営業担当の Outlook で、顧客からのメールのうち返信していないものを洗い出し、要件と期限を並べて返信の下書きを作る
営業担当が Outlook の Copilot に毎朝と午後に決まった問いかけをして、顧客のメールのうち返信していないものを並べさせます。スレッドごとの要件と期限を一覧にし、返事ができるものから返信の下書きを作らせます。
- 生成AI
- ChatGPT/Gemini/Microsoft Copilot
- 対象業界
- IT・SaaS/商社/物流/製造
- 対象部門
- 営業
- 対象業務
- 問い合わせ対応/要約
- 主な課題
- 営業フォローが追いつかない/書類作成に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる
- AIで行う処理
- 要約
- 主な効果
- 対応スピード向上/工数削減/機会損失防止
- 導入難易度
- ★☆☆☆☆
- 実装レベル
- 最小構成
- 費用感
- SaaS追加(小)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 朝、受信トレイを開き、前日からのメールを上から読む
- 顧客からのメールのうち、返事をしていないものを探して遡る。数日前のものまで見る
- 見つけたメールのスレッドを開き、何を頼まれているか、いつまでに答えるかを読み直す
- 社内への確かめが要るものは、仕入先や物流センターに問い合わせる
- すぐ答えられるものから返信を書く。確かめ中のものには、いつまでに答えるかを書いて送る
- 午後、顧客からの催促の電話で、返事をしていなかったメールに気づくことがある
- 人朝と午後の決まった時刻に、Outlook の Copilot を開き、決まった問いかけを入れる
- 【AI】 Copilot が、自分が宛先に入っていて返信していないメールを、リンク付きで並べる
- 人一覧から顧客のメールでないもの、電話や別のスレッドで答え済みのものを外す
- 【AI】 残ったメールについて、Copilot の要約とその後の質問で、要件・期限・返信に要る社内確認を表にする
- 人表を見て、今日答えるもの、確かめ中として返すもの、社内に問い合わせるものを決める
- 【AI】 返信を書くメールで「Help me reply」を使い、つなぎの返信やすぐ答えられる返信の下書きを作る
- 人下書きの中身を確かめ、価格・納期・在庫の数字は社内に確かめてから自分で書き、送る
- 【人/AI】 確かめ中のメールにフラグを付け、次の回の洗い出しで残っているかを見る
各工程の詳しい説明を読む
- 朝、受信トレイを開き、前日からのメールを上から読む
- 顧客からのメールのうち、返事をしていないものを探して遡る。数日前のものまで見る
- 見つけたメールのスレッドを開き、何を頼まれているか、いつまでに答えるかを読み直す
- 社内への確かめが要るものは、仕入先や物流センターに問い合わせる
- すぐ答えられるものから返信を書く。確かめ中のものには、いつまでに答えるかを書いて送る
- 午後、顧客からの催促の電話で、返事をしていなかったメールに気づくことがある
(a)遡って探すのに時間を取られる。 返事をしていないメールに印は付きません。未読かどうかは分かっても、読んだのに返事をしていないメールは、開いて確かめるまで分かりません。 担当はメールを開いては閉じる作業を、毎朝くり返しています。
(b)漏れに気づくのが催促の後になる。 受信トレイを遡るのは、たいてい数日前までです。それより前に届いて、確かめ中のまま忘れたメールは、顧客から電話が来るまで見つかりません。 催促の電話を受けた時点で、顧客の側では社内の調達の段取りが遅れています。
(c)スレッドを読み直すのに時間がかかる。 見積の条件が何度か行き来したスレッドは、最後に何を頼まれているのかを読み取るまでに時間がかかります。 顧客の側で担当が替わり、途中から別の人が加わっていると、なおさらです。
(d)つなぎの返信を一から書く。 「確認して明日までにお返事します」という短い返信でも、顧客の名前と依頼の中身を入れて書くと数分かかります。数が多い日は、このつなぎの返信を後回しにして、顧客を待たせます。
(e)担当ごとにやり方が違う。 未読に戻す人、フラグを付ける人、手帳に書く人がいて、休みや異動のときに、誰が何を待たせているかを周りが把握できません。
- 【人】 朝と午後の決まった時刻に、Outlook の Copilot を開き、決まった問いかけを入れる
