AIの監査は何を物差しにする?|依拠する基準の選び方

AIの監査は何を物差しにする?|依拠する基準の選び方

「AIの監査をやると決まったのですが、何を基準に見るのかが誰からも出てこなくて」「指針は印刷しました。ただ、これに沿っていれば合格だと言い切れる自信がありません」——監査の準備に入った会社から、この二つはほぼ同時に出てきます。資料が足りない、という話ではありません。AIを対象にした監査には、何を満たせば合格かを決めた法律がなく、依拠する物差しを自社で選んで宣言するところから始まるからです。この記事では、物差しの候補を発行元と時期つきで並べ、どれに依拠するかを決めるための判断軸を整理します。


カメ先生カメ先生

監査というと点検する側の腕前の話になりがちだけれど、本当は何に照らして見るかで結果のほとんどが決まるんだ。


カメ子カメ子

照らすもの、というのは法律のことですか。


カメ先生カメ先生

法律もその一つだけれど、AIの場合は合格の線を引いた法律がない。だから指針や規格も含めて、どれに依拠するかを先に選ぶ仕事が来るんだよ。


カメ子カメ子

候補が複数あるということと、どれを選んでも同じということは、何が違うのでしょうか。


この記事のポイント
  • AIを対象にした監査には合格の線を決めた法律がない。依拠する物差しは自社で選んで宣言する
  • 候補は6つ。第三者の認証の制度が動いているのは規格だけで、残りは自己点検の枠組みとして使う
  • 選ぶ順は、誰に見せるか、認証か自己宣言か、求められてか自発か。主にする物差しは1本に絞る

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目次

「何点で合格なのか」が、どこにも書かれていない

監査という作業は、見る人と、見られる対象と、照らす基準の三つがそろって初めて成り立ちます。会計の監査で担当者が迷いにくいのは、照らす基準が制度として決まっているからです。基準が決まっていれば、意見が割れたときも「どの条文の読み方が違うのか」という形に持ち込めます。ところがAIの利用を対象にした監査は、この三つ目が空欄のまま現場に渡されます。

空欄になるのは、担当者の準備不足ではありません。日本のAI法、正式には人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律は、2025年6月4日に公布・一部施行され、同年9月1日に全面施行されました。ただしこれは研究開発と活用の推進を柱にした法律で、違反に罰則を科して事業者を合格と不合格に分ける作りにはなっていません。「法律を満たしているか」という問い方をしても、点検項目が一つも出てこないのはそのためです。

だから、AIの監査は「見る前に物差しを選ぶ」工程から始まります。依拠する基準を選び、版と日付まで書いて宣言してから、初めて点検票が書けるのであって、順番を逆にはできません。ここを飛ばすと、点検する側は自分の感覚で足りないところを挙げ、される側は「どこにそう書いてあるのか」と返す、という噛み合わない往復が起きます。半日の会議が二回続いて、項目が一つも確定しない、という状態です。

候補は6つある。まず性格の違いを並べて見る

実務で物差しとして持ち出されるものは、数えると6つに収まります。行政の指針、国際規格、法律、すでに運用している情報セキュリティの枠組み、内部統制の役割分担の型、そして欧州の規則です。この6つは同じ棚に並ぶ選択肢ではなく、そもそも性格が違います。中身を読み込む前に、まず性格の違いだけを一覧にします。

候補発行元と時期物差しとしての性格
AI事業者ガイドライン総務省・経済産業省/第1.2版は2026年3月31日行政の指針。別添にチェックリストとワークシートが付く
AIのマネジメントシステム規格ISO/IEC 42001は2023年発行/日本産業規格はJIS Q 42001管理の仕組みの規格。第三者の認証の制度がある
日本のAI法2025年6月4日公布・同年9月1日全面施行推進の枠組み。合否の線は引いていない
情報セキュリティの枠組みISO/IEC 27001・プライバシーマーク運用中なら回し方を流用できる。AI固有の欄は空く
内部統制の三つの防衛線内部統制の基準の意見書は2023年4月7日公表誰が見るかを決める型。単独では項目にならない
欧州のAI規則規則2024/1689/2024年8月1日発効危険度で義務が変わる。及ぶ範囲だけに効く

