賃貸管理会社が外国人の入居者に渡す設備の使い方・ごみ出し・緊急時の連絡の案内を、部屋ごとの設備に合わせて組み立て、入居者の言語に訳して送る
外国人の入居者に渡す設備の使い方・ごみ出し・緊急時の連絡の案内を、部屋ごとの設備台帳から日本語で組み立て、入居者の言語に訳して送ります。訳したあと、電話番号・曜日・時刻が原文と合っているかをスクリプトで照らします。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini
- 連携・自動化
- Google Apps Script/Make/Power Automate
- 対象業界
- 不動産/人材
- 対象部門
- カスタマーサポート
- 対象業務
- 問い合わせ対応/書類作成
- 主な課題
- 問い合わせが多い/属人化している/書類作成に時間がかかる
- AIで行う処理
- 翻訳
- 主な効果
- 品質標準化/対応スピード向上/工数削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 契約が決まると、担当者が設備台帳を開き、その部屋の設備を確かめる
- 日本語の入居案内のひな形をコピーし、その部屋に無い設備の段落を消し、機種の名前を書き換える
- 物件のごみ出しのルールの表から、集積所の場所・収集日・分け方を写す
- 緊急時の連絡先(管理会社の夜間の窓口、ガス会社、水道の窓口)を写す
- 案内の全文を翻訳サイトに貼り、入居者の言語に訳す
- 訳文を案内の様式に貼り、PDFにしてメールに付けて送る
- 入居後に入居者から届く質問に、電話やメールで答える
- 人担当者が、入居案内の依頼のシートに部屋番号・入居者の言語・送り先・鍵渡しの日を書き、状態を「依頼」にする
- 自動1時間ごとのトリガーで、スクリプトが「依頼」の行を拾う
- 自動設備台帳から部屋の設備を引き、部品の一覧から段落を選んで日本語の案内を組み立てる
- 自動翻訳の記録に訳がある部品はそれを使い、無い部品だけを Claude API に渡す
- 自動用語集に沿った訳と、訳文の中の番号・曜日・時刻の一覧が返る
- 自動スクリプトが、番号・曜日・時刻を原文と照らし、合わない部品に印を付ける
- 自動日本語と訳文を並べたメールの下書きを Gmail に作り、状態を「確認待ち」にする
- 人担当者が日本語の側を読み、部屋の設備と合っているか、照合の印が無いかを確かめて送る
- 人新しく訳した部品は、月1回、協力してくれる翻訳者か社内外の話者に見てもらい、翻訳の記録で「確認済み」にする
各工程の詳しい説明を読む
- 契約が決まると、担当者が設備台帳を開き、その部屋の設備を確かめる
- 日本語の入居案内のひな形をコピーし、その部屋に無い設備の段落を消し、機種の名前を書き換える
- 物件のごみ出しのルールの表から、集積所の場所・収集日・分け方を写す
- 緊急時の連絡先(管理会社の夜間の窓口、ガス会社、水道の窓口)を写す
- 案内の全文を翻訳サイトに貼り、入居者の言語に訳す
- 訳文を案内の様式に貼り、PDFにしてメールに付けて送る
- 入居後に入居者から届く質問に、電話やメールで答える
(a)部屋ごとに作り直している。 段落を消して機種名を書き換える作業を、毎回最初から行っています。消し忘れた段落があると、「この部屋に無い床暖房」の使い方が案内に載ります。
(b)訳を確かめる人がいない。 翻訳サイトの訳で、ごみの「燃やすごみ」と「燃えないごみ」が逆に訳されていても、読める社員がいないので気づけません。 曜日や時刻の取り違えも、入居者が集積所に間違った日に出して初めて分かります。
(c)同じ段落を毎回訳している。 給湯器の使い方の段落は、同じ機種の部屋が何十もあるのに、部屋ごとに翻訳サイトに貼り直し、毎回少しずつ違う訳になっています。 入居者どうしで案内を見比べると、言っていることが違って見えます。
(d)入居後の質問が減らない。 案内が分かりにくいと、ごみの出し方や給湯器のリセットの仕方の質問が電話で届きます。電話では言葉が通じにくく、1件の対応が長くなります。
- 【人】 担当者が、入居案内の依頼のシートに部屋番号・入居者の言語・送り先・鍵渡しの日を書き、状態を「依頼」にする
- 【自動】 1時間ごとのトリガーで、スクリプトが「依頼」の行を拾う
- 【自動】 設備台帳から部屋の設備を引き、部品の一覧から段落を選んで日本語の案内を組み立てる
