縦型動画はどのSNSに出す?|配信先の使い分け

縦型動画はどのSNSに出す?|配信先の使い分け

縦型動画の仕様は、思われているほどバラバラではありません。TikTok・Instagramリール・YouTubeショートはいずれも1080×1920ピクセル・9:16を推奨解像度としており、プラットフォームのUIに隠れない安全領域も880×1250ピクセル程度が共通の目安とされます。つまり判断が要るのは画面のサイズではなく、どこに・どの尺で・何を出すかのほうです。一方で尺の上限は、YouTubeショートが3分、TikTokが10分、Instagramリールはアプリ内録画で3分と大きく異なり、さらに「誰に配られるか」という面の性質は根本的に違います。本記事では、BtoB企業が縦型ショート動画を出すときの配信先の選び方を、プラットフォーム別の実務仕様、発見型と関係型という分け方、BtoBでの向き不向き早見表、1本のマスター素材を複数の配信先へ展開する設計、出す先を絞る判断基準、そしてAIに任せられる工程とその限界まで、順に整理します。


カメ先生カメ先生

縦型動画で最初に決めるべきなのは、企画でも編集でもなく『どこに出すか』なんだ。同じ1本を全部のSNSに同時投稿している会社は多いけれど、尺の上限もUIで隠れる位置も、見ている人の目的も違うから、どこかで必ず噛み合わなくなるよ。


カメ子カメ子

全部に出しておけば、どれかが当たるのでは…と思っていました。


カメ先生カメ先生

配信先を増やすほど、1本あたりに割ける手間は削られていくよ。それに、初めて自社を見る人に広く配られる面と、すでにつながっている人に届く面では、出すべき中身がそもそも違う。BtoBで両方に同じ会社紹介を流しても、反応は薄いままなんだ。


カメ子カメ子

配信先ごとに役割が違うんですね。手を広げる前に、自社にある素材がどの面に向いているかを見極めるところから始めます。


この記事のポイント
  • 縦型の仕様は9:16・1080×1920でほぼ共通。違うのは尺の上限、UIで隠れる位置、そして誰に配られるかという面の性質
  • 配信先は発見型(初見に広く配る)と関係型(既存の接点に届く)に分けて役割を決める。全方位への同時投稿は1本あたりの質を削る
  • マスター素材1本に対し、尺・頭出し・字幕・投稿文を配信先ごとに出し分ける。AIは切り抜き候補の抽出と字幕の下書きに使い、固有名詞と機密の確認は人が行う

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目次

仕様は共通、違うのは尺と見られ方

最初に事実関係を押さえます。TikTok・Instagramリール・YouTubeショートは、いずれも1080×1920ピクセル・9:16を推奨解像度としており、ファイル形式もMP4やMOVで共通です。文字やロゴ、被写体の顔を置く安全領域も880×1250ピクセル程度が共通の目安とされます。つまり「プラットフォームごとに撮り直す」必要はほとんどありません。撮影と編集はマスター1本で足ります。

違うのはここからです。尺の上限はYouTubeショートが3分(180秒)、TikTokが10分、Instagramリールはアプリ内録画で3分とされ、リールについては端末からのアップロードなら15分未満の動画が自動的にリールとして扱われ、公式音源を使う場合は90秒までという制約もあります。ファイルサイズの上限もTikTokが287MB、リールが4GB、ショートが5GBと桁が違い、推奨ビットレートはTikTokとショートが8〜12Mbps、リールが5〜10Mbps程度とされています。

そしてもっとも大きな違いが「誰に配られるか」です。仕様は調べれば分かりますが、見られ方は各面の性質を理解しないと選べません。配信先選びの難しさは技術ではなく設計にあります。撮り直しではなく、出し分けで解く——この発想に切り替えると、限られたリソースでも複数の面を扱えるようになります。

プラットフォーム別の実務仕様一覧

仕様を横並びにします。数値は公開されている解説をもとにした目安で、各社の仕様は予告なく変わります。投稿の前には必ず各プラットフォームの公式情報で確認してください。

配信先尺の上限(目安)伸びやすい尺ファイルサイズ上限実務上の注意
TikTok10分15〜60秒287MB推奨ビットレートは8〜12Mbps程度
Instagramリールアプリ内録画で3分(アップロードは15分未満がリール扱い)15〜30秒4GB公式音源の利用は90秒までとされる
YouTubeショート3分(180秒)15〜30秒5GB検索や関連動画から後で見つかる
LinkedIn(動画)3秒〜10分60〜90秒モバイル5GB/デスクトップ10GB1080p以上・24または30fpsが推奨
X契約プランにより異なる短尺中心公式ヘルプで確認縦型専用の発見面を持たない