表にすると分かるとおり、第三者が見た結果を外に出せるのは、認証の制度がある規格だけです。残りの5つは、自分で点検して自分の言葉で結果を示す枠組みとして使います。ここを取り違えて「指針の認証を取る」という言い方が社内に流通し始めると、調達も稟議も止まります。認証という言葉が使えるのはどれか、という区別を最初に共有しておきます。

もう一つ、比べ方の注意があります。6つを「厳しい順」に並べようとしないことです。欧州の規則は義務の重さでは群を抜いていますが、及ぶ範囲に入らない事業には一つも当たりません。逆に行政の指針は義務ではありませんが、国内の取引先との会話では最も通じます。重さで序列をつけるのではなく、自社の場面に当たるかどうかで見ます。

候補1:AI事業者ガイドライン——別添に点検の道具が付いている

総務省と経済産業省が共同で出している指針です。掲載ページをたどると、第1.0版が2024年4月19日、第1.01版が2024年11月22日、第1.1版が2025年3月28日、そして第1.2版が2026年3月31日に出ています。おおむね年に一度、版が動いてきた文書だと分かります。

物差しとして選ぶときの利点は、本編とは別に別添があり、そこにチェックリストと、表計算ファイルのワークシートが同梱されていることです。点検票をゼロから設計しなくても、この欄立てを下敷きにできます。日本語で書かれていて、取得費用もかからないため、最初の1周を回すだけなら最も早く着手できる選択肢です。社内の誰でも同じ文書を開けるという点も、説明の手間を減らします。

弱点は、同じ利点の裏側にあります。版が動くので、どの版に依拠したかを記録しないと、翌年の結果と比べられなくなります。「ガイドラインに準拠」とだけ書かれた文書は、1年後には何を指しているのか誰にも分かりません。依拠を宣言するときは、版数と公表日をそのまま書き写します。なお、この指針を実務の工程に落とし込む手順そのものは、物差しを選んだ後の話になります。

候補2:AIのマネジメントシステム規格——ここだけ認証の仕組みがある

ISO/IEC 42001 は、組織がAIを扱う仕組みそのものに要求を定めた規格です。2023年に発行され、日本産業規格としても JIS Q 42001 が用意されています。6つの候補のうち、第三者による認証の制度が実際に動いているのはここだけです。外に出せる結果が要るかどうかが、この候補を選ぶかどうかの分かれ目になります。

認証の仕組みは層になっています。情報マネジメントシステム認定センターが認定機関として、認証機関と要員認証機関を評価する形です。同センターの案内では、AIのマネジメントシステムの認証を対象にした認定の開始が2025年7月8日付で掲載されており、要員認証機関の認定は現時点ではなく、各認証機関が審査員の教育と力量評価を行っていると説明されています。認証まで進むなら、この層の構造を先に押さえておくと、見積もりの読み方が変わります。

ここで大事なのは、規格を使うことと、認証を取ることは別だという点です。条項を点検の欄立てとして借り、認証は取らないという使い方も成り立ちます。認証まで進むかどうかは、後で述べる「誰に見せるのか」で決まります。規格を選んだ時点で認証が決まるわけではない、と社内で先に言っておくと、話が費用の議論に飛びません。

候補3:日本のAI法——合否の線は、法律の側に引かれていない

正式名称は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律です。2025年6月4日に公布・一部施行され、同年9月1日に全面施行されました。名前のとおり推進のための法律で、事業者を違反と適合に振り分ける仕組みを持っていません

