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宿泊を終えた客ごとに、滞在中の利用と要望の記録から次の滞在につながる案内メールの下書きを作り、配信の前にフロントの確認に回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

宿泊を終えた客ごとに、滞在中の食事・館内の利用・記念日・要望の記録から、お礼と次の滞在の案内を兼ねたメールの下書きを作ります。配信の前にフロントの担当が承認し、承認されたものだけを送ります。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
宿泊/飲食
対象部門
マーケティング/営業
対象業務
書類作成
主な課題
人手が足りない/属人化している/書類作成に時間がかかる
AIで行う処理
生成
主な効果
品質標準化/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 担当が滞在の記録の一覧を開き、配信に同意した客の行を探す
  2. 記録の欄を読み、苦情や不手際が無かったか、記念日だったかを確かめる
  3. 季節のプランと催しの一覧を開き、その客に勧めるものを選ぶ
  4. お礼と次の滞在の案内の文面を書く
  5. もう1人の担当に見てもらい、Gmail から送る
  6. 一覧に送った日を書く
導入後(After)
  1. 自動PMSから前日にチェックアウトした客の行が、滞在の記録の一覧に書き出される(既存)
  2. 人フロントが記録の欄を書き足し、苦情の有無を選び、「送る準備」の欄を「済」にする
  3. 自動「送る準備」の欄が変わったことをきっかけに Zap が動く
  4. 自動配信の同意・苦情の有無・送信済みかを確かめ、当てはまらない客は止める
  5. 自動AI by Zapier が、記録と季節のプランの一覧から、お礼と次の滞在の案内の文面を作る
  6. 自動Human in the Loop が、フロントの担当に承認を依頼し、Zap がその場で止まる
  7. 人担当が文面を読み、直すところは直して承認するか、却下する
  8. 自動承認されたものだけを Gmail から送り、一覧に送った日と承認した担当を書く
各工程の詳しい説明を読む
  1. 担当が滞在の記録の一覧を開き、配信に同意した客の行を探す
  2. 記録の欄を読み、苦情や不手際が無かったか、記念日だったかを確かめる
  3. 季節のプランと催しの一覧を開き、その客に勧めるものを選ぶ
  4. お礼と次の滞在の案内の文面を書く
  5. もう1人の担当に見てもらい、Gmail から送る
  6. 一覧に送った日を書く

(a)1通ずつ書く時間が無い。 4番目の文面は、記録の内容に触れながら書くので、定型の文を貼るだけでは済みません。 「お誕生日のお祝いにお選びいただき」「お夕食の和牛を追加された」と書くには、記録を読み直しながら書くことになります。

(b)書く人によって中身が違う。 ある担当は滞在中の会話にまで触れて丁寧に書き、別の担当は季節のプランの紹介だけを書きます。同じように過ごした客でも、受け取る文面が違います。 勧めるプランも担当の好みに寄ります。

(c)送らないまま機会を逃す。 繁忙期に後回しにした客は、2週間たつと「今さら送っても」と送られなくなります。次の季節の予約が動き始める時期に、案内が届かない客が出ます。

  1. 【自動】 PMSから前日にチェックアウトした客の行が、滞在の記録の一覧に書き出される(既存)
  2. 【人】 フロントが記録の欄を書き足し、苦情の有無を選び、「送る準備」の欄を「済」にする
  3. 【自動】 「送る準備」の欄が変わったことをきっかけに Zap が動く
  4. 【自動】 配信の同意・苦情の有無・送信済みかを確かめ、当てはまらない客は止める
  5. 【自動】 AI by Zapier が、記録と季節のプランの一覧から、お礼と次の滞在の案内の文面を作る
  6. 【自動】 Human in the Loop が、フロントの担当に承認を依頼し、Zap がその場で止まる
  7. 【人】 担当が文面を読み、直すところは直して承認するか、却下する
  8. 【自動】 承認されたものだけを Gmail から送り、一覧に送った日と承認した担当を書く

2番目が、この設計の分かれ目です。 Zap を動かすのは、PMSから行が書き出されたときではなく、フロントが記録を書き終えて「済」にしたときです。 書き出された直後の行には、記録の欄がまだ空です。そこで文面を作ると、記録に触れない、誰にでも送れる文面になります。

4番目を AI の手前に置くのも、意図してのことです。 送ってはいけない客を AI に判断させず、一覧の欄の値で機械的に止めます。 文面を作ってから止めるのではなく、作らないようにします。

