社内規程の改定案を、用語の定義・条番号の参照・社内の表記ルールで校正し、取締役会や規程委員会に出す新旧対照表を作る
各部門から届く社内規程の改定案を、定義した用語の揺れ・条番号の参照のずれ・社内の表記ルールに照らして Microsoft 365 Copilot で校正し、指摘の一覧にします。あわせて、改定前と改定後を条ごとに並べた新旧対照表の下書きを作ります。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini/Microsoft Copilot
- 対象業界
- その他/介護/教育/製造/金融
- 対象部門
- 法務/総務
- 対象業務
- 内容確認・チェック/書類作成
- 主な課題
- 属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 校正
- 主な効果
- 入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★☆☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- 既存ツールのみ(小)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 所管部門から、改定案の Word ファイルと改定の理由のメモが届く
- 担当者が現行の規程と改定案を並べて開き、変わった条を探す
- 新旧対照表の書式に、改定前と改定後の条文を条ごとに貼り、変わった箇所に下線を引く
- 改定後の文書を頭から読み、定義の条項にある用語の揺れと、表記ルールの違反を探す
- 条や項の追加・削除があれば、本文中の「第◯条」「前条」「同項」を一つずつ確かめる
- 指摘を所管部門に返し、直った版で新旧対照表を作り直す
- 人所管部門が、改定案を規程の改定フォルダ(SharePoint)に置く
- 人担当者が、Word の比較(リーガル ブラックライン)で現行の規程と改定案を比べ、変更履歴の付いた比較の文書を作る
- 【AI】 改定後の文書を、定義の条項・条番号の参照・表記ルールに照らして校正し、指摘の一覧を作る
- 【AI】 改定前と改定後を条ごとに並べた新旧対照表の下書きを作る
- 人担当者が、比較の文書の変更箇所が新旧対照表にすべて載っているかを確かめる
- 人担当者が、指摘の一覧を見て、所管部門に返すものを選ぶ
- 人所管部門が直した版で、2番から流し直す
- 人新旧対照表を確定し、規程委員会の資料にする
各工程の詳しい説明を読む
- 所管部門から、改定案の Word ファイルと改定の理由のメモが届く
- 担当者が現行の規程と改定案を並べて開き、変わった条を探す
- 新旧対照表の書式に、改定前と改定後の条文を条ごとに貼り、変わった箇所に下線を引く
- 改定後の文書を頭から読み、定義の条項にある用語の揺れと、表記ルールの違反を探す
- 条や項の追加・削除があれば、本文中の「第◯条」「前条」「同項」を一つずつ確かめる
- 指摘を所管部門に返し、直った版で新旧対照表を作り直す
(a)変わった箇所を見落とす。 所管部門の改定案は、変更履歴を残していないことが多くあります。担当者は2つのファイルを目で見比べて変わった条を探すので、1文字だけの変更(「できる」→「しなければならない」)を落とします。 落とした変更は新旧対照表に載らず、規程委員会で誰も見ないまま承認されます。
(b)条番号の参照がずれる。 第8条の次に新しい条を足すと、旧の第9条以降が1つずつ繰り下がります。本文中の「第12条第2項による」は、繰り下げた後では別の条を指しています。 所管部門は自分が変えた条しか見ていないため、参照のずれは総務まで残ります。
(c)用語が揺れる。 第2条で「従業員」と定義していても、改定案を書いた人が別の規程から文を写すと、「社員」「職員」が混ざります。定義した語の揺れは、読む人によっては対象の範囲が違うように見えます。
(d)校正の基準が人による。 表記ルールを覚えている担当者が休むと、その月の新旧対照表は表記が揺れたまま規程委員会に出ます。基準が人の中にあるので、新しい担当者が育ちません。 古参の担当者が直した跡は残っていても、なぜそう直したかはどこにも書かれていません。新しい担当者は、直された跡を見て真似るしかなく、同じ規程の中でも直す人によって表記が変わります。
- 【人】 所管部門が、改定案を規程の改定フォルダ(SharePoint)に置く
