Media > AI活用ユースケース > カスタマーサポート > 漫画の出版社が読者から届く二次創作・ファンアートの利用の問い合わせを、Claude で作品ごとのガイドラインに照らし、返信の下書きを作る

漫画の出版社が読者から届く二次創作・ファンアートの利用の問い合わせを、Claude で作品ごとのガイドラインに照らし、返信の下書きを作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

読者から届く「このファンアートを載せてよいか」「同人誌を頒布してよいか」といった問い合わせを、作品ごとのガイドラインの条項に照らして4つの区分に分け、根拠の条項を引いた返信の下書きを作ります。許諾するかどうかは担当者が決めます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude
連携・自動化
Google Apps Script/Python
対象業界
その他/広告
対象部門
カスタマーサポート/知財
対象業務
内容確認・チェック/問い合わせ対応
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/問い合わせが多い
AIで行う処理
判定
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
25h/月
想定削減
58%
年間削減
420h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 問い合わせフォームから届いた問い合わせを、担当者が開く
  2. 問い合わせの文から作品を特定する(作品名が略称や愛称で書かれていることがある)
  3. その作品のガイドラインを開き、問い合わせの利用の形に当たる条項を探す
  4. 過去に同じような問い合わせへ返した記録を探す
  5. 返信を書く。条項を引用し、該当しない場合は個別の判断に回す旨を書く
  6. 個別の判断が要るものは、編集部と相談してから返す
導入後(After)
  1. 自動問い合わせが届くと、問い合わせの管理の仕組みから処理が動く
  2. 自動作品名を作品の一覧(正式名・略称・愛称)と照らし、作品を特定する
  3. 自動その作品のガイドラインの現在の版を、条項の番号付きで読み込む
  4. 自動Claude API が利用の形を取り出し、条項に照らして4つの区分の判定と返信の下書きを返す
  5. 自動プログラムが、引用された条項の原文がガイドラインの本文と一致するかを確かめる
  6. 人担当者が判定と下書きを確かめ、直して返信する
  7. 人「個別の判断が要る」ものは、担当者が編集部・作者の窓口と相談して返す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 問い合わせフォームから届いた問い合わせを、担当者が開く
  2. 問い合わせの文から作品を特定する(作品名が略称や愛称で書かれていることがある)
  3. その作品のガイドラインを開き、問い合わせの利用の形に当たる条項を探す
  4. 過去に同じような問い合わせへ返した記録を探す
  5. 返信を書く。条項を引用し、該当しない場合は個別の判断に回す旨を書く
  6. 個別の判断が要るものは、編集部と相談してから返す

(a)作品を取り違える。 略称や愛称で書かれた作品名を、担当者が別の作品と取り違えることがあります。作品が違えば条項が違い、可と不可が逆になります。

(b)条項を探す時間がかかる。 ガイドラインは作品ごとに数十の条項があり、問い合わせの言葉と条項の言葉が一致しません。 読者は「缶バッジ」と書き、ガイドラインは「ファングッズ(実費の範囲での頒布に限る)」と書いています。

(c)返信の言い方が担当者ごとに違う。 ある担当者は「ガイドラインの範囲内であれば問題ございません」と書き、別の担当者は「ご自身でガイドラインをご確認ください」とだけ書きます。前者はガイドラインの外の部分まで認めたように読め、後者は問い合わせに答えていません。

(d)ガイドラインの外の問い合わせが埋もれる。 店舗の看板や企業の販促に使いたいという問い合わせは、実際には商用の利用で、ライツ部が契約として扱うべきものです。ファンアートの問い合わせの山の中で、それが見落とされます。

  1. 【自動】 問い合わせが届くと、問い合わせの管理の仕組みから処理が動く
  2. 【自動】 作品名を作品の一覧(正式名・略称・愛称)と照らし、作品を特定する
  3. 【自動】 その作品のガイドラインの現在の版を、条項の番号付きで読み込む
  4. 【自動】 Claude API が利用の形を取り出し、条項に照らして4つの区分の判定と返信の下書きを返す
  5. 【自動】 プログラムが、引用された条項の原文がガイドラインの本文と一致するかを確かめる
  6. 【人】 担当者が判定と下書きを確かめ、直して返信する
  7. 【人】 「個別の判断が要る」ものは、担当者が編集部・作者の窓口と相談して返す

