追加・変更工事の協議のメールと打合せの記録から、Copilot で変更の経緯・指示の日付・金額の根拠をまとめ、発注者との変更契約の協議資料の下書きを作る
追加・変更工事ごとに、発注者・設計者とのメール、定例打合せの議事録、変更の指示書、見積の内訳を集め、変更の経緯・指示の日付・金額の根拠をまとめた協議資料の下書きを作ります。経緯を組み立て直す作業が、下書きを確かめる作業に変わります。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
- 対象業界
- 不動産/建設
- 対象部門
- 営業
- 対象業務
- 書類作成/記録・議事録作成
- 主な課題
- 引き継ぎができていない/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
- AIで行う処理
- 要約
- 主な効果
- 入力漏れ削減/工数削減/機会損失防止
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- SaaS追加(小)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 現場の工事担当が、定例打合せや現場での指示を受け、変更の内容を把握する
- 設計者から変更の図面や指示書がメールで届き、工事担当が受け取る
- 工事担当が数量を拾い、見積の内訳を作って工事営業に渡す
- 協議の前に、工事営業が工事担当に経緯を聞き、関係するメールと議事録を探す
- メールのスレッドと議事録を読み返し、指示の日付と指示した人を拾って時系列にする
- 見積の内訳から金額の根拠を写し、工期への影響を書く
- 協議資料にまとめ、上長の確認を経て発注者との協議に持っていく
- 人変更の依頼を受けた工事担当が、変更番号を採り、SharePoint に変更ごとのフォルダを作る
- 人関係するメールを PDF にしてフォルダに入れ、議事録・指示書・見積の内訳もそこへ保存する
- 人協議の前に、工事営業が変更ごとのノートブックを作り、フォルダと当初契約書の変更の条項を参照に加える
- 自動決まった指示を送ると、Copilot が経緯の時系列・指示の日付と指示した人・金額の根拠の箇所・書面の状況を返す
- 自動同じ指示の続きで、記録の無い事項と、記録どうしが食い違う事項を一覧にする
- 人工事担当が時系列を確かめ、記録の無い事項について自分の記憶と手元のメモを照らして補う
- 人工事営業が協議資料のひな形に移し、金額を見積の内訳と照らして仕上げ、上長の確認に回す
各工程の詳しい説明を読む
- 現場の工事担当が、定例打合せや現場での指示を受け、変更の内容を把握する
- 設計者から変更の図面や指示書がメールで届き、工事担当が受け取る
- 工事担当が数量を拾い、見積の内訳を作って工事営業に渡す
- 協議の前に、工事営業が工事担当に経緯を聞き、関係するメールと議事録を探す
- メールのスレッドと議事録を読み返し、指示の日付と指示した人を拾って時系列にする
- 見積の内訳から金額の根拠を写し、工期への影響を書く
- 協議資料にまとめ、上長の確認を経て発注者との協議に持っていく
(a)経緯が散らばっている。 1件の変更の記録は、定例打合せの議事録の数行、設計者とのメールのスレッド、発注者の担当者からの別のメール、現場の写真と工事担当のメモに分かれています。協議資料を作る人と、指示を受けた人が違うので、まず探すところから始まります。
(b)指示の日付が曖昧になる。 「先月の定例で決まった」と聞いていても、議事録には「検討する」としか書かれていない。正式な指示はその後のメールで、日付は2週間後だった、ということがあります。協議の席で日付を問われ、答えられないと、金額の話に進めません。
(c)書面での取り交わしが着工に遅れる。 現場は工程を止められないので、変更の作業を先に始めることがあります。書面の変更契約は、着工の後や工事が終わった後になりがちです。 ガイドラインは、着工後や工事の終了後に書面で契約を変更した場合を、建設業法第19条第2項の違反となる事例に挙げています。
(d)担当が替わると経緯が分からなくなる。 工事担当の異動や応援で、経緯を知る人が現場にいなくなると、残ったメールだけでは何が決まったかを組み立てられません。
- 【人】 変更の依頼を受けた工事担当が、変更番号を採り、SharePoint に変更ごとのフォルダを作る
- 【人】 関係するメールを PDF にしてフォルダに入れ、議事録・指示書・見積の内訳もそこへ保存する
