Media > AI活用ユースケース > 営業 > 造園会社の営業が、樹種ごとの管理の手引きと過去の管理の記録を Vertex AI Search で検索し、お客様の庭の手入れの方法と時期を、庭の台帳の樹種と地域で絞った根拠付きで説明する

造園会社の営業が、樹種ごとの管理の手引きと過去の管理の記録を Vertex AI Search で検索し、お客様の庭の手入れの方法と時期を、庭の台帳の樹種と地域で絞った根拠付きで説明する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

お客様から庭の木の手入れを聞かれたとき、庭の台帳から樹種と地域を引き、社内の管理の手引きと過去の管理の記録を検索します。手入れの方法と時期を、引用付きの根拠としてそろえます。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
その他/不動産/建設
対象部門
営業
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
問い合わせが多い/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
対応スピード向上/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
100h/月
AI導入後
45h/月
想定削減
55%
年間削減
660h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. お客様から質問を受け、庭の名前と木を聞く
  2. 庭の台帳を開き、その庭にある木の樹種と場所、植えた年を確かめる
  3. 管理の記録のファイルから、その庭の過去の作業を探す
  4. 管理の手引きの PDF を開き、樹種の項で手入れの方法と時期を読む
  5. 分からなければ、職長に電話して聞く。職長が出なければ、折り返しを待つ
  6. お客様への説明や、次の手入れの案内の文を書く
  7. 作業が要るものは、契約の管理の表に作業の予定を入れる
導入後(After)
  1. 人営業が、受け持ちの画面で庭を選び、質問の文を入れる。木が台帳のどれかを選ぶ
  2. 自動庭の台帳から、選んだ木の樹種、地域の区分、植えた年を引く
  3. 自動お客様の言い方の樹種名を、手引きの樹種名に置き換える
  4. 自動Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドで、その樹種の手引きの手入れの章だけから、方法と時期を引用付きでまとめさせる
  5. 自動search メソッドで、その庭の同じ木の記録と、同じ地域の同じ樹種の記録を一覧にする
  6. 自動質問の文に病気・害虫・消毒の言葉があれば、職長に回す印を付ける
  7. 人営業が引用の原文と過去の記録を見比べ、地域のずれを確かめて、説明や案内の文を書く
  8. 人印の付いた質問は、職長に回す。職長が庭を見て判断する
  9. 【自動/人】 説明した内容と予定した作業を記録に残す。作業が終わったら、庭師が管理の記録を登録する
各工程の詳しい説明を読む
  1. お客様から質問を受け、庭の名前と木を聞く
  2. 庭の台帳を開き、その庭にある木の樹種と場所、植えた年を確かめる
  3. 管理の記録のファイルから、その庭の過去の作業を探す
  4. 管理の手引きの PDF を開き、樹種の項で手入れの方法と時期を読む
  5. 分からなければ、職長に電話して聞く。職長が出なければ、折り返しを待つ
  6. お客様への説明や、次の手入れの案内の文を書く
  7. 作業が要るものは、契約の管理の表に作業の予定を入れる

(a)お客様の言葉と台帳の樹種がつながらない。 2番で、お客様の「モミジ」は台帳では「イロハモミジ」、「サツキ」と言われた木が台帳では「オオムラサキツツジ」のことがあります。どの木の話かを確かめるだけで、電話が往復します。

(b)その庭で前に何をしたかが拾えない。 3番で、記録は作業の日ごとのファイルに分かれていて、庭の名前で開いても、どの木にいつ何をしたかを読み通すしかありません。 「去年の剪定が遅かったから花芽を落とした」のような原因は、ここにしか書かれていません。

(c)地域のずれが手引きに無い。 4番で、手引きの時期をそのまま案内すると、別荘地の庭では早すぎるか遅すぎます。 ずれを知っているのは、その地域を回っている職長です。

(d)病気や害虫の質問で、営業が薬剤の話をしてしまう。 手引きの病害虫の章を読んだ営業が、載っている薬剤の名前を出し、「消毒しておきます」と約束してしまうことがあります。

