製品カタログは仕様表だけでは売れない|選ばれる誌面の作り方

製品カタログは仕様表だけでは売れない|選ばれる誌面の作り方

「仕様表は競合より細かく載せているのに、問い合わせが増えない」「総合カタログを作り直すことは決まったが、どこを直すかで社内が割れている」——製造業のカタログを見直す場では、この二つが同じ会議に並びます。製造業に従事する544人を対象に2025年2月に行われた調査では、設計業務に課題を感じている人が88.5パーセントを占め、課題の上位は「設計ミスや手戻りが多い」が32.7パーセント、「技術・ノウハウの継承不足」が26.9パーセントでした。そして情報の探し方について聞いた設問では、「必要な情報の所在が不明」が55.8パーセント、「検索に時間がかかる」が53.8パーセントに達しています。カタログを開く相手は、この状態で開いています。引き合いが来ないのは情報が足りないからではありません。本当は、載っている情報から相手が自分の型番を選べないからです。この記事では、載せる情報を四つの層に分ける決め方、型番が多いときの並べ方と索引、総合カタログと単品カタログの分け方、単位と数値の根拠に効く法令の線、改版と在庫の回し方、そして生成AIに任せてよい範囲までを、そのまま社内の仕様にできる形で整理します。


カメ先生カメ先生

カタログは仕様を漏れなく載せるほど良いものになると思われがちですが、実際には逆に働くことがあります。


カメ子カメ子

載っている情報が多いほど、選びにくくなるということですか。


カメ先生カメ先生

そうです。仕様表が効くのは、どれを買うかがすでに決まっている人です。まだ絞れていない人には、数字の並びは判断材料になりません。冊子を開く人の多くは後者です。


カメ子カメ子

絞る人と確かめる人が、同じ冊子を開いているわけですね。


この記事のポイント
  • 仕様表は「もう決まっている人」に効く。絞れていない人には、用途と選び方の層がないと届かない
  • 型番が多い会社ほど、章立ての軸を一本に決め、索引で三手以内に一型番へ着かせる
  • 単位は計量法、数値の根拠は不実証広告の指針に線がある。誌面に載せる前に原典で確かめる

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目次

仕様を増やしても、選べるようにはならない

仕様表を厚くする改訂は、たいてい「他社のカタログに載っている項目が自社に無い」という指摘から始まります。ところが、比較で負けているのは項目の数ではありません。その値がどんな条件で測ったものか分からないこと、そして自分の用途に当てはまるかどうかが誌面のどこにも書かれていないことです。載せる項目を増やす改訂は、相手が選ぶまでの手数を増やす改訂になります

項目を足すときの具体的な副作用を挙げます。型番が3桁ある製品群で仕様表に列を一つ足すと、全型番の行を埋めなければなりません。実測していない型番の欄には記号が並びます。読む側から見ると、値の入っていない欄が並ぶ表は「この会社は自分の製品の値を把握していない」という印象になります。列を足すかどうかは、全行を埋められるかどうかで決める。埋まらないなら、その項目は仕様表ではなく問い合わせの窓口に回します。

量の話もしておきます。製造業向けの検索サイトの掲載数を2026年9月2日に見ると、機械部品が75,879件、電子部品・モジュールが61,598件、製造・加工機械が101,870件、工具・消耗品・備品が65,333件並んでいました。同サイトの出展企業数は47,906社、閲覧会員数は1,964,743人(2025年5月末時点・調査会社調べ)と示されています。この母数の中で、仕様の細かさで抜けるのは無理です。抜けるのは「自分が使う場面がそこに書いてある」という一点だけです。

探す側がカタログでしている三つの作業

カタログを開いた人がしていることは、三つに分けられます。第一に候補を絞る。数十ある型番から数個へ落とす作業です。第二に条件に合うかを確かめる。絞った数個について、寸法・容量・環境・接続が自分の条件に入るかを照合します。第三に社内を通す資料にする。上司や購買、場合によっては客先に見せて、これで進めてよいという合意を取ります。