- 【人】 担当者が、Word の比較(リーガル ブラックライン)で現行の規程と改定案を比べ、変更履歴の付いた比較の文書を作る
- 【AI】 改定後の文書を、定義の条項・条番号の参照・表記ルールに照らして校正し、指摘の一覧を作る
- 【AI】 改定前と改定後を条ごとに並べた新旧対照表の下書きを作る
- 【人】 担当者が、比較の文書の変更箇所が新旧対照表にすべて載っているかを確かめる
- 【人】 担当者が、指摘の一覧を見て、所管部門に返すものを選ぶ
- 【人】 所管部門が直した版で、2番から流し直す
- 【人】 新旧対照表を確定し、規程委員会の資料にする
2番目と5番目が、この設計の要です。 何が変わったかは Word の比較が決め、新旧対照表に漏れが無いかは人がその比較の文書で確かめます。AI が作った対照表を、AI 以外のものさしで確かめる形にしています。
6番目で選ぶのは、指摘のうち所管部門に返すものです。 表記の揺れは総務で直してよいもの、用語の揺れは所管部門に意図を確かめるもの、と分けます。定義した語と違う語が使われているのは、わざと範囲を変えたのかもしれないからです。
02今回想定するシステム構成
改定案(Word)+現行の規程(Word) ▼ 規程の改定フォルダ(SharePoint) 【人】Word の比較(リーガル ブラックライン) │ 変更履歴の付いた比較の文書ができる(元の2つは変わらない) ▼ Microsoft 365 Copilot(Copilot Notebooks と Word の Copilot) │ 固定の参照先:表記ルール、新旧対照表の書式、指示文 ├── 指示1:定義した用語の揺れ ├── 指示2:条番号の参照の一覧と、ずれの候補 ├── 指示3:表記ルールの違反 └── 指示4:新旧対照表の下書き ▼【人が比較の文書と突き合わせる】 指摘を所管部門へ → 直った版で流し直し → 新旧対照表を確定
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 処理 | Microsoft 365 Copilot(Copilot Notebooks と Word の Copilot) | ChatGPT Enterprise、Gemini、Claude |
| 差分 | Word の比較(リーガル ブラックライン) | 規程管理のシステムの版比較 |
| 保管 | SharePoint ドキュメントライブラリ | OneDrive、ファイルサーバー |
新しく足すものはありません。 Word の比較は Word に元からある機能で、Copilot は既存のライセンスで使います。最初の準備作業は、表記ルールを「どう書くか」の一覧に書き直すことです。 文章で書かれたルールは、AI にも新しい担当者にも当てはめにくいからです。
差分を Word の比較で取るのは、比較の結果が機械的に決まるからです。 Word のリーガル ブラックラインは、元の文書と変更後の文書を選ぶと、変更を変更履歴として示した3つ目の文書を作り、比べた2つの文書は変えないとされています。変更は文字単位か単語単位で示せます。1文字の変更を落とさないために、文字単位を選びます。
Copilot にもファイルを比べる機能はあります。 OneDrive の Copilot では最大5つのファイルを選んで違いを比べられるとされています。ただし、返ってくるのは内容に応じた回答で、すべての変更を漏れなく並べる形は約束されていません。 新旧対照表は変更の漏れが許されない資料なので、本記事では差分そのものは Word の比較に任せ、Copilot の比較は使いません。
束ねる場所に Copilot Notebooks を使います。 表記ルール、新旧対照表の書式、指示文を参照先に固定しておけば、担当者は改定案と現行の規程を足すだけです。参照先には .docx などのファイルと SharePoint のフォルダを加えられ、参照先はデータの変更に合わせて最新に保たれるとされています。表記ルールを直せば、次の改定案からそのまま効きます。
Copilot の使い方はライセンスで決まります。 Copilot Chat(Basic)と Microsoft 365 Copilot(Basic)は Microsoft Graph 経由で組織データを使えず、プロンプトの作成時にファイルをアップロードするか選択する必要があるとされています。この構成は扱うファイルが数本なので、どちらのライセンスでも動きます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
