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自治体の財政課が、毎月の予算の執行状況の表から、執行が遅れている事業と各課へのヒアリングの論点を Copilot でまとめる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

毎月の予算の執行状況の表を、各課の執行計画と突き合わせ、遅れている事業を担当の課ごとに要約して、ヒアリングで確かめる論点のメモを Copilot で下書きします。査定担当の作業は、表をめくって遅れを探すことから、論点を選んで聞きに行くことに変わります。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
対象業界
その他/自治体
対象部門
経営企画/財務
対象業務
要約/集計・分析
主な課題
データ分析に時間がかかる/属人化している/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
要約
主な効果
判断支援/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
SaaS追加(小)
人間の確認
必須
現在工数
48h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
58%
年間削減
336h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 財務会計システムから、担当する課の事業別の執行状況を書き出す
  2. 各課の執行計画のファイルを開き、事業ごとに今月末までの予定額を探す
  3. 計画と実績を並べ、遅れていそうな事業に色を付ける
  4. 各課が執行状況に添えて出す月次のコメント(「入札不調のため再公告」など)を読む
  5. 前回のヒアリングのメモを開き、前回聞いたことがどうなったかを確かめる
  6. 遅れている事業ごとに、聞くことを Word のメモに書く
  7. ヒアリングで聞き取り、結果を同じメモに書き足して、課長に報告する
導入後(After)
  1. 人財務会計システムから執行状況を書き出し、課ごとの点検のブックの「実績」シートに貼る
  2. 自動ブックの式が、事業ごとに今月末までの計画額と実績の差を出し、遅れの区分を付ける
  3. 人各課の月次のコメントを「コメント」シートに貼る。前回のヒアリングの記録は同じブックの「前回」シートにある
  4. 【AI】 ブックの Copilot(ブックを変えないモード)に、遅れの区分が付いた事業について、数字・コメント・前回の記録を並べた要約と、聞く論点を下書きさせる
  5. 人査定担当が、下書きの数字をセルと照らし、論点を選んで足し引きする
  6. 人ヒアリングで聞き取り、結果を「前回」シートに書き足す(次の月の材料になる)
  7. 人課長へ、遅れの大きい事業と繰越・補正の検討が要りそうな事業を報告する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 財務会計システムから、担当する課の事業別の執行状況を書き出す
  2. 各課の執行計画のファイルを開き、事業ごとに今月末までの予定額を探す
  3. 計画と実績を並べ、遅れていそうな事業に色を付ける
  4. 各課が執行状況に添えて出す月次のコメント(「入札不調のため再公告」など)を読む
  5. 前回のヒアリングのメモを開き、前回聞いたことがどうなったかを確かめる
  6. 遅れている事業ごとに、聞くことを Word のメモに書く
  7. ヒアリングで聞き取り、結果を同じメモに書き足して、課長に報告する

(a)2番と3番に時間がかかる。 執行計画は課ごとに様式が少しずつ違い、事業の名前も財務会計システムと一致していないことがあります。事業を突き合わせるだけで、1課あたり20分以上かかります。

(b)遅れに気づくのが遅い。 計画と照らさず執行率だけで見ていると、秋に契約するはずの工事が入札に至っていないことに、12月になって気づきます。 その時点では、補正予算や繰越の検討が議会の日程に間に合うかどうかの話になります。

(c)前回の聞き取りが引き継がれない。 5番を省くと、先月「来月再公告します」と聞いた事業について、今月も同じことを聞くことになります。各課からは「先月も言いました」と言われます。

(d)聞く論点が担当者に依存する。 ベテランは「入札不調なら、年度内に工期が取れるか」「国庫補助の交付決定は出ているか」と、その先の繰越や補正まで見据えて聞きます。 若手は「遅れている理由を教えてください」で終わります。