2番目をAIの外で行うのは、作品の取り違えを最初に止めるためです。 作品が特定できなければ、AIに渡しません。作品名が一覧に当たらない、または2つ以上に当たる問い合わせは、担当者が作品を選んでから処理します。

6番目は全件で残します。 返信は会社から読者への回答で、ガイドラインの範囲の案内であっても、会社の名前で出す以上は担当者が確かめます。

02今回想定するシステム構成

構成図
読者 ── 問い合わせフォーム(作品名・したいこと・頒布の場所と価格)
   ▼
問い合わせの管理の仕組み
   ▼【トリガー】問い合わせの受付
Python の処理
   ├── 作品の特定(正式名・略称・愛称の一覧と照合)
   ├── 作品のガイドラインの現在の版を条項ごとに読む
   ├── 個人の情報を外す
   ▼
Claude API(構造化出力)
   │   利用の形の取り出し
   │   条項への当てはめと4つの区分
   │   返信の下書き
   ▼
Python ── 引用の照合、区分と返信の型の対応の確認
   ▼
【人】担当者が確認・修正・返信
   └──▶ 個別の判断が要るものは編集部・作者の窓口へ
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(問い合わせを作品のガイドラインの条項に照らし、区分と返信の下書きを構造化出力で返す)OpenAI API
集計Python(作品の特定、ガイドラインの条項の読み込み、引用の照合、確認の一覧の作成)Google Apps Script
保管作品の一覧、ガイドラインの版、過去の返信の記録-

新しく足すのは、Python の処理と Claude API の契約、それにガイドラインを条項ごとの表にすることです。 Webで公開しているガイドラインを、作品・版・条項の番号・条項の本文の表にします。共通の基本のガイドラインと、作品ごとに足した条項は、別の行として持ち、作品ごとに組み合わせて渡します。

引用の確かめは、プログラムで行います。 Claude API には文書の該当箇所を返す引用の機能(Citations)がありますが、公式の案内では、引用の機能を文書に有効にしたまま構造化出力を指定すると400のエラーになり、併用できないとされています。本構成は区分を構造化出力で受けたいので、条項の原文を引用の欄に写させ、プログラムがガイドラインの本文と照らします。

ガイドラインは、プロンプトキャッシュで使い回します。 同じ作品の問い合わせが続くとき、同じガイドラインを毎回送ることになります。cache_control を付けると既定で5分間キャッシュが残り、使うたびに延び、1時間の指定もできます。指示文とガイドラインを前に、問い合わせの文を後ろに置きます。 問い合わせの多い作品から順に処理するように並べると、キャッシュが効きやすくなります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

問い合わせが届くたびに、1件ずつ処理します。 下書きが届いた直後にできていれば、担当者は手の空いたときに確認して返せます。

問い合わせの多い時期には、作品ごとにまとめて処理する並びにします。 15分ごとに届いた分を作品で並べ替えてから処理すると、同じガイドラインが続き、キャッシュから読まれる部分が増えます。

ガイドラインの版が変わった日は、その作品の未返信の問い合わせをすべて作り直します。 古い版で作った下書きを新しい版の日に返すと、改めた条項と違う案内を出すことになります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
問い合わせ作品名、したいこと(自由記述)、頒布の場所、価格、部数、公式の素材を使うか問い合わせフォーム
作品の一覧正式名、略称、愛称、作品IDライツ部が持つ一覧
ガイドライン作品ID、版、施行日、条項の番号、条項の本文条項ごとの表
返信の型4つの区分ごとの書き出しと結びライツ部の手引き
過去の判断の例個別の判断に回した問い合わせと、その結論の要旨過去の返信の記録

質を決めるのは、問い合わせフォームの項目です。 自由記述だけのフォームでは、「グッズを作りたい」に何も書き添えられません。頒布の場所(即売会・通販・知人に配る)、価格、部数、公式の素材(ロゴ・画像)を使うかを選ぶ欄を足すと、当てはめに要る情報の多くがそろいます。

過去の判断の例は、要旨だけを渡します。 「学校の文化祭での展示:非営利・入場無料のため可(2026年3月、編集部確認)」のような1行です。ただし、例をガイドラインの代わりにはさせません。 例と同じ利用でも、版が変わっていればガイドラインが優先します。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどう取るか
問い合わせ問い合わせの管理の仕組み受付のたびに1件
作品ID作品の一覧作品名を正式名・略称・愛称と照らす
ガイドライン条項ごとの表作品IDの現在の版の条項と、共通の条項を組み合わせる
過去の判断の例過去の返信の記録同じ作品の、個別の判断に回した例の要旨を新しい順に10件