- 【人】 協議の前に、工事営業が変更ごとのノートブックを作り、フォルダと当初契約書の変更の条項を参照に加える
- 【自動】 決まった指示を送ると、Copilot が経緯の時系列・指示の日付と指示した人・金額の根拠の箇所・書面の状況を返す
- 【自動】 同じ指示の続きで、記録の無い事項と、記録どうしが食い違う事項を一覧にする
- 【人】 工事担当が時系列を確かめ、記録の無い事項について自分の記憶と手元のメモを照らして補う
- 【人】 工事営業が協議資料のひな形に移し、金額を見積の内訳と照らして仕上げ、上長の確認に回す
2番目でメールを PDF にするのは、根拠を固定するためです。 ノートブックの参照には作成時にメールの候補も出てきますが、どのメールを根拠にしたかを、協議の後まで同じ形で残せることを優先します。
6番目で補うのは、AIではなく工事担当です。 記録の無い事項は、記録の無いまま一覧に出させます。口頭の指示を思い出して書き足すのは人で、書き足した行には「工事担当の記憶による」と明記します。
02今回想定するシステム構成
発注者・設計者とのメール/定例打合せの議事録/変更の指示書・図面/見積の内訳 │ 変更ごとの SharePoint のフォルダ(例:CO-012_3階テナント内装変更) ▼【トリガー】工事営業が変更契約の協議の日程を決める Copilot Notebooks(変更ごとに1つ) │ 参照:変更ごとのフォルダ/当初契約書の変更の条項/協議資料の書き方の決まり ├──▶ 経緯の時系列(日付・指示した人・内容・根拠のファイル・原文) ├──▶ 金額の根拠の箇所(見積の内訳の行)と工期への影響の記述 ├──▶ 書面の状況(着手の日/指示書・合意書の日付) └──▶ 記録の無い事項・記録どうしの食い違い ▼ 【工事担当が時系列を確かめ、記録の無い事項を補う】 ▼ 協議資料のひな形に移す ── 工事営業が金額を確かめ、上長の確認を経て発注者と協議
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 処理 | Microsoft Copilot(Copilot Notebooks と Outlook の Copilot) | ChatGPT Enterprise、Gemini、Claude |
| 保管 | SharePoint(現場ごとのサイトと変更ごとのフォルダ) | 社内のファイルサーバー |
| 共有 | Microsoft Teams(現場のチャネル) | Outlook のメール |
新しく足すのは、8名分の Copilot のライセンスだけです。 協議資料のひな形、見積の作り方、原価管理のシステムは変えません。経緯を組み立て直す工程にだけ Copilot を入れます。
Copilot Notebooks を選ぶのは、参照を変更の1件に閉じられるからです。 公式のページでは、ノートブックの Copilot は追加した参照だけを使って回答を作り、OneDrive の全体、メール、Teams のチャット、Webにはアクセスしないとされています。同じ発注者の別の変更や、同じ設計者の別の現場の話が経緯に混ざらないことが、協議の資料では欠かせません。
参照には、メールの候補も選べます。 公式のページでは、ノートブックを作るときに参照の候補を Files、Meetings、Emails、Sites で絞り込めるとされています。根拠に使われる参照は最初の300まで(Copilot Chat のユーザーは50まで)で、1件の変更には十分です。
協議の前の下ごしらえには、Outlook の Copilot も使います。 公式のページでは、メールのスレッドの上部の「Copilot による要約」でスレッドの要点をまとめ、番号付きの引用からスレッドの該当するメールに移れるとされています。どのメールをフォルダに入れるべきかを、工事担当が見当を付けるのに使います。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
変更契約の協議の日程が決まった時点を起点にします。 工事営業が日程を Teams の現場のチャネルに書き、工事担当にフォルダの資料をそろえるよう頼みます。資料がそろったと工事担当が返したら、工事営業がノートブックで指示を送ります。
ただし、フォルダへの保存は変更の依頼を受けた日から始めます。 協議の直前にまとめて集めると、第3章の(a)に戻ります。変更番号を採った日にフォルダを作り、関係するメールが届くたびに入れていくのが、この構成の前提です。
