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子会社の経理担当から毎月届く連結パッケージの記入方法の質問に、会計方針書・記入要領・過去の質疑を根拠にチャットで答え、判断の要るものを連結の担当へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

子会社の経理担当が連結パッケージの記入方法をチャットで聞くと、シートと取引の条件を聞き返して特定し、記入要領・会計方針書・過去の質疑から出典付きで答えます。会計処理の判断が要るものは親会社の連結の担当へ回します。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
IT・SaaS/商社/小売/製造
対象部門
経理/財務
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
問い合わせが多い/引き継ぎができていない/情報が見つからない
AIで行う処理
対話
主な効果
品質標準化/対応スピード向上/教育コスト削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
70h/月
AI導入後
25h/月
想定削減
64%
年間削減
540h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 子会社の経理担当が、パッケージを書く途中で分からない欄に当たる
  2. 記入要領を開くが、該当する箇所が見つからず、親会社にメールか電話で聞く
  3. 連結の担当が、どのシートのどの欄の話か、相手はグループ会社か外部かを聞き返す
  4. 記入要領と会計方針書を開き、該当する箇所を探す。過去の質疑の一覧も探す
  5. 記入の方法を返信し、要領のページを添える
  6. 会計処理の判断が要るものは、グループのリーダーと相談して答える
  7. 質問と回答を質疑の一覧に書く
導入後(After)
  1. 人子会社の経理担当が、グループのポータルのチャットで質問する(例:「親会社から仕入れた部品が月末に残っている。どこに書くか」)
  2. 自動中継プログラムが、ログインした担当の会社と、報告の月を受け取る
  3. 自動質問を、内部取引/債権債務/固定資産/その他のシートの種類に分け、その種類の確認項目の表を引く
  4. 自動まだ分かっていない確認項目(取引の相手、取引の種類、通貨など)を、選択肢付きで1つずつ聞き返す
  5. 自動条件がそろったら、報告の月に効いている版の要領と方針書に絞り、Agent Search(旧 Vertex AI Search)の answer メソッドが出典付きで答える
  6. 自動判断の要る質問(方針の変更、新しい種類の取引、金額の重要性など)は、答えを作らずに連結の担当へ回す
  7. 人子会社の担当は、出典の要領のページを開いて確かめてから書く
  8. 人連結の担当は、回ってきた質問だけを、聞き取り済みの条件を見て答える
各工程の詳しい説明を読む
  1. 子会社の経理担当が、パッケージを書く途中で分からない欄に当たる
  2. 記入要領を開くが、該当する箇所が見つからず、親会社にメールか電話で聞く
  3. 連結の担当が、どのシートのどの欄の話か、相手はグループ会社か外部かを聞き返す
  4. 記入要領と会計方針書を開き、該当する箇所を探す。過去の質疑の一覧も探す
  5. 記入の方法を返信し、要領のページを添える
  6. 会計処理の判断が要るものは、グループのリーダーと相談して答える
  7. 質問と回答を質疑の一覧に書く

(a)締めの数日に質問が集中する。 月300件の質問のうち、大半が締めの3営業日に届きます。連結の担当は、子会社からの提出を待ちながら、その子会社の質問に答えている状態です。 返事が遅れると、提出が遅れ、連結の作業が後ろにずれます。

(b)要領のどこに書いてあるか探せない。 要領はシートの順に書かれていますが、子会社の疑問は「この取引はどこに書くか」という取引の側から来ます。取引から要領を引く索引がありません。 親会社の担当も、記憶を頼りにページをめくります。

(c)前任者に答えた内容が引き継がれない。 同じ子会社から、担当が替わるたびに同じ質問が届きます。質疑の一覧は親会社にしか無く、子会社の新しい担当からは見えません。

(d)判断の要る質問が埋もれる。 記入の方法の質問と、会計処理の判断の質問が同じメールの束で届きます。判断の要る1件が、記入の方法の質問の山の中で後回しになり、締めの最終日に見つかります。

