中に貼られた資料名会議のチャット
論点管理表論点の番号、論点名、勘定科目、自社の方針、監査法人の見解、状態、次の期限、担当SharePoint のリスト
議事録の様式論点ごとの記録の欄、宿題の欄、持ち越しの欄エージェントの知識(文書)
見解の確度の手引「結論」「暫定」「持ち帰り」に当たる言い回しの例同上

質を決めるのは、2行目の論点の一覧です。 Teams 会議の Copilot は、文字起こしがある場合、会議の24時間前までのチャットを文字起こしとあわせて材料にするとされています。前日のうちにチャットへ貼るのは、この範囲に入れるためです。

論点の一覧は、たとえば次のように貼ります。

【10/8 監査法人 定例打合せ 論点(4件)】
3 固定資産の減損の兆候(第2工場)  監査法人の確認待ち
7 製品保証引当金の見積りの見直し  協議中
11 子会社Bの棚卸資産の評価       自社の対応待ち
14 新規の保守契約の収益認識の時期 協議中

冒頭に件数を書いておくのは、拾い漏れを確かめるためです。 チャットの件数と、記録の論点の数がそろえば、論点が抜けていないと分かります。

見解の確度の手引は、経理部長と一緒に作ります。 たとえば「問題ありません」「その処理で結構です」は結論、「現時点では問題ないと考えます」「方向性は理解しました」は暫定、「審査に確認します」「事務所内で協議します」は持ち帰り、のように言い回しの例を並べます。例が無いと、AIは丁寧な言い回しを結論として読みがちです。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
文字起こしと会議のチャットエージェントの知識に、その週の会議を指定する論点ごとの説明・見解・宿題を拾う
論点管理表エージェントの知識に、リストを指定する現在の状態と比べて、変わる行を出す
議事録の様式と手引エージェントに埋め込んだ文書出力の形と、確度の分け方

会議は、Agent Builder の知識で「その週の打合せ」を個別に指定します。 「自分の Teams のチャットと会議すべて」を選ぶと、エージェントはすべての会議の文字起こしと予定表を探すとされています。社内の決算会議や取締役会の準備の会議が混ざるので、個別の指定に絞ります。 指定できるのは5つまでなので、週ごとに入れ替えます。

論点管理表のリストは、リスト自体のURLで指定します。 サイトを指定しても、そのサイトのリストは含まれないとされています。

リストの「状態」の列は、選択肢で固定しておきます。 協議中・監査法人の確認待ち・自社の対応待ち・解決、の4つに決めておけば、更新案の「更新後の値」もその言葉で出ます。 自由入力の列だと「確認中」「先方待ち」「監査法人検討中」が混ざり、比べる意味がなくなります。

解決して1年たった論点は、別のリストに移します。 知識に入れるリストを、いま動いている論点に絞っておくと、比べる対象がぶれません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 打合せを自社で主催する … 監査法人から届いた招待は使わず、自社で設定し直します
  2. 論点の一覧を前日にチャットへ貼る … 論点の番号・論点名・現在の状態の3つだけにします
  3. 打合せの冒頭で、文字起こしを残すことを伝える … 監査法人の出席者に、議事録の作成に使うことを毎回ひと言伝えます
  4. 論点を番号で呼ぶ … 「では論点7、保証引当金について」と、論点に入るたびに番号を言います
  5. 宿題を最後に読み上げる … 論点の番号・内容・持ち主(自社か監査法人か)・期限を一文で言います

どれも、打合せの進め方の決まりです。 システムの前処理ではなく、人が打合せの中で行う前処理です。この構成では、ここを整えるほうが指示文を工夫するより効きます。

4番目の番号は、論点が行き来する打合せで効きます。 減損の話の途中で引当金の話に飛び、また戻る、ということは珍しくありません。番号が言葉になっていれば、AIは発言を正しい論点に振り分けられます。

5番目の読み上げは、慣れるまで担当者が言います。 監査法人の主査が「では、それもお願いします」で終えたら、担当者が「論点3の判定資料を当社から来週金曜まで、でよろしいですね」と受けます。数週間で、主査の側から同じ形で言うようになります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、打合せで言葉にされたことを論点ごとに拾い、管理表と比べることだけです。

