Media > AI活用ユースケース > 総務 > 社員から届く慶弔見舞金・社宅・福利厚生の手続きの質問に、福利厚生規程と総務の手引きを根拠にチャットで答え、規程に無い事案を総務の担当へ回す

社員から届く慶弔見舞金・社宅・福利厚生の手続きの質問に、福利厚生規程と総務の手引きを根拠にチャットで答え、規程に無い事案を総務の担当へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

社員が慶弔見舞金・特別休暇・社宅の質問をチャットに入れると、その社員の雇用区分と事由の発生日に効いている規程だけを探し、対象の条件・様式・期限を条項付きで返します。総務が同じ質問に答える時間が減ります。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
IT・SaaS/その他/小売/物流/製造
対象部門
総務
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
問い合わせが多い/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 社員から、メール・電話・チャットで福利厚生の質問を受ける
  2. 人事の仕組みで、その社員の雇用区分・所属・入社日を確かめる
  3. 社内ポータルの規程集を開き、慶弔見舞金規程・特別休暇の定め・社宅規程から該当する条と別表を探す
  4. 規程が改定されていれば、事由の発生日に効いている版を確かめる
  5. 手引きと様式の置き場から、申請書の様式・期限・添付書類を探す
  6. 規程に当てはまるか迷うものは、課長か長く担当している課員に聞く
  7. 回答をメールかチャットで返し、必要なら様式のリンクを付ける
導入後(After)
  1. 人社員が社内のチャット画面で、事由の種類と発生日(または予定日)を選んで質問する
  2. 自動中継プログラムが、ログインした社員の雇用区分を人事の仕組みから引き、雇用区分と日付で絞り込みの式を作る
  3. 自動Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドが、その区分と日付に効いている規程・別表・手引きだけを探して答えを作る
  4. 自動中継プログラムが、根拠の文書の版と区分を確かめる
  5. 自動対象の条件・様式・期限・添付書類を、条項付きで画面に返す
  6. 自動規程に定めが見つからない、または根拠が弱く答えが出なかったものは、総務の待ち行列へ回す
  7. 人総務の担当者が、回ってきた質問に答え、必要なら手引きに書き足す
  8. 人社員が申請を出し、総務の担当者が規程と照らして支給・入居を決める
  9. 自動質問・答え・根拠・社員の評価を記録に残す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 社員から、メール・電話・チャットで福利厚生の質問を受ける
  2. 人事の仕組みで、その社員の雇用区分・所属・入社日を確かめる
  3. 社内ポータルの規程集を開き、慶弔見舞金規程・特別休暇の定め・社宅規程から該当する条と別表を探す
  4. 規程が改定されていれば、事由の発生日に効いている版を確かめる
  5. 手引きと様式の置き場から、申請書の様式・期限・添付書類を探す
  6. 規程に当てはまるか迷うものは、課長か長く担当している課員に聞く
  7. 回答をメールかチャットで返し、必要なら様式のリンクを付ける

(a)規程・別表・手引き・様式が別々にある。 対象かどうかは規程の本文、金額と日数は別表、申請の期限と添付書類は総務の手引き、様式はポータルの別のページです。1件の質問に答えるのに、3〜4か所を開きます。

(b)雇用区分の取り違え。 嘱託とパートタイマーで対象が違うことを知らずに、正社員の別表で答えてしまうことがあります。誤って「対象です」と答えた後に、申請が届いてから「対象外でした」と伝えるのが、いちばん気まずい失敗です。

(c)知っている人が限られる。 続柄の数え方(配偶者の祖父母は対象か)、事由が重なったときの扱い(結婚と転居が同じ月)など、規程の文に出てこない運用を知っているのは、長く担当している課員だけです。 6番の「聞く」が、その課員に集中します。

(d)同じ質問が毎月くり返される。 「社宅の自己負担額は」「結婚祝金の申請に何が要るか」は、毎月同じ文面で届きます。答えは規程に書いてあるのに、社員はどこを見ればよいか分かりません。

