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購買部が仕入先の工場を訪問したときの写真とメモから、Gemini で訪問報告の下書きと気付き事項の一覧を作り、前回の宿題の確認状況と並べる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

仕入先の工場を訪問したときに撮った写真と面談のメモから、Gemini で訪問報告書の下書きを作ります。気付き事項は写真の番号とメモの行を根拠に一覧にし、前回の宿題が今回確かめられたかを並べます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
連携・自動化
Google Apps Script/Python
対象業界
商社/小売/製造
対象部門
品質管理/購買
対象業務
書類作成/要約
主な課題
属人化している/引き継ぎができていない/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
要約
主な効果
品質標準化/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
既存ツールのみ(小)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
24h/月
想定削減
60%
年間削減
432h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 訪問から戻り、携帯電話の写真をドライブの仕入先のフォルダに移す
  2. 写真を1枚ずつ見返し、報告書に載せるものを選ぶ
  3. メモを読み返し、面談の内容を報告書の欄に書き起こす
  4. 写真を見ながら、気付き事項を書く
  5. 前回の報告書を開き、前回の宿題が今回どうだったかを思い出して書く
  6. 報告書を品質管理部に回す
導入後(After)
  1. 人訪問の当日、写真をドライブの仕入先のフォルダに移し、仕入先の図面・他社の製品・人の顔が写った写真を外す
  2. 人写真のファイル名を「工程の順の番号+場所」に変え、メモを1つのテキストにまとめる
  3. 人Gemini アプリの Gem「仕入先訪問報告」で新しいチャットを開き、前回の宿題の一覧とメモを貼り、写真を工程ごとに分けて渡す
  4. 自動Gem の指示に従い、Gemini が写真とメモを観点ごとに整理する
  5. 自動報告書の下書き、気付き事項の一覧(根拠付き)、前回の宿題の確認状況を返す
  6. 人購買担当が気付き事項を写真と見比べ、根拠の無いものを消し、評価を直す
  7. 人報告書の型の Google ドキュメントに貼り、品質管理部に回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 訪問から戻り、携帯電話の写真をドライブの仕入先のフォルダに移す
  2. 写真を1枚ずつ見返し、報告書に載せるものを選ぶ
  3. メモを読み返し、面談の内容を報告書の欄に書き起こす
  4. 写真を見ながら、気付き事項を書く
  5. 前回の報告書を開き、前回の宿題が今回どうだったかを思い出して書く
  6. 報告書を品質管理部に回す

(a)報告書づくりに半日近くかかる。 写真の見返しと選別、メモの書き起こし、気付き事項の文章化。訪問そのものより、報告書のほうが時間がかかると感じている担当もいます。訪問が続く週は報告書がたまり、書くころには現場の記憶が薄れています。

(b)見る観点と書き方が担当者ごとに違う。 ある担当は保管と表示を細かく見て、ある担当は設備と人の配置を見ます。同じ仕入先でも、誰が訪問したかで報告書の中身が変わり、 前回と今回を比べられません。

(c)写真と気付き事項が結び付いていない。 報告書には「保管が乱雑」と書いてあるのに、どの写真のことか分からない。品質管理部が気付き事項を読んでも、写真を探し直すことになります。

(d)前回の宿題が途切れる。 5番目は、前回の報告書を開いて思い出す作業です。担当が替わると、前回の担当が頼んだ宿題を、今回の担当が確かめずに帰ってくることがあります。

(e)写真の名前が「IMG_0123」のまま残る。 携帯電話の写真は撮った順の番号のままフォルダに移され、半年後に次の担当が見ても、どの工程の写真か分かりません。 報告書と写真の両方を見比べないと、前回の現場の様子がつかめない状態です。

