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税理士事務所で、顧問先ごとのメールのやり取りを月次で要約し、巡回監査の前に確認すべき事項と預かり待ちの資料を担当者に渡す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

顧問先とのメールを1通ずつ短い記録にためておき、巡回監査の3日前に、その顧問先のひと月分の記録を要約します。訪問で確認すべき事項と預かり待ちの資料を並べた監査前メモを、担当者に渡します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
士業
対象部門
経理/財務
対象業務
要約/記録・議事録作成
主な課題
引き継ぎができていない/情報が見つからない/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
要約
主な効果
属人化解消/工数削減/検索時間短縮
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
50h/月
AI導入後
12h/月
想定削減
76%
年間削減
456h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. カレンダーで翌日以降の訪問先を確かめる
  2. Gmail で顧問先の名前やドメインで検索し、前回の訪問以降のメールを開く
  3. スレッドを1つずつ読み、依頼した資料、届いた資料、聞かれたこと、答えたことを書き出す
  4. 届いていない資料と、答えていない質問をメモにまとめる
  5. 前回の訪問のメモと見比べ、持ち越しの事項を足す
  6. メモを持って訪問する
導入後(After)
  1. 人顧問先からのメールと、事務所から顧問先へ送るメールに、記録用のラベルが付くようにする(第7章の取得方法)
  2. 自動ラベルの付いたメールが届くたびに、Zapier の Zap が動く
  3. 自動送り主・宛先のドメインで顧問先台帳を引き、顧問先コードを付ける
  4. 【AI】 メール1通の新しく書かれた部分から、依頼・回答・届いた資料・質問・約束を短い記録にする
  5. 自動記録をやり取りの記録のシートに1行追加する
  6. 自動巡回監査の予定の3日前に、別の Zap が動き、その顧問先の前回の訪問以降の記録をまとめて引く
  7. 【AI】 記録を束ねて、今月の主な話題・監査で確認する事項・預かり待ちの資料・事務所の宿題に要約する
  8. 自動監査前メモを監査前メモのシートに書き、担当者にメールで送る
  9. 人担当者が監査前メモを読み、気になる項目は根拠のメールを開いて確かめてから訪問する
  10. 人訪問の後、顧問先台帳の前回の監査日を書き換える
各工程の詳しい説明を読む
  1. カレンダーで翌日以降の訪問先を確かめる
  2. Gmail で顧問先の名前やドメインで検索し、前回の訪問以降のメールを開く
  3. スレッドを1つずつ読み、依頼した資料、届いた資料、聞かれたこと、答えたことを書き出す
  4. 届いていない資料と、答えていない質問をメモにまとめる
  5. 前回の訪問のメモと見比べ、持ち越しの事項を足す
  6. メモを持って訪問する

(a)メールを探すのに時間がかかる。 顧問先からのメールは、社長の個人のアドレス、経理の担当者、税理士事務所の共有アドレスあてなど、送り主も宛先もばらばらです。 検索の言葉を変えて何度か探し直します。

(b)長いスレッドで経緯を見失う。 「先日の件ですが」で始まる返信が何通も重なると、どの依頼に対する返事なのかが分からなくなります。 引用の部分を読み直して確かめるのに時間がかかります。

(c)返事の無い依頼を見落とす。 メールに書かれているものは目に入りますが、事務所から頼んで返事の無いものは、自分の送信済みのメールを見ないと気づけません。 訪問の場で「あの資料はまだですか」と聞き忘れ、翌月にまた頼むことになります。

(d)担当替えで経緯が途切れる。 代わりに訪問する職員は、前の担当者のメールを読まないと経緯が分かりません。メモの書き方も担当者ごとに違います。

(e)忙しい月ほど準備が薄くなる。 決算や年末調整の時期は、訪問の前の準備に25分を割けず、前月のメモをそのまま持って出かけることがあります。聞き漏れが最も起きやすいのは、やり取りが最も多い月です。