02今回想定するシステム構成

構成図
PMS ──(毎朝、前日のチェックアウトの行を書き出す)
   ▼
Google スプレッドシート(滞在の記録の一覧)
   │  フロントが記録を書き足し、「送る準備」を「済」にする
   ▼【トリガー】New or Updated Spreadsheet Row(トリガーの列:送る準備)
Zapier(Zap)
   ▼
Filter ── 配信の同意あり/苦情なし/未送信/アドレスあり
   ▼
AI by Zapier ── お礼と次の滞在の案内の文面
   │   ナレッジ:季節のプランと催しの一覧、文面の決まり
   ▼
Human in the Loop ── Request Approval(フロントの担当が承認・修正・却下)
   ▼ 承認
Gmail ── Send Email(送信者の名称と配信停止の連絡先を固定の文で付ける)
   ▼
Google Sheets ── Update Spreadsheet Row(送った日、承認した担当)
役割想定する製品代替候補
ワークフローZapier(Google Sheets、Filter、Human in the Loop、Gmail)Make、Power Automate、n8n
生成AIAI by Zapier(Analyze and Return Data)ChatGPT(OpenAI)、Claude、Gemini
保管Google スプレッドシート(滞在の記録の一覧)Airtable
メールGmail(旅館の代表アドレス)Microsoft Outlook

PMSからの書き出しと滞在の記録の一覧は、今あるものを使います。 足すのは、一覧の「送る準備」「苦情の有無」「送った日」「承認した担当」の4つの列と、AI のナレッジにする季節のプランの一覧と文面の決まり、そして Zap です。PMSには、この構成からは触れません。

土台になるのは、Zapier の AI by Zapier です。 Zap に生成AIの手順を足す組み込みの道具で、返してほしい項目を出力のフィールドとして定義できます。 1つの手順にナレッジのソースを最大20まで付けられ、ソースには .DOCX や .PDF などのファイルを使えます。使えるのは Professional・Team・Enterprise のプランで、モデルの段階によって使うタスクの数が変わります(Standard は1倍、Advanced は3倍、Premium は5倍。新しい手順の既定は Premium)。

承認には、Human in the Loop の Request Approval を使います。 Zap の実行をその場で止め、1人以上の確認者に、承認・却下・内容の修正を求める手順です。Professional・Team・Enterprise のプランで使えますが、Professional のアカウントでは、承認の依頼を自分自身にしか送れません。 フロントの複数の担当で回すなら、Team 以上のプランにします。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

Google Sheets の New or Updated Spreadsheet Row で、「送る準備」の列が変わったときに動かします。 このトリガーは、一定の間隔で変化を確かめる方式(Polling)で、行が足されたときにも変更されたときにも動きます。トリガーの列を指定すると、その列が変わったときだけ動きます。

列を指定しないと、記録の欄を書き足すたびに Zap が動きます。 Zapier のヘルプでも、どの列でも動く設定ではちょっとした編集のたびに動くこと、入力の途中の自動保存で書きかけの行が送られることが、意図しない実行の原因として挙げられています。対策として「Send to Zap」のような専用の列を設ける方法が示されており、「送る準備」の列はこれに当たります。

PMSからの書き出しの行を起点にしないのは、記録がまだ空だからです。 New Spreadsheet Row は行が一覧の末尾に足されたときに即時に動くトリガーですが、書き出された直後の行には、フロントが書き足す記録が入っていません。 起点はフロントの手で「済」にしたときにします。

一覧に行を足したり消したりするときは、Zap を止めてから作業します。 動いたまま行の並びを変えると、データの処理が乱れるとされています。月末に古い行を別のシートへ移すときなどが、これに当たります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
滞在の基本宿泊者名、メールアドレス、到着日・出発日、人数、部屋の種類、宿泊のプラン、来館の回数滞在の記録の一覧(PMSからの書き出し)
滞在中の記録夕食で追加した料理と飲み物、貸切風呂やエステの利用、記念日、会話の中の要望や次の予定同じ一覧(フロントと客室係が書き足す)
送る条件配信の同意、苦情の有無、送る準備、送った日同じ一覧
季節のプランと催し次の3か月のプランの名前、向いている客、期間、記念日の特典の有無、予約ページの名前AI by Zapier のナレッジのソース
文面の決まり書き出しと結びの言葉、使わない言い回し、文の長さ、敬称同じくナレッジのソース