月に一度、協議の予定の無い変更もまとめて回します。 書面の状況を一覧で見るためです。着手しているのに書面の無い変更を、協議の前に拾います。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 協議のメール | 発注者・設計者とのやり取り。差出人、宛先、送信日時が見える形 | Outlook から PDF に保存して変更のフォルダへ |
| 定例打合せの議事録 | 変更に触れた回の議事録(決定事項・検討事項) | 現場のサイトの議事録のフォルダから写しを入れる |
| 変更の指示書・図面 | 設計者の変更指示書、変更の図面の一覧(図面そのものは画像) | 変更のフォルダ |
| 見積の内訳 | 項目・数量・単価・金額の明細と前提条件 | 見積の作成の仕組みから書き出したファイル |
| 当初契約書の変更の条項 | 設計変更等の申出があった場合の工期・請負代金の変更の定め | 契約書の該当ページ(PDF) |
| 協議資料の書き方の決まり | 時系列の書き方、「記録なし」の扱い、金額の書き方 | 営業部で1つを共通に使う(Word) |
質を決めるのは、メールが日時と差出人の見える形で入っているかです。 本文だけを貼り付けたファイルでは、指示の日付と指示した人を根拠つきで示せません。 Outlook からの PDF の保存を、工事担当の習慣にしてもらいます。
当初契約書の変更の条項を入れるのは、協議の前提を確かめるためです。 建設業法第19条第1項第6号は、設計変更等の申出があった場合の工期の変更、請負代金の額の変更、それらの額の算定方法に関する定めを契約書の記載事項に挙げています。契約に算定の方法が書いてあれば、協議資料もその書き方に沿わせます。
データの取得方法を決める
変更ごとにノートブックを1つ作り、参照を3つ加えます。 変更ごとのフォルダ、当初契約書の変更の条項、書き方の決まりです。
| 加えるもの | 加え方 | 理由 |
|---|---|---|
| 変更ごとのフォルダ | フォルダとして追加 | 後から入れたメールや議事録も参照に入る |
| 当初契約書の変更の条項 | ファイルを直接追加 | 金額・工期の変更の定めを毎回確実に使う |
| 書き方の決まり | ファイルを直接追加 | 時系列と「記録なし」の書き方をそろえる |
決まった資料をファイルとして直接加えるのは、公式のページの書き方に沿ったものです。 公式のページは、特定のファイルを確実に含めたいときは、ノートブックに直接追加するよう書いています。
議事録は、変更に触れた回だけを写して入れます。 定例の議事録を全回分入れると、ほかの変更の話が経緯に混ざります。変更番号を議事録の決定事項の行に書いておくと、写す回を探すのが速くなります。
どのメールを入れるかは、工事担当が Outlook のスレッドの要約で見当を付けます。 1件の変更のスレッドは、図面の差し替えや日程の調整が混ざって長くなりがちです。要約の番号付きの引用から元のメールに移り、指示・回答・見積の送付に当たるメールだけを PDF にします。 日程の調整だけのメールまで入れると、時系列の行が増えて確かめる手間が増えます。迷ったものは入れておき、時系列の「区分」で見分けます。
AIへ渡す前に整形する
- メールを PDF にする … 差出人・宛先・送信日時が見える形で保存し、ファイル名を「日付_差出人_件名」にします
- 図面を一覧にする … 図面の画像は参照の対象外の形式です。図面番号・版・日付を一覧にした文書を入れ、図面そのものは別に置きます
- 見積の内訳を書き出す … 項目・数量・単価・金額の明細を表のファイルにし、版の日付をファイル名に付けます
- 古い版を分ける … 見積や指示書を出し直したら、古い版を「旧」のフォルダに移します。経緯の時系列には旧版も要るので、消さずに、旧版と分かる名前にします
- 口頭の指示をメモにする … 現場で受けた口頭の指示は、その日のうちに工事担当がメモにして入れます。メモは「工事担当の記録」であることが分かる名前にします
4番目で旧版を消さないのは、経緯の材料だからです。 「当初の見積はこの範囲で、その後この指示で範囲が広がった」という流れは、旧版と新版を並べて初めて示せます。 ただし、金額の根拠に使うのは新版だけと、指示の中で明記します。
AIに処理させる
させるのは、1件の変更の記録から、次の4つを抜き出してまとめることです。