  1. 【人】 訪問の当日、写真をドライブの仕入先のフォルダに移し、仕入先の図面・他社の製品・人の顔が写った写真を外す
  2. 【人】 写真のファイル名を「工程の順の番号+場所」に変え、メモを1つのテキストにまとめる
  3. 【人】 Gemini アプリの Gem「仕入先訪問報告」で新しいチャットを開き、前回の宿題の一覧とメモを貼り、写真を工程ごとに分けて渡す
  4. 【自動】 Gem の指示に従い、Gemini が写真とメモを観点ごとに整理する
  5. 【自動】 報告書の下書き、気付き事項の一覧(根拠付き)、前回の宿題の確認状況を返す
  6. 【人】 購買担当が気付き事項を写真と見比べ、根拠の無いものを消し、評価を直す
  7. 【人】 報告書の型の Google ドキュメントに貼り、品質管理部に回す

4番目と5番目で、写真の2度見がなくなるのが分かれ目です。 写真を選び、気付き事項に結び付ける作業が、Gemini が結び付けた一覧を確かめる作業に変わります。

6番目は必ず人が行います。 写真に写っているのは一瞬の状態で、その日たまたま片づいていなかっただけか、いつもそうなのかは、現場にいた人にしか分かりません。 評価を決めるのは購買担当です。

02今回想定するシステム構成

構成図
訪問の写真(20〜40枚)+ 面談のメモ + 前回の報告書の宿題の一覧
   │  購買担当が写真を選り分け、工程の順に名前を付ける
   ▼【トリガー】訪問から戻った当日(遅くとも翌営業日)
Gemini アプリ(Google Workspace)の Gem「仕入先訪問報告」
   │  Gem の指示:報告書の型、観点表、してはいけないこと
   │  Knowledge:報告書の型、気付き事項の観点表、書き方の例
   ├──▶ 報告書の下書き(型の欄ごと)
   ├──▶ 気付き事項の一覧(観点・内容・根拠の写真とメモ・区分)
   └──▶ 前回の宿題の確認状況(確認できた/写真では確認できず/記載なし)
   ▼
【購買担当が写真と見比べて直す】→ Google ドキュメントの報告書 → 品質管理部
役割想定する製品代替候補
処理Gemini(Google Workspace の Gemini アプリと Gem)Microsoft Copilot、ChatGPT、Claude
連携Google Apps Script(半自動化の段階で、ドライブの写真を Gemini API に渡す)Python
保管Google ドライブ(仕入先ごとのフォルダ)、Google ドキュメント(報告書)社内のファイルサーバー

新しく足すものはありません。 Google Workspace の Gemini アプリが組織で使えることが前提です。写真の撮り方と、報告書の型と回し方は変えず、写真を見て書く工程だけを Gem に移します。

Gem は、指示と参考のファイルを保存しておける Gemini アプリの機能です。 公式の案内では、Gem は名前と指示を入れて作り、Knowledge の欄に端末やドライブのファイルを足せるとされています。報告書の型と観点表を Knowledge に置けば、6名の購買担当が、同じ型・同じ観点で下書きを受け取れます。 作った Gem は共有でき、ウェブの Gemini アプリで作った Gem は Google Workspace のサイドパネルにも出るとされています。

Gem の扱いは変わりつつあります。 公式の案内では、2026年11月から個人の Google アカウントの Gem はスキルへ移るとされ、職場や学校のアカウントについては書かれていません。組織のアカウントで使い続けられるかを、管理者が案内を見て確かめておきます。 移った場合も、指示と Knowledge のファイルを手元に残しておけば作り直せます。

組織の Google Workspace で使う理由は、仕入先の工場の写真を扱うためです。 公式の Privacy Hub では、対象のエディションの Google Workspace で、Gemini とのやり取りは組織の中にとどまり、許可なく組織の外に共有されず、許可なく人の確認や組織の外での生成AIのモデルの学習に使われないとされています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

訪問から戻った当日を起点にします。 遅くとも翌営業日です。写真が何を写したものかは、現場の記憶がある間にしか正しく名前を付けられません。 訪問が続く週も、写真の選り分けと名前付けだけは当日に済ませます。

Gem に渡すのは、写真の選り分けが済んでからです。 選り分けの前に渡すと、外すべき写真が Gemini とのやり取りに入ります。1番目と2番目の人の作業が終わったことを、フォルダの名前に「済」を付けて示す決まりにします。

