部品・原材料の規制適合の資料を読み取って、含有物質の台帳にする
仕入先から届く不使用証明書や成分表を入力に、物質名・CAS番号・含有量を読み取り、含有物質の台帳に登録できる形にします。担当者の作業は、資料を開いて転記することから、読み取り結果を確かめて承認することに変わります。
- 利用ツール
- AWS Textract/Azure AI/ChatGPT/Claude/Gemini/Google Document AI/Make/n8n/Power Automate
- 対象業界
- 医療/商社/建設/製造
- 対象部門
- 研究開発/購買
- 対象業務
- データ入力・転記/台帳・マスタ管理
- 主な課題
- 入力作業が多い/期限・対応漏れが起きる/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 読み取り(OCR)
- 主な効果
- 入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- ノーコード連携(中)
- 人間の確認
- 必須
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 新規採用または仕様変更の部品について、購買が仕入先に資料を依頼する
- 仕入先からメールで資料が届く(形式はばらばら)
- 担当者が資料を開き、対象物質の記載を探す
- 物質名・CAS番号・含有量・含有部位をExcelの台帳に転記する
- 規制の閾値と比べて、問題がないかを確認する
- 記載が不足していれば、仕入先に追加の資料を依頼する
- 資料の発行日・版数を記録し、原本をフォルダに保存する
- 顧客から調査依頼が来たら、台帳から該当部品を抜き出して回答する
- 仕入先から資料がメールで届く(様式は変えない)
- 自動添付ファイルを取り込み、資料の種別を判定する
- 自動chemSHERPA形式はそのまま取り込む(AIを使わない)
- 自動それ以外の資料から、物質名・CAS番号・含有量・含有部位を読み取る
- 自動物質名を、規制対象物質のマスタに名寄せする
- 自動部品番号を部品表と照合する
- 自動規制の閾値と比べて、確認が必要なものを印を付ける(計算で判定)
- 自動記載が不足している項目を洗い出し、督促文の下書きを作る
- 人担当者が読み取り結果を確認し、承認する
- 自動台帳に登録し、資料の発行日・版数・有効期限を記録する
- 自動規制対象物質のリストが更新されたら、台帳をさかのぼって照合する
各工程の詳しい説明を読む
- 新規採用または仕様変更の部品について、購買が仕入先に資料を依頼する
- 仕入先からメールで資料が届く(形式はばらばら)
- 担当者が資料を開き、対象物質の記載を探す
- 物質名・CAS番号・含有量・含有部位をExcelの台帳に転記する
- 規制の閾値と比べて、問題がないかを確認する
- 記載が不足していれば、仕入先に追加の資料を依頼する
- 資料の発行日・版数を記録し、原本をフォルダに保存する
- 顧客から調査依頼が来たら、台帳から該当部品を抜き出して回答する
問題は5つあります。
(a)資料の様式がばらばら。 chemSHERPA形式は取り込めますが、それ以外は人が読みます。同じ仕入先でも、部品によって様式が違うことがあります。
(b)物質名の書き方が一致しない。 「六価クロム」「Cr(VI)」「クロム(VI)化合物」「Hexavalent chromium」が混在します。CAS番号が書かれていない資料も多く、名寄せに時間がかかります。
(c)規制対象の物質リストが更新される。 REACH規則の高懸念物質(SVHC)の候補リストは、欧州化学品庁によって定期的に追加されます。追加されたときに、既存の12,000点をさかのぼって確認する必要があります。
(d)資料の有効期限と版数の管理ができていない。 3年前の証明書がそのまま台帳の根拠になっていることがあります。規制が変わっていれば、その証明は使えません。
(e)顧客の調査依頼に間に合わない。 台帳に載っていない部品があると、仕入先への問い合わせから始めることになり、2週間以上かかります。
- 仕入先から資料がメールで届く(様式は変えない)
- 【自動】 添付ファイルを取り込み、資料の種別を判定する
- 【自動】 chemSHERPA形式はそのまま取り込む(AIを使わない)
- 【自動】 それ以外の資料から、物質名・CAS番号・含有量・含有部位を読み取る
- 【自動】 物質名を、規制対象物質のマスタに名寄せする
- 【自動】 部品番号を部品表と照合する
- 【自動】 規制の閾値と比べて、確認が必要なものを印を付ける(計算で判定)
- 【自動】 記載が不足している項目を洗い出し、督促文の下書きを作る
- 【人】 担当者が読み取り結果を確認し、承認する