三つで欲しいものが違います。絞る段で欲しいのは用途と選び方です。確かめる段で欲しいのは条件付きの数値、つまり値だけでなくどう測ったかが添えられた数値です。社内を通す段で欲しいのは外形の図と、価格の考え方、そして納期の目安です。しかも三つは同じ人が同じ日にやるわけではありません。三つのうち一つでも欠けている冊子は、その段で止まります

止まり方が違うところが厄介です。絞れなければ相手は他社の画面へ移り、そのまま戻りません。確かめられなければ問い合わせが来ます。工数はかかりますが接点は残るので、これは最悪ではありません。社内を通せなければ検討そのものが次の期へずれます。「引き合いが来ない」と「問い合わせが多い」は、別の失敗です。前者は絞る層の不足、後者は確かめる層の不足で、直す場所も違います。

載せる情報を四つの層に分けて決める

誌面に載せる内容は、目的の違う四つの層に分けられます。層ごとに「相手がそこで何をするのか」と「事前に決めておくこと」が違うため、一覧にしておくと製品群が増えても使い回せます。

相手がそこでやること載せる項目先に決めておくこと
用途自分の場面に当てはまるかを見る使う対象・置かれる環境・前後の設備・よくある組み合わせ書ける用途をいくつまで挙げるか
選び方候補を数個に絞る分かれ目になる条件・選ぶ順序・選定の図表分かれ目を何本立てるか
仕様自分の条件に合うかを確かめる値・単位・測り方の条件・適合と制限全型番の行を埋められる項目だけにする
問い合わせ先決まらないまま先へ進む型番が決まらないときの窓口・図面や見積の依頼先誰が受けて何日で返すか

並べる順序も仕様として決めます。用途と選び方を、仕様表より前に置く。理由は単純で、絞れていない人のほうが先に来るからです。逆に、表紙をめくった次の頁がいきなり型番一覧だと、その製品を知っている人にしか読めない冊子になります。

層で割ることには、もう一つ効き目があります。担当が分かれることです。用途と選び方は営業と設計、仕様は技術と品質、問い合わせ先は営業事務が持ちます。層で割らずに「カタログの原稿」として一括で依頼すると、全部が技術部門待ちになって改版が止まります。誰に何を出させるかは、層の一覧を配るだけで決まります。

第1層:用途は、仕様の前に置く

用途の層が無いカタログは、その製品をすでに知っている人にしか読めません。ここで言う用途は、「産業用途に幅広く対応」のような一文ではありません。扱う対象(何を、どんな状態で)、置かれる環境(どこに、どんな条件で)、前後の設備(何と繋がるか)の三つが書かれた文が用途です。この三つが揃っていると、相手は自分の現場と一行で突き合わせられます。

書き方は、思いつきで並べるのではなく過去の受注から逆に引きます。直近の出荷実績の上位20件について「何に使われたか」を営業から集め、重複を寄せると、たいてい5種類から8種類に収束します。自社が想像した用途は、相手が口に出す言葉と一致しません。実績から拾えば、相手の言葉のまま載せられます。

落ちやすい点も挙げておきます。用途を具体的に書くと、社内から「その用途しか使えないと読まれる」という懸念が必ず出ます。対処は、用途の一覧の末尾に「ここに無い場合もご相談ください」ではなく、「一覧に無い対象や環境については、対象物と設置条件をお知らせいただければ適否をお答えします」と、何を伝えれば答えが返るかを書くことです。受け口の条件が書かれていれば、用途を絞って書いても問い合わせは減りません。

第2層:選び方は、こちらから分かれ目を出す

選び方の層とは、「どの条件で候補が分かれるのか」を売る側が先に開示する頁です。仕様表を全部読み比べる作業を相手にさせず、こちらで済ませて渡す。これがある冊子と無い冊子の差は、載っている情報量ではなく、相手が絞り終わるまでの時間に出ます

分かれ目は3本までに絞ります。1本目は用途で切れる軸、つまり扱う対象や環境。2本目は数値で切れる軸、つまり容量・寸法・速度・許容範囲のどれか一つ。3本目は取り付けや接続で切れる軸です。4本目からは絞りが効かなくなり、選定の図表そのものが読めなくなります。3本で候補が数個に落ちない製品群は、そもそも一冊にまとめる単位が大きすぎるという合図です。

