会社紹介動画が見られない原因と対策|伝わる構成の作り方

会社紹介動画が見られない原因と対策|伝わる構成の作り方

「会社紹介動画を作ったのに、サイトのどこに置いても再生が伸びない」「展示会で流しているが、前を通る人が足を止めない」——動画の使い道を洗い直す場では、この二つがほぼ同時に挙がります。そこで疑われるのは、たいてい画質か尺か編集の腕です。ところが撮り直しても、3分を90秒に詰めても、同じ相談が翌年また出てきます。原因が作りの粗さではないからです。見てもらえないのは、最初の数秒で「これは自分に関係のある話だ」と分からないからであり、そこを決めているのは撮影でも編集でもなく、何をどの順で、どれだけの時間見せるかという構成です。この記事では、見られない原因を六つに分け、最初の数秒に置く要素、要素ごとの持ち時間の配分、会社紹介とサービス紹介と製品紹介で構成がどう変わるか、置く場所ごとに変える点、素材の棚卸しの手順、そして生成AIに任せてよい範囲までを、そのまま社内の仕様にできる形で整理します。


カメ先生カメ先生

会社紹介動画が見られないと聞くと、まず短くしようという話になりますが、短くしても見られないことのほうが多いんです。


カメ子カメ子

長さの問題ではないということですか。


カメ先生カメ先生

そうです。動画は情報が次々に映し出されては消えて手元に残らないので、一つの画面から相手が持ち帰れるのは事実上一つだけです。何を先に置くかが決まっていないと、短くしても伝わりません。


カメ子カメ子

削る作業より、並べる順番を決める作業が先に来るということですね。


この記事のポイント
  • 見られない原因は尺や画質ではなく、構成の六つの型に分かれる
  • 一つの画面に情報を並べると、どれも読まれない。5秒間の画面で同一画面内の注記に気付いた人は37.5パーセント
  • 会社・サービス・製品で最初に答える問いが違う。同じ構成を使い回すと当たらない

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目次

「作れば見てもらえる」という順序で作られている

需要の側から確かめておきます。動画制作会社のワイゾウルが公開している2026年版の集計では、商品やサービスについて知る方法として63パーセントが短い動画を選ぶと答えており、次点の記事(12パーセント)、図解(7パーセント)、営業からの電話(5パーセント)を大きく離しています。動画を見て購入を決めたことがあると答えた人は85パーセント、説明動画を見て商品を調べたことがある人は96パーセントです。会社として動画を用意する理屈は、この数字で足ります。

ただし、この数字の使い方には線を引く必要があります。同じページには回答者266名という規模と、2025年後半に実施した自社調査であることが書かれており、回答者にはマーケティングの担当者と一般の利用者の両方が含まれています。つまりこれは「動画で知りたい人が一定数いる」という需要の裏付けにはなりますが、自社が作った1本が見られるかどうかについては、何も言っていません。にもかかわらず現場では、この種の数字が「だから動画を作ろう」の根拠として使われ、作ったあとの構成の議論が抜け落ちます。

実際に起きるのは順序の逆転です。予算が通り、制作会社が決まり、撮影日が押さえられ、そこから「何を入れるか」を社内で集め始める。集まった要望は足し算になるので、会社の沿革、代表の挨拶、拠点の紹介、事業一覧、社員の声、実績の数字が並びます。誰かが決めた順番ではなく、集まった順番で並んだ動画が完成し、公開後に「見られない」という相談になります。以降は、その並びのどこが効かないのかを分解します。

見られない原因は六つに分かれる

相談を受けて実際に動画を見ると、原因はほぼ六つのどれかに落ちます。六つに共通しているのは、撮影機材でも編集技術でもなく、順番と持ち時間が決まっていないことから派生している点です。だから打ち手も撮り直しではなく、構成の側に置けます。