そのため、この法律を監査の主な物差しに据えると、点検票が書けません。条文は国や事業者が努める方向を示すもので、「この記録が残っていれば合格」という粒度まで下りてこないからです。法律が効くのは、監査をやる理由を説明する場面のほうです。経営会議や監査役に対して、なぜ今この点検を始めるのかを示す背景として使うと、位置づけを間違えません。

条文が企業に何を求めているか、という読み方はそれだけで一本の論点になります。物差しを選ぶ場面で必要なのは、「方向は示すが合否の線は引かない」という一点だけです。法律は看板であって物差しではない、と整理しておけば、点検票の欄立てを法律の条文に合わせようとして行き詰まる回り道を避けられます。

候補4:いま持っている情報セキュリティの枠組みを、どこまで流用できるか

情報セキュリティマネジメントシステムの規格、つまり ISO/IEC 27001 やプライバシーマークを既に運用している会社は、実は監査を回すための仕組みをひととおり持っています。台帳を作る、委託先を選んで記録を残す、内部監査を年次で回す、是正を追いかける——この回し方は、そのままAIの点検にも使えます。ゼロから体制を作る必要はありません。

一方で、流用できない欄もはっきりしています。出力の確からしさをどう扱うか、入力した情報が学習に使われるのかどうか、モデルが黙って入れ替わったときにどうするか、人が確認する範囲をどこまでにするか。既存の枠組みの条項には、これらに正面から対応する欄がありません。流用とは、回し方を借りて欄は足すこと、と理解しておきます。

判断としては、既存の内部監査の計画にAIの章を1つ足すのか、別立ての点検にするのかを決めます。年に一度しか回らない仕組みだけに載せると、モデルの入れ替わりに追いつきません。変わりやすい部分だけを短い周期で見る、という分け方も選べます。なお、既に持っている認証の審査そのものでどこを問われるかは、この選び方とは別の検討になります。

候補5:内部統制の三つの防衛線——「誰が見るか」を決める物差し

三つの防衛線は、点検項目の集合ではありません。現場、管理部門、内部監査という三つの層で役割を分ける型です。AIの監査で最初に揉めるのは、実のところ項目の中身ではなく「誰が見るのか」であることが多く、その意味でこの候補は他と性格が違います。

上場している会社であれば、この土俵は既にあります。財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準と実施基準の改訂は、意見書として2023年4月7日に公表され、2024年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。この改訂では内部監査の活用が論点の一つに挙がっており、AIの点検を誰の担当に置くのかという議論も、この枠の中で進められます。新しい会議体を作らずに済むことが多い、というのが実務上の利点です。

ただし、これ単独では物差しになりません。役割が決まっても、その役割の人が何を見るのかは別に用意する必要があります。だから三線は、行政の指針か規格のどちらかと重ねて使うのが現実的です。線の引き方そのものをどう設計するかは、それだけで独立した検討になるため、物差しを選ぶ段階では「誰が見るかは三線で決める」と置くところまでで十分です。

候補6:欧州のAI規則——効く範囲だけを切り出して使う

欧州連合の規則、規則2024/1689は2024年8月1日に発効しました。適用は段階に分かれていて、禁止される用途は2025年2月2日から、汎用的なAIモデルと統治に関する規定は2025年8月2日から動いています。発効と適用開始が別の日付であることが、この規則を読むときの最初のつまずきどころです。

危険度が高いとされる区分については、2026年7月27日に発効した改正で期日が後ろ倒しになりました。用途で区分されるものが2027年12月2日、規制対象の製品に組み込まれるものが2028年8月2日です。延びたのは一部であり、既に適用が始まっている部分はそのまま効いています。「延期された」という一言だけが社内に伝わると、動いている義務まで止まって見えます。この後ろ倒しは2026年5月7日の政治合意を経て決まったもので、期日が動いたこと自体がまだ新しい出来事です。社内の資料が古い期日のまま残っていないかを、この機会に確かめておきます。