4つとも、要領の中身の問題ではありません。 答えは書いてあるのに、子会社の担当がその場でたどり着けず、親会社の担当5名が探す役を引き受けていることの問題です。

  1. 【人】 子会社の経理担当が、グループのポータルのチャットで質問する(例:「親会社から仕入れた部品が月末に残っている。どこに書くか」)
  2. 【自動】 中継プログラムが、ログインした担当の会社と、報告の月を受け取る
  3. 【自動】 質問を、内部取引/債権債務/固定資産/その他のシートの種類に分け、その種類の確認項目の表を引く
  4. 【自動】 まだ分かっていない確認項目(取引の相手、取引の種類、通貨など)を、選択肢付きで1つずつ聞き返す
  5. 【自動】 条件がそろったら、報告の月に効いている版の要領と方針書に絞り、Agent Search(旧 Vertex AI Search)の answer メソッドが出典付きで答える
  6. 【自動】 判断の要る質問(方針の変更、新しい種類の取引、金額の重要性など)は、答えを作らずに連結の担当へ回す
  7. 【人】 子会社の担当は、出典の要領のページを開いて確かめてから書く
  8. 【人】 連結の担当は、回ってきた質問だけを、聞き取り済みの条件を見て答える

6番目が、この設計の分かれ目です。 判断が要るかどうかは、質問の種類と確認項目の値から、中継プログラムの規則で決めます。 例えば「この取引は初めて」が選ばれたら、内容にかかわらず回します。AIに「判断が要るか」を考えさせると、要領に似た記載のある質問を、記入の方法の質問として答えてしまいます。

2番目で会社を自動で受け取るのも、意図してのことです。 子会社ごとに、決算日、機能通貨、方針の例外の扱いが違います。会社を聞き返さずに確定させることで、他の子会社向けの記載が答えに混ざるのを防ぎます。

02今回想定するシステム構成

構成図
グループのポータルのチャット(子会社の経理担当)
   ▼【トリガー】質問の送信(会社コード・報告の月付き)
中継プログラム(Python、Cloud Run)
   ├──▶ シートの種類の判定 → 確認項目の表
   ├──▶ 未確認の項目を選択肢付きで聞き返す(セッションを保つ)
   ├──▶ 判断の要る条件 → 連結の担当の待ち行列
   ▼
Agent Search(Vertex AI Search)── answer メソッド
   │  データストア:記入要領+会計方針書+過去の質疑
   │  絞り込み:sheet/valid_from/valid_to/scope
   │  閲覧の範囲:子会社ごとの質疑はその会社と連結の担当だけ
   ▼
中継プログラム ── 出典の版が報告の月に合っているかを確かめる
   ├──▶ 回答と出典を返す
   └──▶ 答えられない・版が合わない → 連結の担当の待ち行列
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、チャット・検索・待ち行列をつなぐ)Node.js で同じものを書く
認証グループの ID 基盤(Microsoft Entra ID など。Workforce Identity Federation でつなぐ)Google の ID
保管Cloud Storage(要領・方針書・質疑の原本とメタデータ)─

連結パッケージの様式と連結の仕組みは、新しく足すものではありません。 チャットの画面をグループのポータルに置き、質疑の記録は中継プログラムが一覧に書き足します。最初の準備は、記入要領に「取引からシートを引く」索引の表を作ることです。

検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作り、includeCitations で出典を付けられます。セッションを使った複数回のやり取りに対応し、質問の言い換えは既定で有効です。関係の薄い内容しか無いときは回答を作らず、answerSkippedReasons で理由を返します。

方針書の土台になる考え方は、会計基準に書かれています。 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」は、同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社と子会社の会計方針を原則として統一するとしています。連結会社相互間の債権と債務は相殺消去し、相互間の取引で取得した資産に含まれる未実現損益は全額を消去するとしています。連結パッケージの内部取引のシートは、この消去の材料を集めるためのものです。 子会社の担当に「なぜこの欄があるのか」を説明するときの根拠になります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は、子会社の経理担当がチャットで質問を送ったことです。 チャットはグループのポータルに置き、グループの ID でログインした担当だけが使えるようにします。ログインした担当の会社コードが、絞り込みと閲覧の範囲の判定にそのまま使われます。

報告の月は、チャットを開いた時点の締めの月を既定にし、選び直せるようにします。 前の月の数値を直している担当は、前の月を選びます。報告の月が、どの版の要領で答えるかを決めます。