質を決めるのは、滞在中の記録の書き方です。 「誕生日」とだけあるのと、「奥様のお誕生日。デザートにプレートをご用意」とあるのとでは、文面に書ける中身がまったく違います。記録の書き方の例を、フロントと客室係で共有しておきます。

季節のプランの一覧には、「向いている客」の列を必ず書きます。 「記念日のご夫婦向け」「三世代のご家族向け」「おひとり様向け」と書いておけば、AIはその列と滞在の記録を照らして、勧めるプランを選べます。 名前と料金だけの一覧では、どの客にも同じプランを勧めます。

Step3

データの取得方法を決める

トリガーが渡す行の値をそのまま使います。 一覧の1行に、滞在の基本・記録・送る条件がそろっているので、別の表を引く手順はありません。 季節のプランと文面の決まりは、AI by Zapier のナレッジのソースとして付けておきます。

取るものどこから何に使うか
滞在の基本と記録トリガーが渡す行文面の中身
送る条件トリガーが渡す行Filter で止めるかどうか
季節のプランと文面の決まりナレッジのソース勧めるプランの選択と文体
行の IDトリガーが渡す行送った後に同じ行を書き換える

AI by Zapier に渡す欄は、行のすべてではありません。 渡す欄を手順の入力に1つずつ割り当て、渡さない欄は割り当てません。

欄AIに渡すか理由
宿泊者名、来館の回数、日程、人数、プラン渡す文面の宛名と書き出し
夕食の追加、館内の利用、記念日、会話の中の要望渡すお礼と案内の中身
メールアドレス渡さない宛先は Gmail の手順で直接使う
体の状態、食事の制限、苦情の内容渡さない文面に書いてはいけない情報

いちばん下の行を別の列に分けておくのが、この構成の下ごしらえです。 記録の欄が1つの自由記入だと、体の状態も会話も同じ欄に入り、渡すか渡さないかを Zap の側で分けられません。

ナレッジのソースは、季節が変わるたびに差し替えます。 AI by Zapier は実行のたびにナレッジを最初の状態に戻すとされているので、ソースのファイルを更新すれば、次の実行から新しい一覧で選びます。 差し替えを忘れると、終わった季節のプランを勧めます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

Filter の手順で、次のすべてを満たす行だけを通します。

  1. 配信の同意が「あり」
  2. 苦情の有無が「なし」
  3. 送った日が空
  4. メールアドレスが空でない
  5. 出発日から14日以内

2番目の「苦情の有無」は、フロントが選ぶ欄にします。 記録の文から AI に苦情を読み取らせる設計にはしません。「お詫びした」「提供が遅れた」の書き方は人によって違い、読み落としがあると取り返しがつかないからです。 選ぶ欄にしておけば、空のまま「済」にすることもできないよう、一覧の入力の規則で止められます。

5番目は、時機を外した案内を送らないためです。 出発から日がたった客に「先日はありがとうございました」と送っても、印象がずれます。14日を過ぎた行は送らず、季節の一斉の案内に回します。

同意の欄は、PMSから書き出された値をそのまま使います。 フロントが手で書き換えられる欄にすると、「たぶん同意していたはず」で「あり」にされることがあります。書き換えは配信停止の連絡を受けて「なし」にするときだけと決めておきます。

3番目は、同じ客に二度送らないためです。 「送る準備」の欄を一度「未」に戻してから「済」にすると、Zap はもう一度動きます。送った日が入っていれば、そこで止まります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、記録に書かれたことに触れたお礼の文と、季節のプランの一覧から選んだ次の滞在の案内を、1通のメールにまとめることです。

文面の部分何を書くか根拠
お礼滞在へのお礼と、記録に書かれた出来事への一言滞在中の記録
次の滞在の案内季節のプランから1つ(多くても2つ)と、選んだ理由季節のプランの一覧と、記録の中の要望・記念日
結び決まった結びの言葉文面の決まり
させないこと理由
記録に無い出来事への言及「お料理をお楽しみいただけたことと存じます」のような推し量りは、不満を持った客には逆効果
値引き・特典の約束プランの一覧に書かれた特典以外は書かない。特典は営業が決める
料金の記載料金は日と人数で変わる。予約ページの名前だけを書く
健康や体の状態への言及記録に「足が不自由」とあっても、文面には書かない
次の予定の決めつけ「紅葉の時期にお待ちしております」と、予約が決まったように書かない

