Media > AI活用ユースケース > 人事 > 介護施設の夜勤の職員が、転倒・発熱・急変のときの手順を声でAIに聞き、施設の手順書を根拠にした答えと連絡先を受け取る

介護施設の夜勤の職員が、転倒・発熱・急変のときの手順を声でAIに聞き、施設の手順書を根拠にした答えと連絡先を受け取る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

夜勤の職員が業務用のスマートフォンに声で「転んだ人がいる、まず何をする」と聞くと、Gemini API が施設の手順書の該当箇所を探し、手順と連絡する相手、書く記録を声で返します。 手がふさがったまま、紙のファイルを探さずに済みます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI
連携・自動化
Google Apps Script
対象業界
介護/医療/宿泊
対象部門
人事/品質管理
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
人手が足りない/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
対話
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/教育コスト削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
50h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
60%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 入居者の転倒や発熱に気づいた職員が、その場で必要な安全の確保をする
  2. 手順を確かめるため、ユニットの事務スペースに戻って手順書のファイルを開き、該当のページを探す
  3. ページが見つからない、または書いてあることの意味が分からないときは、夜勤リーダーに電話する
  4. 夜勤リーダーも分からないときは、オンコールの看護職に電話する
  5. 看護職の指示に従って対応する
  6. 介護記録のシステムに経過を書き、必要ならヒヤリ・ハットや事故の報告書の様式に書く
  7. 朝の申し送りで、夜間の出来事を日勤に伝える
導入後(After)
  1. 人職員が、首から下げた業務用のスマートフォンのボタンを押して、声で聞く(「101号室の方が転倒、意識はある、まず何をする」)
  2. 自動声の質問を、命に関わる語(呼吸、意識、反応が無い等)があるかで見分ける
  3. 自動命に関わる語があれば、決めた固定の文を読み上げる(119番とオンコールへの連絡を最初に)
  4. 自動それ以外は、手順書の検索を呼び出し、該当する手順の箇所を取り出す
  5. 自動手順を3〜5つの短い文にして声で返し、手順書の名前とページ、連絡する相手、書く様式を添える
  6. 人職員が「次は」「家族への連絡は」と続けて聞く。分からないときは「リーダーにつないで」と言う
  7. 自動やり取りの文字起こしと、引いた手順書の箇所を記録に残す
  8. 自動朝6時に、夜間のやり取りを場面ごとにまとめ、申し送りの下書きと、手順書に無かった質問の一覧を作る
  9. 人夜勤リーダーが申し送りの下書きを確かめ、日勤に渡す
  10. 人手順書の委員会が、手順書に無かった質問の一覧を月に1回見て、手順書を直す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 入居者の転倒や発熱に気づいた職員が、その場で必要な安全の確保をする
  2. 手順を確かめるため、ユニットの事務スペースに戻って手順書のファイルを開き、該当のページを探す
  3. ページが見つからない、または書いてあることの意味が分からないときは、夜勤リーダーに電話する
  4. 夜勤リーダーも分からないときは、オンコールの看護職に電話する
  5. 看護職の指示に従って対応する
  6. 介護記録のシステムに経過を書き、必要ならヒヤリ・ハットや事故の報告書の様式に書く
  7. 朝の申し送りで、夜間の出来事を日勤に伝える

(a)手順書を探すあいだ、現場を離れる。 転倒した人のそばを離れてファイルを取りに行き、ページを探します。手順書は「まず動かさない」と書いているのに、それを確かめるために現場を離れる、という矛盾が起きます。

(b)確認の電話がリーダーとオンコールに集まる。 「発熱のときに測るのは体温だけか」「家族への連絡は夜中でもするのか」。手順書に答えが書いてある質問が、夜間の電話の多くを占めています。 オンコールの看護職は、本当に判断が要る電話を、手順の確認の電話の合間に受けることになります。

(c)経験で動き方が変わる。 ベテランは手順書を見ずに動けますが、見ずに動けることと、手順書どおりに動くことは別です。 前の施設のやり方が混ざると、記録に残す項目や連絡の順が施設の決まりとずれます。

(d)外国人の職員が、日本語の手順書を夜中に読み切れない。 日常の会話はできても、手順書の専門的な語を急いで読むのは難しく、分からないまま電話をかけるか、分からないまま動くかになります。