  1. 【人】 顧問先からのメールと、事務所から顧問先へ送るメールに、記録用のラベルが付くようにする(第7章の取得方法)
  2. 【自動】 ラベルの付いたメールが届くたびに、Zapier の Zap が動く
  3. 【自動】 送り主・宛先のドメインで顧問先台帳を引き、顧問先コードを付ける
  4. 【AI】 メール1通の新しく書かれた部分から、依頼・回答・届いた資料・質問・約束を短い記録にする
  5. 【自動】 記録をやり取りの記録のシートに1行追加する
  6. 【自動】 巡回監査の予定の3日前に、別の Zap が動き、その顧問先の前回の訪問以降の記録をまとめて引く
  7. 【AI】 記録を束ねて、今月の主な話題・監査で確認する事項・預かり待ちの資料・事務所の宿題に要約する
  8. 【自動】 監査前メモを監査前メモのシートに書き、担当者にメールで送る
  9. 【人】 担当者が監査前メモを読み、気になる項目は根拠のメールを開いて確かめてから訪問する
  10. 【人】 訪問の後、顧問先台帳の前回の監査日を書き換える

4番目と7番目で、要約を2段に分けています。 4番目は1通ずつで、読ませる量が小さく、引用の部分を外せます。7番目は記録を束ねるだけなので、ひと月分のメールの全文を一度に読ませずに済みます。

10番目の書き換えが、次の月の区切りになります。 前回の監査日より後の記録だけが次の監査前メモに入るので、書き換えを忘れると、先月の事項が今月も並びます。

02今回想定するシステム構成

構成図
顧問先とのメール(Gmail。記録用のラベルが付く)
   │
   ▼【トリガー①】Gmail:ラベルの付いた新しいメール
Zap 1(1通ごとの記録)
   ├──▶ Google Sheets:Lookup Spreadsheet Row で顧問先台帳を引く(ドメイン)
   ├──▶ AI by Zapier(Analyze and Return Data):1通を短い記録にする
   └──▶ Google Sheets:Create Spreadsheet Row で、やり取りの記録に1行追加

巡回監査の予定(Google カレンダー)
   │
   ▼【トリガー②】Google Calendar:Event Start(3日前)
Zap 2(監査前メモ)
   ├──▶ Google Sheets:Lookup Spreadsheet Rows (Advanced)
   │       その顧問先の前回の監査日より後の記録をまとめて引く
   ├──▶ AI by Zapier(Analyze and Return Data):記録を束ねて要約
   ├──▶ Google Sheets:監査前メモのシートに1行追加
   └──▶ Gmail:担当者に監査前メモを送る(事務所の中だけ)
   ▼【人】監査前メモの確認、根拠のメールの確認、訪問
役割想定する製品代替候補
ワークフローZapier(Gmail、Google Calendar、Google Sheets)Make、Power Automate、n8n
生成AIAI by Zapier(Analyze and Return Data)ChatGPT(OpenAI)、Claude、Gemini
保管Google スプレッドシート(顧問先台帳、やり取りの記録、監査前メモ)Airtable
メールGmail(担当者のアドレスと事務所の共有アドレス)Microsoft Outlook
予定Google カレンダー(巡回監査の予定)Microsoft Outlook の予定表

新しく足すのは、2つの Zap と、やり取りの記録と監査前メモの2つのシートだけです。 会計ソフトには何も書き込みません。顧問先へ送るものもありません。

Zap を2つに分けるのは、動くきっかけが違うからです。 1つ目はメールが届くたび、2つ目は訪問の予定の3日前です。1つ目が毎日少しずつ記録をため、2つ目は記録を読むだけなので、訪問の直前に何十通ものメールをAIに読ませずに済みます。

2つ目の Zap の中心は、Google Sheets の Lookup Spreadsheet Rows (Advanced) です。 列と値で一致する行を、最大500行まで明細(line items)として返す検索で、1つの顧問先のひと月分の記録をまとめて取れます。1行だけを返す Lookup Spreadsheet Row では、記録が1件しか取れません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

1つ目の Zap は、Gmail のラベルの付いたメールで動かします。 Gmail のフィルタで、顧問先のドメインから届いたメールに「顧問先」のラベルが付くようにしておきます。Zapier の Gmail のトリガーには、新しいメールで動くもののほか、ラベルや検索の条件で動くものがあり、新しいメールのトリガーは届いてから1時間以内のものしか拾わないとされています。ラベルで動かすほうが、Zap が止まっていた間のメールも拾えます。

2つ目の Zap は、Google カレンダーの Event Start で動かします。 予定の開始の一定時間前に動くトリガーで、Time Before の欄で、どれだけ前に動かすかを決めます。 ここでは3日にします。巡回監査の予定は毎月同じ日に繰り返し入れていることが多く、繰り返しの予定は New Event のトリガーでは扱えないため、Event Start を使うよう案内されています。