- 【自動】 翻訳の記録に訳がある部品はそれを使い、無い部品だけを Claude API に渡す
- 【自動】 用語集に沿った訳と、訳文の中の番号・曜日・時刻の一覧が返る
- 【自動】 スクリプトが、番号・曜日・時刻を原文と照らし、合わない部品に印を付ける
- 【自動】 日本語と訳文を並べたメールの下書きを Gmail に作り、状態を「確認待ち」にする
- 【人】 担当者が日本語の側を読み、部屋の設備と合っているか、照合の印が無いかを確かめて送る
- 【人】 新しく訳した部品は、月1回、協力してくれる翻訳者か社内外の話者に見てもらい、翻訳の記録で「確認済み」にする
8番目で担当者が見るのは、日本語の側です。 訳文を読める必要はありません。部屋の設備と案内の段落が合っているかと、照合で印が付いた部品が無いかを見ます。
3番目で部品を選ぶ規則は、設備台帳の列と部品の一覧の「対応する設備の区分」の一致だけです。 AIに部屋の設備を推し量らせることはしません。台帳に無い設備は、案内にも載りません。
9番目は、翻訳の記録を育てる手順です。 確認済みの部品が増えるほど、AIが新しく訳す部品は減ります。運用が半年を過ぎると、多くの案内は確認済みの部品だけで組み上がります。
02今回想定するシステム構成
入居案内の依頼のシート(部屋番号・言語・送り先・鍵渡しの日) ▼【トリガー】時間主導型(1時間ごと) Google Apps Script ├──▶ 設備台帳・ごみ出しのルール・緊急時の連絡先を引く ├──▶ 部品の一覧から段落を選び、日本語の案内を組み立てる ├──▶ 翻訳の記録を引き、訳の無い部品だけを選ぶ ▼ Claude API(構造化出力) │ 用語集に沿った訳と、訳文の中の番号・曜日・時刻 ▼ Google Apps Script ├──▶ 番号・曜日・時刻を原文と照らす ├──▶ 翻訳の記録に「未確認」で書き足す └──▶ Gmail に日本語と訳文を並べた下書きを作る ▼ 【担当者が日本語の側を確かめて送る】
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 実行環境 | Google Apps Script | Power Automate、Make |
| 生成AI | Claude API(構造化出力) | Gemini API、OpenAI API |
| シート | Google スプレッドシート(依頼・設備台帳・ごみ出しのルール・部品の一覧・用語集・翻訳の記録) | Microsoft 365 のブック |
| メール | Gmail(下書きの作成) | Outlook |
新しく足すのは、スクリプトと Claude API の契約だけです。 設備台帳とごみ出しのルールは、今あるシートを使います。賃貸管理のシステムには書き込みません。 依頼のシートに部屋番号と言語を書くのは担当者です。
Apps Script には、翻訳の機能(LanguageApp.translate)も組み込まれています。 原文の言語・訳す先の言語を指定してテキストを訳す機能で、原文の言語を空にすると自動で判定します。ただ、用語集に沿わせる指示や、番号の一覧を一緒に返させることはできないため、この構成では Claude API を使います。 LanguageApp は、最小構成で試すときの比べる相手にします。
メールは送らず、下書きを作ります。 Gmail のサービスには、宛先・件名・本文に加え、HTMLの本文や添付ファイルを指定して下書きを作る機能(createDraft)があります。送る前に担当者が確かめる流れを、仕組みの側で守るためです。 Google Workspace のアカウントでのメールの宛先は1日1,500件までの上限がありますが、月60件の下書きには関係しません。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
時間主導型のトリガーを1時間ごとに1つ置きます。 依頼のシートで状態が「依頼」の行を拾い、1回の実行で処理します。時間主導型のトリガーは毎分から毎月の間隔で動かせ、インストール型トリガーは作成した人のアカウントで実行されます。 下書きもそのアカウントの Gmail に作られるため、入居者サービス課の共用のアカウントでトリガーを作ります。
