Media > AI活用ユースケース > 営業 > 営業担当から出る「この取引先にこの支払条件・取引額で受けてよいか」の質問に、与信管理規程と取引先の与信区分を根拠にチャットで答え、例外の申請が要るものを財務へ回す

営業担当から出る「この取引先にこの支払条件・取引額で受けてよいか」の質問に、与信管理規程と取引先の与信区分を根拠にチャットで答え、例外の申請が要るものを財務へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

営業担当が取引先を選び、支払条件と取引額を入れると、その取引先の与信区分と残高を基準表と照らし、規程と手引きから当てはまる条項と例外の申請の手続きを根拠付きで返します。財務への確認が減ります。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
商社/建設/製造
対象部門
営業/財務
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
判断支援/対応スピード向上/属人化解消
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
120h/月
AI導入後
36h/月
想定削減
70%
年間削減
1,008h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 営業担当が取引先から支払条件や取引額の相談を受ける
  2. 規程のPDFを開き、与信区分ごとの別表と、例外の申請の条項を探す
  3. 取引先の与信区分と限度額を販売管理の画面で確かめる(区分の見方が分からなければ財務に聞く)
  4. 売掛金の残高と受注残を見て、今回の取引額を足すと限度を超えるかを電卓で計算する
  5. 規程の当てはめに自信が無ければ、財務にメールか電話で確かめる
  6. 財務の担当が規程と台帳を見直して答える
  7. 例外の申請が要るなら、申請書を書いて財務に出す
導入後(After)
  1. 人営業担当が社内のチャット画面で、自分の担当の取引先を選ぶ
  2. 人支払条件(締め日・支払サイト・支払手段)、取引額、納品の分け方を入れ、質問を書く
  3. 自動中継プログラムが、販売管理の台帳から与信区分・限度額・審査の期限・売掛金・受注残を読む
  4. 自動中継プログラムが、区分ごとの基準表と照らし、支払サイト・支払手段・限度額の判定を機械的に出す
  5. 自動Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドが、規程と手引きから当てはまる条項と手続きを探して答えを作る
  6. 自動判定と根拠を画面に返す(範囲内/例外の申請が要る/財務の確認が要る)
  7. 人営業担当が根拠の条項を開いて確かめる。範囲内なら受注の手続きに進む
  8. 自動例外の申請が要るものは、申請書の下書きを作って財務の待ち行列に載せる
  9. 人財務の担当が申請と根拠を確かめ、決裁者に回す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 営業担当が取引先から支払条件や取引額の相談を受ける
  2. 規程のPDFを開き、与信区分ごとの別表と、例外の申請の条項を探す
  3. 取引先の与信区分と限度額を販売管理の画面で確かめる(区分の見方が分からなければ財務に聞く)
  4. 売掛金の残高と受注残を見て、今回の取引額を足すと限度を超えるかを電卓で計算する
  5. 規程の当てはめに自信が無ければ、財務にメールか電話で確かめる
  6. 財務の担当が規程と台帳を見直して答える
  7. 例外の申請が要るなら、申請書を書いて財務に出す

(a)規程の当てはめに迷う。 別表は区分ごとの上限を決めていますが、「新規の取引先の初回取引」「分割納品の取引額」「既存の取引に上乗せする追加注文」の扱いは本文の条項と手引きに分かれています。どこに書いてあるかを知らない営業担当は、5番に進みます。

(b)財務に確認が集中する。 財務の3名は、月に200件を超える確認に答えています。同じ質問に、担当者ごとに少し違う言い方で答えていることもあります。

(c)例外の申請が漏れる。 限度額の計算で受注残を足し忘れる、区分の審査の期限が切れていることに気づかない。申請が要るのに申請されないまま受注されたものは、月末の与信の監視で初めて見つかります。 そのときには、出荷が済んでいます。