| まとめるもの | 中身 | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| 経緯の時系列 | 日付、指示した人(会社と名前)、内容、根拠のファイル名と原文 | 日付の無い記述は「日付不明」として末尾に置く |
| 金額の根拠の箇所 | 見積の内訳のどの行が変更に当たるか、前提条件 | 内訳に該当の行が無ければ「内訳に記載なし」 |
| 書面の状況 | 変更の指示書・合意書の日付、記録にある着手の日 | 着手の日の記録が無ければ「着手日の記録なし」 |
| 記録の無い事項・食い違い | 経緯の中で根拠の無い事項、記録どうしで日付や内容が違う箇所 | すべて一覧に出し、どちらが正しいかは書かない |
工期への影響は、記録に書かれた記述だけを拾わせます。 「工程表の第5版で内装の完了が1週間後ろへ」といった記述があれば原文を写し、無ければ「工期への影響の記録なし」とします。 何日延びるかを、AIに見積もらせてはいけません。工期の変更は請負代金と並ぶ協議の柱で、契約書の変更の条項にも算定の方法が書かれていることがあります。
経緯は「指示」と「検討」を分けて書かせます。 議事録の「検討する」「持ち帰り」は指示ではありません。指示とみなすのは、変更を行うよう求める記述だけで、検討は時系列には載せても、区分を分けます。第3章の(b)の取り違えは、ここで防ぎます。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 金額の計算・合計・増減の算出 | 計算は見積の仕組みと人が行う。AIの文章の数字は根拠にしない |
| 記録の無い指示の補い | 記憶で埋めた経緯は協議の根拠にならない |
| 契約の変更に当たるかの判断 | 契約上の扱いは工事営業と上長、必要に応じて法務が決める |
| 建設業法の違反かどうかの判断 | 書面の状況の事実を並べるまで。判断は人が行う |
| 発注者・設計者の責任の評価 | 協議資料に評価の言葉を残さない |
1行目がいちばん起きやすい失敗です。 内訳の金額を足して「追加の金額は合計で〇〇円」と書く。計算が合っていても、その数字は見積の版と対応していません。 金額は内訳の行を指すだけにさせ、合計は見積の仕組みが出したものを人が写します。
指示内容を固定する
あなたは建設会社の工事営業で、追加・変更工事の変更契約の協議資料を作る担当です。
このノートブックの参照だけを使い、変更番号 {CO番号} について次の4つをまとめてください。
【1. 経緯の時系列】
次の列の表にしてください。日付の古い順に並べます。
日付|区分|指示した人(会社・名前)|内容|根拠のファイル名|根拠の原文
- 区分は「指示」「検討」「回答」「見積の提出」「合意」のいずれかです。
- 「指示」は、変更を行うよう求める記述に限ります。
議事録の「検討する」「持ち帰り」「方向性を確認」は「検討」です。
- 根拠の原文は、根拠にした文を原文のまま短く写してください。
- 日付が書かれていない記述は、表の末尾に「日付不明」としてまとめます。
【2. 金額の根拠の箇所】
見積の内訳の最新の版から、この変更に当たる行の項目名と行番号を挙げてください。
前提条件の記述があれば原文を写してください。
金額の計算・合計・増減の算出はしないでください。
工期への影響は、記録に書かれた記述の原文だけを写してください。
記述が無ければ「工期への影響の記録なし」と書き、日数を見積もらないでください。
【3. 書面の状況】
変更の指示書・合意書・注文書の変更の書面について、日付と書面の名前を挙げ、
記録にある着手の日(工事担当のメモ・議事録・メールに書かれたもの)を並べてください。
書面の日付と着手の日の前後について、評価や判断は書かないでください。
【4. 記録の無い事項・食い違い】
- 経緯の中で、根拠のファイルが無い事項
- 記録どうしで日付・内容・数量が食い違う箇所(両方のファイル名と原文)
を一覧にしてください。どちらが正しいかは書かないでください。
【厳守事項】
- 参照に書かれていないことを、推測や一般的な進め方で補わないでください。
- 旧版の見積・指示書は経緯の材料にだけ使い、金額の根拠には最新の版だけを使ってください。
- 契約の変更に当たるか、法令に違反するか、誰に責任があるかは書かないでください。
- 人の名前は、記録に書かれたとおりに写してください。
「指示」の定義を指示の中で言い切るのが、この指示の要です。 何も言わないと、議事録の「検討する」も「指示」として時系列に並びます。協議の席では、検討の段階を指示の日付として示すと、そこから先の話が崩れます。
