Media > AI活用ユースケース > 研究開発 > 学会の論文誌の事務局が、届いた査読報告を Claude で指摘ごとに分け、著者への通知文の下書きと査読者どうしの判定の食い違いを担当編集委員に示す

学会の論文誌の事務局が、届いた査読報告を Claude で指摘ごとに分け、著者への通知文の下書きと査読者どうしの判定の食い違いを担当編集委員に示す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

1本の投稿論文に届いた2〜3名分の査読報告を、指摘の単位に切り分けて番号を振り、査読者どうしで判定や指摘が食い違う箇所を担当編集委員に示します。あわせて、著者に送る判定通知文の下書きを作ります。採否は編集委員が決め、AIは判定を書きません。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/ChatGPT/Claude
連携・自動化
n8n/Power Automate/Python
対象業界
その他/医療/教育
対象部門
研究開発
対象業務
書類作成/要約
主な課題
人手が足りない/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
要約
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
90h/月
AI導入後
30h/月
想定削減
67%
年間削減
720h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 投稿審査システムで、査読報告がそろった論文の一覧を出す
  2. 1本ずつ、査読者2〜3名の報告を開き、推奨する判定(採録/条件付き採録/照会後再査読/不採録)と各コメントを読む
  3. 主な指摘を職員がメモにまとめ、査読者どうしで判定が分かれていれば、その旨を書き添えて担当編集委員にメールで送る
  4. 担当編集委員から判定と、著者への所見が返ってくる
  5. 判定に応じた通知文の定型文を選び、編集委員の所見と、査読者の著者あてのコメントを貼り付ける
  6. 編集委員だけへのコメントや査読者の名前が入っていないかを目で確かめ、著者に送る
導入後(After)
  1. 自動投稿審査システムで、論文の査読報告がすべてそろったことを検知する
  2. 自動査読報告を、著者あての欄・編集委員あての欄・推奨判定に分けて取り出す
  3. 自動査読者の氏名・所属と、事前に登録した表現(「私は」「私の研究室」など)を著者あての欄から探し、印を付ける
  4. 自動Claude API が、著者あての欄を指摘の単位に分け、分類・重さ・原文の抜き出しを付ける
  5. 自動Claude API が、査読者どうしで同じ論点の指摘をまとめ、判定と中身の食い違いを並べる
  6. 自動プログラムが、抜き出した原文が元の報告にそのまま含まれているかを確かめる
  7. 自動担当編集委員あての送り状(指摘の一覧と食い違い)を作り、事務局の確認待ちにする
  8. 人事務局の職員が送り状を確かめ、担当編集委員に送る
  9. 人担当編集委員が判定と所見を返す
  10. 自動判定に応じた定型文と、査読者の著者あての原文を差し込み、通知文の下書きを作る
  11. 人職員が下書きを確かめ、編集委員の了承を得て著者に送る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 投稿審査システムで、査読報告がそろった論文の一覧を出す
  2. 1本ずつ、査読者2〜3名の報告を開き、推奨する判定(採録/条件付き採録/照会後再査読/不採録)と各コメントを読む
  3. 主な指摘を職員がメモにまとめ、査読者どうしで判定が分かれていれば、その旨を書き添えて担当編集委員にメールで送る
  4. 担当編集委員から判定と、著者への所見が返ってくる
  5. 判定に応じた通知文の定型文を選び、編集委員の所見と、査読者の著者あてのコメントを貼り付ける
  6. 編集委員だけへのコメントや査読者の名前が入っていないかを目で確かめ、著者に送る

(a)読み比べに時間がかかる。 3名の報告は書き方がばらばらです。番号付きで20項目並べる人もいれば、段落で続けて書く人もいます。同じ論点を別々の言葉で指摘していることも多く、それを見つけて「3名とも統計の扱いを問題にしている」とまとめる作業が、いちばん時間を取ります。

(b)食い違いを見落とす。 判定が「採録」と「不採録」に割れていれば誰でも気づきますが、判定は同じでも、指摘の中身が正反対のことがあります。 一人は追加実験を求め、もう一人は追加実験は不要と書いている、という型です。気づかないまま両方を著者に送ると、著者はどちらに従えばよいか分からず、照会が事務局に戻ってきます。