3日前にするのは、預かり待ちの資料を訪問の前に顧問先へ頼み直す時間を残すためです。 前日に届いても、資料の準備は間に合いません。

Event Start はポーリングのトリガーで、確かめる間隔はプランによります。Free プランでは15分ごとのため、Time Before は16分以上にするよう求められています。3日前なら問題になりません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
メール送り主、宛先、日時、件名、本文、添付の有無と名前Gmail
顧問先台帳顧問先コード、名前、メールのドメインとアドレス、担当者、前回の監査日、決算月スプレッドシート
やり取りの記録1通ごとの記録(顧問先コード、日時、向き、要件、依頼、回答、届いた資料、質問、約束、メールのID)スプレッドシート(Zap 1 が書く)
巡回監査の予定予定の日時、説明欄の顧問先コードGoogle カレンダー

質を決めるのは、顧問先台帳のドメインとアドレスの列です。 社長が個人のアドレスから送ってくる顧問先では、ドメインだけでは顧問先が決まりません。 個人のアドレスは1つずつ台帳に載せます。

巡回監査の予定の説明欄には、顧問先コードを書く決まりにします。 予定の件名は「〇〇商事 監査」のように人によって書き方が違うので、件名から顧問先を探させません。

Step3

データの取得方法を決める

事務所から顧問先へ送るメールにも、ラベルが付くようにします。 Gmail のフィルタは受信したメールに付くもので、自分が送ったメールにはそのままでは付きません。 担当者が顧問先へ資料を頼むときは、事務所の記録用のアドレスを CC に入れる決まりにし、記録用のアドレスで受けたメールにラベルが付くようにします。第3章の(c)の「頼んだのに返事が無い」を拾うには、この送信側の記録が要ります。

取るもの方法何に使うか
メールGmail のラベルのトリガー1通ごとの記録の材料
顧問先Lookup Spreadsheet Row(列:ドメイン、補助:アドレス)顧問先コードと担当者
ひと月分の記録Lookup Spreadsheet Rows (Advanced)(列:照合用のキー)監査前メモの材料

やり取りの記録のシートの列は、次のように持ちます。

列中身書くもの
日時・メールのIDGmail の値をそのままZap 1
顧問先コード・向き台帳から引いた値と、受信/送信Zap 1
要件・依頼・回答・届いた資料・質問・約束1段目の出力Zap 1
照合用のキー「C012_未反映」などを式で出すシートの式
人の印記録の誤りを担当者が付ける人

「前回の監査日より後」の記録だけを引くために、やり取りの記録のシートに照合用のキーの列を作ります。 式で、記録の日時が顧問先台帳の前回の監査日より後なら「顧問先コード_未反映」、そうでなければ「顧問先コード_反映済」と出します。Lookup Spreadsheet Rows (Advanced) は列と値で探すので、「C012_未反映」で探せば、その顧問先の前回の訪問以降の記録だけが返ります。 訪問の後に前回の監査日を書き換えれば、古い記録は自動で「反映済」に変わります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 顧問先を決める … 送り主・宛先のドメインとアドレスで台帳を引きます。決まらないメールは記録せず、「顧問先不明」の一覧に入れます
  2. 向きを付ける … 顧問先から事務所へ(受信)か、事務所から顧問先へ(CC で記録)かを、送り主で決めます
  3. 本文だけを渡す … 添付の中身は渡しません。添付の有無とファイル名だけを記録に入れます
  4. 重複を外す … 同じメールのIDがすでに記録にあれば、Zap 1 を止めます。CC と受信で同じメールが2度届くことがあります
  5. 記録の数を見る … Zap 2 で引いた記録が0件なら、AIに渡さず「やり取りなし」のメモにします

3番目で添付を渡さないのは、意図してのことです。 通帳の写しや給与の資料には、口座番号や従業員の個人情報が並びます。監査前メモに要るのは「何が届いたか」で、「中身が何か」ではありません。

Step5

AIに処理させる

1段目(Zap 1)でさせるのは、メール1通の新しく書かれた部分から、次の項目を短く書き出すことです。

項目中身例
topic要件を1行で「9月分の給与資料の送付」
requests依頼されたこと・依頼したこと「源泉所得税の納付書の作成」
answers回答したこと・回答されたこと「車両の購入は分割払いとの回答」
documents_received届いた資料(添付の名前と本文の記載から)「9月の通帳の写し」
questions_open答えを待っている質問「交際費の上限の考え方」
promises「後で送ります」などの約束と、書かれていればその時期「請求書は来週まとめて送る」

