自治体の担当課が庁内の各課へ出した照会への回答を集め、回答の要点を一覧に要約して、未回答の課と内容の確認が要る回答を担当に示す
担当課が庁内の各課へ出した照会について、返ってきた回答のファイルとメールを集め、問いごとの要点を1課1行の一覧に要約します。あわせて、まだ回答していない課と、内容の確認が要る回答を担当に示します。
- 生成AI
- Azure OpenAI Service/Microsoft Copilot
- 連携・自動化
- Make/Power Automate/Zapier
- 対象業界
- 医療/教育/自治体
- 対象部門
- 経営企画/総務
- 対象業務
- 要約/集計・分析
- 主な課題
- 人手が足りない/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
- AIで行う処理
- 要約
- 主な効果
- 入力漏れ削減/対応スピード向上/工数削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- ノーコード連携(中)
- 人間の確認
- 必須
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 照会の文書と回答様式を作り、30課へメールで送る
- 返ってきたメールを開き、添付の様式を照会ごとのフォルダに保存する
- 様式の値を、照会ごとの集約表に1課ずつ写す
- 自由記述を読み、問いごとの要点を集約表の欄に書く
- 問いに答えていない、数字の単位が分からない、といった回答に印を付ける
- 期限が近づいたら、集約表の空いている行から未回答の課を数え、督促のメールを書く
- 印を付けた課に問い合わせ、直った回答で集約表を書き換える
- 集約表から、国・県への回答や庁内の報告の資料を作る
- 人照会を出すときに、照会番号・問い・宛先の課・期限を照会台帳のリストに登録する
- 人これまでどおり、照会の文書と回答様式を30課へ送る
- 自動共有メールボックスに回答のメールが届くと、フローが動き、件名の照会番号と送り主の課を確かめる
- 自動添付の様式を照会ごとのフォルダに保存し、様式の表の行を読む
- 自動プロンプトが、問いごとの要点と確認点をJSONで返す
- 自動回答一覧のリストに1課1行で書き込み、確認点のある回答に印を付ける
- 自動毎朝、照会台帳の宛先と回答一覧を突き合わせ、未回答の課と期限までの日数を Teams に流す
- 人担当が、印の付いた回答だけを開いて確かめ、必要なら課に問い合わせる
- 人担当が、督促の文の下書きを直して送る
- 人一覧の要点を読んで、国・県への回答や庁内の報告を作る
各工程の詳しい説明を読む
- 照会の文書と回答様式を作り、30課へメールで送る
- 返ってきたメールを開き、添付の様式を照会ごとのフォルダに保存する
- 様式の値を、照会ごとの集約表に1課ずつ写す
- 自由記述を読み、問いごとの要点を集約表の欄に書く
- 問いに答えていない、数字の単位が分からない、といった回答に印を付ける
- 期限が近づいたら、集約表の空いている行から未回答の課を数え、督促のメールを書く
- 印を付けた課に問い合わせ、直った回答で集約表を書き換える
- 集約表から、国・県への回答や庁内の報告の資料を作る
(a)写す作業が回答の数だけある。 10本の照会に30課が答えると、月に300の回答です。1つ開いて写すのに2分かかれば、それだけで月10時間です。 写し間違いも出ます。
(b)自由記述の要点が、担当によって違う。 「内容」の欄には、数行で済む課もあれば、経緯から書き始めて半ページになる課もあります。要点の書き方は担当者ごとに違い、同じ照会の集約表の中でも粒度がそろいません。
(c)問いとずれた回答に、取りまとめの後で気づく。 問2の件数を問3の欄に書いている、件数の単位が「件」か「人」か分からない、「〇〇課に確認中」とだけ書いてある。こうした回答は、集約表を作り終えて合計を出したときに初めて目に付きます。 期限の直前に問い合わせることになります。
(d)未回答の課に、期限の後で気づく。 照会が10本並行していると、どの照会のどの課がまだかを、担当者は覚えていられません。 集約表の空いた行を数えるのは、期限の当日になりがちです。
- 【人】 照会を出すときに、照会番号・問い・宛先の課・期限を照会台帳のリストに登録する
- 【人】 これまでどおり、照会の文書と回答様式を30課へ送る
- 【自動】 共有メールボックスに回答のメールが届くと、フローが動き、件名の照会番号と送り主の課を確かめる
- 【自動】 添付の様式を照会ごとのフォルダに保存し、様式の表の行を読む