所管部門が改定案を規程の改定フォルダに置き、総務の担当者に Teams で知らせたことを起点にします。 改定案は、規程委員会の締め切りに合わせて月の中旬に集まります。届いた順に、その日のうちに流します。 まとめて流すと、所管部門に指摘を返す時間が締め切りの直前に寄ります。
改定案を置くときの決まりを2つ作ります。現行の規程のファイルには手を付けず、改定案は別のファイルとして置くこと、そして改定案に改定の理由のメモを付けることです。現行のファイルを直接書き換えられると、比べる元がなくなります。
所管部門が直した版を置き直したときも、同じ手順を最初から流します。直した版だけを校正すると、直したときに新しく生まれたずれを見落とします。 直すたびに条や項が動くことがあるからです。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 現行の規程 | 施行中の版の Word ファイル | 規程の原本のフォルダ |
| 改定案 | 所管部門が起案した Word ファイル | 規程の改定フォルダ |
| 比較の文書 | Word のリーガル ブラックラインで作った、変更履歴の付いた文書 | 担当者が作る |
| 改定の理由のメモ | 何のために、どこを変えたか | 所管部門 |
| 表記ルール | 書き方の一覧(誤った書き方/正しい書き方/例外) | SharePoint の固定の参照先 |
| 新旧対照表の書式 | 列の並び、下線の付け方、条の見出しの書き方 | SharePoint の固定の参照先 |
質を決めるのは表記ルールの書き方です。 「接続詞は法令の用例に従う」と書かれていても、何をどう直せばよいかは分かりません。「A及びB並びにC」のように、誤った例と正しい例を並べた一覧にすると、Copilot も新しい担当者も同じように当てはめられます。
| 番号 | 誤った書き方 | 正しい書き方 | 例外 |
|---|---|---|---|
| R-03 | 「又は」と「若しくは」の区別が無い | 大きい区切りに「又は」、小さい区切りに「若しくは」 | 選ぶものが2つだけなら「又は」 |
| R-11 | 期限を「〜の時」と書く | 条件は「とき」、時点は「時」 | 社内の様式名に含まれるもの |
| R-17 | 項の番号を「(2)」と書く | 項は「2」、号は「(1)」 | 別表の中 |
「例外」の列を必ず作ります。 例外を書いていないルールは、例外の箇所まで指摘を出させ、担当者がそのたびに採らない判断をすることになります。
改定の理由のメモは、用語の揺れを判断するために使います。 メモに「対象を契約社員にも広げるため」とあれば、定義の外の語が使われていても意図的かもしれません。メモが無いと、意図的な変更と単なる書き損じの区別がつきません。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | どう取るか |
|---|---|---|
| 現行の規程と改定案 | SharePoint の2つのフォルダ | 担当者が Notebook の参照先に加える |
| 比較の文書 | Word | 担当者が「校閲」の「比較」から作り、改定フォルダに保存する |
| 表記ルールと書式 | SharePoint | Notebook の参照先に固定しておく |
| 指示文 | SharePoint の指示文のファイル | Notebook の参照先に固定し、番号で呼び出す |
比較の文書は、Copilot に読ませるためではなく、人が確かめるために作ります。 5番目の工程で、比較の文書の変更箇所を上から順に見て、新旧対照表に載っているかを確かめます。AI が作った対照表を、AI に作らせていないもので確かめるという分担です。
比較の設定で、書式の変更は比べる対象から外します。 規程の改定で見たいのは文の変更で、フォントや段落の書式の違いまで変更として出ると、確かめる箇所が増えすぎます。比較の結果は既定で新しい文書に出し、元の文書や改定案の側に出す設定にはしません。 その設定では選んだ文書のほうが書き換わるとされているためです。
AIへ渡す前に整形する
- ファイルの版を確かめる … 現行の規程が施行中の版であること、改定案が最新の版であることを、ファイル名と表紙の施行日で確かめます
