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賃貸管理の担当が交代するときに、物件ごとのメール・Teams・対応記録から、オーナーとの約束と対応中の案件を引継ぎ書にまとめる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

賃貸管理の担当が替わる物件について、前任のメール・Teams・管理システムの対応記録を物件単位で集め、引継ぎ書の下書きを作ります。前任の作業は、記録をさかのぼって書き起こすことから、出どころ付きの下書きを確かめて補うことに変わります。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
その他/不動産/建設
対象部門
カスタマーサポート
対象業務
書類作成/要約
主な課題
属人化している/引き継ぎができていない/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
要約
主な効果
属人化解消/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
80h/月
AI導入後
30h/月
想定削減
63%
年間削減
600h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 上長が担当替えを決め、対象の物件と前任・後任を部内に知らせる
  2. 前任が、物件ごとに Outlook を物件名・オーナー名で検索し、過去1年ほどのメールを読み直す
  3. Teams のエリアのチャネルをさかのぼり、その物件についての投稿と返信を探す
  4. 管理システムで、その物件の対応記録のうち完了していないものを一覧にする
  5. オーナーとの約束、対応中の案件、注意点を思い出しながら、Wordかメールに書き出す
  6. 後任へ渡し、時間が取れれば読み合わせをする
  7. 後任がオーナーへ担当交代のあいさつをし、以後の問い合わせを受ける
導入後(After)
  1. 人上長が担当替えを決め、対象の物件・前任・後任・交代日を担当替えの一覧に登録する
  2. 自動一覧への登録をきっかけに、物件ごとの素材フォルダを SharePoint に作る
  3. 自動管理システムから書き出した対応記録のうち、その物件の未完了と直近1年分を素材ファイルにする
  4. 自動Teams のエリアのチャネルから、物件コードの付いた投稿と返信を集めて素材ファイルにする
  5. 人前任が、その物件のオーナーとのメールのうち約束や経緯を含むものを素材フォルダに入れる
  6. 人前任が Copilot Notebooks で物件の Notebook を作り、素材フォルダを参照先に加える
  7. 【AI】 共有の指示文で、約束・対応中の案件・注意点を出どころ付きで引継ぎ書の下書きにする
  8. 人前任が下書きを確かめ、出どころの無いもの・覚えているだけのものを自分で書き足す
  9. 人上長が下書きに目を通し、オーナーとの約束の扱いに迷うものに印を付ける
  10. 人後任と読み合わせ、確定した引継ぎ書を物件のフォルダに保存する
  11. 人後任が Notebook に残った参照先を使い、着任後の質問を Copilot に聞く
各工程の詳しい説明を読む
  1. 上長が担当替えを決め、対象の物件と前任・後任を部内に知らせる
  2. 前任が、物件ごとに Outlook を物件名・オーナー名で検索し、過去1年ほどのメールを読み直す
  3. Teams のエリアのチャネルをさかのぼり、その物件についての投稿と返信を探す
  4. 管理システムで、その物件の対応記録のうち完了していないものを一覧にする
  5. オーナーとの約束、対応中の案件、注意点を思い出しながら、Wordかメールに書き出す
  6. 後任へ渡し、時間が取れれば読み合わせをする
  7. 後任がオーナーへ担当交代のあいさつをし、以後の問い合わせを受ける

(a)約束はメールの中に埋もれる。 「次回の更新時に家賃の見直しを相談させてください」「外壁の塗装は来年の春に改めて見積を出します」。こうした取り決めはオーナーとのメールの往復の途中に1行だけ出てきて、管理システムのどこにも残りません。前任が忘れていれば、引継ぎ書から黙って落ちます。 後任が知るのは、オーナーから「前の担当はこう言っていた」と言われたときです。

(b)対応中の案件の「途中経過」が渡らない。 管理システムを見れば、修繕の手配中という状態は分かります。しかし、業者に2回断られて3社目に頼んでいる、オーナーは費用の上限を口頭で伝えている、入居者には来週と伝えてある、という途中経過はメールと Teams にしかありません。状態だけを渡されると、後任は同じ確認を最初からやり直します。

(c)Teams の返信の中に答えがある。 エリアのチャネルでは、1件の相談に上長や工務の担当が返信で答えます。決まったことは返信の何件目かに書かれていて、最初の投稿だけを読んでも分かりません。 さかのぼって探すのは、物件が多いほど続きません。

