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フォームとメールで届く広告制作の依頼を、媒体・納期・予算・素材のヒアリング票にそろえて案件台帳に登録し、足りない項目を確認する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

問い合わせフォームとメールで届く制作の依頼を読み取り、媒体・納期・予算・素材の有無などをヒアリング票の項目にそろえて案件台帳に登録します。書かれていない項目は、確認のメールの下書きにして担当者に渡します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
IT・SaaS/その他/広告
対象部門
営業
対象業務
データ入力・転記/問い合わせ対応
主な課題
入力作業が多い/営業フォローが追いつかない/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
抽出
主な効果
対応スピード向上/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
50h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
60%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. フォームの通知メールと、共有アドレスに届いたメールを、営業の担当者が朝と昼に確かめる
  2. 依頼を1件ずつ読み、ヒアリング票のひな形に、書かれている項目を書き写す
  3. 案件台帳のスプレッドシートに1行を足し、依頼主・制作物・納期・担当を入れる
  4. ヒアリング票の空いている項目を見て、確認のメールを書く
  5. 確認のメールを送り、返信が来たらヒアリング票を埋める
  6. そろったら見積の担当に回す
導入後(After)
  1. 自動問い合わせフォームの送信、または共有アドレスへのメールの受信をきっかけに、Zapier のワークフロー(Zap)が動く
  2. 自動依頼の本文、件名、差出人、フォームの各欄の値を取り出す
  3. 自動案件台帳を差出人のメールアドレスで引き、直近の同じ依頼主の行があるかを確かめる
  4. 自動AI by Zapier が依頼の文面からヒアリング票の項目を取り出し、書かれていない項目を「不明」とする
  5. 自動項目のそろい方と依頼の種類で、ワークフローが3つの経路に分かれる
  6. 自動案件台帳に1行を足し(重複の疑いがあれば印を付け)、ヒアリング票の項目を書き込む
  7. 自動足りない項目があれば、確認のメールの下書きを Gmail に作る
  8. 人担当者が案件台帳と下書きを見て、文面を直して送る
  9. 人返信が来たら、担当者がヒアリング票を埋め、見積の担当に回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. フォームの通知メールと、共有アドレスに届いたメールを、営業の担当者が朝と昼に確かめる
  2. 依頼を1件ずつ読み、ヒアリング票のひな形に、書かれている項目を書き写す
  3. 案件台帳のスプレッドシートに1行を足し、依頼主・制作物・納期・担当を入れる
  4. ヒアリング票の空いている項目を見て、確認のメールを書く
  5. 確認のメールを送り、返信が来たらヒアリング票を埋める
  6. そろったら見積の担当に回す

(a)読んで書き写すのに時間がかかる。 2番目と3番目は、同じ内容を2か所に書いているだけです。1件あたりは数分でも、月200件では、営業の時間の大きな部分が書き写しに消えます。

(b)確認のメールが後回しになる。 4番目は、何が足りないかを考えながら文面を作るので時間がかかります。忙しい日には、書き写しまで済ませて確認のメールを翌日に回します。 その1日で、依頼主は別の会社にも問い合わせています。

(c)確認する項目が人によって違う。 ベテランは媒体の入稿規定や素材のデータ形式まで聞き、新しい担当者は納期と予算しか聞きません。足りなかった項目は、見積の段階や制作の途中で見つかり、2往復目、3往復目の確認になります。

(d)同じ依頼が二重に登録される。 依頼主がフォームから送ったあとで、同じ内容をメールでも送ってくることがあります。台帳に2行でき、別々の担当者が別々に返信してしまいます。