1つの質問は、1つのセッションで最後まで続けます。 確認項目を聞き返すやり取りと、答えたあとの「では外貨建ての場合は」のような続けての質問を、同じセッションでつなぎます。別のシートの質問は、新しいセッションで始めてもらいます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
質問担当の質問の文、選んだ確認項目の値チャット
会社の情報会社コード、決算日、機能通貨、方針の例外の有無グループの会社の一覧
確認項目の表シートの種類ごとに、聞くべき条件と選択肢、回す条件連結グループが作る表
記入要領シートごと・欄ごとの記入の方法、適用開始の月グループのポータルのPDF
会計方針書グループの会計方針、子会社ごとの例外グループのポータルのPDF
過去の質疑質問、回答、根拠のページ、日付、会社連結グループの質疑の一覧

質を決めるのは、確認項目の表の「回す条件」の列です。 「取引の種類:初めての取引」「方針:親会社と違う処理をしている」「金額:一定額を超える」のような値が選ばれたら、答えを作らずに回す、という規則をこの列に書きます。 ここが無いと、判断の要る質問がチャットで答えられてしまいます。

会社の情報の「決算日」も効きます。 決算日が連結決算日と違う子会社は、仮決算を行うのか、差が3か月を超えないので自社の正規の決算を基礎にするのかで、書く数値の期間が変わります。 会社ごとにどちらの扱いかを一覧に持たせ、回答に添えます。

Step3

データの取得方法を決める

要領・方針書・質疑は、Cloud Storage に置いてデータストアに取り込みます。 文書ごとのメタデータに、シートの種類、文書の種類(要領/方針書/質疑)、適用開始の月、適用終了の月、対象(全社共通/特定の会社)を持たせます。

取るものどこから何に使うか
シートの種類、文書の種類メタデータ絞り込み
適用開始・終了の月メタデータ報告の月に効いている版だけに絞る
対象(全社共通/会社コード)メタデータ他社向けの例外を除く
閲覧の範囲acl_info会社ごとの質疑をその会社と連結の担当だけに出す

絞り込みの式は、シートと版で書きます。 項目を索引可能にしておけば、sheet: ANY("intercompany") AND valid_from <= "2026-09-30" AND scope: ANY("all", "C014") のように書けます。比べる値の形をメタデータと検索の文でそろえ、日付をISO 8601の形式で書けば、報告の月より後に適用される版を除けます。 終了した版は valid_to で除きます。

過去の質疑には、閲覧の範囲を付けます。 質疑には子会社の取引の内容と金額が書かれていて、他の子会社に見せてよいものではありません。 文書のメタデータの acl_info に、その会社の担当のグループと連結の担当のグループの group_id を書きます。全社に通用する質疑は、会社名と金額を除いた共通の版を連結の担当が作り、全員に見せます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 要領をシートの単位で分ける … 1つのPDFに全シートが入っているものは、シートごとに分けます
  2. 取引からシートを引く索引を作る … 「親会社からの仕入の在庫残→内部取引のシートの在庫の欄」のような対応を表にし、要領と一緒に取り込みます
  3. 版の適用開始と終了を付ける … 改訂のたびに、旧版に終了の月を書きます
  4. 過去の質疑を整える … 回答の根拠のページを書き添え、今の要領で通用しない回答には終了の月を付けます
  5. 共通の質疑を作る … 複数の会社から届いた質問は、会社名と金額を除いて共通の版にします
  6. 見出しを断片に含める … データストアの作成時に分割を有効にし、includeAncestorHeadings を有効にします
  7. 閲覧の範囲を付ける … 会社ごとの質疑に acl_info を付けます

2番目の索引が、この構成でいちばん効きます。 第3章の(b)のとおり、子会社の疑問は取引の側から来るのに、要領はシートの順に書かれています。索引が無いと、検索は取引の言葉とシートの言葉のずれを埋められません。 索引は、連結の担当が過去の質疑から「この質問はこのシート」と拾って作ります。

6番目は、データストアを作る前に決めます。 分割はデータストアの作成のあとでは有効にも無効にもできず、見出しを含める設定は既定では無効です。 要領の欄の説明は短く、見出しが無いとどのシートの欄か分かりません。分割の大きさは100〜500トークンで、既定は500です。要領の様式の見本が表計算のファイルなら、レイアウトパーサーで表として読ませます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、聞き取った条件に当たる要領と方針書と質疑の記載を見つけ、どのシートのどの欄に何を書くかを、出典を付けて短く返すことです。 何を聞き返すか、何を回すかは、確認項目の表で中継プログラムが決めます。