  1. 【人】 職員が、首から下げた業務用のスマートフォンのボタンを押して、声で聞く(「101号室の方が転倒、意識はある、まず何をする」)
  2. 【自動】 声の質問を、命に関わる語(呼吸、意識、反応が無い等)があるかで見分ける
  3. 【自動】 命に関わる語があれば、決めた固定の文を読み上げる(119番とオンコールへの連絡を最初に)
  4. 【自動】 それ以外は、手順書の検索を呼び出し、該当する手順の箇所を取り出す
  5. 【自動】 手順を3〜5つの短い文にして声で返し、手順書の名前とページ、連絡する相手、書く様式を添える
  6. 【人】 職員が「次は」「家族への連絡は」と続けて聞く。分からないときは「リーダーにつないで」と言う
  7. 【自動】 やり取りの文字起こしと、引いた手順書の箇所を記録に残す
  8. 【自動】 朝6時に、夜間のやり取りを場面ごとにまとめ、申し送りの下書きと、手順書に無かった質問の一覧を作る
  9. 【人】 夜勤リーダーが申し送りの下書きを確かめ、日勤に渡す
  10. 【人】 手順書の委員会が、手順書に無かった質問の一覧を月に1回見て、手順書を直す

3番目が、この構成でいちばん大事な工程です。 命に関わる場面では、検索も要約もさせません。固定の文は看護職と管理者が書いたもので、AIはそれを読み上げるだけです。 検索の結果を待つ数秒も、その場面では惜しいためです。

10番目で、仕組みが手順書を育てます。 「手順書にありません」と答えた質問は、夜勤の職員が本当に困ったことの記録です。委員会が月に1回それを見て、手順書に1行足すかを決めます。

02今回想定するシステム構成

構成図
夜勤の職員(業務用スマートフォン)
   │  ボタンを押して声で聞く
   ▼【トリガー】ボタン操作で会話を開始
Gemini API(Live API:声の受け答え)
   │   ├─ 命に関わる語 → 固定の文(関数で取得)
   │   └─ それ以外   → 関数呼び出し search_manual
   ▼
Cloud Run functions(施設の中継サーバー)
   ├──▶ Gemini API(Interactions+File Search)── 手順書の該当箇所と引用
   ├──▶ 連絡先の台帳(今夜のオンコール、リーダーの内線)
   ▼
Live API へ結果を返す → 声で読み上げ
   ▼
やり取りの記録(文字起こし・引用した手順書)
   ▼【毎朝6時】
申し送りの下書き/手順書に無かった質問の一覧
役割想定する製品代替候補
処理Gemini API(Live API の声の受け答えと関数呼び出し)OpenAI API(Realtime)、Azure AI Speech
検索基盤Gemini API の File SearchGoogle Vertex AI、Azure AI Search
連携Google Cloud Run functionsGoogle Apps Script
記録Google スプレッドシート(やり取りの記録と連絡先の台帳)介護記録のシステムの取り込み機能
手順書の置き場Google ドライブSharePoint

新しく足すのは、Gemini API の利用と、中継のサーバーと、業務用のスマートフォンの画面だけです。 介護記録のシステムには書き込みません。記録を書くのは、これまでどおり職員です。

声の受け答えは、Gemini の Live API で行います。 Live API は、声・画像・文字を流し続けて受け取り、低い遅延で声の答えを返す仕組みで、WebSocket の状態を持った接続で動きます。入力の声は16kHzの16ビットPCM、出力は24kHzの16ビットPCMです。70の言語で会話でき、日本語も含まれます。 職員が話している途中で答えを遮れる機能や、入出力の声の文字起こしもあります。

手順書の検索は、File Search で行います。 File Search は、文書を取り込んで分割し、埋め込みにして索引を作り、質問に近い箇所を取り出す仕組みです。応答には、どのファイルのどのページを引いたかが付きます。 1ファイル100MBまで、PDF・ワープロ・スプレッドシートなど80を超える形式を取り込めます。