  1. 【自動】 問い合わせフォームの送信、または共有アドレスへのメールの受信をきっかけに、Zapier のワークフロー(Zap)が動く
  2. 【自動】 依頼の本文、件名、差出人、フォームの各欄の値を取り出す
  3. 【自動】 案件台帳を差出人のメールアドレスで引き、直近の同じ依頼主の行があるかを確かめる
  4. 【自動】 AI by Zapier が依頼の文面からヒアリング票の項目を取り出し、書かれていない項目を「不明」とする
  5. 【自動】 項目のそろい方と依頼の種類で、ワークフローが3つの経路に分かれる
  6. 【自動】 案件台帳に1行を足し(重複の疑いがあれば印を付け)、ヒアリング票の項目を書き込む
  7. 【自動】 足りない項目があれば、確認のメールの下書きを Gmail に作る
  8. 【人】 担当者が案件台帳と下書きを見て、文面を直して送る
  9. 【人】 返信が来たら、担当者がヒアリング票を埋め、見積の担当に回す

8番目が、この設計の分かれ目です。 下書きは作りますが、送りません。送る前に担当者が見るのは、取り出しの誤りを見つけるためだけではありません。 依頼の中身によっては、確認より先に電話をかけたほうがよい依頼もあります。その判断は人に残します。

3番目で重複を確かめるのは、第3章の(d)を防ぐためです。 重複の疑いがある依頼は、台帳に印を付けて同じ担当者に回します。

02今回想定するシステム構成

構成図
自社サイトの問い合わせフォーム          営業の共有アドレス(Gmail)
   │  送信時に Webhook で送る               │  新しいメール
   ▼【トリガー】Catch Hook                 ▼【トリガー】New Email Matching Search
Zapier(Zap をフォーム用とメール用の2本)
   ├──▶ Google Sheets ── 案件台帳を差出人で引く(重複の確認)
   ▼
AI by Zapier(Analyze and Return Data)
   │   媒体・制作物・サイズと数量・納期・予算・素材の有無・決裁者 を取り出す
   │   書かれていない項目は「不明」
   ▼
Paths(項目のそろい方と依頼の種類で分岐)
   ├── A:必要な項目がそろっている → 台帳に登録、担当者へ知らせる
   ├── B:足りない項目がある     → 台帳に登録、確認メールの下書き
   └── C:制作の依頼ではない     → 台帳に登録せず、ラベルを付けて残す
   ▼
【担当者が台帳と下書きを確かめて送る】
役割想定する製品代替候補
ワークフローZapier(Webhooks by Zapier、Gmail、Paths、Google Sheets)Make、Power Automate、n8n
生成AIAI by Zapier(Analyze and Return Data)ChatGPT(OpenAI)、Claude、Gemini
保管Google スプレッドシート(案件台帳とヒアリング票の列)Notion のデータベース
メールGmail(共有アドレスの受信と、下書きの作成)Microsoft Outlook

フォーム、Gmail、案件台帳は、今あるものをそのまま使います。 足すのは Zapier の Zap と、案件台帳のヒアリング票の列です。新しい画面も開発もありません。 担当者が見る場所は、今までどおり Gmail と案件台帳です。

土台になるのは、Zapier の AI by Zapier です。 Zap に生成AIの手順を足す組み込みの道具で、返してほしい項目を「出力のフィールド」として名前と型と説明で定義できます。 ヒアリング票の項目をそのまま出力のフィールドにすれば、取り出した値が項目ごとに次の手順へ渡ります。

AI by Zapier は、Professional・Team・Enterprise のプランで使えます。 モデルには段階があり、Standard は1回の実行で1タスク、Advanced は3タスク、Premium は5タスクを数えるとされています。新しく足した手順の既定は Premium なので、項目の取り出しのような単純な作業は Standard か Advanced に切り替えて、 タスクの消費を抑えます。

分岐の Paths も、有料のプランで使えます。 1つのパスのグループに最大10の分岐、入れ子は3段までで、Paths の手順と Filter の手順そのものはタスクを数えないとされています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