作品の特定は、完全一致から順に照らします。 正式名、略称、愛称の順に照らし、どれにも当たらない、または2つ以上の作品に当たる場合は処理を止めます。 似た名前の作品で、条項が逆の例があるからです。

ガイドラインは、施行日が今日以前の最新の版を取ります。 改定を予告している版を先に使わないためです。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 個人の情報を外す … 問い合わせの文にある氏名、ペンネーム、SNSのアカウント名、メールアドレス、学校名を記号に置き換えます
  2. 年齢の手がかりを分ける … 「中学生です」「高校の部活で」といった記述は、外さずに「未成年の可能性あり」の印として別の欄にします
  3. フォームの選択項目を文にする … 頒布の場所・価格・部数・公式の素材の有無を、「頒布の場所:即売会」のように並べます
  4. URLを外す … 作品の画像や下描きのURLは渡しません。担当者が確認の画面で開きます
  5. ガイドラインに条項の番号を振る … 共通の条項は「C-1」、作品で足した条項は「W-1」のように振り、引用の照合に使います

2番目で印を残すのは、返信の書き方に関わるからです。 未成年の可能性がある問い合わせには、頒布や販売に保護者の同意が要ることを添えるかなど、返信の型を変える場合があります。 年齢をAIに推し量らせることはせず、問い合わせの文にある記述だけを印にします。

4番目でURLを渡さないのは、作品の中身の評価をAIにさせないためです。 二次創作の中身が作者の意向に沿うかは、ガイドラインの文面だけでは決まらないことが多く、担当者と編集部が見るものです。

Step5

AIに処理させる

させるのは、問い合わせを条項に当てはめて、4つの区分のどれかを選ぶことです。

区分意味返信の型
within_guidelineガイドラインの条項で認めている利用で、問い合わせは要らない該当する条項を引き、その範囲で行うよう案内
not_allowedガイドラインの条項で認めていない利用該当する条項を引き、その形では行えない旨を案内
needs_reviewガイドラインに当たる条項が無い、または条項の解釈が分かれる担当者が編集部と相談してから返す
insufficient_info当てはめに要る情報(場所・価格・素材など)が足りない足りない項目を聞き返す

判定の前に、利用の形を項目に分けて取り出させます。 何を(ファンアート・同人誌・グッズ・動画・その他)、どこで(SNS・即売会・通販・店舗・学校)、有償か無償か、公式の素材を使うか、商用か、の5つです。取り出した項目のどれかが「不明」なら、区分は insufficient_info にします。

させないこと理由
ガイドラインに無い利用を「問題ない」とするその場の許諾になりかねない
著作権の侵害に当たるか、引用に当たるかを判断する法的な判断で、担当者と専門家が扱う
作品の中身(表現の内容)を評価する作者の意向に関わり、ガイドラインの文面だけでは決まらない
過去の判断の例をガイドラインより優先する版が変われば例は使えない
作者の意向を推し量る作者の窓口に聞くことで、推測しない
年齢を推し量る問い合わせの文にある記述だけを印にする

1行目がいちばん起きやすい失敗です。 「結婚式のウェルカムボードにキャラクターを描きたい」は、多くのガイドラインに条項がありません。非営利で個人的な利用に見えるので、AIは「問題ないと思われます」と書きがちです。 それを返せば、会社がその場で許諾したと読まれます。条項が無いものは、必ず needs_review にします。

Step6

指示内容を固定する

あなたは漫画の出版社のライツ部の読者窓口を補助します。
読者からの問い合わせを、渡された作品のガイドラインの条項だけに照らして判定します。

【手順】
1. 問い合わせから利用の形を5項目で取り出してください。
   what(ファンアート/同人誌/グッズ/動画/その他)、where、paid(有償/無償/不明)、
   official_assets(使う/使わない/不明)、commercial(はい/いいえ/不明)
   問い合わせに書かれていない項目は「不明」とし、推測で埋めないでください。
2. 利用の形に当たる条項を、ガイドラインから選んでください。
3. 区分を1つ選んでください。
   - within_guideline:当たる条項がその利用を認めている
   - not_allowed:当たる条項がその利用を認めていない
   - needs_review:当たる条項が無い、または条項の読み方が分かれる
   - insufficient_info:判定に要る項目が「不明」
4. 返信の下書きを、返信の型に沿って書いてください。