前回の宿題の一覧は、訪問の前日に用意しておきます。 前回の報告書の「合意事項と宿題」の欄を写し、訪問の当日に現場で確かめる項目として持っていきます。現場で写真を撮るときに、宿題の項目を意識して撮れるので、照合の精度が上がります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
訪問の写真工程・保管場所・出荷場・掲示物の写真(選り分け後、20〜30枚)ドライブの仕入先のフォルダ
写真の名前「03_塗装前の検査台」のように、工程の順の番号と場所購買担当が付ける
面談のメモ面談者の役職、話した内容、仕入先から聞いたこと、合意したこと手帳か携帯電話のメモを1つのテキストに
前回の宿題の一覧前回の報告書の「合意事項と宿題」の欄前回の報告書
報告書の型欄の並び、各欄に書くこと、字数の目安Knowledge
気付き事項の観点表見る観点と、良い点・懸念・要確認の例Knowledge
書き方の例過去の良い報告書から抜いた気付き事項の書き方Knowledge

質を決めるのは、気付き事項の観点表です。 観点表が無ければ、Gemini は写真に写ったものを何でも書きます。観点表で見る場所を決めれば、担当者ごとの違い(第3章の(b))も同時にそろいます。

観点写真で見ることメモで補うこと
5S(整理・整頓・清掃)通路の物、床の状態、工具の置き方仕入先が取り組んでいる活動
材料・仕掛品・製品の識別置き場の表示、ラベル、品番の掲示識別の決まり
不適合品の区分置き場の区画、赤札などの表示不適合品の処置の流れ
計測器の管理校正のラベル、置き場校正の周期
作業の手順の掲示作業台の手順書、限度見本改訂の決まり
保管と梱包当社の部品の保管、荷姿、湿気・ほこりへの備え出荷前の検査
安全保護具、機械の囲い、表示-
前回の宿題宿題にかかわる場所仕入先の説明

観点表は、自社の品質管理部と一緒に作ります。 何を良い点とし、何を懸念とするかは、自社が仕入先に求めている品質の決まりで決まるからです。

Step3

データの取得方法を決める

写真は、Gemini アプリに直接アップロードします。 公式の案内では、同じプロンプトでアップロードできるファイルは10個まで(利用できる場合)で、動画以外のファイルは1つ100MBまでとされています。訪問の写真は10枚を超えるので、工程ごとに分けて、同じチャットで続けて渡します。

回渡すもの頼むこと
1回目前回の宿題の一覧とメモ(テキストで貼る)、受け入れから加工までの写真(9枚まで)写真ごとに観点と見えることを書き出す
2回目検査から出荷までの写真(9枚まで)同上
3回目保管場所と掲示物の写真(9枚まで)同上
最後写真は渡さない報告書の下書き、気付き事項の一覧、宿題の確認状況をまとめる

写真ごとの書き出しを先にさせ、まとめを最後にするのは、根拠を残すためです。 いきなり報告書を頼むと、どの写真から書いたかが分からない文になります。書き出しの段階で写真の名前と見えることを並べさせ、まとめではその書き出しだけを使わせます。

ドライブから写真を足すこともできますが、設定が要ります。 公式の案内では、ドライブのファイルを使うには、組織の管理者が Gemini のアプリへのアクセスを有効にしている必要があるなどの条件があります。使えない組織では、端末からアップロードします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 写真を選り分ける … 仕入先の図面、他社の製品、人の顔、パソコンの画面が写った写真を外します。外せない場合は、その部分を切り取ります
  2. 写真に名前を付ける … 「工程の順の番号+場所」にします。Gemini が一覧で根拠を示すときに、この名前を使います
  3. 写真の向きを直す … 横倒しの写真は回転させます。Gemini API の公式の案内でも、画像の向きが正しいかを確かめ、ぶれの無い画像を使うよう勧めています
  4. メモを1つのテキストにまとめる … 手帳のメモは打ち直します。聞いたことと自分が思ったことを分けて書きます(「聞いた:」「所感:」)
  5. 前回の宿題に番号を振る … 「前回1」「前回2」と振り、照合の結果をその番号で返させます