表を見て気づくのは、上限と実際に届く長さのあいだに大きな乖離があることです。伸びやすいのは15〜30秒程度とされ、リールでは3分を超えるとフォロワー以外への推薦が弱まるとされます。LinkedInでも90秒未満が優勢で、15秒未満の動画は完了率が57%程度に達するという報告があります。上限は入れられる長さで、届く長さではありません。上限を根拠に尺を決めるのは、最も損をしやすい判断です。

音源の制約が編集方針に効いてくる例も押さえておきましょう。リールで公式音源を使う場合は90秒が上限なので、それを超える解説を音源付きで作ることはできません。残りはナレーションか無音で構成する必要があります。ただしBtoBの場合、音源で耳を引くより字幕とナレーションで内容を届ける設計になるため、この制約は実際にはあまり痛みません。制約から逆算して音源に依存しない作り方を標準にしておくと、配信先を増やすときにも作り直しが減ります。

セーフエリア:UIに隠れる位置は配信先で違う

解像度が共通でも、プラットフォームのUIがどこに重なるかは違います。共通の目安として挙げられる880×1250ピクセルの領域に、文字・ロゴ・被写体の顔を収めるのが基本です。この枠を外れた部分は、いずれかの配信先で確実に隠れると考えて設計します。

位置の傾向は次のように整理されています。YouTubeショートは画面右側に高評価やコメントなどのボタンが縦に並びます。InstagramやFacebookは画面下部にキャプションやアクションが重なるため、下部に重要な要素を置くのは避けます。TikTokは下部のUIが厚いため、テキストは画面中央から上に配置するのが安全とされます。Xは画面下部の3分の1程度を避ければ比較的自由に置けるとされています。ただしこれらの整理は2024年時点の解説に基づくもので、UIは更新されます。

実務上の作り方はシンプルです。編集ソフトに9:16のガイド(安全領域の枠と上下左右の余白)をテンプレートとして1つ作り、テロップは必ずその枠内に収めます。そのうえで、投稿前に実機のプレビューで確認します。ガイドを信じ切らず、投稿前に実機で確認する。この一手間が、数か月分の作り直しを防ぎます。とくに企業ロゴや連絡先を画面の四隅ぎりぎりに置く癖があると、配信先を増やした瞬間に全本数の修正が必要になります。

「発見型」と「関係型」——配信先は2つに分けて考える

配信先を選ぶための最も実用的な分類が、発見型関係型です。発見型は、フォロワー数に関係なくアルゴリズムが興味に応じて配る面を指します。TikTok、YouTubeショート、Instagramのリール(発見タブ)、そしてLinkedInの縦型動画フィードがここに入ります。LinkedInの動画フィードは、つながりだけでなく興味と反応に基づいて配る仕組みとされ、規模の小さいアカウントでも新規のユーザーに届く余地があります。

関係型は、すでにつながっている相手に届く面です。Xのタイムライン、LinkedInの通常フィード、Instagramのストーリーズなどが該当します。ここで求められるのは「知らない人に説明する」内容ではなく、「知っている人に思い出させる」「検討中の人の疑問に答える」内容です。同じ素材でも、必要な前置きの量がまるで違います。

BtoBでこの区別が重い意味を持つのは、購買の検討期間が長く、関与する人数も多いからです。発見型は「社名を知ってもらう」「課題に気づいてもらう」段階、関係型は「検討中の人の疑問を潰す」「社内で共有される材料になる」段階を担います。同じ動画を両方の面に流すと、どちらの役にも立たないことが多いのは、担う段階が違うからです。まず自社に足りていないのがどちらの段階かを見極めてから、配信先を選ぶ順序にしてください。

Instagramリール:BtoBでの向き不向き

リールが向くのは、自社の空気感・人・現場が伝わる素材です。オフィスや製造現場の様子、展示会やイベントの出展レポート、社員紹介や1日の流れ。採用にも効くため、マーケティングと採用の両方で成果を測れる面でもあります。ビジュアルで伝わるプロダクトや、図解に落とせるノウハウも相性が良いでしょう。