(d)交渉の場で答えられない。 持ち帰って財務の答えを待つ間に、取引先は別の仕入先と話を進めます。

  1. 【人】 営業担当が社内のチャット画面で、自分の担当の取引先を選ぶ
  2. 【人】 支払条件(締め日・支払サイト・支払手段)、取引額、納品の分け方を入れ、質問を書く
  3. 【自動】 中継プログラムが、販売管理の台帳から与信区分・限度額・審査の期限・売掛金・受注残を読む
  4. 【自動】 中継プログラムが、区分ごとの基準表と照らし、支払サイト・支払手段・限度額の判定を機械的に出す
  5. 【自動】 Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドが、規程と手引きから当てはまる条項と手続きを探して答えを作る
  6. 【自動】 判定と根拠を画面に返す(範囲内/例外の申請が要る/財務の確認が要る)
  7. 【人】 営業担当が根拠の条項を開いて確かめる。範囲内なら受注の手続きに進む
  8. 【自動】 例外の申請が要るものは、申請書の下書きを作って財務の待ち行列に載せる
  9. 【人】 財務の担当が申請と根拠を確かめ、決裁者に回す

4番目が、この設計の要です。 「受けてよいか」の芯にある数字の判定は、AIではなく、台帳と基準表を引くプログラムが出します。 AIは規程の文を探して手続きを示すだけで、範囲内かどうかを文章から推し量ることはさせません。

8番目で財務へ回るのは、数字の判定で例外と出たものと、規程に当てはまる記載が見つからなかったものです。 範囲内のものは財務を通らずに進むので、財務の3名は例外の審査に時間を使えます。

02今回想定するシステム構成

構成図
営業担当(社内のチャット画面。担当の取引先を選び、条件と取引額を入れる)
   │
   ▼【トリガー】質問の送信
中継プログラム(Python/Cloud Run)
   ├──▶ 販売管理の台帳を読む(与信区分/限度額/審査の期限/売掛金/受注残)
   ├──▶ 区分ごとの基準表と照らす(支払サイト/支払手段/限度額)
   ▼
Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッド(アクセス制御あり)
   │   与信管理規程/営業向けの手引き から当てはまる条項と手続きを探す
   │   答えと出典、文ごとの根拠のスコアを返す
   ▼
中継プログラム ── 数字の判定と規程の答えを合わせる
   ▼
判定(範囲内 within / 例外の申請 exception / 財務の確認 review)
   ├──▶ 画面へ(根拠の条項と、計算の内訳を並べる)
   └──▶ 財務の待ち行列へ(申請書の下書き付き)
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、画面・台帳・検索・待ち行列をつなぐ)Node.js で同じものを書く
保管Cloud Storage(規程・手引きの原本とメタデータ、アクセス制御の情報)─

販売管理の台帳は、新しく足すものではありません。 中継プログラムは台帳を読むだけで、与信区分も限度額も書き換えません。区分ごとの基準表は、規程の別表を財務が表の形で持ち、改定のたびに財務が更新します。 最初の準備は、規程と手引きを条項ごとに見出しの付いた文書にし、営業向けと財務の内部向けに分けることです。

検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作って出典を付け、前のセッションの ID を渡すとやり取りを続けられます。 回答の文ごとに 0〜1 の根拠のスコアを返す設定と、根拠の弱い回答を落とす設定があります。

見せる文書を人で分けるのは、データソースのアクセス制御です。 Cloud Storage の非構造化データでは、文書ごとのメタデータの acl_info に読める人の principals(グループか個人)を書きます。アクセス制御はデータストアを作るときに選び、作った後に入れたり外したりはできません。 1文書に付けられる読み手は3,000までで、グループも1つと数えます。営業部のグループと財務部のグループで分ければ足ります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は、営業担当が社内のチャット画面で取引先を選び、質問を送ったことです。 画面は社内の ID でログインした営業担当と財務の担当だけが使います。取引先と条件を入れないと送信できない作りにします。