1番目が、この構成でいちばん大事な前処理です。 仕入先との取り決めで撮影を認められた範囲でも、図面や他社の製品が背景に写り込むことがあります。 Gemini とのやり取りが組織の中にとどまるとしても、仕入先の秘密を自社の外へ出さない約束は、写真を渡す前に守ります。

4番目の「聞いた」と「所感」の区別も効きます。 区別しないと、購買担当の所感が「仕入先の説明」として報告書に載ります。根拠の欄で、メモのどちらの行かを示させます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、写真ごとの書き出し、報告書の下書き、気付き事項の一覧、宿題の照合の4つです。

させること中身
写真ごとの書き出し写真の名前、当てはまる観点、写真に見えること(見えないことは書かない)
報告書の下書き型の欄ごとに、書き出しとメモから書く
気付き事項の一覧観点、内容、区分(良い点・懸念・要確認)、根拠(写真の名前、メモの行)
前回の宿題の照合宿題の番号ごとに、確認できた/写真では確認できず/記載なし と根拠

区分の「要確認」を必ず使わせます。 写真だけでは良いとも悪いとも言えないもの、たとえば「床に部品箱が置かれている」は、作業中の一時置きかもしれません。決めきれないものを懸念に寄せず、要確認として購買担当に返させます。

させないこと理由
写真に写っていないことを書く「清掃が行き届いていない」などを全体の評価として書かない
原因を推し量る「人手不足のため」などはメモに無ければ書かない
仕入先の評価点を付ける評価は購買と品質管理が決める
是正を求める文を書く求めるかは人が決める
宿題を「確認できた」と寄せる写真に写っていなければ「写真では確認できず」

5行目がいちばん起きやすい失敗です。 前回の宿題が「不適合品の置き場に表示を付ける」で、今回の写真に赤い箱が写っていると、表示が読めなくても「確認できた」と書いてきます。 根拠の写真で、表示そのものが読めるかを人が確かめます。

Step6

指示内容を固定する

Gem の指示(Gem「仕入先訪問報告」に保存):

あなたは製造業の購買部で、仕入先の工場を訪問した後に
訪問報告書の下書きを作る担当です。

【使うもの】
- Knowledge の「報告書の型」の欄の並びで書いてください。
- Knowledge の「気付き事項の観点表」の観点だけで気付き事項を拾ってください。
- 写真の名前(例:03_塗装前の検査台)を、根拠として必ず書いてください。

【写真を渡されたとき】
写真ごとに、写真の名前|当てはまる観点|写真に見えること を書き出してください。
見えないこと、写真の外のことは書かないでください。

【「まとめて」と言われたとき(この順で)】
1. 報告書の下書き(型の欄ごと)
2. 気付き事項の一覧:番号|観点|内容|区分|根拠(写真の名前/メモの行)
   区分は 良い点/懸念/要確認 のいずれかです。
3. 前回の宿題の照合:宿題の番号|状況|根拠
   状況は 確認できた/写真では確認できず/記載なし のいずれかです。

【厳守事項】
- 根拠の無い気付き事項を書かないでください。根拠は写真の名前かメモの行だけです。
- 写真だけで良いとも悪いとも決められないものは、要確認にしてください。
- 原因を推し量らないでください。メモの「聞いた:」の行にある説明だけを使ってください。
- メモの「所感:」の行は、仕入先の説明として書かないでください。
- 仕入先の評価点や、取引についての意見を書かないでください。
- 是正を求める文を書かないでください。
- 宿題の表示や掲示が写真で読めなければ「写真では確認できず」にしてください。
- 写真に人の顔や図面が写っていたら、その写真の書き出しを止めて知らせてください。

チャットの1回目に貼る文:

仕入先:〔A社〕(塗装)/訪問日:2026-11-12/面談者:工場長、品質の担当
【前回の宿題】
前回1:不適合品の置き場に表示を付ける
前回2:塗装前の検査の限度見本を新しくする
【メモ】
聞いた:塗装ラインの乾燥炉を9月に入れ替えた
聞いた:限度見本は10月に作り直した
所感:出荷場の通路が狭く感じた
(このあとに、受け入れから加工までの写真9枚)