1回の実行で処理するのは5件までにします。 1回の実行は6分までとされています。新しい部品の訳が多い案内は時間がかかるため、状態を「処理中」にしてから始め、終わったものだけ「確認待ち」にします。 処理中のまま30分を超えた行は、次の実行で「依頼」に戻します。
鍵渡しの日が3日後より近い依頼は、先に処理します。 依頼のシートを鍵渡しの日の順に並べて拾います。
物件の情報が変わったときの作り直しも、同じ依頼のシートで受けます。 ごみの収集日が変わった物件では、担当者がその物件の外国人の入居者の部屋を依頼に並べます。変わったのはごみの段落だけなので、ほかの部品は翻訳の記録から引かれ、新しく訳すのはその段落だけです。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 依頼 | 部屋番号、入居者の言語、送り先、鍵渡しの日 | 依頼のシート |
| 部屋の設備 | 給湯器・コンロ・エアコン・インターホン・換気扇・浴室乾燥の有無と機種の区分 | 設備台帳 |
| ごみ出しのルール | 集積所の場所、区分ごとの収集日と時刻、分け方の要点 | 物件ごとのごみ出しのルールのシート |
| 緊急時の連絡先 | 管理会社の窓口と夜間の窓口、ガス会社、水道の窓口の電話番号 | 物件ごとの連絡先のシート |
| 部品の一覧 | 部品ID、区分(設備/ごみ/緊急/共通)、対応する設備の区分、日本語の段落、固定訳かどうか | 部品の一覧のシート |
| 用語集 | 日本語の語と、言語ごとの決めた訳(「燃やすごみ」「資源ごみ」「追いだき」など) | 用語集のシート |
| 翻訳の記録 | 部品ID、原文の版、言語、訳文、確認の状態 | 翻訳の記録のシート |
質を決めるのは、用語集です。 「燃やすごみ」を、ある部品では burnable garbage、別の部品では combustible waste と訳すと、入居者には別のものに見えます。 自治体が配っている外国語のごみの案内があれば、そこで使われている訳を用語集に入れます。入居者が集積所の掲示で見る語と、案内の語がそろいます。
部品の日本語は、やさしい日本語で書いておきます。 一文を短くし、「〜してください」で終わる形にそろえます。原文が短く主語がはっきりしているほど、どの言語への訳も崩れにくくなります。
データの取得方法を決める
部屋の設備は、設備台帳を部屋番号で引きます。 台帳の列ごとに、その部屋の機種の区分(給湯器A型・B型、ガスコンロ・IH など)を読みます。部品の一覧の「対応する設備の区分」と一致する部品を選びます。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 機種の区分 | 設備台帳 | 設備の部品を選ぶ |
| 収集日と時刻 | ごみ出しのルール | ごみの部品に差し込む |
| 電話番号 | 連絡先のシート | 緊急の部品に差し込む |
| 既存の訳 | 翻訳の記録(部品ID・原文の版・言語で引く) | 訳し直しを避ける |
収集日・時刻・電話番号は、部品の段落の中に差し込み欄として置きます。 「燃やすごみは{曜日}の朝{時刻}までに出してください」のように書き、訳す前には差し込みません。 訳すのは差し込み欄を残した段落で、差し込みは訳したあとにスクリプトが行います。こうすると、物件が違っても同じ部品の訳を使い回せ、曜日や番号をAIが書き換える余地がありません。
曜日と時刻は、言語ごとの表記の表をスクリプトが持ちます。 「月曜日」を各言語で何と書くか、時刻を何時の形で書くかを表にし、差し込むときに使います。
連絡先は、受け付ける時間帯と組にして差し込みます。 管理会社の窓口と夜間の窓口は番号も受け付ける時間も違うため、「平日9時〜18時はこの番号、それ以外はこの番号」という並びを部品の側で決めておきます。 番号だけを並べると、夜に昼の窓口へかけて誰も出ないことになります。
AIへ渡す前に整形する
- 設備の欠けの確認 … 設備台帳に空の列があれば、その部屋の依頼を「台帳不足」にして担当者へ戻します
- 部品の選び出し … 機種の区分に合う部品と、物件のごみ・緊急の部品、共通の部品を並べます
- 翻訳の記録の引き当て … 部品IDと原文の版と言語が一致する訳があれば使います
- 固定訳の確認 … 固定訳の部品で、その言語の訳が無ければ、AIに訳させずに依頼を「固定訳なし」で止めます