取引先は、販売管理の担当の割り当てから、自分の担当の取引先だけを選べるようにします。 質問の文に取引先の名前を書かせて推定させると、社名の似た取引先や、同じグループの別会社を取り違えます。 取引先のコードを画面の側で確定させます。

条件は、自由文ではなく項目で入れさせます。 締め日(月末・20日など)、支払サイト(日数)、支払手段(振込・手形・電子記録債権)、取引額、納品の分け方(一括/分割の回数)の5つです。項目で入れた値は、中継プログラムが基準表と照らすのにそのまま使います。 質問の文は、項目に入らない事情(「初回の取引」「既存の注文への追加」)を書く欄にします。1件の質問は1つのセッションで続け、別の取引先に移ったら新しいセッションで始めます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
取引先のコード担当の取引先から選んだもの画面
条件締め日、支払サイト、支払手段、取引額、納品の分け方画面
質問の文項目に入らない事情画面
与信の台帳与信区分、限度額、審査の期限、売掛金の残高、受注残販売管理
区分ごとの基準表区分ごとの支払サイトの上限、使える支払手段、限度額の扱い財務が表で持つ
与信管理規程本文の条項と別表財務
営業向けの手引き新規の取引、分割納品、追加注文、例外の申請の書き方財務
財務の内部の審査基準区分を決める基準、臨時の審査の基準財務(営業には見せない)

質を決めるのは、区分ごとの基準表です。 規程の別表はPDFの表ですが、数字の照合に使う基準表は、財務が行と列の決まった表で持ちます。 「区分B:支払サイト上限90日、手形可、電子記録債権可」のように1区分1行にし、規程の改定日と同じ日付で版を切ります。

内部の審査基準は、取り込むか取り込まないかを最初に決めます。 取り込むなら、acl_info で財務部のグループだけを読み手にします。財務の担当がこの画面で質問したときだけ、内部の基準も根拠に入ります。

Step3

データの取得方法を決める

台帳は、販売管理の読み取りの口から取ります。 中継プログラムは取引先のコードで与信区分・限度額・審査の期限・売掛金の残高・受注残を引き、書き込みの権限は持たせません。 読み取りの口が無ければ、販売管理から毎晩書き出した表を読みます。その場合は画面に「残高は前日の夜の時点」と出します。

規程と手引きは Cloud Storage に置き、メタデータとアクセス制御の情報付きでデータストアへ取り込みます。

取るものどこから何に使うか
文書の種類メタデータ doc_type規程・手引き・内部基準を分けて根拠に示す
条項の番号メタデータ article根拠の条項を画面に出す
適用開始日・終了日メタデータ valid_from・valid_to今日効いている版だけに絞る
主題メタデータ topic新規取引・分割納品・追加注文・例外申請で絞る
読み手acl_info の readers営業部と財務部で見せる文書を分ける

絞り込みの式は、日付と主題で書きます。 項目を索引可能にしておけば、valid_from <= "2026-10-08" AND valid_to >= "2026-10-08" AND topic: ANY("exception", "split_delivery") のように、今日効いている版の、その事情に当たる条項を引けます。主題は、画面の質問の文から中継プログラムが決めるのではなく、営業担当が選んだ事情のチェック欄から入れます。

区分と残高の数字は、検索の問いに文として添えます。 「与信区分B。支払サイト120日は区分の上限90日を超える。今回の取引で限度額の範囲内」のように、中継プログラムが出した判定を文にして、質問の前に付けます。 モデルには計算させず、判定が出た状態で、当てはまる手続きだけを探させます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 規程を条項ごとに見出しを付ける … 「第○条(例外の承認)」の見出しを残し、条項の番号をメタデータにします
  2. 別表を基準表にする … PDFの別表から、区分ごとの行の決まった表を財務が作ります
  3. 手引きを主題で分ける … 新規取引、分割納品、追加注文、例外申請の章に分け、topic を付けます
  4. 版を分ける … 規程の改定のたびに版を分け、valid_from・valid_to を付けます
  5. 読み手を付ける … 営業向けの文書は営業部と財務部、内部の基準は財務部だけを acl_info に書きます
  6. 見出しを断片に含める … データストアの作成時に分割を有効にし、includeAncestorHeadings を有効にします
  7. 台帳の値を確かめる … 与信区分が空、審査の期限が過ぎている取引先は、判定に進まず財務の確認にします