- 【AI】 Copilot が、自分が宛先に入っていて返信していないメールを、リンク付きで並べる
- 【人】 一覧から顧客のメールでないもの、電話や別のスレッドで答え済みのものを外す
- 【AI】 残ったメールについて、Copilot の要約とその後の質問で、要件・期限・返信に要る社内確認を表にする
- 【人】 表を見て、今日答えるもの、確かめ中として返すもの、社内に問い合わせるものを決める
- 【AI】 返信を書くメールで「Help me reply」を使い、つなぎの返信やすぐ答えられる返信の下書きを作る
- 【人】 下書きの中身を確かめ、価格・納期・在庫の数字は社内に確かめてから自分で書き、送る
- 【人/AI】 確かめ中のメールにフラグを付け、次の回の洗い出しで残っているかを見る
3番目が、この設計の分かれ目です。 Copilot が並べるのは候補です。返事が要るかどうかを決めるのは担当で、ここを省くと、答え済みの顧客に同じことを2回送ることになります。
7番目で、数字を担当が書くのは意図してのことです。 下書きは文の形を整えるところまでにし、顧客への約束になる数字は、確かめた本人が入れます。
8番目のフラグは、次の回の洗い出しの手がかりです。 確かめ中として「いつまでに答える」と返したメールは、自分が返信しているので、次の回の「返信していないメール」の候補には出てきません。 約束した期限までに本当の答えを返したかは、フラグで追います。
02今回想定するシステム構成
受信トレイ(顧客・仕入先・社内のメールが混ざる) │ Prioritize my inbox で顧客のメールを高い優先度に ▼【トリガー】朝の始業時と15時(担当が Copilot を開く) Outlook の Copilot(チャットの欄) │ 決まった問いかけ:宛先が自分で、返信していないメール ▼ リンク付きの候補の一覧 【担当が答え済み・顧客以外を外す】 ▼ Outlook の Copilot(要約とその後の質問) │ 要件/期限/返信に要る社内確認 を表に ▼ 【担当が今日答える・確かめ中・社内に問い合わせる を決める】 ▼ Outlook の Copilot(返信の下書き・文章の見直し) ▼ 【担当が数字を書き、確かめて送る】── 確かめ中はフラグ
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 処理 | Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot。Outlook の Copilot のチャット、要約、下書き、優先度設定) | Gemini(Gmail の Gemini)、ChatGPT Enterprise |
| メール | Outlook | Gmail |
新しく足すのは、営業担当20名の Copilot のライセンスと、問いかけの文の決まりだけです。 ワークフローもデータの置き場所も足しません。 営業部で決めるのは、問いかけの文、高い優先度の指示、要件の区分、表の列の4つです。 どれも文書1枚に収まり、営業部の Teams のチャネルに置けば全員が同じものを使えます。
Outlook の Copilot は、メールと予定表について自然な言葉で尋ねられます。 Microsoft の学習用のページでは、ナビゲーションバーかリボンの Copilot のアイコンから開き、「自分が宛先に入っていて、まだ返信していないメールを表示して」のような問いかけの例が挙げられています。結果はチャットの欄に、該当するメッセージへのリンク付きで返るとされています。
メールを選ぶか文を選んでチャットに入れると、答えをそのメールに寄せられます。 同じページでは、メールや強調した文をチャットに差し込むと、より焦点の合った答えになるとされ、Windows 版と Web 版で使えるとされています。
使えるアカウントには条件があります。 同じページでは、Outlook の Copilot は職場または学校のアカウントと、outlook.com・hotmail.com・live.com・msn.com のメールアドレスの Microsoft アカウントに対応し、Gmail などほかのメールのアドレスでは Copilot の機能を使えないとされています。