- 【自動】 プロンプトが、問いごとの要点と確認点をJSONで返す
- 【自動】 回答一覧のリストに1課1行で書き込み、確認点のある回答に印を付ける
- 【自動】 毎朝、照会台帳の宛先と回答一覧を突き合わせ、未回答の課と期限までの日数を Teams に流す
- 【人】 担当が、印の付いた回答だけを開いて確かめ、必要なら課に問い合わせる
- 【人】 担当が、督促の文の下書きを直して送る
- 【人】 一覧の要点を読んで、国・県への回答や庁内の報告を作る
8番目が、この設計の分かれ目です。 担当が開くのは、確認点の付いた回答だけです。 確認点の無い回答は、一覧の要点を読んで終わりにします。全件の様式を開き直すと、30.0時間はほとんど減りません。
7番目の未回答の判定に、AIを使っていないのも意図してのことです。 宛先の30課と、回答が届いた課の差は、リストの突き合わせで決まります。 AIに「まだ答えていない課はどこか」と聞くと、メールの文面から推し量って、答えた課を落とします。
02今回想定するシステム構成
各課の回答(メール本文、回答様式のファイル) ▼【トリガー】照会用の共有メールボックスへの着信 Power Automate(クラウド フロー①:回答の受付) ├──▶ 件名の照会番号・送り主の課の確認 ├──▶ Get Attachment (V2) で様式を取り、SharePoint に保存 ├──▶ 様式の表の行を読む ├──▶ 照会台帳のリストで問いを引く ├──▶ AI Builder のプロンプト(プロンプトを実行する) │ 問いごとの要点・確認点を JSON で返す └──▶ 回答一覧のリストに1課1行 ▼【毎朝8時】クラウド フロー②:未回答の確認 照会台帳の宛先 × 回答一覧 → 未回答の課・期限までの日数 └──▶ 総務課の Teams チャネルへ ▼ 【担当が確認点の付いた回答と未回答の課だけを見る】
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| ワークフロー | Power Automate(クラウド フロー、Office 365 Outlook コネクタ) | Make、Zapier |
| 生成AI | AI Builder のプロンプト(「プロンプトを実行する」アクション、JSON 出力) | Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Microsoft Copilot |
| 保管 | SharePoint のリスト(照会台帳、課の一覧、回答一覧)とドキュメント ライブラリ | Dataverse |
| 様式の読み取り | Excel Online (Business) コネクタ | Microsoft Forms で回答を集める形に変える |
| 通知 | Microsoft Teams のチャネル | Outlook のメール |
新しく足すのは、フロー2本と、SharePoint のリスト3つだけです。 メールボックスと回答様式は今のものを使います。回答様式の表の範囲に、決まった名前のテーブルを付けておくのが最初の準備作業です。
トリガーには、Office 365 Outlook コネクタの「When a new email arrives in a shared mailbox (V2)」を使います。 コネクタの説明では、多くのメールが同時に届くと、まれにトリガーがメールを取りこぼすことがあるとされています。期限の日の夕方には回答が集中するので、第7章で毎朝の突き合わせを足します。
様式の表は、Excel Online (Business) コネクタの「List rows present in a table」で読みます。 このコネクタは OneDrive for Business や SharePoint のドキュメント ライブラリにあるファイルを扱い、データがテーブルになっている必要があります。 既定で返す行は256行までで、すべての行を取るにはページ分割を有効にします。照会の様式は数十行なので収まります。
プロンプトは、フローの「プロンプトを実行する」アクションで呼びます。 前のアクションの内容を入力に渡せ、出力を JSON にできます。プロンプトは Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があるとされています。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