拾うもの拾い方拾えないときの扱い
自社の説明自社の出席者が述べた方針と根拠の要点「説明の発言なし」
監査法人の見解会計士の発言を、言葉どおりに引用する「見解の発言なし」
見解の確度手引の言い回しに照らして、結論・暫定・持ち帰り「判断できない」
宿題論点の番号・内容・持ち主・期限持ち主か期限が無ければ「要確認」
持ち越し次回に回すと言われた論点「次回の議題」
管理表との違い状態・見解・期限が、管理表と違う行論点の番号が管理表に無ければ「管理表に無い」
させないこと理由
見解を言い換えて要約する確度が変わる。引用は言葉どおり
会計処理の妥当性を評価する判断するのは経理の責任者と監査法人
確度を推し量って上げる「暫定」を「結論」と書けば、合意したことになる
管理表への書き込み更新は担当者が行う
監査法人への返信の作成内容を確かめてから人が書く

2行目と4行目がいちばん大事です。 AIは、会計士の「現時点では、その処理で大きな問題はないと考えています」を「監査法人は処理を了承」とまとめがちです。了承という言葉は、発言のどこにもありません。 見解は言葉どおりに引用させ、確度は手引に照らして付けさせ、手引に当てはまらない言い回しは「判断できない」として人に回します。

Step6

指示内容を固定する

あなたは経理部の決算・開示グループの担当者を手伝い、監査法人との
打合せの議事録と、論点管理表の更新案を作る立場です。
指定した会議の文字起こしと会議のチャット、論点管理表、
埋め込んだ様式と手引だけを見てください。

【拾うもの】
- 論点ごとに、論点の番号、自社の説明の要点、監査法人の見解(引用)、
  見解の確度(結論/暫定/持ち帰り/判断できない)、根拠の時刻。
- 宿題:論点の番号、内容、持ち主(当社/監査法人)、期限。
- 次回に持ち越す論点と、持ち越す理由。

【厳守事項】
- 論点は、会議のチャットの論点の一覧にある番号で特定してください。
  番号で特定できない発言は「要確認」としてください。
- 監査法人の見解は、発言者の言葉どおりに引用してください。
  言い換えたり、要約したり、強めたり弱めたりしないでください。
- 確度は、手引の言い回しの例に照らして付けてください。
  例に当てはまらない場合は「判断できない」としてください。
  迷ったときに「結論」を選ばないでください。
- 会計処理が妥当かどうかの評価を書かないでください。
- 宿題の持ち主か期限が発言に無い場合は「要確認」としてください。
  期限を推し量って埋めないでください。
- 論点管理表とは、状態・見解・期限が違う行だけを並べてください。
  管理表を書き換えないでください。
- 判断と宿題には、根拠にした発言の時刻を付けてください。

【出力】
1. 論点ごとの記録(表)
2. 宿題の一覧(当社の分と監査法人の分を分けて)
3. 持ち越す論点
4. 論点管理表の更新案(論点の番号/項目/現在の値/更新後の値/根拠の時刻)
5. 担当者への注意(要確認・判断できないの箇所)

この指示は、エージェントの指示として Agent Builder に書いておきます。 担当者は打合せごとに「今日の監査法人の定例の議事録と更新案を作って」と頼むだけにします。毎回指示を貼り直すと、人によって指示が変わります。

「迷ったときに結論を選ばない」を明記しているのは、誤りの重さが左右で違うからです。 暫定を結論と取り違えれば、決算の直前に論点が蒸し返されます。結論を暫定と取り違えても、担当者が確かめれば済みます。 安全な側に倒すよう、指示で向きを決めておきます。

Step7

出力形式を固定する

エージェントには、表の形で返させます。 この構成ではシステムへの自動登録をしないため、JSON ではなく、担当者と経理部長が読んで直しやすい表を出力の形にします。