書面の状況で「前後について判断を書かない」と言うのは、判断を人に残すためです。 日付を並べれば、着手が先か書面が先かは誰でも分かります。AIに「違反のおそれ」と書かせると、その文言が社内の資料に残ります。
出力形式を固定する
ノートブックの答えは、4つの節を持つ決まった形で受け取ります。 後段は協議資料のひな形に人が移すので、節と列の並びを固定した表にします。
【変更番号 CO-012 3階テナント内装変更】
1. 経緯の時系列
日付|区分|指示した人|内容|根拠のファイル名|根拠の原文
2026-08-21|検討|設計事務所 田中|3階の間仕切りの位置の変更を検討|定例議事録_第18回.pdf|3F間仕切り位置、テナント要望により変更を検討する
2026-09-04|指示|設計事務所 田中|変更図面A-312(第2版)のとおり施工|20260904_田中_3F変更図.pdf|添付の図面A-312 rev.2 にて施工をお願いします
2026-09-10|見積の提出|当社 工事営業 佐藤|変更見積(第1版)を提出|20260910_佐藤_変更見積送付.pdf|変更見積書(第1版)をお送りします
日付不明|指示|発注者 鈴木|照明器具の追加|工事担当メモ_0912.docx|施主鈴木様より照明追加の口頭指示
2. 金額の根拠の箇所
変更見積_第2版_20260925.xlsx 行12〜行31(間仕切り・内装・電気)/前提条件:夜間作業を含まない
工期への影響:工程表_第5版.pdf「3F内装完了 10/10→10/17」
3. 書面の状況
変更指示書:2026-09-04(メールでの図面送付) 変更合意書:記録なし
着手の日:2026-09-15(工事担当メモ_0915.docx)
4. 記録の無い事項・食い違い
- 照明器具の追加:指示の日付と書面の記録が無い
- 間仕切りの数量:見積第1版は12m、議事録第19回は15m
この形にする理由は3つあります。
1つ目は、協議資料の経緯の節にそのまま移せることです。 日付・指示した人・内容の列は、ひな形の経緯の表と同じ並びにしてあります。根拠の列は協議資料には載せず、手元の控えに残します。
2つ目は、「日付不明」と「記録なし」が下書きの段階で見えることです。 例の4行目のような口頭の指示は、協議の前に発注者へメールで確かめておくべき事項です。下書きの段階で見えれば、協議の前に手当てできます。
3つ目は、書面の状況を一覧にできることです。 月に一度、全部の変更の第3節だけを集めれば、着手しているのに合意書の無い変更の一覧になります。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| SharePoint(変更ごとのフォルダ) | ノートブックの参照 | メール・議事録・指示書・見積の内訳を読む |
| Outlook | 工事担当の操作 | スレッドの要約で見当を付け、メールを PDF にしてフォルダへ |
| Teams(現場のチャネル) | 書き込み | 協議の日程と、資料がそろったことを知らせる |
| 協議資料のひな形 | 工事営業の転記 | 経緯・金額の根拠・書面の状況を移す |
| 原価管理のシステム | 連携しない | 変更の金額は従来どおり見積の仕組みと原価管理で扱う |
原価管理のシステムとはつなぎません。 協議資料に載せる金額は、見積の仕組みが出したものを人が写します。AIの答えから金額が業務のシステムに入る経路を、最初から作りません。
発注者への送付も人が行います。 協議資料は社内の確認を経てから出すもので、下書きのまま外に出すことはありません。
人が確認する
確認は、工事担当と工事営業の2段で行います。
- 工事担当が時系列を見る … 指示を受けた本人として、日付・指示した人・内容が合っているかを確かめます。「検討」と「指示」の区分は、ここで必ず見ます
- 工事担当が記録の無い事項を補う … 自分の記憶と手元のメモで補った行には、「工事担当の記憶による」と書きます
- 工事営業が金額の根拠を見る … 示された内訳の行が最新の版か、前提条件が協議で示すものと合っているかを確かめます
- 工事営業が書面の状況を見る … 着手の日より後の書面しか無い変更は、上長に先に知らせます
- 上長が協議資料を見る … 発注者との協議に出してよいかを決めます
1番目を工事担当に頼むのは、経緯を知っているのがその人だからです。 工事営業が下書きだけを見て確かめると、もっともらしい時系列を、そのまま信じてしまいます。