- 【自動】 台帳に登録し、資料の発行日・版数・有効期限を記録する
- 【自動】 規制対象物質のリストが更新されたら、台帳をさかのぼって照合する
自動化されるのは「読む」「転記する」「名寄せする」「照合する」「督促文を作る」の5つです。残るのは「読み取り結果が正しいかを判断する」です。
02今回想定するシステム構成
仕入先からのメール(資料の添付) │ ▼【トリガー】専用アドレスに届いたとき / 30分ごとの確認 n8n │ ├──▶ 資料の種別の判定 │ ├─ chemSHERPA形式 ──▶ そのまま取り込む(AIを使わない) │ └─ それ以外 ──┐ │ ▼ ├──▶ Azure AI Document Intelligence │ ├─ カスタム抽出モデル … 自社様式の不使用証明書 │ └─ prebuilt-layout / prebuilt-read … 仕入先様式・SDS │ ├──▶ LLM API ── 物質名の名寄せ + 記載の不足の指摘 + 督促文 │ ├──▶ 規制の閾値との比較(計算。AIを使わない) │ ▼ 確認画面(資料の画像と読み取り結果を左右に並べる)──【人が承認】 │ ├──▶ 含有物質台帳へ登録 └──▶ 仕入先へ督促(下書きを人が確認してから) │ ▼【トリガー】規制対象物質リストの更新時 台帳のさかのぼり照合 ── 影響する部品の一覧
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| ワークフロー | n8n | Make、Power Automate、個別開発 |
| OCR | Azure AI Document Intelligence(カスタム抽出+prebuilt-layout) | Google Document AI、AWS Textract |
| 生成AI | Claude API | OpenAI API、Gemini API |
| 保管 | SharePoint | Box、Google Drive |
| 台帳 | 含有化学物質管理システム | Excel、SharePoint リスト |
含有化学物質の管理に特化したシステムが多数あります。 chemSHERPAデータの取り込み、規制リストの自動更新、顧客への回答書の出力まで含めて提供されるものです。まずそれを検討してください。
自前で組む価値があるのは、chemSHERPA形式以外の資料が多く、そこの読み取りが手作業のまま残っている場合です。 多くの管理システムは chemSHERPA の取り込みには対応していますが、仕入先が独自様式のPDFで送ってきたものは、結局人が入力します。 この構成が埋めるのはそこです。
chemSHERPA について。 2015年から経済産業省が運用を始めた、サプライチェーンでの製品含有化学物質の情報伝達スキームです。対象となる規制には、化学物質審査規制法、米国TSCA、EUのELV指令・RoHS指令・POPs規則・REACH規則(SVHC候補リスト・認可対象物質リスト)、および IEC 62474 などの国際的な基準が含まれます。管理対象物質のリストは、欧州化学品庁によるSVHCの更新や IEC 62474 の改訂に応じて定期的に見直されます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
トリガーは3つです。
1つ目は、専用アドレスへの資料の着信です。仕入先には chemical@ のような専用アドレスへ送ってもらいます。
2つ目は、定期実行です。n8n の Schedule Trigger は、秒・分・時・日・週・月・cron式の7種類の間隔を設定できます。資料が未着の部品の督促リストを、週次で出します。
3つ目は、規制対象物質のリストが更新されたときです。SVHCの候補リストや chemSHERPA の管理対象物質リストが改訂されたら、台帳をさかのぼって照合します。 この処理が、この構成でもっとも価値のある部分です。
なお、セルフホストの n8n では既定のタイムゾーンが America/New_York です。環境変数またはワークフロー設定で日本時間にしてください。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| chemSHERPA形式の資料 | 規定のデータ形式 | 仕入先 |
| 不使用証明書 | 対象物質の不使用の宣言、部品番号、発行日、発行者 | 仕入先 |
| 成分表・材質証明書 | 材質、成分、含有率 | 仕入先 |
| SDS(安全データシート) | 化学品の成分、含有量、法規制情報 | 仕入先 |
| 規制対象物質マスタ | 物質名、CAS番号、別名・表記ゆれ、規制区分、閾値 | 自社で整備(要更新) |