  1. 【人】 営業が、受け持ちの画面で庭を選び、質問の文を入れる。木が台帳のどれかを選ぶ
  2. 【自動】 庭の台帳から、選んだ木の樹種、地域の区分、植えた年を引く
  3. 【自動】 お客様の言い方の樹種名を、手引きの樹種名に置き換える
  4. 【自動】 Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドで、その樹種の手引きの手入れの章だけから、方法と時期を引用付きでまとめさせる
  5. 【自動】 search メソッドで、その庭の同じ木の記録と、同じ地域の同じ樹種の記録を一覧にする
  6. 【自動】 質問の文に病気・害虫・消毒の言葉があれば、職長に回す印を付ける
  7. 【人】 営業が引用の原文と過去の記録を見比べ、地域のずれを確かめて、説明や案内の文を書く
  8. 【人】 印の付いた質問は、職長に回す。職長が庭を見て判断する
  9. 【自動/人】 説明した内容と予定した作業を記録に残す。作業が終わったら、庭師が管理の記録を登録する

4番目と5番目を分けているのが、この設計の要です。 手引きは「この樹種なら一般にこうする」、記録は「この庭とこの地域では実際にこうだった」です。混ぜて1つの答えにすると、どちらの根拠の時期かが分からなくなります。

6番目で、病気と害虫の質問を答えから外すのも、意図してのことです。 原因が病気か害虫か、それとも日当たりや剪定の時期かは、職長が木を見ないと決められません。

02今回想定するシステム構成

構成図
お客様の質問(庭・木・質問の文)/次の手入れの案内
   ▼【トリガー】受け持ちの画面で送信
中継プログラム(Python。Cloud Run)
   │   庭の台帳から樹種・地域の区分・植えた年を引く
   │   お客様の言い方の樹種名を手引きの樹種名に置き換える
   ▼
Vertex AI Search(Agent Search)
   ├── answer メソッド ── 手引きの手入れの章から、方法と時期(引用つき)
   └── search メソッド ── その庭の記録、同じ地域の同じ樹種の記録
   │   データストア:管理の手引き(樹種×章)、管理の記録(1作業1文書)
   ▼
中継プログラム ── 引用の無い文を外す。病気・害虫の印
   ▼
受け持ちの画面(手引きの答え/引用した原文/過去の記録の一覧/職長に回す印)
   ▼
【営業が説明を書き、印の付いた質問は職長へ】
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドと search メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)―
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、受け持ちの画面・庭の台帳・検索をつなぐ)Node.js で同じものを書く
保管Cloud Storage(手引きと記録の写し、写真、メタデータ、説明の記録)―

庭の台帳と契約の管理の表には、読みにいくだけで書き込みません。 作業の予定は、いまどおり営業が契約の管理の表に入れます。新しく作るのは、手引きを樹種と章ごとに分ける作業、記録に地域の区分を付ける作業、受け持ちの画面です。

土台は、Vertex AI Search の answer メソッドです。 公式ページでは、answer メソッドは検索の結果から回答を作り、回答の文ごとに出典を示す引用を付けられるとされています。結果を答えより先に見せたいときなどは、search メソッドと一緒に使うとされています。公式ページには、Vertex AI Search が Agent Search へ改称中である旨の記載があります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

営業が受け持ちの画面で庭と木を選び、質問の文を入れて送信したことを起点にします。 木は、庭の台帳の一覧から選びます。お客様の言葉だけで検索すると、「モミジ」がハウチワカエデにもイロハモミジにも当たるからです。 台帳に無い木の話なら、「台帳に無い木」を選んで樹種名を入れ、職長に確かめる印を付けます。

次の手入れの案内は、月初めに起点を作ります。 契約の管理の表から翌月に作業の予定がある庭と木を書き出し、木ごとに同じ問い合わせを自動で送って、営業の画面に下書きの材料を並べておきます。 案内の文を書くのは営業です。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
質問庭の番号、木の番号、質問の文、質問の種類(時期・方法・不調・苦情)受け持ちの画面
庭の台帳木ごとの樹種名、場所、植えた年、地域の区分(平地・丘陵・高地)庭の台帳
管理の手引き樹種ごと・章ごとの文。剪定・施肥・植え替え・病害虫・冬の備え。図データストア
管理の記録庭、木、作業日、作業、所見、翌年の結果、地域の区分、写真の場所データストア
樹種名の対応表お客様の言い方・通称と、手引きの樹種名の対応自社で用意する一覧

質を決めるのは、記録の「地域の区分」と「翌年の結果」の2つです。 地域の区分は、庭の住所から職長が決めた3つに分け、台帳と記録の両方に持たせます。翌年の結果は、「花が咲いた」「花芽が少なかった」のような一言で、いまの記録には書かれていないことが多い欄です。 次の手入れのときに庭師が書き足す欄として、作業の報告に足します。