(c)編集委員あての内容を送りかける。 査読者が「著者へのコメント」の欄に、編集委員に向けた一文を書いてしまうことがあります。「この著者は以前も同じ内容を投稿している」「私は○○大学の者だが」といった文です。欄が正しく使われていない報告を、目視ですべて拾うのは難しいです。

(d)通知文の書きぶりが職員で違う。 判定ごとの定型文はあるものの、編集委員の所見の載せ方、修正の期限の書き方、再投稿の手順の案内に差があります。著者からの問い合わせの多くは、通知文の分かりにくさから来ています。

  1. 【自動】 投稿審査システムで、論文の査読報告がすべてそろったことを検知する
  2. 【自動】 査読報告を、著者あての欄・編集委員あての欄・推奨判定に分けて取り出す
  3. 【自動】 査読者の氏名・所属と、事前に登録した表現(「私は」「私の研究室」など)を著者あての欄から探し、印を付ける
  4. 【自動】 Claude API が、著者あての欄を指摘の単位に分け、分類・重さ・原文の抜き出しを付ける
  5. 【自動】 Claude API が、査読者どうしで同じ論点の指摘をまとめ、判定と中身の食い違いを並べる
  6. 【自動】 プログラムが、抜き出した原文が元の報告にそのまま含まれているかを確かめる
  7. 【自動】 担当編集委員あての送り状(指摘の一覧と食い違い)を作り、事務局の確認待ちにする
  8. 【人】 事務局の職員が送り状を確かめ、担当編集委員に送る
  9. 【人】 担当編集委員が判定と所見を返す
  10. 【自動】 判定に応じた定型文と、査読者の著者あての原文を差し込み、通知文の下書きを作る
  11. 【人】 職員が下書きを確かめ、編集委員の了承を得て著者に送る

8番目と11番目の2回、人が確かめます。 送り状は編集委員の判断の材料になり、通知文は著者に届くものだからです。どちらも、確かめる前に外へ出る経路を作りません。

10番目で、査読者の原文をAIに書き直させないのも意図してのことです。 査読者のコメントは査読者の言葉で著者に届くのが原則で、事務局やAIが言い換えると、指摘の強さや意味が変わります。AIが作るのは、編集委員の所見の下書きと、指摘の一覧の部分だけです。

02今回想定するシステム構成

構成図
投稿審査システム(査読報告・推奨判定・欄の区別)
   │  査読報告がすべてそろう
   ▼【トリガー】論文の状態の変化(定時の確認)
Python(学会のサーバー)
   ├──▶ 著者あて/編集委員あて/推奨判定に分ける
   ├──▶ 査読者の氏名・所属と注意する表現を探す
   ▼
Claude API ── 構造化出力でJSON
   │   ① 指摘の単位への切り分け・分類・重さ
   │   ② 同じ論点のまとめと、判定・中身の食い違い
   ▼
Python ── 抜き出した原文と元の報告の照合
   ▼
【事務局が送り状を確認 → 担当編集委員へ】
   ▼  判定と所見が返る
Python ── 定型文と査読者の原文を差し込み、通知文の下書き
   ▼
【事務局が確認 → 編集委員の了承 → 著者へ送付】
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(指摘の切り分け、食い違いの整理、所見の下書き。構造化出力)OpenAI API、Azure OpenAI(Microsoft Foundry)
連携Python(報告の取り出し、欄の分離、照合、通知文の組み立て)Power Automate、n8n
保管学会の文書管理(定型文、送り状、送付した通知文、ログ)SharePoint、Box
投稿審査既存の投稿審査システム各学会が使う投稿審査システム

投稿審査システムは、新しく足すものではありません。 この構成は査読報告と推奨判定を読むだけで、判定の記録はこれまでどおり編集委員と事務局が投稿審査システムに入れます。 報告の取り出し方はシステムによって違い、報告をファイルで書き出せるもの、APIで取れるもの、画面からの書き出ししかないものがあります。取り出し方は利用している投稿審査システムに合わせた個別の実装になります。