  1. 【人】 社員が社内のチャット画面で、事由の種類と発生日(または予定日)を選んで質問する
  2. 【自動】 中継プログラムが、ログインした社員の雇用区分を人事の仕組みから引き、雇用区分と日付で絞り込みの式を作る
  3. 【自動】 Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドが、その区分と日付に効いている規程・別表・手引きだけを探して答えを作る
  4. 【自動】 中継プログラムが、根拠の文書の版と区分を確かめる
  5. 【自動】 対象の条件・様式・期限・添付書類を、条項付きで画面に返す
  6. 【自動】 規程に定めが見つからない、または根拠が弱く答えが出なかったものは、総務の待ち行列へ回す
  7. 【人】 総務の担当者が、回ってきた質問に答え、必要なら手引きに書き足す
  8. 【人】 社員が申請を出し、総務の担当者が規程と照らして支給・入居を決める
  9. 【自動】 質問・答え・根拠・社員の評価を記録に残す

6番目と7番目が、この設計の条件です。 画面に出るのは規程に書いてあることだけで、書いていない事案は総務の担当者が答えます。 人が見るのは全件ではなく、回ってきたものと、社員が「解決しなかった」と押したものです。

2番目で雇用区分を社員に選ばせないのは、自分の区分を正しく知らない社員がいるためです。 嘱託に切り替わったばかりの社員は、正社員のつもりで選びます。区分は人事の仕組みから引き、画面には「あなたの区分:嘱託」と表示します。

02今回想定するシステム構成

構成図
社員(社内のチャット画面。事由の種類と発生日を選んで質問)
   │
   ▼【トリガー】質問の送信
中継プログラム(Python/Cloud Run)
   ├──▶ 人事の仕組みから雇用区分を引く
   ├──▶ 雇用区分と事由の発生日から絞り込みの式を作る
   ▼
Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッド
   │   その区分と日付に効いている 規程/別表/手引き/様式の案内 だけを探す
   │   答えと出典、根拠のスコアを返す
   ▼
中継プログラム ── 版と区分の検査
   ▼
対象の条件/様式/期限/添付書類
   ├──▶ 画面へ(根拠の条と別表の行を並べる)
   └──▶ 総務の待ち行列へ(定めが無い・根拠が弱い)
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、画面・人事の仕組み・検索・記録をつなぐ)Node.js で同じものを書く
保管Cloud Storage(規程・別表・手引きの原本とメタデータ)─

社内ポータルの規程集と人事の仕組みは、新しく足すものではありません。 中継プログラムは人事の仕組みから雇用区分を読むだけで、書き込みません。 最初の準備は、規程・別表・手引きを版ごとに分け、適用する雇用区分と適用期間のメタデータを付けることです。

検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作って出典を付け、前のセッションの ID を渡すとやり取りを続けられます。 回答の主張ごとに根拠のスコアを返す設定と、根拠の弱い回答を落とす設定があります。

社宅の質問には、税の取り扱いが関わります。 国税庁のタックスアンサー No.2597 は、使用人に社宅や寮を貸す場合、1か月当たり賃貸料相当額の50パーセント以上の家賃を受け取っていれば給与として課税されないとし、賃貸料相当額は建物と敷地の固定資産税の課税標準額と床面積から計算するとしています。現金で支給される住宅手当や、入居者が直接契約している場合の家賃負担は、社宅の貸与とは認められず給与として課税されるとされています。社宅規程の自己負担額はこの上に決まっているので、この構成は自己負担額の計算をせず、規程の別表の数字を示すだけにします。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は、社員が社内のチャット画面で事由の種類と日付を選び、質問を送ったことです。 画面は社内の ID でログインした社員だけが使います。事由の種類は「慶事(結婚・出産)」「弔事」「見舞(病気・災害)」「社宅・住宅」「その他の福利厚生」から選ばせます。