管理の記録からは、お客様の名前と住所を外して入れます。 検索に要るのは庭の番号、地域の区分、木と作業と所見です。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
手引き樹種ごとの PDF を、章ごとに分けて Cloud Storage へ写すデータストアの中身
管理の記録作業の報告のファイルの書き出し。1つの木の1回の作業を1つの文書にデータストアの中身
庭の台帳庭の番号と木の番号での読み取り絞り込みの条件
答えと一覧answer メソッドと search メソッドの応答受け持ちの画面

手引きは、樹種と章ごとに1つの文書に分け、メタデータに樹種名と章の種類を持たせます。 公式ページでは、非構造のデータのメタデータは JSON Lines(NDJSON)のファイルで、各行に id、structData(または jsonData)、Cloud Storage の文書を指す content の mimeType と uri を持たせるとされています。1つの章は、たとえば次の1行にします。

{"id": "guide-iromomiji-prune",
 "structData": {"doc_kind": "guide", "species": "イロハモミジ",
                "topic": "prune", "base_zone": "flat",
                "guide_ver": "2026-03"},
 "content": {"mimeType": "application/pdf", "uri": "gs://<bucket>/guide/iromomiji/prune.pdf"}}

管理の記録は doc_kind を record にし、garden_id、tree_id、species、zone、work_month を持たせます。 topic の値は手引きと同じにし、薬剤を使った作業は pest にします。公式ページでは、取り込めるファイルの上限は200MBで、一度に100,000ファイルまで取り込めるとされています。

手引きの PDF は、データストアを作るときに文書の分割とレイアウトの解析を有効にします。 公式ページでは、レイアウトの解析は PDF の段落・表・画像・見出しを検出し、検出した画像に説明の文を付ける設定もあるとされています。剪定の位置は「この芽の上で切る」という図で載っていることが多いので、画像の説明を有効にして、図の説明が検索に当たるようにします。 分割はデータストアを作ったあとに切り替えられず、見出しを各チャンクに付ける includeAncestorHeadings は既定で無効です。樹種名の見出しが本文から離れないよう、作るときに有効にします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 木の特定 … 庭の番号と木の番号から、台帳の樹種名・地域の区分・植えた年を引きます
  2. 樹種名の置き換え … 質問の文のお客様の言い方を、対応表で手引きの樹種名に置き換えます
  3. 質問の種類の確かめ … 病気・害虫・消毒・薬・枯れる・虫といった語があれば、職長に回す印の候補にします
  4. 絞り込みの条件の組み立て … 答えの側は樹種と手入れの章、一覧の側は庭と木、地域と樹種に分けて組み立てます
  5. 地域のずれの見出し … 地域の区分が平地以外なら、画面に「手引きは平地の時期」と出す準備をします
  6. 植えた年の確かめ … 植えて3年以内の木なら、手引きの「植え付けの後の手入れ」の章も答えの対象に足します

6番目は、若い木と育った木で手入れが違うためです。 植えて間もない木は、根が張るまで強く切らない、水やりを続けるといった別の手入れになります。台帳の植えた年を使い、章の種類を足すかを中継プログラムが決めます。

4番目で答えの側から薬剤の章を外すのは、否定の条件で書きます。 公式ページでは、条件の前に NOT か - を付けると否定になるとされています。

絞り込みの条件は、たとえば次のようになります(公式ページの書き方による)。

filter(手引きの答え):
  doc_kind: ANY("guide")
  AND species: ANY("イロハモミジ")
  AND NOT topic: ANY("pest")
filter(この庭の記録):
  doc_kind: ANY("record") AND tree_id: ANY("G0412-T07")
filter(同じ地域の同じ樹種の記録):
  doc_kind: ANY("record")
  AND species: ANY("イロハモミジ") AND zone: ANY("highland")

公式ページでは、ANY は指定した値のどれかに完全に一致するときに真になるとされています。完全一致なので、樹種名の表記は手引きと台帳と記録でそろえておく必要があります。絞り込みに使う項目は、スキーマの画面でインデックス可能にしておきます。

Step5

AIに処理させる

answer メソッドにさせるのは、その樹種の手引きの手入れの章から、質問に当たる方法と時期を、手引きの言葉のまま引用付きで短くまとめることです。 その庭に当てはめた日にちは決めさせません。