| 部品表(BOM) | 部品番号、部品名、仕入先、使用製品 | 設計・生産管理 |
| 仕入先マスタ | 仕入先コード、名称、担当者、資料の提出状況 | 購買 |
| 過去の読み取り実績 | 「資料の記載 → 登録した物質」の対応(直近24か月) | 台帳 |
「規制対象物質マスタの別名・表記ゆれ」が、この構成の効き目を決めます。
1つの物質について、次を持ちます。
| 列 | 例 |
|---|---|
| 正式名称 | 六価クロム化合物 |
| CAS番号 | 18540-29-9 ほか |
| 別名 | Cr(VI)、Cr6+、クロム(VI)、Hexavalent chromium、六価クロム |
| 規制区分 | RoHS指令 制限物質 |
| 閾値 | 0.1 wt%(均質材料中) |
| 出典 | 規制の条文・附属書 |
別名を10〜20個持たせてください。 資料の書き方はばらばらで、CAS番号が書かれていないことも多くあります。
データの取得方法を決める
chemSHERPA形式: 規定のデータ形式なので、そのまま読み込みます。AIを使いません。 ここに時間をかけないでください。
それ以外の資料: 2段構えで読みます。
- 自社様式の不使用証明書 … 仕入先に自社様式で書いてもらっているものは、レイアウトが固定しています。カスタム抽出モデルを使います。同一様式5件から学習を始められます
- 仕入先様式・SDS … レイアウトが定まらないため、prebuilt-layout で表と見出しの構造を取り出し、その結果をLLMに渡して項目を抽出させます
SDSは表の構造が複雑です。 第3章(組成・成分情報)に成分表があり、第15章(適用法令)に規制情報がありますが、章立ての書き方が提供元によって違います。 prebuilt-layout の見出し情報を手がかりにします。
入力の要件を確認してください。 抽出する文字の高さは、1024×768の画像で12ピクセル以上が目安とされています。仕入先からスキャンしたPDFが届く場合、解像度が低いと読めません。
手書きの記載への対応: 証明書に手書きの追記があることがあります。Read モデルは、各テキスト行が手書きかどうかを分類し、確からしさとともに返します(styles の isHandwritten)。手書きと判定された箇所は、確認の対象として印を付けてください。
AIへ渡す前に整形する
- 資料の種別判定 … chemSHERPA形式/自社様式/仕入先様式/SDS/その他に分けます。ファイル名と拡張子である程度判定でき、残りをカスタム分類モデルに回します
- 部品番号の抽出と照合 … 資料に記載された部品番号を部品表と照合します。照合できない資料は人へ回します
- 単位の正規化 … 含有率の単位(wt%、ppm、mg/kg)をそろえます。1 wt% = 10,000 ppm の換算を機械的に行います
- 発行日・版数の抽出 … 資料の発行日と版数を取り、有効期限を判定します
- 既存資料との重複確認 … 同じ部品について新しい版が届いた場合、旧版を残したまま新版を登録します。上書きしません
- 文字の正規化 … 全角と半角、ローマ数字とアラビア数字(Cr(VI) と Cr(6))、括弧の種類をそろえます
AIに処理させる
OCRとLLMと計算で役割を分けます。
OCR(Document Intelligence)にさせること: 文字・表・見出しの読み取り。手書きの判定。座標付きで返るため、確認画面でのハイライトに使えます。
計算でさせること: 閾値との比較、単位の換算、有効期限の判定、規制区分ごとの該当判定。すべてしきい値と対応表で決まります。LLMを使う理由がありません。
LLMにさせること:
| 処理 | 内容 |
|---|---|
| 物質名の名寄せ | 資料の記載を、規制対象物質マスタの正式名称に対応づける |
| 含有部位の読み取り | 「めっき層」「はんだ部」といった、どこに含まれるかの記載を取り出す |
| 記載の不足の指摘 | 対象物質の記載がない、含有率の単位がない、発行日がない、といった不足を挙げる |
| 資料の種別の補助判定 | ファイル名で判定できなかった資料の種別を推定する |
| 督促文の作成 | 仕入先に追加の資料を依頼する文を作る |
| SDSの章立ての解釈 | 章立ての書き方が違うSDSから、該当章を特定する |
適合しているかの判定をLLMにさせないでください。 「0.08 wt% なので RoHS の閾値 0.1 wt% 未満であり適合」という判断は計算で行います。LLMに書かせると、根拠が追跡できなくなり、顧客への回答の裏付けにならなくなります。
同じ理由で、「この物質は規制対象外です」と書かせないでください。 マスタに載っていない物質については、「マスタに該当なし」として人に回します。規制対象物質のリストは更新されるため、AIの学習内容に基づく判断は危険です。