【厳守事項】
- 根拠にした条項は、条項の番号と、条項の本文をそのまま一字一句写して quote に入れてください。
  要約や言い換えを quote に入れないでください。
- 当たる条項が無い利用を「問題ない」「可能と思われます」としないでください。必ず needs_review です。
- 著作権の侵害に当たるか、引用に当たるかについて書かないでください。
- 作品の表現の中身や作者の意向について推測しないでください。
- 過去の判断の例は参考にとどめ、ガイドラインと食い違う場合はガイドラインに従ってください。
  例を根拠に区分を決めた場合は needs_review にしてください。
- 返信の下書きでは、ガイドラインの範囲を超えて利用を認める書き方をしないでください。
  「ガイドラインの範囲でお楽しみください」のように、条項の範囲に限って案内してください。
- insufficient_info の場合は、足りない項目だけを聞き返す文にしてください。
- 未成年の可能性の印がある場合は、その旨を staff_notes に書いてください。返信の型は担当者が選びます。

【返信の型】{reply_templates}
【作品のガイドライン(版・施行日・条項)】{guideline}
【過去の判断の例】{precedents}
【問い合わせ】{inquiry}

「一字一句写す」を明記するのは、照合のためです。 要約を quote に入れられると、プログラムはガイドラインの本文と照らせません。写せない条項を根拠にしていれば、それは当てはめが怪しいという合図です。

「例を根拠にしたら needs_review」も、意図して入れています。 過去の例は便利ですが、例に頼った判定は、ガイドラインの文面からは説明できない判定です。 担当者が見るべきものに回します。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。

{
  "inquiry_id": "Q-2026-10-0217",
  "work_id": "W-031",
  "guideline_version": "2026-04-01",
  "usage": {
    "what": "グッズ",
    "where": "即売会",
    "paid": "有償",
    "official_assets": "使わない",
    "commercial": "いいえ"
  },
  "category": "within_guideline | not_allowed | needs_review | insufficient_info",
  "grounds": [
    { "clause": "C-6", "quote": "", "applies_because": "" }
  ],
  "missing_info": [],
  "reply_draft": "",
  "staff_notes": []
}

1つ目の理由は、grounds の quote をプログラムで照らせることです。 条項の番号の本文と quote を、空白と改行をそろえてから完全一致で比べます。一致しない引用が1つでもあれば、下書きに赤の印を付けます。

2つ目は、区分と返信の型の対応を確かめられることです。 within_guideline なのに返信の下書きに「個別に確認いたします」とある、needs_review なのに「問題ございません」とある、といった食い違いをプログラムが拾います。

照合方法印が付いたとき
引用quote が条項の本文と一致するか赤。条項を読み直す
条項の番号その作品・その版に存在する番号か赤
区分と根拠within_guideline・not_allowed なのに grounds が空赤
区分と返信区分ごとに使わない言い回しが返信にあるか黄
不明の項目usage に「不明」があるのに insufficient_info でない黄
未成年の印印があるか担当者に返信の型を選ばせる

3行目は、根拠の無い可否を止めるためです。 可か不可かを言うなら、必ず条項が要ります。条項を挙げられない可否は、needs_review に直します。

よくある3つの問い合わせが、どう分かれるかを例で示します。

問い合わせ(要旨)取り出した利用の形区分
描いたイラストをSNSに載せたいファンアート/SNS/無償/素材を使わないwithin_guideline(ファンアートの投稿の条項)
缶バッジを作りたいグッズ/不明/不明/不明insufficient_info(場所・価格・素材を聞き返す)
自分のカフェの看板に描きたいその他/店舗/不明/不明/商用の可能性needs_review(条項が無く、契約の担当へ)

2行目の缶バッジのように、短い問い合わせほど聞き返しになります。 フォームの選択項目を足すと、この行が減ります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
問い合わせの管理の仕組み受付の通知と読み取り問い合わせの本文と選択項目
作品の一覧読み取り作品の特定
ガイドラインの表読み取り現在の版の条項
Claude APIAPI呼び出し区分と返信の下書き
問い合わせの管理の仕組み下書きの書き込み担当者の画面に下書きと印を出す
編集部・作者の窓口担当者が連絡needs_review の相談