フロー①は、照会用の共有メールボックスに回答のメールが届いたことを起点にします。 担当者の個人のメールボックスではなく、総務課の共有メールボックスを宛先にしてもらいます。担当が休んでも、異動しても、回答の受け口が変わらないようにするためです。
件名に照会番号の書き方を決めます。 「【照会2026-031】」のように、照会を出すときの件名にそのまま入れておき、各課には返信の形で返してもらいます。 フローは件名からこの番号を取り出し、照会台帳と結びます。番号の無いメールは、照会への回答として扱いません。
フロー②は、毎朝8時の繰り返しのトリガーで動かします。 スケジュールされたクラウド フローは、「毎日午前10時」のような定期的なスケジュールで実行でき、作ると繰り返しのトリガーがフローに入ります。メールの着信のトリガーがまれに取りこぼすことがあるので、毎朝、共有メールボックスにある照会番号付きのメールと回答一覧を突き合わせ、一覧に無いものをフロー①に回し直します。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 回答のメール | 件名(照会番号)、送り主、受信日時、本文、添付の様式 | 照会用の共有メールボックス |
| 回答様式の表 | 問いの番号、該当の有無、件数、単位、内容(自由記述) | 添付のファイルのテーブル |
| 照会台帳 | 照会番号、件名、問いの文、宛先の課、期限、担当者 | SharePoint のリスト |
| 課の一覧 | 課の名前、課のメールアドレス、庶務担当のアドレス | SharePoint のリスト |
| 前回の同じ照会の回答 | 毎年・毎期くり返す照会の、前回の件数と要点 | 回答一覧のリスト |
質を決めるのは、照会台帳の「問いの文」です。 AIが回答を問いごとにまとめるには、問2が何を聞いているかを知っている必要があります。照会の文書の問いを、番号つきでそのまま写して登録します。
前回の回答は、毎年くり返す照会にだけ使います。 件数が前回の10倍になっている、前回は「該当あり」だったのに今回は「該当なし」、といった変化は確認点の候補になります。ただし、変化が正しいかどうかはAIに判断させません。 「前回と大きく違う」と示すだけです。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | どう取るか |
|---|---|---|
| メールの本文と送り主 | 共有メールボックス | 着信のトリガーの出力 |
| 添付のファイル | 共有メールボックス | Get Attachment (V2) |
| 様式の保存 | SharePoint のドキュメント ライブラリ | Create file(照会番号のフォルダ、課の名前のファイル名) |
| 様式の表の行 | 保存した様式 | List rows present in a table |
| 問いの文・宛先・期限 | 照会台帳 | Get items(照会番号で絞る) |
| 送り主の課 | 課の一覧 | Get items(メールアドレスで絞る) |
添付は、トリガーで一緒に取らずに、Get Attachment (V2) で取ります。 コネクタの説明では、トリガーで添付を含める設定にすると、添付のある多くのメールが同時に届いたときに、添付のダウンロードで時間切れになることがあるとされ、添付を含めずに Get Attachment (V2) で取る方法が示されています。
様式を SharePoint に保存してから読むのは、コネクタがドキュメント ライブラリのファイルを扱うためです。 保存した様式は、そのまま照会ごとの回答の原本になります。なお、コネクタの説明では、Excel のファイルはコネクタが最後に使ってから最大6分ロックされることがあるとされています。担当が保存直後の様式を開いて直すと、ぶつかることがあります。
AIへ渡す前に整形する
- 照会番号の取り出し … 件名から「【照会2026-031】」の形を取り出します。無ければ、照会への回答ではないとして終わります
- 送り主の課の特定 … 送り主のアドレスを課の一覧で引きます。庶務担当の個人のアドレスから届くこともあるので、課のアドレスと庶務担当のアドレスの両方で引きます
- 様式の確認 … 添付の形式と、決まった名前のテーブルがあるかを確かめます。無ければ、様式を使っていない回答として扱います
- 表の行を文にする … 「問2|該当あり|件数 12|単位 件|内容 …」のように1行1問の文にして、プロンプトに渡します
- 本文の整理 … 引用された照会の本文と署名を除き、その課が新しく書いた部分だけを残します
