Media > AI活用ユースケース > 知財 > 技術者の打ち合わせメモから発明届出書の下書きを作る

技術者の打ち合わせメモから発明届出書の下書きを作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

打ち合わせメモと実験データの説明を入力に、社内の発明届出書の様式に沿った下書きを作ります。技術者の作業は、白紙の様式を最初から埋めることから、下書きを直すことに変わります。

サマリー
利用ツール
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
対象業界
IT・SaaS/建設/製造
対象部門
知財/研究開発
対象業務
書類作成/要約
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
生成
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
最小構成
費用感
既存ツールのみ(小)
人間の確認
必須
現在工数
30h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
67%
年間削減
240h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 技術者が「これは発明かもしれない」と気づく
  2. 社内ポータルから発明届出書の様式(Word)をダウンロードする
  3. 発明の名称を考える
  4. 従来技術と、その問題点を書く
  5. 解決手段を、図を交えて書く
  6. 効果を書く。可能なら実験データで示す
  7. 実施例を1つ以上書く
  8. 知財部へ提出する
  9. 知財部が読み、不足があれば技術者に差し戻す
  10. 技術者が追記して再提出する
  11. 知財部が発明審査会にかけ、出願の可否を決める
導入後(After)
  1. 技術者が、発明を思いついた打ち合わせのメモ、ホワイトボードの写真の説明、実験データの説明を手元に用意する
  2. 知財部が用意した生成AIのプロジェクト(発明届出書の様式、記入例、過去の届出書、社内の用語集を入れてある)を開く
  3. 自動メモを貼り付けると、各欄の下書きが出る
  4. 自動記入が薄い欄について「ここは何を書くべきか」の問いかけが出る
  5. 技術者が下書きを読み、事実と違うところを直す
  6. 技術者が、AIが書けない部分(実験の実数値、図面番号、共同発明者)を埋める
  7. 公開予定の確認項目に答える
  8. 知財部へ提出する
  9. 知財部が読み、審査会にかける
各工程の詳しい説明を読む
  1. 技術者が「これは発明かもしれない」と気づく
  2. 社内ポータルから発明届出書の様式(Word)をダウンロードする
  3. 発明の名称を考える
  4. 従来技術と、その問題点を書く
  5. 解決手段を、図を交えて書く
  6. 効果を書く。可能なら実験データで示す
  7. 実施例を1つ以上書く
  8. 知財部へ提出する
  9. 知財部が読み、不足があれば技術者に差し戻す
  10. 技術者が追記して再提出する
  11. 知財部が発明審査会にかけ、出願の可否を決める

問題は4つあります。

(a)白紙から書くのが重い。 技術者にとって、発明届出書は年に数回しか書かない文書です。「従来技術の問題点」の欄に何をどこまで書けばよいかが毎回分かりません。この重さが、そもそも提出をためらわせます。 発明が生まれても届出されなければ、知財部門には存在しないのと同じです。

(b)差し戻しが多い。 提出された届出書の多くは、解決手段は詳しいのに従来技術の記述が薄い、効果が定性的で数値が無い、といった形で不足します。知財部が読んで差し戻し、技術者が追記する往復が1〜2回起きます。

(c)書き方が人によって違う。 ベテランの技術者は構成を分かっていますが、初めて書く技術者は、設計書の抜粋を貼り付けただけの文書を出してきます。どちらも発明としては同じ価値がありますが、審査会で読まれ方が変わります。

(d)公開予定の確認が漏れる。 学会発表、展示会での出展、カタログへの掲載、顧客への提案資料での開示。これらは新規性に影響します。届出書に記入欄はあっても、技術者が「まだ発表していない」と思い込んで記入しないことがあります。