ここで1つ、構成の要になる制約があります。File Search は Live API では使えません。 そのため、Live API の関数呼び出しで中継のサーバーを呼び、中継のサーバーが別に Interactions API で File Search を使って手順書を引き、その結果を Live API に返します。声の受け答えと手順書の検索を、2つの呼び出しに分ける構成です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

職員がスマートフォンの画面のボタンを押したときに、会話を始めます。 常に聞き耳を立てる作りにはしません。夜間の居室で、入居者の声や寝言を拾わないためです。 ボタンを押してから話し、話し終えたら手を離す、という使い方を基本にします。

1回の会話は、1つの場面に限ります。 転倒の対応が終わったら会話を閉じ、次の場面ではまたボタンを押します。Live API の声だけの会話は、圧縮をしなければ15分までで、接続そのものは10分ほどで切り替わります。夜勤の1つの場面は、たいていこの中に収まります。

長くなる場面では、会話の再開を使います。 サーバーは接続が切れる前に GoAway を送ってきて、残り時間を知らせます。再開のための手がかりは、最後の会話が終わってから2時間有効なので、接続し直しても同じ会話を続けられます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
声の質問職員の声(16kHz)と、その文字起こし業務用スマートフォン
職員とユニット誰が、どのユニットで聞いたかスマートフォンのログイン
手順書場面ごとの手順、連絡の順、書く様式。版と改訂日File Search に取り込んだ手順書
固定の文命に関わる場面で読み上げる文と、その場面を示す語看護職と管理者が作る一覧
連絡先の台帳今夜のオンコールの看護職、夜勤リーダーの内線、管理者当番表のスプレッドシート

質を決めるのは、手順書の書き方です。 「状況に応じて適切に対応する」と書かれた手順は、声で読み上げても役に立ちません。「まず動かさない」「頭を打ったかを本人に聞く」「看護職に電話する」のように、1文で1つの動作になっている手順ほど、声で伝わります。

固定の文は、看護職と管理者が書いて署名します。

場面を示す語読み上げる固定の文
呼吸をしていない、息をしていない「すぐに119番に電話してください。次にオンコールの看護師に電話します。手順書は急変の1ページです」
意識が無い、呼んでも反応が無い「すぐにオンコールの看護師に電話してください。番号は今から読み上げます。そばを離れず、ほかの職員を呼んでください」
大量に出血している「出血している所を清潔な布で押さえ、オンコールの看護師に電話してください」

この一覧はAIが書き換えないものです。 改訂のたびに版と日付を付け、誰が決めたかを残します。

Step3

データの取得方法を決める

手順書は、File Search の保管庫に取り込みます。 保管庫を1つ作り、手順書のファイルを場面ごとに上げます。ファイルには 場面(転倒、発熱、急変 など)と 版 のメタデータを付けます。 検索のときに、メタデータの条件で最新の版だけに絞れます。

取るものどこから何に使うか
手順の該当箇所と引用Interactions API の File Search(最新の版で絞る)声で返す手順と、手順書の名前・ページ
今夜の連絡先当番表のスプレッドシート誰に電話するかを名前と番号で返す
固定の文固定の文の一覧命に関わる場面で読み上げる
書く様式手順書の「記録」の節介護記録・ヒヤリ・ハット・事故の報告書のどれに書くか

File Search の費用は、取り込みのときの埋め込みにかかります。 保管しておくことと、質問のときの埋め込みには費用がかからず、引いた箇所は通常の入力として数えられます。 手順書は数十ファイルで、保管庫の上限(無料の枠で1GB)には遠く届きません。

手順書の分け方を調整できます。 取り込みのときに、1つの塊の長さと、塊どうしの重なりを指定できます。手順書は1場面が数ページと短いので、塊を小さめにし、 「転倒」の中の「頭を打った場合」だけを引けるようにします。