  1. 【人】 財務会計システムから執行状況を書き出し、課ごとの点検のブックの「実績」シートに貼る
  2. 【自動】 ブックの式が、事業ごとに今月末までの計画額と実績の差を出し、遅れの区分を付ける
  3. 【人】 各課の月次のコメントを「コメント」シートに貼る。前回のヒアリングの記録は同じブックの「前回」シートにある
  4. 【AI】 ブックの Copilot(ブックを変えないモード)に、遅れの区分が付いた事業について、数字・コメント・前回の記録を並べた要約と、聞く論点を下書きさせる
  5. 【人】 査定担当が、下書きの数字をセルと照らし、論点を選んで足し引きする
  6. 【人】 ヒアリングで聞き取り、結果を「前回」シートに書き足す(次の月の材料になる)
  7. 【人】 課長へ、遅れの大きい事業と繰越・補正の検討が要りそうな事業を報告する

5番目が、この設計の分かれ目です。 Copilot の論点は、表とコメントから読める範囲の問いです。査定担当は、各課の事情や議会の日程を踏まえて、聞く順番と深さを決めます。

6番目を省かないでください。 ヒアリングの結果が「前回」シートに残るから、次の月の Copilot が「先月聞いたことの続き」を論点にできます。 記録が無ければ、毎月同じ問いをくり返す下書きになります。

02今回想定するシステム構成

構成図
財務会計システム(事業別の予算現額・支出負担行為額・支出済額を書き出す)
各課の執行計画(年度の初めに提出。事業ごとの月別の予定額)
各課の月次のコメント(執行状況に添えて提出)
   │  査定担当が課ごとの点検のブック(SharePoint)に貼る
   ▼【トリガー】毎月10日ごろ、前月末の執行状況を書き出したとき
点検のブック
   ├─ 計画(月別の予定額。年度の初めに1回貼る)
   ├─ 実績(毎月貼る)
   ├─ 差(式で計画との差と遅れの区分を出す)
   ├─ コメント(毎月貼る)
   └─ 前回(ヒアリングの記録を積み上げる)
   ▼
Copilot(ブックの Copilot:ブックを変えないモード)
   │  遅れている事業の要約と、聞く論点の下書き
   ▼
【査定担当が数字をセルと照らし、論点を選ぶ】
   ▼
ヒアリング → 結果を「前回」シートへ → 課長へ報告
役割想定する製品代替候補
処理Microsoft Copilot(Microsoft 365 アプリ内の Copilot)ChatGPT Enterprise、Claude、Gemini
保管SharePoint(課ごとの点検のブック)庁内のファイルサーバー
共有Microsoft Teams(財政課のチャネル)庁内のメール

新しく足すのは、査定担当と課長の Copilot のライセンスだけです。 財務会計システム、執行計画の様式、各課のコメントの出し方は、いまのものを使います。最初の準備は、課ごとの点検のブックを作り、事業の番号で計画と実績をつなぐことです。

ブックの Copilot を選ぶのは、材料がすべて表だからです。 公式のページでは、ブックの Copilot はデータの要約や、データについての質問への回答ができ、ブックを直接編集するモードのほかに、計画を示すモードと、ブックを変えずに分析して答えるだけのモード(Chat only)があるとされています。点検のブックは財務会計システムの写しなので、ブックを変えないモードだけを使います。

くり返しの手順は、独自のスキルにします。 公式のページでは、ブックの Copilot にくり返しの作業のための独自のスキルを定義できるとされています。毎月同じ指示を書くので、第7章の指示の文をスキルにしておくと、6名の査定担当が同じ手順で下書きを作れます。

ネットワークの分け方は、先に情報政策の担当と確かめます。 庁内のネットワークを業務の種類で分けている団体では、財務会計システムのある端末と、Copilot を使える端末が別になっていることがあります。書き出したファイルをどの経路で移せるかは、団体の情報セキュリティポリシーで決まります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

毎月10日ごろ、財務会計システムで前月末の執行状況が確定した時点を起点にします。 自動では動かしません。月初は支払の処理が続いていて、確定前の数字で遅れを判定すると、処理待ちの支払を遅れと読んでしまうからです。

各課の月次のコメントは、執行状況の確定と同じ時期に出してもらいます。コメントがそろわない課は、コメント無しで下書きを作り、論点に「課のコメント未着」と出します。 待っていると、点検そのものが月の後半にずれ込みます。