5番目と6番目は、データストアを作る前に決めます。 アクセス制御も分割も、作った後には切り替えられません。 後から内部の基準を入れたくなったときに作り直しにならないよう、最初からアクセス制御を有効にしたデータストアにしておきます。

7番目を中継プログラムに入れるのは、審査の期限切れが例外の申請の漏れの入り口だからです。

Step5

AIに処理させる

させるのは、中継プログラムが出した判定と事情に当てはまる、規程の条項と手引きの手続きを探し、根拠付きで並べることです。 範囲内かどうかの判定と、例外を認めるかどうかの判断はさせません。

項目中身出すもの
判定(支払サイト・支払手段・限度額)台帳と基準表の照合中継プログラム
当てはまる条項判定と事情に関わる規程の条項AI(検索)
必要な手続き例外の申請の書式、添付、決裁者、事前か事後かAI(検索)
事情の扱い新規取引・分割納品・追加注文の数え方AI(検索)
根拠条項の番号、手引きの章、版AI(検索)+メタデータ

answer メソッドの設定は次のようにします。

設定値理由
session質問ごとのセッション聞き足した事情で絞り直す
includeCitations有効条項と手引きの章を付ける
ignoreLowRelevantContent有効規程に無い扱いを答えない
groundingSpec の filteringLevelFILTERING_LEVEL_HIGH根拠の弱い答えを出さない
filter適用期間、主題改定前の版と関係の無い条項を混ぜない
preamble下の指示答え方の規則を与える
させないこと理由
「受けてよい」「問題ない」と言う範囲内の判定はプログラム、例外の可否は決裁者
限度額や残高の計算をする数字は台帳と基準表で1か所で出す
取引先の信用について意見を書く区分を決めるのは財務の審査
例外が認められそうかを書く決裁者の判断を先回りしない
規程に無い扱いを一般的な与信の考え方で補う自社の規程だけが効く

4行目がいちばん起きやすい失敗です。 過去に同じような例外が認められた記載が手引きにあると、モデルは「認められる可能性が高い」と書きがちです。営業担当はそれを取引先に伝えてしまいます。 手続きと決裁者だけを示し、可否には触れさせません。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます。

あなたは商社の財務部で、与信管理規程について営業担当の質問に答える立場です。
質問の前に、システムが台帳と基準表から出した判定が書かれています。
判定はそのまま正しいものとして扱い、変えないでください。
あなたの仕事は、その判定と事情に当てはまる規程の条項と手続きを探すことです。

【答え方】
1. 判定ごとに、当てはまる規程の条項の番号と、その条項の要点を書いてください。
2. 例外の申請が要る場合は、申請の書式、添付するもの、決裁者、
   受注の前か後か、を手引きの記載のまま書いてください。
3. 事情(新規取引、分割納品、追加注文)が書かれている場合は、
   その事情について規程と手引きが定める扱いを書いてください。
4. 根拠にした文書の種類(規程/手引き/内部基準)と条項・章を書いてください。

【厳守事項】
- 検索結果の文書に書かれていることだけで答えてください。
  一般的な与信管理の考え方や、他社の例で補わないでください。
- 「受けてよい」「問題ありません」「認められる見込みです」と書かないでください。
- 金額や日数の計算をしないでください。判定に書かれた数字だけを使ってください。
- 取引先の信用や経営状態について、意見や推測を書かないでください。
- 事情に当てはまる記載が無い場合は「規程に記載が見つからない。財務に確認」とし、
  扱いを推し量らないでください。
- 規程と手引きの記載が食い違うときは、どちらが優先かを決めず、
  両方を並べて「財務に確認」と書いてください。