- 同じ課からの2通目 … 同じ照会番号で同じ課から2通目が届いたら、「差し替え」として扱い、前の行を残したまま新しい行を正にします
5番目を省くと、要点に照会の文書の文言が混ざります。 返信の形で返してもらうので、本文の下には総務課が書いた照会の文がそのまま付いています。その文を回答として要約すると、どの課の要点も同じ文になります。
AIに処理させる
させるのは、1課の回答を問いごとに短くまとめることと、問いとずれた回答・確かめが要る回答を見つけて理由を書くことだけです。
| させること | やり方 | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| 問いごとの要点 | 自由記述を80字以内にまとめる | 記述が無ければ空にする |
| 回答の区分 | 該当あり/該当なし/検討中/回答なし | 読み取れなければ「回答なし」 |
| 件数と単位の写し | 様式の値をそのまま写す | 単位が無ければ空にし、確認点にする |
| 確認点 | 決まった理由の中から選び、根拠の文を写す | - |
確認点の理由は、次の6つに限ります。
| 理由のコード | 中身 |
|---|---|
no_answer | 問いの欄が空、または問いに答えていない |
off_question | 別の問いのことを書いている |
unit_unclear | 件数はあるが、単位が分からない(件か人か、など) |
pending | 「確認中」「後日回答」とだけ書いてある |
refer_other | 「〇〇課が所管」など、ほかの課に振っている |
big_change | 前回の同じ照会と比べて、該当の有無や件数が大きく変わっている |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 回答の内容が正しいかの判断 | 正しいかは回答した課と担当課が確かめる |
| 件数の計算・合計 | 合計はリストの集計で出す。要約の中で足し算をさせない |
| 書かれていない数字の補完 | 自由記述の「約10件」を件数の欄に移さない |
| 未回答の課の判定 | 宛先とリストの突き合わせで決める |
| 国・県への回答の文 | 何を回答するかは担当課が決める |
3行目が、いちばん起きやすい失敗です。 件数の欄が空で、自由記述に「年に10件程度」と書いてあると、AIは親切に件数を10として返します。集計に入るのは様式の欄の値だけにし、自由記述の数字は要点の文の中にだけ残します。
指示内容を固定する
あなたは市役所の総務課で、庁内の各課へ出した照会の回答を取りまとめる担当です。
1つの課の回答を、照会の問いごとに整理してください。
書かれていないことを補わないでください。
【照会の問い】{questions}
【この課の回答(様式の表)】{answer_rows}
【この課のメール本文】{mail_body}
【前回の同じ照会でのこの課の回答】{previous_answer}
【やること】
1. 問いごとに、回答の区分を「該当あり」「該当なし」「検討中」「回答なし」から選ぶ
2. 問いごとに、自由記述の要点を80字以内でまとめる
3. 件数と単位は、様式の欄の値をそのまま写す
4. 確認が要る回答があれば、理由のコードを選び、根拠にした文をそのまま写す
【理由のコード】
no_answer:問いの欄が空、または問いに答えていない
off_question:別の問いのことを書いている
unit_unclear:件数はあるが単位が分からない
pending:「確認中」「後日回答」とだけ書いてある
refer_other:ほかの課に振っている
big_change:前回と比べて該当の有無や件数が大きく変わっている
【厳守事項】
- 件数は様式の件数の欄の値だけを写してください。
自由記述にある数字を件数の欄に移さないでください。
- 件数の合計や平均を計算しないでください。
- 単位が書かれていないときは、単位を推測せずに空にし、unit_unclear を付けてください。
- 回答の内容が正しいかどうか、望ましいかどうかの意見を書かないでください。
- 要点には、照会の問いの文をそのまま書かないでください。この課が書いたことだけをまとめてください。
- 様式が無く本文だけの回答も、本文から同じように整理してください。
- 回答に JSON マークダウンを含めないでください。
「照会の問いの文をそのまま書かない」を入れているのは、要点が問いの言い換えになるのを防ぐためです。 回答が短いと、AIは「〇〇の実施状況について、該当があると回答」のように、問いを言い直して80字を埋めます。一覧で読むと、どの課の要点も同じに見えます。