【論点ごとの記録】
| 番号 | 自社の説明の要点 | 監査法人の見解(引用) | 確度 | 根拠の時刻 |
| 3 | 第2工場は営業損益が2期連続でマイナスの見込み | 「兆候ありとして判定を進めてください。審査にも共有します」 | 持ち帰り | 00:08:15 |
| 7 | 保証の実績率を直近3年に見直す | 「方向性は理解しました。根拠の資料を見てから判断します」 | 暫定 | 00:21:40 |

【宿題】
| 番号 | 内容 | 持ち主 | 期限 | 根拠の時刻 |
| 3 | 減損の兆候の判定資料 | 当社 | 10/17 | 00:52:10 |
| 7 | 審査の見解の連絡 | 監査法人 | 要確認 | 00:53:02 |

【論点管理表の更新案】
| 番号 | 項目 | 現在の値 | 更新後の値 | 根拠の時刻 |
| 3 | 状態 | 監査法人の確認待ち | 自社の対応待ち | 00:52:10 |
| 3 | 次の期限 | (空欄) | 10/17 | 00:52:10 |

1つ目の理由は、根拠の時刻で文字起こしに戻れることです。 Teams 会議の Copilot は、応答に使った情報源を示すとされています。担当者は時刻から該当の発言を開き、引用が言葉どおりかを確かめます。

2つ目は、見解と確度を別の列に置けることです。 引用は事実、確度はその読み方です。列を分けておけば、経理部長は引用を読んで確度だけを直せます。 引用と読み方が1つの文に混ざると、どこを直すのかが分からなくなります。

3つ目は、宿題を当社と監査法人に分けることです。 自社の宿題は期限を担当者に知らせるため、監査法人の宿題は次の打合せで催促するために使います。監査法人の宿題に期限が無いことは多く、「要確認」がそのまま次の打合せの確認事項になります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Teams 会議エージェントの知識に会議を指定文字起こしと会議のチャットを読む
論点管理表エージェントの知識にリストを指定現在の状態・見解・期限を読む。書き込まない
議事録担当者が Word に貼って整える経理部長と関係者に配る
宿題の連絡担当者が Teams のチャットで知らせる自社の持ち主と子会社の経理に、内容と期限を送る

議事録は、様式の Word に貼って整えます。 様式には、打合せの名前・日付・出席者・扱った論点の数・論点ごとの記録・宿題・持ち越しの欄を用意し、エージェントの出力の見出しと同じ順に並べておきます。

議事録を監査法人に送るかどうかは、別に決めます。 自社の記録として残す議事録と、監査法人と内容を確かめ合う文書は分けたほうが扱いやすくなります。監査法人に送る場合は、引用と確度の列を経理部長が確かめた後に限ります。

この構成には、自動で書き込む連携がありません。 論点管理表の更新も、議事録の配布も、宿題の連絡も、担当者が確かめてから行います。難易度を★1にとどめている理由がここにあります。

Step9

人が確認する

  1. 論点の数を突き合わせる … チャットの論点の一覧の件数と、記録の論点の数が合っているかを見ます
  2. 見解の引用を時刻で確かめる … 全件、根拠の時刻の発言を開き、言葉どおりかを確かめます
  3. 確度を経理部長が確かめる … 「結論」の行は特に、経理部長が自分の記憶と照らします
  4. 宿題の期限を確かめる … 「要確認」の行は、持ち主に聞いて埋めます
  5. 更新案を管理表に反映する … 確かめた行だけを書き換えます

確認は、誤りの重さで順番を決めます。 「結論」の行、「暫定」の行、宿題、持ち越しの順に見ます。結論の取り違えは決算の手続きをそのまま進めてしまい、宿題の漏れは監査の日程を押すからです。

3番目は省かないでください。 見解の確度は、議事録の中でいちばん後から効いてくる情報です。経理部長が「これは結論ではなかった」と気づけるのは、打合せの記憶が新しい当日だけです。