返信の送信は、問い合わせの管理の仕組みから担当者が行います。 下書きを書き込む欄と、送信の操作を分けておき、承認の操作が無ければ送れないようにします。

ガイドラインの表は、Webで公開している本文と同じ内容にします。 表を更新したら、公開しているページと1字ずつ照らします。読者が読むガイドラインと、AIに渡すガイドラインが食い違えば、返信が読者の手元の条項と合わなくなります。

Step9

人が確認する

担当者は、300件すべての返信を確認して送ります。

  1. 赤の印を先に見る … 引用が一致しない、条項が存在しない、根拠の無い可否。条項を読み直し、区分を直します
  2. needs_review を分ける … 担当者の判断で返せるもの(過去に同じ結論の例があり、版も変わっていないもの)と、編集部・作者の窓口に相談するものに分けます
  3. not_allowed の返信を読む … 断る返信は読者の受け止めが重いので、代わりにできること(ガイドラインの範囲の利用)を添えるかを決めます
  4. 未成年の印のあるものの返信の型を選ぶ … 保護者の同意に触れるかを決めます
  5. within_guideline の返信を読んで送る … 引用の条項と問い合わせの内容が合っているかを見ます

3番目は、AIに任せません。 ファン活動は作品の応援で、断るときの言葉が作品と会社の印象になります。下書きの言い回しを担当者が自分の言葉に直す時間を、ここに取ります。

目標は、300件をならして1件5分です。 within_guideline と insufficient_info の多くは2〜3分で送れ、needs_review と not_allowed に時間を使います。needs_review が全体の3割を超える月は、ガイドラインに足すべき条項があるという合図です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
作品が特定できない処理を止め、担当者が作品を選ぶ
作品にガイドラインが無い処理を止め、個別の判断の一覧へ
1件に複数の作品・複数の利用が書かれている作品と利用ごとに分けて判定し、返信は1通にまとめる
商用の利用(店舗・企業の販促・商品化)とみられる区分は needs_review、ライツ部の契約の担当へ回す
問い合わせではなく、無断利用の通報判定せず、権利侵害の対応の担当へ回す
ガイドラインの版が施行日の前後で変わる施行日が今日以前の版を使い、改定の予告があることを staff_notes に
応答がスキーマに合わない・途中で切れるstop_reason を見て、max_tokens なら上限を上げて再実行。2回失敗で人へ
応答が拒否で終わるstop_reason: "refusal" のときは再実行せず、担当者が読む

5行目を分けるのは、扱う部署が違うからです。 「この同人誌は公式の画像をそのまま使っている」という通報は、利用の問い合わせではなく、権利の侵害への対応の入口です。 返信の下書きを作る流れに乗せると、通報者に「ガイドラインの範囲でお楽しみください」と返すことになります。

構造化出力の公式の案内では、拒否のときや max_tokens で切れたときに、出力がスキーマに合わないことがあるとされています。成人向けの表現を含む二次創作についての問い合わせなどで拒否が起きうるので、拒否は失敗ではなく、担当者が読む合図として扱います。

Step11

記録を残す

  • 問い合わせの本文(個人の情報を外したもの)と、作品の特定の結果
  • 使ったガイドラインの版と、渡した条項の一覧
  • Claude API の応答の全文と、指示文の版
  • 照合の結果(引用の一致、区分と返信の対応)
  • 担当者が直した区分と返信の差分
  • needs_review の相談の相手と結論、その結論を過去の判断の例に足したか
  • 送った返信の本文と日時

4つ目と5つ目は、同じ問い合わせへの答えを後から説明するためです。 読者が「前はよいと言われた」と書いてきたとき、そのときの版と条項と返信をたどれます。

6つ目は、ガイドラインを育てる材料です。 同じ種類の needs_review が毎月続くなら、その利用はガイドラインに条項として足すべきです。足すかどうかは、作者と編集部が決めます。

04実装レベルの3段階

最小構成:ガイドラインと問い合わせを手でAIの画面に貼り、区分と下書きを作らせる / 1件ずつの判定
半自動化:上記+Python で作品を特定し、API で区分と下書きを一覧に書き出す / 作品の特定と判定の一覧化
本格構成:上記+受付を起点に自動で動かし、引用と区分の照合、問い合わせの管理の仕組みへの下書きの書き込み / 判定と下書きの全体