2段目(Zap 2)でさせるのは、ひと月分の記録を束ね、次の4つにまとめることです。

まとめる先中身
今月の主な話題3〜5行で
監査で確認する事項答えを待っている質問、判断が要る相談、顧問先の約束で期日を過ぎたもの
預かり待ちの資料依頼したのに届いていない資料と、依頼した日・顧問先の返事
事務所の宿題顧問先から頼まれて、事務所がまだ返していないこと

突き合わせは、2段目の仕事です。 1段目の記録の requests と、後の記録の documents_received や answers を比べ、届いたもの・答えたものを外して残ったものだけを並べます。

させないこと理由
税務上の判断を書く「経費になる」「ならない」は担当者と税理士が判断する
顧問先への助言を書く監査前メモは事務所の中のメモで、助言の文面ではない
書かれていない資料の不足を推測する「通常は給与台帳も要る」のような一般論を足さない
口座番号・マイナンバー・従業員の氏名を写す記録に要らない。「通帳の写し」「給与の資料」と書く
顧問先の経営状態を評価するメールの断片から評価させない

3行目がいちばん起きやすい失敗です。 預かり待ちの資料をまとめさせると、生成AIは「月次の監査では通常、領収書と給与台帳も必要です」とメールに無い資料を足します。 毎月の定例の資料は、別の仕組み(UC-0072 の資料の受け取りの確認)で見ます。ここではメールでやり取りした依頼だけを並べます。

Step6

指示内容を固定する

1段目(Zap 1)の指示:

あなたは税理士事務所で、顧問先とのメールを記録する担当です。
メール1通の、新しく書かれた部分だけを読んでください。
「>」で始まる行や「〜wrote:」「〜のメール:」以降の引用は読まないでください。

次の項目を、それぞれ短い句で書き出してください。該当が無ければ空にしてください。
topic / requests / answers / documents_received / questions_open / promises

【厳守事項】
- 本文に書かれていることだけを書いてください。推測で補わないでください。
- 口座番号、マイナンバー、従業員や取引先の個人の氏名、金額の明細は
  写さないでください。「通帳の写し」「給与の資料」のように書いてください。
- 税務上の判断や助言を書かないでください。
- direction(received / sent)は入力のまま写してください。

【向き】{direction}
【件名】{subject}
【添付】{attachments}
【本文】{body}

2段目(Zap 2)の指示:

あなたは税理士事務所の監査担当の補助です。次は、ある顧問先との
前回の訪問以降のメールの記録です(古い順)。

次の4つにまとめてください。
1. 今月の主な話題(3〜5行)
2. 監査で確認する事項
3. 預かり待ちの資料(依頼した日と、顧問先の返事があれば付ける)
4. 事務所の宿題

【厳守事項】
- 依頼のあとに、同じ資料が届いた記録や回答の記録があれば、
  2〜4には入れないでください。
- 記録に無い資料や事項を足さないでください。一般的に必要な資料を
  補わないでください。
- 各項目に、根拠にした記録の日付を付けてください。
- 税務上の判断、助言、顧問先の経営の評価を書かないでください。

【顧問先】{client_name}
【記録】{records}

1段目の「引用を読まない」が、2段目の質を決めます。 引用を読ませると、3通目の返信の記録に1通目の依頼がもう一度入り、2段目で同じ依頼が3回並びます。

2段目の「根拠の日付を付ける」は、担当者がメールを開いて確かめるための手がかりです。 監査前メモの1行ごとに日付があれば、その日のメールだけを開けば済みます。

Step7

出力形式を固定する

1段目の出力の項目(見やすさのため JSON の形で示します):

{
  "topic": "",
  "requests": [""],
  "answers": [""],
  "documents_received": [""],
  "questions_open": [""],
  "promises": [""]
}

2段目の出力の項目:

{
  "highlights": [""],
  "confirm_at_visit": [ { "item": "", "source_date": "" } ],
  "pending_documents": [ { "document": "", "requested_on": "", "client_reply": "" } ],
  "office_todos": [ { "item": "", "source_date": "" } ]
}

担当者に届く監査前メモは、たとえば次のようになります。

【監査前メモ】〇〇商事(C012) 10月10日 訪問/前回の監査日 9月12日

■ 今月の主な話題
・9月分の給与資料と通帳の写しを受領
・社用車の買い替え(分割払い)の相談
・年末に向けて、役員の賞与の扱いの質問

■ 監査で確認する事項
・社用車の購入の契約書の有無と、支払の条件(9/20 の記録)
・役員の賞与の質問への回答がまだ(9/25 の記録)