AIには Claude API を使い、構造化出力で受け取ります。 リクエストの output_config.format に type: "json_schema" とスキーマを指定すると、応答がそのスキーマに沿ったJSONで返ります。スキーマのオブジェクトには additionalProperties: false が要ります。 数値の minimum・maximum や、文字列の minLength・maxLength は使えず、使うと400のエラーになります。指摘の数や文字数の範囲は、受け取った後にプログラムで確かめます。

査読報告がPDFで届く場合も、そのまま渡せます。 Claude はPDFの各ページを画像とテキストの両方として読みます。リクエスト全体で32MBまで、ページ数は600ページまで(リクエストのコンテキストが100万トークン未満のときは100ページまで)で、パスワードや暗号化のかかったPDFは渡せません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

論文の査読報告がすべてそろったことを起点にします。 投稿審査システムの状態(「査読完了」「判定待ち」など)を、Python から1時間ごとに確かめ、新しくその状態になった論文だけを処理します。システムに状態の変化を外へ知らせる仕組みがあれば、それを使います。

1名分の報告が届くたびには動かしません。 食い違いは全員分がそろって初めて分かり、途中で送り状を作ると、残りの報告が届いた後に作り直しになります。ただし、締切を2週間過ぎても1名の報告が届かない論文は、届いている分だけで送り状を作り、「1名未着」と明記して編集委員に判断を仰ぎます。

判定の後の通知文は、担当編集委員が判定と所見を投稿審査システムに入れたことを起点に作ります。メールで返ってくる運用なら、事務局の職員が判定を入れた時点を起点にします。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
査読報告査読者ごとの著者あてのコメント、推奨判定、評価項目の点数(ある場合)投稿審査システム
編集委員あてのコメント査読者が編集委員だけに書いた欄投稿審査システム(AIには渡さない)
論文の情報論文番号、題名、初回査読か再査読か、前回の判定と指摘の一覧投稿審査システム、前回の処理のログ
査読者の情報氏名、所属(著者あての欄に紛れていないかを探すためだけに使う)投稿審査システム
定型文判定ごとの通知文、修正の期限の書き方、再投稿の手順学会の文書管理

投稿論文の本文は入力に入れません。 指摘の切り分けと食い違いの整理は、報告だけで足ります。本文を渡さないことで、外部のサービスに出す資料を最小にします。

再査読では、前回の指摘の一覧を一緒に渡します。 査読者が「前回の指摘3は解消された」と書いていれば、どの指摘のことかを前回の一覧で引けます。前回の一覧が無いと、解消された指摘と新しい指摘の区別がつきません。

Step3

データの取得方法を決める

  1. 報告の取り出し … 投稿審査システムから、論文ごとに査読報告を書き出します。欄ごとに分かれた形(CSV・JSONなど)で取れるならそれを使い、PDFでしか出せないなら PDF のまま扱います
  2. 欄の分離 … 著者あての欄、編集委員あての欄、推奨判定を別の項目として持ちます。編集委員あての欄は、この段階でAIに渡す入力から外します
  3. 前回の一覧の取得 … 再査読なら、前回の処理で保存した指摘の一覧(番号付き)を引きます
  4. 査読者の情報の取得 … 氏名・所属・研究室名を、照合のための一覧にします

2番目は、プログラムで項目として分けます。 AIに「編集委員あての部分は無視して」と指示するのではなく、そもそも渡しません。 渡したうえで使わないように頼む設計は、いつか通知文に紛れます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 形式の確認 … 文字のデータか PDF かを確かめます。PDF はパスワードの有無を確かめ、かかっていれば事務局に回します
  2. 査読者の匿名性の確認 … 著者あての欄から、査読者の氏名・所属・研究室名と、「私の論文」「私たちのグループ」など自分の研究を名乗る表現を探し、見つかった箇所に印を付けます
  3. 編集委員あての表現の検出 … 著者あての欄に「編集委員へ」「Editor」「not for the authors」などの語があれば印を付けます
  4. 長さの確認 … 報告が極端に短いもの(数行)や、推奨判定が空のものに印を付けます
  5. 個人情報の確認 … 査読者が著者の個人的な事情に触れていれば印を付けます
  6. 報告の番号付け … 査読者を「査読者A・B・C」と置き換えます。AIに渡すのは置き換えた後の記号だけです