4行目がいちばん気をつけたい点です。 記録には、車いすの利用、食事の制限、体調を崩されたことなど、接客のために書かれた情報が入っています。 それをメールの文面に書くと、本人だけでなく、同じアドレスを見る家族にも伝わります。 文面に使ってよいのは、食事・館内の利用・記念日・次の予定の会話に限ります。

Step6

指示内容を固定する

あなたは温泉旅館のフロントで、お泊りいただいたお客様に
お礼と次のご滞在のご案内のメールを書く立場です。
次の滞在の記録と、ナレッジの「季節のプランと催し」「文面の決まり」だけを根拠に書いてください。

【滞在の記録】
お名前:{guest_name} 様 ご来館:{visit_count}回目
ご滞在:{arrival}〜{departure} {guests}名様 プラン:{plan}
お夕食で追加されたもの:{dinner_extras}
館内のご利用:{facility_use}
記念日:{anniversary}
会話の中のご要望・次のご予定:{guest_comments}

【書き方】
- お礼の段落では、上の記録に書かれた出来事に1つか2つだけ触れてください。
- 次のご滞在の案内では、ナレッジの「季節のプランと催し」から1つ選び、
  「向いている客」の列と、記録の記念日・ご要望を照らして理由を添えてください。
  合うものが無ければ、プランを勧めず、季節の催しを1つだけ案内してください。
- 文面の決まりの書き出しと結びの言葉を使ってください。本文は500字以内。

【厳守事項】
- 記録に書かれていないことを書かないでください。
  「お楽しみいただけたことと存じます」のような推し量りもしないでください。
- 料金、値引き、プランの一覧に無い特典を書かないでください。
- 体の状態、健康、食事の制限、苦情やお詫びに関することを書かないでください。
- 次のご予定を決まったこととして書かないでください。
- 送信者の名称や配信停止の案内は書かないでください(後で固定の文を付けます)。

「推し量りもしない」を明記しないと、どの客にも「ごゆっくりお過ごしいただけたことと存じます」が入ります。 記録が少ない客ほど、AIはこの種の文で行数を埋めます。記録が少なければ短い文面でよいと、文面の決まりにも書いておきます。

配信停止の案内を AI に書かせないのは、毎回同じ文で確実に入れるためです。 Gmail の手順で、本文の後ろに固定の文として付けます。

Step7

出力形式を固定する

AI by Zapier の出力フィールドを、次の形で定義します。

{
  "subject": "",
  "body": "",
  "recommended_plan": "秋の記念日プラン",
  "reason": "記録:奥様のお誕生日/会話:次は紅葉の時期に",
  "used_records": ["anniversary", "guest_comments"],
  "note_for_front": ""
}

1つ目の理由は、used_records で承認する担当が根拠を確かめやすくなることです。 文面のどの部分が記録のどの欄から来たかが分かれば、記録に無いことが書かれていないかを短い時間で見られます。

2つ目は、recommended_plan で、どのプランを勧めたかを一覧に残せることです。 月末にプランごとの件数を数えれば、勧め方が特定のプランに偏っていないかが分かります。

作られる本文は、次のような形になります。

山田 花子 様

このたびは当館にお越しいただき、誠にありがとうございました。
奥様のお誕生日のお祝いに、2度目のご滞在をお選びいただけたこと、
係一同うれしく思っております。

「次は紅葉の時期に」とお話しくださったと伺いました。
11月には、記念日のご夫婦向けの「秋の記念日プラン」をご用意しております。
予約ページの「季節のプラン」からご覧いただけます。

またお目にかかれる日を、心よりお待ちしております。

記録の2つの欄(記念日と会話)にだけ触れ、料理の感想は書いていません。 記録に感想が無いからです。

承認の依頼に載せる内容は、次のような形にします。

【案内メールの承認】山田 花子 様(10/4〜10/5 2名様・2回目)
勧めるプラン:秋の記念日プラン
根拠:奥様のお誕生日/会話「次は紅葉の時期に」
件名:先日はお越しいただきありがとうございました
本文:(AIの文面。この画面で直せます)
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
滞在の記録の一覧Google Sheets(New or Updated Spreadsheet Row)「送る準備」の列の変化で動く
送る条件Filter同意・苦情・送信済み・アドレス・日数で止める
AI by ZapierZap の手順お礼と次の滞在の案内の文面
承認Human in the Loop(Request Approval)フロントの担当が承認・修正・却下
メールGmail(Send Email)承認されたものだけを送る
記録Google Sheets(Update Spreadsheet Row)送った日と承認した担当を同じ行に書く