向かないのは、数値や仕様の細かい比較、前提の説明が長く必要な理屈です。公式音源を使うと90秒までという制約もあり、腰を据えた解説には向きません。またBtoBでは、フォロワーの多くが顧客層でないことも珍しくありません。リーチが伸びても商談に結びつかない状態が起きやすいため、見るべきは再生数ではなく、保存とプロフィール遷移だと最初に決めておくべきです。サイトクリックが取れているかも合わせて確認します。

運用の勘所は3つあります。1本ごとに内容を完結させること、シリーズ化して継続の型を作ること、そして冒頭1〜3秒でテーマを言い切ることです。キャプションを読ませる前提で作ると、スクロールの速い面では読まれずに流れます。テーマは映像内の文字で示すのが前提になります。

YouTubeショート:資産として残る配信先

YouTubeショートの特徴は、投稿後に検索や関連動画から見つかることです。TikTokやリールが流れる面と、蓄積する面という対比で言えば流れる面である一方、YouTubeは蓄積する面です。BtoBの検討期間が長いという性質と、この蓄積性は相性が良いといえます。半年前に出した1分の用語解説が、いま検討を始めた人の入口になり得ます。

向く中身は、ウェビナーや講演の切り出し、製品デモの短い抜粋、専門用語の1分解説です。上限が3分まであるためリールより説明を入れやすく、BtoBの「前提を少し置かないと伝わらない」話題を扱いやすくなります。さらに、ショートから同じチャンネル内の長尺(ウェビナーのアーカイブや製品解説)へ導線を作れるのも強みです。

注意点は、チャンネル内の長尺と話題を揃えることです。ショートだけが伸びて長尺に繋がらないパターンを避けるには、ショートの中で長尺の存在を口頭と字幕の両方で明示します。加えて、検索から見つかる面である以上、タイトルと説明文を検索を意識して書く必要があります。ここはSNSの投稿文とは書き方が変わる部分で、配信先ごとの書き分けが最も効く箇所でもあります。

TikTok:BtoBで使うなら何を出すか

配信先としてのTikTokは、フォロワーがゼロの状態からでも配られる発見型の代表です。上限10分と最も長い尺を許す一方、伸びやすいのは15〜60秒程度とされ、実際の運用は短尺が中心になります。BtoBだから無関係、という判断は現在では成り立ちませんが、出す中身を間違えると成果はまったく出ません。

向くのは、業界の常識を短く覆す話、現場の作業風景、専門職への1問1答のような素材です。逆にもっとも相性が悪いのが会社の宣伝で、企業紹介動画をそのまま流しても最初の数秒で離脱します。「うちの製品は」ではなく「この業界では実はこうなっている」から始める形に組み替える必要があります。

現実的な判断材料は、担当者の運用負荷と社内の承認プロセスです。テンポの速い面なので、投稿ごとに決裁を通す運用では失速します。投稿ごとに決裁するのではなく、出してよい範囲を先に決めておくことが継続の前提になります。表現のトーンをどこまで崩してよいか、扱ってよい話題の線引きはどこか。この合意なしに始めると、数本で止まるか、担当者が疲弊するかのどちらかになりがちです。

LinkedIn:縦型動画フィードとBtoBの相性

LinkedInは、利用の前提がビジネス目的であるため、BtoBの内容が場から浮きません。縦型の動画フィードは興味と反応に基づく発見アルゴリズムで配られるとされ、ネイティブ投稿した縦型動画は通常のフィードと動画タブの両方に表示されるため、接点が二重になるとも説明されています。BtoBで発見型の面を1つだけ選ぶなら、まず検討すべき配信先です。

公開されている数値も参考になります。LinkedInの公開情報やベンチマーク調査として引用される範囲では、動画は他の形式より1.4倍のエンゲージメントを得る、動画投稿はほかの投稿形式より20倍シェアされる、動画の視聴は前年比36%増、動画広告のクリック率は通常のスポンサードコンテンツより47%高い、といった数字が挙げられています。オーガニックのBtoB動画では60〜90秒が有効とされ、90秒未満が一貫して優勢という整理もあります。いずれも出典と集計方法が異なるため、絶対値ではなく傾向として受け取るのが妥当でしょう。

向く中身は、知見や見解を語るもの(ソートリーダーシップ)、顧客の課題解決の考え方、1つのメッセージと3点の補足で構成された解説です。冒頭2秒でフックを作ること、そして字幕を必ず入れることが前提条件として挙げられます。逆に伸びにくいとされるのは、汎用的な企業メッセージや台本を読み上げるような語りです。作り込んだ企業PRより、一貫した見解のほうが伸びやすい面なので、企業ページからの投稿だけでなく、担当者や経営者の個人アカウントからの発信も選択肢に入れて設計します。