物差しとして使うときの注意は一つです。及ぶ範囲に入っていない事業にまで当てないこと。全社の点検票に欧州の区分を持ち込むと、当たらない設問が大半を占め、現場は答えるのをやめます。欧州向けの事業だけを別の欄で見る、という切り出し方をします。自社のどの活動が範囲に入るのかという判定は、この記事とは別に確かめる必要があります。

判断軸1:その結果を、誰に見せるのか

ここから選び方に入ります。最初に効く軸は、点検の結果を誰に見せるのかです。社内の経営会議と監査役までなのか、社外の取引先や親会社、あるいは入札の相手まで出すのか。この一行が決まらないうちは、6つの候補のどれを選んでも決め手がありません。

見せる相手が社内だけなら、行政の指針の別添にあるチェックリストが最短です。用語が日本語で、説明する相手も同じ文書を開けます。社外に出すなら、相手が読める形、つまり条項番号で指し示せる規格の側に寄せます「当社の基準で確認しました」は、社内では通っても社外では根拠になりません。相手が確かめようがないからです。

見せる相手が海外にいる場合は、もう一段だけ絞り込めます。行政の指針は掲載ページに英語版がそろえてあるため、海外の親会社へ自社の点検の枠組みを説明するだけなら、指針のままでも会話は成り立ちます。ただし相手が自社の基準と条項ごとに突き合わせたいと言ってきたときは、国際規格の条項番号のほうが速く通じます。相手が何と突き合わせるつもりなのかを先に確かめておくと、途中で物差しを取り替える手戻りを防げます。この確認は、担当者どうしのやり取りの一往復で済むことがほとんどです。

よくあるつまずきは、見せる相手が決まらないうちに認証の見積もりを取り始めることです。範囲が決まっていないので、見積もりは必ず広く出ます。まず「どの文書を、誰に、いつ出すのか」を一行で書きます。この一行が、後の範囲と費用をほとんど決めてしまいます。順番を守るだけで、選択肢は自然に二つか三つまで減ります。

判断軸2:認証を取るのか、自分で宣言するのか

二つ目の軸は、第三者に見てもらうかどうかです。認証は、審査を受けた結果を外に出せる形になりますが、費用と期間がかかり、一度決めた範囲を維持し続ける負担が毎年発生します。自己宣言は、規格や指針の条項を物差しに借りて自分で点検し、結果を自分の言葉で示す形です。

決め方は、意外と単純です。相手が認証の名前や番号を要件として書いているときだけ、認証が要ります。入札の要件や、親会社の調達方針にそう書かれている場合です。それ以外は自己宣言から始めて、必要になった時点で認証に進むほうが、範囲を絞ったまま最初の1周を終えられます。認証は、始め方ではなく到達点として置きます。

注意点として、自己宣言でも根拠は出せる状態にしておきます。「規格に沿って運用しています」と書いた以上、どの条項に何が対応しているのかを示せなければ、書いていないのと変わりません。なお、規格の本文をそのまま社内文書に書き写せる範囲には制限があるため、条項の番号と自社の言葉で対応づける形にします。ここは引用の線引きの話として、別に確かめておくと安全です。

判断軸3:求められて始めるのか、自発で始めるのか

三つ目の軸は、始まり方です。誰かに求められて始める監査と、自発で始める監査では、主にすべき物差しが変わります。求められて始めた場合、物差しは相手の側に既にあります。自発の場合は、自社の用途の危うさから逆算するしかありません。始まり方ごとに、最初に手を付けるものを整理します。

始まり方決め方の起点主にする物差し最初に作るもの
取引先の確認票が届いた相手が書いた設問設問に近い枠組み設問と自社の運用の対応表
親会社やグループの方針グループの規程グループが依拠している基準自社との差分の一覧
入札や調達の要件要件に書かれた認証の名前指定された規格取得の範囲と期限の計画
自発(事故を防ぎたい)自社の用途の危うさ行政の指針用途の一覧と点検票