経路が2つあるので、Zap も2本に分けます。 フォーム用とメール用で、取り出しより後の手順は同じ形にそろえます。

フォームは、Webhooks by Zapier の Catch Hook で受けます。 Zap を作ると固有のURLが発行され、フォームの送信時にそのURLへPOSTするように設定します。このURLはZapの持ち主が変わらない限り変わりませんが、知られると誰でもZapを動かせるので、パスワードと同じように扱います。 フォームの設定画面以外に書かないでください。Catch Hook は要求の本文を解析して欄ごとの値にしてくれます。

メールは、Gmail の New Email Matching Search で受けます。 共有アドレスに届くメールのうち、検索の条件に合うものだけで動かします。条件には、自社の通知メール、請求書の送付、営業メールなど、制作の依頼でないことが分かっているものを除く式を書きます。Gmail のトリガーはいずれもポーリングで動きます。

経路トリガー受け取るもの
問い合わせフォームWebhooks by Zapier の Catch Hook会社名、氏名、メールアドレス、電話、制作物の種類、予算、希望納期、自由記述
営業の共有アドレスGmail の New Email Matching Search差出人、件名、本文、添付ファイルの有無

フォームの通知メールを、メール用の Zap で拾わないようにします。 フォームの送信で自社に届く通知メールも共有アドレスに入るなら、検索の条件で除きます。除かないと、同じ依頼が2本の Zap で2回処理されます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
依頼の本文フォームの自由記述、またはメールの本文と件名トリガー
フォームの欄の値制作物の種類、予算、希望納期(選ばれていれば)Catch Hook
差出人会社名、氏名、メールアドレス、電話トリガー
過去の依頼同じメールアドレスの直近の行(依頼日、制作物、状態、担当)案件台帳
ヒアリング票の項目の定義項目名、意味、「不明」とする条件、聞き方の例自社で作る一覧(Zap の指示に書き込む)

質を決めるのは、いちばん下の項目の定義です。 「媒体」が掲載先なのか配布方法なのか、「納期」が入稿日なのか掲出開始日なのか。定義があいまいなままだと、AIは自分なりの解釈で埋めます。 ベテランの営業がふだん聞いている項目を、意味と一緒に書き出します。

フォームの欄の値は、自由記述より優先しません。 予算の欄で「〜30万円」が選ばれていても、自由記述に「予算は50万円まで」と書いてあることがあります。食い違いは、どちらかに決めずに両方を残し、確認の対象にします。

Step3

データの取得方法を決める

案件台帳の照合は、Google Sheets の Lookup Spreadsheet Row で行います。 検索する列にメールアドレスの列を、検索する値に差出人のメールアドレスを指定します。「最後の行から探す」設定にすると、同じ依頼主の直近の依頼が先に見つかります。 見つからなければ新しい依頼主です。

取るものどこから何に使うか
依頼の本文と件名トリガーの出力AI by Zapier への入力
フォームの欄の値Catch Hook の出力自由記述との食い違いの確認
同じ依頼主の直近の行Lookup Spreadsheet Row重複の疑いの判定
直近の行の依頼日と状態上記の行の列「14日以内で、状態が受付中」なら重複の疑い

重複の判定は、AIではなく条件で行います。 同じメールアドレスで、14日以内に「受付中」の行があれば重複の疑い、という条件を Filter か Paths の条件に書きます。日数と状態は自社で決める取り決めで、 後から変えやすいように条件の側に置きます。

添付ファイルは読みません。 入稿規定や参考資料のPDFが添付されていることはありますが、この構成では「添付あり」という事実だけを台帳に残します。添付の中身は担当者が開いて見ます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 本文の整形 … メールの署名、引用された過去のやり取り、定型の挨拶文を除きます。Zapier の Formatter で、引用の記号で始まる行と、署名の区切りより下を落とします
  2. 長さの確認 … 本文が極端に長いもの(過去のやり取りが何十通も引用されているものなど)は、先頭から決めた文字数で切り、その旨を台帳に残します
  3. フォームの欄の値の取り込み … 選ばれた選択肢を、自由記述とは別の入力として渡します
  4. 今日の日付の付与 … 「来月末」「2週間後」のような相対的な納期を、AIが日付に置けるように、受付日を一緒に渡します
  5. 差出人の情報の付与 … 会社名と氏名を、本文とは別の入力として渡します