承認の依頼の設定は、次のようにします。 確認者はフロントの担当(特定のメンバー)、通知はメールかSlack、確認者が内容を直せる設定を有効にします。承認の期限は2日にし、期限を過ぎたら実行を終えるほうを選びます。期限を過ぎて自動で先へ進む設定にすると、誰も読んでいない文面が送られます。却下されたときも、実行を止めるほうを選びます。

確認者は Zapier のアカウントを持ち、Zap を共有されている必要があります。 フロントの担当のうち、承認を受け持つ2〜3名に絞ってアカウントを用意します。

Gmail の送信には、Gmail の1日の送信数の上限がかかります。 月300件なら1日あたり十数件で上限には遠いのですが、同じアドレスで季節の一斉の案内も送っている場合は、合わせた数で考えます。 上限を超えると、アカウントが最大24時間止められることがあるとされています。

Step9

人が確認する

フロントの担当は、承認の依頼を開いて次の3つを見ます。

  1. 記録に無いことが書かれていないか … used_records と本文を見比べます
  2. 書いてはいけないことが入っていないか … 体の状態、苦情、料金、特典
  3. 勧めたプランが、その客に合っているか … 自分が接客した客なら、会話の印象と照らします

直すところがあれば、承認の画面で直してから承認します。 直した文面がそのまま送られます。合わないと思えば却下し、一覧の「送る準備」を「保留」にして、手で書くかどうかを決めます。

1件にかける時間の目安は3分です。 自分が接客していない客でも、used_records と記録の欄を見比べれば判断できます。3分で判断がつかない文面は、直そうとせず却下し、手で書くほうに回します。 承認の画面で長く直し始めると、手で書くより時間がかかります。

承認した担当の名前は一覧に残ります。 送られたメールについて客から問い合わせがあったときに、誰がどの文面を承認したかをたどれます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
記録を書き足すたびに Zap が動くトリガーの列を「送る準備」に指定する
苦情の有無が空のまま「済」になる一覧の入力の規則で、空のままでは「済」を選べないようにする
承認の期限を過ぎる実行を終える。一覧の送った日が空のまま残るので、翌週にまとめて見直す
承認の画面で文面を消してしまう本文が空なら Gmail の手順の前で止める Filter を置く
同じ客の行が2つある(連泊を分けた予約など)送った日で止まるので、2通目は作られない。1通目に両方の記録が入っているかを確かめる
AI by Zapier の手順が失敗する送った日が空のまま残る。「送る準備」を「未」→「済」に戻して再実行
季節のプランの一覧が古い終わった季節のプランを勧める。季節の変わり目にソースを差し替える
宛先のアドレスが誤っている送信の失敗は Zap の履歴に残る。一覧の該当の行に印を付ける
送った後に苦情が届く一覧の苦情の有無を「あり」に直し、次の季節の一斉の案内からも外す

上から2行目が、いちばん重い例外です。 苦情の有無が空の行を通さないことが、苦情のあった客に案内が届かないことの、ただ1つの守りです。 入力の規則と Filter の両方で止めます。

Step11

記録を残す

  • 送った文面(件名と本文)と、AIが作った元の文面
  • 承認した担当、承認した日時、直したかどうか
  • 勧めたプランと、その根拠にした記録の欄
  • 却下・期限切れになった客と、その後の扱い(手で書いた/送らなかった)
  • 配信の同意を得た日と方法(予約のときの選択)

最後の行は、法令への対応のために残します。 広告や宣伝を目的とするメールは、特定電子メール法で、あらかじめ同意した相手などにしか送ってはならず、同意を受けた側はその記録を保存しなければならないとされています。同意の記録はPMSや予約の仕組みの側にあることが多いので、どこに残っているかを確かめ、一覧から引けるようにしておきます。