返させるもの中身返せないときの扱い
手入れの時期手引きに書かれた時期(月や「花の後」のような書き方)見つからなければ「時期の記載なし」
手入れの方法切る位置、量、やり方見つからなければ「方法の記載なし」
避ける時期と理由「花芽ができた後は切らない」などの記載原文のまま引用する
職長の判断を求める記載「太い枝は職長が判断」などの記載原文のまま引用する
させないこと理由
その庭の作業の日にちを決める地域と天候のずれは、記録を見て営業と職長が決める
薬剤を勧める、薬剤の名前を書く使うかどうかは職長が木を見て決め、ラベルどおりに使う
不調の原因を断定する病気か日当たりか剪定の時期かは、木を見ないと分からない
木を伐る・植え替えると書くお客様と職長が決めること
過去の記録を、手入れの方法として書く記録はその庭とその年の事情を含む

2行目がいちばん大事です。 生成のモデルは、一般に知られている薬剤の名前を知っています。答えに薬剤の名前が出ると、営業がそのままお客様に伝え、お客様は散布を前提に話を進めます。 薬剤の章を検索の対象から外したうえで、前置きでも禁じます。

5行目も起きやすい失敗です。 「去年は5月に強く切った」という記録が手引きの方法のように答えに混ざると、その年だけの事情(台風で折れた枝を落とした、など)が、毎年の手入れとして案内されます。 記録は一覧の枠にだけ出します。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドでは、回答の口調や詳しさをプロンプトの前置き(preamble)で指定できます。前置きを次のようにします。

あなたは造園会社の営業のための、樹種ごとの管理の手引きの資料係です。
検索で見つかった管理の手引きだけを根拠に、次の順で短く答えてください。

1. 手入れの時期(手引きの書き方のまま)
2. 手入れの方法(切る位置、量、やり方)
3. 避ける時期と、その理由
4. 職長の判断を求める記載があれば、その箇所

守ること:
- 手引きの言葉のまま書いてください。言い換えないでください。
- 「〇月〇日ごろ」のような日にちを決めないでください。
- 薬剤の名前、薬剤を使うこと、消毒することを書かないでください。
- 不調の原因を断定しないでください。
- 木を伐る、植え替えるとは書かないでください。
- 樹種名は検索結果の表記のまま写してください。
- 見つからない項目は「記載なし」と書いてください。
- 検索結果に無いことを書かないでください。

「日にちを決めない」を入れるのは、手引きが平地の庭を前提にしているからです。 答えが「4月中旬」と書けば、営業は高地の庭にも4月中旬を案内します。時期は手引きの書き方のまま出し、日にちは過去の記録を見て営業が決めます。

あわせて、answer メソッドの設定を次のようにします。

設定値理由
引用(includeCitations)有効文ごとに出典を示させる。既定は無効
関連性の低い内容の無視(ignoreLowRelevantContent)有効関係の薄い樹種の項から無理に答えさせない
根拠の支持による絞り込み(groundingSpec の filteringLevel)FILTERING_LEVEL_HIGH から試す支えの弱い答えを外す。未設定だと絞り込みが掛からない
回答の言語(answerLanguageCode)ja日本語で答えさせる
絞り込み(filter)前処理で組み立てた手引きの答えの条件樹種と手入れの章。薬剤の章を除く

公式ページでは、支持が基準に届かない答えは返されず、理由として LOW_GROUNDED_CONTENT が返るとされています。引用の位置は UTF-8 のバイト単位なので、日本語の答えに印を差し込むときは文字の位置に直します。

Step7

出力形式を固定する

中継プログラムが、応答を次の形にそろえて受け持ちの画面に渡します。

{
  "request_id": "",
  "garden_id": "",
  "tree_id": "",
  "species": "",
  "zone": "flat | hill | highland",
  "question": "",
  "guide_answer": "",
  "skipped_reason": "",
  "citations": [
    { "sentence": "", "doc_id": "", "topic": "", "quote": "" }
  ],
  "this_tree_records": [
    { "record_id": "", "work_month": "", "work": "", "note": "", "next_year": "" }
  ],
  "same_zone_records": [
    { "record_id": "", "work_month": "", "work": "", "next_year": "" }
  ],
  "zone_notice": "",
  "foreman_flag": false
}