連絡先は、手順書に書きません。 オンコールの看護職は日によって変わるので、手順書には「オンコールの看護師」とだけ書き、番号は当番表から引きます。 手順書に名前と番号を書くと、古い番号を読み上げることになります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. ボタンの確認 … ボタンが押されている間の声だけを送ります
  2. 職員とユニットの付与 … ログインした職員とユニットを、会話の最初に渡します
  3. 命に関わる語の判定 … 文字起こしに固定の文の一覧の語があれば、関数 get_fixed_script を最初に呼ばせます
  4. 個人名の扱い … 入居者の氏名を言わず、居室の番号で言うよう職員に決めておきます。手順を引くのに、入居者の名前は要りません
  5. 当番表の読み込み … 会話の最初に今夜の連絡先を中継のサーバーが読み、関数の結果に添えます
  6. 手順書の版の確認 … 検索は最新の版のメタデータで絞ります。古い版のファイルは保管庫から消さず、検索から外すだけにします

4番目は、運用で決めることです。 声で話すと、職員はつい入居者の名前を言います。「何号室の方が」と言う習慣を、導入の研修で最初に教えます。 名前が混ざっても手順は引けますが、記録に残る文字起こしに名前が残ります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、職員の質問を受けて、手順書から引いた手順を声で短く伝え、連絡する相手と書く様式を添えることです。

させること中身判断できないときの扱い
場面の聞き取り何が起きたか(転倒・発熱・嘔吐など)を1回で聞き取る分からなければ「何が起きましたか」と1回だけ聞き返す
固定の文の呼び出し命に関わる語があれば get_fixed_script を呼ぶ迷えば呼ぶ
手順の検索search_manual を呼び、引いた手順を読み上げる手順書に無ければ「手順書にありません」と言う
短く伝える手順を1回に3つまで、1文で1つの動作職員が「次は」と言えば続きを伝える
連絡先と様式誰に電話するか(名前と番号)、どの様式に書くか当番表に無ければ夜勤リーダーを伝える
母語での受け答え職員が日本語以外で聞いたら、その言語で答える手順書の語は日本語のまま添える

関数は3つにします。

関数中継のサーバーがすること返すもの
get_fixed_script(keyword)固定の文の一覧を引く固定の文、版、連絡先
search_manual(question, scene)Interactions API で File Search を使い、最新の版から手順を引く手順(3〜5文)、手順書の名前とページ、書く様式
get_contact(role)当番表から今夜の担当を引く名前、内線・電話番号

Live API の関数呼び出しは、使うモデルによって動き方が違います。 Gemini 3.1 Flash Live Preview では同期だけで、関数の結果が返るまでモデルが待ちます。Gemini 2.5 Flash Live Preview では、同期と非同期の両方が使えます。この構成は同期で十分です。 手順の検索の結果を待たずに話し始められても、職員にとって意味が無いためです。

させないこと理由
症状からの見立て(重い・軽い)見立てるのは看護職。規約上も医療上の助言に使えない
受診や救急要請の要否の判断固定の文と手順書に書かれたことだけを伝える
薬の量や使い方の指示手順書にあっても、看護職の指示に従う場面として伝える
手順書に無い手順の組み立て一般的な介護の知識で答えさせない
事故の報告をするかどうかの判断管理者が翌朝に決める。夜勤は記録を残す
固定の文の言い換え一覧の文をそのまま読み上げる

1行目と2行目は、Gemini API の規約にも関わります。 規約では、サービスを臨床の場で使うこと、医療上の助言を与えることに使うことが禁じられています。この構成が答えるのは「施設の手順書に何と書いてあるか」と「誰に連絡するか」だけで、見立ては看護職に回します。 プロンプトだけでなく、関数の作りでもそれを守ります。

Step6

指示内容を固定する

あなたは特別養護老人ホームの夜勤の職員を助ける声の案内役です。
職員は入居者のそばにいて、手がふさがっています。短く、はっきり話してください。

【いちばん大事な決まり】
- 「呼吸」「息をしていない」「意識」「反応がない」「大量の出血」などの語があれば、
  ほかのことをする前に get_fixed_script を呼び、返ってきた文をそのまま読み上げてください。
  言い換え、省略、付け足しをしないでください。
- あなたは症状を見立てません。重い・軽い、様子を見てよい、受診が要る、とは言わないでください。
  見立てが要る質問には「それはオンコールの看護師が判断します」と言い、get_contact で番号を伝えてください。