  1. 技術者が、発明を思いついた打ち合わせのメモ、ホワイトボードの写真の説明、実験データの説明を手元に用意する
  2. 知財部が用意した生成AIのプロジェクト(発明届出書の様式、記入例、過去の届出書、社内の用語集を入れてある)を開く
  3. 【自動】 メモを貼り付けると、各欄の下書きが出る
  4. 【自動】 記入が薄い欄について「ここは何を書くべきか」の問いかけが出る
  5. 【人】 技術者が下書きを読み、事実と違うところを直す
  6. 【人】 技術者が、AIが書けない部分(実験の実数値、図面番号、共同発明者)を埋める
  7. 【人】 公開予定の確認項目に答える
  8. 知財部へ提出する
  9. 知財部が読み、審査会にかける

自動化されるのは「様式に沿って文章を組み立てる」ことだけです。発明の内容を作るのは技術者です。 AIは、技術者が話した内容を届出書の形に整えているにすぎません。

差し戻しが減ることが、この構成の主な効果です。 下書きの段階で「従来技術の欄が薄い」と指摘されるため、提出前に埋まります。

02今回想定するシステム構成

構成図
技術者の手元
   │
   ├─ 打ち合わせメモ(テキスト)
   ├─ ホワイトボードや試作品の写真
   └─ 実験データの説明(数値は技術者が後で入れる)
   │
   ▼
生成AIのプロジェクト(知財部が作成・管理)
   │   プロジェクトの知識として入れておくもの
   │   ─ 発明届出書の様式
   │   ─ 記入例(良い例を3件)
   │   ─ 過去の届出書(社内で共有してよいもの)
   │   ─ 社内の用語集・製品名の表記ルール
   │   ─ 記入時の注意(公開予定の確認、数値の扱い)
   │
   ▼
発明届出書の下書き(欄ごと)
   │
   ▼【人が確認・加筆】技術者が事実を直し、数値と図面番号を入れる
   │
   ▼
知財部へ提出 → 発明審査会
役割想定する製品代替候補
生成AIClaude(プロジェクト機能)ChatGPT、Gemini、Microsoft Copilot
様式・記入例の保管プロジェクトの知識(ファイル添付)社内ポータル、SharePoint
届出の受付既存の発明管理台帳各社の知財管理システム

Claude のプロジェクト機能は、それ自体に知識となるファイルを添付でき、そのプロジェクト内のすべてのチャットに適用される指示を設定できます。 無料プランを含むすべての利用者が使えます(無料プランは5つまで)。有料プラン(Pro / Max / Team / Enterprise)では、知識量を増やすための検索拡張生成(RAG)と、チームでの共有機能が使えます。

知財部が1つプロジェクトを作り、技術者に共有する形が中心です。 技術者ひとりひとりに様式と記入例を渡して回る必要がなくなります。記入例を差し替えれば、全員の下書きの質が同時に変わります。

開発は不要です。 この構成には、APIもワークフローツールも出てきません。★1としているのはこのためです。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

技術者が「これは発明かもしれない」と思った時点が起点です。システム上のトリガーはありません。

ただし、起点を人の気づきだけに任せると届出漏れが起きます。運用で2つの入口を足してください。

  • 設計レビューや試作報告の直後。 「今日の議論で新しいところはあったか」を会議の最後に聞き、あれば当日中にメモをプロジェクトに投げる
  • 学会発表や展示会の申し込み時。 発表内容が決まった時点で、発明届出の要否を確認する。これは新規性の観点から必須です
Step2

入力データを集める

データ中身取得元
打ち合わせメモ何が課題で、どう解決したかの会話の記録技術者の手元
従来のやり方の説明これまでどうしていたか、なぜ困っていたか技術者の記憶・過去資料
試作品・装置の写真構造が分かる写真技術者の手元
実験データの説明何を測って、どう変わったか(数値は後で技術者が入れる)実験記録
発明届出書の様式会社の様式社内ポータル
記入例過去の良い届出書知財部
用語集社内の製品名・部品名の正式表記知財部
Step3