日付は「事由が起きた日、または起きる予定の日」を選ばせます。 慶弔見舞金と特別休暇は、事由が起きた日に効いている規程で決まるからです。社宅の質問は、入居や更新の予定日を入れます。日付が分からない質問は、既定を今日にします。

1件の質問は1つのセッションで続け、「配偶者の祖母でも同じか」と聞き足すと同じセッションで絞り直します。別の事由の質問は、新しいセッションで始めます。 夜間や週末も受け付け、総務へ回るものだけが翌営業日に処理されます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
質問事由の内容、続柄、日付画面
雇用区分正社員/嘱託/契約社員/パートタイマー人事の仕組み
勤務地の区分本社・工場・営業所(社宅の地域区分に使う)人事の仕組み
福利厚生規程制度の全体、対象者の定め、申請の原則社内ポータルの規程集
慶弔見舞金規程と別表事由ごとの対象・金額・特別休暇の日数(雇用区分ごとの別表)社内ポータルの規程集
社宅規程と別表入居の資格、自己負担額、借上げの上限、退去の手続き社内ポータルの規程集
総務の手引き申請の期限、添付書類、様式の名前と置き場、よくある質問総務部の共有フォルダ

質を決めるのは、文書ごとのメタデータです。 文書ごとに、適用する雇用区分(複数可)、文書の種類(規程/別表/手引き)、制度の区分(慶弔/社宅/その他)、適用開始日、適用終了日を付けます。別表は雇用区分ごとに分かれているので、別表を区分ごとに別の文書にします。 1つのファイルに4区分の表が並んでいると、検索がどの区分の行を引いたか分かりません。

総務の手引きには、規程の文に出てこない運用を書き足します。 第3章の(c)の「配偶者の祖父母は対象か」のような運用は、課員の頭の中にあります。手引きに書かれていない運用は、この構成では答えられません。 文書にする作業が、そのまま答えの範囲を広げます。

Step3

データの取得方法を決める

文書は Cloud Storage に置き、メタデータ付きでデータストアへ取り込みます。 規程は Word、別表は Excel、手引きは PDF で持っていることが多く、レイアウトの解析は PDF・HTML・DOCX・PPTX・XLSX・XLSM の配置を検出します。 別表の行と見出しを見分けられるので、表のまま取り込めます。

取るものどこから何に使うか
雇用区分メタデータ employment_typesその社員の区分の規程と別表だけに絞る
文書の種類メタデータ doc_type規程・別表・手引きを分けて根拠に示す
制度の区分メタデータ benefit_area慶弔の質問で社宅の文書を引かない
適用開始日・終了日メタデータ valid_from・valid_to事由の発生日に効いている版だけに絞る

絞り込みの式は、雇用区分と日付で書きます。 項目を索引可能にしておけば、employment_types: ANY("shokutaku") AND benefit_area: ANY("keicho") AND valid_from <= "2026-09-14" AND valid_to >= "2026-09-14" のように、嘱託の、慶弔の、9月14日に効いていた版を引けます。日付は ISO 8601 の文字列で比べられます。索引可能にしても絞り込みに使えない項目があるとされているので、 項目ごとに絞り込めるかを最初に確かめます。

雇用区分と日付は、人事の仕組みから引いた値と画面で選んだ値を中継プログラムが式に入れます。 モデルにも社員にも書かせません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 規程を版ごとに分ける … 改定のたびに上書きされた規程は、版ごとに別のファイルにして適用期間を付けます
  2. 別表を雇用区分ごとに分ける … 4区分の表が1枚にある別表は、区分ごとのファイルに分けます
  3. 手引きに運用を書き足す … 課員に聞いて、続柄の数え方、事由が重なったときの扱い、申請の期限を過ぎたときの扱いを書きます
  4. 様式の案内を文書にする … 様式のファイル名、置き場、提出先を1枚の案内にまとめ、制度の区分を付けます
  5. 個人の事例を入れない … 過去の問い合わせのメールは、社員の名前と事情が書かれているので取り込みません
  6. 見出しを断片に含める … データストアの作成時に分割を有効にし、includeAncestorHeadings を有効にします