(d)書き方が人によって違う。 丁寧な前任は経緯まで書き、忙しい前任は「特記事項なし」と書きます。後任が困るかどうかは、物件ではなく前任で決まります。

  1. 【人】 上長が担当替えを決め、対象の物件・前任・後任・交代日を担当替えの一覧に登録する
  2. 【自動】 一覧への登録をきっかけに、物件ごとの素材フォルダを SharePoint に作る
  3. 【自動】 管理システムから書き出した対応記録のうち、その物件の未完了と直近1年分を素材ファイルにする
  4. 【自動】 Teams のエリアのチャネルから、物件コードの付いた投稿と返信を集めて素材ファイルにする
  5. 【人】 前任が、その物件のオーナーとのメールのうち約束や経緯を含むものを素材フォルダに入れる
  6. 【人】 前任が Copilot Notebooks で物件の Notebook を作り、素材フォルダを参照先に加える
  7. 【AI】 共有の指示文で、約束・対応中の案件・注意点を出どころ付きで引継ぎ書の下書きにする
  8. 【人】 前任が下書きを確かめ、出どころの無いもの・覚えているだけのものを自分で書き足す
  9. 【人】 上長が下書きに目を通し、オーナーとの約束の扱いに迷うものに印を付ける
  10. 【人】 後任と読み合わせ、確定した引継ぎ書を物件のフォルダに保存する
  11. 【人】 後任が Notebook に残った参照先を使い、着任後の質問を Copilot に聞く

8番目が、この設計の分かれ目です。 AIが書けるのは、記録に残っていることだけです。記録に残っていない約束を補うのは前任の仕事で、ここを省くと引継ぎ書は「記録の要約」で止まります。 下書きの最後に「記録からは確認できなかったこと」の欄を必ず作らせ、前任に埋めさせます。

5番目でメールを前任に選ばせているのは、オーナーとのメールに相続や資金繰りのような話が混ざるためです。 何を渡すかは前任が決めます。

02今回想定するシステム構成

構成図
担当替えの一覧(SharePoint リスト:物件コード/前任/後任/交代日)
   ▼【トリガー】一覧への登録
Power Automate
   ├──▶ 物件ごとの素材フォルダを作る
   ├──▶ 管理システムの対応記録(CSV)から、その物件の未完了+直近1年分を抜く → R-番号
   └──▶ Teams のエリアのチャネルから物件コードの投稿と返信を集める → T-番号
   ▼
前任がオーナーとのメールを選んで素材フォルダへ(PDF化) → M-番号
   ▼【人が作らせる】
Microsoft 365 Copilot(Copilot Notebooks)
   │   参照先:素材フォルダ(R-/T-/M-)+管理受託契約の要点
   │   共有の指示文で、①約束 ②対応中の案件 ③注意点 ④記録で確認できないこと
   ▼【人が確かめて補う】
前任の加筆 → 上長の確認 → 後任と読み合わせ → 引継ぎ書を確定して保存
役割想定する製品代替候補
処理Microsoft 365 Copilot(Copilot Notebooks と Outlook の Copilot)ChatGPT Enterprise、Gemini、Claude
連携Power Automate(素材フォルダの作成、対応記録と Teams の投稿の取りまとめ)Make、n8n
保管SharePoint ドキュメントライブラリOneDrive、Google ドライブ
対応記録賃貸管理システムのCSV書き出し管理システムのAPI
通知Microsoft TeamsSlack

新しく足すのは、担当替えの一覧と Power Automate のフローと Copilot の利用だけです。 最初の準備作業は、物件コードを Teams の投稿とメールの件名に付ける決まりを作ることです。

Copilot の使い方は、ライセンスで決まります。 Microsoft の公開資料によると、Copilot Chat(Basic)と Microsoft 365 Copilot(Basic)は Microsoft Graph 経由で組織データを使えず、組織のコンテンツを使うには、プロンプトの作成時にファイルをアップロードするか選択するか、Teams や Outlook でコンテンツを開いた状態で使う必要があります。Microsoft 365 Copilot(Premium)は Microsoft Graph と Work IQ を通じて組織データを自動で参照し、フォーカスするファイルを指定できるとされています。