- 改定案の変更履歴を反映する … 改定案に変更履歴が残っていれば、すべて反映した版にします。履歴の残った版を比べると、比較の文書が読めなくなります
- 自動の段落番号を確かめる … 条・項・号の番号が Word の自動の段落番号で付いている規程は、文字として番号が入っていないことがあります。比べる前に、番号を文字に直した版を作ります
- 別表と様式を分ける … 別表や様式は本文と分け、本文だけを校正の対象にします。別表の変更は担当者が別に見ます
3番目を軽く見ないでください。 自動の段落番号のままでは、条を1つ足したときに後ろの番号が自動で繰り下がり、比較の文書で番号の変化が変更として出ないことがあります。 一方で、本文中の「第12条」は手で打った文字なので、繰り下がりません。参照のずれが起きるのは、まさにこの組み合わせです。
AIに処理させる
させるのは4つの指示で、順に流します。
| 指示 | させること | 出すもの |
|---|---|---|
| 1. 用語 | 定義の条項にある語を一覧にし、改定後の本文で定義と違う語(同じ対象を指すと思われるもの)を拾う | 用語の揺れの一覧 |
| 2. 参照 | 本文中の「第◯条」「第◯項」「前条」「同項」「次号」などをすべて拾い、改定前と改定後でそれぞれどの条項を指しているかを並べる | 参照の一覧と、ずれの候補 |
| 3. 表記 | 表記ルールの一覧に当てはめ、違反の箇所を拾う | 表記の指摘の一覧 |
| 4. 対照表 | 改定前と改定後を条ごとに並べ、変わった箇所に印を付ける | 新旧対照表の下書き |
2番目が、この構成でいちばん効きます。 参照の一覧を作らせると、「第12条第2項による」の行に、改定前は「年次有給休暇の付与」を、改定後は「特別休暇」を指している、と並びます。指している条の見出しが変わっていれば、ずれの候補です。 人が見るのは見出しの並びだけで済みます。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 改定の中身の当否を書く | 文書としての校正に限る。制度の判断は所管部門と総務・法務 |
| 用語の揺れを直して終える | 意図的な変更かもしれない。指摘として返す |
| 他の規程との食い違いを探す | 本記事の範囲外。別の手順で扱う |
| 対照表から変更が無いと判断した条を省く | 漏れを人が確かめられなくなる。変更の有無は比較の文書で決める |
| 表記ルールに無い好みで直す | 校正の基準が人によって変わる状態に戻る |
最後の行が意外に効きます。 何も言わないと、読みやすくするための言い換えを指摘に混ぜてきます。ルールに無い指摘が増えると、担当者は一覧全体を信用しなくなります。
指示内容を固定する
指示2(参照)の例です。
あなたは総務部で、社内規程の改定案を校正する立場です。
参照先の「現行の規程」と「改定案」だけを使ってください。推測で埋めないでください。
【作るもの】
改定案の本文に出てくる、条・項・号を指す言葉をすべて拾い、表にしてください。
列は「改定案の条項|参照の言葉(原文のまま)|改定案で指している条項とその見出し|
現行の規程で同じ言葉が指していた条項とその見出し|判定」です。
【拾う言葉】
第◯条、第◯条第◯項、第◯号、前条、次条、前項、次項、同条、同項、前各号、
本条、本規程、別表第◯、様式第◯
【判定】
- 一致 ……… 現行と改定案で、指している条項の見出しが同じ
- ずれの候補 … 見出しが違う、または指している条項が改定案に無い
- 新規 ……… 改定で新しく足された参照
- 判断不能 …… 指している先が特定できない
迷ったときは「一致」を選ばないでください。
【厳守事項】
- 参照の言葉は原文のまま写してください。番号を直さないでください。
- 条の見出しは、規程に書かれた見出しをそのまま写してください。
- 他の規程を指す参照(「◯◯規程第◯条」)は、拾ったうえで判定を「他規程」とし、
その先は確かめないでください。
- 改定の中身の当否や、言い換えの提案は書かないでください。
指示3(表記)の例です。
参照先の「表記ルール」の一覧だけに照らして、改定案の本文を校正してください。
一覧に無い観点で直さないでください。読みやすさのための言い換えもしないでください。
改定前から変わっていない条も対象にしてください。