使ってはいけない分かれ目もあります。製品群の社内区分、事業部の別、開発された順序。どれも社内では通じますが、相手にはどの枝を降りればよいか分かりません。分かれ目は、相手が最初に口に出す言葉で切ります。何を口に出すかは、過去の問い合わせや見積依頼の文面を20件ほど並べれば分かります。

第3層:仕様表の単位には、法律の線がある

仕様表に書く単位には、決めごとがあります。計量法(平成4年法律第51号)は、長さ・質量・圧力・応力・粘度・動粘度・仕事・工率・熱量・熱伝導率・比熱容量などを「物象の状態の量」として列挙し、第8条第1項で「法定計量単位」以外の単位を「取引又は証明に用いてはならない」と定めています。同法第2条第2項は「取引」を「有償であると無償であるとを問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の行為」、「証明」を「公に又は業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明すること」と定義しています。第173条第1号により、第8条第1項に違反した者は50万円以下の罰金です。

実務で当たるのは、期限が切れた単位です。同法附則第3条第3項は、附則別表第三に挙げた単位を平成11年(1999年)9月30日までは法定計量単位とみなすと定めていました。その表に並んでいるのは、力の「重量キログラム」「重量グラム」「重量トン」、圧力の「重量キログラム毎平方メートル」「水銀柱メートル」「水柱メートル」、応力の「重量キログラム毎平方メートル」、仕事の「重量キログラムメートル」、工率の「重量キログラムメートル毎秒」、熱量の「カロリー」、比熱容量の「カロリー毎キログラム毎度」などです。十の整数乗を乗じた単位も同じ扱いなので、毎平方センチメートルの表記も同列に入ります。古い図面や旧版のカタログから値を写すときに、ここが混ざります。

ただし、例外と救済が条文に書かれています。第8条第3項は「輸出すべき貨物の取引又は証明」と「貨物の輸入に係る取引又は証明」には適用しないとしています。附則第5条は、ヤードポンド法の単位を航空に関する取引や証明、そしてその単位で表記されて輸入された商品に限り「当分の間、法定計量単位とみなす」と定め、附則第6条は仏馬力を内燃機関に関する取引や証明で同じ扱いにしています。さらに附則第8条第1項は、期日以前に文書へ記載した表示は期日後も取引や証明に用いることができるとしています。刷り置いた古い冊子はそのまま使えても、改版で作り直す誌面には持ち込めません。なお、回転速度の「回毎分」、圧力の「気圧」、粘度の「ポアズ」、動粘度の「ストークス」、濃度の「質量百分率」やピーエッチは、第4条第2項の別表に挙がった法定計量単位です。

  • 単位の記号のうち標準となるべきものは経済産業省令で定められています(計量法第7条)。社内で単位と記号の表を1枚作り、そこに無い単位は誌面に書かないという運用にすると、写し間違いが止まります
  • 法令の当てはめの最終判断は自社の法務や顧問の確認を通してください。ここで示したのは条文の記述と、そこから読める線引きです

数値には条件が付く。条件のない数値は根拠にならない

単位が正しくても、値の書き方でつまずきます。不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第7条第2項は、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者が資料を提出しないときはその表示は同法第5条第1号に該当する表示とみなすと定めています。この運用の指針(平成15年10月28日公正取引委員会・平成28年4月1日一部改正)は、「合理的な根拠」と認められるための二つの要件を、「提出資料が客観的に実証された内容のものであること」と「表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること」と示しています。

実務に直結するのは二つ目です。指針が挙げる例をそのまま引きます。あらゆる種類のエンジンオイルに対して10パーセントの燃費向上が期待できると表示した添加剤について、提出された試験結果は特定の高性能エンジンオイルで10パーセント向上することを確認したものにすぎず、一般的な品質のオイルで同じ効果が得られることを実証していなかった。紫外線を99パーセントカットすると表示した衣料について、提出された学術文献は50パーセント遮断を確認したものにすぎなかった。どちらも資料そのものは客観的でも、対応していないと判断されています。特定の条件で出た値を、条件を落として書くと成立しない。仕様表なら、値の隣に測り方と条件を書く。これだけで足ります。