データの取得方法を決める

打ち合わせメモ: 技術者が話した内容をそのまま貼り付けます。整った文章である必要はありません。むしろ、整えようとして時間をかけるのが、今まさに削ろうとしている作業です。 箇条書き、言い切らない文、順序がばらばらでも構いません。

写真: 生成AIに画像として渡せます。ただし、写真から寸法や材質は読み取れません。 「この部品は焼結金属です」といった説明は技術者が文章で足します。

様式と記入例: 知財部がプロジェクトの知識として一度入れておきます。技術者が毎回添付する必要はありません。

実験データ: 説明だけを渡し、実数値は技術者が後で入れる運用にします。 理由は後述します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

技術者が特別な前処理をする必要はありませんが、知財部がプロジェクトを作るときの準備が実質的な前処理です。

  1. 様式の欄を文章で説明する … 「従来技術の問題点」の欄に何を書くべきかを、様式のファイルとは別に文章で書きます。様式のWordファイルだけを入れても、欄名しか伝わりません
  2. 記入例を3件選ぶ … 良い届出書を3件選びます。1件では型が固定されすぎ、10件では方向が散ります。 機械系、電気系、ソフトウェア系のように分野の違うものを混ぜます
  3. 社外に出せない情報を除く … 記入例に顧客名、仕入先名、未公開の製品名が入っていれば、置き換えるか伏せます
  4. 用語集を作る … 製品名の正式表記、部品の社内呼称と正式名称の対応。これが無いと、下書きに社内の略称がそのまま出ます
  5. 注意事項を書く … 数値を推測させない、公開予定を必ず確認する、といった指示をプロジェクト指示に入れます
Step5

AIに処理させる

処理内容
発明の名称の候補出し解決手段を表す名称を3案出す。技術者が選ぶ
従来技術の整理メモから「これまでどうしていたか」を抜き出し、問題点として整理する
解決手段の記述何をどう変えたのかを、様式の欄の粒度で書く
効果の整理何がどう良くなるのかを書く。数値は書かせない
実施例の骨子具体的な構成の説明の骨組みを作る
不足の指摘様式の欄のうち、メモからは書けなかった欄を挙げ、何を足すべきかを問う
公開予定の確認学会・展示会・カタログ・顧客提案での開示予定を必ず聞く

「不足の指摘」と「公開予定の確認」が、この構成で一番効く部分です。 下書きを作ることより、書けていない欄を技術者に気づかせることのほうが、差し戻しを減らします。

Step6

指示内容を固定する

プロジェクトの指示(すべてのチャットに適用される)に、次を設定します。

あなたは知財部の担当者として、技術者が発明届出書を書くのを手伝います。
技術者が話した内容から、添付した様式の各欄の下書きを作ってください。

【厳守事項】
- 実験値、寸法、材質、型番、日付を推測して書かないでください。
  技術者が言っていない数値は、必ず【要記入:測定値】のように
  記入欄として残してください。
- 効果の欄に「大幅に向上」「飛躍的に」といった程度の表現を
  使わないでください。何がどう変わるのかを事実として書き、
  程度は技術者の数値に委ねてください。
- 従来技術として、技術者が話していない他社製品や特許を
  挙げないでください。先行技術調査は知財部が別に行います。
- メモから書けなかった欄は、空欄にしたうえで
  「この欄には何が必要か」を質問として最後にまとめてください。
- 最後に必ず次を確認してください。
  「この内容を、学会・展示会・カタログ・顧客への提案資料などで
  すでに公開しましたか。または公開する予定はありますか。
  ある場合は、時期と相手を教えてください」

【様式】添付ファイルのとおり
【記入例】添付ファイルのとおり
【用語集】添付ファイルのとおり

「実験値を推測して書かない」の指示が最も重要です。 生成AIは、文脈から「20%向上」のようなもっともらしい数値を書いてしまうことがあります。発明届出書の数値は、後の出願書類と審査会の判断の根拠になります。技術者が下書きをそのまま提出すると、誰も測っていない数値が社内文書に載ります。 記入欄として残す形にして、技術者が埋めるまで空欄と分かるようにします。

Step7

出力形式を固定する

自由文で構いませんが、欄の見出しを様式と一致させます。

【発明の名称】(3案)
1. 
2. 
3. 