- 訳す部品の束ね方 … 訳の無い部品を1回の要求にまとめ、部品IDを付けて渡します
- 用語集の絞り込み … 渡す部品に出てくる語だけを用語集から選びます
- 言語の確かめ … 依頼のシートの言語の欄を、用語集と固定訳がそろっている5つの言語の符号と照らします。符号の書き違い(「vn」と「vi」など)は、ここで止めます
3番目の「原文の版」は、部品の日本語を直すたびに1つ上げます。 翻訳の記録は部品IDと版と言語の組で引くので、原文を直した部品は自動的に訳し直しの対象になり、古い訳が新しい原文に付いたまま使われることがありません。 誤字を直しただけで版を上げると訳し直しが増えるため、意味が変わる直しのときだけ上げる約束にします。
4番目が、この構成の線引きです。 ガス漏れのときに窓を開けて火を使わないこと、119番に何を伝えるかは、訳の誤りがそのまま命に関わります。 その言語の固定訳が無いまま案内を出すより、止めて担当者に知らせるほうを選びます。
AIに処理させる
させるのは、渡した部品を、用語集の訳を守って入居者の言語に訳し、訳文に残った差し込み欄を一覧にすることです。
| させること | 中身 | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| 部品の訳 | 用語集の語は決めた訳で | 用語集に無い専門の語は、訳のあとに日本語を括弧で残す |
| 差し込み欄の保持 | {曜日}{時刻}{電話}をそのまま残す | 欄を消してしまったら、その部品に印 |
| 用語集の使用の一覧 | 部品ごとに、用語集のどの語を使ったか | — |
| 訳しにくかった箇所 | 原文があいまいで訳を決めにくかった語 | — |
部品は、たとえば次の形で渡します。
| 部品ID | 日本語の段落 |
|---|---|
| WH-A-01 | お湯の温度は、台所のリモコン(「給湯温度」)で選びます。おふろは、浴室のリモコンの「ふろ自動」を押すと、自動でお湯がたまります。 |
| GB-02 | 燃やすごみは、{曜日}の朝{時刻}までに、{場所}に出してください。 |
ここでの{時刻}や{曜日}は、訳文の中でも同じ形で返ってきます。 「ふろ自動」は訳のあとに括弧で日本語が残り、入居者はリモコンの文字と見比べられます。
差し込み欄を残させるのが、この構成の要点です。 曜日や電話番号を訳文の中でAIが書くと、「火曜日」が「木曜日」に、電話番号の1桁が別の数字になる取り違えが、読める人のいない言語の中で起きます。 欄のまま返させ、差し込みはスクリプトが表から行います。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 固定訳の部品の訳 | 命に関わる段落は、確かめた訳だけを使う |
| 原文に無い説明の追加 | 「日本では一般に〜」のような補足が、物件のルールと食い違う |
| 用語集の訳の言い換え | 掲示や他の部品との語がずれる |
| 差し込み欄への値の記入 | 曜日・時刻・番号はスクリプトが入れる |
2行目がいちばん起きやすい失敗です。 ごみの段落を訳すとき、AIは親切のつもりで「日本では分別が厳しいので注意してください」のような一文を足します。物件のルールに無い一文は、入居者にとってはどれがその物件のルールなのかを分かりにくくします。
指示内容を固定する
あなたは賃貸管理会社の入居案内を、入居者の言語に訳す担当です。
下の【部品】を {target_language} に訳してください。
【守ること】
- 【用語集】にある語は、必ず決められた訳を使ってください。言い換えないでください。
- {曜日}{時刻}{電話}{場所}などの差し込み欄は、そのままの形で訳文に残してください。
欄に値を入れたり、欄を消したりしないでください。
- 原文に無い説明・注意・補足を足さないでください。
- 原文を短くまとめたり、順番を入れ替えたりしないでください。
- 機種の名前、ボタンの表示(「運転」「おいだき」など)は、訳のあとに
日本語を括弧で残してください。入居者が実物の表示と見比べるためです。
- 用語集に無い語で訳を決めにくかったものは、hard_terms に書いてください。
【用語集】{glossary}
【部品】{parts}