3番目がいちばん時間のかかる作業です。 課員4名に、過去3か月で「規程の文だけでは答えられなかった」質問を挙げてもらい、その答えを手引きの文にします。 何十件か書くと、運用の大半が文書になります。

6番目は、データストアを作る前に決めます。 分割はデータストアの作成後に有効にも無効にもできず、見出しを含める設定は既定では無効です。 「3日」とだけ書かれた断片は、見出しが無いと特別休暇の日数か申請の期限か分かりません。 分割の大きさは100〜500トークンで、既定は500です。

Step5

AIに処理させる

させるのは、その社員の区分と日付の規程から質問に当たる定めを見つけ、対象の条件と手続きを決まった項目に分けて、根拠付きで並べることです。 支給するかどうかの判断と、金額の計算はさせません。

項目中身根拠
制度結婚祝金、弔慰金、傷病見舞金、災害見舞金、特別休暇、社宅、借上げ住宅規程
対象の条件続柄、勤続、雇用区分、事由の範囲規程・別表
金額・日数別表に書かれた数字のまま別表
申請の様式様式の名前と置き場手引き・様式の案内
期限事由が起きてからいつまでに出すか手引き
添付書類会葬礼状、婚姻の届出の受理の写しなど、手引きにあるもの手引き

answer メソッドの設定は次のようにします。

設定値理由
session質問ごとのセッション聞き足した続柄で絞り直す
includeCitations有効(既定は無効)規程の条と別表の行を付ける
ignoreLowRelevantContent有効規程に無い制度を答えない
groundingSpec の filteringLevelFILTERING_LEVEL_HIGH根拠の弱い答えを出さない
filter雇用区分、制度の区分、日付他の区分と改定前の版を混ぜない
preamble下の指示答え方の規則を与える
させないこと理由
「支給されます」と言う支給を決めるのは申請を受けた総務の担当者
規程に無い続柄を近い条項から類推する類推の答えが会社の回答として受け取られる
社宅の自己負担や課税額を計算する自己負担は別表の数字。税の計算は給与の担当
他の雇用区分の別表で補うその社員の区分の別表だけが効く
社員の事情について意見を書く慶弔は個人の事情。答えるのは制度だけ

2行目がいちばん起きやすい失敗です。 「配偶者の祖母」が別表に無いと、モデルは「祖父母」の行を引いて「対象です」と書きます。規程が配偶者の祖父母を含めるつもりで書いたのかは、規程の文からは分かりません。 定めが見つからない続柄は「規程に定めが見つからない」で止め、総務へ回します。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます。

あなたは食品メーカーの総務部厚生課で、社員からの福利厚生の質問に答える立場です。
質問した社員の雇用区分と、事由の日付に効いている規程・別表・手引きから、
制度の対象の条件と手続きを探します。読むのは質問した社員本人です。

【答え方】
1. 次の項目を分けて書いてください。
   制度/対象の条件/金額・日数/申請の様式/期限/添付書類
2. 金額と日数は、別表の数字のまま写してください。
3. 根拠にした文書の種類(規程/別表/手引き)と、条または表の行を書いてください。
4. 最後に「支給・入居の可否は、申請を受けた総務部が規程に照らして決めます」と書いてください。