X:拡散よりも「既存の接点」で効く

Xは縦型専用の発見フィードを持たず、タイムライン内での再生が中心です。したがって縦型で作る意味は「発見される」ことではなく、他の面に出した素材をそのまま流用できることにあります。投稿できる尺やファイルサイズは契約プランによって変わり、変更も頻繁なため、数値は公式ヘルプで確認してから運用に組み込んでください。ここで古い数値を前提にすると、投稿直前に差し替えが発生します。

向く使い方は、ウェビナーの告知、展示会の当日レポート、プレスリリースの補足といった時期性のある情報です。届く相手は既存のフォロワー、つまり既存顧客や業界関係者が中心になるので、「いま何をしているか」を伝える面として機能します。動画そのものよりも、投稿文とリンクの組み合わせで成果が決まる面だと考えたほうが実態に近いでしょう。

運用上の注意もあります。タイムライン内では上下が切れて見えることがあるため、テロップは中央寄りに置きます。場合によっては4:5や1:1に作り直したほうがタイムラインで見やすくなることもあります。ここは「縦型に統一する」ことにこだわるより、素材を使い回せる範囲で最適化するという割り切りでよい箇所です。Xのために撮影を追加するのではなく、他の面のために撮った素材の出口として扱うのが現実的です。

BtoBでの向き不向き早見表

ここまでの内容を、配信先ごとに1枚で見比べられる形に整理します。自社の素材と体制に照らして、どこから始めるかを決める材料にしてください。

配信先面の性質BtoBで向く中身見るべき指標
TikTok発見型(フォロワー外に強く配る)現場の作業風景・専門職の1問1答・常識を覆す短い話平均視聴時間・完了率
YouTubeショート発見型+蓄積型(後から検索される)ウェビナーの切り出し・製品デモ・用語解説長尺への遷移・チャンネル登録
Instagramリール発見型(ビジュアル寄り)現場・社員・イベント・図解にできるノウハウ保存・プロフィール遷移
LinkedIn動画フィード発見型(ビジネス文脈)知見や見解・課題解決の考え方の解説コメントの質・企業ページ遷移
X関係型(既存の接点)告知・当日レポート・補足情報リンククリック・返信

使い方の指針は明快です。最初から5つ全部に手を出さないこと。自社の素材が「蓄積されるべきもの」ならYouTubeショート、「人と現場」ならInstagramリール、「見解」ならLinkedIn。1〜2面に絞って3か月続けるのが現実的な始め方です。3か月あれば、尺・頭出し・字幕の型が固まり、次の面へ展開するときの作業量が読めるようになります。

指標の扱いには注意が必要です。再生数を配信先横断で比べないこと。各プラットフォームの「1再生」の定義は同じではなく、数秒の表示を含むものと一定時間の視聴を求めるものが混在しています。比べるなら同一プラットフォーム内の前月比か、完了率・遷移率のような比率で見ます。横並びの再生数比較は、ほぼ確実に判断を誤らせます

マスター素材1本から各配信先へ展開する

配信先ごとに撮り直す必要はありません。マスター素材を1本作り、そこから出し分けます。展開の手順を並べます。

STEP1
マスターを9:16で作る

1080×1920で制作し、テロップは880×1250の安全領域に収めます。ロゴや連絡先を画面の四隅ぎりぎりに置かないことが、後の作り直しを防ぎます。

STEP2
尺のバリエーションを切る

同じ素材から15〜30秒版と60〜90秒版を作ります。短い版は結論だけ、長い版は理由と手順まで入れる形で、担う役割を分けます。

STEP3
頭出しのフックを差し替える

冒頭1〜3秒を配信先ごとに作り分けます。発見型では課題の提示から、関係型では前提の共有から入るほうが噛み合います。

STEP4
字幕とタイトルを整える

字幕は焼き込みを基本にします。YouTubeショートは検索から見つかるため、タイトルと説明文は配信先ごとに書き分けます。

STEP5
投稿文を出し分ける

同じ本文を全配信先に貼らないこと。文字数の慣習もハッシュタグの効き方もリンクの置き方も違います。

順序について1つ強調したいことがあります。作ってから出す先を考えるのではなく、出す先を決めてから撮ることです。出す先が決まっていれば、撮影時に寄りの画・引きの画・手元のアップを余分に押さえておくという判断ができ、後から尺を作り分ける作業が一気に軽くなります。編集段階で素材が足りないと気づくのが、最も高くつくパターンです。