2番目と3番目は、AIより先にプログラムで行います。 決まった語の照合は機械のほうが確実で、見つかった箇所はAIの結果にかかわらず送り状の冒頭に出します。 AIにも同じ観点で確かめさせますが、それは取りこぼしを拾うための二重の網です。

Step5

AIに処理させる

させること中身
指摘の切り分け著者あての欄を、1つの要求または1つの問題点の単位に分ける
分類新規性/方法・実験/結果の解釈/統計・数値/先行研究・文献/表記・図表/倫理・データの扱い のどれか
重さ修正しないと採録できない(major)/修正が望ましい(minor)/質問・確認(question)
原文の抜き出し各指摘の根拠になった原文を、一字一句そのまま写す
同じ論点のまとめ別の査読者が同じ論点を指摘していれば、同じ論点番号を付ける
食い違いの検出推奨判定の食い違いと、指摘の中身が正反対のもの(一方が追加を求め、他方が不要とする等)を並べる
再査読での照合前回の指摘のうち、査読者が解消・未解消と書いているものを対応づける
送ってはいけない内容の検出著者あての欄に、査読者を特定できる記述や編集委員に向けた内容がないか
所見の下書き編集委員が判定を決めた後、主な論点を3〜5点にまとめた所見の下書き
させないこと理由
採否の判定・推奨判定は担当編集委員と編集委員長の権限
指摘が正しいかの評価論文の中身の判断で、事務局もAIも行う立場にない
査読者のコメントの言い換え指摘の強さと意味が変わる。著者には原文で届ける
食い違いの調停どちらの査読者に従うかは編集委員が決める
査読者の推測著者あての欄から誰が書いたかを推し量らない

いちばん効くのは、表の6行目の「中身が正反対のもの」です。 判定の割れは推奨判定の欄を見れば機械でも分かりますが、中身の食い違いは文を読まないと分かりません。 事務局が見落としやすく、著者からの照会の元になっているのはこの型です。

Step6

指示内容を固定する

あなたは学会の論文誌の編集事務局で、査読報告を取りまとめる補助をします。
渡すのは、1本の投稿論文に対する複数の査読者の「著者へのコメント」だけです。
論文の本文は渡していません。論文の中身の良し悪しを判断しないでください。

【させること】
1. 各査読者のコメントを、1つの要求または1つの問題点の単位に分けてください。
2. 各指摘に category と severity を付けてください(値は下の一覧から)。
3. 各指摘の根拠にした原文を quote に一字一句そのまま写してください。
   要約・言い換え・語順の変更・誤字の修正をしないでください。
4. 別の査読者が同じ論点を指摘していれば、同じ issue_group を付けてください。
5. 査読者どうしで推奨判定が異なるもの、指摘の中身が反対のもの
   (一方が追加を求め、他方が不要と書いている等)を conflicts に挙げてください。
6. 著者あてのコメントの中に、査読者自身を特定できる記述
   (氏名・所属・自分の論文や研究室への言及)や、編集委員に向けた記述があれば
   leak_flags に挙げてください。

【category】novelty / method / interpretation / statistics /
            literature / presentation / ethics_data
【severity】major(修正しないと採録できないと読める)/
            minor(修正が望ましい)/ question(質問・確認)
  原文から読み取れないときは unclear にしてください。

【厳守事項】
- 採否を推奨したり、判定を予想したりしないでください。
- 指摘が正しいか、もっともかを評価しないでください。
- どちらの査読者に従うべきかを書かないでください。
- 原文に無い指摘を補わないでください。
- 査読者が誰かを推測しないでください。
- 前回の指摘の一覧が渡されたときは、査読者が解消・未解消と明記している
  ものだけを対応づけてください。明記がなければ not_mentioned にしてください。