指示内容を固定する
あなたは、含有化学物質の資料の読み取りを支援する担当者です。
OCRで読み取られた資料から、物質名を規制対象物質マスタに対応づけてください。
【厳守事項】
- 含有率の数値を読み取ったり、書き換えたりしないでください。
OCRの抽出結果をそのまま引き継いでください。
読めなかった数値を、あなたが推測して埋めないでください。
- 規制の閾値と比べて適合しているかを判断しないでください。
「閾値未満です」「適合しています」「問題ありません」と書かないでください。
判定は別途、計算で行います。
- 物質名は、下記の規制対象物質マスタに載っているものからのみ選んでください。
マスタに該当がない場合は matched_substance を null にし、
資料に書かれた名称をそのまま raw_name に残してください。
「規制対象外と思われます」と書かないでください。
- CAS番号が資料に記載されている場合は、必ず cas_number に転記してください。
記載がない場合は null とし、あなたが補わないでください。
(マスタの別名で名寄せできた場合も、CAS番号は資料の記載のみを転記してください)
- 含有部位(めっき層、はんだ部など)の記載があれば location に転記してください。
記載がない場合は null としてください。
- 資料に対象物質の記載がまったくない場合は、
「不使用の宣言があるか」だけを確認し、
declaration_of_non_use に該当箇所を引用してください。
宣言がない場合は missing_items に入れてください。
- 資料の発行日・版数・発行者が読み取れない場合は、
missing_items に入れてください。有効性の判断には必要な項目です。
【規制対象物質マスタ(正式名称・CAS番号・別名)】
{substance_master}
【この仕入先の過去の読み取り実績(資料の記載 → 登録した物質)】
{past_mappings}
【資料の種別】
{document_type}
【OCRの読み取り結果】
{ocr_result}
「適合しているかを判断しないでください」の1行が、この構成の安全装置です。 顧客への回答は、自社が規制適合を表明する行為です。その根拠が「AIがそう書いたから」では、監査や不適合が発生したときに説明できません。
「マスタに該当がない場合に『規制対象外』と書かない」も必ず入れてください。 規制対象物質は追加されます。AIの学習時点のリストに基づく判断は、その時点で古くなっています。
出力形式を固定する
{
"document_id": "",
"part_no": { "value": "", "confidence": 0.0, "matched_in_bom": false },
"supplier": "",
"document_type": "chemsherpa | non_use_cert_own | non_use_cert_supplier | sds | material_cert | other",
"issue_date": { "value": "", "confidence": 0.0 },
"version": "",
"issuer": "",
"substances": [
{
"raw_name": "",
"matched_substance": "",
"match_basis": "cas | alias | past_mapping | none",
"cas_number": "",
"content": { "value": null, "unit": "", "confidence": 0.0 },
"content_normalized_ppm": null,
"location": "",
"is_handwritten": false
}
],
"declaration_of_non_use": "",
"missing_items": [],
"low_confidence_fields": [],
"needs_review": []
}
計算部分(プログラム)の出力:
{
"part_no": "",
"checks": [
{
"regulation": "RoHS | REACH_SVHC | ELV | POPs | 化審法",
"substance": "",
"threshold_ppm": 0,
"content_ppm": null,
"result": "below_threshold | above_threshold | not_determinable",
"basis": ""
}
],