「判定を変えない」を最初に書くのは、モデルが判定を読み直そうとするからです。 判定に「上限90日を超える」とあっても、手引きに「長期の取引先は例外として扱うことがある」とあれば、モデルは判定を和らげた文を書きます。 判定はプログラムの側の事実として固定し、モデルにはその先の手続きだけを任せます。

「認められる見込み」を禁じるのは、営業担当がその一言を取引先に伝えるからです。 交渉の場では、見込みと決定の区別はすぐに消えます。

Step7

出力形式を固定する

中継プログラムが、数字の判定と answer メソッドの応答を合わせて、次の形で画面と記録に渡します。

{
  "query_id": "",
  "session_id": "",
  "sales_id": "",
  "customer_id": "K30418",
  "request": { "closing": "月末", "site_days": 120, "method": "bill | transfer | e_claim",
               "amount": 0, "split": 1, "circumstances": ["first_deal | split_delivery | add_on"] },
  "ledger": { "grade": "B", "limit": 0, "receivable": 0, "backlog": 0,
              "review_due": "", "as_of": "" },
  "checks": [ { "item": "site_days | method | limit | review_due",
                "result": "ok | over | not_allowed | expired | missing",
                "basis": "", "detail": "" } ],
  "verdict": "within | exception | review",
  "rules": [ { "doc_type": "rule | guide | internal", "article": "",
               "summary": "", "uri": "", "grounding_score": 0 } ],
  "procedure": { "form": "", "attachments": [""], "approver": "", "timing": "" },
  "not_found": false,
  "application_draft": ""
}

1つ目の理由は、checks と rules を別の層に置けることです。 checks は中継プログラムが台帳と基準表から出し、rules はAIが規程から探します。verdict は checks だけで機械的に決めます。 1つでも over か not_allowed があれば exception、expired か missing があれば review、すべて ok なら within です。規程の答えが何を書いても、判定は動きません。

2つ目は、ledger に as_of を持てることです。 台帳を前日の夜の書き出しで読んでいるときは、今日の午前に入った受注が受注残に入っていません。 画面に時点を出し、限度に近いものは財務の確認に回す目安にします。

3つ目は、application_draft で申請の手間が減ることです。 exception のとき、中継プログラムは checks と procedure から申請書の下書きを作ります。理由の欄は空のまま渡し、営業担当が書きます。 例外を求める理由は、取引先と話した本人にしか書けません。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
社内のチャット画面社内向けの画面取引先と条件の入力、判定と根拠の表示
社内の ID 基盤ログイン営業部と財務部を見分け、アクセス制御に渡す
販売管理読み取りの口(無ければ毎晩の書き出し)与信区分、限度額、審査の期限、売掛金、受注残
区分ごとの基準表読み取り支払サイト・支払手段・限度額の基準
Agent Searchanswer メソッドの呼び出し規程と手引きから条項と手続きを返す
財務の待ち行列書き込み例外の申請の下書きと、確認の要る質問
質問の記録書き込み条件・判定・根拠・その後の扱いを残す

販売管理には書き込みません。 受注の登録も、与信区分の変更も、この画面から行う経路を作りません。 範囲内と出たものも、受注の登録はこれまでどおり営業担当が販売管理で行います。

アクセス制御のための ID は、画面のログインから渡します。 アクセス制御のあるデータストアでは、利用する人に検索と回答の権限(discoveryengine.servingConfigs.search、discoveryengine.servingConfigs.answer)を含むロールを付けます。中継プログラムがサービスの権限でまとめて検索すると、全員が財務の内部の基準まで読める状態になります。 検索はログインした人の権限で行います。

Step9

人が確認する

範囲内(within)のものは、営業担当が根拠の条項と計算の内訳を確かめて進めます。 財務は個別には確かめず、記録を週に1回抜き取りで見ます。

  1. 取引先と条件を確かめる … 画面の上の取引先のコードと条件が、取引先と話した内容と合っているかを見ます
  2. 台帳の時点を見る … as_of が前日なら、今日入った受注が受注残に入っていないことを頭に置きます
  3. 根拠の条項を開く … 事情(初回取引・分割納品)の扱いが自分の取引に当たっているかを読みます
  4. 例外のものは申請書の理由を書く … 下書きの理由の欄を埋めて出します