この構成は、どちらのライセンスでも動くように、素材を素材フォルダに集めてから読ませます。 受信箱全体から探させると、どのメールを読んだのかが引継ぎ書から分からなくなります。

束ねる場所に Copilot Notebooks を使います。 参照先は Files・Meetings・Emails・Sites で絞り込んで選べ、ファイルの種類は .docx、.pptx、.xlsx、.pdf、.loop、.page、.txt、.rtf と OneNote のページで、SharePoint のサイト、ドキュメントライブラリ、フォルダも参照先にできます。 参照先は最新の状態に保たれるとされ、素材フォルダにメールを足すと、そのまま読み直せます。

参照先の数には上限があります。Microsoft Copilot のユーザーは300件を超えて追加できますが、根拠に使われるのは最初の300件まで、Copilot Chat のユーザーは50件までです。1物件の素材を数ファイルにまとめるのは、この上限に当たらないようにするためでもあります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

担当替えの一覧に物件が登録されたことを起点にします。 一覧は SharePoint のリストで、物件コード、前任、後任、交代日、理由(異動・退職・組み替え・オーナー希望)を持たせます。上長が登録した時点で Power Automate が動き、素材フォルダを作って前任に Teams で知らせます。

交代日の10営業日前までに登録する決まりにします。 引継ぎ書の作成、上長の確認、後任との読み合わせを交代日の前に終わらせるためです。退職が急に決まった場合は、登録と同時に前任の残り出勤日を一覧に入れ、それより前に素材の確認だけは終わらせます。

1日1回のまとめ処理にはしません。 担当替えは月の中でばらばらに決まり、決まった日から交代日までの日数が物件ごとに違います。登録のたびに1物件ずつ動かします。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
担当替えの一覧物件コード、前任、後任、交代日、理由SharePoint リスト
対応記録受付日、種別(修繕・滞納・退去・苦情・契約)、状態、対応内容、次の予定日賃貸管理システムのCSV書き出し
Teams の投稿エリアのチャネルの、物件コードを含む投稿とその返信Teams
オーナーとのメール前任が選んだ、約束・経緯・費用の持ち方を含むメール前任の Outlook
管理受託契約の要点管理の範囲、オーナーへの報告の頻度、修繕の承認が要る金額契約書の要点をまとめた一覧

質を決めるのは、いちばん下の2つです。 メールが選ばれていなければ、約束は拾えません。管理受託契約の要点が無ければ、「この金額の修繕はオーナーの承認が要る」という前提が引継ぎ書に入らず、後任が承認を取らずに発注することが起きます。

対応記録は直近1年分と、それより古くても未完了のものを入れます。 1年より古い完了済みの記録は、後から探す仕組み(UC-0400)の守備範囲で、引継ぎ書には載せません。

Step3

データの取得方法を決める

対応記録は、管理システムから物件コードで絞ったCSVを書き出し、Power Automate で素材フォルダに置きます。管理システムにAPIがあればそこから取り、無ければ前任か事務担当が書き出して所定のフォルダに入れます。1行ごとに R-001 からの番号を振り、番号と元の記録の受付番号を対応させます。

Teams の投稿は、Power Automate の Teams コネクタで集めます。コネクタには、チャネルのメッセージを取得するアクションと、チャネルのメッセージへの返信を一覧にするアクションがあります。返信の取得件数は既定で20件、1〜50件の間で指定できるとされているため、返信の多いスレッドは50件ずつに分けて取り、取りきれなかったことを素材ファイルに書きます。

取るものどこから何に使うか
物件コードを含む投稿Teams コネクタのチャネルのメッセージの取得相談の起点
投稿への返信Teams コネクタの返信の一覧決まったことは返信にある
未完了と直近1年の対応記録管理システムのCSV対応中の案件の状態と次の予定日
前任が選んだメール前任の Outlook(PDFにして素材フォルダへ)約束と経緯

Teams の投稿を Copilot に直接要約させないのには理由があります。 Teams のチャットとチャネルの Copilot は、既定で直近30日の履歴を参照し、画像、Loop コンポーネント、スレッドで共有されたファイルは要約できないとされています。担当替えで要るのは1年分で、現場の投稿には写真だけのものも多くあります。素材ファイルに取り出し、画像が付いていた投稿には「画像あり」と印を付けます。