指摘は「条項|原文(該当箇所の前後10文字を含む)|ルールの番号|直した案」の表にしてください。
ルールの番号を書けない指摘は出さないでください。
指示1(用語)と指示4(対照表)の例です。
【指示1】
改定案の定義の条項(「この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は…」の条)
にある用語を一覧にしてください。
次に、改定案の本文で、定義した用語と同じ対象を指していると思われる別の語
(例:定義が「従業員」で、本文に「社員」「職員」)を拾い、
「条項|使われている語|対応すると思われる定義の語|前後の文」の表にしてください。
改定の理由のメモに関係する記載があれば、その文を写してください。
語を直さないでください。意図的な使い分けかどうかを判断しないでください。
【指示4】
現行の規程と改定案を、条ごとに1行で並べてください。
列は「条(見出し)|改定後|改定前|変更の印」です。
条文は、それぞれのファイルに書かれたとおりに写してください。要約しないでください。
新しく足された条は改定前を「(新設)」、削られた条は改定後を「(削除)」としてください。
変更の印は、改定後と改定前の文字が1文字でも違う行に「変更」と付けてください。
違いが無いと判断した条も省かずに並べてください。
指示4で「違いが無いと判断した条も省かない」と書くのは、人が比較の文書と突き合わせるためです。 全部の条が並んでいれば、比較の文書で変更履歴の付いた条が、対照表で「変更」になっているかを順に確かめられます。省かれた条は、突き合わせの対象から消えます。 規程委員会に出すときには、変更の無い条を担当者が外します。
指示3に「ルールの番号を書けない指摘は出さない」を入れるのは、好みの指摘を止めるためです。 番号を付けさせると、一覧のどの行に当てはめたかが担当者に見えます。当てはめが誤っていれば、ルールの書き方を直す手がかりにもなります。
「変わっていない条も対象にする」のは、改定の機会に既存の表記の誤りもまとめて直すためです。 ただし、変わっていない条の指摘は所管部門に返さず、総務で直すかを決めます。
出力形式を固定する
Word の文書に、新旧対照表と3つの指摘の一覧を出させます。 Notebook の回答を Word の Copilot に渡して、規程委員会の書式にそろえます。
| 表 | 列 |
|---|---|
| 新旧対照表 | 条(見出し)/改定後/改定前/変更の印 |
| 用語の揺れ | 条項/使われている語/定義の条項の語/改定の理由のメモとの関係 |
| 参照の一覧 | 改定案の条項/参照の言葉/改定案での参照先と見出し/現行での参照先と見出し/判定 |
| 表記の指摘 | 条項/原文/ルールの番号/直した案 |
参照の一覧の1行は、たとえば次の形になります。
| 改定案の条項 | 参照の言葉 | 改定案での参照先 | 現行での参照先 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 第21条第1項 | 第12条第2項 | 第12条(特別休暇)第2項 | 第12条(年次有給休暇)第2項 | ずれの候補 |
用語の揺れと表記の指摘の1行は、次の形です。
| 条項 | 使われている語/原文 | 定義の語/ルールの番号 | 改定の理由のメモとの関係/直した案 |
|---|---|---|---|
| 第9条第3項 | 社員 | 従業員(第2条第1号) | メモに記載なし |
| 第14条第1項 | 「申請した時は」 | R-11 | 「申請したときは」 |
1行目は、所管部門に意図を確かめる指摘です。 メモに記載が無いので、書き損じの可能性が高いものの、総務が勝手に「従業員」に直すと、対象を広げたかった意図を消すおそれがあります。 2行目は表記の指摘で、総務の判断で直します。
表にする1つ目の理由は、新旧対照表の変更の印と比較の文書を突き合わせられることです。 比較の文書で変更履歴の付いた条が、対照表で変更の印の付いた条とすべて一致しているかを、上から順に見ます。一致しない条があれば、対照表の漏れか、印の付け間違いです。
2つ目は、参照の一覧で見出しを並べられることです。 本文を読まなくても、見出しの組み合わせを見るだけでずれが分かります。