ヒアリングは月の後半に固定します。 下書きから実際の聞き取りまで1週間あれば、査定担当が論点を選び、必要な資料を課に頼む時間がとれます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
実績事業番号、事業名、予算現額、支出負担行為額、支出済額財務会計システムの書き出し
計画事業番号、月別の支出負担行為の予定額と支出の予定額、契約の予定月年度の初めに各課が出した執行計画
差と遅れの区分今月末までの計画額との差、差の率、遅れの区分ブックの式
課のコメント事業番号ごとの短い説明(入札不調、国の交付決定待ち、など)各課の月次の提出
前回の記録前回までに聞いたこと、課の回答、次に確かめること点検のブックの「前回」シート

質を決めるのは、事業番号です。 計画、実績、コメント、前回の記録のすべてを事業番号でつなぎます。 事業名でつなぐと、「〇〇整備事業」と「〇〇整備事業(繰越分)」のような違いで外れます。

遅れの区分は、次のように式で決めます。

区分条件の例
遅れ大今月末までの支出負担行為の計画額に対し、実績が半分に届かず、かつ差が一定額以上
遅れ計画額に対し、実績が8割に届かない
前倒し実績が計画額を2割以上上回る
計画どおり上のいずれにも当たらない
計画なし計画が出ていない事業

閾値は団体の規模と事業の性質で変わります。財政課で1つに決め、年度の途中で変えないでください。 変えると、前の月との比較ができなくなります。

前倒し も区分に入れるのは、予算の不足や流用の兆しを拾うためです。 地方自治法は、歳出予算の各款・各項の間での流用を原則として認めず、各項の間は予算の定めるところにより流用できるとしています。前倒しの事業は、年度の後半に予算が足りなくなる候補です。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどうやって
実績財務会計システム担当する課の事業別の執行状況を表計算の形式で書き出し、「実績」シートに貼る
計画各課の執行計画年度の初めに1回、事業番号をそろえて「計画」シートに貼る
課のコメント各課の提出事業番号の列を付けてもらい、「コメント」シートに貼る
前回の記録点検のブック査定担当がヒアリングのたびに書き足す

計画の様式は、年度の初めに財政課で1つに決めます。 各課の様式がばらばらのままだと、毎年4月に貼り直す作業が残ります。事業番号、月別の予定額、契約の予定月、国や県の補助の有無の列を、全課共通にします。

ブックの Copilot は、貼り付けの確認にも使います。 「計画シートにあって実績シートに無い事業番号、実績シートにあって計画シートに無い事業番号を挙げてください」と聞くと、事業番号の付け忘れや、年度の途中で新設された事業が見つかります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 確定の確認 … 前月末の執行状況が確定していることを、財務会計システムの担当に確かめます
  2. 事業番号のそろえ … 実績・計画・コメントの事業番号が一致しているかを確かめます
  3. 繰越分の分け方 … 前年度からの繰越分の事業は、当年度の予算と別の行にします。混ぜると執行率が見かけ上下がります
  4. 補正予算の反映 … 補正予算で予算現額が変わった事業は、計画の側も直してもらいます。 直っていなければ「計画の見直し待ち」の印を付けます
  5. 一括払いの事業の印 … 年度末に一括で支払う委託などは、計画の側で予定月が年度末になっていることを確かめます
  6. 個人の情報の除去 … 扶助費などで、課のコメントに個人を特定できる記載があれば消します
  7. 課のコメントの未着の印 … コメントが出ていない課は、その旨をコメントのシートに書きます

3番目と4番目を軽く見ないでください。 繰越分を混ぜると、前年度の遅れが当年度の遅れに見えます。 補正予算で予算現額だけが増えて計画が古いままだと、計画どおりの事業が 前倒し に区分されます。

6番目は、扶助費や貸付金の事業で起きます。 「〇〇さんの申請が遅れているため」のような記載は、点検には要りません。事業の単位の説明だけを残します。

Step5

AIに処理させる

させるのは、遅れの区分が付いた事業について、数字・課のコメント・前回の記録を並べて要約し、聞く論点を下書きすることだけです。

下書きする項目中身材料
課の全体遅れ大・遅れ・前倒しの件数と、差の合計差のシート
事業ごとの要約何が、計画に対してどれだけ遅れているか差のシートのセル
課の説明課のコメントをそのまま短くコメントのシート
前回からの変化前回聞いたことと、今月の数字の動き前回のシート
聞く論点年度内の執行の見通しを確かめる問い上の4つ
頼む資料論点を確かめるのに要る資料上の4つ