  • 値の隣に測り方の規格名と試験条件(温度・電圧・負荷・姿勢など)を並べて書く
  • 代表値なのか最小保証値なのかを、表の見出しで区別する
  • 条件によって変わる値は、条件ごとに行を分ける。1行に幅で書くなら幅の意味を注記する

時間の話も押さえておきます。資料の提出期限は求めた日から原則15日で、指針は「新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があるなどの理由は、正当な事由とは認められない」と書いています。聞かれてから測ることはできません。なお同法第5条は「一般消費者に対し」の表示を対象としており、買い手が事業者だけの部材では直接には当たらない場面があります。とはいえ工具や消耗品のように一般消費者にも届く物は対象に入り、その線を自社で引き切ることはできません。指針は判断の基準を「表示上の特定の文章、図表、写真等から一般消費者が受ける印象・認識ではなく、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識」と置いています。誌面のどこか一行ではなく、頁全体で読まれるという前提です。

第4層:型番が決まらない人の行き先を作る

カタログの役目は、型番を決めさせることではありません。決まらなかった人を落とさないことです。決まった人は品番を見て発注に進みます。冊子で差が出るのは、決まらなかった残りをどう扱うかです。ここを設計していない冊子は、決まった人だけを拾って残りを捨てています。

出口は三つ用意します。第一に、型番が決まった人の出口。品番・発注単位・納期の目安・同時に必要な付属品を並べます。第二に、近いが合わない人の出口。特注や仕様変更の相談窓口で、どこまで変えられるかの範囲を先に書きます。第三に、何を選ぶか分からない人の出口。用途から相談できる窓口です。三つ目の出口が無い冊子が、いちばん多い

窓口の書き方には条件を添えます。「お気軽にお問い合わせください」では、相手は何を書いて送ればよいか分からず、結果として問い合わせません。型番が決まっていない段階で送ってよいこと、その際に何を伝えればよいか、誰が受けて何営業日で返すかの三つを書きます。図面が必要な場合はその旨も先に書きます。この三行があるだけで、決まらなかった人の一部が接点に変わります。

型番が多いときは、並べる軸を一本に決める

総合カタログが読めなくなる原因は、分量ではありません。章の並びの軸が途中で変わることです。前半は用途で章立てし、中盤は事業部別、後半はシリーズ名別。軸が三度変わると、目次は索引の役目を果たしません。厚い冊子でも軸が一本なら読めますし、薄い冊子でも軸が混ざれば読めません。

軸の選択肢は三つです。用途で並べる、機能や種類で並べる、数値の範囲で並べる。選ぶ基準は「相手が最初に口に出す言葉」です。用途を先に言う相手なら用途、種類名で言う相手なら種類。シリーズ名で言う相手はすでに自社の顧客なので、新規の相手が読む冊子の軸にはしません。既存顧客向けにはシリーズ名の索引を別に置けば足ります。

軸を一本に決めたら、それ以外の入り方は索引で担保します。章立ては一本、入り口は複数。この形にすると、章の順序を巡って社内で起きる議論がほぼ消えます。「うちの製品群を先に載せてほしい」という要望は、章の順序ではなく索引の充実で受けられます。

索引は三種類。三手で一型番に着くかで見る

索引は三種類作ります。型番から頁を引く型番索引、用途の言葉から頁を引く用途索引、そして数値の範囲から候補の型番を引く数値索引です。できているかどうかの判定は、載っているかどうかではなく到達までの手数で見ます。

  1. 入り口を選ぶ(用途・種類・型番・数値のどれかから入れる)
  2. 候補が数個に絞れた一覧に着く
  3. その型番の仕様の行に着く

三手で着かない冊子は、どこかの手が抜けています。多いのは二手目です。入り口はあるのに、いきなり全型番の仕様表に飛ばされる。絞れた一覧を挟むかどうかが、索引の効き方を決めます。数個に絞れた一覧には、絞りに使わなかった代表的な値を2列だけ添えると、そこで決まってしまう相手も出ます。