財務の担当は、exception と review のものを確かめます。 申請の内容と根拠の条項を読み、決裁者に回します。review のうち審査の期限切れのものは、臨時の審査に回します。

目標は、240件をならして1件9分です。 範囲内のものは営業担当が確かめて5分前後、例外と確認のものは財務が確かめるので20分前後かかります。例外と確認が2割強という想定でならすと9分です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
与信区分が空(新規の取引先)review。財務の新規の審査へ。規程の新規取引の条項だけを示す
審査の期限が過ぎているreview。臨時の審査へ。範囲内の判定を出さない
販売管理が応答しない判定を出さず「後で再送」。規程の答えだけを出すこともしない
事情に当てはまる記載が無いnot_found。財務の待ち行列へ
規程と手引きが食い違う両方を並べて財務へ。どちらが優先かは決めない
根拠のスコアが低く答えが落ちたLOW_GROUNDED_CONTENT。判定は出し、手続きは財務に確認と出す
担当でない取引先を聞きたい画面で選べない。担当の割り当てを営業の上長に依頼する
規程の改定日をまたぐ取引改定後の版で判定し、画面に「○日改定」と出す

1行目と2行目が、例外の申請の漏れの入り口です。 どちらも数字の照合の前に中継プログラムが止めるので、区分の無い取引先や期限切れの区分で「範囲内」と出ることはありません。

3行目で規程の答えだけを出さないのは、判定の無い答えが判定に見えるからです。

Step11

記録を残す

  • 質問の文、取引先のコード、条件、営業担当、日時、セッションの ID
  • 読んだ台帳の値と時点、照らした基準表の版、checks と verdict
  • 絞り込みの式と、answer メソッドの応答の全文(出典と根拠のスコアを含む)
  • 例外の申請を出したか、決裁の結果
  • 範囲内と出た後に、実際に受注したか(販売管理の受注番号との対応)
  • 財務の抜き取りの確認の結果

5つ目は、月末の与信の監視と突き合わせるために残します。 監視で限度超過が見つかった取引先について、受注の前にこの画面で確かめたか、確かめたときの判定は何だったかを見ます。範囲内と出て超過したなら、受注残の取り込みか台帳の時点に穴があります。

2つ目で基準表の版を残すのは、規程の改定の後で当時の判定を説明するためです。

04実装レベルの3段階

最小構成:規程と手引きを手でAIの画面に読み込ませ、判定を書いた形で手続きを聞く / 1件ずつの条項と手続きの探索
半自動化:上記+規程と手引きをデータストアに入れ、営業担当が検索する。数字は営業担当が台帳で確かめる / 条項と手続きの検索と出典の表示
本格構成:上記+台帳と基準表を読んで判定を機械的に出し、アクセス制御で文書を分け、財務の待ち行列と申請の下書きにつなぐ / 照合・当てはめ・回し先の振り分けの全体