プロンプトの温度は、既定の0のまま使います。 公式の説明では、温度は0から1の範囲で、低いほど予測可能で保守的な出力になるとされています。同じ回答を2回まとめさせて要点が変わると、差し替えのたびに一覧の文が揺れ、どこが変わったのかを担当が追えなくなります。 要点に言い回しの工夫は要りません。
最後の1行は、公式の説明にある対策です。 プロンプトのテストで「JSON を生成できませんでした」と出るとき、モデルが JSON をメタデータで囲んでいることがあり、この指示を加える方法が示されています。
出力形式を固定する
次の形のJSONで受け取ります。 プロンプトの出力を JSON にし、形式をカスタムで保存します。
{
"inquiry_no": "2026-031",
"section": "道路維持課",
"answers": [
{
"question_no": "2",
"category": "該当あり | 該当なし | 検討中 | 回答なし",
"count": "12",
"unit": "件",
"summary": "",
"flags": [
{ "code": "unit_unclear", "evidence": "" }
]
}
],
"needs_check": true
}
JSONで受け取る1つ目の理由は、問いごとに列へ分けて書き込めることです。 回答一覧のリストに、1課1行で「問1の区分」「問1の要点」「問2の区分」…と列を並べ、問いごとに縦に読める表にします。国・県への回答を作るときは、この列を上から読むだけです。
2つ目は、needs_check で印を付けられることです。 flags が1つでもあれば needs_check を真にし、一覧の「要確認」の列に印を付けます。担当は、この列で絞り込んだ行だけを開きます。
3つ目は、形式が変わらないことです。 公式の説明では、プロンプトを保存すると形式が固定され、フローで使うときは保存された形式が使われ、変わらないとされています。照会ごとに問いの数が違っても、answers の配列の長さが変わるだけで、フローの側は直しません。
なお、JSON の形式の定義には制限があり、フィールドのキーの無い配列(["abc", "def"] のような形)はサポートされません。 flags をコードの文字列の配列にせず、キーを持つ要素の配列にしているのはこのためです。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 照会用の共有メールボックス | Office 365 Outlook コネクタ | 回答のメールを受け、添付を取る |
| ドキュメント ライブラリ | SharePoint コネクタ(Create file) | 様式を照会ごとのフォルダに保存する |
| 様式のファイル | Excel Online (Business) コネクタ | テーブルの行を読む |
| 照会台帳・課の一覧 | SharePoint コネクタ(Get items) | 問い・宛先・期限・課を引く |
| AI Builder のプロンプト | プロンプトを実行する | 要点と確認点を JSON で返す |
| 回答一覧 | SharePoint コネクタ(Create item) | 1課1行で書き込む |
| 総務課の Teams チャネル | Microsoft Teams コネクタ | 未回答の課と期限、確認点の件数を流す |
各課へは何も送りません。 督促も問い合わせも、フローは下書きまでにします。同じ課に同じ日に2回督促が届くと、照会そのものの信頼が落ちます。 送るのは担当です。
フロー②が Teams に流すのは、照会ごとの3行です。 「照会2026-031:回答22課/未回答8課(期限まで2日)/要確認5課」。未回答の課の名前と、督促の文の下書きは、そのメッセージから回答一覧の絞り込みの画面に飛べるようにします。
人が確認する
担当が開くのは、要確認の印が付いた回答と、未回答の課だけです。 印の無い回答は、一覧の要点を読んで終わりにします。
- 要確認の回答を、理由のコードごとに見る …
pendingとrefer_otherは、問い合わせの先が決まっているので先に片付けます unit_unclearとoff_questionは様式を開く … 一覧の根拠の文と、保存された様式を見比べますbig_changeは、前回の回答と並べて見る … 変化に理由があるか、記入の誤りかを課に聞きます- 督促の下書きを直して送る … 期限まで2日を切った課から送ります
- 確かめた結果を一覧に残す … 問い合わせて直った値と、確かめて問題が無かった印を付けます