「ボタンの表示は日本語を括弧で残す」を入れているのは、実物が日本語だからです。 給湯器のリモコンには「おいだき」と書いてあり、訳だけを読んでもどのボタンかが分かりません。訳と日本語の表示を並べると、入居者はリモコンの文字と見比べて押せます。
「短くまとめない」を明記しないと、手順の段落が要約されます。 「1. 電源を入れる 2. 温度を選ぶ 3. 運転を押す」が1文にまとめられ、手順の番号が消えます。
出力形式を固定する
次の形のJSONで受け取ります。 Claude API の構造化出力を使い、要求の output_config の format に type を json_schema として下の形のスキーマを入れます。
{
"target_language": "vi",
"parts": [
{
"part_id": "WH-A-01",
"translation": "",
"placeholders": ["{時刻}"],
"glossary_used": ["追いだき"],
"hard_terms": [""]
}
]
}
1つ目の理由は、placeholders をスクリプトで照らせることです。 原文の部品にある差し込み欄の一覧と、placeholders と、訳文の中に実際に残っている欄の3つが一致するかを確かめます。1つでも合わない部品は「欄の不一致」として下書きに印を付け、翻訳の記録には書きません。
2つ目は、glossary_used で用語集が守られたかを確かめられることです。 原文に用語集の語があるのに glossary_used に無い、または訳文に決めた訳が含まれていない部品に印を付けます。
3つ目は、hard_terms が月1回の確かめの材料になることです。 訳しにくかった語が同じものばかりなら、原文の書き方を変えるか、用語集に足します。
| 照合 | いつ | 合わないときの印 |
|---|---|---|
| 差し込み欄の数と種類 | 訳が返ったとき | 欄の不一致 |
| 用語集の決めた訳が訳文にあるか | 訳が返ったとき | 用語集の不一致 |
| 訳文の長さが原文の長さから大きく外れていないか | 訳が返ったとき | 長さの外れ |
| 数字の列の一致 | 差し込みのあと | 数字の不一致 |
照合は、差し込みのあとにもう一度行います。 差し込んだ訳文の中の数字の列を取り出し、日本語の側の数字の列と並べます。電話番号・時刻の数字が、順番も含めて一致するかを見ます。 曜日は、言語ごとの表記の表で日本語に戻して比べます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 依頼のシート | 読み書き | 依頼の取得と状態の更新 |
| 設備台帳・ごみ出しのルール・連絡先 | 読み取り | 部品の選び出しと差し込み |
| 部品の一覧・用語集 | 読み取り | 訳す部品と決めた訳 |
| 翻訳の記録 | 読み書き | 既存の訳の引き当てと、新しい訳の追加 |
| Claude API | UrlFetchApp.fetch() で POST | 部品の訳 |
| Gmail | GmailApp.createDraft() | 日本語と訳文を並べた下書き |
UrlFetchApp.fetch() は、method に post、contentType に JSON、headers に API キー、payload に要求の本文を入れて呼びます。muteHttpExceptions を true にして、失敗の応答でも例外で止まらないようにします。 失敗したときは状態を「依頼」に戻し、次の実行で再試行します。
API キーは、スクリプト プロパティに置きます。 スクリプト プロパティはスクリプトのすべての利用者で共有されるため、スクリプトの編集権限は課の管理担当に限ります。
下書きは、日本語と訳文を段落ごとに並べたHTMLの本文で作ります。 上に訳文、下に日本語を置き、入居者が日本人の知人や会社の担当に見せても通じる形にします。 件名は「入居のご案内/部屋番号」に言語の名前を添えます。
人が確認する
担当者が下書きを確かめてから送ります。 自動で送る設計にはしません。
- 印の有無を見る … 「欄の不一致」「用語集の不一致」の印があれば、その部品を開きます。印のある下書きは送らず、課の管理担当へ回します
- 日本語の側を読む … 部屋の設備と段落が合っているか(無い設備の段落が無いか)を見ます