メールは、前任が Outlook でオーナー名か物件コードで検索し、要るものを選んでPDFにします。長いスレッドは、Outlook の「Copilot による要約」で中身を先に確かめてから選ぶと早く進みます。 要約にはスレッド内の該当メールへ飛べる番号付きの引用が付くことがあるとされ、どのメールを入れるべきかの見当が付きます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 物件コードでの絞り込み … Teams の投稿は、本文に物件コードか物件名を含むものだけを残します。物件名の表記ゆれ(「〇〇ハイツ」「〇〇H」)は、物件ごとの別名の一覧で吸収します
  2. 返信の取り込み … 投稿ごとに返信を時刻順に並べ、最初の投稿と返信を1つの塊にします。 返信だけを切り離すと、何についての返事か分からなくなります
  3. 出どころの番号付け … 対応記録は R-、Teams は T-、メールは M- で始まる番号を振り、素材ファイルの先頭に番号と日付と差出人の一覧を置きます
  4. 画像と添付の印 … 画像やファイルだけの投稿は本文が空になるので、「画像あり」「添付あり」と書いた行を残します
  5. 入居者の個人情報の扱い … 入居者の氏名は部屋番号に置き換えます。病気、家族の事情、近隣とのもめごとの相手の名前は、素材に入れません
  6. 重複の除去 … 同じ内容が Teams とメールの両方にある場合は、両方の番号を残したまま1つに寄せます
  7. 期間の区切り … 直近1年より古いものは、未完了の案件に関係するものだけを残します

5番目は、素材を作る段階で済ませます。 引継ぎ書は社内で回覧され、Notebook は共有されます。後から消すより、最初から入れないほうが確実です。

Step5

AIに処理させる

させるのは、素材に書かれていることを4つの欄に振り分け、1行ごとに出どころの番号を付けることだけです。

欄書くこと書かないこと
① オーナーとの約束誰が、いつ、何を、いつまでに、と約束したか。条件付きならその条件素材に無い約束、前任の意図の推測
② 対応中の案件案件の種別、いまの状態、次にやること、次の予定日、相手先完了した案件の経緯の詳細
③ 物件の注意点オーナーの連絡の好み、修繕の承認の決まり、設備や鍵のくせ入居者個人の事情
④ 記録で確認できないこと素材の中で結論が出ていないもの、言及はあるが続きが無いもの推測で埋めた結論

右端の列が、この構成でいちばん大事な制約です。 引継ぎ書の価値は、書かれていることが本当に約束されたことかどうかにかかっています。AIが「おそらく来期に見積を出す予定」とつなげて書くと、後任はそれを約束として扱います。

④の欄を必ず作らせます。 「外壁の塗装について、オーナーから問い合わせがあり、前任が『確認します』と返信したところで止まっている」。こうした宙に浮いた案件は、①にも②にも入りません。④に置いて、前任に結論を書き足してもらいます。

約束の期限は、素材の文言のまま写させます。 「来年の春」「次の更新のとき」を日付に直させません。直すのは前任と後任です。

させないこと理由
約束を引き継ぐかどうかの判断条件の見直しを含め、前任・後任・上長が決める
オーナーや入居者の人柄の評価引継ぎ書は回覧される。事実と連絡の好みだけを書く
期限の日付への言い換え「春」「次の更新」を勝手に確定させない
金額の計算・合算修繕費や滞納額は管理システムの値を見る
素材に無い案件の補完記録に無いものは前任が書き足す
Step6

指示内容を固定する

あなたは賃貸管理会社で、担当替えの引継ぎ書の下書きを作る立場です。
参照先の素材ファイルに書かれていることだけを使ってください。
推測で埋めないでください。

【物件】{物件コード}/{物件名}
【前任】{前任} 【後任】{後任} 【交代日】{交代日}

【作る欄】
① オーナーとの約束
   誰が、いつ(素材の日付)、何を、いつまでに。条件付きなら条件も。
② 対応中の案件
   種別、いまの状態、次にやること、次の予定日、相手先(業者・入居者の部屋番号)。
③ 物件の注意点
   オーナーの連絡の好み、修繕の承認の決まり、設備や鍵のくせ。
④ 記録で確認できないこと
   話が出ているが結論の無いもの、返信が途切れているもの。