【論文の情報】{paper_meta}
【前回の指摘の一覧】{previous_issues}
【査読報告(査読者A・B・C)】{reports}

「誤字の修正をしないでください」まで書くのは、AIが善意で直すからです。 査読者の誤字を直した quote は、プログラムでの照合に通らず、すべて人の確認に回ってしまいます。原文と一字も違わないことが、照合の前提です。

「明記がなければ not_mentioned」も同じ理由で入れます。 何も言わないと、査読者が触れていない前回の指摘まで「解消」と推し量って埋めます。触れていないという事実が、編集委員には大事な情報です。

Step7

出力形式を固定する

{
  "paper_id": "",
  "round": "initial | revision",
  "recommendations": [
    { "reviewer": "A", "recommendation": "accept | minor | major | reject | none" }
  ],
  "issues": [
    { "id": "A-01", "reviewer": "A", "issue_group": "G1",
      "category": "method", "severity": "major | minor | question | unclear",
      "summary": "", "quote": "" }
  ],
  "conflicts": [
    { "type": "recommendation | content", "issue_groups": ["G3"],
      "reviewers": ["A", "C"], "description": "" }
  ],
  "previous_issue_status": [
    { "previous_id": "", "reviewer": "", "status": "resolved | unresolved | not_mentioned", "quote": "" }
  ],
  "leak_flags": [
    { "reviewer": "", "kind": "identity | editor_only | personal", "quote": "" }
  ]
}

1つ目の理由は、quote をプログラムで照合できることです。 受け取った後、各 quote が元の報告にそのまま含まれているかを文字列で確かめます。含まれていない指摘は、AIが言い換えたか作ったものなので、送り状で「原文と一致せず」と表示します。

2つ目は、送り状を毎回同じ形にできることです。 issue_group ごとに指摘を並べ、「G1:統計の扱い(A・B・C が指摘、うち2名が major)」のように出します。職員によって送り状の書き方が変わることがなくなります。

3つ目は、leak_flags を前処理の結果と合わせて出せることです。 プログラムで見つけたものとAIが見つけたものを1つの表にし、どちらか一方でも挙げた箇所は、職員が必ず目で見ます。

送り状は次の形で担当編集委員に送ります。

【論文番号】J-2026-0412(再査読)
【推奨判定】A:minor / B:major / C:minor
【食い違い】G3(追加実験):A は不要、B は必須と記載
【主な論点】G1 統計の扱い(A・B・C)/G3 追加実験(A・B)…
【前回の指摘】解消 5 / 未解消 2 / 言及なし 1
【確認が要る箇所】査読者B の著者あての欄に所属への言及(事務局で削除の要否を確認中)
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
投稿審査システム書き出し・API(システムによる)査読報告と推奨判定を読む。書き込まない
Claude APIAPI呼び出し(構造化出力)指摘の切り分け、食い違い、所見の下書き
学会のメール下書きの作成送り状と通知文を下書きとして置く
学会の文書管理ファイルの保存定型文の読み込み、送付した版とログの保存

投稿審査システムには書き込みません。 判定の入力も、著者への送付も、これまでどおり人が行います。この構成が作るのは下書きまでで、送信のボタンは職員が押します。

通知文の組み立ては、AIではなくプログラムで行います。 判定に応じた定型文を選び、編集委員の所見(職員と編集委員が確かめたもの)と、査読者の著者あての欄の原文をそのまま差し込みます。AIの出力の summary は送り状にだけ使い、著者には送りません。

Step9

人が確認する

  1. 送り状を送る前(事務局) … leak_flags と、quote が原文と一致しなかった指摘を先に見ます。そのうえで conflicts が報告の原文と合っているかを確かめます
  2. 判定(担当編集委員) … 送り状と、必要なら報告の原文を読んで判定と所見を決めます。AIの整理は材料で、判定は編集委員が報告の原文に基づいて行います
  3. 通知文を送る前(事務局) … 差し込まれた査読コメントが著者あての欄だけであること、leak_flags の箇所の扱いが決まっていることを確かめます
  4. 送る前の了承(担当編集委員) … 所見の下書きを直したものを、編集委員が了承します