最小構成は、確かめるための段階です。 半自動化で、1件30分が18分程度になります。 規程を探す時間は減りますが、限度額の計算と区分の確かめは営業担当が行い、自信が無いものは財務に聞く流れが残ります。 本格構成で9分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、数字の判定を人が電卓で出すか、台帳と基準表から機械的に出すかの違いです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で1か月使うと、規程に書かれていない扱いと、営業担当がよく聞く事情が分かります。そこを手引きに書き足してから本格構成に進むほうが、財務へ回る件数が減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
40 名
月間件数
240 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
9 分
現在  240件 × 30分 ÷ 60 = 120 時間/月
導入後 240件 × 9分 ÷ 60 = 36 時間/月
月間削減時間
84h
削減率
70%
年間削減時間
1,008h
年間金額換算(時間単価3,000円)
302万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 取引先が数百〜数千社あり、与信区分ごとに支払条件の上限や取引額の限度を与信管理規程で決めている商社・卸・メーカーの販売部門。営業担当が見積や受注のたびに規程を読み、財務へ電話やメールで確かめていて、財務の担当が同じ質問に何度も答えている場合。規程の解釈が担当者ごとにぶれ、例外の申請が要るものが申請されずに受注されることがある場合。
向いていない
  1. 取引先が数十社で、取引条件がほぼ一律の場合。与信区分や限度額が台帳で管理されておらず、基幹の仕組みから読めない場合(先に与信の台帳を整えるのが先です)。取引先の信用の評価そのものや、例外を認めるかどうかの決裁までAIに任せたい場合(この構成は規程の当てはめと手続きを示すだけで、与信の判断と例外の決裁は財務と決裁者が行います)。

07最小構成で試す方法

  1. 過去3か月に財務へ来た確認のメールから30件を選ぶ(例外の申請になったものを10件入れる)
  2. 30件それぞれについて、当時の取引先の与信区分・限度額・残高と、財務の答えを書き出す
  3. 与信管理規程と営業向けの手引きを、手元のAIサービスに読み込ませる
  4. 「区分B、支払サイト120日、区分の上限90日を超える。初回の取引。この場合に規程が定める手続き・申請の書式・決裁者を、条項の番号付きで答えてください。認められるかどうかは書かないでください。記載が無ければ無いと書いてください」のように、判定を書いた形で質問する
  5. 出てきた答えを、財務の当時の答えと突き合わせる

30件は必ずやってください。 データストアを組む前に、「判定を渡せば、規程から手続きが引けるのか」を確かめます。

出てきた内容判断
財務の答えと同じ条項と手続きが出た基準表の作成とデータストアの構築に進む
「認められる見込み」と書いた、判定を和らげた指示の書き方で直る。構成は有効
事情の扱いが規程に書かれておらず答えが割れた規程と手引きの整備が先。 財務の答え方を手引きに書き足す

3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、財務の担当ごとに答えが少しずつ違っていた理由が1つ分かったということです。 その答え方を手引きに書いてから、もう一度30件を試します。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが「受けてよい」と書く判定は中継プログラムが出し、AIには手続きだけを探させる
判定を和らげた文が出る指示の冒頭で「判定を変えない」と固定する
受注残を足し忘れて範囲内と出る台帳から受注残を必ず読み、時点を画面に出す
審査の期限切れの区分で判定する中継プログラムで期限を見て review で止める
似た社名の取引先を取り違える担当の取引先を画面で選ばせ、コードで確定させる
営業に財務の内部の基準が見えるアクセス制御を作成時に有効にし、ログインした人の権限で検索する
改定前の規程で答える版ごとに適用期間を付け、今日の日付で絞る
「認められる見込み」と伝わる指示で禁じ、申請の理由は営業担当が書く
事情の扱いが規程に無いnot_found で財務へ。財務の答え方を手引きに書き足す
規程と手引きが食い違うどちらが優先かを決めさせず、並べて財務へ
範囲内のものを財務が誰も見ない週1回の抜き取りと、月末の監視との突き合わせを続ける

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「範囲内」という一言が誤って出る失敗で、営業担当はその一言で受注します。 判定を文章ではなく台帳と基準表の照合で出しているかで、運用に乗るかが決まります。

6行目は、作り始めてから気づくと作り直しになります。 アクセス制御はデータストアの作成後に入れられません。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 取引先ごとの与信区分、限度額、売掛金の残高、受注残、そして財務の内部の審査基準です。