【答え方】
1. 何が起きたかが分からなければ、「何が起きましたか」と1回だけ聞いてください。
2. search_manual を呼び、返ってきた手順だけを伝えてください。
   手順書に無いことを、一般的な知識で補わないでください。
3. 1回に伝える手順は3つまでです。1文で1つの動作にしてください。
   職員が「次は」と言ったら、続きを伝えてください。
4. 最後に、手順書の名前とページ、電話する相手、書く記録の様式を伝えてください。
5. search_manual が「該当なし」を返したら、「手順書にありません。夜勤リーダーに確認してください」
   と言い、get_contact でリーダーの内線を伝えてください。
6. 職員が日本語以外で話したら、その言語で答えてください。
   手順書に出てくる様式の名前と、電話する相手の役職は、日本語でも添えてください。

【してはいけないこと】
- 薬の量や使い方を指示しないでください。
- 事故の報告を出すかどうかを言わないでください。「記録を残し、朝に管理者へ伝えてください」と言ってください。
- 入居者の名前を聞き返さないでください。居室の番号で十分です。

「言い換え、省略、付け足しをしない」を固定の文の指示に入れるのは、 何も言わなければ、モデルは固定の文を自然な話し言葉に整えて読み上げるためです。119番と看護師の順番が入れ替わるだけで、固定にした意味が無くなります。

「1回だけ聞く」と回数を決めるのも、現場のためです。 聞き返しを重ねると、職員は答えるうちに入居者から目を離します。1回聞いて分からなければ、手順の検索に進みます。

Step7

出力形式を固定する

声の受け答えそのものは、Live API が声で返します。 記録に残すのは、中継のサーバーが関数ごとに書き出す次のJSONと、Live API の入出力の文字起こしです。

{
  "session_id": "",
  "staff_id": "",
  "unit": "3F-B",
  "started_at": "2026-10-07T02:14:00+09:00",
  "scene": "fall | fever | vomit | aspiration | sudden_change | wandering | other",
  "fixed_script_used": false,
  "manual_refs": [
    { "file": "転倒時の対応_v5.pdf", "page": 2, "version": "5" }
  ],
  "contacts_given": [ { "role": "oncall_nurse", "name": "", "number": "" } ],
  "record_forms": ["介護記録", "事故報告書(施設内)"],
  "not_in_manual": false,
  "escalated_to": "none | leader | oncall_nurse",
  "language": "ja"
}

1つ目の理由は、朝の申し送りの下書きを作れることです。 朝6時の処理が、その夜のJSONを場面ごとに並べ、Interactions API に申し送りの下書きを作らせます。下書きの材料は、このJSONと文字起こしだけにし、介護記録は読みません。

2つ目は、手順書に無かった質問を数えられることです。 not_in_manual が true のものだけを集めると、委員会が月に1回見る一覧になります。

日場面質問(文字起こし)回した先
10/3other「ポータブルトイレの横で座り込んでいる、転倒になるか」リーダー
10/5fever「解熱剤の頓用の指示がある人の、使ったあとの記録はどこ」リーダー

3つ目は、固定の文がどれだけ使われたかを見られることです。 fixed_script_used が true のものは、翌朝に看護職がすべて確かめます。 固定の文が誤って呼ばれた場合も、呼ばれるべきなのに呼ばれなかった場合も、ここで分かります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
業務用スマートフォンブラウザの画面から Live API へ WebSocket声を送り、声の答えを受け取る
中継のサーバーLive API の関数呼び出しの結果として固定の文・手順・連絡先を返す
Gemini API(Interactions)中継のサーバーから呼び出しFile Search で手順書を引く/朝の申し送りの下書き
当番表スプレッドシートの読み取り今夜の連絡先
やり取りの記録スプレッドシートへの書き込みJSONと文字起こし

スマートフォンから Live API へは、一時的な鍵でつなぎます。 公式のページは、利用者の端末から直接つなぐ場合、本番では通常のAPIキーではなく一時的なトークンを使うことを勧めています。中継のサーバーが会話ごとに一時的な鍵を発行し、スマートフォンにはAPIキーを置きません。

介護記録のシステムへは書き込みません。 経過の記録は職員が書き、この構成は「どの様式に書くか」を伝えるところまでです。 AIの文字起こしを記録にそのまま写すと、職員が見ていないことまで記録に入ります。