■ 預かり待ちの資料
・9月分の売上の請求書の控え(9/15 依頼/9/16「来週まとめて送る」)
・車両の見積書(9/20 依頼/返事なし)

■ 事務所の宿題
・源泉所得税の納付書の作成(9/18 依頼)

1つ目の理由は、1段目の記録をシートの列にそのまま入れられることです。 列ごとに並ぶので、担当者がシートで顧問先を絞り込めば、要約を待たずに経緯を追えます。 代わりに訪問する職員も、このシートを見れば経緯が分かります。

2つ目は、2段目の pending_documents を、訪問の前の頼み直しに使えることです。 requested_on が古いものから、担当者が顧問先に「次回のご訪問の際にお願いします」と頼み直します。

3つ目は、source_date で根拠のメールにたどれることです。 要約の1行が本当かを、担当者が確かめられます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Gmail(受信と記録用のアドレス)ラベルのトリガー1通ごとに Zap 1 を動かす
顧問先台帳Lookup Spreadsheet Row顧問先コード・担当者・前回の監査日
やり取りの記録Create Spreadsheet Row / Lookup Spreadsheet Rows (Advanced)記録を書く・ひと月分をまとめて引く
Google カレンダーEvent Start(Time Before:3日)Zap 2 を動かす
AI by ZapierAnalyze and Return Data(2か所)1通の記録と、ひと月分の要約
監査前メモCreate Spreadsheet Rowメモを残す
Gmail担当者へのメール監査前メモを送る(事務所の中だけ)

監査前メモは、事務所の中の担当者にだけ送ります。 顧問先には何も送りません。宛先は顧問先台帳の担当者の列から取り、式で書かず台帳の値を使います。

会計ソフトには書き込みません。 預かり待ちの資料が届いたかどうかの確認も、会計ソフトの記帳の状況ではなく、メールの記録で見ます。

Step9

人が確認する

  1. 監査前メモを読む … 訪問の前日までに読みます
  2. 気になる行は根拠のメールを開く … source_date の日のメールを開き、要約が合っているかを確かめます
  3. 預かり待ちの資料を頼み直す … 古いものから、顧問先に連絡します
  4. 訪問の場で確認し、結果を残す … 確認した事項と受け取った資料を、訪問の記録に書きます
  5. 前回の監査日を書き換える … 顧問先台帳の列を書き換えると、次の月の区切りになります

2番目を省かないでください。 要約が「届いていない」とした資料が、実は電話で受け取っていた、ということは起きます。メールの外で起きたことは記録に入りません。

代わりに訪問する職員は、監査前メモに加えて、やり取りの記録のシートをその顧問先で絞り込んで読みます。 前の担当者のメールを転送してもらわなくても、誰が、いつ、何を頼み、何が返ってきたかを日付の順に追えます。気になる行だけ、前の担当者に元のメールを見せてもらいます。

目標は、120件をならして1件6分です。 監査前メモを読み、気になる行のメールを2〜3通開くまでを見込んでいます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
顧問先が決まらないメール記録せず「顧問先不明」の一覧へ。担当者が台帳にアドレスを足す
1通に複数の顧問先が関わる宛先の最初の顧問先で記録し、topic に印を付ける
同じメールが CC と受信で2度届くメールのIDで重複を外す
予定の説明欄に顧問先コードが無い監査前メモを作らず、担当者に「コードなし」と知らせる
記録が0件「やり取りなし」のメモにする
記録が500件を超える検索の上限を超える。多くは前回の監査日の書き換え忘れなので担当者に知らせる
訪問の予定が変更される予定を動かしたときの Zap の動きは試験で確かめる。メモには作った日時が残るので、古いメモと見分けられる
1段目の出力が空件名と日時だけを記録に入れ、印を付ける
税務調査の連絡など急ぎの内容監査前メモを待たず、担当者が受信の時点で対応する。この構成は月次のまとめ

6行目の「500件を超える」は、ほとんどが運用の問題です。 前回の監査日を書き換えないまま何か月もたつと、記録が「未反映」のままたまります。

Step11

記録を残す

  • 1通ごとの記録(顧問先コード、日時、向き、項目、メールのID)
  • 監査前メモの全文と、作った日時、そのときの前回の監査日
  • 人の確認の結果 … 要約が外れていた行と、その理由(電話で受け取った、引用を拾った、など)
  • 預かり待ちの資料が、何か月続けてメモに載ったか