  1. 取引先の与信区分を担当外の営業に見せない … 区分は取引先の評価そのものです。画面で選べる取引先を担当の割り当てで絞り、台帳も担当の取引先しか読まない作りにします
  2. 内部の審査基準を営業に見せない … 区分を決める基準が営業に知られると、取引先との交渉で区分を上げる材料として使われます。 アクセス制御で財務部だけを読み手にします
  3. 取引先に画面を見せない、判定を伝えない … 判定は社内の手続きのためのものです。取引先に伝えるのは、決裁の後に決まった条件だけです
  4. この構成は与信の判断をしません … 区分を決める審査、例外を認めるかどうかの決裁は、財務と決裁者が規程に沿って行います。 この構成が出すのは、基準表との照合と規程の手続きだけです
  5. 基準表の更新を財務の手順にする … 規程を改定しても基準表を更新しなければ、古い基準で判定が出続けます。 改定の決裁と基準表の更新を同じ手続きにします
  6. 記録の保存期間を決める … 取引先ごとの条件と判定の記録は、与信の台帳と同じ扱いで保存し、取引が終わった取引先の記録も保存の期間の扱いに従います

誤りが起きた場合のリスクは、例外の申請が要るものを範囲内として受注することと、内部の基準が営業に漏れることの2つです。 前者は回収の不安として、後者は審査の形骸化として後から表に出ます。前者は機械的な判定で、後者はアクセス制御とログインした人の権限での検索で、設計の側で止めます。

10まず何から始めるか

1週目:基準表を作る

規程の別表から、区分ごとの支払サイトの上限・使える支払手段・限度額の扱いを、1区分1行の表にします。 財務の3名で読み合わせ、別表の注記で書かれている扱いを列に起こします。この作業で、営業担当が別表のどこで迷っていたかが見えます。

2週目:30件で試す

過去の確認のメール30件を、判定を書いた形で手元のAIサービスに聞きます。「認められる見込み」と書いていないか、判定を和らげていないかを最優先で見ます。

3週目:規程と手引きを分け、台帳の読み方を決める

規程を条項ごとに、手引きを主題ごとに分け、営業向けと財務の内部向けの読み手を決めます。 販売管理から与信区分・限度額・審査の期限・売掛金・受注残を読む方法と、その時点を決めます。

4週目:照合と検索をつなぐ

アクセス制御と分割の設定を決めてデータストアを作り、規程と手引きを取り込みます。中継プログラムで台帳と基準表を照らし、判定と根拠を財務の担当の画面に出すところまで作ります。

2か月目: 財務の3名と営業担当5名で使い、review と not_found を毎週数えます。3か月目以降: 営業担当全員に開き、1件30分が何分になったかを実測します。月末の監視で見つかる例外の申請の漏れが目に見えて減り、財務への確認が例外と新規の審査に絞られた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドが検索結果から回答を作ること。前のセッションの ID でやり取りを続けられること。includeCitations(既定は無効)、ignoreLowRelevantContent、preamble、searchSpec の filter。groundingSpec の filteringLevel(FILTERING_LEVEL_LOW/FILTERING_LEVEL_HIGH)、文ごとの 0〜1 の根拠のスコア、answerSkippedReasons の LOW_GROUNDED_CONTENTGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-08
絞り込みの ANY()、比較の演算子、AND/OR、日付を ISO 8601 の文字列で比べられること、項目を索引可能にする必要があることGoogle Cloud: Filter search for structured or unstructured data2026-10-08
アクセス制御が Cloud Storage・BigQuery・Google Drive 等で使えること。Cloud Storage では acl_info の readers に principals(グループか個人)を書くこと。データストアの作成時に選び、後から切り替えられないこと。1文書の読み手が3,000までであること。利用者に discoveryengine.servingConfigs.search と discoveryengine.servingConfigs.answer を含むロールを付けることGoogle Cloud: Set up data source access control2026-10-08
分割の大きさが100〜500トークン(既定500)、includeAncestorHeadings が既定で無効、分割はデータストアの作成後に切り替えられないことGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-08

与信の判断と例外の決裁は、各社の与信管理規程に沿って財務と決裁者が行ってください。 本記事は Google Cloud の公式ドキュメントで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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