【技術分野】

【従来の技術】

【従来技術の問題点】

【課題を解決するための手段】

【効果】
※ 数値は【要記入】としています

【実施例】

【図面の説明】
※ 図番号は技術者が入れてください

────────────────
【技術者に確認したいこと】
- 
- 

【公開の状況について】
この内容をすでに公開しましたか。または公開予定はありますか。

最後の2ブロックを本文と線で区切って出させます。下書きをWordに貼り付けるとき、ここを消し忘れないためです。

Step8

システムへ連携する

システム連携はありません。 技術者が下書きをコピーして、Wordの様式に貼り付け、加筆して提出します。

連携を作りたくなりますが、この構成では作らないほうがよいと考えます。理由は、発明届出書は貼り付けて終わる文書ではなく、技術者が直しながら考える文書だからです。自動で提出まで流すと、直す工程が省かれます。

提出後は既存の発明管理台帳に入ります。ここは今までどおりです。

Step9

人が確認する

下書きは全件、技術者本人が読んで直します。知財部も従来どおり全件読みます。確認の工程は一切減らしません。

減っているのは、白紙から文章を組み立てる時間だけです。

技術者が確認すべき点を、下書きの末尾に定型で出させます。

  • 数値の欄が【要記入】のまま残っていないか
  • 従来技術の説明が、自社の実際のやり方と合っているか
  • 解決手段の記述に、事実でない一般化が混ざっていないか
  • 共同発明者の記載が漏れていないか

共同発明者は、AIには分かりません。 誰が発明に寄与したかは技術者と知財部が判断する事項です。職務発明の対価に関わるため、ここを曖昧にしないでください。

Step10

例外に対処する

起きること対応
AIが実験値を推測して書くプロジェクト指示で禁止し、【要記入】の形で残させる。出た場合は指示を強める
メモが短すぎて下書きが作れない下書きを無理に作らせず、質問だけを返させる。「何が課題でしたか」から始める
他社の特許や製品を従来技術として挙げる禁止する。先行技術調査は知財部が別途行う。技術者が書いた「他社もやっている」は事実確認が必要
すでに公開済みだと判明したただちに知財部へ連絡する。 新規性喪失の例外規定(特許法第30条)の適用を検討する必要がある
社内の略称がそのまま下書きに出る用語集をプロジェクトの知識に入れる。出るたびに用語集へ追記する
ソフトウェアの発明で様式が合わない分野別の記入例を足す。機械系の記入例だけでは、ソフトウェア系の下書きが構造の説明に寄る
技術者が下書きをそのまま提出する知財部が差し戻す。【要記入】が残っている届出は受け付けない運用にする
発明かどうか自体が分からない下書きを作らせるのではなく、「これは従来と何が違うか」を整理させる使い方をする
Step11

記録を残す

技術者が生成AIに入力した内容は、原則として社内に残しません。 プロジェクトのチャット履歴は、発明の未公開情報を含みます。

残すのは次です。

  • 提出された発明届出書(従来どおり発明管理台帳へ)
  • 知財部が差し戻した件数と理由(構成を入れる前後で比較する)
  • プロジェクトの知識として入れた様式・記入例・用語集の版

差し戻しの件数と理由は必ず記録してください。 この構成の効果は「下書きの質」ではなく「差し戻しが減ったか」で測ります。差し戻し理由の上位が変わらないなら、記入例か指示を直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:知財部が作ったプロジェクトに技術者がメモを貼り、下書きを得る / 文章の組み立て
半自動化:上記+打ち合わせの録音を文字起こしして渡す。発明管理台帳への登録を様式から自動で行う / 入力の準備と登録
本格構成:上記+提出後に社内の先行技術(過去の届出書・出願済み案件)と照合し、重複を知財部に提示する / 重複の一次確認