3番目を省かないでください。 前回と大きく違う回答は、記入の誤りであることもあれば、事業が始まった・終わったという本当の変化であることもあります。どちらかを決められるのは回答した課だけです。
要点が回答の中身とずれていないかは、最初の1か月だけ全件を見ます。 1か月見て、要点の書き方に問題が無ければ、印の無い回答を開くのはやめます。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 件名に照会番号が無い | 照会の回答として扱わない。毎朝の突き合わせで、照会の期間中に宛先の課から届いたメールを一覧に出し、担当が結び付ける |
| 様式を使わず本文だけで回答 | 本文から同じように整理し、「様式なし」の印を付ける |
| 様式のテーブルが無い・名前が違う | 行を読めない。「様式の読み取り不可」として担当へ |
| 同じ課から2通目 | 差し替えとして新しい行を正にし、前の行は残す |
| 庶務担当の個人のアドレスから届く | 課の一覧の庶務担当の列で課を引く。引けなければ担当へ |
| 1通に複数の照会の回答 | 件名の照会番号が1つでなければ、自動で分けずに担当へ |
| 着信のトリガーの取りこぼし | 毎朝の突き合わせで拾い、フロー①に回し直す |
| プロンプトがJSONを返さない | 1回だけやり直し、だめなら「要約不可」として担当へ |
| 照会の期限を延ばした | 照会台帳の期限を直す。未回答の通知はその日付で数え直す |
上から3行目までで、例外のほとんどを占めます。 どれもAIの問題ではなく、回答の返し方の決まりの問題です。 照会の文書に「件名を変えずに返信してください」「様式の表の形を変えないでください」と1行ずつ書くほうが、フローの例外処理を増やすより効きます。
記録を残す
- 回答のメールの受信日時、送り主、件名と、保存した様式のファイル
- プロンプトに渡した文(表の行を文にしたものと、整理した本文)
- プロンプトが返した JSON の全文
- 回答一覧に書き込んだ行と、差し替えの履歴
- 未回答の通知を流した日時と、督促を送った日時
- 担当が確かめた結果(問い合わせて直った値、問題が無かった印)
3つ目の JSON の全文を残すのは、要点と元の回答を後から見比べるためです。 国・県へ回答した後に数字の誤りが見つかったとき、どの課の様式のどの欄から来た数字かを、ファイルと JSON でたどれます。
照会ごとのフォルダと回答一覧は、文書の保存年限の規程に合わせて残します。 照会の取りまとめは、国・県への回答の根拠になる文書です。
04実装レベルの3段階
本記事の想定は半自動化です。 1件6分が2分になる見込みは、この段階で置いています。問い合わせと督促は担当が書いて送るので、課との関係の調整はこれまでどおり人が持ちます。 本格構成に進むかは、半自動化で3か月回してから決めます。 督促の文は照会ごとに言い回しが違ううえ、督促が自動で届くと、各課の庶務担当は「機械からの連絡」として後回しにしがちです。送るのを人に残す価値は、思ったより大きいことがあります。
05工数削減シミュレーション
導入後 300件 × 2分 ÷ 60 = 10 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 国・県からの調査や庁内の実態調査のために、総務課・企画課などが毎月いくつもの照会を庁内の30前後の課へ出し、回答様式のファイルをメールで受け取って集約表に写している市町村。回答の自由記述を読んで要点をまとめる作業と、未回答の課への督促が担当者の手作業になっている場合。庁内のメールとファイルの共有に Microsoft 365 を使っている場合。
- 照会が月に数件で、回答する課も数課に限られる場合。庁内の照会をすでに電子申請・アンケートの仕組みで出しており、回答が最初から一覧のデータで集まる場合。自団体の情報セキュリティポリシーで、庁内の文書をクラウドの生成AIで扱えない場合。なお、回答の内容が正しいかの判断と、国・県へ何を回答するかの決定は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 先月の照会から1本を選び、30課の回答の様式とメールを手元に集める
- 照会の問いの文を、番号つきで1枚の文書にする
- 手元のAIサービスに、第7章のプロンプトと問いの文と、1課の回答を貼る
- 返ってきた要点と確認点を、当時の集約表と見比べる
- 30課のうち、当時問い合わせた課に確認点が付いたかを数える