"document_validity": {
"issue_date": "",
"expires_at": "",
"is_valid": true
},
"master_version": ""
}
読み取りと判定を別のJSONで持ちます。 顧客への回答の根拠として示すのは、計算側です。master_version(どの時点の規制対象物質マスタで判定したか)を必ず記録してください。 規制が更新されたときに、どの部品を再判定すべきかが分かります。
match_basis を持つのは、CAS番号で対応づいたのか、別名で対応づいたのか、過去の実績で対応づいたのかを区別するためです。alias や past_mapping の場合は、確認の優先度を上げます。
システムへ連携する
| つなぐ先 | 内容 |
|---|---|
| メール(専用アドレス) | 資料を受け取る |
| 部品表(BOM) | 部品番号を照合する |
| 含有物質台帳 | 承認後に登録する |
| SharePoint | 資料の原本を保管する(版ごと) |
| メール | 仕入先へ督促する(下書きを人が確認してから) |
| 規制対象物質マスタ | 更新時にさかのぼり照合を実行する |
台帳への登録は、承認後に行います。 未確認の読み取り結果が台帳に入ると、それが顧客への回答の根拠になってしまいます。
資料の原本は版ごとに残してください。 「いつ時点のどの資料に基づく登録か」を示せることが、この業務の要件です。
人が確認する
全件、人が承認します。
確認の重さは分けます。
| 状態 | 確認画面での扱い |
|---|---|
| chemSHERPA形式で取り込み、部品番号が照合済み | 一覧でまとめて承認 |
match_basis: cas で、確からしさが高い | 物質名と含有率をざっと見る |
match_basis: alias または past_mapping | 名寄せが正しいかを原本と照合する |
low_confidence_fields がある | その項目を原本と照合する |
is_handwritten: true | 手書きの箇所を原本と照合する |
missing_items がある | 督促文を確認して送る |
matched_substance: null | マスタにない物質。技術部が内容を確認する |
result: not_determinable | 判定できない。追加の資料を求める |
matched_substance: null を放置しないでください。 マスタにない物質が記載されているということは、(1)マスタの更新漏れ、(2)別名の登録漏れ、(3)規制対象外の物質、のいずれかです。それを見分けるのは人の仕事です。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 含有率が読めない | 空で返し、low_confidence_fields に入れる。推測値を入れない |
| CAS番号の記載がない | 別名で名寄せする。match_basis: alias として確認対象にする |
| マスタにない物質名 | null として人へ回す。「規制対象外」と判断しない |
| 部品番号が部品表にない | 人へ回す。自動で部品表に追加しない |
| 同じ部品の新しい版が届いた | 旧版を残して新版を登録する。上書きしない |
| 資料の発行日が3年以上前 | 有効期限の判定で弾き、再取得を依頼する |
| 単位が書かれていない | not_determinable とする。wt% と推測しない |
| SDSの章立てが規定と違う | 見出しから該当章を探す。見つからなければ人へ回す |
| スキャンの解像度が低い | 前処理で弾き、再送を依頼する |
| 手書きの追記がある | is_handwritten を立てて確認対象にする |
| 規制対象物質リストが更新された | 台帳をさかのぼって照合し、影響する部品を一覧にする。再判定の対象を明示する |
| 顧客から急ぎの調査依頼が来た | 台帳にない部品を先に抽出し、仕入先への依頼を優先する |
| 仕入先が資料を出さない | 督促の履歴を残す。「資料なし」を台帳に明記する。空欄にしない |
記録を残す
- 資料の原本(版ごと。発行日・版数・発行者つき)
- OCRの読み取り結果(確からしさと座標を含む)
- 名寄せの結果と
match_basis - 計算による判定結果と、判定に使った規制対象物質マスタの版
- 承認者、承認日時
- 人が修正した項目と、修正前後の値
- 仕入先への督促の履歴
- 規制更新時のさかのぼり照合の結果
「判定に使ったマスタの版」を必ず記録してください。 SVHCが追加されたときに、「どの部品が、どの時点のリストで判定されたか」が分からないと、さかのぼり照合の対象を絞れません。