目標は、1件45分です。 工事担当の確認と補いに20分、工事営業の金額と書面の確認、協議資料への移しに25分を見込みます。時系列の行の半分以上を直す変更が続くなら、 フォルダに入れるメールの選び方か、議事録の写し方を見直します。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| メールが本文だけで日時・差出人が無い | Outlook から PDF で保存し直す。保存し直せないものは根拠に使わない |
| 図面の画像しか無い | 図面番号・版・日付の一覧を作って入れる |
| 口頭の指示しか無い | 工事担当のメモを入れ、協議の前に発注者へメールで内容を確かめる |
| 記録どうしで数量や日付が違う | 両方を並べて人が確かめる。AIにどちらかを選ばせない |
| 別の変更の話が混ざる | 該当の議事録の写しの範囲を見直し、指示に変更番号を強めて出し直す |
| 見積の版が複数あり、根拠の版が違う | 最新の版のファイル名を指示に書いて出し直す |
| 1つの指示に複数の変更が含まれる | 変更番号を分け、それぞれのフォルダに同じ記録を入れる |
| 発注者・設計者が社外のチャットで指示してくる | 画面の写しではなく、内容を工事担当がメモにして日時を書く |
| 協議の途中で指示が取り消される | 取り消しのメールも入れ、時系列に「回答」として残す。消さない |
| 時系列の行数が多すぎて確かめきれない | 日程の調整だけのメールを外して出し直す。区分ごとに分けて出させる |
上から3行目が、協議でいちばん問題になります。 口頭の指示は記録が無いので、AIには「記録なし」としか出せません。記録なしの一覧が出たこと自体が、協議の前に確かめるべきことの一覧です。
記録を残す
- 変更ごとのフォルダ(メールの PDF、議事録の写し、指示書、見積の内訳の全版、工事担当のメモ)
- Copilot が返した下書きの全文(変更ごとに、協議の日付を付けて保存)
- 工事担当が補った行と、補った人 … 「工事担当の記憶による」と書いた行の一覧
- 協議資料の最終版と、上長の確認の日付
- 協議の結果(合意・持ち越し・不調)と、変更の合意書の日付
3つ目を残すのは、協議の後で経緯を問われたときに、どこまでが記録でどこからが記憶かを示すためです。 竣工の後の精算で、記憶で補った行がどれかが分からなくなると、協議資料そのものの信用が下がります。
Copilot とのやり取りも、利用履歴として保存されます。 公式のページでは、管理者が Microsoft Purview で保持のポリシーを設定できるとされています。ノートブックの削除は元に戻せないとも書かれているので、下書きは協議資料の控えとしてフォルダに保存し、そちらを正本にします。
04実装レベルの3段階
本記事の想定は半自動化です。 1件120分が45分になるのはこの段階で、①の探す作業はフォルダの運用で、②の時系列はノートブックで、ほぼなくなるためです。 本格構成の要は、メールの件名に変更番号を入れてもらうことです。 件名に「CO-012」があれば、Power Automate などのワークフローで PDF にしてフォルダに入れる仕組みを組めます。発注者・設計者に件名の付け方をお願いできるかが、技術より先の条件です。
05工数削減シミュレーション
導入後 40件 × 45分 ÷ 60 = 30 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- オフィス・工場・商業施設などの民間の建築工事を元請として請け負い、発注者や設計者からの追加・変更の依頼が工事の途中で毎月何十件も出る建設会社。変更の経緯がメール・定例打合せの議事録・現場での口頭の指示に散らばり、変更契約の協議や精算のときに経緯を組み立て直すのに時間がかかっている場合。Microsoft 365 を使っており、現場ごとのメールと書類を SharePoint にまとめられる場合。
- 公共工事が中心で、発注者の定めた設計変更の手続きと様式に沿って書類が整っている場合。変更の件数が工事あたり数件で、手で経緯をまとめても負担にならない場合。現場のやり取りが紙とFAXと電話で、電子の記録がほとんど残っていない場合。なお、変更の金額の妥当性、発注者との交渉の方針、契約の変更として扱うかどうかの判断は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 竣工した現場から、協議で揉めた変更を3件選ぶ
- その3件について、関係するメールを PDF にし、議事録と見積の内訳を1つのフォルダに集める