要素中身根拠
書く場所シートの名前と欄の名前記入要領と索引
書く内容欄に入れる値の種類(期末残高、期中の取引高など)記入要領
注意点相手先コードの付け方、通貨、符号記入要領と方針書
過去の例同じ会社または共通の質疑過去の質疑

answer メソッドの設定は次のようにします。

設定値理由
session質問ごとのセッション聞き返しと続けての質問をつなぐ
includeCitations有効回答に要領のページを付ける
ignoreLowRelevantContent有効要領に無い話に答えない
ignoreNonAnswerSeekingQuery有効あいさつや雑談で検索しない
filterシート、版、対象報告の月に効く版と、自社向けの記載だけにする
userPseudoId担当ごとの仮の識別子質疑の記録と結びつける
preamble下の指示答え方の規則を与える

検索は、ログインした担当の ID で行います。 中継プログラムが広い権限で検索すると、他の子会社の質疑が、取引の内容と金額ごと回答に入ります。

させないこと理由
会計処理の方法の判断方針の解釈は連結の担当が行う
金額の計算や、仕訳の作成子会社の帳簿の数値を基に子会社が作る
重要性の判断グループの基準と事案ごとの判断
一般的な会計基準の知識で補うグループの方針書と違いうる
他の子会社の例外の当てはめ例外は会社ごとに認めたもの

4行目がいちばん起きやすい失敗です。 回答を作るモデルは、一般的な連結の実務を知っています。それで補うと、グループの要領に無い「この場合は消去の対象外」が、グループの決まりのように届きます。 何を書くかは、グループの要領にしか書いてありません。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます。

あなたは企業グループの親会社の連結の担当として、
子会社の経理担当から連結パッケージの書き方の質問に答えます。
読むのは、締めの期限の中でパッケージを書いている子会社の担当です。

【前提】
検索の文の最初に、会社コード、報告の月、シートの種類、
聞き取った条件(取引の相手、取引の種類、通貨)が並んでいます。
その条件に当たる記載だけを使って答えてください。

【答え方】
1. 最初に、書く場所(シートの名前と欄の名前)を書いてください。
2. 次に、その欄に書く値の種類を、要領の言葉のまま書いてください。
3. 相手先コード、通貨、符号の注意があれば、箇条書きで書いてください。
4. 最後に、根拠にした要領の版とページ、質疑があればその日付を書いてください。

【厳守事項】
- 検索結果の文書に書かれていることだけで答えてください。
  一般的な会計基準や連結の実務の知識で補わないでください。
- 会計処理の方法を判断しないでください。
  処理の方法を聞かれたときは「連結の担当へ回します」とだけ書いてください。
- 金額を計算しないでください。仕訳を作らないでください。
- 重要性の有無を書かないでください。
- 聞き取った条件と違う条件の書き方を並べないでください。
- 該当する記載が見つからないときは、
  「記入要領と会計方針書に該当する記載が見つかりません。連結の担当へ回します」
  とだけ書いてください。
- 他の会社の名前と金額を書かないでください。

「会計処理の方法を判断しない」が、この指示の要です。 子会社の質問は「どこに書くか」の形で届きますが、中身が「消去の対象になるか」という処理の判断であることがあります。 モデルは要領の近い記載を手がかりに答えを作れてしまうので、処理の方法に触れる質問は、答えられても答えさせません。

検索の文は、中継プログラムが組み立てます。 例えば「会社:C014(国内、3月決算)、報告の月:2026年9月、シート:内部取引、相手:親会社、取引:部品の仕入、在庫残あり、通貨:円。書く場所と書く値を教えてください」のように、確認項目を表の順に並べ、担当の質問の文を最後に足します。

Step7

出力形式を固定する

answer メソッドの応答を、中継プログラムが次の形に整えて、チャットと記録に渡します。

{
  "inquiry_id": "",
  "session_id": "",
  "company_code": "",
  "report_month": "",
  "sheet": "intercompany | receivable_payable | fixed_assets | other",
  "conditions": { "counterparty": "", "transaction": "", "currency": "", "first_time": false },
  "status": "answered | escalated | skipped",
  "escalate_reason": "judgment | first_time | not_in_manual | version_mismatch | skipped | user_request | none",
  "answer_text": "",
  "manual_refs": [ { "version": "", "sheet": "", "page": "", "uri": "" } ],
  "qa_refs": [ { "date": "", "scope": "all | company", "uri": "" } ],
  "feedback": "resolved | escalated_after | wrong | none"
}