【厳守事項】
- 検索結果の文書に書かれていることだけで答えてください。
  一般的な会社の慣行や、世間の相場で補わないでください。
- 別表に無い続柄や事由を、近い行から類推して対象と書かないでください。
  その場合は「規程に定めが見つからない」とだけ書いてください。
- 「支給されます」「対象になります」と断定しないでください。
  「規程の条件は次のとおりです」と書いてください。
- 社宅の自己負担額や税金を計算しないでください。別表の数字だけを示してください。
- 質問に書かれた個人の事情(病名、亡くなった方の名前など)を答えに繰り返さないでください。
- 文書どうしで食い違うときは、どちらが優先かを決めず、
  食い違う箇所を並べて「総務部の確認が要る」と書いてください。

「対象になりますと断定しない」を書くのは、条件を満たすかを決める材料が画面に無いからです。 勤続年数の数え方、事由の日付、続柄の証明は、申請の書類で確かめます。条件を並べるところで止めれば、社員は自分で当てはまるかを読めます。

「個人の事情を繰り返さない」も明記します。 何も言わなければ、答えの冒頭で「お父様の◯◯病でのご入院について」と質問を言い直します。記録に残る答えに、病名が二重に残ります。

Step7

出力形式を固定する

answer メソッドの応答を、中継プログラムが次の形に整えて、画面と記録に渡します。

{
  "query_id": "",
  "session_id": "",
  "employee_id": "",
  "employment_type": "regular | shokutaku | contract | part_time",
  "event_area": "keicho | housing | other",
  "event_date": "2026-09-14",
  "question": "",
  "benefits": [
    { "benefit": "", "conditions": [""], "amount_or_days_text": "",
      "form": "", "deadline_text": "", "attachments": [""],
      "refs": [ { "doc_type": "rule | table | guide", "location": "",
                  "valid_from": "", "uri": "" } ] }
  ],
  "not_found": [""],
  "conflicts": [ { "summary": "", "refs": [""] } ],
  "status": "answered | routed | skipped",
  "employee_feedback": { "resolved": true, "note": "" }
}

1つ目の理由は、benefits を制度ごとに持てることです。 「父が亡くなった」の質問には、弔慰金と特別休暇の2つの制度が当たります。制度ごとに様式と期限が違うので、1つの文に混ぜると、休暇の届を出し忘れます。

2つ目は、amount_or_days_text と deadline_text を文字列で持つことです。 「勤続3年以上は3万円」「事由発生日から起算して2か月以内」のような条件は、数値の項目にすると落ちます。別表と手引きの文のまま持たせます。

3つ目は、not_found で回し先を機械的に決められることです。 not_found に1つでも入れば、画面は「総務部に確認します」とだけ出し、質問を総務の待ち行列へ載せます。 社員には、待ち行列に載ったことと、回答の目安の日を返します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
社内のチャット画面社内向けの画面事由と日付の選択、質問、条件と根拠の表示
社内の ID 基盤ログイン社員を特定する
人事の仕組み読み取り雇用区分と勤務地の区分を引く
Agent Searchanswer メソッドの呼び出し区分と日付で絞って答えを返す
総務の待ち行列書き込み定めが無い・食い違う質問を載せる
質問の記録書き込み質問・答え・根拠・評価を残す

申請の仕組みには、つなぎません。 画面から申請が出せると、「対象と書いてあったから出した」申請が増えます。 申請はこれまでどおりの様式で出し、総務の担当者が受けます。

総務の待ち行列で答えた質問は、手引きに書き足すかを毎週決めます。 同じ質問が2回回ってきたら、手引きに書いて取り込むところまでを1件の完了とします。 回ってくる質問が、手引きの穴の一覧になります。

Step9

人が確認する

社員への答えを、総務の担当者が1件ずつ確かめる運用にはしません。 答えは規程に書いてあることだけで、書いていないものは最初から総務へ回るからです。人が見るのは次のものです。

  1. 回ってきた質問に答える … not_found と conflicts のもの、根拠が弱く答えが落ちたもの
  2. 「解決しなかった」と押された答えを読む … 根拠の版と区分が合っていたかを確かめます
  3. 週に1回、答えた質問から20件を抜いて読む … 別表の行の取り違えが無いかを見ます
  4. 申請が届いたら規程と照らす … 画面の答えは、支給の判断の根拠にしません