最小構成で止めることを勧めます。 この業務は月20件で、技術者ひとりあたりでは年に数件です。自動化の仕組みを作っても、使う頻度が低く保守されません。プロジェクトの記入例と用語集を手入れするほうが、効果が続きます。 半自動化に進む価値があるのは、打ち合わせの録音からの文字起こしです。技術者がメモを取る手間そのものが減ります。ただし、未公開の発明を含む録音の扱いには、社内の情報管理規程の確認が要ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
20 件
1件あたり現在時間
90 分
1件あたり導入後時間
30 分
現在  20件 × 90分 ÷ 60 = 30 時間/月
導入後 20件 × 30分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
20h
削減率
67%
年間削減時間
240h
年間金額換算(時間単価4,000円)
96万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 年100件以上の発明届出があり、社内に発明届出書の様式と過去の届出書が蓄積されていること。技術者が届出書の作成を負担に感じて提出をためらっている状態があること。外部の生成AIサービスについて、入力を学習に使わない契約を結べること。
向いていない
  1. 年10件未満で、知財担当が技術者に個別に聞き取って書いている場合。発明の内容を社外のサービスに入力することを社内規程が一律に禁じている場合。特許出願の明細書そのものを作らせたい場合(それは弁理士の業務であり、この構成の対象ではない)。

07最小構成で試す方法

  1. 知財部が、過去の発明届出書のうち良いものを3件選ぶ
  2. 社内の様式と、その3件を生成AIのプロジェクトに入れる
  3. 上の「プロジェクトの指示」を設定する
  4. 過去に提出された届出書を1件選び、その発明の打ち合わせメモに相当する情報だけをプロジェクトに渡す
  5. 出てきた下書きと、実際に提出された届出書を並べて読む

4番目が検証の肝です。 答えが分かっている発明で試すことで、「メモからここまで書ける」の水準が分かります。

判断の目安は次のとおりです。

下書きの状態判断
実際の届出書の7割程度が埋まる十分。技術者に配ってよい
半分程度しか埋まらない記入例を分野別に足す。または、技術者に渡すメモの取り方を変える
事実でない内容が混ざるプロジェクト指示の禁止事項を強める。それでも直らなければ、この使い方をやめる

この検証を知財部が3件やってから、技術者に配ってください。 品質の確認をしないまま配ると、【要記入】が埋まらないまま提出される届出書が増え、差し戻しがかえって増えます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが実験値を書いてしまうプロジェクト指示で禁止し、【要記入】で残させる。知財部は【要記入】が残る届出を受け付けない
効果の欄が「大幅に向上」で埋まる程度を表す語を禁止する。事実の記述だけを書かせ、程度は数値に委ねる
記入例に引きずられて内容が似る記入例を分野別に3件用意する。1件だけにしない
社内の略称がそのまま出る用語集をプロジェクトの知識に入れる
技術者が下書きをそのまま提出する【要記入】が残る届出を差し戻す運用にする。初回に運用説明を行う
公開済みの発明が届出される確認項目を下書きの末尾に必ず出させる。学会発表の申し込み時にも確認する運用を足す
共同発明者が漏れるAIに判断させない。届出書の様式に「この発明に寄与した人を全員書く」の注記を入れる
プロジェクトの知識が古くなる様式が変わったら差し替える。担当と更新頻度を決める
技術者が使わない配って終わりにしない。設計レビューの最後にメモを投げる運用を作る

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ:未公開の発明の内容。 出願前の技術情報であり、社内でも最も機微な情報のひとつです。