1つ目の理由は、conditions を回答と一緒に残せることです。 連結の担当へ回すとき、聞き取り済みの条件がそのまま渡るので、担当は聞き直さずに判断に入れます。 誤った回答が出たときも、どの条件で検索したかが分かります。

2つ目は、manual_refs の version で検査ができることです。 中継プログラムは、出典の版が報告の月に効いていない回答を見つけたら、回答を出さずに version_mismatch で回します。 絞り込みの設定を誤ったときの最後の歯止めです。

3つ目は、escalate_reason で回った理由を数えられることです。 not_in_manual が多いシートは要領の書き足しが要り、judgment が多い取引は方針書の書き足しが要ります。 月ごとに数えて、要領の次の改訂の材料にします。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
グループのポータルのチャット社内向けの画面質問を受け、聞き返しと回答を表示する
グループの ID 基盤Workforce Identity Federation担当の会社で絞り込みと閲覧の範囲を決める
会社の一覧読み取り決算日、機能通貨、方針の例外を引く
Agent Searchanswer メソッドの呼び出し担当の ID で、要領・方針書・質疑から回答を作る
連結の担当の待ち行列書き込み回す質問を、条件と一緒に載せる
質疑の一覧書き込み質問・条件・回答・評価を残す

連結パッケージと連結の仕組みには、書き込みません。 この構成が出すのは書き方の案内までで、数値を入れるのは子会社の担当、連結の処理をするのは親会社の担当です。 書き込みを足すと、案内の誤りがそのまま連結の数値に入ります。

Step9

人が確認する

子会社の担当は、回答を読んだあと必ず出典の要領のページを開いてから書きます。 回答は「どのシートのどの欄か」を示すもので、欄の細かい書き方の例は要領の原文にしかありません。

  1. 版とページを確かめる … 報告の月の版の要領か、ページが質問のシートかを見ます
  2. 条件が取引と合っているかを確かめる … 聞き返しで選んだ値が、実際の取引と違っていないかを見ます
  3. 評価を付ける … 解決した/担当へ回した/誤りを選びます

2番目を軽く見ないでください。 相手が親会社か兄弟会社かを取り違えると、相手先コードの違う欄に書くことになり、親会社の照合で差異として出ます。 回答の上に、選んだ条件を必ず並べて表示します。

連結の担当は、回ってきた質問だけを見ます。 判断を答えたら、その内容を方針書か要領に足すかを、月次の締めのあとにまとめて見直します。 共通に通用するものは、会社名と金額を除いて共通の質疑にします。

目標は、300件をならして1件5分です。 回答で解決した質問の記録の確認と、回ってきた質問を担当が答える時間の平均です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
シートの種類が判定できない主なシートの一覧を選択肢で示し、選んでもらう
確認項目に「分からない」が選ばれる検索せず、確かめる項目として示す。確かめてから同じセッションで続けてもらう
「初めての取引」が選ばれる内容にかかわらず first_time で回す
処理の方法を聞く質問答えを作らず judgment で回す
要領に該当する記載が無いnot_in_manual で回す
出典の版が報告の月と合わない回答を出さず version_mismatch で回す
締めの最終日に回る質問が多い待ち行列を提出期限の近い会社の順に並べる
検索の呼び出しが失敗する「回答を作れませんでした」と表示し、連結の担当の連絡先を示す
担当が「親会社と話したい」と書くその時点の条件を付けて担当へ回す

7行目は、運用の約束として子会社に伝えておきます。 締めの最終日は回る質問も増え、提出期限の近い会社から答えないと、連結の作業が止まります。 待ち行列に会社ごとの提出期限を付けて並べます。

Step11

記録を残す

  • 質問の文、選んだ確認項目の値、日時、会社コード、報告の月
  • 中継プログラムが組み立てた検索の文と、使った絞り込みの式
  • answer メソッドの応答の全文(回答、出典、回答しなかった理由)
  • 回す・回さないの判定と、その理由
  • 担当の評価と、連結の担当が最終的に答えた内容
  • そのとき効いていた要領と方針書の版