「Prioritize my inbox」(以下、優先度設定)は、洗い出しの前の絞り込みに使います。 サポートのページでは、Copilot が届いたメールを見て、スレッドの相手、その肩書き、メールの内容などから高・標準・低の優先度を付けるとされています。ただし、受信トレイ以外のフォルダのメールは評価されません(第7章)。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
朝の始業時と15時の2回、担当が自分で Copilot を開きます。 仕組みで自動に動かすのではなく、担当の1日の段取りに2回の確認を組み込む形です。
朝の回は、前日の夕方からの分と、数日前からの確かめ中の分を拾います。 その日のうちに答えるものと、社内に問い合わせるものを決めるための回です。午後の回は、午前中に届いた分を拾います。 顧客の側が夕方までに答えを欲しがる問い合わせを、その日のうちに返すための回です。
時刻を決めるのは、漏れを「担当の記憶」から「決まった手順」に移すためです。 手が空いたときに見る、という運用では、忙しい日ほど見なくなります。予定表に2回の枠を入れ、外出の多い日は移動の前に済ませます。
月曜の朝の回だけは、期間を広げます。 金曜の夕方から週末に届いたメールに加え、前の週に「今日つなぎ」とした確かめ中のメールが残っていないかを見ます。洗い出しの文の「過去7日間」を「過去10日間」に変えて尋ねます。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 受信トレイのメール | 差出人、宛先、件名、本文、受信日時、添付 | Outlook |
| 返信の状況 | 自分がそのスレッドに返信したか | Copilot が判断(判断の仕方は公開されていない) |
| スレッドの流れ | それまでのやり取り、途中から加わった人 | Outlook のスレッド |
| 優先度 | 高・標準・低と、その理由の短い説明 | 受信トレイの優先度設定 |
| 問いかけの文 | 洗い出し・要約・下書きの決まった文 | 営業部で決めて共有する文 |
質を決めるのは、問いかけの文です。 担当ごとに思いついた言葉で尋ねると、拾う範囲が担当ごとに変わります。営業部で文を決め、全員が同じ文で尋ねます。
優先度設定の高い優先度の指示も、営業部で決めます。 例は次のとおりです。
| 指示の例 | ねらい |
|---|---|
| 受け持ちの顧客の会社のドメインから届いたもの | 顧客のメールを先に見る |
| 見積・納期・在庫・注文・変更に触れているもの | 答えを待たれているメールを拾う |
| 「至急」「本日中」に触れているもの | 期限の近いものを拾う |
| 社内の一斉の連絡(総務・情報システムからの通知) | 低い優先度にして沈める |
ドメインは担当ごとに違うので、指示の1行目だけは担当が自分の顧客に合わせて書きます。 残りの行は営業部で共通にします。
「返信の状況」は、Copilot の内部の判断です。 学習用のページは、返信していないメールを尋ねられることは示していますが、どう判断しているかは書いていません。 そのため、一覧を候補として扱い、担当が確かめる前提で設計します。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どうやって | 何に使うか |
|---|---|---|
| 返信していないメールの候補 | Copilot のチャットに洗い出しの問いかけを入れる | その回に見るメールの一覧 |
| 顧客のメールの絞り込み | 優先度設定の高い優先度のものから見る | 顧客のメールを先に見る |
| スレッドの要件と期限 | メールの上の「Summary by Copilot」と、その後の質問 | 要件・期限・社内確認の表 |
| 添付の中身 | 要約の画面から「Summarize a file」 | 図面・見積依頼書の要点 |
| 返信の下書き | 返信の画面の「Help me reply」 | つなぎの返信と、すぐ答えられる返信 |
要約の後の質問で、期限を取り出します。 学習用のページでは、要約を読んだ後に「気をつけるべき日付はあるか」「誰が何と言ったか」のような追いかけの質問ができるとされています。営業部では、期限と依頼の中身を聞く質問を決まった文にしておきます。
添付の要約は、PDF・PowerPoint・Word のファイルが付いたスレッドで使えます。 同じページでは、要約の画面からファイルを要約(Summarize a file)できるとされています。顧客から届いた見積依頼書や仕様書の要点をつかむのに使い、図面の寸法や数量のような数字は、要約ではなく元のファイルで確かめます。