- Copilot Notebooks で1件ずつノートブックを作り、第7章の指示を送る
- 出てきた時系列を、当時の協議資料と、当時の担当者の記憶と突き合わせる
ノートブックを使う前に、Outlook のスレッドの要約だけで試すこともできます。 変更に関係するスレッドで「Copilot による要約」を押し、番号付きの引用から元のメールに移れるかを見ます。スレッドをまたいだ時系列は作れませんが、どのメールが根拠になるかの見当を付けるには足ります。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時の協議資料と同じ経緯が、根拠つきで出た | 半自動化に進む |
| 「検討」が「指示」として並んだ | 指示の区分の定義を強めれば直る。構成は有効 |
| 当時は気づかなかった食い違いが出た | 当時の協議の弱点かもしれない。 原文を確かめる |
| 記録なしばかり出る | 記録の集め方が先。 AIの問題ではない |
3行目が出たら、それが一番の収穫です。 揉めた変更ほど、記録どうしの食い違いを、当時は誰も並べて見ていなかったということがあります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 「検討」が「指示」として並ぶ | 指示の定義を指示の中で言い切り、工事担当が区分を必ず確かめる |
| 記録の無い指示を補って書く | 補いを禁じ、記録なしの一覧に出させる。補うのは工事担当 |
| 金額を足して合計を書く | 計算を禁じ、内訳の行を指すだけにさせる |
| 旧版の見積が金額の根拠になる | 最新の版のファイル名を指示に書く。旧版は名前で分ける |
| 別の変更の話が混ざる | 議事録は変更に触れた回だけ写す。変更番号を議事録に書く |
| メールの日時と差出人が根拠に出ない | 本文の貼り付けではなく、Outlook から PDF で保存する |
| 図面が参照に入らない | 図面番号・版・日付の一覧を作って入れる |
| フォルダへの保存が続かない | 変更番号を採った日に作る運用にし、月次の一覧で空のフォルダを拾う |
| 「違反のおそれ」とAIに書かせる | 書面の状況は日付を並べるまで。判断は人が行う |
上の2行が、協議資料としての信用を決めます。 時系列の1行が誤っていると、協議の相手は残りの行も疑います。 区分の確認と記録なしの扱いは、工事担当の確認から外さないでください。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 発注者・設計者とのメール、議事録、図面の一覧、見積の内訳(単価を含む)、当初契約書の条項、担当者の名前です。単価と契約の条件は、発注者にとっても自社にとっても機密です。
- 現場のサイトの権限を絞る … 公式のページでは、Microsoft Copilot はユーザーが少なくとも閲覧の権限を持つデータだけを示すとされています。変更ごとのフォルダは、その現場の担当と工事営業だけが見られるようにします
- 学習と保存を分けて理解する … 公式のページでは、プロンプト、応答、Microsoft Graph を通じてアクセスしたデータは基盤のモデルの学習に使われないとされています。やり取りは保存され、保持の期間は Purview のポリシーで決めます
- Web検索を止める前提にする … Word などのアプリで見積や契約書を開いたまま Copilot に指示すると、文書の内容が Bing への検索語の材料になりうり、その検索語には DPA が適用されないとされています。管理者が「Allow web search in Copilot」のポリシーでWeb検索を止めます
- 法令の判断をAIに書かせない … 建設業法第19条第2項は、請負契約の内容で記載事項に当たるものを変更するときに、変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付することを求めています。この構成が出すのは日付の事実までで、違反に当たるかは人と法務が判断します
- 相手の責任を評価する言葉を残さない … 協議資料の下書きは、社内で回覧され、場合によっては争いの資料にもなります。「設計者の指示の遅れ」のような評価は、人が必要と判断したときにだけ書きます
誤りが起きた場合のリスクは、誤った日付や指示した人を協議の場で示すことと、記録の無い指示を記録があるかのように示すことの2つです。 どちらも発注者との信頼に直結します。根拠の原文を写させ、記録なしを一覧に出させる設計は、この2つを防ぐためのものです。