最小構成では300件に届きません。 1件ずつ貼るので、確かめるための段階です。 半自動化で、1件12分が8分程度になります。 作品の特定と条項探しは自動になりますが、引用を条項と照らす作業と、下書きを問い合わせの管理の仕組みへ写す作業が残ります。本格構成で5分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、引用の照合と下書きの書き込みがプログラムに移るからです。 半自動化の段階で、ガイドラインの表を整えてください。 1か月分の判定を見ると、条項の番号の振り方や、共通の条項と作品の条項の組み合わせ方の不備が見えます。表が整ってから引用の照合を入れるほうが、赤の印の空振りが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
5 分
現在  300件 × 12分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 300件 × 5分 ÷ 60 = 25 時間/月
月間削減時間
35h
削減率
58%
年間削減時間
420h
年間金額換算(時間単価4,000円)
168万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 作品ごとにファン活動のガイドラインを公開し、読者からの「これはしてよいか」という問い合わせに個別に答えている漫画・ライトノベル・アニメの出版社や権利の窓口。問い合わせが月に数百件あり、多くがガイドラインを読めば答えられる内容なのに、担当者が毎回条項を探して返信を書いている場合。作品ごとにガイドラインの内容が違い、担当者が作品を取り違える心配がある場合。
向いていない
  1. ファン活動のガイドラインを持たず、すべての利用を個別の許諾で判断している場合(先にガイドラインを整える)。問い合わせが月に数十件で、担当者が手で返して足りる場合。商品化や映像化などの契約の交渉の窓口。なお、利用を許諾するかどうか、著作権の侵害に当たるかどうか、引用として認められるかどうかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の問い合わせから30件を選ぶ(ガイドラインで答えられたもの、個別に判断したもの、情報が足りず聞き返したものを10件ずつ)
  2. 30件の作品のガイドラインを、条項の番号付きのテキストにする
  3. 手元のAIサービスの画面に、ガイドラインと問い合わせを1件ずつ貼り、「この問い合わせを、このガイドラインの条項だけに照らして4つの区分に分けてください。根拠の条項は本文をそのまま写してください。条項が無い利用は判断しないでください」と指示する
  4. 出てきた区分を、実際に返した区分と比べ、個別に判断したものを「問題ない」としていないかを見る

見るのは、ガイドラインの外のものの扱いです。 個別に判断した10件が needs_review に入るかどうかで、この構成が使えるかが決まります。

出てきた内容判断
個別に判断した10件が needs_review になる構成は有効。 次は引用の照合
条項の無い利用を「問題ない」とする指示の書き方で直る。区分と根拠の照合で必ず拾う
引用が条項の本文と違う照合の仕組みが要る。手で照らした時間を記録しておく
当てはめが担当者の判断と食い違うガイドラインの条項の書き方があいまいな可能性。 条項の見直しの材料にする

4行目は、AIの失敗とは限りません。 担当者が暗黙に補っていた読み方が、条項の文面に書かれていないことがあります。それが分かることも、この試行の成果です。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
条項の無い利用を「問題ない」とする区分と根拠の照合で止め、needs_review に直す
引用が要約になっている一字一句写す指示と、完全一致の照合
作品を取り違える作品の特定をAIの外で行い、当たらなければ止める
古い版の条項で返す施行日が今日以前の最新の版を使い、版の変更日に作り直す
引用の機能と構造化出力を同時に使おうとする併用すると400になる。引用はプログラムで照らす
過去の例に引きずられる例を根拠にしたら needs_review にする
無断利用の通報に案内を返す通報は判定せず、権利侵害の対応の担当へ
商用の利用が埋もれる商用とみられるものは needs_review とし、契約の担当へ
断る返信が冷たいnot_allowed は担当者が言い回しを直し、できることを添える
読者の個人の情報が外へ出る氏名・アカウント名・学校名を記号に置き換える

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「ガイドラインの文面から説明できない返信」が出ることです。区分と根拠と引用を機械で照らしているかどうかで、運用に乗るかが決まります。

5行目は、設計の最初に決めてください。 引用の機能は便利ですが、構造化出力と同時には使えません。区分を確実に受け取ることを優先し、引用はプログラムで照らす形にします。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 読者の問い合わせの本文、作品のガイドライン、過去の返信です。読者には未成年が含まれます。