  1. 外部AIへの入力可否が最大の論点 … 未公開の発明を外部サービスに入力してよいかを、導入前に必ず社内で決めてください。 知財部門、法務、情報システムの3者で判断する事項です。入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選ぶのは前提条件であって、それだけで可とは限りません
  2. 新規性への影響 … 入力が第三者への開示に当たるかどうかは、契約と運用によります。この点は自社の弁理士・顧問弁護士に確認してください。 本記事で断定できる事項ではありません
  3. すでに公開してしまっていた場合 … 発明の新規性喪失の例外規定(特許法第30条)があります。適用を受けるには、出願と同時にその旨を記載した書面を提出し、出願から30日以内に要件を満たすことを証明する書面を提出する必要があります。平成30年改正により、例外期間は6か月から1年に延長されています。手続の期限が短いため、公開済みと分かった時点で知財部へ連絡してください
  4. アクセス権限 … プロジェクトを技術者全員に共有すると、そこに入れた過去の届出書も全員が読めます。記入例として入れる届出書は、社内で共有してよいものに限ってください
  5. チャット履歴 … 技術者が入力した発明の内容が、プロジェクトの履歴に残ります。プロジェクトの共有範囲と、履歴の保持について運用を決めてください
  6. 自動実行してよい範囲 … この構成に自動実行はありません。提出の判断も、共同発明者の判断も、人が行います

誤りが起きた場合のリスクは、推測された数値が社内文書に載ること、公開済みの発明が見過ごされて権利化できなくなることです。後者は取り返しがつきません。

10まず何から始めるか

1週目:社内で入力の可否を決める

技術的な検証より先に、これを済ませてください。 知財部門、法務、情報システムで「未公開の発明を、この生成AIサービスに入力してよいか」を決めます。条件付きで可(たとえば、出願方針が決まっていない段階のものに限る、数値と型番を除く)という結論もあり得ます。ここが通らなければ、以降は進めません。

2週目:知財部が記入例をそろえる

過去の届出書から、機械系・電気系・ソフトウェア系の良い例を1件ずつ選びます。顧客名や未公開の製品名を伏せます。様式の各欄に何を書くべきかを、文章で書き起こします。

3週目:知財部だけで3件試す

過去に提出された発明3件について、当時のメモに相当する情報だけを渡し、下書きを作らせます。実際の届出書と並べて読み、7割が埋まるかを見ます。埋まらない欄があれば、記入例か指示を直します。

4週目:技術者5名で試す

全員に配らず、5名から始めてください。 実際の発明で使ってもらい、記入時間と、知財部への提出後の差し戻し件数を記録します。この5名の結果で、配布範囲を広げるかを決めます。

2か月目以降: 差し戻しの理由を集計し、上位の理由に対応する記述を記入例と指示に足します。四半期に1回、記入例を見直す担当と時期を決めてください。 決めないと、様式が変わったときに誰も直しません。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-15/最終更新:2026-09-15
確認した内容情報源確認日
Claude のプロジェクト機能が、専用のチャット履歴と知識ベースを持つ作業空間であること。ファイルを知識として追加でき、プロジェクトごとに指示を設定できる。無料アカウントを含むすべての利用者が使え、無料は5件まで。有料プランでは検索拡張生成(RAG)による知識量の拡張と共有機能が使えるClaude Support: What are Projects2026-09-15
発明の新規性喪失の例外規定(特許法第30条)の適用を受けるには、出願と同時に適用を受けようとする旨を記載した書面を提出し、出願から30日以内に要件を満たすことを証明する書面を提出する必要があること特許庁: 発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について2026-09-15
平成30年改正により、発明の新規性喪失の例外期間が6か月から1年に延長されたこと特許庁: 発明の新規性喪失の例外期間が6か月から1年に延長されます2026-09-15

未公開の発明を外部の生成AIサービスに入力することが、新規性に影響するかどうかは、契約内容と運用によります。この記事では断定していません。 自社の弁理士・顧問弁護士に確認してください。発明届出書の様式は会社ごとに異なるため、欄の構成は自社のものに合わせてください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0067)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次