3つ目は、表記の指摘にルールの番号が付いていることです。 担当者は番号で指摘をまとめて採否を決められ、採らなかった指摘が多いルールは、書き方を見直す対象になります。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 規程の原本のフォルダ | 読み取りのみ | 現行の規程を参照先に加える |
| 規程の改定フォルダ | 担当者が保存 | 改定案、比較の文書、確定した新旧対照表 |
| 表記ルールと書式(SharePoint) | Notebook の固定の参照先 | 校正の基準と対照表の体裁 |
| Word | 担当者が操作 | 比較の文書の作成と、対照表の体裁の仕上げ |
規程の原本には、この構成からは何も書き込みません。 原本を差し替えるのは、規程委員会と取締役会で承認された後に、総務の担当者が手で行います。承認前の改定案が原本のフォルダに入る経路を作らないためです。
人が確認する
- 比較の文書と新旧対照表を突き合わせる … 変更履歴の付いた条が、対照表にすべて載っているかを確かめます。ここは省きません
- 参照の一覧の「ずれの候補」と「判断不能」を見る … 本文を開いて参照先を確かめます
- 用語の揺れを、改定の理由のメモと見比べる … 意図的な変更なら残し、書き損じなら所管部門に返します
- 表記の指摘の採否を決める … ルールの番号ごとにまとめて決めます
- 所管部門に返す指摘を選んで返す
所管部門に返すときは、指摘を3つに分けて書きます。 「直してください(参照のずれ)」「意図を教えてください(用語の揺れ)」「総務で直します(表記)」です。分けずに返すと、所管部門は表記の指摘まで自分で直そうとして、版が増えます。
1番目に時間を使い、4番目は速く済ませます。 対照表の漏れは承認の誤りにつながりますが、表記の揺れは読みやすさの問題です。1件40分のうち、半分ほどは1番目と2番目に使う想定です。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 改定が全部改正で、条の構成がまるごと変わる | 新旧対照表を作らず、新しい規程と現行の規程を別に添付する。参照の一覧だけ作る |
| 自動の段落番号で番号が比較に出ない | 番号を文字に直した版を作ってから比べる |
| 改定案に変更履歴が残っている | すべて反映した版にしてから比べる |
| 参照の先が他の規程 | 判定を「他規程」とし、他の規程との整合の手順に回す |
| 指摘が極端に多い | 表記ルールの一覧に当てはまらない指摘が混ざっていないかを見る |
| 比較の文書と対照表が一致しない | 対照表を比較の文書に合わせて直す。AI の対照表を正としない |
| 別表・様式の変更 | 本文と分けて、担当者が比較の文書で直接確かめる |
| グループ会社に同じ規程を展開する | 会社ごとに現行の規程が違うことがある。会社ごとに比較の文書を作り直す |
| 改定の理由のメモが無い | 用語の揺れの判断ができない。所管部門にメモを頼んでから流す |
6行目が、この構成の安全装置です。 一致しないときに AI の対照表を信じる運用にすると、比較の文書を作っている意味がなくなります。
記録を残す
- 現行の規程の版、改定案の版、比較の文書
- Copilot が出した新旧対照表と3つの指摘の一覧(直す前のもの)
- 担当者が採った指摘と採らなかった指摘、所管部門に返した指摘
- 確定した新旧対照表と、規程委員会に出した日
- そのとき使った表記ルールの版
所管部門ごとの指摘の件数も、月ごとに数えて残します。 同じ部門から同じルールの指摘が続くなら、その部門の起案者に表記ルールの一覧を渡すほうが、毎回直すより早く済みます。
採らなかった指摘を残すのは、表記ルールを育てるためです。 同じルールの番号で毎月採らない指摘が出ているなら、ルールの書き方か当てはめ方がずれています。新しい担当者は、採否の記録を読むことで、古参の担当者の判断を学べます。
04実装レベルの3段階
本記事の想定は半自動化です。 表記ルールと指示文が担当者の手元で毎回そろうことで、古参の担当者がいない月でも同じ基準で校正できます。 本格構成は、改定案の本数がさらに多いときの形です。 ただし、比較の文書と対照表の突き合わせは人が行うため、自動化しても1件の確認時間はほとんど変わりません。 半自動化で表記ルールが育ってから検討します。
05工数削減シミュレーション