04実装レベルの3段階

最小構成:記録とプランの一覧を手でAIの画面に貼り、文面を作らせる / 文面の作成
半自動化:上記+「送る準備」の列で Zap を動かし、条件で止め、承認を経て Gmail から送る / 文面の作成から承認と配信まで
本格構成:上記+送った後の予約を一覧に結び付け、勧めたプランごとの予約の件数を毎月まとめる / 案内の効き目の振り返りまで

本記事の想定は半自動化です。 1件12分が4分になり、その4分の中心は、記録の欄を書き足すことと、承認の画面で文面を読むことです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を2か月回すと、承認の画面で直された箇所がたまります。直された箇所が多い言い回しを文面の決まりに足してから本格構成に進むほうが、振り返りの数字が文面の質に左右されません。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
4 分
現在  300件 × 12分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 300件 × 4分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価2,500円)
120万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 客室数が数十室規模の旅館・ホテルで、滞在中の食事・館内の利用・記念日・要望をフロントや客室係が記録しており、その記録を使って宿泊客ごとにお礼と次の滞在の案内を書いている、または書きたいと考えている場合。メールの配信に同意した宿泊客が月に数百人いる場合。季節ごとのプランや催しが決まっていて、一覧にできる場合。Zapier の有料プラン(承認の手順を複数のフロントの担当で回すなら Team 以上)と Google スプレッドシート・Gmail を使える場合。
向いていない
  1. 宿泊客の大半が予約サイト経由で、メールアドレスや配信の同意を自社で持っていない場合。滞在中の記録を残しておらず、全員に同じ文面を送る形で足りている場合。月の対象が数十人で、手書きの礼状で回っている場合。なお、苦情のあった宿泊客への対応、値引きや特典の約束、配信の同意の有無の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月チェックアウトした客のうち、配信に同意した20人を選ぶ(記録の多い客と少ない客を半々に)
  2. その20人の滞在の記録と、季節のプランの一覧を用意する
  3. 1人ずつ、記録とプランの一覧を手元のAIサービスの画面に貼り付ける
  4. 第7章の指示の例をそのまま使い、お礼と次の滞在の案内を書かせる
  5. フロントの担当2名が、20通を「そのまま送れる/直せば送れる/送れない」に分ける
出てきた内容判断
「そのまま送れる」「直せば送れる」が大半Zap の作成に進む
記録に無いことや推し量りが入る指示の書き方で直る。構成は有効
記録の少ない客の文面が、誰にでも送れる文になる記録の書き方が先。 AIの問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 文面に書ける中身は記録の中身で決まります。記録の書き方の例を共有してから、もう一度同じ20人で試します。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
苦情のあった客に案内が届く苦情の有無を人が選ぶ欄にし、空では「済」にできないようにする
体の状態や食事の制限が文面に入る指示で禁じ、承認の画面で必ず見る項目にする
記録を書き足すたびに Zap が動くトリガーの列を指定する
書きかけの行で文面が作られる「送る準備」の列を最後に「済」にする運用にする
Professional のプランで承認が回らない承認の依頼は自分自身にしか送れない。 Team 以上にする
期限切れの承認が自動で送られる期限を過ぎたら実行を終える設定にする
終わった季節のプランを勧める季節の変わり目にナレッジのソースを差し替える
どの客にも同じ推し量りの文が入る推し量りを禁じ、記録が少なければ短くてよいと決まりに書く
配信停止の案内が抜けるAIに書かせず、Gmail の手順で固定の文を付ける
一覧の行の並びを変えて Zap が乱れる行を足し引きするときは Zap を止める

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、送ってはいけない客、書いてはいけないことを、AIの判断に任せたときに起きます。 苦情は人が選ぶ欄で止め、体の状態は指示と承認の二重で止めます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 宿泊者の氏名とメールアドレス、滞在の日程と人数、食事や館内の利用、記念日、会話の中の要望、そして接客のために書かれた体の状態や食事の制限です。

  1. 配信の同意を確かめてから送る … 特定電子メール法は、広告や宣伝を目的とするメールを、あらかじめ同意した相手など法律が定める相手以外に送ることを禁じています。 同意の欄が「あり」の客だけを Filter で通します
  2. 送信者の名称と配信停止の連絡先を必ず表示する … 同じ法律で、送信者の氏名または名称と、受信を拒否する通知を受けるためのメールアドレスなどの表示が求められています。Gmail の手順で、固定の文として付けます。配信停止の連絡を受けたら、以後は送ってはならないとされているので、同意の欄を「なし」に変える手順を決めておきます
  3. 体の状態や食事の制限を文面に使わない … 記録の欄のうち、文面に使ってよい欄を決め、それ以外の欄は AI に渡さない設計にできます。体の状態を書く欄を別の列に分けておけば、Zap の側で渡さずに済みます
  4. 滞在の記録を案内に使ってよいかを確かめる … 宿泊者の情報を案内メールに使うことが、自社のプライバシーポリシーの利用目的に含まれているかを、事前に確かめてください
  5. 送信を承認なしに進めない … 承認の期限切れで先へ進む設定にしません