原因動画の中での現れ方打ち手を置く場所
誰に向けた話か名指ししていない冒頭が業界一般の話から始まる最初の数秒
1本に複数のテーマを詰めている事業ごと・製品ごとに話が切り替わる答える問いの絞り込み
最初の数秒が自己紹介で埋まっている社名と沿革と社屋が先に来る要素の並べ替え
画面の文字と音声が別のことを言っているナレーションと画面の文字がずれる画面ごとの一致
一つの画面に情報を同時に置きすぎている文字が3行以上、図と数字が同時に出る一画面一要素
置く場所の制約に合っていない音が出る前提、前置きが長い場面ごとの書き出し

この表の効き目は、社内の議論の対象を変えることにあります。「なんとなく硬い」「もっとうちらしさを」といった感想は、どこを直せばよいのか分かりません。六つのどれに当たるかで話すと、直す場所が具体的な秒数と画面に落ちます。たとえば「1本に複数のテーマを詰めている」と判定できれば、直し方は編集ではなく、動画を2本に分けるか、扱う範囲を1つに削ることだと決まります。

順番も決めておきます。上から3つは冒頭の設計、次の2つは画面の設計、最後の1つは置く場所の設計です。この順で直すと、下の直しが上の直しをやり直させません。逆に画面の作りから手を付けると、あとで扱う範囲を削ったときに作業がまるごと無駄になります。以降の章では、実測のある原因から順に中身を見ていきます。

一つの画面に情報を並べても、どれも読まれない

動画の一画面から人が何を受け取れるのかは、感覚で語らずに済みます。消費者庁が平成29年7月に公表した「打消し表示に関する実態調査報告書」は、打消し表示が含まれる動画3点・ウェブ画面2点・紙面1点を実際に制作し、全国の成人男女1,000人(日本の人口構成に合わせた有効回答)に見せて、何を認識できたかを測っています。調査期間は平成28年10月31日から平成29年3月31日まで、アンケートの実施は平成29年3月10日から14日で、別に12名のグループインタビューも行われています。

測られた動画は全体で約75秒あり、26秒から31秒までの5秒間に、48ポイントの強調表示(20文字・ナレーションつき)と、同じ画面の下部に22ポイントの注記(34文字・ナレーションなし)が表示されます。結果は、強調表示に気付いた315人のうち同じ画面の下に出ていた注記に気付いた人は37.5パーセント、62.5パーセントが見落としていました。同じ画面に、同時に出ていた文字です。

並べる数を増やすと、さらに落ちます。51秒から56秒までの5秒間の画面では、強調表示に気付いた428人のうち、同じ画面の下部に並んだ注記3つの全部に気付いたのは7.0パーセントにとどまり、93.0パーセントが少なくとも1つを見落としました。動画全体に6つあった注記については、1,000人のうち全部に気付いたのが2.4パーセント(24人)、半数以上を見落としたのが91.3パーセント(913人)です。4つ以上に気付けた人は、1,000人中87人しかいません。グループインタビューでは「短時間で画面が切り替わったため、文字を最後まで読むことができなかった」という声が記録されています。

これは広告表示の調査ですが、読み取れることは会社紹介動画にそのまま当てはまります。一つの画面に社名・創業年・拠点数・従業員数・主要な実績を同時に出しても、持ち帰られるのは多くて一つです。五つ載せた画面は、五つ伝わる画面ではなく、四つが消える画面になります。だから構成の第一の制約は「一画面一要素」で、これは装飾の趣味ではなく実測の話です。

文字と音声が別のことを言うと、どちらも残らない

同じ調査を含む三つの調査をまとめた消費者庁の留意点資料は、動画という媒体の特徴を五つ挙げています。①表示されている時間が限られる、②文字以外の音声等の要素にも視聴者の注意が引きつけられる、③画面が切り替わるたびに新しい情報が提示される、④映像と音声の組み合わせにより強い印象を残す、⑤情報が次々と映し出されては消え、手元に表示が残らない。紙の資料と決定的に違うのは、⑤の「手元に残らない」です。読み返しができないので、その瞬間に受け取れなかった情報は存在しなかったことになります。