1つ目の理由は、guide_answer と2つの記録の一覧を分けて持てることです。 手引きの一般の時期と、この木の記録と、同じ地域の記録が、画面の別の枠に出ます。 営業は3つを見比べて、日にちを決めます。

2つ目は、zone_notice を答えと別に持てることです。 地域の区分が平地以外なら「手引きは平地の時期。同じ地域の記録を見てください」と出し、手引きの時期をそのまま案内する取り違えを、画面の作りで防ぎます。

3つ目は、foreman_flag で職長に回す質問を分けられることです。 真なら手引きの答えは出さず、この木の記録だけを添えて職長に回します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
受け持ちの画面中継プログラムの API質問の受け取りと結果の表示
庭の台帳庭の番号と木の番号での読み取り樹種名、地域の区分、植えた年
Vertex AI Searchanswer メソッドと search メソッドの API答え、引用、記録の一覧
Cloud Storage手引きと記録の写し、写真引用した箇所の原文と写真の表示
作業の報告毎晩の書き出し新しい記録の追加

職長への連絡は、いまどおり社内のチャットで行います。 画面から、foreman_flag の付いた質問とこの木の記録を貼り付けられるようにしますが、回すかどうかは営業が決めます。 職長は、庭に向かう前にその木の過去の作業と所見を読めるので、見るべき場所の見当を付けて出られます。

Step9

人が確認する

  1. 木を確かめる … 画面に出た樹種名と場所が、お客様の言う木と合っているかを確かめます
  2. 地域の区分を見る … 平地以外なら、同じ地域の記録の作業の月と翌年の結果を見ます
  3. この木の記録を見る … 前の手入れの時期と、翌年に花が咲いたかを見ます
  4. 職長の印を見る … 印があれば、営業は原因や対処を説明せず、職長に回します
  5. 説明を書く … 手引きの言葉と、記録で確かめた時期で、説明や案内の文を書きます

1番目を省かないでください。 お客様の「入口の木」が台帳のどの木かを取り違えると、別の樹種の手入れの時期を案内することになります。

目標は、300件をならして1件9分です。 木を確かめ、手引きと記録を見比べ、説明を書く時間です。④の説明を書く時間は、いまと同じだけ残します。

庭師の経験のある営業1名は、毎月、職長に回した質問と答えを見比べます。 時期の質問なのに職長に回った件が続くなら、その樹種の手引きの章の分け方か、樹種名の対応表に抜けがあります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
台帳に無い木の話樹種名を入れて検索し、職長に樹種を確かめる印を付ける
樹種名が対応表に無いそのまま検索し、当たった樹種名を営業が確かめて対応表に足す
手引きに無い樹種「手引きに記載なし」と出し、同じ地域の記録と職長への連絡を促す
答えが作られなかった(支持が低い)答えを出さず、記録の一覧だけを出す
病気・害虫・消毒の質問手引きの答えを出さず、職長に回す
隣の家や道路にかかる枝の苦情時期を待たない対応が要ることがあり、職長と営業の責任者に回す
倒れそう・枝が折れたという連絡検索を待たず、職長に連絡して現地を見る
検索が応答しないいまどおり手引きの PDF を開き、職長に聞く

6行目と7行目は、手入れの時期より安全と近所の関係が先に来る件です。 手引きの「剪定は冬」をそのまま返すと、隣の家にかかった枝を冬まで放っておくことになります。

Step11

記録を残す

  • 質問(庭・木・質問の文・質問の種類、受けた営業、日時)
  • 絞り込みの条件、answer メソッドと search メソッドの応答の全文
  • お客様に説明した内容と、予定した作業の月
  • 職長に回した質問と、職長の判断
  • 作業の後の管理の記録と、翌年の結果

最後の行の「翌年の結果」が、この構成を育てる記録です。 高地の庭で手入れを半月遅らせて花が咲いたかが残れば、次の年の同じ地域の案内の根拠になります。

04実装レベルの3段階

最小構成:10樹種の手引きと2年分の記録だけのデータストアを作り、短いスクリプトで問い合わせる / よくある樹種の手入れの方法と時期の検索
半自動化:上記+全樹種の手引きと10年分の記録を取り込み、営業が樹種と地域を選んで問い合わせる / 手引きと記録の全体の検索
本格構成:上記+庭の台帳から木を引く、樹種名の置き換え、職長に回す印、月初めの案内の材料までつなぐ / 質問と案内の材料づくり