三種類のうち、数値索引がいちばん作られておらず、いちばん効きます。「この寸法に入るのはどれか」「この容量以上はどれか」という探し方は、仕様表を全部読まないと答えが出ません。範囲から逆に引ける表を1枚入れるだけで、確かめる段の時間が変わります。用途索引のほうは言葉のゆれで死にます。社内語から相手の語へ引く行を必ず作る。相手が使った語は、過去の見積依頼や問い合わせの文面から拾えます。

総合カタログと単品カタログは、改版の周期で分ける

分け方の基準を「情報量」や「主力かどうか」で決めると、たいてい失敗します。基準はもっと単純です。改版の周期が違うものを、同じ冊子に入れない。総合の内容は年に一度でよいのに、新製品は出るたびに直したい。同じ冊子に入れると、片方の都合で全体を刷り直すことになり、結局どちらも古くなります。

観点総合カタログ単品・シリーズカタログ
役目扱っている範囲を見せて、相談先として想起させる一つの製品群で絞らせて決めさせる
厚く載せる層用途と選び方。仕様は代表値まで四層すべて。仕様は全型番
改版の周期年に一度など、日付を先に決める製品の改訂に合わせて随時
主に配る場面初回訪問・展示会・採用の場商談・見積・技術検討の場
頁数の決め方決めた頁数に収める必要な頁数まで伸ばす

分けたときの繋ぎ方も決めます。総合には、各製品群に単品カタログがあることと入手の方法を書く。そして総合に載せた代表値と、単品に載せた型番別の値が食い違う——これが分けたあとにいちばん多く起きる事故です。総合の値には「代表値」と明記し、どの型番の値かを添えます。添えていないと、相手は代表値を自分が買う型番の値として社内資料に写します。

総合カタログを作らないという選択もあります。判断は「初回の接触で全体像を求められる場面があるか」です。展示会と初回訪問が主な接点なら総合は要ります。型番を指名で聞かれる商売、あるいは既存顧客からの追加発注が大半なら要りません。作らない判断をした場合は、扱っている範囲を伝える役目を別の物に移す必要があります。その受け皿を用意せずに廃止すると、範囲を知らない相手が一社も入ってこなくなります。

代理店が配るカタログは、根拠の持ち方が変わる

自社が作った冊子を、商社や代理店が自分の名前で配ることがあります。前掲の指針は、この形を名指しで扱っています。原文はこうです。「商品の効果、性能に関する表示は、当該商品の製造業者から得た、商品について効果、性能があるとの情報を基に販売カタログや店舗内表示などにより、販売業者が自ら行うこともある。この場合、販売業者が自ら実証試験・調査等を行うことが常に求められるものではなく、製造業者等が行った実証試験・調査等に係るデータ等が存在するかどうか及びその試験方法・結果の客観性等の確認を販売業者が自ら行ったことを示す書面等を当該表示の裏付けとなる根拠として提出することも可能である」。

メーカー側の実務に落とすと、渡すものが増えます。値だけでは足りません。測り方の規格名、試験の条件、値の出どころ、そしていつの版かをセットで渡します。指針は、学術界または産業界で一般的に認められた方法の例として、日用雑貨品の抗菌効果試験を日本産業規格(指針の原文では旧称の日本工業規格)に規定する試験方法で実施したものを挙げています。試験方法は規格名で書けば、条件の説明が一行で済みます。渡し方を決めていないと、条件が落ちた値だけが代理店の誌面に載ります。

代理店の側も同じです。仕入れた値をそのまま自社の誌面に載せる前に、試験方法と結果の客観性を自分で確かめた記録を残します。指針が挙げているのは「確認を販売業者が自ら行ったことを示す書面等」です。確かめた記録が無ければ、確かめていないのと同じ扱いになる。メーカーからの回答メールを1通残しておく、という程度のことが効きます。

改版の回し方と、刷った在庫の始末

改版が止まる理由は、直す作業が重いことではありません。どこが変わったのかを誰も確定できないことです。型番が1つ増えた、適合の条件が変わった、窓口の部署名が変わった——この差分が一覧になっていないと、直す範囲が決まらず、決まらないから着手されません。手順を固定しておきます。