そのうえで、視線を計測した調査の結果として重要な指摘が置かれています。短時間の画面では、文字と音声が同じ内容を表示している場合のほうが、別の内容を表示しているときより認識されやすいという傾向です。さらに、同じ内容を文字と音声でそろえていても、注意を引く画像が同じ画面にあると、音声が流れている間に視線が画像に停留して文字が読まれない可能性が示されています。人物が映っている画面でも同じことが起き、人物に注意が向いて同一画面の文字に注意が向かない、と資料は指摘しています。

この資料が求めている表示方法は、そのまま構成の原則として使えます。重要な内容は文字と音声で同じことを言い、その内容だけに注意が向くように、他の情報を同じ画面に含めない。会社紹介動画でありがちな失敗は、ナレーションが会社の歩みを語っている間に、画面が事業の一覧を映しているという作りです。耳と目に別の情報を流すと、二つ伝わるのではなく、どちらも残りません。ナレーション原稿と画面の指示は、必ず同じ表の同じ行に並べて作ります。

置いた場所で、音が鳴らないし自動では始まらない

構成の前提として、置く場所の仕様を押さえておきます。ブラウザの自動再生の扱いは2018年4月に変わっており、開発者向けの公開ドキュメントには音を消した自動再生は常に許されると明記されています。一方、音つきの自動再生が通るのは、利用者がそのドメインを操作したことがある、パソコンでメディアエンゲージメント指数のしきい値を超えている、携帯の画面に追加済みかアプリとして入れてある、のいずれかを満たすときだけです。

その指数に数えられる再生の条件も公開されています。再生が7秒を超えること、音が出ていてミュートでないこと、その動画のタブが前面にあること、そして映像の大きさが幅200ピクセル・高さ140ピクセルより大きいこと。条件を満たさないまま音つきで再生を要求すると、再生の要求そのものが拒否され、自動再生の指定も無視されます。つまり自社サイトのトップに置いた動画は、ほとんどの初回訪問者に対して「音なしで、静止したまま」置かれていると考えるのが現実に近い状態です。

加えて、音を鳴らす側にも制約があります。ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドラインの2.2版は、達成基準1.4.2(適合の三段階のうち最も基本の水準)として、ページ上の音声が3秒を超えて自動的に再生されるなら、一時停止か停止の手段、または全体の音量とは独立に音量を変える手段を用意することを求めています。この二つを合わせると、サイトに置く1本の設計条件は一つに定まります。音を消したまま、最初の数秒だけで何の会社の話か分かること。ここが満たされていない動画は、置き場所を変えても再生されません。

対策の入口は、削ることではなく並べること

ここから対策に移ります。前の四つの章で見たとおり、原因はすべて「何をどの順で、どれだけの時間見せるか」に帰着します。したがって最初の作業は、尺を決めることでも絵コンテを描くことでもありません。この1本で答える問いを、三つまで書き出すことです。問いの形で書くのが要点で、「事業内容」ではなく「何をしている会社か」、「強み」ではなく「なぜこの会社に頼むのか」と書きます。

問いを決めたら順番を決め、最後に持ち時間を配分します。この順序を守ると、社内から要望が増えたときの扱いが自動的に決まります。要望は「秒数の取り合い」として扱われるので、足すのではなく、どれかと置き換えるしかなくなります。逆に配分表を作らずに要望を集めると、全部が入って全部が薄い1本になります。

実務でよく見る逆順は、先に撮ってから並べる進め方です。撮影日が決まっているので素材集めが先に走り、編集の段階で「撮れているもので組める順番」に落ち着きます。これは相手の知りたい順番とは無関係です。撮影の前に問いと順番と秒数を紙一枚に決めておけば、撮る素材の数はむしろ減ります。配分表は、撮影の指示書でもあり、撮らないものを決める書類でもあるからです。

最初の数秒に置くのは、相手の名指しと扱う範囲

冒頭に置く要素は三つに絞れます。第一に誰に向けた話かの名指し。業種、規模、職種、あるいは「困っている状態」のどれかで相手を呼びます。第二に何をしている会社・製品なのかを一文で。第三に見終わると何が分かるのか。この三つが済むまで、社名もロゴも沿革も出しません。