指示を Gem とチャットに分けるのは、変わるものと変わらないものを分けるためです。 型と観点と禁止事項は Gem の指示に一度だけ書き、訪問ごとに変わる宿題とメモと写真だけをチャットに渡します。 6名の誰が使っても、同じ型の下書きが返ります。

「所感」の行を仕入先の説明として書かせないのは、報告書が仕入先の評価の材料になるからです。 「出荷場の通路が狭い」は購買担当の感想で、仕入先がそう説明したわけではありません。 混ざると、品質管理部は仕入先の認めた事実として読みます。

Step7

出力形式を固定する

報告書の下書きと2つの一覧を、決まった順と列で受け取ります。

【1. 報告書の下書き】
訪問の目的:定期の訪問(四半期)。塗装工程と保管の状態の確認、前回の宿題の確認
見た工程:受け入れ、前処理、塗装、乾燥、検査、梱包、出荷
(以下、型の欄ごと)

【2. 気付き事項の一覧】
番号|観点|内容|区分|根拠
1|作業の手順の掲示|検査台に限度見本と作業手順書が掲示されている|良い点|05_検査台、メモ「聞いた:限度見本は10月に作り直した」
2|不適合品の区分|赤い箱が置かれているが、表示の文字が読めない|要確認|08_検査台の横
3|保管と梱包|当社の部品の箱が床に直に置かれている|要確認|12_出荷場
4|計測器の管理|膜厚計に校正のラベルが貼られている|良い点|06_膜厚計

【3. 前回の宿題の照合】
宿題|状況|根拠
前回1|写真では確認できず|08_検査台の横(赤い箱はあるが表示が読めない)
前回2|確認できた|05_検査台、メモ「聞いた:限度見本は10月に作り直した」

一覧に分ける理由は3つあります。

1つ目は、根拠で確かめられることです。 気付き事項の一覧の右端に写真の名前があるので、購買担当は写真を1枚ずつ見返す代わりに、根拠の写真だけを開けば済みます。 品質管理部も、気付き事項からすぐ写真に行けます。

2つ目は、宿題の行方が残ることです。 「写真では確認できず」が出た宿題は、次回の訪問の宿題の一覧に残ります。 担当が替わっても、宿題が報告書から報告書へ引き継がれます。

3つ目は、仕入先ごとの変化が数えられることです。 観点ごとの懸念と要確認の件数を報告書ごとに数えると、同じ仕入先で同じ観点の懸念が続いているかが見えます。

半自動化の段階では、Gemini API の構造化出力で受けます。 公式の案内では、Interactions API の response_format に JSON のスキーマを渡す形が示されています。区分と状況は enum で固定し、一覧をスプレッドシートにそのまま書き出せる形にします。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Google ドライブ購買担当が写真を移し、選り分けて名前を付ける仕入先ごとのフォルダ
Gemini アプリの Gem画面の操作書き出し・下書き・一覧を受け取る
Google ドキュメント購買担当が下書きを型に貼る報告書の正本
品質管理部ドキュメントの共有報告書を回す
訪問の計画表購買担当が次回の宿題を書く「写真では確認できず」の宿題を次回へ

最小構成では、どこにも自動では書き込みません。 月30件なら、画面の操作で回ります。報告書の正本は、購買担当が確かめた後の Google ドキュメントです。

半自動化では、Google Apps Script でドライブの写真を Gemini API に渡します。 公式の案内では、1回の依頼に入れられる画像は3,600枚までで、画像をそのまま埋め込む場合は依頼全体が20MBまで、大きいファイルや同じ画像を繰り返し使う場合は Files API を使うとされています。訪問の写真は1回で20MBを超えやすいので、Files API でアップロードしてから渡します。Interactions API は既定でやり取りを保存し、有料の枠では55日間保持するとされているため、store=false を付けて保存しないようにします。