- 差し込みを見る … 収集日・時刻・電話番号が、物件のルールと連絡先の表と合っているかを見ます
- 送る … 下書きを開いて送ります。鍵渡しの日に紙でも渡す場合は、同じ内容を印刷します
下書きは、上から「訳文」「日本語の原文」「照合の結果」の順に並べます。 照合の結果の欄は、送る前に担当者が消します。印の無い下書きは、この欄に「照合:すべて一致」とだけ出ます。 担当者は欄を見て消し、日本語の側を読んで送ります。
訳文の中身は、担当者は確かめません。 読めない言語を確かめることはできないためです。その代わりに、新しく訳した部品を「未確認」として翻訳の記録に残し、月1回、話者に見てもらいます。 確認済みになった部品だけが、次からの案内に使われる状態をめざします。
目標は、60件をならして1件10分です。 すべて確認済みの部品で組み上がった案内は数分で送れ、新しい部品を含む案内は印を確かめるので10分を超えます。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 設備台帳に空の列がある | 「台帳不足」で担当者へ戻す |
| 固定訳の部品にその言語の訳が無い | AIに訳させず「固定訳なし」で止める |
| 部品の一覧に無い機種がある | 「部品なし」で止め、課の管理担当が部品を足す |
| 差し込み欄が訳文から消えた | 「欄の不一致」の印。翻訳の記録に書かない |
| 数字の列が原文と合わない | 下書きに印を付け、送らずに管理担当へ |
| Claude API がエラーを返す | 状態を「依頼」に戻し、次の実行で再試行 |
| 処理中のまま30分を超えた | 次の実行で「依頼」に戻す |
| 訳文の長さが原文から大きく外れる | 「長さの外れ」の印。補足の追加か訳抜けを疑い、管理担当へ |
| 下書きの作成に失敗する | 状態を「依頼」に戻し、Gmail の容量と権限を確かめる |
| 5つの言語以外の言語の依頼 | 用語集と固定訳が無いため「言語未対応」で止め、管理担当が判断する |
2行目と最後の行は、同じ考え方です。 確かめた訳の土台が無い言語で、命に関わる段落をAIだけで訳して出すことはしません。新しい言語は、固定訳と用語集をそろえてから足します。
記録を残す
- 依頼ごとの部屋番号・言語・使った部品の一覧と、各部品の原文の版と訳の確認の状態
- AIに渡した部品と、返ってきたJSONの全文
- 照合の結果(欄の不一致・用語集の不一致・数字の不一致)
- 送った下書きの件名と送った日時
- 月1回の話者の確認の結果と、直した訳
hard_terms と話者の確認の結果は、用語集を足す材料にします。 同じ語が何度も訳しにくい語に挙がるなら、用語集に決めた訳を足すか、原文をその語を使わない書き方に直します。
1つ目は、原文を直したときに使います。 給湯器の段落の原文を直したら、その部品を使って送った部屋を一覧にし、直した版の案内を送り直すかを決められます。
04実装レベルの3段階
本記事の想定は本格構成です。 1件45分が10分になる計算は、この段階で置いています。半自動化では毎回すべての部品を訳すため、同じ機種の段落が部屋ごとに少しずつ違う訳になります。 本格構成で効くのは、翻訳の記録です。 確認済みの部品が増えると、新しく訳す部品が減り、話者の確認の手間も月を追うごとに減っていきます。
05工数削減シミュレーション
導入後 60件 × 10分 ÷ 60 = 10 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 管理戸数が数千戸あり、外国人の入居が月に数十件ある賃貸管理会社。外国人材の社宅を手配する人材会社・登録支援機関。部屋ごとに給湯器・コンロ・エアコン・インターホンの機種が違い、物件ごとにごみの集積所と収集日が違う場合。入居案内を担当者が翻訳サイトで訳して作っており、言語や担当者によって中身がそろっていない場合。設備台帳を部屋ごとにスプレッドシートで持っている場合。
- 外国人の入居が年に数件で、担当者が個別に案内できる場合。設備台帳が無く、部屋ごとの設備が分からない場合(先に台帳を作るほうが効きます)。入居者の言語が1つにまとまっていて、すでに訳した案内が1つあれば足りる場合。契約書や重要事項説明書の訳に使いたい場合(この構成が訳すのは、入居後の暮らしの案内までです)。