半自動化で、1件20分が13分ほどになります。 手引きを探す時間は減りますが、台帳で木を確かめることと、その庭の記録を探すことが残ります。本格構成で9分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を進める前に、地域の区分の決め方を職長とそろえてください。 決まっていないと、同じ別荘地の庭が、記録によって丘陵になったり高地になったりします。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
9 分
現在  300件 × 20分 ÷ 60 = 100 時間/月
導入後 300件 × 9分 ÷ 60 = 45 時間/月
月間削減時間
55h
削減率
55%
年間削減時間
660h
年間金額換算(時間単価3,000円)
198万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 個人の住宅の庭、マンションや社屋の植栽の年間の管理を数百件請け負い、お客様からの手入れの質問と次の手入れの案内が毎月数百件ある造園会社。職長や庭師がまとめた樹種ごとの手入れの手引きがあり、庭ごとの作業の記録が数年分残っている場合。営業に植木の経験の浅い人が増え、説明のたびに職長へ電話している場合。平地と山あいのように、同じ会社の受け持ちの中で手入れの時期がずれる地域を抱えている場合。Google Cloud を使っている、または使い始められる場合。
向いていない
  1. 受け持つ庭が数十件で、営業が全員職長の経験者の場合。樹種ごとの手引きが無く、手入れの知識が職長の頭の中だけにある場合。庭ごとの作業の記録が残っておらず、どの木に何をしたかが分からない場合。なお、病気や害虫の診断、薬剤を使うかどうかと使う薬剤の判断、木を伐るかどうかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 受け持ちの庭に多い樹種を10選ぶ(マツ、イロハモミジ、ツツジ類、ツバキ、キンモクセイなど)
  2. その10樹種の手引きを章ごとに分け、樹種名と章の種類を付けて、Vertex AI Search のデータストアを作る
  3. 同じ10樹種の過去2年分の管理の記録に地域の区分を付けて取り込む(平地と高地の庭を必ず混ぜる)
  4. 過去3か月のお客様の質問から30件を選び、answer メソッドと search メソッドを短いスクリプトで呼んで、答えと記録の一覧を見る
  5. 答えと一覧が、当時職長が答えた内容と合うかを、職長と突き合わせる

30件のうち、薬剤の名前や「消毒」が答えに出た件数を最初に数えます。 1件でもあれば、薬剤の章の外し方と前置きを直してから先へ進みます。

出てきた内容判断
手引きの時期と、同じ地域の記録が並び、職長の答えと合った受け持ちの画面と庭の台帳の連携に進む
薬剤の名前や消毒が答えに出た章の種類の付け方と、否定の条件を直す
剪定の位置の図が当たらない画像の説明の設定を見直す

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
手引きの平地の時期を高地の庭に案内する地域の区分を記録に持たせ、同じ地域の記録を別の枠に出す
薬剤の名前が答えに出る薬剤の章を否定の条件で外し、前置きでも禁じる
台帳の樹種名と手引きが一致せず引けない樹種名を一つにそろえ、お客様の言い方は対応表で置き換える
別の木の手入れを案内する台帳の一覧から木を選び、樹種名と場所をお客様に確かめる
答えが日にちを決めてしまう前置きで禁じ、時期は手引きの書き方のまま出す
剪定の位置の図が検索に当たらない画像の説明の設定を有効にする
記録の翌年の結果が空ばかり作業の報告に欄を足し、次の手入れのときに書き足す
枝の苦情に「剪定は冬」と返す苦情と倒木の連絡は時期を待たず職長へ回す
お客様の名前が検索に入る書き出しの段で名前と住所を消す
植えて間もない木に育った木の手入れを案内する台帳の植えた年で、植え付けの後の章を足す

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「手引きに書いてあるから」をそのまま案内してしまう問題です。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 庭の番号と場所の地域、木の一覧、作業の記録と写真、お客様の質問です。写真には、家の外観や窓、表札が写ることがあります。