表の一番上、取引先の確認票が届いたときは、いきなり規格を買いに行かず、届いた設問を分解するところから始めます。設問の多くは認証の有無ではなく、運用の事実を聞いています。設問と自社の運用の対応表を作れば、その時点で物差しの原型ができあがります。相手の設問は、そのまま「相手にとっての合格の線」だからです。

自発で始める場合は、逆に用途の一覧を先に作らないと範囲が決まりません。どの業務でどのAIを使い、その出力が誰に届くのか。これが並んで初めて、指針のどの章が自社に当たるのかが見えます。始まり方によって最初に作るものが違う、という一点を押さえておくと、着手の順番で迷わなくなります。

重なる部分と、重ならない部分。全部当てると現場が止まる

候補を並べてみると、言っていることの大半は重なります。どこで何に使っているかを一覧にする、責任者を決める、人が確認する工程を置く、記録を残す、定期的に見直す。この5つは、どの候補も表現を変えて同じことを求めます。重なるということは、一度作れば複数の物差しに同時に答えられるということです。

重ならないのは、外側の部分です。認証が要るかどうか、危険度をどう区切るか、対象にする組織の範囲をどこで切るか、そして更新の速さ。重なる部分が中身で、重ならない部分が手続きだと整理すると、どこを共通化できるかが見えます。共通化できるのは中身のほうで、手続きは候補ごとに別々に残ると考えておきます。

ここを分けずに全部を当てると、同じことを別の言い方で4回聞く点検票ができあがります。現場は同じ証拠を4回出すことになり、2周目からは協力が得られなくなります。重なる部分は一度だけ聞く形にまとめ、重ならない部分だけを候補ごとに足す。これが、全部当てないための具体的なやり方です。設問の数は、減らすほど回収率が上がります。

主を1本決めて、残りは参照に回す

ここまでの三つの軸で、主にする物差しを1本に絞ります。並列に2本立てると、点検票が重複するだけでなく、結果の書き方まで二重になります。主を決めたうえで、他の候補からは「主に無い項目」だけを拾って足す形にします。手順にすると、次の5つになります。

STEP1
見せる相手と、出す文書を一行で書く

「どの文書を、誰に、いつ出すのか」を先に確定させます。ここが空欄だと、以降の判断がすべて宙に浮きます。

STEP2
主にする物差しを1本だけ決め、版と日付まで残す

指針なら版数と公表日、規格なら規格番号を書き写します。後から「どれのことか」を復元できる状態にします。

STEP3
主の項目を、自社の規程と手順の条項に対応づける

欄は「基準の条項」「自社の文書と条項」「証拠の置き場所」「空欄の理由」の4つにします。

STEP4
従の候補から、主に無い項目だけを拾って足す

重なる項目は足しません。足した項目には、どの候補から来たのかを併記しておきます。

STEP5
次に見直す引き金を決める

版の改定、用途の追加、取引先からの新しい要求。この3つのどれかが起きたら見直す、と先に書いておきます。

工程3の対応づけでは、空欄を無理に埋めようとせず、空欄のまま理由を書くのが要点です。埋めきれない欄があること自体は問題ではなく、埋まっていないことに誰も気づいていない状態が問題だからです。空欄の理由を書いた表は、そのまま翌年の宿題の一覧になります

なお、対応づけた内容を既存の規程に足すのか、AI専用の文書を新しく立てるのかは、改定の速さと決裁の重さで決まります。半年で書き換わる内容を重い決裁の文書に入れると、次の改定で止まります。ここは文書の置き場所の設計という別の検討になるため、物差しを決める段階では「どの文書に対応づけたか」を記録するところまでで先に進みます。