聞く論点は、次の型から選ばせます。 型を決めておくと、若手もベテランと同じ深さで聞けます。

型問いの例選ぶ条件
契約の時期入札・契約は何月の予定か。工期は年度内に取れるか工事・委託で支出負担行為が遅れている
外部の手続国・県の交付決定は出ているか、いつ出る見込みか補助の有無が「有」
繰越の検討年度内に支出を終わらない見込みがあるか遅れ大で、契約の予定月が年度の後半
不用の見込み執行しない見込みの額はあるか支出負担行為後の残額が大きい
予算の不足年度の後半に予算が足りなくなる見込みはあるか前倒し
前回の続き前回「〇月に〜する」と聞いたことは済んだか前回の記録に予定がある
させないこと理由
差や率の計算数字の出どころをブックの式だけにする
遅れの理由の推測理由は課のコメントと聞き取りにあるものだけ
繰越・補正の要否の判断財政課と各課が要件に照らして決める
事業の評価・見直しの提案査定の判断。下書きに書くと先入観になる
課や職員の仕事ぶりの評価遅れは事業の状況であって、人の評価ではない

3行目がいちばん大事です。 地方自治法は、年度内に支出を終わらない見込みのある経費を、予算の定めるところにより繰り越して使える繰越明許費とし、年度内に支出負担行為をして避けがたい事故で支出を終わらなかったものの繰越も定めています。どちらに当たるか、当たらないかは事実を確かめて決めることで、表から読めることではありません。 下書きの論点は「繰越の検討が要るかを確かめる」で止めます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは市の財政課で、予算の執行状況を点検する担当者の補助です。
このブックの「差」「コメント」「前回」の3つのシートだけを材料にしてください。
Web や他のファイルの情報は使わないでください。ブックは変更しないでください。

【対象】
「差」シートで、遅れの区分が「遅れ大」「遅れ」「前倒し」の事業だけを対象にします。

【課の全体】
区分ごとの件数と、差の金額の合計を、「差」シートの値から書いてください。

【事業ごとに書くこと】(事業番号の順)
1. 事業番号と事業名
2. 計画と実績 … 「差」シートの今月末までの計画額・実績額・差を、セルの値のまま書く。
   値の横に、参照したセルの番地を( )で書く。
3. 課の説明 … 「コメント」シートの同じ事業番号の記載を、40字以内に縮めて書く。
   記載が無ければ「課のコメントなし」と書く。
4. 前回からの変化 … 「前回」シートに記録があれば、前回聞いた予定と、今月の数字を並べる。
   予定どおりに進んだかを、数字から言えることだけ書く。
5. 聞く論点 … 次の型から当てはまるものを選び、事業に合わせた問いにする。
   契約の時期/外部の手続/繰越の検討/不用の見込み/予算の不足/前回の続き
   当てはまらない型は書かない。1事業につき3つまで。
6. 頼む資料 … 論点を確かめるのに要る資料を1〜2つ。

【厳守事項】
- 数字は「差」シートの値をそのまま写してください。計算し直したり、丸めたりしないでください。
- 遅れの理由を推測しないでください。理由は課のコメントと前回の記録にあるものだけです。
  無ければ「理由は未確認」と書いてください。
- 繰越や補正予算が必要か、事業を見直すべきかを書かないでください。
  「繰越の検討」の型では「年度内に支出を終わらない見込みがあるかを確かめる」と書くだけにしてください。
- 課や職員の対応の良し悪しを書かないでください。
- 個人の名前や個人を特定できる記載を写さないでください。
- 「計画なし」「計画の見直し待ち」の印がある事業は、論点を「計画の提出(見直し)を依頼する」だけにしてください。

セルの番地を書かせるのが、この指示の要です。 査定担当は、下書きの数字の横の番地を見て、そのセルを開けば正しいかが分かります。 番地の無い数字は、Copilot が計算したのか写したのかが分かりません。