最後の行は、監査で効きます。 連結の数値に誤りが見つかり、「子会社はなぜその欄に書いたのか」を確かめるとき、当時の要領の版と、そのとき返した回答が要ります。 要領の改訂のたびに、版の一覧を残します。

04実装レベルの3段階

最小構成:要領と方針書を手元のAIサービスに読み込ませ、連結の担当が質問の条件を貼って聞く / 要領と方針書の該当箇所の検索
半自動化:上記+データストアを作り、連結の担当がメールを受けながら検索画面で聞く / 根拠付きの回答と、報告の月に合った版の選択
本格構成:上記+子会社の担当がチャットで直接聞き、聞き返しと回す判断、閲覧の範囲の出し分けを行う / 質問の聞き取りから回答・引き継ぎまで

半自動化で、1件14分が9分程度になります。 探す時間は縮みますが、メールの聞き返しと、連結の担当が全件を受ける形が残ります。本格構成で5分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、聞き返しがチャットの選択肢に移り、要領に答えのある質問が親会社を通らずに子会社で完結するからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の1か月で、連結の担当が最初に何を聞き返しているかを記録から拾います。それが確認項目の表の元になります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
14 分
1件あたり導入後時間
5 分
現在  300件 × 14分 ÷ 60 = 70 時間/月
導入後 300件 × 5分 ÷ 60 = 25 時間/月
月間削減時間
45h
削減率
64%
年間削減時間
540h
年間金額換算(時間単価4,500円)
243万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 子会社を数十社持ち、月次で連結パッケージを集めて連結の数値を作っている企業グループ。子会社の経理担当の入れ替わりが多く、締めの数日に記入方法の質問がメールと電話で親会社の連結の担当に集中している場合。グループの会計方針書と連結パッケージの記入要領が文書になっており、過去の質疑も一覧に残っている場合。グループの文書を Google Cloud に置くことが、グループの規程で認められている場合。
向いていない
  1. 子会社が数社で、質問が月に十数件の場合。記入要領が無く、記入の方法が親会社の担当者の説明だけで伝わっている場合(根拠にする文書が無いので、まず要領を書くのが先です)。会計処理の判断や重要性の判断そのものをAIに任せたい場合(この構成は方針書と要領の該当箇所を示すだけで、判断は連結の担当が行います)。連結を四半期と年度末にしか行わない場合。

07最小構成で試す方法

  1. 先月と先々月の質疑の一覧から30件を選ぶ(内部取引の質問と、処理の判断が要った質問を数件入れる)
  2. その30件について、担当がどの要領のページを見て、どう答えたかを一覧から拾う
  3. 関係するシートの要領と方針書を、手元のAIサービスに資料として読み込ませる
  4. 会社・報告の月・条件を並べて貼り、「添付の資料だけを根拠に、書く場所と書く値をページ付きで答えてください。処理の方法の判断は書かないでください」と指示する
  5. 出てきた回答を、当時の担当の回答と突き合わせる
出てきた内容判断
当時と同じシート・欄・ページが出たデータストアの構築に進む
一般的な連結の知識で処理の方法を書いた指示の書き方で直る。構成は有効
取引の言葉からシートにたどり着けない取引からシートを引く索引を作るのが先。 検索の問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、担当が記憶で補っていた「この取引はこのシート」が、要領の側に書かれていないと分かったということです。 30件の当時の回答から索引の最初の行を作り、同じ30件で試し直してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
処理の方法の判断まで答える処理に触れる質問は答えられても答えさせない。 回す条件を表に書く
一般的な連結の知識で補う検索結果の文書だけで答えるよう指示し、出典の無い文を表示しない
取引の言葉からシートにたどり着けない取引からシートを引く索引を作り、要領と一緒に取り込む
古い版の要領で答える版に適用開始と終了を付け、報告の月で絞り込む
他の子会社の質疑が見えるacl_info を付け、担当の ID で検索する
他社向けの例外が答えに混ざる対象(全社共通/会社コード)で絞り込む
見出しの無い断片で答える作成時に includeAncestorHeadings を有効にする。後から変えられない
同じセッションでシートを変えるシートが変わったら新しいセッションで始める

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、答えとしては正しく見えるのに、グループの決まりではない、または親会社が判断すべきことという失敗です。回す条件を規則で持っているかどうかで、子会社に開けるかが決まります。