要件と期限の表を作るときは、候補のメールを選んでチャットに差し込みます。 学習用のページでは、メールを選ぶか文を強調してチャットに差し込むと、答えがその中身に寄るとされています。受信トレイ全体に向けて「期限はいつか」と尋ねると、別の顧客のメールの日付が混ざることがあるため、1スレッドずつ差し込んで尋ねます。
AIへ渡す前に整形する
- 受信トレイの優先度設定を有効にする … サポートのページでは、Windows 版は Copilot のボタンの横の矢印から「Prioritize」を選んで有効にし、少なくとも1つの高い優先度の指示が要るとされています
- 高い優先度の指示を書く … 「顧客の会社のドメインから届いたもの」「見積・納期・在庫・注文に触れているもの」のように書きます。サポートのページでは、1語より「〜から届いた」「〜に触れている」のような言い方がよく効くとされています
- 顧客のメールを別のフォルダに振り分ける仕分けのルールを見直す … 優先度設定は受信トレイ以外のフォルダのメールを評価しません
- Copilot のカスタム指示を決める … 下書きの言葉づかいを営業部で決め、各自の Copilot に入れます
- 問いかけの文を共有する … 洗い出し・要約・下書きの文を、営業部の Teams のチャネルに固定して置きます
3番目は、多くの営業担当が引っかかるところです。 顧客ごとのフォルダにメールを振り分けている担当は少なくありません。振り分けたメールには優先度が付かないので、顧客のメールほど優先度設定から漏れます。 振り分けをやめるか、優先度設定に頼らずに洗い出しの問いかけで拾うかを、担当ごとに決めます。
優先度設定は、有効にした後に届いたメールから効きます。 サポートのページでは、有効にする前のメールは評価されないとされています。導入の最初の週は、優先度の付いていない古いメールが残る前提で洗い出します。
AIに処理させる
させるのは3つです。返信していないメールを候補として並べること、スレッドの要件と期限を表にすること、つなぎの返信やすぐ答えられる返信の下書きを作ることです。
| させること | 中身 | 判断できないときの扱い |
|---|---|---|
| 候補の一覧 | 自分が宛先に入っていて、返信していないメール | 迷うものも候補に入れる(外すのは担当) |
| 要件 | 顧客が頼んでいること(見積・納期・在庫・仕様・変更) | 読み取れなければ「要件不明」 |
| 期限 | 顧客が書いた日付と時刻 | 書かれていなければ「記載なし」。推測しない |
| 社内確認 | 返事に要る確かめ(仕入先・物流センター・技術担当) | 分からなければ空欄 |
| 返信の下書き | つなぎの返信、すぐ答えられる返信 | 数字が要る箇所は【要確認】と書く |
期限を「記載なし」にさせるのが、この表でいちばん大事な決まりです。 顧客が日付を書いていないのに、Copilot が「至急」「今週中」と読み替えると、担当はその期限を顧客の言葉だと思い込みます。
要件の区分は、次の6つに限ります。 区分を限るのは、表を見たときに社内の誰に確かめればよいかが決まるようにするためです。
| 区分 | 主な社内確認 |
|---|---|
| 見積 | 仕入先(仕入の単価と納期) |
| 納期 | 仕入先・物流センター |
| 在庫 | 物流センター |
| 仕様 | メーカーの技術担当 |
| 変更(数量・納期・届け先) | 物流センター・受注の事務 |
| その他 | 担当が判断 |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 価格・納期・在庫の数字を書く | 顧客への約束になる。確かめた担当が書く |
| 返事が要らないと決める | 判断の仕方が公開されていない。外すのは担当 |
| 送信 | 送るのは担当 |
| 顧客への謝罪の言葉の決定 | 遅れの事情は担当が知っている |
| 多くのメールへの一括の操作 | アーカイブなどは担当が個別に行う |
1行目がいちばん起きやすい失敗です。 前のメールに「通常2週間」と書いてあると、下書きにも「2週間で納品可能です」と入ります。その時点の仕入先の状況を確かめずに送れば、約束を破る原因を自分で作ることになります。