「人が修正した項目」の蓄積が、名寄せの精度を上げます。 「この仕入先は『Cr6』と書く」といった対応が貯まれば、別名マスタに追加できます。
04実装レベルの3段階
この業務では本格構成に価値があります。 半自動化だけだと、規制対象物質が追加されたときに12,000点をさかのぼる作業が手作業のまま残ります。そこが、この業務でもっとも負荷が読めない部分です。
05工数削減シミュレーション
導入後 200件 × 5分 ÷ 60 = 16.7 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 部品・原材料の点数が3,000点以上あり、仕入先から含有化学物質の資料を受け取っている企業。顧客から含有物質の調査依頼を受けていること。資料が電子データ(PDF・Excel)で届いていること。
- 仕入先の全数がchemSHERPAのデータ形式で提出していて、機械的に取り込めている場合。部品点数が数百点以下で、担当者が把握できている場合。規制対象の製品を扱っていない場合。
07最小構成で試す方法
- 直近に届いた資料を30件用意する(chemSHERPA形式以外から選ぶ)
- 規制対象物質マスタの草案を作る(RoHS指令の制限物質から10物質、別名つき)
- Document Intelligence Studio に資料を1件ずつ投入し、表と項目が取れるかを確認する
- 取れた結果と物質マスタを生成AIに渡し、名寄せさせる
- 担当者が実際に台帳に登録した内容と比べる
見るのは次の4点です。
| 見る点 | 判断 |
|---|---|
| 物質名と含有率が正しく取れたか | 取れなければ、様式ごとにカスタムモデルが必要 |
| 別名での名寄せができたか | できれば、この構成の中心が成立する |
| 適合の判定を書いていないか | 書いていたら、プロンプトを強める。ここが最重要 |
| マスタにない物質を「対象外」としていないか | していたら同上 |
2のステップ(物質マスタの別名の整備)が、この試行で一番効きます。 10物質でも、別名を15個ずつ書き出すと150行になります。この表がないと、名寄せは当たりません。
あわせて、chemSHERPA形式の資料の割合を数えてください。 8割がchemSHERPA形式なら、この構成の効果は限定的です。残り2割の読み取りが自動化されるだけです。 逆に、chemSHERPA形式が3割しかないなら、効果は大きくなります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| AIが適合の判定を書く | プロンプトで明確に禁止する。「適合」「閾値未満」「問題なし」といった語が出力に含まれていないか機械的に検査する。最重要 |
| マスタにない物質を「規制対象外」とする | null として人へ回す。規制は追加される |
| 別名が足りず名寄せできない | 物質ごとに10〜20個の別名を持つ。修正ログから追加する |
| chemSHERPA形式にAIを使う | 使わない。機械的に取り込む。ここに労力を割かない |
| 単位の換算を誤る | wt% / ppm / mg/kg の換算を計算で行う。単位の記載がないものは判定しない |
| 資料を上書きして版が追えなくなる | 版ごとに残す。台帳から原本の版に辿れるようにする |
| 判定に使ったマスタの版を記録していない | 必ず記録する。規制更新時のさかのぼり対象が絞れなくなる |
| 資料が届かない部品を空欄のままにする | 「資料なし」として明記する。空欄と区別する |
| SDSの章立てが読めない | 見出しで探す。見つからなければ人へ回す |
| スキャンの解像度が低くて読めない | 300dpi以上を仕入先に依頼する。低解像度は前処理で弾く |
| 顧客への回答の根拠がAIの出力になっている | 根拠は計算側のJSONと資料の原本にする |
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 部品の材質・組成、仕入先名、製品の構成。部品の組成は、仕入先の技術情報であり、自社の製品構成を推測できる情報でもあります。
- 仕入先の技術情報 … 成分表やSDSには、仕入先の配合に関する情報が含まれます。仕入先との秘密保持契約の範囲を確認してください。 資料を外部のAIサービスに送ることが、その範囲に収まるかの確認が必要です
- 外部AIへの入力可否 … 自社の部品構成が分かる情報です。自社の情報管理規程を確認してください
- 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます。仕入先の技術情報を扱う以上、必須条件です