論点の型を指示の中で列挙するのは、聞き方の深さをそろえるためです。 型が無いと、Copilot は「遅れの理由を教えてください」という一般的な問いを書きます。それでは若手の聞き方と変わりません。

Step7

出力形式を固定する

Copilot の答えを、課ごとのヒアリングのメモ(Word)に写します。

【〇〇課 令和8年9月末の執行状況】
遅れ大 2件/遅れ 3件/前倒し 1件
差の合計 …(差!H2)

【事業 1203 〇〇公園整備事業】
計画と実績 … 計画 48,000,000(差!D15)/実績 0(差!E15)/差 -48,000,000(差!F15)
課の説明 … 入札不調のため10月に再公告予定
前回からの変化 … 前回「9月に契約」と聞いたが、支出負担行為の実績は0のまま
聞く論点
・再公告から契約までの日程と、年度内に工期が取れるか(契約の時期)
・年度内に支出を終わらない見込みがあるかを確かめる(繰越の検討)
・前回の予定が遅れた事情(前回の続き)
頼む資料 … 再公告の日程表、工程の見込み

【事業 1410 〇〇扶助費】
計画と実績 … 計画 31,500,000(差!D22)/実績 36,900,000(差!E22)/差 5,400,000(差!F22)
課の説明 … 課のコメントなし
前回からの変化 … 前回の記録なし
聞く論点
・年度の後半に予算が足りなくなる見込みがあるか(予算の不足)
頼む資料 … 月別の支給件数の推移

事業ごとに同じ6項目の形にするのは、ヒアリングでそのまま使うためです。 査定担当はメモを課に先に送り、頼む資料をヒアリングの前に用意してもらいます。 当日は資料を見ながら論点を順に聞くだけになります。

論点の後ろに型の名前を( )で残すのは、集計のためです。 年度の後半に「繰越の検討」の型が付いた事業を数えれば、補正予算の編成の前に、繰越の検討が要りそうな事業の一覧ができます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
財務会計システム書き出し(手作業)執行状況を「実績」シートに貼る
各課提出の様式執行計画(年1回)と月次のコメント(毎月)
点検のブック式とブックの Copilot遅れの区分と、要約・論点の下書き
ヒアリングのメモWordCopilot の答えを写し、課に先に送る
課長への報告Teams のチャネル遅れ大と繰越の検討の型の一覧

財務会計システムには何も書き戻しません。 この構成が作るのは点検とヒアリングの準備までで、予算の執行や流用の手続は、これまでどおり財務会計システムで行います。

課への送付も、査定担当が行います。 下書きの論点がそのまま課に届くと、問いの言い方が詰問に読まれることがあります。送る前に、問いの言い方を整えます。

Step9

人が確認する

査定担当が全件を読み、論点を選びます。

  1. 数字を番地で確かめる … 下書きの数字の横の番地を開き、値が一致しているかを見ます。一致しない数字が1つでもあれば、その事業の下書きを作り直します
  2. 理由の出どころを確かめる … 課の説明が、コメントのシートの記載と合っているかを見ます。コメントに無い理由が書かれていれば消します
  3. 論点を選ぶ … 型の当てはめが合っているか、聞く順番をどうするかを決めます。議会の日程や国の補助の動きなど、表に無い事情を足します
  4. 繰越・補正の書き方を確かめる … 「必要」「不要」と書かれていないかを見ます
  5. 課に送る … 問いの言い方を整えて送ります

3番目が、査定担当の仕事として残る部分です。 表から読める論点は Copilot が出しますが、どの事業を深く聞くかは、その年の財政の状況で決まります。

1番目は、慣れてくると省きたくなる確認です。 番地を見て値が合っている月が続くと、数字を読み飛ばすようになります。ところが、財務会計システムの書き出しの列の並びが年度の途中で変わったり、貼る範囲が1行ずれたりすると、式も Copilot も、ずれた列の値をもっともらしく使います。 毎月、課の全体の差の合計だけは財務会計システムの画面の合計と照らし、合計が合っていることを確かめてから事業ごとの数字を読む順にしておくと、ずれに最初の1分で気づけます。