最後の行が、この構成の物差しです。 同じ資料が3か月続けて預かり待ちに出ているなら、メールで頼む以外の手を考える時期です。

メールのIDを残すのは、根拠のメールにすぐ戻るためです。 記録が誤っていたときも、元のメールを開いて確かめられます。

04実装レベルの3段階

最小構成:メールの本文を手でAIの画面に貼り、4つにまとめさせる / 1件ごとの監査前メモの下書き
半自動化:上記+Zapier で1通ごとに記録をため、訪問の3日前に監査前メモを作って担当者に送る / 記録から監査前メモの送付まで
本格構成:上記+監査の記録と会計ソフトの記帳の状況を合わせ、預かり待ちの資料の頼み直しの下書きまで作る / 頼み直しの準備まで

本記事の想定は半自動化です。 1件25分が6分になります。残る6分は、監査前メモを読み、根拠のメールを確かめる時間です。 本格構成に進むかは、預かり待ちの資料の頼み直しにどれだけ時間を使っているかで決めます。 監査前メモで預かり待ちが毎月何件出るかを数えてから考えてください。 半自動化の段階でも、やり取りの記録のシートは月を追うごとに役に立ちます。 1年分たまれば、決算の打合せの前に「この1年で何を相談されたか」を顧問先ごとに絞り込んで見られます。監査前メモは毎月使い切りでも、記録は残り続けます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
120 件
1件あたり現在時間
25 分
1件あたり導入後時間
6 分
現在  120件 × 25分 ÷ 60 = 50 時間/月
導入後 120件 × 6分 ÷ 60 = 12 時間/月
月間削減時間
38h
削減率
76%
年間削減時間
456h
年間金額換算(時間単価3,500円)
160万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 顧問先を毎月訪問する巡回監査を行っている税理士事務所・会計事務所。顧問先との連絡の多くがメールで、訪問の前に担当者がひと月分のメールをさかのぼって読み直している場合。資料の依頼や質問への回答が、メールのどこかに埋もれて訪問の場で聞き漏れる場合。担当替えや休みの代理で、他の職員の顧問先を訪問することがある場合。Gmail と Google カレンダーと Zapier の有料プランを使える場合。
向いていない
  1. 顧問先との連絡がほとんど電話かチャットで、メールに残らない場合。顧問先が十数社で、担当者がやり取りを頭に入れている場合。メールに添付される書類の中身を読ませたい場合(本記事の構成はメールの本文だけを扱います)。なお、税務上の判断、顧問先への助言の内容、監査で何を指摘するかは、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 来週訪問する顧問先から5件を選ぶ(やり取りの多い顧問先と、担当替えのあった顧問先を入れる)
  2. 前回の訪問以降のメールを、担当者が Gmail で開き、本文を順に写す
  3. 手元のAIサービスに貼り、第7章の2段目の指示で4つにまとめさせる
  4. 担当者がこれまでどおり作ったメモと見比べる
出てきた内容判断
担当者のメモとおおむね同じZapier で記録をためる Zap 1 から組む
同じ依頼が何度も出てくる引用を拾っている。1通ずつ記録にする段が要る
事務所から頼んだ資料が出てこない送信のメールが入っていない。記録用のアドレスへの CC を決める

2行目が出ることは珍しくありません。 ひと月分を一度に読ませると、引用の重なりで同じ話が繰り返されます。本記事が要約を2段に分けている理由を、ここで確かめられます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
同じ依頼が監査前メモに何度も並ぶ1段目で引用を読ませない。1通ずつ記録にする
事務所から頼んだ資料が預かり待ちに出ない記録用のアドレスへの CC を決まりにする
一般に必要な資料をAIが足すメールでやり取りした依頼だけを並べるよう指示する
先月の事項が今月も並ぶ訪問の後に前回の監査日を書き換える
1行しか記録が取れないLookup Spreadsheet Rows (Advanced) を使う
繰り返しの予定で動かないNew Event ではなく Event Start を使う
社長の個人のアドレスのメールが記録されない顧問先台帳に個人のアドレスを載せる
口座番号などが記録に残る添付を渡さず、写さない指示を書く
電話で済ませた依頼が預かり待ちに残る電話の後に一言メールで残すか、監査前メモの確認で外す
顧問先の新しい担当者のアドレスが台帳に無い「顧問先不明」の一覧を週に1回見て、台帳に足す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、メールの「重なり」と「欠け」の問題です。引用を外し、送信を記録に入れることで、要約の前に材料をそろえてください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 顧問先の名前、社長や経理の担当者のメールアドレス、メールの本文(取引、給与、税務の相談、資金繰りの話を含む)です。個人事業主の顧問先では、本文がそのまま個人の情報です。