地味ですが効くのがファイル管理です。同じ素材からの派生が増えるため、命名規則(テーマ・尺・配信先・版数)を先に決めておくこと。半年後に「どれが最新版か分からない」状態になるだけで、せっかく作った素材の再利用が止まります。撮影素材とマスター、書き出し済みの派生を別の階層に置いておくのも有効です。

ウェビナー録画を縦型に切り出す

BtoBで最も手近な素材は、ウェビナー・講演・社内勉強会の録画です。すでに話す内容が整理されており、質疑応答には顧客が実際に抱いた疑問が入っています。ゼロから企画を立てるより速く、しかも内容の裏取りが済んでいる状態から始められます。縦型動画を始めるとき、最初の10本をここから作るのは合理的な選択です。

切り出しの実務を具体的に見ます。16:9の横位置録画を9:16にするには、話者に寄せて左右を切るか、上下に余白を作ってそこに見出しと字幕を入れるレイアウトにするかの2択です。BtoBでは後者、つまり上に見出し帯、中央に映像、下に字幕という構成が読みやすくなります。質疑の1問を1本に仕立てる形なら、1回のウェビナーから十数本の候補が出ることも珍しくありません。

ここで人の目が必須になるのが、権利と機密の確認です。登壇者の許諾を取っているか、顧客名や未公開の数値が画面に映っていないか、他社資料の引用が含まれていないか。切り抜きは元の文脈から切り離されるため、単体で見たときに誤解を生まないかという視点でのチェックも必要です。この工程は自動化に任せられません。切り出し候補の抽出まではAIに任せられても、公開の可否は人が判断する領域として残ります。

無音視聴前提の字幕設計

配信先を選ぶ話と切り離せないのが字幕です。LinkedIn向けの解説で繰り返し引用される数値として、モバイルでの動画視聴の75%は音声なしで再生されるとされます。仕事中に開くBtoBの文脈では、この比率はさらに高いと考えて設計すべきでしょう。音がなくても内容が分かる状態が、例外ではなく前提です。

実務のルールは4つに集約できます。1つ目、字幕は焼き込みを基本にする(プラットフォームの自動字幕はオフにされることがあり、誤変換も残ります)。2つ目、専門用語と社名・製品名は必ず目視で修正する。自動字幕をそのまま出すと、社名と専門用語が壊れます。3つ目、1行の文字数を抑え、行数は2行までに収める。4つ目、背景と同化しない配色にする。文字だけで成立させると読みにくくなるので、映像と字幕で役割を分けます。

冒頭の扱いも配信先ごとに変わります。無音で見られる前提なら、冒頭1〜3秒は音のフックではなく文字のフックです。YouTubeショートは検索経由で来る人がいるので、タイトルと冒頭のテロップを揃えておくと期待とのズレが減ります。TikTokは下部のUIが厚いので冒頭テロップも上寄せに。LinkedInは仕事中の閲覧が多く音を出せない状況が大半なので、字幕なしの投稿は事実上成立しません。同じ字幕データを使い回しつつ、置き場所と冒頭の文言だけを配信先ごとに変えるのが実務的な落とし所です。

出す先を絞る・撤退する判断基準

全方位に出すべきでない理由は、単純な掛け算です。本数と配信先の数だけ手間が増え、1本あたりの作り込みが薄くなります。加えてトーンの作り分けも必要になるため、無理に広げるとどの面でも浮いている状態になります。BtoBは制作リソースが限られているのが普通で、面を絞る判断は消極的な選択ではなく、成果を出すための設計です。

3か月続けたあとに見る基準を、先に決めておきましょう。1つ目は完了率(数秒で切られていないか、最後まで見られているか)。2つ目は遷移(プロフィール・サイト・長尺への移動があるか)。3つ目は商談や問い合わせでの言及(動画を見たと言われるか)です。1と2が動かないなら中身の問題、1と2が動くのに3が動かないなら面と顧客層のミスマッチだと切り分けられます。

撤退の作法も決めておきます。アカウントを削除するのではなく、更新を止めて既存の投稿は残し、プロフィールに継続している面への案内を置く。過去の投稿は検索や回遊の入口として働き続けるからです。増やすのは、1面で型ができてから。1面に集中して伸ばすほうが、5面を薄く回すより成果は出やすく、担当者も続けられます。撤退を失敗として扱わない社内合意まで含めて、始める前に用意しておくとよいでしょう。