名指しを避けたがるのは、絞ると見る人が減ると考えるからです。実際は逆に働きます。名指しがない冒頭は、見ている全員が「これは自分の話ではない」と判断できる冒頭です。名指しがあれば、当てはまらない人は離れますが、当てはまる人は最後まで残る理由を手に入れます。会社紹介動画の再生数が伸びない相談で、冒頭に名指しがあった例はほとんどありません。

名指しの粒度に迷うときは、業種で切らずに状態で切ります。たとえば「製造業向け」ではなく「拠点ごとに手順が違って、集計に毎月何日もかかっている会社へ」。業種は相手が自分を当てはめる作業を要求しますが、状態はその作業が要りません。なお、この三つを冒頭に置くという原則は、音を消したまま文字だけでも成立するように書く必要があります。前章の仕様から、最初の数秒に音は届かないと考えるのが安全です。

入れる要素と持ち時間を、先に配分する

冒頭が決まったら、残りの要素に秒数を割り当てます。90秒の会社紹介動画を例に、実務で使える配分を置きます。この表の使い方は、埋めることではなく秒数を守るために何を捨てるかを決めることです。各行に入る文は、文字と音声で同じ内容にそろえ、一画面に一要素だけ置きます。

位置置く要素そこで答える問い落ちやすい点
0秒から10秒相手の名指しと扱う範囲これは自分に関係があるか社名と沿革が先に来る
10秒から25秒相手の状況の言い当てこの会社は分かっているか一般論で終わる
25秒から50秒何をどう解決するか具体的に何をしてくれるのか機能や工程の列挙になる
50秒から70秒裏付けと動く人任せて大丈夫か、誰が担当するか数字だけで人が出ない
70秒から80秒対象範囲と条件自社にも当てはまるのか例外を語らず後で揉める
80秒から90秒次の一歩何をすればよいのか問い合わせ先だけで終わる

この配分で外せないのは、70秒から80秒の「対象範囲と条件」です。ここを省くと、動画で言った内容が全件に当てはまる約束として受け取られます。後の章で扱うとおり、条件を後から小さな文字で足しても読まれません。範囲を先に言い切る構成にしておけば、条件を注記に押し込む必要がなくなります。

秒数は目安として使い、合計が90秒に収まらないときは行を削ります。削る順は「裏付けと動く人」を短くするのではなく、25秒から50秒で扱うテーマの数を1つに絞ることです。テーマが2つある動画は、90秒に収めても両方が薄くなり、結局どちらの問いにも答えていない1本になります。分けて2本にするほうが、合計の尺は増えても最後まで見られます。

会社紹介は「取引先として大丈夫か」に答える

同じ90秒でも、会社紹介・サービス紹介・製品紹介では最初に答える問いが違います。会社紹介を見る人は、名前を知ったばかりか、あるいは稟議の裏取りをしています。確かめたいのはこの会社と取引しても問題が起きないかで、具体的には事業の全体像、続いているのか、実際に誰が動くのか、の三つです。

入れるのは、何の会社かを表す一文、扱う領域の広さ、担当する体制、続けてきた裏付け。入れないのは、沿革の年表、理念の長い説明、社内行事の映像です。後者は会社の側が語りたいことで、相手が確かめに来たことではありません。理念を伝えたいなら、理念そのものを述べるのではなく、その理念が現れている仕事のやり方を一つ見せるほうが伝わります。

会社紹介でいちばん多い失敗は、複数事業を等分に紹介することです。三つの事業を30秒ずつ紹介した動画を見終えたとき、相手に残るのは「いろいろやっている会社」という印象だけで、何の会社かは残りません。主軸を一つ決めてそこに時間を使い、残りは一画面の列挙で済ませます。等分に配ると、どの事業の問い合わせも来なくなります。組織図の公平さと、視聴者の理解は別の話です。