4番目を省かないでください。 受付日が無いと、「来月末」が何月かを決められず、AIは推測します。受付日を渡したうえで、置いた日付と元の表現の両方を返させます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、依頼の文面からヒアリング票の項目を取り出し、書かれていない項目を「不明」とし、依頼の種類を見分けることです。

項目取り出し方書かれていないときの扱い
制作物チラシ、パンフレット、Webバナー、LP、動画などに分ける「不明」
媒体掲載先・配布方法(新聞折込、ポスティング、SNS広告、自社サイトなど)「不明」
サイズと数量書かれた数値と単位のまま写す「不明」
納期書かれた表現と、受付日をもとに置いた日付の両方「不明」
予算書かれた金額や範囲のまま写す「不明」。相場で埋めない
素材の有無ロゴのデータ、写真、原稿それぞれについて「あり」「なし」「不明」「不明」
決裁者依頼主本人か、別に決める人がいるか「不明」
依頼の種類制作の依頼か、営業・売り込み・採用の応募・その他か判断できなければ unclear

「不明」と「なし」を分けるのが、この表でいちばん大事なところです。 「写真はこちらで用意できません」と書かれていれば写真は「なし」で、撮影の手配が要るという情報です。何も書かれていなければ「不明」で、聞くべき項目です。 混ぜると、撮影の見積が漏れるか、聞かなくてよいことを聞きます。

AIにさせないこと理由
予算や数量を相場で埋める確認すべき項目が確認済みに見える
受けるか断るかの判断営業の判断。制作の空き状況も関わる
納期が間に合うかの判断制作の段取りを知っている人が決める
確認のメールを送る下書きまで。送るのは担当者
添付ファイルの中身の要約この構成では読まない。担当者が開く
Step6

指示内容を固定する

AI by Zapier の指示の欄に、次のように書きます。 出力のフィールドは、項目ごとに名前と型と説明を定義します。

あなたは広告制作会社の営業部で、届いた制作の依頼を整理する担当です。
次の依頼の文面から、ヒアリング票の項目を取り出してください。
書かれていることだけを写し、推測で埋めないでください。

【受付日】{received_date}
【差出人】{sender_company} {sender_name}
【フォームで選ばれた値】{form_values}  (メールの場合は空)
【依頼の文面】{body}

【項目の意味】
- 媒体: 制作物をどこに載せるか、どう配るか(掲載先・配布方法)。制作物の種類ではない
- 納期: 依頼主が完成品を受け取りたい日。掲出・配布の開始日が書かれていれば別に写す
- 素材: ロゴのデータ、写真、原稿。依頼主が用意できるかどうか

【厳守事項】
- 書かれていない項目は「不明」にしてください。相場や一般的な例で埋めないでください。
- 「用意できない」「ない」と書かれている素材は「なし」、何も書かれていない素材は「不明」です。
  この2つを混ぜないでください。
- 金額、数量、サイズは書かれた数値と単位のまま写してください。換算しないでください。
- 納期は、書かれた表現を due_text にそのまま写し、受付日をもとに日付に置けるときだけ
  due_date に入れてください。置けなければ due_date は「不明」です。
- フォームで選ばれた値と文面の記載が食い違うときは、どちらかに決めず、
  conflicts に両方を書いてください。
- 受けられるか、間に合うか、いくらになるかを書かないでください。
- 制作の依頼でないもの(売り込み、採用の応募、請求、その他)は、
  request_type にその種類を書き、ほかの項目は空にしてください。
- missing_items には「不明」になった項目の名前だけを並べてください。