【厳守事項】
- すべての行の末尾に、根拠にした素材の番号(R-/T-/M-)を付けてください。
  番号を付けられない内容は書かないでください。
- 約束として書くのは、素材の中で「〜します」「〜で合意」と
  はっきり書かれているものだけです。
  「検討します」「確認します」で止まっているものは④に入れてください。
- 期限は素材の文言のまま写してください。
  「来年の春」「次回の更新時」を日付に直さないでください。
- 金額は素材に書かれた数字をそのまま写し、計算や合算をしないでください。
- 入居者の氏名、健康、家族の事情は書かないでください。部屋番号で書いてください。
- オーナーや入居者の人柄を評価する言葉を書かないでください。
- 「画像あり」「添付あり」の印が付いた素材は、中身を推測せず、
  ④に「画像・添付の確認が要る」として番号を挙げてください。
- 同じ内容が複数の素材にあるときは、1行にまとめて番号を全部付けてください。
- 最後に、使わなかった素材の番号を一覧にしてください。

「番号を付けられない内容は書かない」を最初に置かないと、まとめの一文が増えます。 「全体として、オーナーとの関係は良好です」のような、どの素材にも書かれていない総評です。総評は引継ぎ書に要りません。

「検討します」を④へ送る指示が、この指示文でいちばん効きます。 担当者のメールには「確認して改めてご連絡します」が多く、何も言わないと約束として①に入ります。後任にとっては、約束と保留の違いがいちばん重い情報です。

最後の「使わなかった素材」の一覧は、前任の確認のためにあります。 入れたはずのメールが引継ぎ書に反映されていなければ、そこで分かります。

Step7

出力形式を固定する

Word に貼れる表の形で受け取ります。 Notebook の中でページにして、そのまま前任が手を入れます。

欄内容期限・次の予定相手出どころ
① 約束次回の更新では家賃を据え置く。ただし固定資産税が上がった場合は相談次回の更新時オーナーM-03
② 対応中203号室の給湯器の交換。業者2社が辞退し、3社目に見積を依頼中見積の回答待ち〇〇設備R-014、T-07
③ 注意点修繕の見積は3社分を求められる。電話よりメールでの連絡を希望-オーナーM-01、M-05
④ 未確認外壁の塗装の相談に「確認します」と返信したまま続きが無い-オーナーM-06

1つ目の理由は、前任が直しやすいことです。 1行が1つの事実なので、違う行を消し、足りない行を足すだけで済みます。文章でまとめられると、どこを直せばよいかを探すところから始まります。

2つ目は、出どころの列で確認が速くなることです。 後任は、気になる行の番号から素材ファイルを開き、元のメールや投稿を読めます。番号から元の記録へ1回で戻れることが、引継ぎ書を信用できるかどうかを決めます。

3つ目は、②の行を後任の管理システムの作業に移しやすいことです。 次の予定日のある行は、後任が自分の予定と管理システムの次回予定に入れ直します。AIの出力を管理システムへ自動で書き込むことはしません。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
担当替えの一覧Power Automate のトリガー物件の登録を検知する
賃貸管理システムCSVの書き出し(APIがあればAPI)対応記録を素材にする
TeamsPower Automate の Teams コネクタ投稿と返信を集める
SharePoint素材フォルダと引継ぎ書の保存物件ごとのフォルダ
Microsoft 365 CopilotCopilot Notebooks素材を参照先にして下書きを作る

管理システムへは書き込みません。 引継ぎ書の②にある次の予定日は、後任が自分で管理システムに入れ直します。入れ直す作業そのものが、後任が案件を自分のものにする確認になります。

Notebook は後任と共有します。 共有すると、受け取った人は Notebook に紐づくファイルに招待されますが、それは受け取った人にそのファイルへのアクセス権がある場合に限られるとされています。素材フォルダの権限を、前任・後任・上長の3人に絞っておけば、共有の範囲もそこで止まります。