07最小構成で試す方法
- 先月の入居から5部屋を選ぶ(設備の違う部屋と、言語の違う入居者を混ぜる)
- 5部屋の日本語の案内を、今のやり方で作る
- ひな形の段落を部品に分け、差し込み欄を{}で置いた形に書き直す
- 部品と用語集を会社が契約しているAIサービスに貼り、第7章の指示で訳させる
- 同じ部品を
LanguageAppか翻訳サイトでも訳し、2つの訳を話者に見比べてもらう
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 用語集が守られ、差し込み欄が残り、話者が分かりやすいと言った | スクリプトとの連携に進む |
| 訳は良いが、補足の一文が足された | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| 原文の段落が長く、どちらの訳も分かりにくいと言われた | 原文をやさしい日本語に直すのが先 |
3行目が出ても、構成をやめる理由にはなりません。 長い原文はどの訳し方でも崩れます。部品を短く書き直すことが、訳の質に一番効きます。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 曜日や電話番号が訳の中で変わる | 差し込み欄のまま訳させ、差し込みはスクリプトが行う |
| 同じ語が部品ごとに違う訳になる | 用語集を渡し、glossary_used で確かめる |
| 補足の一文が足される | 指示で禁じ、訳文の長さが原文から大きく外れた部品に印を付ける |
| 手順の番号が消える | 「まとめない・並べ替えない」を明記する |
| 部屋に無い設備の段落が載る | 設備台帳の空欄を先に埋め、空があれば止める |
| 言語の符号を書き違えて別の言語で届く | 依頼の段階で、対応する5つの符号と照らす |
| 命に関わる段落を毎回AIが訳す | 固定訳にし、無い言語は止める |
| リモコンの表示と訳が結び付かない | ボタンの表示は日本語を括弧で残す |
| 担当者が訳文を確かめようとして時間がかかる | 担当者は日本語の側と印だけを見る。訳は月1回の話者の確認に回す |
上の2行が、訳の誤りの大半です。 どちらも、AIに書かせる範囲を狭くすることで防ぎます。
最後の行は、運用の約束で防ぎます。 読めない訳文を担当者が翻訳サイトで訳し戻して確かめ始めると、削減した時間が戻ってきます。 訳の確かめは、話者と照合の仕組みに任せます。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 部屋番号、入居者の言語と送り先、部屋の設備、物件のごみ出しのルールと連絡先です。AIに渡すのは部品の段落と用語集だけで、入居者の名前や送り先は渡しません。
- 入居者の情報をAIに渡さない … 差し込みも宛先もスクリプトが行うため、AIに渡る段落に個人の情報は入りません
- 学習に使われない契約で使う … Anthropic は、API などの商用の製品への入力と出力を、既定ではモデルの学習に使わないとしています。フィードバックの送信などで明示的に許可した場合は別とされています
- 命に関わる段落を固定する … ガス漏れ・火災・地震・救急の段落は固定訳とし、AIの訳で出しません
- 送信は人が行う … 下書きまでにし、担当者が確かめて送ります
- 契約の書類には使わない … 契約書や重要事項説明書の訳は、国土交通省のガイドラインの多言語の見本など、確かめられた資料を使います。 この構成が訳すのは、入居後の暮らしの案内までです
- 訳であることを伝える … 案内の末尾に「日本語の原文が正です」と書き、食い違ったときは日本語の側に従うことを伝えます
- 話者に見せる範囲を決める … 月1回の確認で話者に見せるのは部品の訳と原文だけにし、部屋番号や入居者の名前が入った下書きは見せません
誤りが起きた場合のリスクは、誤った曜日や番号を伝えて入居者が困ることと、命に関わる場面で誤った訳が読まれることの2つです。 前者は差し込み欄と数字の照合で、後者は固定訳で防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:ひな形を部品に分ける
日本語の入居案内のひな形を、設備ごと・ごみの区分ごと・緊急時の段落に分け、差し込み欄を置きます。一文を短くし、やさしい日本語に書き直します。