「不明」と「なし」の区別を、項目の意味と厳守事項の2か所に書いています。 片方だけだと、素材の欄で「書かれていない」を「なし」と読む動き方をします。撮影の手配が要るかどうかに直結する区別なので、重ねて書きます。

「媒体は制作物の種類ではない」を明記するのは、取り違えが多いためです。 「Instagram の広告」と書かれていると、制作物も媒体も「Instagram」になりがちです。制作物は「SNS広告のバナー」、媒体は「Instagram」と分けて取らせます。

Step7

出力形式を固定する

AI by Zapier の出力のフィールドを、次の項目で定義します。 項目ごとに値が分かれて返るので、そのまま案件台帳の列と確認メールの差し込みに使えます。

{
  "request_type": "production | sales_pitch | job_application | billing | other | unclear",
  "deliverable": "",
  "media": "",
  "size_quantity": "",
  "due_text": "",
  "due_date": "",
  "start_date_text": "",
  "budget": "",
  "assets_logo": "あり | なし | 不明",
  "assets_photo": "あり | なし | 不明",
  "assets_copy": "あり | なし | 不明",
  "decision_maker": "",
  "conflicts": "",
  "missing_items": ""
}

1つ目の理由は、Paths の条件に使えることです。 request_type が production 以外ならCの経路、missing_items が空ならAの経路、それ以外はBの経路、と条件を項目の値だけで書けます。 自由文で返させると、分岐の条件が書けません。

2つ目は、確認メールの下書きに missing_items をそのまま差し込めることです。 何を聞くかがAIの出力で決まり、どう聞くかは自社で決めた聞き方の例で決まります。

Paths の分岐は、次のとおりです。

経路条件動作
Arequest_type が production、かつ missing_items が空台帳に登録し、担当者へ「そろった依頼」として知らせる
Brequest_type が production、かつ missing_items が空でない台帳に登録し、確認メールの下書きを作る
Crequest_type が production 以外、または unclear台帳に登録せず、Gmail にラベルを付けて残す

Cの経路で unclear を台帳に入れないのは、担当者が見落とさないようにするためです。 台帳に入ると「受付済み」に見えます。ラベルの付いたメールは、担当者が毎日1回まとめて目で見ます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
問い合わせフォームフォームの送信先に Catch Hook のURLを設定送信のたびに欄の値を送る
Gmail(受信)New Email Matching Search制作の依頼らしいメールだけで動かす
Google SheetsLookup Spreadsheet Row、行の追加重複の確認と、1件1行の登録
AI by ZapierAnalyze and Return Dataヒアリング票の項目の取り出し
Gmail(下書き)Create Draft確認メールの下書き
Gmail(ラベル)Add Label to EmailCの経路のメールに印を付ける

確認メールは Create Draft で作り、Send Email は使いません。 送るかどうか、どう直すかは担当者が決めます。Gmail には Reply to Email や Create Draft Reply もありますが、 フォームからの依頼には返信する元のメールが無いので、新しい下書きとして作ります。メールの依頼には Create Draft Reply を使い、スレッドを保ちます。

案件台帳への書き込みは、1件1行の追加だけです。 既存の行を書き換えません。重複の疑いがあっても、新しい行を足して印を付けます。 どちらを残すかは担当者が決めます。

Step9

人が確認する

担当者が見るのは、台帳に足された行と、Gmail の下書きです。

  1. 台帳の行を見る … 取り出された項目を、元の依頼と見比べます。特に予算と納期は、元の文面を必ず開いて確かめます
  2. 重複の印を見る … 印が付いた行は、直近の行と同じ依頼かを確かめ、片方に「重複」と書きます
  3. 下書きを直して送る … 聞く項目が多すぎれば絞り、急ぎの依頼なら電話に切り替えます
  4. Cの経路のラベルを見る … 1日1回、ラベルの付いたメールを流し見て、制作の依頼が混ざっていないかを確かめます