Step9

人が確認する

  1. 気付き事項を根拠の写真と見比べる … 内容が写真に本当に写っているかを見ます。根拠の無いものと、写真と食い違うものを消します
  2. 要確認を決める … 現場にいた記憶で、良い点・懸念のどちらかに決めるか、要確認のまま次回に確かめるかを決めます
  3. 宿題の照合を確かめる … 「確認できた」の根拠の写真で、表示や掲示そのものが読めるかを見ます
  4. 報告書の下書きを整える … メモの「所感」が仕入先の説明として入っていないかを読みます
  5. 品質管理部に回す … 懸念がある報告書は、品質管理部の担当に一言添えて回します

2番目が、この構成でいちばん人の判断が要る工程です。 写真の一瞬の状態を、いつもの状態か、その日だけの状態かで判断するのは、現場で仕入先と話した購買担当にしかできません。

目標は、1件48分です。 写真の選り分けと名前付けに15分、Gem への受け渡しに5分、気付き事項と宿題の確認に22分、下書きの整えと回付に6分を見込みます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
写真に人の顔・図面が写っていた書き出しを止めて知らせる。写真を外すか切り取ってから渡し直す
撮影が認められず写真が無い写真の欄を空にし、メモだけで下書きを作る。気付き事項の根拠はメモの行だけ
写真が暗い・ぶれている書き出しで「見えない」と返させ、根拠に使わない
前回の報告書が見つからない宿題の照合をせず、「前回の宿題の一覧なし」と報告書に書く
1回の訪問で写真が40枚を超える工程ごとの回を増やす。選り分けで30枚以内に絞るのが先
仕入先が改善の途中を説明したメモの「聞いた:」に書けば、宿題の照合の根拠に使える
Gem がスキルに移り、指示が見当たらない手元に残した指示と Knowledge のファイルで作り直す
気付き事項に是正を求めるべき重大なものがある報告書を待たず、購買担当が品質管理部に当日のうちに連絡する

最後の行は、この構成の外の判断です。 報告書は、重大な懸念を伝える手段としては遅すぎます。 現場で見た時点で、品質管理部に電話で伝えます。

Step11

記録を残す

  • 訪問ごとに、Gem に渡した写真(選り分け後)、メモ、前回の宿題の一覧
  • Gemini が返した書き出し・下書き・一覧と、購買担当が消した・直した気付き事項の記録
  • 報告書の正本(Google ドキュメント)と、品質管理部に回した日
  • 宿題の照合の結果と、次回に回した宿題

2つ目の記録が、観点表を育てます。 消された気付き事項が同じ観点に偏っていれば、その観点の書き方が観点表で足りていないということです。

Gemini アプリのチャットは、報告書の正本にしません。 報告書は Google ドキュメントに、根拠の写真はドライブの仕入先のフォルダに残します。チャットの履歴の扱いは組織の設定で変わるので、正本はチャットの外に置くと決めておきます。半年後に同じ仕入先を訪問する担当が見るのは、ドキュメントとフォルダです。

04実装レベルの3段階

最小構成:Gem に写真とメモを工程ごとに渡し、下書きと一覧を受け取る / 写真の整理と下書き
半自動化:上記+Google Apps Script がドライブの「済」のフォルダを見つけ、Gemini API に写真とメモを渡し、一覧をスプレッドシートに書き出す / 受け渡しと一覧の記録
本格構成:上記+仕入先ごとの一覧を積み上げ、観点ごとの懸念の推移を品質管理部の仕入先の評価の表に返す / 仕入先の評価の材料づくり