最後の行は、Copilot がメールの操作もできるためです。 学習用のページでは、アーカイブやフラグなどの操作を頼め、5通を超えるメールに及ぶ操作では、実行の前に確認が出るとされています。洗い出しの流れで「返信済みのものをアーカイブして」と頼むと、候補の判断の誤りが、メールの移動として残ります。
指示内容を固定する
洗い出し(朝と午後に Copilot のチャットに入れる文)
過去7日間に受信したメールのうち、私が宛先(To)に入っていて、
私がまだ返信していないものを一覧にしてください。
社外の会社のドメインから届いたものだけにしてください。
各行に、差出人の会社名、件名、受信日、メールへのリンクを付けてください。
返信が要らないと思われるものも外さずに含めてください。
返信が要るかどうかは、こちらで判断します。
要件と期限の表(候補のメールを選んでチャットに差し込み、要約の後に入れる文)
選んだメールのスレッドについて、次の4列の表を作ってください。
1. 顧客が頼んでいること(見積・納期・在庫・仕様・変更・その他)
2. 顧客が書いた期限(日付と時刻。書かれていなければ「記載なし」)
3. 返事に要る社内の確かめ(仕入先・物流センター・技術担当・不要)
4. 根拠にした文(メールの文のまま)
期限を推測しないでください。「至急」「早めに」と書かれていれば、
その言葉をそのまま書き、日付に置き換えないでください。
返信の下書き(返信の画面の「Help me reply」に入れる文)
この顧客に、依頼を受け取ったことと、確認して【期限】までに
お返事することを伝える返信を書いてください。
価格・納期・在庫・数量の数字は書かず、数字が入る箇所は
【要確認】と書いてください。
前のメールに書かれた数字を写さないでください。
洗い出しの文で「返信が要らないものも外さずに」と書いているのは、外す判断を担当に残すためです。 Copilot が「お礼のメールなので不要」と外したものの中に、追伸で質問が書かれたメールが混ざることがあります。
下書きの文で「前のメールに書かれた数字を写さない」と書いているのは、スレッドの過去の数字が最もそれらしく見えるためです。 前回の見積の単価や前回の納期は、今回の答えではありません。
出力形式を固定する
Copilot の答えは、チャットの欄の表と、返信の画面の下書きで受け取ります。 API で受け取るわけではないので、JSON ではなく決まった列の表にします。
【朝の洗い出しの表(例)】
| 顧客 | 件名 | 受信日 | 頼まれていること | 期限 | 社内確認 | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A精機 | ベアリングの見積の件 | 10/6 | 見積 | 10/9 17時 | 仕入先 | 今日つなぎ |
| B工業 | 納期の確認 | 10/7 | 納期 | 記載なし | 物流センター | 今日答える |
| C製作所 | 図面の寸法の質問 | 10/3 | 仕様 | 「至急」 | 技術担当 | 今日つなぎ |
| D社 | 展示会のご案内 | 10/7 | その他 | 記載なし | 不要 | 返信不要 |
列を決めておく1つ目の理由は、担当が毎回同じ順で判断できることです。 期限の列が「記載なし」か「至急」のように言葉のままかで、顧客に期限を聞き返すべきメールが一目で分かります。
2つ目は、右端の「判断」の列を担当が書くことです。 Copilot が埋めるのは左の6列までで、今日答える・つなぎを返す・社内に問い合わせる・返信不要を決めるのは担当です。この列が埋まった表が、その回の洗い出しの結果になります。
3つ目は、根拠の文を残せることです。 要件と期限の表には、根拠にしたメールの文を付けさせます。期限が本当に顧客の書いたものかを、メールを開かずに確かめられます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| Outlook の受信トレイ | Copilot のチャット | 返信していないメールの候補を並べる |
| Outlook のスレッド | Summary by Copilot とその後の質問 | 要件・期限・社内確認を表にする |
| Outlook の返信の画面 | 返信の下書き、文章の見直し | つなぎの返信と、すぐ答えられる返信 |
| Outlook のフラグ | 担当の操作、または1通ずつ Copilot に頼む | 確かめ中のメールに印を付ける |