1番目で予算と納期を必ず見るのは、そこが見積と段取りの前提になるからです。 「30万円」が税込みか税抜きか、「来月末」が入稿日か掲出日か。取り出しが正しくても、意味の取り違えはあります。

4番目を省かないでください。 依頼の文面が短すぎたり、売り込みのような書き出しだったりすると、制作の依頼が unclear や sales_pitch に入ります。ここで拾わないと、その依頼には誰も返信しません。

目標は、1件あたり6分です。 行の確認に2分、下書きの手直しと送信に3分、重複とラベルの確認をならして1分という想定です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
依頼の文面がほとんど無い(「お見積りお願いします」だけ)全項目が「不明」になる。下書きは作るが、電話をかけるかを担当者が決める
添付ファイルに依頼の中身がある本文が短く「添付あり」なら、台帳に印を付けて担当者が開く
フォームの欄と文面が食い違うconflicts に残し、確認の対象にする
同じ依頼主が14日以内に送ってきた重複の疑いとして印を付け、同じ担当者へ
制作の依頼が unclear に入るCの経路のラベルを1日1回見て拾う
AI by Zapier の手順が失敗するZap の実行履歴に残る。失敗した依頼は担当者が手で台帳に入れる
本文が極端に長い先頭で切り、その旨を台帳に残す
英語など日本語以外の依頼取り出しはできるが、下書きは作らずに担当者へ

上の1行目が、運用でいちばん多い例外です。 「見積をお願いします」だけの依頼に、8項目を並べた確認メールを返すと、依頼主は面倒に感じて返信しません。 こうした依頼は、電話で5分話すほうが早くそろいます。

Step11

記録を残す

  • 依頼の受付日時、経路(フォーム/メール)、差出人
  • AI by Zapier に渡した本文と、返ってきた項目の全文
  • 案件台帳に足した行と、重複の印
  • 下書きの文面と、担当者が送った文面
  • Cの経路に入った依頼と、担当者が制作の依頼として拾い直したもの
  • Zap の実行履歴(失敗した手順と、その依頼)

4つ目で、送った文面を残すのは、確認メールの書き方を育てるためです。 担当者が毎回同じところを直しているなら、聞き方の例のほうを直します。

5つ目は、依頼の種類の見分けを直す材料です。 拾い直したものが多いなら、指示の書き方か、Gmail の検索の条件を見直します。

04実装レベルの3段階

最小構成:依頼の文面を手で生成AIの画面に貼り、ヒアリング票の項目を出させる / 1件ごとの項目の取り出し
半自動化:上記+Zapier でフォームとメールを受け、AI by Zapier で取り出し、台帳への登録と確認メールの下書きまで自動にする / 受付から確認メールの下書きまで
本格構成:上記+返信のメールを受けてヒアリング票の空欄を埋め直し、そろったら見積の工程へ回す / 確認の往復と、見積への引き渡し

最小構成では、月200件はさばけません。 1件ずつ貼るので、確かめるための段階です。 半自動化で、1件15分が6分になり、この段階が本記事の想定です。 書き写しと台帳の登録は無くなり、確認メールは下書きを直すだけになります。残る6分は、取り出しの確認と、送る判断です。 本格構成は、半自動化が定着してから考えます。 返信のメールから空欄を埋め直すには、どの返信がどの依頼への答えかを確実に結び付ける必要があり、取り違えると別の依頼主の予算が入ります。 半自動化の台帳とスレッドの運用が安定してから足してください。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
200 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
6 分
現在  200件 × 15分 ÷ 60 = 50 時間/月
導入後 200件 × 6分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
60%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価3,500円)
126万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. チラシ、パンフレット、Webバナー、LP、動画などの制作の依頼が、自社サイトの問い合わせフォームと営業宛てのメールの両方から毎月百件以上届き、営業や制作進行の担当者が1件ずつ読んで、ヒアリング票と案件の一覧に書き写している広告制作会社やデザイン事務所。依頼に媒体・納期・予算・素材の有無が書かれていないことが多く、確認のメールを何度も往復している場合。Zapier の有料プランを使える場合。
向いていない
  1. 依頼のほとんどが既存の取引先から決まった担当者に電話や打ち合わせで入り、文章で届く依頼が少ない場合。月の依頼が数十件で、読んで書き写すだけで足りる場合。なお、受けるか断るか、いくらで受けるかという判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月届いた制作の依頼から20件を選ぶ(フォームとメールを半分ずつ、短い依頼を数件入れる)
  2. その20件について、当時ヒアリング票にどう書いたか、何を確認したかを用意する
  3. 社内で利用が認められている生成AIの画面に、第7章の指示と依頼の文面を1件ずつ貼る(差出人の氏名と連絡先は伏せる)
  4. 出てきた項目を、当時のヒアリング票と突き合わせる
  5. 「不明」になった項目と、当時確認した項目が一致するかを見る