導入後 15件 × 40分 ÷ 60 = 10 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 規程が100本を超え、各部門が改定案を起案して総務が校正と新旧対照表づくりを引き受けている会社。グループ会社の規程もまとめて見ているため、改定案が毎月十数本届く場合。社内の表記ルールはあるが、校正が担当者の目と経験に頼っている場合。Microsoft 365 Copilot を使っている場合。
- 規程が数十本で、改定が年に数回しかない場合。規程管理のシステムで改定の履歴と新旧対照表が自動で作られている場合。改定の中身そのもの(制度として妥当か、法令に合っているか)を確かめたい場合(この構成は文書としての校正だけを扱います)。なお、改定の内容の当否と、他の規程との食い違いの判断は、総務・法務の担当者に残ります。
07最小構成で試す方法
- 先月までに承認された改定から5本を選ぶ(うち1本は、承認後に参照のずれか用語の揺れが見つかったもの)
- 現行の規程(改定前の版)と改定案を用意し、Word の比較で比較の文書を作る
- 表記ルールの一覧と、2つのファイルを Copilot Chat に加え、第7章の指示1〜4を順に流す
- 出てきた新旧対照表と指摘の一覧を、当時確定した対照表と、承認後に見つかった誤りと突き合わせる
見るのは、承認後に見つかった誤りが指摘の一覧に出ているかです。 あわせて、当時の担当者が手で作った新旧対照表と、比較の文書を突き合わせてみてください。手作業の対照表から変更が漏れていた例が見つかることがあり、それが比較の文書を作る理由の説明になります。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 承認後に見つかった誤りが一覧に出た | 共有の Notebook と表記ルールの整備に進む |
| 対照表から変更が漏れていた | 比較の文書で拾える。比較の文書との突き合わせを必ず入れる |
| 表記の指摘に好みの言い換えが混ざる | 指示3のルールの番号の縛りを強める |
| 参照の一覧で番号の付き方が崩れる | 自動の段落番号を文字に直してから流す |
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 対照表から変更が漏れる | 差分は Word の比較で取り、比較の文書と突き合わせる |
| 自動の段落番号で参照のずれが見えない | 番号を文字に直した版で比べる |
| 用語の揺れを AI が直して終える | 直させず、指摘として返す。意図的な変更かもしれない |
| 表記の指摘に好みの言い換えが混ざる | ルールの番号を書けない指摘は出させない |
| 表記ルールが文章のままで当てはまらない | 誤った例と正しい例の一覧にする |
| 他の規程を指す参照まで確かめようとする | 「他規程」とだけ判定し、別の手順へ回す |
| 改定案に変更履歴が残ったまま届く | 反映した版にしてから比べる |
| 直した版だけを校正する | 直すたびに最初から流す |
| 変わっていない条の表記の指摘まで所管部門に返す | 総務で直すかを決め、所管部門には返さない |
| 新旧対照表の条文が要約される | 「書かれたとおりに写す。要約しない」を指示に入れる |
| 現行の規程のファイルが古い版のまま | 原本のフォルダの版を施行日で管理し、比べる前に確かめる |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、対照表がもっともらしく見えることから始まります。AI の対照表を、AI 以外のものさしで確かめる手順を持っているかどうかで、運用に乗るかが決まります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 施行前の規程の改定案と改定の理由です。人事制度や賃金に関わる改定では、公表前の処遇の変更が含まれます。
- Entra アカウントでサインインして使う … Copilot は Microsoft Entra アカウントでサインインしたときにエンタープライズ データ保護の対象になるとされています。改定案を個人のアカウントや社外のサービスに貼らないよう、利用の決まりに書きます
- Notebook の共有を総務の担当者に限る … Notebook を共有すると、受け手はアクセス権のある範囲で参照先のファイルに招待されるとされています。人事制度の改定案が、全社に見える状態にならないようにします