サービス紹介は「自社のやり方に合うか」に答える

サービス紹介を見る人は、比較の途中にいます。すでに何が必要かはおおむね分かっていて、確かめたいのは自社の体制と手順で回るのかです。したがって最初に答えるべき問いは「何ができるか」ではなく「どこまでが対象か」になります。対象範囲を先に言う構成は、見ている相手の自己判定を助けます。

入れる要素は、対象範囲、始めるまでの流れ、こちらが用意するものと相手が用意するもの、そして合わない場合です。最後の一つを入れると信用が上がります。合わない条件を先に言っておけば、商談で例外を出す場面が消え、動画の内容と提案書の内容が食い違いません。逆に「どんな会社でも大丈夫」と言う動画は、条件の説明を全部あとの人に押し付けています。

落ちやすいのは機能の列挙です。できることを並べる作りは、資料や比較表の役目で、動画では前章の実測どおり読まれません。サービス紹介の動画で見せるのは機能ではなく、導入したあとの一日が、どう変わるのかという一場面です。そのうえで詳細は資料に譲り、動画の末尾で資料の在り処を示せば役割が分かれます。

製品紹介は「これで何が変わるか」に答える

製品紹介を見る人は、候補に入れるかどうかを判断しています。確かめたいのは仕様の一覧ではなく、使う前と使ったあとで何が変わるのかです。入れる要素は、置き換わる作業、変化の大きさ、既存の環境との噛み合い、そして数量や条件の範囲。この四つを1本に収め、それ以上は入れません。

ここで混同されやすいのが、操作を順に見せる動画との違いです。画面や手元の操作を一つずつ追う作りは、すでに関心を持った人が手順を確かめるためのもので、候補に入れる判断には長すぎます。紹介の動画では変化を一点に絞り、操作は「こう変わる」を示す最小限だけ映すのが役割分担です。両方を1本に入れると、判断したい人にも手順を知りたい人にも長い動画になります。

落ちやすいのは、仕様の読み上げです。型番、寸法、対応環境を画面に出しながらナレーションが別のことを話す作りは、前の章で見た「文字と音声が別の内容」に当たり、どちらも残りません。仕様は動画で伝えるものではなく、動画から辿れる場所に置くものです。動画に載せる数字は、変化の大きさを示す一つか二つに絞ります。

どこで使うかで変えるのは、前提の量と音への依存

同じ1本を、自社サイト・商談・展示会・採用の四つの場面で使い回そうとすると、どの場面でも中途半端になります。とはいえ四本作るのは現実的ではありません。答えは、作るのは1本、書き出しは場面ごとに分けることです。そして場面ごとに変えるのは、冒頭の演出ではなく、前提の量と音への依存度の二つだけです。

自社サイトに置く版は、前提の説明を自分で持つ必要があり、しかも音が鳴らない前提で組みます。商談で流す版は、人が前置きを話せるので冒頭の名指しを短くでき、代わりに細かい条件を入れられます。展示会で流す版は、音が届かず、立ち止まる時間は数秒で、ループ再生されます。展示会の版は文字だけで成立し、どこから見始めても意味が通る必要があります。採用で流す版は相手の関心が「誰と働くか」に寄るので、事業の説明を削って人の場面に振り替えます。

採用の版には一つ注意点があります。動画で語る仕事の内容や働き方は、求人として出している条件の表示と食い違ってはいけません。採用の版だけは、内容の確認先が広報ではなく人事になります。四つの版のうち、どの版を誰が最終確認するのかを先に決めておくと、公開の直前に差し戻される事故が減ります。

素材の棚卸しは、撮る前に一度で終わらせる

配分表ができたら、撮影の前に手元の素材を洗い出します。棚卸しを先にやる理由は二つあります。撮り直しの本数が減ること、そして「これも入れたい」という社内の要望が、素材があるかないかで決着することです。議論が好みの問題から在庫の問題に変わるので、時間の使い方が変わります。

STEP1
出どころ別に集める

過去に作った動画、製品や現場の写真、資料に入っている図、登壇や社内勉強会の録画、取材記事の写真。置き場所が分かれているので、まず「どこに何があるか」の一覧だけを作ります。中身の良し悪しはここでは見ません。