3番目を省かないでください。 雇用区分の取り違えは、社員の側からは気づけません。正社員の別表で答えられた嘱託の社員は、申請が戻ってくるまで誤りに気づきません。

目標は、240件をならして1件5分です。 大半は画面で終わり、総務に回るものと抜き取りの確認、回った質問への回答に時間を使う想定です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
別表に無い続柄・事由not_found。総務の待ち行列へ
根拠のスコアが低く答えが落ちたLOW_GROUNDED_CONTENT。取り込み漏れを疑い、厚生課で確かめる
規程と手引きが食い違うconflicts に並べて総務へ。どちらが優先かは決めない
人事の仕組みに雇用区分が無い(入社前の内定者など)答えを出さず、総務へ回す
事由の日付が規程の改定日をまたぐ改定の前と後の両方を日付付きで並べ、総務へも回す
質問が福利厚生でない(給与の振込、年末の書類)skipped。担当の窓口を案内する
質問に病名や亡くなった方の名前が書かれている答えに繰り返さない。記録の閲覧を厚生課に限る
検索が応答しない画面に「後で再送」を出し、質問の文は消さずに残す

1行目と2行目は、運用の最初の数か月に集中します。 手引きのそろえ方の穴が、そのまま答えの穴として出てきます。落ちた答えを数えると、どの制度から手引きを書き足すべきかが分かります。

Step11

記録を残す

  • 質問の文、社員の ID、雇用区分、事由の種類と日付、日時、セッションの ID
  • 絞り込みの式と、answer メソッドの応答の全文(出典と根拠のスコアを含む)
  • 整えた答え(benefits、not_found、conflicts)
  • そのとき参照した文書の版(文書の ID と valid_from・valid_to)
  • 社員の評価と、総務へ回った質問の回答、手引きに書き足した文
  • 記録の閲覧の履歴

4つ目で「そのときの版」を残すのは、申請が届いてから話が食い違うことがあるためです。 「チャットでは対象と出た」と言われたとき、その日の雇用区分と規程の版で何を示したかを、記録から確かめられます。

記録には個人の事情が入るので、閲覧は厚生課に限ります。 弔事と見舞の質問は、家族の死亡や病気そのものです。 保存の期間を決め、期間を過ぎた質問の文は消します。

04実装レベルの3段階

最小構成:規程と手引きを手でAIの画面に読み込ませ、総務の課員が質問する / 課員が規程を探す時間
半自動化:上記+文書をデータストアに入れ、雇用区分で絞って総務の課員が検索する / 区分を選んだ検索と出典の表示
本格構成:上記+社員が直接質問し、人事の仕組みから区分を引き、日付で版を絞り、定めの無いものを総務の待ち行列へ回す / 回答・版の確認・回し先の振り分けの全体

最小構成では、社員は使えません。 課員が自分の調べものに使う段階で、確かめるための段階です。 半自動化で、1件15分が9分程度になります。 探す時間は減りますが、質問を受けて区分を確かめ、回答を書いて返す作業が課員に残ります。本格構成で5分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、質問を受けて返す往復を、社員と画面の間で済ませるかの違いです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を課員が1か月使うと、手引きに無い運用と、区分ごとに分かれていない別表が先に分かります。そこを直してから社員に開くほうが、総務へ回る質問が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
4 名
月間件数
240 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
5 分
現在  240件 × 15分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 240件 × 5分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価3,000円)
144万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 社員が数百名から数千名いて、慶弔見舞金・特別休暇・社宅・借上げ住宅・保養所などの福利厚生の制度を規程と手引きで細かく定めている会社。正社員・契約社員・パートなどの雇用区分で対象が違い、規程の改定も年に何度かある場合。総務の窓口に同じ質問が毎月何百件も届き、答えられる担当者が限られている場合。
向いていない
  1. 社員が数十名で、総務の担当者が全員の顔と事情を知っている場合。福利厚生の規程が文書になっておらず、総務の担当者の判断で個別に決めている場合(先に規程と手引きを文書にするのが先です)。支給の可否や金額の確定、社宅の入居者の決定までAIに任せたい場合(この構成は規程の条件と手続きを示すだけで、支給と入居を決めるのは総務の担当者です)。