誤りが起きた場合のリスクは、送ってはいけない客に送ることと、書いてはいけないことを書くことの2つです。 前者は一覧の欄の値で機械的に止め、後者は指示と承認で止めます。どちらも、承認しないと送られない設計だから守れます。

10まず何から始めるか

1週目:一覧に4つの列を足す

滞在の記録の一覧に、「苦情の有無」「送る準備」「送った日」「承認した担当」の列を足します。苦情の有無は「あり/なし」から選ぶ欄にし、空のままでは「送る準備」を「済」にできない入力の規則を付けます。

2週目:季節のプランの一覧と文面の決まりを書く

次の3か月のプランと催しに、「向いている客」の列を足します。書き出しと結びの言葉、使わない言い回しを文面の決まりにまとめます。

3週目:20人で試す

手元のAIサービスで20人分の文面を作り、フロントの担当2名が「そのまま送れる/直せば送れる/送れない」に分けます。記録に無いことや体の状態が書かれていないかを最優先で見ます。

4週目:Zap をつなぐ

トリガー、Filter、AI by Zapier、承認、Gmail、一覧の書き換えまでを作ります。最初の2週間は、Gmail の宛先を旅館の担当のアドレスにして、届いた文面を確かめます。

2か月目: 宛先を宿泊客に切り替え、承認の画面で直された箇所を毎週見ます。3か月目以降: 送った後の予約を一覧に結び付け、1件12分が何分になったかを実測します。文面の決まりを一度見直した時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-07/最終更新:2026-10-07
確認した内容情報源確認日
AI by Zapier が Zap に生成AIの手順を足す組み込みの道具であること。Professional・Team・Enterprise で使えること。Standard(1倍)・Advanced(3倍)・Premium(5倍、新しい手順の既定)の段階があること。出力フィールドを定義できること。ナレッジのソースを最大20まで付けられ、.DOCX や .PDF などを使えること。実行のたびにナレッジが最初の状態に戻ることZapier: Use AI by Zapier to analyze and return data2026-10-07
New or Updated Spreadsheet Row が Polling で、行の追加と変更で動くこと。New Spreadsheet Row が即時で、末尾に足された行で動くことZapier: How to get started with Google Sheets on Zapier2026-10-07
どの列でも動く設定や入力途中の自動保存が意図しない実行の原因になること。トリガーの列の指定、「Send to Zap」のような専用の列、行を足し引きするときに Zap を止めることが対策として示されていることZapier: Google Sheets triggers unexpectedly or too soon2026-10-07
Request Approval が Zap の実行を止め、確認者に承認・却下・内容の修正を求めること。Professional・Team・Enterprise で使え、Professional では自分自身にしか依頼できないこと。確認者が内容を直せる設定、メール・Slack の通知、期限と期限後の動き(先へ進む/実行を終える)、却下されたときの動きを選べること。確認者が Zapier のアカウントを持ち、Zap を共有されている必要があることZapier: Request approval with Human in the Loop2026-10-07
Gmail の Send Email のアクションがあること。Gmail の1日の送信数の上限がかかり、超えるとアカウントが最大24時間止められることがあることZapier: How to get started with Gmail on Zapier2026-10-07
Update Spreadsheet Row で、行の ID を使って同じ行を書き換えられることZapier: Find and update spreadsheet rows in Google Sheets2026-10-07
特定電子メール法が、あらかじめ同意した者など定められた者以外への特定電子メールの送信を禁じ、同意の記録の保存を求めていること。受信拒否の通知を受けた後の送信を禁じていること。送信者の氏名または名称と、受信拒否の通知を受けるためのメールアドレス等の表示を求めていること総務省: 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律2026-10-07

配信の同意の取り方と表示の内容、宿泊者の情報の使い方は、自社の担当部署と専門家に確かめてください。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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