Step9

人が確認する

この構成では、すべての引継ぎ書を人が確かめます。 担当替えは物件の窓口が替わる場面で、1行の誤りがオーナーとの関係にそのまま響きます。

  1. 前任が①を1行ずつ確かめる … 出どころの番号から元のメールを開き、本当に約束したことかを見ます。誤って①に入った保留は④へ移します
  2. 前任が④を埋める … 結論が出ていないものに、前任が知っている結論か、「未定」を書きます
  3. 前任が記録に無い約束を書き足す … 電話で話しただけのものです。出どころの欄に「前任の記憶」と書きます
  4. 上長が①に目を通す … 家賃の据え置きや費用の負担のように、会社として引き継ぐかを判断すべき約束に印を付けます
  5. 後任と読み合わせる … ②の次の予定日を、後任がその場で自分の予定に入れます

3番目を省かないでください。 管理担当とオーナーの約束の多くは電話で交わされます。AIが下書きを作れるようになると、前任は「下書きに無いものは無い」と思いがちです。 下書きの末尾に「電話で話したことで、ここに無いもの」の欄を空けておきます。

目標は、1物件あたり45分です。 前任の確認と加筆に30分、上長の確認と後任との読み合わせの準備に15分という想定です。それを大きく超える物件が続くなら、素材の取りまとめで Teams の返信か対応記録が落ちていないかを先に疑います。 前任が自分で探し直している時間が、確認の時間に紛れ込んでいるからです。

Step10

例外に対処する

起きること対応
前任がすでに退職している上長が前任の代わりにメールを選ぶ。④が多くなるので、読み合わせに上長が入る
物件コードが付いていない投稿が多い物件名の別名で拾い直す。拾えない分は前任が素材フォルダに足す
返信が50件を超えるスレッド50件ずつ分けて取る。取りきれなかった印を素材に残す
画像・添付だけの投稿「画像あり」の印で④に挙げ、前任が中身を見て書き足す
オーナーとのメールが電話のメモしかない前任が③④に書き足す。出どころは「前任の記憶」
素材が多すぎて参照先の上限に近い物件ごとの素材を数ファイルにまとめ直す
1人のオーナーが複数の物件を持つオーナーとの約束は物件ごとに分けて書き、複数の物件にまたがる約束は全物件の引継ぎ書に載せる
交代日までに読み合わせができない引継ぎ書を先に渡し、読み合わせを交代後1週間以内に入れる
担当替えが取り消された一覧から外し、素材フォルダを閉じる

上から2行目が、始めた直後にいちばん多く起きます。 物件コードを付ける決まりは、決めてから全員に浸透するまでに時間がかかります。最初の数か月は、前任が素材フォルダに足す作業が増えることを見込んでください。

Step11

記録を残す

  • 担当替えの一覧の記録(物件、前任、後任、交代日、理由、登録した人)
  • 素材フォルダ(対応記録、Teams の投稿と返信、選んだメール)と、素材を作った日時
  • Copilot が作った下書きと、前任が直した後の確定版の両方
  • 前任が書き足した行と、出どころが「前任の記憶」の行
  • 上長が印を付けた約束と、その扱い(引き継ぐ/見直す)
  • 読み合わせの日と、後任が受け取った日

下書きと確定版の両方を残すのは、AIの癖を知るためです。 前任が毎回①から④へ移している行があれば、指示文の書き方を直します。オーナーから後で「言った・言わない」になったときに、引継ぎの時点で何が記録にあったかを示す材料にもなります。

「前任の記憶」の行が多い物件は、メールや記録に残らないやり取りが多い物件です。 次の担当替えまでに、後任が記録に残す習慣を付けるきっかけになります。

04実装レベルの3段階

最小構成:前任がメールと対応記録を手で集め、Copilot Chat にアップロードして下書きを作る / 下書きの作成
半自動化:上記+担当替えの一覧を起点に素材フォルダを作り、対応記録と Teams の投稿を自動で集めて、Copilot Notebooks で下書きを作る / 素材の取りまとめと下書き
本格構成:上記+管理システムのAPIで対応記録を取り、次の予定日の行を後任のタスクの候補として一覧にし、交代後の問い合わせ記録と突き合わせる / 素材の取得から引継ぎ後の追跡まで