Step9

人が確認する

夜のあいだ、AIの答えを人が1件ずつ確かめることはしません。 確かめる時間があれば、職員は入居者のそばにいるべきだからです。その代わり、次の3つを決めた時点で人が見ます。

  1. 固定の文が呼ばれたときは、翌朝に看護職がすべて見る … 呼ばれた場面、読み上げた文、その後の連絡の順
  2. 朝の申し送りの下書きは、夜勤リーダーが確かめてから渡す … 下書きの場面の分け方と、回した先が合っているか
  3. 手順書に無かった質問は、委員会が月に1回見る … 手順書に足すか、足さないかを決める

職員は、いつでも「リーダーにつないで」と言えます。 AIの答えが分かりにくい、手順書と違う気がする、というときは、AIに聞き直すより先にリーダーに電話することを、導入の研修で教えます。

オンコールへの電話の数は、減らすことを目標にしません。 減らしたいのは、手順書に答えがある確認の電話だけです。見立てが要る電話は、むしろ早くかかるようにします。

Step10

例外に対処する

起きること対応
通信が切れるスマートフォンの画面に「リーダーに電話」のボタンと、固定の文の一覧を文字で出す
声が聞き取れない1回だけ「もう一度言ってください」と返し、だめなら画面に場面のボタンを出す
手順書に答えが無い「手順書にありません」と言い、リーダーの内線を伝える
当番表に今夜の担当が無い夜勤リーダーと管理者の番号を伝え、記録に「当番表の未入力」と残す
会話が15分を超えそう会話の再開でつなぎ直す。場面が変わったら新しい会話にする
古い版の手順書が引かれる版のメタデータで絞り、引いた版を記録に残す。合わなければ取り込みを見直す
職員が入居者の名前を言った文字起こしの記録から、朝の処理で名前を伏せる
API の応答が遅い3秒で画面に固定の文の一覧を出し、声を待たずに読めるようにする

いちばん上の行のために、画面を声だけにしません。 夜間は、通信の届きにくい居室や浴室があります。固定の文の一覧と、リーダーへの電話のボタンは、通信が無くても画面に出るよう、スマートフォンの画面に持たせておきます。

Step11

記録を残す

  • 会話ごとのJSON(場面、引いた手順書、伝えた連絡先、回した先)
  • Live API の入出力の文字起こし(入居者の名前は朝の処理で伏せる)
  • 固定の文が呼ばれた記録と、翌朝の看護職の確認の結果
  • 手順書に無かった質問の一覧と、委員会の判断
  • 手順書の版と、取り込んだ日
  • 声そのものは残さない

声を残さないのは、居室の音を含むためです。 声には、入居者の寝言や呼吸の音、ほかの職員の会話が入ります。残すのは文字起こしと、引いた手順書の記録だけにします。

04実装レベルの3段階

最小構成:手順書を手で Gemini の画面に添付し、文字か声で聞く / 手順書を根拠にした答え
半自動化:上記+File Search に手順書を取り込み、スマートフォンの画面から文字で聞く / 最新の版の手順と、手順書の名前・ページ
本格構成:上記+Live API で声の受け答えにし、固定の文・連絡先の関数と、朝の申し送りの下書きまで / 声での手順の案内と、夜間の記録のまとめ

半自動化では、手がふさがった職員が使えません。 文字で打つには、入居者から手を離す必要があります。それでも、手順書を探す時間は減り、手順書に無い質問を集め始められます。 本格構成で、1件10分が4分になります。この段階が本記事の想定です。 声で聞けることで、現場を離れずに手順を確かめられます。固定の文と連絡先の関数は、本格構成で初めて入ります。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1か月回すと読みにくい手順書が分かり、直してから声にするほうが答えの質が上がります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
25 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
10 分
1件あたり導入後時間
4 分
現在  300件 × 10分 ÷ 60 = 50 時間/月
導入後 300件 × 4分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
60%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価2,500円)
90万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 夜勤の時間帯を少人数で回し、看護職がオンコールで施設にいない特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・グループホームなど。転倒・発熱・急変のときの手順書はあるが紙のファイルで、夜間に探しきれず夜勤リーダーやオンコールへの確認の電話が増えている場合。経験の浅い職員や外国人の職員が夜勤に入るようになった場合。手順書を看護職と管理者が定期的に見直す体制がある場合。
向いていない
  1. 夜間も看護職が施設に常駐し、その場で聞ける場合。手順書が無い、または何年も見直されていない場合(先に手順書を整える必要があります)。症状から病状を見立てる、受診の要否を決める、といった判断をAIに求める場合(この構成は手順書の該当箇所と連絡先を伝えるだけで、医療的な判断はしません)。夜勤の職員が使える業務用の端末を用意できない場合。