STEP1
変わった点を行単位で書き出す

前の版と今回で、値・型番・適合条件・窓口・価格の考え方のどこが変わったかを行単位で並べます。製品側の変更と、誌面側の直し(言い回しや図の差し替え)は分けて並べます。ここを飛ばすと、直した箇所と直っていない箇所が同じ冊子の中で混ざります。

STEP2
直す範囲がどこまで及ぶかを決める

差分の一覧を見て、仕様表だけで済むのか、選び方の図表と索引まで及ぶのかを決めます。型番が1つ増えただけでも、数値索引と用途索引には手が入ります。及ぶ範囲を見落とすと、索引から古い頁に飛ぶ冊子ができます。

STEP3
刷った在庫の扱いを決める

刷り済みの在庫を使い切るのか、訂正の差し込みを挟むのか、廃棄するのかを決めます。値そのものが変わった場合は、使い切る判断をするなら期限を切ります。決めないまま置くと、古い値の冊子が展示会の卓上に出続けます。

STEP4
旧版の残し方を決める

画面で配っている版は差し替えれば消えますが、消えると相手の手元にある冊子と突き合わせられなくなります。版の番号と発行年月を誌面に入れ、旧版は社内で引ける場所に残します。問い合わせは旧版を手元に持った相手から来ます。

版の表示位置にも一手あります。版の番号と発行年月は、表紙ではなく各頁の隅に入れる。理由は、相手が頁だけを写して社内に回すからです。表紙に一度だけ書いてあると、写された頁がいつの版か誰にも分からなくなります。問い合わせを受ける側も、相手が見ている版を特定できません。

刷る部数の決め方も改版に効きます。配る場面ごとの年間の配布数を出し、改版の周期で割る。この計算をせずに単価が下がる部数で刷ると、在庫が改版を止めます。刷り置きの部数は、改版のブレーキとして働きます。部数を減らして刷る回数を増やすほうが、誌面は新しく保てます。配る場面ごとの数が読めない場合は、少なく刷って足りなくなる側に倒します。

紙と画面は、同じ中身を別の場面に配る

紙にするか画面にするかは、どちらかを選ぶ問題ではありません。同じ中身を、どの場面にどう割り振るかの問題です。紙が要るのは、相手が手を動かしながら見る場面です。展示会での立ち話、商談の卓上、現場での確認。画面が要るのは、探す場面です。検索から来る、型番から入る、数値で絞る。

割り振ると、載せる層の重みが変わります。紙は用途と選び方を厚くし、仕様は代表値までにする。頁数に上限があるので、全型番を刷ろうとすると用途の層が削られます。画面は逆に、全型番の仕様と数値索引を厚くします。頁数の制約が無いかわりに、順に読ませることができないからです。同じ内容を紙と画面に等しく載せると、どちらも中途半端になる

二重管理を避ける手当ても要ります。値の原典を一か所に決め、紙と画面はそこから作る。原典が二か所あると、改版のたびに食い違い、しかも食い違いは相手からの問い合わせで初めて発覚します。原典をどこに置くかは製品情報の管理の話になるので、ここでは「誌面は原典から作る。誌面を直したら原典を直す、の順序にはしない」という一行だけ決めておきます。

AIに任せる範囲と、人が原典で確かめる範囲

カタログの整備で生成AIが効くのは三つです。第一に表記のそろえ。単位の書き方、型番の桁の区切り、語尾、項目名のゆれを、全型番にわたって揃えさせます。第二に説明文の下書き。用途の文と選び方の文の初稿を、決めた骨組みに沿って書かせます。第三に用途例の洗い出し。過去の受注記録や問い合わせの文面から、相手が使った語の候補を並べさせます。三つとも、出力の正しさを人がその場で判定できます。

任せてはいけないところは、はっきりしています。一つ目は値と測り方の条件の裏取り。数値は原典を人が見て写します。二つ目は適合と制限の言い切りです。「使えます」は契約の話で、外れたときに責任が発生します。三つ目は改版の差分の確定です。前の版との差分は、製品側の変更記録と突き合わせて人が確定させます。この三つで間違えると、訂正が刷り物として世に出ます。画面なら差し替えられますが、配ってしまった冊子は回収できません。