目標は、1回の打合せあたり確認と反映を合わせて36分です。 引用を時刻で確かめるのに15分、経理部長の確度の確認に5分、管理表の反映に10分、宿題の連絡に6分という配分です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
文字起こしを開始し忘れたこの構成に乗らない。担当者のメモから従来どおり作る
監査法人が主催する会議で行われたCopilot が使えない。次回から自社で主催し直す
論点の番号で特定できない発言がある「要確認」で出る。担当者が論点の一覧と照らす
管理表に無い論点の番号が出る打合せで新しい論点が出た。管理表に足してから反映する
確度が「判断できない」経理部長が引用を読んで決める。決められなければ監査法人に確かめる
同じ論点で見解が途中で変わった後の時刻の発言を採り、両方の引用を議事録に残す
宿題の持ち主か期限が無い「要確認」で出る。担当者が持ち主に聞く
打合せが英語で行われた(海外子会社の論点)文字起こしの言語を会議の言語に合わせる。引用は原文のまま残す
監査法人の出席者が文字起こしを断った文字起こしは止める。その回はメモから作る

6行目の「見解が変わる」は、事前協議でよく起きます。 最初は「難しいと思います」と言っていた会計士が、資料を見て「それなら理解できます」に変わる場合です。後の発言が見解ですが、変わった経緯も記録に要ります。 両方の引用を並べ、経理部長が確度を付けます。

Step11

記録を残す

  • 打合せの文字起こしと録画(会議の記録の保存先と期限の設定に従う)
  • エージェントが出した議事録と更新案の原文
  • 担当者と経理部長が直した箇所 … どの行を、なぜ直したか(引用の誤り/確度の誤り/拾い漏れ)
  • 確定した議事録と、管理表を更新した日時
  • 宿題の連絡の日時と、期限までに出せたかどうか

直しの記録は、簡単な表で足ります。 打合せの名前、日付、論点の番号、直した項目、直す前、直した後、理由の列です。月に一度この表を見れば、どの種類の誤りが多いかが分かります。

「確度の誤り」が続くなら、手引の言い回しの例を足します。 会計士ごとに口癖があり、例を足すほど判断できる発言が増えます。AIの側を直すか、手引を直すか、打合せの進め方を直すかを、記録を見て決めます。

文字起こしは、未公表の決算の情報を含む記録です。 保存先と期限は、経理部長と情報システムの担当で決めてください。

04実装レベルの3段階

最小構成:会議のチャットの Copilot に、論点ごとの引用と宿題の表を作らせる / 議事録の下書き
半自動化:上記+Agent Builder のエージェントに、会議と論点管理表と確度の手引を持たせ、決めた指示で議事録と更新案を作らせる / 議事録、宿題、持ち越し、管理表の更新案
本格構成:上記+経理部長が承認した更新案を、ワークフローで論点管理表に書き込み、自社の宿題を持ち主に通知する / 管理表の更新と宿題の連絡まで

最小構成では、管理表の更新が人に残ります。 議事録の下書きは速くなりますが、③の20分はあまり減りません。確かめるための段階です。 半自動化で、1回90分が36分程度になり、この段階が本記事の想定です。 更新案が「変わる行だけ」で出るので、管理表を開いて論点を探す手間が減ります。 本格構成の書き込みは、急がないでください。 承認した更新案だけを書き込む仕組みにしても、承認が形だけになると、暫定の見解が「解決」として登録されます。 半自動化の運用で、確度の取り違えがほとんど出なくなってから考えます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
10 件
1件あたり現在時間
90 分
1件あたり導入後時間
36 分
現在  10件 × 90分 ÷ 60 = 15 時間/月
導入後 10件 × 36分 ÷ 60 = 6 時間/月
月間削減時間
9h
削減率
60%
年間削減時間
108h
年間金額換算(時間単価4,500円)
49万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 上場会社やその子会社、上場準備中の会社で、監査法人と毎週の定例打合せや会計処理の事前協議を Teams で行っているメーカー・商社・小売・IT企業。打合せのたびに経理の担当者が議事録と論点管理表の更新に時間を取られ、監査法人の見解の言い回しが担当者のメモ次第になっている場合。経理の担当者が Microsoft 365 Copilot(現在の名称は Microsoft Copilot)を使える場合。
向いていない
  1. 監査法人との打合せが年に数回で、議事録を残すほどの論点が無い場合。打合せを対面だけで行い、文字起こしを残す合意を監査法人と取れない場合。監査法人が主催する Teams 会議にしか参加できない場合(Copilot が使えない)。なお、会計処理の判断と監査法人との合意の有無を決めるのは経理の責任者です。この構成は記録を助けるもので、判断は代替しません。