20件は必ずやってください。 Zap を組む前に、自社の依頼の書かれ方で、どこまで正しく取り出せるかを確かめます。

出てきた内容判断
当時のヒアリング票とほぼ同じ項目が出て、「不明」も一致したZap の構築に進む
予算や数量を相場で埋めた指示の書き方で直る。構成は有効
媒体と制作物の取り違えが多い項目の定義が先。 自社での意味を書き足す

3行目が出ることは珍しくありません。 社内で「媒体」という言葉を、掲載先の意味と制作物の意味の両方で使っていることがあります。AIが迷うところは、新しい担当者も迷っているところです。 定義を書き足すことは、ヒアリング票そのものの見直しにもなります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
予算や数量を相場で埋める推測で埋めないことを指示に明記し、 最小構成の20件で確かめる
素材の「なし」と「不明」が混ざる指示の2か所に書き分け、出力のフィールドを3つの値に限る
媒体と制作物を取り違える項目の定義に「媒体は制作物の種類ではない」と書く
相対的な納期が誤った日付になる受付日を渡し、元の表現と置いた日付の両方を返させる
フォームの通知メールでも Zap が動くメール用の検索の条件で除く
同じ依頼が台帳に2行できる差出人で台帳を引き、14日以内の受付中の行があれば印を付ける
制作の依頼が売り込みとして埋もれるCの経路を台帳に入れず、ラベルを毎日見る
Catch Hook のURLが外に漏れるパスワードと同じに扱う。フォームの設定以外に書かない
AI by Zapier のタスクの消費が大きい既定の Premium から Standard か Advanced に切り替える
確認メールを自動で送ってしまうCreate Draft だけを使い、Send Email を置かない
聞く項目が多すぎて返信が来ない短い依頼は電話に切り替える。下書きの項目を絞る

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、「書かれていない」を何かで埋めてしまう失敗です。ヒアリングの仕組みとしての価値は、足りない項目を正確に数えられることにあります。

下の2行は、依頼主との関係に直接ひびきます。 自動で送ったメールの誤りは取り消せず、項目の多すぎる確認メールは返信をためらわせます。送る前に人が見る一手間を、削らないでください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 依頼主の会社名、氏名、メールアドレス、電話番号と、依頼の内容(新商品の発売時期、販促の計画、予算)です。発売前の新商品や店舗の出店計画など、依頼主にとっての機密が含まれることがあります。

  1. AI by Zapier に渡す範囲を、取り出しに必要なものに限る … 渡すのは依頼の本文と、受付日、差出人の会社名と氏名までです。電話番号は取り出しに要らないので渡しません
  2. 利用するAIのサービスを社内で決めてから使う … AI by Zapier は複数のAIの提供元に対応し、自社のキーを使う設定もあるとされています。どの提供元を使うか、依頼主の情報をどこまで渡してよいかを、社内の取り決めで先に決めます
  3. 確認メールを自動で送らない … 下書きまでです。依頼主に直接届くものを、人の目を通さずに出しません
  4. Catch Hook のURLを秘密として扱う … 知られると、誰でも Zap を動かして台帳に行を足せます
  5. 受けるか断るかの判断をAIにさせない … 依頼の種類の見分けは、台帳に入れるかどうかの振り分けにだけ使います