07最小構成で試す方法

  1. 慶弔見舞金規程・社宅規程・別表・総務の手引きを集める(雇用区分ごとの別表を全部入れる)
  2. 過去3か月の問い合わせから30件を選び、当時の回答を書き出す(嘱託とパートタイマーの質問を5件以上入れる)
  3. 文書を手元のAIサービスに読み込ませる(社員の名前が入った過去のメールは入れない)
  4. 「この社員は嘱託です。事由は9月14日です。この区分と日付の規程だけを根拠に、対象の条件・金額・申請の様式・期限・添付書類を、根拠の条と別表の行付きで答えてください。規程に無い続柄なら、無いと書いてください」と指示する
  5. 出てきた答えを、当時の回答と突き合わせる

30件は必ずやってください。 データストアを組む前に、「規程と手引きだけで答えが決まるのか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時の回答と同じ条件と根拠が出たデータストアと絞り込みの構築に進む
別表に無い続柄を類推で対象と書いた指示の書き方で直る。構成は有効
当時の回答が手引きのどこにも無い運用だった手引きに書き足すのが先。 AIの問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、特定の課員に質問が集まっていた理由が1つ分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
正社員の別表で嘱託に答える雇用区分を人事の仕組みから引き、絞り込みの式に必ず入れる
改定前の版で答える規程を版ごとに分け、事由の発生日で絞る
別表に無い続柄を類推で対象にするnot_found で止め、総務へ回す。指示でも禁じる
4区分の別表が1枚で、行を取り違える別表を区分ごとの文書に分ける
「3日」が何の日数か分からないincludeAncestorHeadings を有効にする。作成後は変えられない
社宅の自己負担を計算して答える別表の数字だけを示す。税の計算は給与の担当へ
答えに病名や名前が残る指示で繰り返しを禁じ、記録の閲覧を厚生課に限る
「対象になります」が申請の約束になる条件を並べるところで止め、可否は総務が決めると書く
手引きに無い運用を聞かれる回ってきた質問を手引きに書き足し、取り込むまでを1件の完了とする
内定者や退職予定者が使う人事の仕組みで区分が引けない社員は、総務へ回す

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「その社員の、その日の規程」を外す失敗で、答えの文は正しく見えます。 区分と日付を、文の読み方ではなく人事の仕組みとメタデータで守っているかで、運用に乗るかが決まります。

下の2行は、使い始めてから見つかります。 手引きに無い運用を聞かれるのは、社員が画面を信頼し始めた証拠でもあります。 回ってきた質問を放置すると、社員は総務への電話に戻ります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 福利厚生の規程と手引き、社員の雇用区分と勤務地、そして社員が質問に書く家族の死亡・病気・結婚・住まいの事情です。

  1. 個人の事情を、検索の対象に入れない … 取り込むのは規程・別表・手引きだけです。過去の問い合わせのメールは、社員の名前と事情が書かれているので、データストアに入れません
  2. 記録の閲覧を厚生課に限る … 質問の文には病名や家族の名前が入ります。閲覧できる人を絞り、保存の期間を決めて消します
  3. この構成は支給と入居を決めません … 弔慰金を払うか、社宅に入居させるかは、申請を受けた総務の担当者が規程と照らして決めることです。 画面の答えは、その判断の根拠になりません
  4. 税の取り扱いは給与の担当と決める … 社宅の自己負担額と課税の関係は、国税庁のタックスアンサーが示す賃貸料相当額の考え方に関わります。自己負担額の設定や課税の判断は、この構成の外で給与の担当と税理士が行います
  5. 区分ごとに見せる文書を分ける … 役員向けの規程のように、一般の社員に見せない文書があるなら、データストアのアクセス制御を使います。 アクセス制御はデータストアの作成時に選ぶ必要があり、既存のデータストアで切り替えることはできません。Cloud Storage の文書では、メタデータの acl_info に読める人を書きます
  6. 改定のたびに古い版を消さない … 事由の発生日が改定前なら、改定前の版で答える必要があります。古い版は valid_to を付けて残します