目標は、1課25分です。 内訳は、実績とコメントを貼って区分を見るのに5分、Copilot の答えを番地で確かめるのに10分、論点を選んでメモを整えるのに10分です。25分を大きく超える課は、事業番号がそろっていないか、計画の見直しが済んでいません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
執行状況が確定していない下書きを作らない。確定を待つ
計画とつながらない事業番号がある新設事業なら計画の提出を依頼。付け忘れなら課に直してもらう
補正予算で予算現額が変わった計画の見直しを依頼し、「計画の見直し待ち」の印
課のコメントが未着コメント無しで作り、論点に「課のコメント未着」
繰越分が混ざっている当年度分と行を分けて貼り直す
下書きの数字が番地の値と違うその事業を作り直す。くり返すなら指示を見直す
下書きに繰越の要否が書かれる消す。指示の厳守事項を確かめる
課のコメントに個人の記載貼る前に消す。下書きに出ていれば下書きも直す
Copilot が使えないこれまでどおり表を見てメモを書く。ブックの式と区分はそのまま使える

最後の行が、この設計の強みです。 遅れの区分はブックの式で出ているので、Copilot が止まっても、点検の物差しは残ります。 失うのは要約と論点の下書きだけです。

Step11

記録を残す

  • 毎月の点検のブック(実績・差・コメント・前回)の版
  • Copilot の答えをそのまま保存したもの(課ごと)
  • 査定担当が直した後のヒアリングのメモと、課に送った日
  • ヒアリングの結果(「前回」シートに積み上げる)
  • 論点の型ごとの件数の推移 … 特に「繰越の検討」の型が付いた事業の一覧
  • 課長への報告と、その後に決まったこと(補正予算に計上、繰越の手続、など)

「前回」シートは、年度をまたいで残します。 繰越になった事業は、翌年度の点検でも前年度の聞き取りが材料になるからです。

論点の型の推移は、年度の後半に効きます。 12月の補正予算の編成のころに「繰越の検討」の型が付いた事業を数えれば、どの事業について繰越明許費を予算に定める検討が要りそうかの当たりが付きます。

Copilot とのやり取りそのものも、利用履歴として組織の Microsoft 365 の中に残ります。公式のページでは、管理者は Purview で Copilot とのやり取りの保持のポリシーを設定できるとされています。文書の保存期間の規程と合わせて決めます。

04実装レベルの3段階

最小構成:執行状況と計画を手で貼り、ブックの Copilot に指示を貼って要約と論点を出させる / 遅れている事業の要約と論点の下書き
半自動化:上記+課ごとの点検のブックを型にし、遅れの区分の式と「前回」シートを持ち、指示を独自のスキルにする / 区分の判定と、前回からの続きの論点
本格構成:上記+財務会計システムの書き出しを決まった場所に置く仕組みと、ワークフローで課ごとのブックに配る仕組みを足す / 書き出しから課ごとのブックへの配布まで

本記事の想定は、半自動化です。 1課60分が25分になるのは、遅れの区分の式と、前回シートの積み上げがそろったときです。 本格構成は、ネットワークの分け方と情報セキュリティポリシーが許す範囲で考えます。 財務会計システムのある環境から、Copilot を使える環境へ自動でファイルを移す仕組みは、団体ごとに可否が分かれます。 手で貼る作業は1課数分なので、無理に自動にしなくても効果の大半は得られます。 段階を飛ばさないでください。 最小構成を2か月回すと、事業番号がそろわない課と、コメントを出さない課がはっきりします。そこを直してから全課に広げるほうが、手戻りが少なく済みます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
48 件
1件あたり現在時間
60 分
1件あたり導入後時間
25 分
現在  48件 × 60分 ÷ 60 = 48 時間/月
導入後 48件 × 25分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
28h
削減率
58%
年間削減時間
336h
年間金額換算(時間単価4,000円)
134万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 人口5万〜30万人規模の市町村で、財政課が毎月、予算の執行状況を各課から集めて点検している団体。財務会計システムから事業別の執行状況を表の形で書き出せる場合。年度の初めに各課から月別の執行計画(契約・支出の予定)を出してもらっている、または出してもらう準備ができる場合。補正予算や繰越の検討が年度末に集中し、遅れに気づくのが遅いと感じている場合。庁内で Microsoft 365 の Copilot を使える端末がある場合。
向いていない
  1. 事業の数が少なく、財政課の担当者が全事業の状況を頭に入れている小規模な団体。各課の執行計画が無く、遅れを測る物差しが無い場合(先に計画の様式を整えるほうが効きます)。Copilot を使える端末から財務会計システムの書き出しを扱えないネットワークの分け方になっている場合。なお、繰越や補正予算の要否、事業の見直しの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 査定担当2名が、自分の担当する課から2課ずつ、計4課を選ぶ(うち1課は、工事や国庫補助の事業が多い課にする)
  2. 先月末の執行状況と、その課の執行計画を、事業番号でそろえてブックに貼る
  3. 遅れの区分の式を入れる(最初は「遅れ大」と「遅れ」だけでよい)
  4. 課のコメントを貼り、ブックの Copilot(ブックを変えないモード)に第7章の指示を貼って答えさせる
  5. 答えを、先月実際にヒアリングで聞いたことと並べて比べる