07最小構成で試す方法

  1. 手順書から「転倒」「発熱」「嘔吐」の3つの場面を選ぶ
  2. 夜勤の職員に、それぞれの場面で実際に聞いたこと・聞きたかったことを10個ずつ書いてもらう(計30問)
  3. 手元の Gemini の画面に3つの手順書のPDFを添付し、「この手順書に書かれていることだけで答えてください。書かれていなければ、書かれていないと答えてください。見立てはしないでください」と指示する
  4. 30問を声で聞き、答えを看護職と夜勤リーダーが一緒に聞く
  5. 答えが手順書と合っているか、手順書に無いことを補っていないかを1問ずつ確かめる

30問の半分は、手順書に答えが無いものにしてください。 「書かれていません」と言えるかが、いちばん確かめたいことです。

出てきた内容判断
手順書どおりに答え、無いものは無いと言えたLive API と中継のサーバーの構築に進む
手順書に無いことを一般的な知識で補った指示の書き方で直る。構成は有効
手順書の書き方があいまいで、答えもあいまい手順書を直すのが先。 AIの問題ではない
見立てに近いことを言った指示と関数の作りを見直すまで先に進まない

3行目が出ることは珍しくありません。 「適切に対応する」と書かれた手順は、AIにも読み上げようがありません。委員会で手順書を1文1動作に直してから、同じ30問をもう一度聞いてください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが見立てに近いことを言う指示で禁じ、見立ての質問には連絡先を返す関数を呼ばせる
固定の文が言い換えられる「言い換え、省略、付け足しをしない」を指示に書く。 翌朝に看護職が確かめる
File Search を Live API に付けようとして動かないLive API では使えない。 関数呼び出しで中継のサーバーから引く
古い版の手順書が引かれる版のメタデータで最新だけに絞る
手順書の「適切に対応」をそのまま読む手順書を1文1動作に直す
会話が途中で切れる接続は10分ほど。GoAway を受けて再開でつなぎ直す
居室の声や寝言を拾う常時待ち受けにせず、ボタンを押している間だけ送る
入居者の名前が記録に残る居室の番号で言う習慣を教え、朝の処理で伏せる
スマートフォンにAPIキーを置く一時的なトークンを中継のサーバーが発行する
通信が届かない居室で止まる固定の文の一覧とリーダーへの電話を、画面に常に出す
オンコールへの電話を減らす目標を立てる減らすのは手順の確認の電話だけ。 見立ての電話は早くかける

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、命に関わる場面でAIに考えさせてしまうことから起きます。固定の文と、見立てを回す関数を作りの側で持てているかで、運用に乗せてよいかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 職員の声と、その文字起こし、居室の番号、場面(転倒・発熱など)、入居者の状態についての職員の発話。健康状態に関わる情報を含みます。

  1. AIに見立てをさせない … Gemini API の規約は、臨床の場での利用や医療上の助言への利用を禁じ、 医療などの専門的な助言として出力に頼らないよう求めています。この構成は手順書の該当箇所と連絡先を伝えるだけにし、見立ては必ず看護職に回します
  2. 有料の枠で使う … 規約では、無料の枠で送った内容は製品の改善に使われ、人が読むことがあるとされています。有料の枠では、プロンプトと応答を製品の改善に使わず、違反の検知のためだけに限られた期間記録するとされています。入居者の状態を含む会話なので、有料の枠を前提にします
  3. 入居者を名前で呼ばない … 手順を引くのに名前は要りません。居室の番号で言う習慣と、朝の処理で名前を伏せる仕組みの両方で守ります
  4. 声を残さない … 残すのは文字起こしと、引いた手順書の記録だけにします
  5. 事故の報告の判断を夜勤に負わせない … 厚生労働省の通知では、死亡に至った事故と医師の診断で治療が必要になった事故は原則すべて報告し、第1報は様式の1から6の項目までを、事故の発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出するとされています。報告するかどうかは管理者が決め、夜勤は記録を残すところまでにします
  6. 手順書の責任者を決める … 声で読み上げられる手順の中身は、委員会が責任を持つものです。AIの答えの誤りの多くは、手順書の書き方から来ます