- 改定の中身の判断をこの構成に任せない … この構成が出すのは文書としての校正だけです。制度として妥当か、法令に合っているかは、所管部門と総務・法務が判断します
- 原本の差し替えは承認後に人が行う … 承認前の改定案が原本のフォルダに入らないようにします
- 校正の採否の記録を人の評価に使わない … 所管部門ごとの指摘の件数は、表記ルールの周知が足りない部門を知るための数字です。起案した個人の評価に使うと、改定案が総務に届く前に抱え込まれるようになります
誤りが起きた場合のリスクは、新旧対照表から変更が漏れて、誰も見ないまま承認されることと、参照のずれが施行後まで残ることの2つです。 前者は比較の文書との突き合わせで、後者は参照の一覧で防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:表記ルールを一覧に書き直す
古参の担当者と一緒に、表記ルールを「誤った例/正しい例/例外」の一覧にし、1行ずつ番号を付けます。全部を一度に書き出さなくても、接続詞と条・項・号の書き方から始めれば、多くの指摘はそこで出ます。
2週目:5本で試す
承認済みの改定から5本を選び、比較の文書を作ってから指示1〜4を流します。承認後に見つかった誤りが、指摘の一覧に出るかを最優先で見ます。
3週目:指示文と書式を直す
好みの言い換えが混ざっていないか、参照の一覧の判定が甘くないかを見て、指示文を直します。新旧対照表の書式を、規程委員会の資料と同じ列の並びにします。
4週目:共有の Notebook を作る
表記ルール・書式・指示文を参照先に固定した Notebook を作り、総務の担当者で共有します。比較の文書との突き合わせを、手順書に必ず入れます。
2か月目: その月の改定案すべてで回し、指摘の件数と採った件数をルールの番号ごとに数えます。3か月目以降: 採らない指摘が多いルールを書き直し、1件120分が何分になったかを実測します。新しい担当者が、古参の担当者と同じ指摘を出せるようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| Word のリーガル ブラックラインの比較が、変更を変更履歴として示した3つ目の文書を作り、比べた元の2つの文書を変えないこと。文字単位か単語単位で示せること。比較する項目を選べること | Microsoft Support: Compare document differences using the legal blackline option | 2026-10-07 |
| Copilot Chat(Basic)と Microsoft 365 Copilot(Basic)は Microsoft Graph 経由で組織データを使えず、ファイルのアップロード・選択が要ること。Entra アカウントでのサインイン時にエンタープライズ データ保護の対象となること | Microsoft Learn: Microsoft Copilot とは? | 2026-10-07 |
| Word の Copilot で、参照するファイルを指定して下書きを作れること。事実・数字・名前などを確認するよう求めていること | Microsoft Support: Draft and add content with Copilot in Word | 2026-10-07 |
| OneDrive の Copilot で最大5つのファイルを選んで違いを比べられること。回答がファイルの内容によって変わること | Microsoft Support: Compare your files with Copilot in OneDrive | 2026-10-07 |
| Notebook の参照先にできるファイルの種類と SharePoint のフォルダ。参照先が最新に保たれること。共有時にアクセス権のある範囲でファイルに招待されること | Microsoft Support: Add references to your Microsoft 365 Copilot Notebook | 2026-10-07 |
改定の中身の当否と、他の規程との整合は、各社の総務・法務の担当者が判断してください。 本記事は Microsoft の公開資料で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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