販売管理の仕組みや在庫の照会画面とは、つなぎません。 価格・納期・在庫は、担当がこれまでどおり社内の画面と問い合わせで確かめます。数字の出どころを担当の確認に限ることで、Copilot が古い数字を持ち込む経路を断ちます。
送る前に文章を見直したいときは、「Coaching by Copilot」を使います。 学習用のページでは、下書きの言葉づかい・分かりやすさ・構成の改善を提案するとされています。謝罪を含む返信や、条件の変更を伝える返信で使います。
人が確認する
- 候補から外すものを決める … 答え済み(電話・別のスレッド・同僚)、顧客以外、返信不要を外します。外した理由を表の「判断」の列に書きます
- 期限を確かめる … 表の期限と根拠の文を見比べます。「記載なし」のものは、つなぎの返信で期限を聞き返します
- 社内確認を出す … 仕入先・物流センター・技術担当への問い合わせは、担当が出します
- 下書きの数字を書く … 【要確認】の箇所に、確かめた数字を自分で入れます
- 送る前に宛先を見る … 返信の宛先とCCが、スレッドの途中で変わっていないかを見ます
目標は、1回の洗い出しと返信の準備を6分にすることです。 探す作業がほぼ無くなり、担当の時間は「返事が要るかを決める」「数字を書く」に集まります。
外出の多い日は、スマートフォンで高い優先度のメールだけを見ます。 サポートのページでは、モバイルでは高い優先度のメールだけに絞り込めるとされています。ただし、洗い出しの問いかけは事務所に戻ってから行い、移動中に見たメールも候補に入れ直します。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 答え済みのメールが候補に出る | 担当が外し、「判断」に理由を書く。Copilot の判断の仕方は公開されていない |
| 顧客のメールが候補に出ない | 7日より前のもの、別のフォルダのものを疑い、期間とフォルダを変えて尋ね直す |
| 振り分けたフォルダのメールに優先度が付かない | 優先度設定は受信トレイだけ。洗い出しの問いかけで拾う |
| 暗号化されたメール | 中身を見られない暗号化メールは優先度設定の対象外。担当が開いて読む |
| 会議の招待・自動応答・不達の通知 | 優先度設定の対象外。洗い出しの表でも「その他」として外す |
| 下書きに前回の数字が入る | 消して【要確認】にする。文の決まりに「写さない」を足す |
| 宛先が CC の顧客のメール | 洗い出しの問いかけは To が対象。CC の顧客のメールは週1回、別に尋ねる |
| 長いスレッドで要件が読み違えられる | 根拠の文を見て、スレッドの最後のメールを担当が読む |
| 担当が休みの日 | 洗い出しは担当本人の受信トレイが対象。休みの前日に確かめ中の一覧を引き継ぐ |
| 顧客が件名を変えずに別の依頼を書いてくる | 要件の表に2行目として出させる。1スレッドに1要件と決めつけない |
1行目と2行目は、毎日出ます。 どちらも、Copilot の答えを候補として扱う設計なら困りません。困るのは、候補を「やり残しの全部」と信じた場合です。
記録を残す
- 送ったメールそのもの … 顧客への返信の記録はメールに残ります。新しい置き場所は作りません
- 確かめ中のメールのフラグ … 次の回の洗い出しで、フラグの残っているメールを確かめます
- 洗い出しの表の「判断」の列 … 週に1回、その週の表を営業部の個人のメモに貼って残します
- 催促の電話を受けた件数 … 担当が週に1回、数を書きます
最後の行が、この構成が効いているかを見る数字です。 催促の電話で返信の漏れに気づく件数が減っていれば、洗い出しは効いています。減らない担当は、問いかけの文か、振り分けのルールに理由があります。
課長は、週に1回、担当ごとの「判断」の列を見ます。 「今日つなぎ」が続いているメールは、社内の確かめが止まっている印です。仕入先や技術担当への問い合わせが止まっていないかを、課長が確かめます。
04実装レベルの3段階
本記事の想定は最小構成です。 洗い出しと要約と下書きだけで、1回15分が6分になる想定です。 半自動化は、最小構成を2週間回した後に足します。 優先度設定は、有効にした後に届いたメールから効くため、最初の週から有効にしても効果が見えるのは翌週以降です。 本格構成は、この記事の外の話です。 返信の期限を仕組みで管理するなら、顧客のメールを個人の受信トレイではなく窓口で受ける形に変えることになり、営業の進め方そのものが変わります。 最小構成のままでも、返信の漏れを担当の記憶から手順に移すという目的は果たせます。 窓口の仕組みに移るかどうかは、最小構成を3か月回して、催促の電話の件数がどこまで減ったかを見てから決めます。