5行目は、気付いたときには手遅れになりやすい失敗です。 他の子会社の取引の内容と金額が一度でも回答に出ると、チャットの履歴に残り、取り消せません。 本番の前に、別の会社の ID でその会社の質疑を狙った質問を試してください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: グループの会計方針書、記入要領、過去の質疑、子会社の担当の質問の文です。質疑と質問には、子会社の取引の内容と金額、ときには公表前の業績に関わる数値が含まれます。

  1. 会社ごとの質疑を出し分ける … acl_info を付け、検索は担当の ID で行います
  2. 質問の文に金額を書かせない … チャットの画面に「金額や取引先の名前は書かないでください」と表示し、条件は選択肢で入れさせます
  3. 会計処理の判断をAIに作らせない … 処理の方法と重要性は連結の担当が決めます。この構成が出すのは、要領と方針書の該当箇所と書き方の要点だけです
  4. 公表前の数値の扱いを決める … 質疑の記録に業績に関わる数値が残る場合は、記録の閲覧を連結の担当に限り、保存の期間を決めます
  5. グループの規程とクラウドの利用の手続きを先に通す … 海外子会社を含む場合は、各国の子会社の規程でも認められているかを確かめます
  6. 質疑の記録の保存の期間を決める … 監査で確かめる期間だけ残し、期間を過ぎたら消します

誤りが起きた場合のリスクは、誤った欄に書かれた数値が連結に入ることと、他の子会社の取引が見えることの2つです。 前者は版の検査と回す条件で、後者は ID による検索で防ぎます。どちらも規則と設定で守り、AIの回答の文に頼りません。

10まず何から始めるか

1週目:取引からシートを引く索引を作る

過去半年の質疑の一覧から、「この取引はこのシートのこの欄」という対応を拾って表にします。質問の多い内部取引、債権債務、未実現利益の材料の3つから始めます。

2週目:30件で試す

先月と先々月の質疑から30件を選び、手元のAIサービスに要領と方針書と索引を読み込ませて、条件を並べて聞きます。処理の方法の判断を書いていないかを最優先で見ます。

3週目:確認項目の表と回す条件を決める

3つのシートについて、聞くべき条件と選択肢、回す条件を表にし、連結グループのリーダーの承認を取ります。 この表は、子会社の新しい担当への説明の資料としても、そのまま使えます。

4週目:データストアを作る

アクセス制御と分割・見出しの設定を決めて、要領・方針書・質疑・索引を取り込みます。連結の担当が検索画面で使い、自分の回答と比べます。

2か月目: 中継プログラムとチャットの画面を作り、国内の子会社5社で試します。担当の評価と回った理由を毎週数えます。3か月目以降: 全社に広げ、1件14分が何分になったかを実測します。締めの3営業日に回る質問が、判断の要るものだけになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドがセッションによる複数回のやり取りに対応し、質問の言い換えが既定で有効なこと。includeCitations、ignoreLowRelevantContent、ignoreNonAnswerSeekingQuery、answerSkippedReasons、preamble、filter、userPseudoIdGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-06
データソースのアクセス制御で、acl_info の readers に user_id/group_id を書いて閲覧の範囲を限れること。Microsoft Entra ID・Okta・Ping を Workforce Identity Federation でつなげること。作成時にしか有効にできないことGoogle Cloud: Use data source access control2026-10-06
絞り込みの ANY()、比較の演算子、AND/OR/NOT、項目を索引可能にする必要があること、日付をISO 8601で書くことGoogle Cloud: Filter search for structured or unstructured data2026-10-06
レイアウトパーサーが表と見出しを検出し、PDF・XLSX などを扱えること。分割の大きさが100〜500トークン(既定500)、includeAncestorHeadings が既定で無効、分割は作成後に切り替えられないことGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-06
企業会計基準第22号で、同一環境下で行われた同一の性質の取引等について親会社と子会社の会計方針を原則として統一すること(第17項)。子会社の決算日が連結決算日と異なる場合の扱いと、差異が3か月を超えない場合に子会社の正規の決算を基礎にできること(第16項と注4)。連結会社相互間の債権と債務の相殺消去(第31項)と、未実現損益の全額消去(第36項)企業会計基準委員会: 企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準2026-10-06

会計処理の方法と重要性の判断は、グループの会計方針と、監査法人との協議に従ってください。 本記事は Google Cloud と企業会計基準委員会の公開ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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