見るのは、要点のうまさより、確認点の拾い方です。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時問い合わせた課に、確認点が付いた | フローの作成に進む |
| 自由記述の数字が件数に入った | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| 要点が問いの言い換えばかりになった | 本文の引用を除けていない。前処理を先に直す |
| 様式を使わない課が多く、比べられない | 照会の出し方の決まりが先。 AIの問題ではない |
4行目が出たら、照会の文書の書き方から直します。 返し方がそろわないまま自動にすると、例外の一覧が毎回いちばん長くなります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 自由記述の数字が件数に入る | 件数は様式の欄だけと指示し、自由記述の数字は要点の中に残す |
| 要点が照会の文の言い換えになる | 引用された照会の本文を前処理で除く |
| 様式のテーブルが無く読めない | 様式にテーブルの名前を付けて配り、表の形を変えないよう照会の文書に書く |
| 件名を変えて返信され、照会と結べない | 照会の文書に「件名を変えずに返信」と書く |
| 回答が集中した日に取りこぼす | 毎朝、共有メールボックスと回答一覧を突き合わせる |
| 添付の取得で時間切れになる | トリガーで添付を含めず、Get Attachment (V2) で取る |
| 保存した様式を担当がすぐ開いて直せない | コネクタが使った後、最大6分ロックされることがある。少し待つ |
| 未回答の課をAIに数えさせて落とす | 宛先とリストの突き合わせで決める |
| 督促が自動で届いて後回しにされる | 下書きまでにし、送るのは担当にする |
| 確認点が多すぎて読まれない | 理由のコードを6つに絞り、big_change は毎年の照会だけに使う |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、AIが短い回答を埋めようとして起きます。集計に入る数字の出どころを様式の欄の1か所に決め、要点には課が書いたことだけを残すと、取り違えの出どころがはっきりします。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 照会の問いと、各課の回答です。回答には、事業の件数や実施状況のほか、ときに個別の事案の経緯や、関係する事業者・住民に関わる記述が混ざります。
- 住民や事業者の個人に関わる記述を求める照会は、この構成に乗せない … 照会の段階で、個別の事案を書かせる問いがあるかを見ます。乗せる照会を総務課が選びます
- モデルの処理の場所を確かめる … 公式の説明では、日本で GPT-4.1 mini などが「GA(クロスジオ)」とされ、クロスジオのモデルはリージョン外でデータを処理する可能性があるとされています。自団体の情報セキュリティポリシーで扱えるかを、情報政策の担当と確かめてから使います
- 回答の内容が正しいかは判断させない … この構成が出すのは要点と確認点です。国・県へ何を回答するかは担当課が決めます
- 各課へ自動で送らない … 督促と問い合わせは下書きまでです
- 回答一覧の閲覧の範囲を決める … 一覧には30課の回答が並びます。照会によっては、各課がほかの課の回答を見られないほうがよいものがあります。 リストの権限を照会の性質で分けます
- 入力に指示を含めない … 公式の説明では、セキュリティ上の理由により、プロンプトの入力に指示を含めることは禁止されています。回答の本文は「データ」として渡し、その中の文を指示として扱わない作りにします
誤りが起きた場合のリスクは、誤った数字を国・県へ回答することと、回答した課を未回答として督促することの2つです。 前者は自由記述の数字が件数に入ると起き、後者は未回答の判定をAIに任せると起きます。どちらも設計で出どころを1つに決めて防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:照会の出し方の決まりを作る
件名の照会番号の書き方、回答様式のテーブルの名前、「件名を変えずに返信」の1行を、総務課の照会の文書のひな形に入れます。照会台帳のリストを作り、問いの文・宛先・期限を登録する列を用意します。
2週目:先月の照会1本で試す
第8章のとおり、先月の照会1本の回答を手元のAIサービスに貼り、当時の集約表と見比べます。自由記述の数字が件数に入っていないかを最優先で見ます。
3週目:AIで扱ってよい照会を決める