  1. 守秘義務の範囲で外部のAIを使えるかを先に決める … 税理士法第38条は、税理士が正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならないとしています。メールの本文を外部のAIに渡すことが、事務所の取り決めと顧問先との契約で許されるかを、所長と決めてから組みます
  2. AIの処理の通り道を選ぶ … AI by Zapier は、Zapier が用意するモデルのほか、自前のAPIキー(OpenAI、Anthropic、Google Gemini、Azure OpenAI、Amazon Bedrock)を使う設定もできます。どの経路で処理されるかを、事務所の情報管理の規程に照らして選びます
  3. 添付を渡さない … 通帳や給与の資料の中身は、監査前メモに要りません
  4. 記録に個人番号や口座番号を残さない … 指示で禁じ、記録のシートを月に1回見て、残っていないかを確かめます
  5. シートの共有を監査部の中に限る … やり取りの記録は、全顧問先の相談の中身が並ぶ一覧です
  6. 顧問先に送らない … 監査前メモは事務所の中のメモで、顧問先への助言ではありません

誤りが起きた場合のリスクは、届いていない資料を届いたと見落とすことと、顧問先の秘密が事務所の外に出ることの2つです。 前者は送信の記録が欠けると起き、後者はAIの経路と共有の範囲を決めずに始めると起きます。

10まず何から始めるか

1週目:守秘の取り決めと台帳を整える

所長と、メールの本文を外部のAIに渡してよいか、どの経路を使うかを決めます。並行して、顧問先台帳にドメイン・個人のアドレス・前回の監査日の列を足します。

2週目:5件で試す

第8章の手順で監査前メモを作らせ、同じ依頼が繰り返されていないか、事務所から頼んだ資料が出てくるかを見ます。

3週目:記録をためる Zap 1 を動かす

Gmail のフィルタと記録用のアドレスへの CC を始め、1通ごとの記録をシートにためます。まだ監査前メモは作らず、記録の中身を担当者が流し見ます。

4週目:監査前メモの Zap 2 を足す

カレンダーの予定の説明欄に顧問先コードを入れ、3日前に監査前メモが届くようにします。最初の月は、担当者がこれまでどおりのメモも作り、見比べます。

2か月目以降: 要約が外れた行の記録を見て指示を直し、預かり待ちの資料が何か月続くかを数えます。担当者がメールをさかのぼらずに訪問し、代わりの職員も同じメモで出かけられるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
Gmail のトリガーにラベルや検索の条件で動くものがあり、新しいメールのトリガーは届いてから1時間以内のものを拾うこと。Send Email などのアクションがあることZapier Help: How to get started with Gmail on Zapier2026-10-07
Google Calendar のトリガーに Event Start(予定の開始の一定時間前に動く)があること。繰り返しの予定は New Event で扱えず Event Start を使うことZapier Help: How to get started with Google Calendar on Zapier2026-10-07
Event Start がポーリングのトリガーで間隔がプランによること。Time Before でどれだけ前に動かすかを決めること。Free プランでは16分以上にすることZapier Help: Common Problems with Google Calendar2026-10-07
Lookup Spreadsheet Rows (Advanced) が列と値で最大500行を明細として返すこと。Lookup Spreadsheet Row が1行を返すこと。Create Spreadsheet Row があることZapier Help: How to get started with Google Sheets on Zapier2026-10-07
Analyze and Return Data で出力の項目を定義できること。Standard が1タスクであること。自前のAPIキー(OpenAI、Anthropic、Google Gemini、Azure OpenAI、Amazon Bedrock)を使えることZapier Help: Use AI by Zapier to analyze and return data2026-10-07
税理士法第38条(秘密を守る義務)の条文(法令APIで条文の原文を取得して確認)e-Gov 法令API: 税理士法2026-10-07

外部のAIにメールの本文を渡してよいかは、所長と顧問先との取り決めで決めてください。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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