  1. 使うのはライツ部の担当者だけにする … 読者がAIと直接やり取りする構成ではありません。Anthropic の利用ポリシーは18歳未満を未成年と定義し、未成年が製品と直接やり取りする組織に追加の指針を求めています。 読者向けの自動応答に広げる場合は、改めて確かめてください
  2. 法的な判断をさせない … 利用ポリシーは、法的な権利や義務についての助言を高リスクの用途とし、資格のある人が意味のある確認をすることと、受け取る人にAIを使ったことを示すことを求めています。本構成は返信を会社のガイドラインの案内に限り、著作権の侵害や引用に当たるかを書かせません。返信が法的な助言に踏み込んでいないかを担当者が確かめ、AIを使ったことの表示の要否は、利用ポリシーの本文に照らしてライツ部で決めます
  3. 許諾は会社と作者が行う … 著作権法は、著作者が複製や翻案の権利を専有し、二次的著作物の利用について原著作物の著作者も同じ種類の権利を持つと定めています。利用の許諾は著作権者が行うもので、許諾を得た者はその利用方法と条件の範囲で利用できるとされています。ガイドラインはその条件を示したものであり、範囲の外の利用をAIの返信で認めないことを設計で守ります
  4. 個人の情報を外して渡す … 氏名、ペンネーム、アカウント名、学校名は記号に置き換えます
  5. 返信を自動で送らない … 全件を担当者が確かめて送ります

誤りが起きた場合のリスクは、ガイドラインの外の利用を認めてしまうことと、認めている利用を断ってしまうことの2つです。 前者は区分と根拠の照合で、後者は引用の照合で防ぎます。どちらも、条項の原文に根拠を置くことから出ているので、そこだけは設計で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:ガイドラインを表にする

問い合わせの多い上位10作品のガイドラインを、作品・版・施行日・条項の番号・本文の表にします。共通の条項と作品の条項を別の行にします。 公開しているページと1字ずつ照らします。

2週目:30件で試す

ガイドラインで答えたもの、個別に判断したもの、聞き返したものを10件ずつ選び、手元のAIサービスで区分と下書きを作ります。個別に判断した10件が needs_review に入るかを最優先で見ます。

3週目:問い合わせフォームと返信の型を直す

頒布の場所・価格・部数・公式の素材の有無の選択項目をフォームに足します。4つの区分ごとの返信の型を、ライツ部で決めます。

4週目:受付から下書きの一覧までをつなぐ

Python で作品を特定し、ガイドラインを組み合わせ、Claude API で区分と下書きを作って一覧に書き出すところまで作ります。この時点では問い合わせの管理の仕組みに書き込まず、担当者が一覧から写して返します。

2か月目: 引用と区分の照合を足し、赤と黄の印を付けます。3か月目以降: 問い合わせの管理の仕組みへの下書きの書き込みをつなぎ、残りの作品のガイドラインを表にします。needs_review の傾向を毎月まとめ、作者と編集部にガイドラインの改定の材料として渡す流れが回り始めた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-28/最終更新:2026-10-28
確認した内容情報源確認日
構造化出力を output_config.format の json_schema で指定すること。拒否のとき stop_reason: "refusal" となり、max_tokens で切れたときとあわせて出力がスキーマに合わないことがあることClaude Platform Docs: Structured outputs2026-10-28
引用の機能(Citations)を文書に有効にしたまま output_config.format を指定すると400のエラーになり、構造化出力と併用できないこと。引用はリクエスト内のすべての文書で有効か無効かをそろえることClaude Platform Docs: Citations2026-10-28
cache_control でプロンプトキャッシュを使えること。既定の有効期間が5分で使うたびに延び、1時間の指定もできることClaude Platform Docs: Prompt caching2026-10-28
18歳未満を未成年と定義し、未成年が製品と直接やり取りする組織に追加の指針を求めていること。法的な権利・義務についての助言を高リスクの用途とし、資格のある人による意味のある確認と、AIを使ったことの開示を求めていること。第三者の知的財産権の侵害を禁じていることAnthropic: Usage Policy2026-10-28
著作権法第21条(複製権)、第27条(翻訳権・翻案権等)、第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)、第63条(著作物の利用の許諾。許諾を得た者は利用方法及び条件の範囲内で利用できること)e-Gov 法令API: 著作権法(昭和45年法律第48号)2026-10-28

利用の許諾、著作権の侵害や引用に当たるかの判断は、ライツ部と作者、必要に応じて専門家が行ってください。 本記事は上記の資料で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-2112)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次