07最小構成で試す方法

  1. 次の定例打合せを自社で主催し、前日に論点の一覧を会議のチャットに貼る
  2. 打合せで文字起こしを開始し、論点を番号で呼び、最後に宿題を読み上げる
  3. 打合せの後、会議のチャットの Copilot に「論点ごとに、監査法人の発言を言葉どおりに引用して表にして。言い換えないで。宿題は当社と監査法人に分けて、持ち主と期限と根拠の時刻を付けて」と頼む
  4. 担当者がこれまでどおりメモから議事録を作り、Copilot の表と並べる
  5. 引用の言い換え、確度の取り違え、宿題の拾い漏れを数える

最初の3回は、必ずメモから作った議事録と並べてください。 比べるのは文章の上手さではなく、監査法人の発言を言い換えていないかです。

出てきた内容判断
引用が言葉どおりで、宿題も拾えているエージェントに進む
引用が要約や言い換えになっている指示を強め、確度の手引を作ってからエージェントに進む
論点の振り分けを誤る論点を番号で呼ぶ運用を徹底する
文字起こしの聞き違いが多いマイクの環境と、会計用語の言い方を見直す。AIの問題ではない

2行目が出たら、手引を先に作ってください。 「問題ないと思います」をどう扱うかを人が決めていないと、どれだけ指示を工夫しても、AIは自分なりに読み替えます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
監査法人が主催する会議で Copilot が使えない組織の外で主催された会議では動かない。 自社で主催する
見解が要約されて確度が変わる言葉どおりの引用を指示し、確度は別の列にする
丁寧な言い回しを結論と読む確度の手引に言い回しの例を並べる
論点の振り分けを誤る論点の一覧を前日にチャットへ貼り、番号で呼ぶ
論点の一覧が材料に入らない会議の24時間前より前に貼ると範囲から外れる。 前日に貼る
文字起こしを開始し忘れる会議ポリシーで Copilot を「会議中と会議後」に固定する
他の会議の内容が混ざる知識は「すべての会議」ではなく、その週の打合せを個別に指定する
リストが知識に入らないサイトではなく、リストのURLを指定する
宿題の期限を推し量って埋める指示で禁じ、打合せの最後に読み上げる
管理表の更新が形だけの承認になる「結論」の行は経理部長が確かめる手順を省かない

上の3行が、この構成に固有のつまずきです。 1行目は知らないと最初の打合せで止まり、2行目と3行目は気づかないまま議事録に残ります。引用と確度を分けることが、この構成の背骨です。

4行目から8行目は、知っていれば一度で済む設定の話です。 特に論点の一覧を貼るタイミングは、前日の夕方と決めておくと迷いません。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 決算の論点、会計処理の方針、監査法人の見解、打合せの文字起こしです。公表前の決算の数字と、減損や引当金の見込みが含まれます。

  1. 会議の記録を見られる人を絞る … Copilot は、利用者が少なくとも閲覧の権限を持つ組織のデータだけを示すとされています。打合せの記録と論点管理表の権限を、決算・開示グループと経理部長に絞ってください。権限の設定が、そのまま Copilot の見える範囲になります
  2. 会議のチャットと文字起こしのコピーを制限する … 管理者の設定により、主催者が参加者による会議のチャット・文字起こしのコピーや転送を制限できるとされています。監査法人の出席者を含む打合せでは、この制限を使うかを決めておきます
  3. エージェントを共有しない … 監査法人打合せ用のエージェントは決算・開示グループだけで使います。埋め込んだファイルは、エージェントにアクセスできる人なら誰でもその情報にアクセスできるとされています
  4. AIに会計処理の判断をさせない … この構成は、打合せで言葉にされたことを記録するものです。見解が「判断できない」とされた論点について、AIに結論の案を出させないでください
  5. 出力をそのまま信じない … Microsoft は、生成AIの応答が100%事実であることは保証されないとし、ほかの人に送る前に利用者が判断して見直すよう求めています