1番目で leak_flags の箇所を事務局が勝手に消さないでください。 査読者のコメントを削るかどうかは、担当編集委員か査読者本人に確かめて決めます。消すのも、査読者の言葉を変えることだからです。

目標は、1件15分です。 送り状の確認に5分、編集委員とのやり取りの取りまとめと通知文の確認に10分を見込みます。食い違いのある論文は15分を超え、判定が一致していて指摘の少ない論文は数分で終わります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
1名の報告が締切を過ぎても届かない2週間を超えたら届いた分だけで送り状を作り、「未着あり」と明記
報告がパスワード付きのPDFAIに渡せない。事務局が査読者に連絡して取り直す
推奨判定の欄が空none として送り状に出す。判定を本文から推し量らない
著者あての欄が数行しかないそのまま処理し、送り状に「報告が短い」と出す。追加の依頼は編集委員が決める
quote が原文と一致しないその指摘を「原文と一致せず」と表示し、職員が原文で確かめる
応答がスキーマに合わない拒否や max_tokens で切れた応答はスキーマに合わないことがある。stop_reason を見て1回だけやり直し、だめなら手作業に戻す
英文誌で、報告が英語同じ処理で扱う。送り状の summary だけ日本語で出し、quote は英語の原文のまま
leak_flags が出た送付を止め、担当編集委員に扱いを確かめる
報告に図や数式の画像が多いPDFのまま渡し、画像の内容に触れた指摘は職員が原文で確かめる

4行目の「報告が短い」をAIに補わせないことが大事です。 短い報告からAIが指摘をふくらませると、査読者が書いていない要求が著者に届きます。短いことは、そのまま編集委員への情報にします。

Step11

記録を残す

  • 取り出した査読報告(欄ごと)と、AIに渡した入力の全文
  • AIの出力のJSONと、quote の照合結果
  • 前処理で見つけた leak_flags と、その扱い(削除・そのまま・査読者に確認)と決めた人
  • 担当編集委員に送った送り状と、返ってきた判定・所見
  • 著者に送った通知文の版と送付日時
  • 再査読のための指摘の一覧(論文番号と回の番号付き)

最後の行が、次の再査読の入力になります。 前回の指摘の一覧が残っていないと、再査読で「解消されたか」を対応づけられません。論文番号と回の番号で引けるように保存します。

leak_flags の扱いの記録は、査読の運用を見直す材料になります。 同じ査読者が毎回著者あての欄に所属を書いているなら、査読依頼の案内を直すほうが早いです。

保存先は、投稿審査システムと同じ権限で守られた場所にします。 送り状とAIの出力には、査読者の記号と推奨判定が並んでいます。記号と査読者の対応表は別の場所に分けて持ち、両方を見られる人を事務局の担当者と編集委員長に限ります。 保存の期間は、論文誌が査読の記録を残す期間に合わせ、それを過ぎたものは入力の全文から先に消します。

04実装レベルの3段階

最小構成:匿名化した著者あての欄を手でAIの画面に貼り、指摘の一覧と食い違いを出させる / 1本ごとの指摘の整理
半自動化:上記+投稿審査システムから報告を書き出し、Python で欄を分けて Claude API に渡し、送り状を作る / 報告の取り出しから送り状まで
本格構成:上記+判定を起点に、定型文と原文を差し込んだ通知文の下書きを作り、再査読で前回の指摘と対応づける / 取りまとめと通知文の全体