05工数削減シミュレーション
導入後 400件 × 6分 ÷ 60 = 40 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 1人の営業担当が数十社の顧客を受け持ち、見積・納期・在庫・仕様の問い合わせが毎日メールで届く専門商社や、部品メーカー・システム会社の営業部門。返信の漏れや遅れに気づくのが顧客からの催促の後になることがある場合。社内で Outlook を使っており、営業担当が Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot)のライセンスを持てる場合。
- 顧客とのやり取りの大半がメールではなく、電話・チャット・受発注の仕組みで行われている場合。問い合わせを営業担当の個人のメールではなく、共有の窓口と問い合わせ管理の仕組みで受けている場合(その場合は窓口の仕組みで漏れを見るほうが確実です)。なお、価格・納期・在庫を顧客に約束する判断は営業担当と社内の担当部署が行うことで、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 営業担当3名を選ぶ(受け持ちの顧客が多い人、外出の多い人を入れる)
- 3名の Outlook の Copilot に、第7章の洗い出しの文を入れて、朝の一覧を出してもらう
- 同じ朝に、担当がこれまでどおり受信トレイを遡って、返事をしていない顧客のメールを探す
- 2つの一覧を比べ、Copilot が拾えなかったもの、答え済みなのに出たものを数える
- 5日間続け、要約と下書きの文も試す
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 担当が探したものがほぼ一覧に出た | 全員に広げる |
| 答え済みのものが多く出る | 想定どおり。担当が外す手順を決めれば使える |
| 顧客のメールが出ない | 振り分けのフォルダか期間。問いかけの文と仕分けのルールを直す |
| 下書きに前回の数字が入る | 文の決まりで直る。構成は有効 |
比べるときは、Copilot が拾えなかったメールを1通ずつ見ます。 拾えなかった理由が、振り分けのフォルダ、CC、7日より前のどれかに当てはまるなら、問いかけの文と運用で埋められます。当てはまらないものが多いときは、担当がこれまでどおり遡る手順を残したまま、Copilot の一覧を追加の確認として使います。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 候補を「やり残しの全部」と信じる | 候補として扱い、担当が外す。 判断の仕方は公開されていない |
| 下書きに前回の価格・納期が入る | 「前のメールの数字を写さない」を文に書く。 数字は【要確認】 |
| 期限が「至急」から日付に読み替えられる | 言葉のまま書かせる |
| 振り分けたフォルダのメールに優先度が付かない | 優先度設定は受信トレイだけ。洗い出しの問いかけで拾う |
| 優先度設定の効果がすぐ見えない | 有効にした後のメールから効く |
| 担当ごとに尋ね方が違い、拾う範囲がばらつく | 営業部で文を決めて共有する |
| CC で届いた顧客のメールが拾えない | 週1回、CC を対象に別に尋ねる |
| 返信済みのものを一括でアーカイブする | 一括の操作は頼まない。 5通を超えると確認が出る |
| 受信トレイ全体に期限を尋ねて別の顧客の日付が混ざる | 1スレッドずつ差し込んで尋ねる |
| 休みの担当の確かめ中のメールが止まる | 休みの前日に確かめ中の一覧を引き継ぐ |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、Copilot の答えをそのまま事実として扱うことから起きます。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 顧客の担当者の氏名・連絡先、見積・価格・納期・在庫のやり取り、図面や仕様書の添付です。取引条件は顧客にとっても自社にとっても営業秘密です。
- 送信を人が行う … 下書きは担当が確かめて送ります。顧客への約束になる数字は、確かめた担当が書きます