やってはいけない選び方

選び方の失敗には、はっきりした型があります。いずれも、最初の1周を回し切れなくなる原因になります。

  • 厳しそうだという理由で、一番重い候補を選ぶ:範囲が広がり、点検が1年で1周しない
  • 版と日付を書かずに「指針に準拠」とだけ書く:翌年に基準が入れ替わり、前年の結果と比べられない
  • 取引先が何を求めているか確かめる前に、認証の見積もりを取る:要らない範囲まで含めた金額が出る
  • 海外の枠組みだけを物差しにする:国内の指針と用語がずれ、社内の誰にも説明できなくなる
  • 候補を全部当てて「網羅した」とする:同じ証拠を何度も出させ、現場が点検に付き合わなくなる

この中でいちばん多いのが、最後の「網羅した」です。候補を全部当てた点検票は、見た目には隙がありません。しかし1周が終わらず、終わらないので比較する対象ができず、翌年に何が良くなったのかを言えません。物差しは、絞ったほうが結果を出せます。厚い点検票を作った達成感と、点検が回っていることは別物だ、と覚えておきます。

AIに任せてよい工程と、人が決める工程

物差しを決める作業には、機械的な突き合わせが大量に含まれます。基準の条項と自社の文書を並べて対応表の下書きを作る、版が変わったときの差分を抜き出す、複数の候補にまたがる重複した設問を洗い出す、用語のばらつきを指摘する——このあたりはAIが速く、人がやると数日かかるものが半日で形になります。

一方で、どの基準に依拠するかの決定は人の仕事です。この決定は、見せる相手、費用、社内の体制という、どの文書にも書かれていない事情で決まります。AIの出力には、それらが入っていません。依拠の決定をAIの出力を根拠にして書くと、後から誰も理由を説明できなくなります。決めた人と決めた日を、決定そのものと一緒に残します。

  • どの基準に依拠するかの決定は、AIの出力を根拠にしない。決めた人と決めた日を残す
  • 対応表の下書きを作らせたら、条項の番号と原文の場所を必ず書かせ、原典で一行ずつ確かめる
  • 版が変わったときの差分の抽出はAIが速いが、変わった意味の判断は人が行う
  • 監査の意見そのものをAIに書かせない。証拠の要約と食い違いの指摘までにとどめる

よくある質問

物差しは1つに絞らないといけませんか

主にするものを1本に絞り、他は参照に回す形をおすすめします。並列に2本立てると、点検票の設問が重複し、結果をどちらの形式で書くかで毎回迷うことになります。従の候補からは、主に含まれていない項目だけを足せば、抜けは防げます。

認証がないと、取引先に説明できませんか

取引先から届く確認票の多くは、認証の番号ではなく運用の事実を聞いています。根拠を示せる状態なら、自己宣言でも通ることは珍しくありません。ただし、入札や調達の要件に認証の名前が書かれている場合は別で、そこは認証でしか埋められません。

指針の版が変わるたびに、やり直しになりますか

やり直しにはなりません。依拠した版を記録しておけば、次の版との差分だけを見れば済みます。むしろ版を書かずに「準拠」とだけ残しているほうが、変更点を特定できず、結果として一から作り直すことになります。見直しの引き金を先に決めておくのが近道です。

欧州の規則は、国内だけの事業にも当てておくべきですか

及ぶ範囲に入らないのであれば、物差しにはしません。当たらない設問が点検票の大半を占めると、現場の回答率が落ちます。ただし、生成した内容であることを示すという考え方は国内の指針とも重なるため、その部分だけを参考にするという使い方はできます。

まとめ

AIの監査で依拠する物差しを選ぶ要点は、合否の線は法律の側に無いと前提を置いたうえで、誰に見せるのかから逆算して主を1本に絞ることです。候補は6つあり、性格はそれぞれ違います。第三者の認証が要るのは相手が要件に書いているときだけで、それ以外は自己宣言から始められます。重なる部分は一度だけ聞く形にまとめ、重ならない部分だけを足す。まずは「どの文書を、誰に、いつ出すのか」を一行で書くところから始めてみてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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