- アクセス権限 … 台帳と資料原本の閲覧を、購買・技術・品質保証に限定します
- 顧客への回答の根拠 … 顧客に提出する含有物質の回答は、自社が規制適合を表明する行為です。その根拠は、仕入先から受領した資料と、計算による判定です。AIの出力ではありません。 回答書の作成手順を、そのように設計してください
- 規制リストの更新の追随 … 規制対象物質は追加されます。AIの学習内容を判断の根拠にしないでください。 マスタを更新する運用(誰が、いつ、何を見て更新するか)を決めてください
- 自動実行してよい範囲 … 読み取り・名寄せ・閾値との比較までです。台帳への登録、仕入先への督促、顧客への回答は、必ず人が行います
誤りが起きた場合のリスクは、規制対象物質の含有を見落とした製品の出荷です。輸出先での通関の停止、リコール、取引先からの損害賠償につながります。 判定の根拠と、判定に使ったマスタの版を残し、後から追跡できる状態にしてください。
10まず何から始めるか
1週目:資料の内訳を数える
直近3か月に届いた資料を、形式ごとに数えます。
- chemSHERPA形式が何%か
- 自社様式の不使用証明書が何%か
- 仕入先様式・SDSが何%か
chemSHERPA形式の割合が、この構成の効果を決めます。 8割を超えるなら、仕入先にchemSHERPA形式での提出を依頼するほうが早いかもしれません。
2〜3週目:規制対象物質マスタの別名を整備する
自社が対象としている規制(RoHS、REACH SVHC、ELVなど)の物質について、正式名称・CAS番号・別名・閾値の表を作ります。まずRoHSの制限物質から始めてください。 別名は、過去に受け取った資料から拾えます。
4週目:30件で読み取りを試す
chemSHERPA形式以外の資料30件について、OCRと名寄せを試します。適合の判定を書いていないかを必ず確かめてください。
2か月目:半自動化を作る
専用アドレスへの着信をきっかけに、種別判定・読み取り・名寄せ・閾値判定までを作り、スプレッドシートに出します。18分が何分になるかを実測します。
3か月目以降: 台帳への登録と、規制更新時のさかのぼり照合を追加します。さかのぼり照合が動くようになると、SVHCの追加が「作業」ではなく「確認」になります。 そこがこの構成の到達点です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| chemSHERPA が、サプライチェーンにおける製品含有化学物質の情報伝達スキームとして2015年から経済産業省のもとで運用されていること。対象となる規制に、化学物質審査規制法、米国TSCA、EUのELV指令・RoHS指令・POPs規則・REACH規則(SVHC候補リスト・認可対象物質リスト)、IEC 62474 などが含まれること。管理対象物質リストが、欧州化学品庁によるSVHCの更新や IEC 62474 の改訂に応じて見直されること | 経済産業省:製品含有化学物質の新情報伝達スキーム(chemSHERPA)について | 2026-09-16 |
| Azure AI Document Intelligence のカスタム抽出モデルが同一様式5件から学習できること。prebuilt-layout が表・選択マーク・見出しを抽出すること。抽出対象の文字高が1024×768の画像で12ピクセル以上を目安とすること | Microsoft Learn: Document processing models | 2026-09-16 |
Read モデルが活字と手書きの両方を抽出し、各テキスト行が手書きかどうかを styles の isHandwritten として確からしさとともに返すこと | Microsoft Learn: Read model OCR data extraction | 2026-09-16 |
| n8n の Schedule Trigger が秒・分・時・日・週・月・cron式の7種類の間隔に対応し、セルフホスト版の既定タイムゾーンが America/New_York であること | n8n Docs: Schedule Trigger | 2026-09-16 |
規制対象物質の範囲、閾値、適用される規制は、製品の仕向地と用途によって異なります。この部分は、自社が対象とする規制を個別に確認してください。 規制対象物質リストは更新されるため、常に最新の情報に基づいて判定する運用が必要です。仕入先から受領した技術資料を外部サービスに送ることの可否は、秘密保持契約の範囲を確認してください。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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