AIに任せられる工程と限界

縦型動画の運用でAIが効くのは、企画そのものより工程の前半です。任せられるのは4つ。1つ目、長尺の文字起こしを渡して切り抜き候補を挙げさせること。2つ目、字幕の下書きを生成すること。3つ目、同じ内容を配信先ごとのトーンで書き分けた投稿文を作らせること。4つ目、テロップの言い換え案を複数出させることです。いずれも「候補を増やす」用途で、選ぶのは人です。

切り抜き候補の抽出は、指示の具体度で結果が変わります。プロンプトの例を挙げます。

あなたはBtoB企業の動画編集ディレクターです。
以下はウェビナーの文字起こしです。
1. 単体で意味が通る60〜90秒の区間を10個挙げ、開始と終了の目安を示してください。
2. 各区間に、縦型動画の冒頭1〜3秒に置くテロップ案を1つ付けてください。
3. 顧客名・未公開の数値・他社資料への言及が含まれる区間には印を付けてください。
4. 文字起こしに書かれていない情報を補わないでください。
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[文字起こしをここに貼り付け]

限界もはっきりしています。1つ目、固有名詞と専門用語の誤変換は必ず残るため、社名・製品名・数値は人が目視で直す必要があります。2つ目、機密や顧客情報に当たるかの判断はできません。3つ目、「これは自社が言ってよい内容か」という判断もできません。4つ目、プラットフォームの最新仕様を正確には把握していません。尺の上限やUIの位置を尋ねると、古い数値を自信ありげに返すことがあります。仕様は公式情報で確認し、AIは候補出しと下書きの短縮に使う。この線引きを守るかどうかで、運用の安全性が変わります。

よくある失敗の一覧

最後に、縦型動画の配信先選びでつまずく典型例と、投稿前に見るべき項目を並べます。どれも派手な失敗ではなく、気づかないまま本数だけが積み上がるタイプのものです。

  • 1本の動画をそのまま全配信先へ同時投稿し、頭出しも字幕も出し分けない
  • 上限の尺いっぱいまで内容を詰め込み、最初の3秒で離脱される
  • テロップを画面の下端や右端に置き、プラットフォームのUIに隠れて読めない
  • 自動生成の字幕をそのまま公開し、社名や専門用語が誤変換のまま残る
  • 再生数だけを配信先横断で比べ、面ごとの性質の違いを無視する
  • ウェビナー録画を、登壇者の許諾や機密の確認なしに切り出して公開する
  • 配信先ごとに発見型か関係型かを決め、出す中身を分けているか
  • テロップとロゴが安全領域(880×1250ピクセル目安)に収まっているか
  • 冒頭1〜3秒に、音なしでも伝わる文字のフックがあるか
  • 字幕を焼き込み、固有名詞と数値を目視で修正したか
  • 投稿文・タイトル・説明文を配信先ごとに書き分けたか
  • 3か月後に見る指標(完了率・遷移・商談での言及)を決めているか
  • 尺・ファイルサイズ・セーフエリアの数値は変更される。投稿前に各配信先の公式情報と実機で確認する
  • 各プラットフォームの「1再生」の定義は同じではない。横並びの再生数比較で優劣を判断しない
  • 切り抜きは元の文脈から離れる。単体で見て誤解を生まないかを人が確認してから公開する

並べてみると、失敗の多くが「配信先ごとの違いを無視したこと」に由来しているのが分かります。仕様が共通だからこそ、出し分けの手間を省きたくなる。その誘惑を、投稿前のチェック1枚で止めるのが現実的な防ぎ方です。

まとめ

縦型動画の仕様は9:16・1080×1920でほぼ共通で、安全領域も880×1250ピクセル程度が目安とされます。違うのは尺の上限(ショート3分、TikTok10分、リールはアプリ内3分・公式音源は90秒まで)、UIで隠れる位置、そして誰に配られるかという面の性質です。配信先は発見型と関係型に分け、BtoBに足りていない段階から選ぶ。マスター素材1本に対して尺・頭出し・字幕・投稿文を出し分け、ウェビナー録画を最初の素材にする。無音視聴を前提に字幕を焼き込み、3か月後に完了率・遷移・商談での言及で判断する。全方位に出すより、1面で型を作る。この順序で進めれば、限られた人数でも縦型動画を続けられます。まずは手元にあるウェビナー録画を1本開き、単体で意味が通る90秒を探すところから始めてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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