4課は、ベテランと若手の両方で試してください。 ベテランが実際に聞いた論点と、Copilot が出した論点を並べると、型の一覧に何が足りないかが分かります。

出てきた内容判断
ベテランが聞いた論点の大半が出た全課のブックを作る段階に進む
遅れの理由の推測が混ざった指示の書き方で直る。構成は有効
番地の値と違う数字が出たシートの作りを見直す。 列の見出しと事業番号が先
計画とつながらない事業が多い執行計画の様式が先。 AI の問題ではない

4行目が出ることは珍しくありません。 計画とつながらない事業が多いのは、これまで計画と照らした点検ができていなかったということです。執行計画の様式を来年度から統一するだけでも、点検の質は上がります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
執行率の低さを遅れと読む物差しを計画との差にする。一括払いの事業は計画の側で年度末に置く
事業名で突き合わせて外れる事業番号でつなぐ。様式に番号の列を必ず置く
繰越分が混ざって遅れに見える当年度分と行を分ける
補正後に計画が古いまま計画の見直しを依頼し、「計画の見直し待ち」の印
遅れの理由を推測で書く「理由は未確認」を指示に書いておく
繰越の要否を書く「確かめる」で止める。厳守事項に明記する
下書きの数字が違う番地を書かせ、全数字を番地で確かめる
課のコメントに個人の記載貼る前に消す
論点が一般的な問いになる論点の型を指示の中で列挙する
査定担当ごとに指示が変わる指示を独自のスキルにして、財政課で1つにする
Web の情報が混ざる管理者が Web 検索を止める(第13章)

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「何を遅れとするか」という物差しの問題で、Copilot の性能とは関係ありません。 物差しを式で固めてあるかどうかで、運用に乗るかが決まります。

下から2行目は、年度をまたぐと効いてきます。 担当の交代で指示が個人のメモに散ると、翌年度の点検の深さがまた担当者に依存します。 スキルにして財政課の共有の場所に置きます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 事業別の予算と執行の状況、各課の説明、ヒアリングの記録です。予算と決算そのものは公表されるものですが、月の途中の執行状況、入札の予定、契約の相手の見込みは、公表前の情報です。扶助費や貸付金の事業では、課のコメントに個人の情報が紛れ込むことがあります。

  1. 入札の予定を外に出さない … 「〇月に再公告」「予定価格の見直し」のような記載は、公表前の入札の情報です。点検のブックの権限を財政課と当該の課に絞ります
  2. 閲覧の権限を見直す … 公式のページでは、Copilot は利用者が少なくとも閲覧の権限を持つ組織のデータだけを示すとされています。財政課の職員が見られるフォルダが広いと、別の課の公表前の情報が下書きに混ざりうるので、フォルダの権限を整えます
  3. Web 検索を止める … 公式のページでは、アプリの中で文書を開いたまま Copilot に指示すると、Bing へ送られる検索語がその文書の内容から作られうるとされ、その検索語にはデータ保護補遺(DPA)が適用されないとされています。管理者が Allow web search in Copilot のポリシーで Web 検索を止める前提にします
  4. 処理の地域を確かめる … 公式のページでは、EU の外の顧客の問い合わせは米国・EU・その他の地域で処理されうるとされています。団体の情報セキュリティポリシーで、扱える情報の区分を確かめます
  5. 個人の情報を渡さない … 課のコメントから個人の記載を消してから貼ります。点検に要るのは事業の単位の説明だけです
  6. 人の評価に使わない … 公式のページでは、Microsoft Copilot は職場のやり取りをもとに社員の業績や態度などを推し量る用途を制限しているとされています。遅れの一覧を、課や職員の評価の材料にしないことを、財政課の運用として決めます