本記事の想定は半自動化です。 1件120分が48分になるのはこの段階で、写真の受け渡しと一覧の書き写しまでが自動になるためです。最小構成でも写真の2度見はなくなりますが、工程ごとに分けて渡す手間が残ります。 半自動化でも、写真の選り分けと名前付けは人が行います。 外すべき写真の判断と、写真が何を写したかの名前は、現場にいた人にしか付けられません。 スクリプトが動くのは、人が「済」を付けたフォルダだけにします。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
6 名
月間件数
30 件
1件あたり現在時間
120 分
1件あたり導入後時間
48 分
現在  30件 × 120分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 30件 × 48分 ÷ 60 = 24 時間/月
月間削減時間
36h
削減率
60%
年間削減時間
432h
年間金額換算(時間単価4,000円)
173万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 部品・材料・包装材などを複数の仕入先に外注し、購買担当が仕入先の工場を定期に訪問して工程や保管の状態を確かめている製造業。訪問のたびに数十枚の写真を撮るが、報告書にまとめるのに半日近くかかり、報告書の書き方と見る観点が担当者ごとに違う場合。前回の訪問で頼んだ改善が今回どうなったかが、担当の交代で追えなくなる場合。Google Workspace を使っていて、Gemini アプリを組織で使える場合。プライベートブランドの製造委託先を訪問する商社・小売の商品部にも同じ形で使える。
向いていない
  1. 仕入先の訪問が年に数回で、報告書の作成が負担になっていない場合。仕入先との取り決めで工場内の撮影が認められていない場合(写真が無いと、この構成の大半が使えない)。仕入先の監査を第三者の監査機関に任せており、購買担当が訪問の報告書を書かない場合。なお、仕入先の認定・取引の継続の判断と、品質上の是正を求めるかどうかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去3か月の訪問から5件を選び、当時の写真・メモ・報告書と、その前回の報告書を用意する
  2. 品質管理部と、気付き事項の観点表の最初の版を作る(8観点ほど)
  3. Gemini アプリで Gem「仕入先訪問報告」を作り、報告書の型と観点表を Knowledge に置き、第7章の指示を入れる
  4. 5件の写真を選り分けて名前を付け、工程ごとに渡して下書きと一覧を作らせる
  5. 出てきた下書きと一覧を、当時の報告書と見比べる
出てきた内容判断
当時の気付き事項がほぼ拾われ、根拠の写真が合っている6名で使い始める
当時の報告書に無い気付き事項が、根拠付きで出た当時の見落としか、観点の違い。 品質管理部と扱いを決める
写真に写っていないことを書いた指示の禁止を強め、書き出しの段階を省いていないか見る
宿題を「確認できた」と寄せた表示が読めるかを根拠にするよう指示を足す

2行目が出たら、観点表が効いているということです。 担当者ごとに違っていた見る観点が、観点表でそろったことで、同じ写真から別の気付き事項が出たと読めます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
写真に写っていないことを書く書き出しを先にさせ、まとめは書き出しだけから作らせる
宿題を「確認できた」と寄せる表示が読めるかを根拠にさせ、人が根拠の写真を開く
所感が仕入先の説明として載るメモで「聞いた」と「所感」を分ける
写真が10枚を超えて一度に渡せない工程ごとに9枚までに分けて、同じチャットで続けて渡す
図面や人の顔が写った写真を渡してしまう選り分けを先に済ませ、「済」を付けたフォルダだけを使う
写真の名前が「IMG_0123」のまま名前付けを当日に行う決まりにする
一瞬の状態を懸念として書く決めきれないものは要確認にさせ、人が決める
Gem の扱いが変わる指示と Knowledge のファイルを手元に残す
半自動化で依頼が20MBを超えるFiles API でアップロードしてから渡す
半自動化でやり取りが保存されるstore=false を付ける

上の3行が、報告書の信用を決めます。 写っていない気付き事項、寄せた宿題、混ざった所感は、どれも文章としては自然なので、品質管理部には区別がつきません。 根拠の欄と人の確認の両方で防ぎます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 仕入先の工場の写真(工程・設備・保管・掲示物)、面談のメモ、前回の宿題です。仕入先の製造の方法や設備は、仕入先の秘密に当たりえます。 写真には仕入先の従業員が写り込むこともあります。