- 価格・納期・在庫を下書きに書かせない … スレッドの過去の数字を写すと、今回の答えとして顧客に届きます
- Copilot に一括の操作をさせない … アーカイブ・移動は担当が個別に行います。候補の判断の誤りを、メールの移動として残さないためです
- カスタム指示に顧客の情報を書かない … カスタム指示は言葉づかいと形の決まりだけにします
- 図面・仕様の数字は元のファイルで確かめる … 添付の要約は要点をつかむためで、寸法や数量を要約から写しません
- ライセンスの管理を情報システムの担当と決める … 誰に Copilot を使わせるか、退職や異動のときにどう外すかを決めます
- 洗い出しの表を共有するときは、顧客の名前と依頼の中身の扱いに気をつける … 課長に見せる表は営業部の中だけで共有します。他の担当の顧客の価格のやり取りが、関係のない人の目に触れないようにします
誤りが起きた場合のリスクは、返事が要るメールを候補から落とすことと、確かめていない数字を顧客に送ることの2つです。 前者は候補を全部と信じると起き、後者は下書きをそのまま送ると起きます。
10まず何から始めるか
1週目:問いかけの文を決める
営業部で、洗い出し・要件と期限の表・返信の下書きの3つの文を決め、Teams のチャネルに固定します。期限を推測しない、数字を書かない、を必ず入れます。
2週目:3名で試す
第8章の手順で、Copilot の一覧と担当が探した一覧を5日間比べます。拾えなかったメールが、どのフォルダのどんなメールだったかを書き出します。
3週目:振り分けのルールと優先度設定を決める
顧客のメールを振り分けている担当は、振り分けを続けるか、優先度設定に寄せるかを決めます。優先度設定の高い優先度の指示も、営業部で文を決めます。
4週目:全員に広げる
朝と午後の2回の枠を、営業担当全員の予定表に入れます。この時点から、催促の電話を受けた件数を週に1回書きます。 あわせて、担当ごとにフラグの残っているメールの数を週に1回数えます。数が増え続ける担当は、社内の確かめが止まっているか、答えを返した後にフラグを外し忘れています。
2か月目: 1回15分が何分になったかを担当ごとに実測します。3か月目以降: 催促の電話の件数を、導入前の聞き取りと比べます。催促の電話で返信の漏れに気づく件数がほとんど無くなった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| Outlook の Copilot がナビゲーションバーかリボンのアイコンから開け、メールと予定表について自然な言葉で尋ねられること。「自分が宛先に入っていて返信していないメール」を尋ねる例と、結果がリンク付きでチャットの欄に返ること。メールや文をチャットに差し込んで答えを寄せられ、Windows 版と Web 版で使えること。アーカイブやフラグなどの操作を頼め、5通を超える操作では確認が出ること。「Summary by Copilot」と追いかけの質問、添付ファイルの要約。「Help me reply」と調整、カスタム指示、「Coaching by Copilot」。対応するアカウントの種類 | Microsoft Learn: Draft engaging emails using Copilot in Microsoft Outlook | 2026-10-08 |
| 受信トレイの優先度設定が、届いたメールにスレッドの相手・肩書き・内容などから高・標準・低の優先度を付けること。有効にした後に届いたメールだけが対象であること。少なくとも1つの高い優先度の指示が要ること。「〜から届いた」「〜に触れている」のような言い方がよく効くこと。受信トレイ以外のフォルダのメール、会議のメール、自動応答、不達の通知、中身を見られない暗号化メールなどは評価されないこと | Microsoft Support: Prioritize my inbox | 2026-10-08 |
顧客への返信の中身、価格・納期・在庫の答え、Copilot を使わせる範囲は、自社の営業の決まりと情報システムの担当との取り決めに沿って決めてください。 本記事は Microsoft の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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