誤りが起きた場合のリスクは、遅れを見落とすことと、根拠の無い論点で課に詰め寄ることの2つです。 前者は遅れの区分を式で決めることで、後者は理由の推測を禁じ、査定担当が論点を選ぶことで防ぎます。繰越と補正の判断は、どの段階でも人が事実を確かめて行います。

10まず何から始めるか

1週目:点検のブックの型を作る

計画・実績・差・コメント・前回の5つのシートを持つブックの型を作り、事業番号でつなぐ式と、遅れの区分の式を入れます。閾値を財政課で決めます。

2週目:4課で試す

査定担当2名が2課ずつ、先月の執行状況で試します。ベテランが実際に聞いた論点と並べて、型の一覧に足りないものを洗い出します。

3週目:指示をスキルにし、権限と Web 検索を整える

第7章の指示を財政課の標準にして、独自のスキルにします。点検のブックのフォルダの権限を見直し、管理者に Web 検索を止めてもらいます。 情報政策の担当と、書き出したファイルの移し方を確かめます。

4週目:課への通知を準備する

各課に、月次のコメントに事業番号の列を付けて出してもらうよう通知します。来年度の執行計画の様式を、事業番号・月別の予定額・契約の予定月・補助の有無の列にそろえる案も作ります。

2か月目: 査定担当6名全員が、担当する全課でこの流れを回します。「前回」シートに聞き取りの結果を書き足すことを、ヒアリングの最後の作業にします。 3か月目以降: 1課あたりの時間を実測し、「繰越の検討」の型が付いた事業の一覧を、補正予算の編成の前に課長が見られるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-26/最終更新:2026-10-26
確認した内容情報源確認日
ブックの Copilot がデータの要約と質問への回答を行えること。編集を許すモード(既定)、計画を示すモード、ブックを変えずに分析して答えるモード(Chat only)があること。別のブックからのデータの取り込みと、くり返しの作業のための独自のスキルの定義ができること。ライセンスや組織の設定によって使えない場合があることMicrosoft Support: Get started with Copilot in Excel2026-10-26
Microsoft 365 Copilot が Microsoft Copilot に改称されたこと。Copilot が利用者に少なくとも閲覧の権限がある組織のデータだけを示すこと。プロンプト・応答・Graph のデータが基盤のモデルの学習に使われないこと。やり取りが利用履歴として保存され、Purview で保持のポリシーを設定できること。EU の外の顧客の問い合わせが米国・EU・その他の地域で処理されうること。職場のやり取りをもとに社員の業績・態度などを推し量る用途を制限していることMicrosoft Learn: Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot2026-10-26
アプリの中で文書を開いたまま指示すると、Bing への検索語が文書の内容から作られうること。その検索語に DPA が適用されないこと。管理者が「Allow web search in Copilot」のポリシーで Web 検索を止められることMicrosoft Learn: Data, privacy, and security for web search in Microsoft Copilot2026-10-26
地方自治法第213条(繰越明許費)、第218条(補正予算)、第220条(長が予算の執行に関する手続を定めて執行すること、款・項の間の流用の原則禁止と各項の間の流用、事故繰越)、第221条(長が予算の執行の適正を期するため、実績・見込みの報告を求め、執行状況を実地に調査できること)e-Gov 法令API: 地方自治法2026-10-26

繰越や補正予算の要否、事業の見直しは、財政課と各課で事実を確かめて決めてください。 本記事は公式のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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