情報政策の担当と、プロンプトのモデルの処理の場所と、乗せてよい照会の範囲を確かめます。 ここが決まらないうちにフローを動かすと、回答一覧ができても使えない状態になります。
4週目:フロー①を動かす
共有メールボックスの着信から、様式の保存、表の読み取り、プロンプト、回答一覧への書き込みまでを作ります。この時点では、未回答の通知を入れません。 まず要点と確認点の質を見ます。
2か月目: フロー②を足し、毎朝の未回答の通知と、取りこぼしの突き合わせを動かします。3か月目以降: 要確認の割合と、1件6分が何分になったかを実測します。総務課の照会で決まりが定着した時点で、企画課・財政課の照会に広げ、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 「When a new email arrives in a shared mailbox (V2)」のトリガーと「Get Attachment (V2)」のアクションがあること。多くのメールが同時に届くとまれにトリガーがメールを取りこぼすことがあること。トリガーで添付を含める設定にすると添付のダウンロードで時間切れになることがあり、添付を含めずに Get Attachment (V2) で取る方法が示されていること | Microsoft Learn: Office 365 Outlook connector | 2026-10-08 |
| OneDrive for Business や SharePoint のドキュメント ライブラリにあるファイルを扱うこと。「List rows present in a table」が既定で256行まで返し、すべての行にはページ分割を有効にすること。ファイルがコネクタの最後の使用から最大6分ロックされることがあること。対応する形式と、ファイルの上限が25MBであること | Microsoft Learn: Excel Online (Business) connector | 2026-10-08 |
| SharePoint コネクタに Get items(OData のフィルター クエリ)、Create item、Create file のアクションがあること | Microsoft Learn: SharePoint connector | 2026-10-08 |
| フローの中で「プロンプトを実行する」アクションでプロンプトを使い、前のアクションの内容を入力に渡せること。Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があること | Microsoft Learn: Power Automate でプロンプトを使用する | 2026-10-08 |
| プロンプトの出力を JSON にでき、保存した形式がフローで使われ変わらないこと。「JSON を生成できませんでした」のときに「回答に JSON マークダウンを含めないでください」を加える対策。フィールドのキーの無い JSON 形式がサポートされないこと | Microsoft Learn: JSON 出力 | 2026-10-08 |
| 日本で GPT-4.1 mini などが「GA(クロスジオ)」とされ、クロスジオのモデルはリージョン外でデータを処理する可能性があること | Microsoft Learn: リージョンと更新プログラムによるモデルの可用性 | 2026-10-08 |
| スケジュールされたクラウド フローが定期的なスケジュールで実行され、繰り返しのトリガーがフローに入ること | Microsoft Learn: トリガー | 2026-10-08 |
| セキュリティ上の理由により、プロンプトの入力に指示を含めることが禁止されていること | Microsoft Learn: プロンプトに入力を追加する | 2026-10-08 |
| Power Apps・Power Automate でプロンプトを使うとプロンプト ビルダーのクレジットが使われること。温度が0から1の範囲で、低いほど予測可能な出力になり、既定が0であること | Microsoft Learn: モデルのバージョンと設定を変更する | 2026-10-08 |
クラウドの生成AIで庁内の文書を扱えるかは、自団体の情報セキュリティポリシーで確かめてください。 本記事は公式の説明で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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