10まず何から始めるか
1週目:変更番号とフォルダの決まりを作る
変更番号の採り方(現場の番号+連番)と、変更ごとのフォルダの作り方を決めます。メールを PDF にして入れる手順を、工事担当向けに1枚にまとめます。 あわせて、協議資料の書き方の決まりのファイルを作ります。
2週目:過去の変更3件で試す
竣工した現場の、協議で揉めた変更を3件選び、記録を集めてノートブックで時系列を出させます。当時の協議資料と突き合わせ、「検討」が「指示」に化けていないか、記録の無い指示を補っていないかを最優先で見ます。
3週目:1つの現場で運用を始める
工事の中盤にある現場を1つ選び、新しく出た変更から、変更番号を採った日にフォルダを作る運用を始めます。
4週目:最初の協議で使う
その現場の次の変更契約の協議で、ノートブックの下書きから協議資料を作ります。工事担当が補った行を記録し始めます。
2か月目: 並行する現場のうち半分に広げ、書面の状況を月次で一覧にします。3か月目以降: 1件あたりの時間を実測し、記録なしの多い変更の型を見て、口頭の指示をメールで確かめる習慣を現場に根づかせます。協議の席で指示の日付を根拠つきで答えられるようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 第19条第1項第6号が設計変更等の申出があった場合の工期・請負代金の変更と算定方法の定めを記載事項に挙げること。第2項が記載事項に当たるものを変更するときに書面に記載し署名又は記名押印をして相互に交付することを求めること | e-Gov 法令API: 建設業法 | 2026-10-15 |
| 追加工事等の着工前に書面による契約変更を行うことが原則であること。着工後・工事の終了後の書面での変更、書面による変更をしないことが第19条第2項の違反となる事例に挙げられていること(第8版、令和8年1月改訂) | 国土交通省: 発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(PDF) | 2026-10-15 |
| 参照の候補を Files・Meetings・Emails・Sites で絞り込めること。ライセンスの条件 | Microsoft サポート: Get started with Copilot Notebooks | 2026-10-15 |
| 根拠に使われる参照が最初の300まで(Copilot Chat は50まで)であること。対応形式 | Microsoft サポート: Add reference files to your Copilot Notebooks | 2026-10-15 |
| 追加した参照だけを使い、OneDrive の全体・メール・Teams のチャット・Webにはアクセスしないこと。確実に含めたいファイルは直接追加すること。削除が元に戻せないこと | Microsoft サポート: How Copilot Notebooks works | 2026-10-15 |
| スレッドの上部の要約で要点をまとめ、番号付きの引用から該当のメールに移れること | Microsoft サポート: Summarize an email thread with Copilot in Outlook | 2026-10-15 |
| 閲覧の権限があるデータだけを示すこと。プロンプト・応答等が学習に使われないこと。Purview で保持を設定できること | Microsoft Learn: Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot | 2026-10-15 |
| 開いている文書の内容が Bing への検索語の材料になりうること。検索語に DPA が適用されないこと。ポリシーで止められること | Microsoft Learn: Data, privacy, and security for web search | 2026-10-15 |
変更契約として扱うか、建設業法上の扱いをどうするかは、自社の工事営業・法務と、必要に応じて弁護士が判断してください。 本記事は e-Gov の条文と国土交通省のガイドラインで確認できた範囲だけを根拠にしています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
自社の業務に使えるAI活用候補を整理します
このユースケース(UC-1599)についてのご相談はこちらから。