誤りが起きた場合のリスクは、確認すべき項目を確認済みとして見積に進むことと、制作の依頼を見落とすことの2つです。 前者は推測で埋めると起き、後者はCの経路を誰も見ないと起きます。どちらも、人の確認をどこに置くかで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:ヒアリング票の項目を書き出す

ベテランの営業に、初回のヒアリングで必ず聞く項目を挙げてもらい、項目ごとの意味と、「不明」とする条件、聞き方の例を一覧にします。媒体、納期、素材のように、人によって意味の違う言葉をここでそろえます。

2週目:20件で試す

先月の依頼20件を、氏名と連絡先を伏せて生成AIの画面に貼り、第7章の指示で項目を取り出させます。当時のヒアリング票と突き合わせ、予算や数量を相場で埋めていないかを最優先で見ます。

3週目:フォームの Zap を組む

Catch Hook でフォームを受け、AI by Zapier で取り出し、案件台帳に1行を足すところまで作ります。この時点では下書きは作らず、台帳の行の正しさだけを毎日見ます。 AI by Zapier のモデルの段階も、ここで決めます。

4週目:Paths と下書きを足し、メールの Zap を組む

Paths で3つの経路に分け、Bの経路に確認メールの下書きを足します。メール用の Zap も同じ形で組み、フォームの通知メールを拾わないことを確かめます。

2か月目: 担当者が直した下書きを見て、聞き方の例を直します。3か月目以降: 1件15分が何分になったかと、最初の返信までの時間を実測します。確認の往復が1往復で済む依頼が増え、ヒアリング票がそろうまでの日数が導入前より縮んだ時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
Catch Hook が要求の本文を解析し、Catch Raw Hook は解析せず(最大2MB)ヘッダーも含めること。WebhookのURLはZapの持ち主の移転時のみ変わること。Webhooks by Zapier が Free プランでは使えないこと。URLは推測しにくいが、知られると誰でもZapを動かせるので秘密として扱うことZapier: Trigger Zap workflows from webhooks2026-10-06
Gmail のトリガー(New Email、New Email Matching Search など)がポーリングで動くこと。アクションに Send Email、Create Draft、Reply to Email、Create Draft Reply、Add Label to Email があることZapier: How to get started with Gmail on Zapier2026-10-06
AI by Zapier が Zap に生成AIの手順を足す組み込みの道具で、OpenAI、Anthropic、Google Gemini、Azure OpenAI、Amazon Bedrock に対応し、自社のキーも使えること。出力のフィールドを名前・型・説明で定義できること。Standard は1タスク、Advanced は3タスク、Premium は5タスクで、新しい手順の既定が Premium であること。Professional・Team・Enterprise のプランで使えること。過去の実行から学習しないことZapier: Use AI by Zapier to analyze and return data2026-10-06
Paths が条件による分岐で、Free プランでは使えないこと。1つのパスのグループに最大10の分岐、入れ子は3段までであること。条件はフィールド・条件の種類・値で書き、AND/OR で組み合わせられること。Paths と Filter の手順がタスクを数えないことZapier: Add branching logic to Zap workflows with Paths2026-10-06
Google Sheets の Lookup Spreadsheet Row が、検索する列と値で行を探し、補助の検索列、最後の行から探す設定、見つからないときに行を作る設定を持つこと。Update Spreadsheet Row は1回の実行で1行を更新することZapier: Find and update spreadsheet rows in Google Sheets on Zapier2026-10-06

受けるか断るか、いくらで受けるかの判断は、営業と制作の責任者が行ってください。 本記事は、製品の公開仕様で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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