最小構成では件数がさばけません。 匿名化と貼り付けを手で行うので、月120本には使えません。AIの整理が送り状の材料になるかを確かめる段階です。 半自動化で、①と②の大半が下書きになります。 ③の通知文は手で組み立てるので、1件の時間は半分ほどです。本格構成で③も下書きになり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、通知文の組み立てと、送ってはいけない内容の確認が、1本ずつの手作業だからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の送り状を1〜2か月使うと、担当編集委員がどの項目を見ているか、どこが足りないかが分かります。送り状の形が固まってから、通知文の組み立てに進みます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
120 件
1件あたり現在時間
45 分
1件あたり導入後時間
15 分
現在  120件 × 45分 ÷ 60 = 90 時間/月
導入後 120件 × 15分 ÷ 60 = 30 時間/月
月間削減時間
60h
削減率
67%
年間削減時間
720h
年間金額換算(時間単価3,000円)
216万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 年に数百本の投稿を受け、1本につき2〜3名の査読者から査読報告を集めている学会の論文誌の編集事務局。事務局の職員が査読報告を読んで担当編集委員に回し、編集委員の判定を受けて著者への通知文を組み立てている場合。査読報告が投稿審査システムから文字のデータとして取り出せ、著者あての欄と編集委員だけが読む欄が分かれている場合。学会の査読規程で、査読の資料を外部のサービスで扱う条件を決められる場合。
向いていない
  1. 投稿が月に数本で、事務局が1本ずつ丁寧に読んで足りる場合。査読報告が手書きの紙や、著者あてと編集委員あての区別のない自由記述だけで届く場合。採否の判定そのものを機械に任せたい場合(この構成は判定を代替しません)。査読の資料を学会の外のサービスで扱うことを規程で禁じていて、変える見込みがない場合。

07最小構成で試す方法

  1. 判定が終わった過去の論文から20本を選ぶ(うち数本は、判定が割れたものと、著者から照会が来たものを入れる)
  2. 投稿者・査読者の氏名と所属を消し、査読者を A・B・C に置き換える
  3. 著者あての欄だけを、契約上の扱いを確かめた生成AIの画面に1本ずつ貼る
  4. 「指摘の単位に分け、分類と重さを付け、原文をそのまま写し、査読者どうしの食い違いを挙げてください。判定は書かないでください」と指示する
  5. 当時の事務局のメモと、著者からの照会の内容と突き合わせる

投稿論文の本文は、試すときも貼らないでください。 試す段階でも、学会の規程で外部のサービスに出してよいとされた範囲に限ります。

出てきた内容判断
当時見落とした中身の食い違いが出た送り状の作成に進む
査読者の原文を言い換えて写した指示の書き方で直る。照合をプログラムに入れる前提で進む
指摘の切り分けが細かすぎる・粗すぎる単位の定義を例で示す。構成は有効

2行目は、ほぼ必ず出ます。 失敗ではなく、照合をプログラムで行う理由を確かめたということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
編集委員あての欄が通知文に紛れるAIに渡す前にプログラムで欄を分け、通知文にはそもそも入れない
著者あての欄に査読者の所属が書かれている前処理とAIの二重で拾い、扱いは編集委員が決める
AIが査読者の原文を言い換えるquote を原文と文字列で照合する。通知文には原文をプログラムで差し込む
AIが採否を書いてしまう判定の欄をスキーマに作らない。入れ物が無ければ書けない
短い報告から指摘をふくらませる原文に無い指摘を禁じ、quote の照合で落とす
再査読で前回の指摘と対応づかない前回の一覧を番号付きで保存し、入力に渡す
構造化出力の制約で400が返る数値の範囲・文字列の長さの制約を外し、受け取った後に確かめる
職員がAIの整理だけを編集委員に渡す送り状に報告の原文へのリンクを必ず付ける
規程を直さずに始める最初に編集委員会で査読の資料の扱いを決める

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、著者に届くものにAIの言葉や査読者を特定できる記述が混ざるという同じ失敗です。欄の分離と原文の差し込みをプログラムの側に置けば、AIがどう答えても防げます。

4行目の「判定の欄をスキーマに作らない」も効きます。 指示で禁じても、出力に入れ物があれば書きます。書く場所を作らないのが、いちばん確実な禁止です。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 未公表の研究についての査読報告、査読者の推奨判定、投稿者と査読者の氏名・所属です。査読は匿名と秘密を前提に成り立っています。