  1. 組織の Google Workspace で使う … 公式の Privacy Hub では、対象のエディションで、やり取りは組織の中にとどまり、許可なく組織の外での生成AIのモデルの学習に使われないとされています。仕入先の写真を個人のアカウントの Gemini に渡さないでください
  2. 仕入先との取り決めを先に確かめる … 撮影してよい範囲、写真を社内でどう使ってよいかを、取引の契約や秘密保持の取り決めで確かめます。 生成AIのサービスに渡すことが取り決めに触れないかも、法務と確かめます
  3. 写真を選り分けてから渡す … 図面、他社の製品、人の顔、パソコンの画面は外します。外せない写真は渡しません
  4. 評価と是正の判断をAIにさせない … 仕入先の評価点、取引の継続、是正を求めるかは、購買と品質管理の担当が決めます
  5. 半自動化では保存の設定を確かめる … Gemini API の Interactions API は既定でやり取りを保存するとされているので、store=false を付けます。API の利用の条件は、組織の契約で確かめます

誤りが起きた場合のリスクは、写っていないことが仕入先の懸念として記録されることと、仕入先の秘密が外へ出ることの2つです。 前者は根拠の欄と人の確認で、後者は選り分けと組織の環境で防ぎます。報告書を品質管理部に回す前の確認を外さない理由は、ここにあります。

10まず何から始めるか

1週目:観点表を作る

品質管理部と、気付き事項の観点表の最初の版を作ります。5S、識別、不適合品の区分、計測器、手順の掲示、保管と梱包、安全、前回の宿題の8観点から始めます。 あわせて、写真の選り分けの決まりを書きます。

2週目:過去の5件で試す

Gem を作り、過去3か月の訪問の5件で下書きと一覧を作らせます。当時の報告書と見比べ、写真に写っていないことを書いていないか、宿題を寄せていないかを最優先で見ます。

3週目:次の訪問から使う

次の訪問から、当日の写真の選り分けと名前付け、前日の宿題の一覧の用意を始めます。訪問のときに宿題の項目を意識して写真を撮ります。

4週目:6名に広げる

6名全員が Gem を使い、消した・直した気付き事項を記録します。

2か月目: 消された気付き事項の観点を見て、観点表の書き方を直します。3か月目以降: 1件あたりの時間を実測し、Google Apps Script と Gemini API の半自動化に進みます。すべての報告書の気付き事項に根拠の写真が付き、前回の宿題の行方が報告書から報告書へ途切れずに続くようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-15/最終更新:2026-10-23
確認した内容情報源確認日
対象のエディションの Google Workspace で、Gemini とのやり取りが組織の中にとどまり、許可なく組織の外に共有されないこと。許可なく人の確認や組織の外での生成AIのモデルの学習に使われないことGoogle Workspace: Generative AI in Google Workspace Privacy Hub2026-10-15
Gemini アプリで同じプロンプトにアップロードできるファイルが10個まで(利用できる場合)、動画以外は1つ100MBまでであること。ドライブのファイルを使うには、組織の管理者が Gemini のアプリへのアクセスを有効にしているなどの条件があることGemini Apps Help: Upload & analyze files2026-10-15
Gem が名前と指示で作られ、Knowledge に端末・ドライブのファイルを足せること。Gem を共有できること。ウェブで作った Gem が Google Workspace のサイドパネルにも出ること。2026年11月から個人の Google アカウントの Gem がスキルへ移ることGemini Apps Help: Use Gems2026-10-15
1回の依頼に入れられる画像が3,600枚までであること。画像を埋め込む場合は依頼全体が20MBまでで、大きいファイルや繰り返し使う画像には Files API を使うこと。画像の向きを確かめ、ぶれの無い画像を使うよう勧めていること。例が Interactions API で書かれていることGemini API: Image understanding2026-10-15
Interactions API が既定でやり取りを保存し(store=true)、有料の枠で55日間、無料の枠で1日保持すること。store=false で保存しないようにできることGemini API: Interactions2026-10-15
構造化出力が response_format に JSON のスキーマを渡す形で示されていること。enum などのキーワードが使えることGemini API: Structured output2026-10-15

仕入先の写真を生成AIのサービスに渡してよいかは、仕入先との取り決めと自社の法務で確かめてください。 本記事は Google の公式の案内で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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