誤りが起きた場合のリスクは、対象外の社員に「対象」と案内することと、対象の社員に申請の期限を伝え損ねることの2つです。 前者は申請が戻って社員の信頼を、後者は社員の受け取れたはずの給付を失います。どちらも、区分と日付の絞り込みと、定めの無いものを回す設計の側で止めます。

10まず何から始めるか

1週目:文書を版と区分で分ける

慶弔見舞金規程・社宅規程・別表・手引きを集め、規程を版ごとに、別表を雇用区分ごとに分けます。 適用開始日と終了日を書き出します。この作業で、規程の改定の履歴が見えます。

2週目:30件で試す

過去の質問30件を、手引きと規程だけを読み込ませた手元のAIサービスで試します。別表に無い続柄を類推していないか、区分を取り違えていないかを最優先で見ます。

3週目:手引きに運用を書き足す

30件のうち、規程と手引きのどこにも無かった運用を、課員に聞いて手引きの文にします。 続柄の数え方、事由が重なったときの扱い、期限を過ぎたときの扱いを先に書きます。

4週目:データストアと絞り込みをつなぐ

分割と見出しの設定を決めてデータストアを作り、文書を取り込みます。中継プログラムで雇用区分と日付の絞り込みを入れ、厚生課の課員だけが使う形で条件と根拠を画面に出すところまで作ります。

2か月目: 課員4名で使い、not_found と落ちた答えを毎週数えます。3か月目以降: 工場1か所の社員に開き、総務へ回る割合と1件15分が何分になったかを実測します。回ってきた質問を手引きに書き足す手順が定着し、同じ質問が総務へ二度回らなくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドが検索結果から回答を作ること。前のセッションの ID でやり取りを続けられること。includeCitations(既定は無効)、ignoreLowRelevantContent、preamble、searchSpec の filter。groundingSpec の filteringLevel(FILTERING_LEVEL_LOW/HIGH)と主張ごとの根拠のスコア、answerSkippedReasons の LOW_GROUNDED_CONTENTGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-08
絞り込みの ANY()、比較の演算子、AND/OR、日付を ISO 8601 の文字列で比べられること、項目を索引可能にする必要があること、索引可能でも絞り込みに使えない項目があることGoogle Cloud: Filter search for structured or unstructured data2026-10-08
レイアウトの解析が PDF・HTML・DOCX・PPTX・XLSX・XLSM の配置を検出すること。分割の大きさが100〜500トークン(既定500)、includeAncestorHeadings が既定で無効、分割はデータストアの作成後に切り替えられないことGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-08
データソースのアクセス制御がデータストアの作成時に選ぶ設定で、既存のデータストアで切り替えられないこと。Cloud Storage の文書ではメタデータの acl_info に読める人を書くことGoogle Cloud: Use data source access control2026-10-08
使用人に社宅や寮を貸す場合、賃貸料相当額の50パーセント以上の家賃を受け取っていれば給与として課税されないこと。賃貸料相当額が建物・敷地の固定資産税の課税標準額と床面積から計算されること。現金の住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担は給与として課税されること(令和8年4月1日現在法令等)国税庁: No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき2026-10-08

支給の可否と社宅の自己負担・課税の扱いは、各社の規程と給与の担当・税理士の判断に従ってください。 本記事は Google Cloud と国税庁のページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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