線の引き方は三段で決めます。まず、出力には根拠を書かせる。どの資料の何頁を見てそう書いたのかを併記させれば、その場で照合できます。次に、人が必ず読む項目を先に決める。型番・値・単位・測り方の条件・適合の範囲・窓口の六つは毎回人が読む、と決めておきます。最後に、本番の誌面データを自動で差し替えない。前掲の製造業544人の調査では、AIに期待することの上位が「設計ミス・手戻りの削減」36.5パーセント、「過去のナレッジや設計データの活用促進」21.2パーセントでした。期待されているのは判断の代行ではなく、探す手間と写し間違いの削減です。カタログの作り側でも、置き場所は同じです。

出す前に見る確認項目一覧

最後に、社内でそのまま使える確認項目にまとめます。改版のたびに通す一覧として置くと、直した箇所だけを見て出す事故が止まります。新しい製品群を足したとき、代理店に配らせるとき、担当者が変わったときは必ず通します。

製品カタログの確認項目
  • 用途の層があり、扱う対象・置かれる環境・前後の設備の三つが書かれているか
  • 選び方の分かれ目が3本以内で、相手が口に出す言葉で切られているか
  • 仕様表の項目は、全型番の行を埋められるものだけになっているか
  • 単位は法定計量単位で書かれているか。旧版や古い図面から写した単位が混ざっていないか
  • 値の隣に測り方の規格名と試験条件があるか。代表値か最小保証値かが区別されているか
  • 型番が決まらない人の出口(用途から相談する窓口)があり、何を伝えればよいかが書いてあるか
  • 型番索引・用途索引・数値索引の三つがあり、三手で一型番の行に着くか
  • 総合に載せた代表値と、単品に載せた型番別の値が食い違っていないか
  • 版の番号と発行年月が各頁の隅に入っているか
  • AIで直した箇所について、型番・値・単位・条件・適合の範囲・窓口を人が読んだか

あわせて、やってはいけない形も並べます。どれも実際によく見かけるもので、しかも一度そうなると次の改版でも直りません。

  • 表紙をめくった次の頁が型番一覧で、用途と選び方の層が一頁も無い
  • 仕様表の列が多く、値の入っていない欄が全型番にわたって並んでいる
  • 章立ての軸が用途・事業部・シリーズ名の間で入れ替わり、目次から目当ての頁に着けない
  • 値だけが載っていて、どんな条件で測ったのかが誌面のどこにも書かれていない
  • 問い合わせ先が代表電話とお問い合わせフォームだけで、型番が決まらない人の行き先が無い
  • 版の表示が表紙にしかなく、頁を写して回された相手がいつの版かを言えない
  • 本稿で引いた掲載数は、製造業向けの検索サイトを2026年9月2日に見た時点の数字です。日々動くため、自社の分野の母数は見る日を決めて自分で数えてください
  • 調査の数値は公開されているプレスリリースの記載に基づきます。設問の細かな聞き方は公開範囲では確認できなかったため、傾向として読んでください

まとめ

製品カタログは、仕様を漏れなく載せるほど良くなるものではありません。仕様表が効くのは買う型番が決まっている人で、冊子を開く多くの相手はまだ絞れていません。だから載せる中身を、用途・選び方・仕様・問い合わせ先の四つの層に分け、用途と選び方を仕様表より前に置きます。型番が多い会社は、章立ての軸を一本に決め、入り口は索引で複数にして、三手で一型番の行に着かせます。総合と単品は情報量ではなく改版の周期で分け、代表値には代表値と書きます。単位は計量法の法定計量単位で書き、値には測り方の条件を添える。根拠は聞かれてからでは作れないので、先に持っておきます。生成AIは表記のそろえと下書きには効きますが、値と適合条件の裏取り、そして改版の差分の確定は人が原典で行います。この形で一度作れば、次の改版は差分を書き出すところから始められます。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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