最小構成では、素材を集める時間が残ります。 1棟ずつ前任がメールを探してPDFにするので、①の読み直しの時間はあまり減りません。確かめるための段階です。 半自動化で、1物件120分が45分になり、この段階が本記事の想定です。 対応記録と Teams の投稿が素材フォルダにそろって届くので、前任がするのはメールを選ぶことと、下書きを確かめて補うことだけになります。 本格構成は、引継ぎ後の追跡まで含みます。 交代後1か月の問い合わせに引継ぎ書に無かった話が出たら印を付け、どの種類の約束が漏れやすいかを集めます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
30 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
120 分
1件あたり導入後時間
45 分
現在  40件 × 120分 ÷ 60 = 80 時間/月
導入後 40件 × 45分 ÷ 60 = 30 時間/月
月間削減時間
50h
削減率
63%
年間削減時間
600h
年間金額換算(時間単価3,000円)
180万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 管理物件が数百棟あり、異動・退職・エリアの組み替えで毎月どこかの物件の担当が替わる賃貸管理会社。オーナーとのやり取りが担当者個人のメールと Teams に散らばり、管理システムの対応記録には結果しか残っていない場合。引継ぎ書の書式が決まっておらず、担当者によって厚さが大きく違う場合。Microsoft 365 を全社で使っている場合。
向いていない
  1. 管理物件が数十棟で、担当替えが年に数回しかない場合。オーナーとの約束や対応中の案件を、管理システムの案件管理の機能にすでに漏れなく記録できている場合。メールや Teams を使わず、やり取りが電話と紙に限られていて、要約させる材料が電子で残っていない場合。なお、オーナーとの約束を引き継ぐかどうか、条件を見直すかどうかの判断は、前任・後任と上長に残ります。

07最小構成で試す方法

  1. 先月までに担当が替わった物件から5棟を選ぶ(うち2棟は、後から「聞いていない」が起きた物件を入れる)
  2. その物件の前任のメールから、オーナーとのやり取りを10通ずつ選んでPDFにする
  3. 管理システムから、その物件の対応記録をCSVで書き出す
  4. Copilot Chat に、PDFとCSVをアップロードして第7章の指示文を貼る
  5. 出てきた下書きを、当時の引継ぎ書と、後から起きた「聞いていない」の内容と突き合わせる

「聞いていない」が起きた物件を必ず入れてください。 その約束が下書きの①か④に出てくるかどうかが、この構成が効くかどうかの答えです。

出てきた内容判断
当時の引継ぎ書に無かった約束が①か④に出た素材の取りまとめの自動化に進む
保留が約束として①に入った指示文で直る。構成は有効
約束がそもそもメールに無かった電話のやり取りが多い物件。 前任の書き足しの欄を重く見る

3行目が出たら、電話のあとに一言メールで確認を送る運用を始めるきっかけにしてください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
「確認します」が約束として①に入る保留を④へ送る指示を明記する。 前任が①を1行ずつ確かめる
出どころの無い総評が書かれる番号を付けられない内容は書かせない
Teams の返信が拾えていない決まったことは返信にある。 返信の一覧の取得を入れる
返信の多いスレッドが途中で切れる返信は1〜50件で指定する。取りきれなかった印を残す
写真だけの投稿が要約から消える「画像あり」の印で④に挙げる
物件コードの無い投稿が拾えない別名の一覧で拾い、拾えない分は前任が足す
受信箱全体を読ませて出どころが分からない読ませる範囲を素材フォルダに限る
入居者の事情が引継ぎ書に載る素材を作る段階で部屋番号に置き換え、事情を入れない
期限が勝手に日付になる素材の文言のまま写させる
前任が「下書きに無いものは無い」と思う電話で話したことの欄を空けて、書き足しを促す
Notebook の共有で素材が広く見える素材フォルダの権限を前任・後任・上長に絞る
次の予定日が管理システムに入らない後任が自分で入れ直す。読み合わせの場で済ませる

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、AIが「まとまった文章」にしようとすることから起きます。引継ぎ書に要るのは、まとまりではなく、1行ずつ元の記録へ戻れることです。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: オーナーの氏名と連絡先、賃料や修繕費などの金額、オーナーとのメールの本文、入居者の部屋番号と対応の経緯です。オーナーとのメールには、相続、資金繰り、物件の売却の検討のような話が含まれることがあります。