誤りが起きた場合のリスクは、命に関わる場面で連絡が遅れることと、手順書に無いことを手順のように伝えることの2つです。 前者は固定の文と画面の一覧で、後者は「手順書にありません」と言わせる指示と、委員会の見直しで防ぎます。どちらも、AIの賢さではなく、作りと運用で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:手順書を1文1動作に直す場面を選ぶ

転倒・発熱・嘔吐の3つの場面の手順書を、委員会で読み直します。「適切に」「状況に応じて」を、誰が何をするかの文に書き換えます。 あわせて、命に関わる場面の固定の文の一覧を、看護職と管理者で作ります。

2週目:30問で試す

夜勤の職員から30問を集め、手元の Gemini の画面に3つの手順書を添付して声で聞きます。半分は手順書に答えが無い質問にし、「書かれていません」と言えるかを最優先で見ます。

3週目:File Search に取り込み、文字で試す

手順書に場面と版のメタデータを付けて取り込み、スマートフォンの画面から文字で聞ける形にします。夜勤リーダーだけが1週間使い、手順書に無かった質問を集めます。

4週目:固定の文と連絡先の関数を作る

当番表から今夜の担当を引く関数と、固定の文を返す関数を中継のサーバーに作ります。この時点では、まだ声にしません。

2か月目: Live API で声の受け答えにし、1つのユニットの夜勤で試します。固定の文が呼ばれたものは、翌朝に看護職がすべて確かめます。3か月目以降: 全ユニットに広げ、朝の申し送りの下書きを足します。手順書に無かった質問の一覧を委員会が毎月見て、手順書が1行ずつ増えていく形になった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
Live API が声・画像・文字を流し続けて受け取り、低い遅延で声の答えを返すこと。状態を持った WebSocket で動くこと。入力が16kHz、出力が24kHzの16ビットPCMであること。70の言語で会話できること。答えの途中で遮れること、入出力の文字起こしがあること。利用者の端末から直接つなぐ本番では、APIキーでなく一時的なトークンが勧められていることGemini API: Live API2026-10-07
Live API で使えるツール。Gemini 3.1 Flash Live Preview の関数呼び出しは同期だけ、Gemini 2.5 Flash Live Preview は同期と非同期の両方であることGemini API: Tool use with Live API2026-10-07
圧縮しない場合、声だけの会話は15分まで。接続は10分ほど。切れる前に GoAway で残り時間が届くこと。再開の手がかりは最後の会話の終了から2時間有効なことGemini API: Session management2026-10-07
File Search が文書を分割・埋め込み・索引化して検索すること。1ファイル100MB、80を超える形式。塊の長さと重なりの指定、メタデータでの絞り込み、応答にファイルとページの引用が付くこと。取り込み時の埋め込みに費用がかかり、保管と質問時の埋め込みは無料であること。保管庫の上限(無料の枠で1GB)。File Search は Live API では使えないこと。Interactions API で使うことGemini API: File Search2026-10-07
臨床の場での利用、医療上の助言への利用が禁じられていること。医療などの専門的な助言として出力に頼らないこと。無料の枠と有料の枠でのデータの扱いの違いGemini API Additional Terms of Service2026-10-07
介護保険施設等は事故が起きたとき速やかに市町村・家族等に連絡すること。死亡に至った事故と、医師の診断を受け投薬・処置等の治療が必要となった事故は原則すべて報告すること。第1報は様式の1から6の項目までを、事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出すること(令和6年11月29日付け通知)厚生労働省: 介護保険施設等における事故の報告様式等について(介護保険最新情報 Vol.1332)2026-10-07

手順書の中身、固定の文、事故の報告の判断は、施設の看護職と管理者で決めてください。 本記事は上の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0835)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次