2週目:用語集と固定訳をそろえる
5つの言語について、ごみの区分・設備の名前の訳を用語集に入れます。自治体の外国語のごみの案内があれば、その訳に合わせます。 緊急時の段落は、話者か翻訳会社に訳してもらい固定訳にします。
3週目:5部屋で試す
5部屋の案内を部品から組み立て、AIの画面で訳して話者に見てもらいます。補足が足されていないか、手順の番号が残っているかを見ます。
4週目:依頼から下書きまでをつなぐ
依頼のシートから部品の選び出し、訳、照合、下書きまでをスクリプトで作ります。最初の1か月は、担当者が今のやり方の案内と並べて見比べます。
2か月目: 翻訳の記録を残す運用に切り替え、月1回の話者の確認を始めます。3か月目以降: 確認済みの部品の割合と、入居後の質問の電話の件数を月ごとに数えます。1件45分が何分になったかと、確認済みの部品だけで組み上がる案内の割合を実測した時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 国土交通省が賃貸人・仲介業者・管理会社のための実務対応マニュアルとして「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」を作成し、14の言語で入居申込書・重要事項説明書などの見本とチェックシートを載せていること | 国土交通省: 外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について | 2026-10-07 |
| 時間主導型のトリガーが毎分から毎月の間隔で動くこと。インストール型トリガーが作成した人のアカウントで実行されること | Google for Developers: Installable triggers | 2026-10-07 |
| 1回の実行が6分まで。Google Workspace のメールの宛先が1日1,500件まで | Google for Developers: Quotas for Google Services | 2026-10-07 |
GmailApp.createDraft() で宛先・件名・本文と、HTMLの本文・添付ファイルなどを指定して下書きを作れること | Google for Developers: GmailApp | 2026-10-07 |
LanguageApp.translate() が原文の言語と訳す先の言語を指定してテキストを訳し、原文の言語を空にすると自動で判定すること | Google for Developers: LanguageApp | 2026-10-07 |
UrlFetchApp.fetch() の method・contentType・payload・headers・muteHttpExceptions | Google for Developers: UrlFetchApp | 2026-10-07 |
| スクリプト プロパティがスクリプトのすべての利用者で共有されること | Google for Developers: Properties Service | 2026-10-07 |
Claude API の構造化出力を output_config の format(type: json_schema と schema)で指定すること | Claude Platform Docs: Structured outputs | 2026-10-07 |
| Anthropic API などの商用の製品への入力と出力を、既定ではモデルの学習に使わないこと | Anthropic Privacy Center: Is my data used for model training? | 2026-10-07 |
ごみの区分の訳は、物件のある自治体の外国語の案内に合わせてください。 緊急時の段落の訳は、話者か翻訳会社の確かめを経たものを使ってください。本記事は国土交通省、Google for Developers、Claude Platform Docs、Anthropic Privacy Center で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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