  1. AIに読ませる範囲を前任が決める … 受信箱全体を探させず、前任が選んだメールだけを素材にします。後任にも渡すべきでない話は、前任が選ばなければ素材に入りません
  2. 入居者の個人の事情を素材に入れない … 氏名は部屋番号に置き換え、健康や家族の事情は入れません。引継ぎ書は回覧され、Notebook は共有されます
  3. 共有の範囲をフォルダの権限で絞る … Notebook を共有すると、受け取った人はアクセス権のあるファイルに招待されます。素材フォルダを前任・後任・上長だけが開けるようにしておきます
  4. 企業向けのデータ保護の範囲で使う … Microsoft の公開資料によると、Microsoft Entra アカウントでサインインした Copilot Chat と Microsoft 365 Copilot は、エンタープライズ データ保護の対象とされています。個人のアカウントでサインインして使わないよう、部内に周知します
  5. 約束の扱いをAIに決めさせない … 家賃の据え置きや費用の負担のような約束を会社として引き継ぐかは、上長が決めます。AIが出すのは、記録に何が書かれていたかという事実だけです

誤りが起きた場合のリスクは、約束が漏れることと、約束でないものを約束として渡すことの2つです。 前者は素材の選び漏れと前任の確認の省略で起き、後者は保留を①に入れたまま渡すことで起きます。どちらも、出どころの番号から元の記録を開いて確かめる手順で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:物件コードを付ける決まりを作る

Teams の投稿とオーナーへのメールの件名に、物件コードを先頭に付ける決まりを部内で決めます。過去の投稿には付いていないので、物件名の別名の一覧もあわせて作ります。

2週目:5棟で試す

先月までに担当が替わった物件から5棟を選び、メールと対応記録を Copilot Chat にアップロードして下書きを作ります。後から「聞いていない」が起きた物件の約束が、下書きに出てくるかを最優先で見ます。

3週目:引継ぎ書の書式を決める

①約束、②対応中の案件、③注意点、④記録で確認できないこと、の4欄と出どころの列を、部の引継ぎ書の書式として決めます。 上長が①に目を通す決まりも、ここで決めます。

4週目:担当替えの一覧と素材フォルダをつなぐ

SharePoint に担当替えの一覧を作り、Power Automate で素材フォルダの作成と対応記録の取りまとめまでを組みます。この時点では Teams の投稿の取りまとめは入れず、前任が手で足します。

2か月目: Teams の投稿と返信の取りまとめを足し、Copilot Notebooks で物件ごとに下書きを作ります。前任が①から④へ移した行の数を毎月数えます。3か月目以降: 1物件120分が何分になったかを実測し、交代後1か月の「聞いていない」の件数を見ます。後任が Notebook に残った参照先で着任後の質問を片づけられるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
Basic のライセンスは Microsoft Graph 経由で組織データを使えず、ファイルのアップロード・選択か Teams・Outlook で開いた状態での利用が要ること。Premium は組織データを自動で参照すること。Entra アカウントでのサインイン時にエンタープライズ データ保護の対象となることMicrosoft Learn: Microsoft Copilot とは?2026-10-06
Outlook で「Copilot による要約」を選ぶとスレッドの要約が作られ、スレッド内の該当メールへ飛べる番号付きの引用が付くことがあること。添付の PDF・PowerPoint・Word を要約できることMicrosoft Support: Summarize an email thread with Copilot in Outlook2026-10-06
参照先にできるファイルの種類と SharePoint のフォルダ。根拠に使われる参照先が300件まで(Copilot Chat は50件)であること。参照先が最新に保たれること。共有時にアクセス権のある範囲でファイルに招待されることMicrosoft Support: Add references to your Microsoft 365 Copilot Notebook2026-10-06
参照先の候補を Files・Meetings・Emails・Sites で絞り込めること。SharePoint か OneDrive のライセンスが要ることMicrosoft Support: Get started with Microsoft 365 Copilot Notebooks2026-10-06
Teams のチャットとチャネルの Copilot が既定で直近30日の履歴を参照し、期間を指定できること。画像、Loop コンポーネント、スレッドで共有されたファイルを要約できないことMicrosoft Support: Copilot in Teams chats and channels2026-10-06
Teams コネクタにチャネルのメッセージの取得と、チャネルのメッセージへの返信の一覧のアクションがあること。返信の取得件数が既定20件・1〜50件で指定できることMicrosoft Learn: Microsoft Teams connector2026-10-06

オーナーとの約束を会社としてどう引き継ぐかは、各社の管理受託契約と社内の決まりで判断してください。 本記事は Microsoft の公開資料で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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