STEP2
使える形かを確かめる

画の大きさ、音の状態、映っている人と物を見ます。音が使えない録画でも、映像だけなら使えることがあります。逆に、画は良いが背景に他社名や書類が写り込んでいる素材は、この段階で外します。

STEP3
使ってよいかを確かめる

出演した人の同意が今も有効か、他社の製品が映っていないか、音源の利用条件がどうなっているか。確かめた結果は素材ごとに記録に残します。ここを口伝えで済ませると、次に使う人がまた同じ確認をやり直します。

STEP4
足りないものを撮影の一覧にする

配分表の各行に対して、使える素材が一つもない行を洗い出します。その行の分だけが撮影の対象です。撮影日の項目数がここで決まるので、見積りの前提も同時に固まります。

STEP5
次に使えるように名前と置き場所を決める

何が映っているか、いつ撮ったか、使ってよい範囲はどこまでかが名前から分かる形にします。2本目からの制作でこの棚卸しが効くかどうかは、この工程をやったかどうかで決まります。

この五工程のうち、生成AIに任せられるのは第一と第二の一部です。録画の書き起こし、映っているものの見出し付け、似た素材の重複の洗い出しは機械の仕事です。一方、第三の「使ってよいか」は人の判断として残します。同意の範囲や写り込みの可否は、素材の中身だけでは決まらず、当時の約束と今の使い方の突き合わせが必要になるからです。

言える約束は、動画では確かめにくい

公開前にいちばん抜けるのが、動画の中で言っている約束の確認です。景品表示法の枠組みでは、断定的な表現や目立つ表現で内容や条件を強調する表示は、事実に反しない限り問題になりません。ただし例外や条件があるときは、その旨の表示を分かりやすく行わなければ誤認され、実際よりも著しく優良または有利だと受け取られる場合に問題となるおそれがあるとされています。

問題は、動画ではその「例外や条件の表示」が読まれないことです。冒頭で見た調査では、収集された表示物のうち例外がある旨の注記が29.8パーセント、体験談に関する注記が22.9パーセントを占めていました(全体493点)。動画広告118点では、注記が強調と同時に出るものが72.0パーセント、後または別の画面に出るものが20.3パーセント。文字の大きさは30ポイント以上が87.3パーセント(43インチ相当の画面に換算した値)で、決して小さくありません。それでも読まれた割合は前述のとおりです。動画では、文字を大きくしても条件は伝わらないというのが実測の結論です。

だから実務の答えは「注記を工夫する」ではありません。過去の調査でも、原則は注記をせずに済むように対象を明確にして、内容や条件を的確に表示することだと示されています。動画で「業界で一番」「必ず」「すべての会社で」と言いたくなったら、言い方そのものを条件込みの表現に変える。どうしても条件を示す必要があるなら、同じ画面に同じくらいの大きさで置き、音声でも同じ内容を言う。これが留意点資料の求める形です。そして確認の担当は、制作会社でも編集者でもなく、その約束を守る責任がある自社側の人になります。

AIに任せる範囲と、人が持つ範囲

生成AIは、この工程の一部でよく効きます。効くのは四つです。第一に構成案の叩き台を複数出すこと。配分表の行だけ与えて、順番の違う案を三つ出させると、社内の議論が早く始まります。第二にナレーション原稿の下書きと言い換え。同じ内容を秒数の制約に合わせて短くする作業は機械に向いています。第三に多言語版の下書き。第四に素材の書き起こしと見出し付けです。

任せてはいけないのは三つです。一つ目は素材の取捨。何を映して何を映さないかは、社外に出す情報の判断であり、写り込みや当時の約束と結びついています。二つ目は前章の言える約束の判断。「この言い方で大丈夫か」を機械に判定させると、通ってしまった判断が誰の責任でもなくなります。三つ目は公開の可否です。動画は一度公開すると差し替えの手間が大きいため、最後の操作は人が行います。