Copilot に送ったプロンプトと応答は、基盤のモデルの学習に使われないとされています。会議の中で Copilot に送ったプロンプトは、送った本人にしか見えないとされているので、担当者が打合せ中に確かめた内容が監査法人の出席者に見えることはありません。

誤りが起きた場合のリスクは、監査法人の見解の取り違えです。 暫定を結論と記録すれば、決算の直前に論点が蒸し返され、開示の日程まで動きます。見解の引用を時刻で確かめる手順だけは、どんなに急いでいても省かないでください。

10まず何から始めるか

1週目:監査法人と進め方を取り決める

監査法人の主査と、定例の打合せを自社で主催する、文字起こしを議事録の作成に使う、論点を番号で呼ぶ、宿題を最後に読み上げる、の4つを取り決めます。

2週目:会議ポリシーと権限を整える

情報システムの担当に、決算・開示グループが主催する会議の Copilot の設定を確かめてもらいます。打合せの記録と論点管理表の権限を、決算・開示グループと経理部長に絞ります。 あわせて、経理部長と確度の手引を作ります。

3週目:会議のチャットの Copilot で試す

定例打合せで、最小構成を3回試します。メモから作った議事録と並べ、引用の言い換えと確度の取り違えを数えます。

4週目:エージェントを作る

Agent Builder で監査法人打合せ用のエージェントを作り、議事録の様式と確度の手引を埋め込み、論点管理表のリストを知識に指定します。指示は第7章の例から始めます。

2か月目: 事前協議と往査の講評にも広げ、担当者と経理部長の直しを記録します。3か月目以降: 1回90分が何分になったかを実測し、確度の手引に言い回しを足していきます。四半期の決算で「合意していたはず」の食い違いが出なくなった時点で、この構成は定着です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
Teams 会議の Copilot の使い方に「会議中と会議後」と「会議中のみ」があること。会議ポリシーの「On with saved transcript required」が既定の値で、主催者の会議オプションが「会議中と会議後」に固定されること。ライセンスを持つ参加者が自分にだけ見えるプロンプトを送れること。追加の Copilot のライセンスが前提であることMicrosoft Learn: Manage Microsoft Copilot in Teams meetings and events2026-10-08
会議の後に質問するには文字起こしが要ること。会議のチャットと「まとめ」のタブから使えること。文字起こしがある場合、会議の24時間前までのチャットが含まれること。応答に使った情報源が示されること。参加者の組織の外で主催された会議では Copilot が動かないことMicrosoft サポート: Get started with Copilot in Microsoft Teams meetings2026-10-08
文字起こしが会議の記録とともに OneDrive と SharePoint に保存されること。日本語が対応言語に含まれること。主催者が参加者による会議のチャット・文字起こしのコピーや転送を制限できることMicrosoft Learn: Manage transcription and captions for Teams meetings2026-10-08
Agent Builder の知識として、Teams の会議を5つまで、SharePoint のリストを1つまで指定できること。リストが2万行・生の文字で50MBまでであること。サイトを指定してもそのサイトのリストは含まれないこと。「自分の Teams のチャットと会議」を選ぶとすべての会議の文字起こしと予定表を探すこと。埋め込んだファイルはエージェントにアクセスできる利用者なら誰でも情報にアクセスできることMicrosoft Learn: Add knowledge sources to an agent in Agent Builder2026-10-08
Microsoft 365 Copilot が Microsoft Copilot に改称されたこと。プロンプトと応答が基盤のモデルの学習に使われないこと。利用者が少なくとも閲覧の権限を持つデータだけを示すこと。生成AIの応答が100%事実とは保証されないことMicrosoft Learn: Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot2026-10-08

どの言い回しを監査法人の結論として扱うか、打合せの記録をどれだけ保存するかは、経理の責任者が決めてください。 本記事は Microsoft の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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