  1. 学会の規程で、査読の資料を外部のサービスで扱う条件を先に決める … 出版社の中には、査読者に対し、原稿(図表を含む一部も)を生成AIのツールにアップロードしないよう求め、査読報告の改善に使う場合は報告の中で明らかにするよう求めているところがあります(Wiley の査読の秘密保持の方針)。学会の論文誌でも、事務局が査読報告をAIで扱ってよいのか、どの契約のサービスならよいのかを、編集委員会で決めて規程に書いてください
  2. 査読者と投稿者に知らせる … 査読依頼と投稿規程に、事務局が査読報告の取りまとめに外部のAIサービスを使うこと、本文は渡さないことを書きます
  3. 投稿論文の本文を渡さない … 指摘の整理に本文は要りません。渡す範囲を著者あての欄だけに絞ることが、いちばん効く対策です
  4. API のデータの扱いを確かめる … Claude API では、会話の内容(プロンプトと出力)は既定では保持されず、保持されたデータは明示の許可なくモデルの学習に使われないとされています。ただし Covered Models と呼ばれる一部のモデルは30日の保持が必要で、Files API とバッチ処理はゼロデータ保持(ZDR)の対象外です。 査読報告は Messages API に直接渡し、使うモデルの扱いを契約の前に確かめてください
  5. 査読者の氏名・所属をAIに渡さない … 照合はプログラムで行い、AIには A・B・C の記号だけを渡します
  6. 判定をAIに寄せない … 送り状は材料です。担当編集委員が報告の原文を読める状態を保ち、AIの整理だけで判定させない運用にします

誤りが起きた場合のリスクは、査読者を特定できる記述や編集委員あての内容が著者に届くことと、食い違いを見落として著者を迷わせることの2つです。 前者は欄の分離をプログラムで行えば防げ、後者は送り状の確認で防ぎます。前者は一度起きると取り返せないので、設計で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:編集委員会で査読の資料の扱いを決める

事務局が査読報告をAIで取りまとめてよいか、渡す範囲(著者あての欄だけ)、使ってよい契約、査読者と投稿者への知らせ方を、編集委員会で決めます。ここが決まらないうちは、試すこともしません。

2週目:20本で試す

判定の終わった過去の論文から20本を選び、匿名化した著者あての欄で指摘の一覧と食い違いを出させます。当時の事務局のメモと、著者からの照会の内容と突き合わせます。

3週目:送り状の形を決める

担当編集委員の数名に試した送り状を見てもらい、どの項目が判定に役立ち、どれが要らないかを聞きます。

4週目:取り出しと欄の分離をつなぐ

投稿審査システムから報告を書き出し、Python で欄を分けて Claude API に渡し、送り状の下書きを作るところまで組みます。この時点では通知文は手で作ります。

2か月目: quote の照合と leak_flags の表示を足し、送り状を実際の編集委員に送り始めます。3か月目以降: 判定を起点にした通知文の下書きと、再査読での前回の指摘との対応づけを足し、1件45分が何分になったかを実測します。著者からの照会の件数が減ったことを確かめた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-15/最終更新:2026-10-23
確認した内容情報源確認日
査読者に査読と査読コメントの秘密保持を求め、その義務が査読に関するすべてのやり取りに及ぶこと。原稿(図表を含む一部も)を ChatGPT などの生成AIのツールにアップロードしないよう求め、査読報告の改善に使う場合は報告の中で明らかにするよう求めていることWiley: Review Confidentiality Policy2026-10-15
構造化出力を output_config.format に type: "json_schema" で指定すること。オブジェクトに additionalProperties: false が要ること。数値の minimum・maximum、文字列の minLength・maxLength に対応せず400になること。拒否や max_tokens で切れた応答がスキーマに合わないことがあることClaude Docs: Structured outputs2026-10-15
PDFのリクエストが最大32MB、600ページ(コンテキストが100万トークン未満では100ページ)までであること。パスワード・暗号化のないPDFに限ること。各ページを画像とテキストの両方として扱うことClaude Docs: PDF support2026-10-15
会話の内容が既定では保持されず、保持されたデータは明示の許可なくモデルの学習に使われないこと。Covered Models は30日の保持が必要なこと。Files API とバッチ処理がZDRの対象外であることClaude Docs: API and data retention2026-10-15

採否の判定と、査読の資料を外部のサービスで扱えるかどうかは、担当編集委員と学会の編集委員会が決めてください。 本記事は上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-1694)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次