  1. 薬剤の判断を職長に残す … 農林水産省と環境省の通知「住宅地等における農薬使用について」は、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令の第6条が、住宅の用に供する土地及びこれに近接する土地で農薬を使うときに飛散を防ぐ措置を講じるよう努めることを定めている旨を示しています。通知の別紙は、公園や街路樹などの植栽について、病害虫の発生や被害の有無にかかわらず定期的に散布することをやめ、せん定や捕殺などの物理的防除に最大限努めること、登録された農薬をラベルの使用方法を守って使うこと、散布の前に周辺の住民に知らせることなどを挙げています。答えから薬剤を外し、使うかどうかは職長が木を見て決めます
  2. 写真を検索の対象にしない … 記録の写真は Cloud Storage に置いて画面で見せるだけにし、検索のデータストアには文の記録だけを入れます。 表札や人が写った写真は、取り込む前に外します
  3. 名前と住所を入れない … 記録の書き出しの段で消し、庭の番号と地域の区分だけを持たせます
  4. データの置き場所を確かめる … 公式ページでは、データストアの場所は global のほか us、eu のマルチリージョンで、日本のリージョンは載っていません。 マンションの管理会社との契約で、植栽の記録の置き場所に定めがないかを確かめます
  5. 答えをそのままお客様に送らない … 説明の文は営業が書きます。答えの文を貼り付けて送る使い方はしません

誤りが起きた場合のリスクは、地域に合わない時期に手入れをして花芽を落とすことと、薬剤の散布を約束して住宅地で不要な散布をしてしまうことの2つです。 前者は地域の区分と記録の枠で、後者は薬剤の章の除外と職長の判断で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:樹種名と地域の区分をそろえる

職長と営業で、手引きの樹種名を正とし、台帳の樹種名をそれに合わせます。 あわせて、受け持ちの地域を平地・丘陵・高地の3つに分け、庭ごとに付けます。

2週目:10樹種の手引きを章ごとに分ける

よくある10樹種の手引きを、剪定・施肥・植え替え・病害虫・冬の備えの章ごとの PDF に分けます。病害虫の章には、必ず pest を付けます。

3週目:30件で試す

第8章の手順でデータストアを作り、30件の質問で答えと記録の一覧を確かめます。薬剤の名前が答えに出ていないかと、高地の庭で同じ地域の記録が並ぶかを最優先で見ます。

4週目:作業の報告に「翌年の結果」の欄を足す

庭師が次の手入れのときに、前の手入れの結果を一言書き足せるようにします。

2か月目: 全樹種の手引きと10年分の記録を取り込み、営業が使い始めます。3か月目以降: 庭の台帳との連携、樹種名の置き換え、職長に回す印、月初めの案内の材料を足し、1件20分が何分になったかを実測します。庭師の経験の無い営業が、手引きの言葉と同じ地域の記録を根拠に手入れの時期を説明でき、病気や害虫の質問を職長に回せるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-28/最終更新:2026-10-29
確認した内容情報源確認日
answer メソッドが検索結果から回答を作り、文ごとの引用を付けられること(includeCitations の既定は無効)。結果を先に見せたいときなどは search メソッドと一緒に使うこと。filteringLevel の値と、届かない答えが LOW_GROUNDED_CONTENT で返されないこと。引用の位置が UTF-8 のバイト単位であること。前置き(preamble)で回答を指定できること。Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であることGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-28
絞り込みに使う項目をインデックス可能にすること。ANY が完全一致であること。NOT か - で否定できることGoogle Cloud: Filter search for structured or unstructured data2026-10-28
非構造のデータのメタデータが JSON Lines(NDJSON)で、各行に id・structData または jsonData・content の mimeType と uri を持つこと。ファイルの上限が200MB、一度に100,000ファイルまで取り込めることGoogle Cloud: Prepare data for ingesting2026-10-28
レイアウトの解析が PDF の段落・表・画像・見出しを検出し、画像に説明を付ける設定があること。文書の分割をデータストアの作成後に切り替えられないこと。includeAncestorHeadings の既定が無効であることGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-28
データストアの場所が global と、us・eu のマルチリージョンで、日本のリージョンの記載が無いことGoogle Cloud: Agent Search locations2026-10-28
省令の第6条が住宅の用に供する土地等で農薬の飛散を防ぐ措置に努めることを定めていること。別紙で、発生の有無にかかわらない定期的な散布をやめ物理的防除に最大限努めること、登録農薬をラベルの使用方法を守って使うこと、散布の前に周辺住民へ周知することなどを挙げていること(平成25年4月26日 25消安第175号・環水大土発第1304261号)農林水産省: 住宅地等における農薬使用について2026-10-28

病気や害虫の診断、薬剤を使うかどうか、木を伐るかどうかは、職長や樹木の専門家の判断で行ってください。 本記事は、上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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