線の引き方は三段で決めます。まず、AIの出力には根拠を書かせる。構成案なら「なぜこの順番か」を一行で併記させれば、的が外れている案をその場で落とせます。次に、人が必ず確認する範囲を先に決める。数値、固有名詞、対象範囲と条件、出演者、使った音源の五つは毎回人が読む、と決めておきます。最後に、出力をそのまま本番に流さない。多言語版は特に注意が必要で、訳が正しくても、その国では言えない約束になっていることがあります。訳の確認と、言える約束の確認は別の作業として二回通します。

公開前に一度で見る確認項目一覧

最後に、社内でそのまま使える確認項目にまとめます。動画は公開後に直す手間が大きいので、編集の最終版が上がった時点で、この一覧を通す担当を決めておくことをおすすめします。版を分けている場合は、版ごとに通します。

会社紹介・サービス紹介・製品紹介の動画 公開前チェック
  • 最初の数秒に、相手の名指し・扱う範囲・見終わって分かることの三つが入っているか
  • その三つが、音を消したまま文字だけでも成立するか
  • 社名・ロゴ・沿革が、三つより前に出ていないか
  • この1本で答える問いが三つ以内に絞れているか。テーマが二つ以上入っていないか
  • 画面ごとに、文字と音声が同じ内容を言っているか
  • 一つの画面に文字や数字を並べすぎていないか(一画面一要素になっているか)
  • 対象範囲と条件を、注記ではなく本編の中で言い切っているか
  • 断定的な表現に例外がある場合、同じ画面に同じくらいの大きさで、音声でも示しているか
  • 使った素材について、出演の同意・他社製品の写り込み・音源の条件を記録に残したか
  • 置く場所ごとの版(サイト・商談・展示会・採用)で、前提の量と音への依存を変えたか
  • 採用の版は、求人として出している条件の表示と食い違っていないか
  • AIに下書きさせた箇所について、数値・固有名詞・条件・出演者・音源を人が読んだか

あわせて、実際によく見かける作りも並べておきます。どれも一度そうなると、翌年の作り直しまで直りません。

  • 冒頭30秒が社名・創業年・拠点数・代表の挨拶で埋まっている
  • 三つの事業を等分に紹介して、何の会社か分からないまま終わる
  • ナレーションが会社の歩みを語る間に、画面は事業一覧を映している
  • 一つの画面に文字が四行以上並び、その画面が3秒で切り替わる
  • 言い切った内容の例外を、末尾の小さな注記だけで補っている
  • 音が出る前提で作った1本を、そのまま展示会でループ再生している
  • 本稿で引いた認識率の数値は、消費者庁が広告表示について1,000人に実際の動画を見せて測ったものです。会社紹介動画そのものを測った調査ではないため、傾向として読んでください
  • 自動再生の扱いは、公開されているブラウザの仕様に基づきます。仕様は変わることがあるため、サイトに置く前に実機で確かめてください
  • 需要側の数値は制作会社の自社調査(回答者266名)です。自社の視聴データに置き換えて判断してください

まとめ

会社紹介動画が見られない原因は、画質や尺ではなく、六つの構成の型に分かれます。そのうち実測で裏が取れているのは、一つの画面に情報を並べても持ち帰られるのは一つだけ、という制約です。5秒間の画面で同一画面内の注記に気付いたのが37.5パーセント、三つ並べたら全部気付いたのが7.0パーセント。文字を大きくしても結果は変わりません。だから対策は、削ることではなく並べることから始まります。答える問いを三つまでに決め、順番を決め、最後に秒数を配分する。冒頭には相手の名指しと扱う範囲を置き、社名と沿革はそのあとに回す。会社紹介は取引先として大丈夫かに、サービス紹介は自社のやり方に合うかに、製品紹介はこれで何が変わるかに答える。置く場所ごとに変えるのは、前提の量と音への依存度です。生成AIは構成案の叩き台とナレーション原稿の下書き、多言語の下書きと素材の整理には効きますが、素材の取捨と言える約束の確認、そして公開の判断は人の側に残します。配分表を一枚持っている会社は、二本目からの制作が速くなり、作った動画が見られないという相談をしなくなります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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