AIは1人分として数えられる?|要員計画に載せる前に

「来期の要員計画にAIエージェントを1人分として載せてよいものか、経営企画から聞かれて答えられませんでした」「稟議の場で『それは何人分の仕事を代わりにやるのか』と役員に聞かれて、月あたり何時間という数字しか出せませんでした」。——数字を作る側に回ると、この問いは一度は必ず通ります。どちらも、聞いている側に無理があるわけではありません。投資の大きさを判断しようとして、手元にある物差しを使っているだけです。困っているのは、答えの型が決まっていないことのほうです。つまずきの正体は、数えてよいか悪いかではありません。本当は、何を単位に数え、どの費目に置き、誰の氏名を責任者に書くかを決めないまま、人数だけが先に走ることです。この記事では、要員計画と予算にAIを載せる前に決めておく項目を、単位・費目・責任者・数え直しの4つの順で整理します。
カメ先生AIを1人分と数えるのは乱暴だと思われがちですが、数えること自体は珍しくありません。困るのは、数えた後に誰も数え直さないことのほうです。
カメ子数え直さないと、具体的には何が起きるのですか。
カメ先生人は辞めれば欠員として表に出ますが、AIは使われなくなっても表からは消えません。契約が続く限り、計画の上では働き続けていることになります。
カメ子実際に働いている人数と、計画に載っている人数は、何が違うのでしょうか。
- 人数は、そのままでは使えない単位。人は休むが止まらず、AIは止まるが休まない。繁忙期の伸び方も、品質の外れ方も、覚えた仕事の引き継ぎ方も違う
- 数える単位は担当業務の本数を主、削減工数を従にして2つ並べる。費目は人件費には置けない。置き場所で承認のルートと見直しの周期が変わる
- 1人分と数えるなら、その1人分に対応する人の氏名が要る。何人分と見なすかの決めと、外れたときの数え直しは人が持つ。AIに任せるのは集計と差分の洗い出しまで
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「それは何人分ですか」に答えられない
AIの導入を説明する場で、この問いが出ない会議はほとんどありません。聞いている側に悪気はなく、むしろ真面目に投資を評価しようとしています。ところが答える側が持っているのは、たいてい月あたりの削減時間だけです。その場で人数に直すと、割る数を何にしたかで答えが変わる、根拠のない数字になります。
答えに詰まるひとつめの理由は、資料の作りにあります。要員計画の表は人の数で組まれていて、行が職種や部署、列が月、値が人数です。そこにAIを書き込む欄がありません。欄がないので、人の行に混ぜて書くか、表の外に注記するかのどちらかになります。混ぜれば採用計画と直結してしまい、外に出せば誰も見ません。
ふたつめは、申請先が分かれていることです。人件費の枠は人事や経営企画が握り、システムの費用は情報システムが握っています。AIエージェントは働き方は人に似ていて、支払いはシステムに似ているため、どちらの窓口に出しても、うちの管掌ではないと戻されます。戻し合っている間に、現場では個別の契約で使われ始め、把握できない支出が増えます。
この記事で扱うのは、この戻され方を止めるための決め方です。効果をどう試算するかではなく、数える単位・費目・責任者・数え直しの周期の4つを先に決める話に絞ります。試算は、この4つが決まった後でなければ、そもそも同じ数字を半年後にもう一度出せません。出せない数字は、出した瞬間から説明できない数字です。
なぜ人数に換算したくなるのか
人数に直したくなるのは、担当者の癖ではなく、決裁の場の構造から来ています。役員が投資の大きさを判断するとき、比較の物差しとして手元にあるのは人件費です。年間3,000万円と言われてもすぐには大きさが分かりませんが、中堅社員5人分ですと言われれば数秒で伝わります。伝わるので、説明する側は人数に直そうとします。
物差しがひとつしかないことには、もっと直接的な理由もあります。多くの会社では、事業計画の中でいちばん大きな費用が人件費で、年度ごとの増減も人数で議論されています。AIの費用はまだその表に席がないため、席のある数字に翻訳しないと議題に載らないという圧力がかかります。この圧力が、換算を急がせます。
ところが翻訳には副作用があります。5人分と言った瞬間に、聞いた側は、では来期の採用を5人減らせるかと考えます。これは論理としては自然で、止めようがありません。人数に直すということは、採用計画と同じ土俵に上がるということです。上がる覚悟がないなら、人数には直さないほうが安全です。代わりに、担わせる業務の名前を並べて、そのうち何本を置き換えるかで説明します。
換算を急いだ資料は、たいてい半年後に破綻します。導入から半年経った頃に、あのときの5人分はどこに行ったのかと聞かれ、削減した工数の実測がないので答えられない。答えられないと、次の投資の話が通らなくなります。最初に出す数字は、半年後に同じ方法でもう一度出せる数字かどうかで選びます。出し方を決めることのほうが、数字そのものより先です。
人は休むが止まらない。AIは止まるが休まない
人数換算がいちばん分かりやすく壊れるのは、稼働の形が違うところです。人は休みます。有給を取り、体調を崩し、家庭の事情で早退します。ただし、その抜け方は事前に分かることが多く、抜けても周りが埋められます。1人が休んでも、その日の処理が全部止まることは、まずありません。
AIは休みません。深夜も休日も同じ速さで動きます。その代わり、止まるときは全部が同時に止まります。提供側の障害、接続の鍵の失効、仕様の変更、社内の回線の不調。どれも予告なく起きて、担当していた業務が一斉にゼロになります。人の欠勤は1人分の穴ですが、AIの停止は担当業務そのものの穴です。埋める相手がいません。
この違いは、要員計画の意味そのものに関わります。要員計画は、少しずつ人が足りなくなったり余ったりすることを前提にした表です。1人分という単位は、段階的に増減することを前提にした単位です。AIはその前提に乗りません。0か1しかないものを、0.2刻みで議論する表に書き込んでいることになります。
実務での逃げ道は2つです。ひとつは、止まったときに手作業へ戻せる範囲だけを対象にすること。もうひとつは、止まった日の手順を先に書いておくことです。止まったときに誰が何をするかが書かれていない業務は、そもそも1人分と数えてはいけません。数えた瞬間に、その1人分の欠勤対応が存在しないことになるからです。
繁忙期の伸び方と、品質の外れ方が違う
次に壊れるのが、忙しい時期の伸び方です。人は繁忙期に残業で1.2倍から1.5倍くらいまで処理を伸ばせますが、そこで頭打ちになり、続けば品質と離職に跳ね返ります。AIは件数を増やせばそのまま伸びますが、従量で払っている場合は費用も同じ比率で増えます。定額で払っている場合は、上限に当たった時点で急に止まります。
つまり繁忙期のAIは、伸びる代わりに高くなるか、安いが突然止まるかのどちらかで、人のように無理をして少し伸びるという中間がありません。年度の要員計画は繁忙期の山を前提に人数を置くので、ここを人と同じ扱いにすると、いちばん忙しい月に、想定と実費がいちばん大きくずれることになります。ずれた月は、たいてい説明を求められる月でもあります。
品質の外れ方も違います。人は疲れると全体的にミスが増えますが、AIは特定の型の入力だけを外し続けます。平均の正答率は変わらないのに、ある業種の顧客の書類だけが毎回同じ箇所で間違っている、という形で出ます。平均だけを見ている限り、この形は見つかりません。
だから検収の仕方も変わります。人のミスは誰の仕事かで遡れますが、AIのミスは同じ処理が同じように外しているので、1件見つかった時点で同じ型の入力を全部見直すことになります。この見直しにかかる時間は削減工数から引かれていないことが多く、引かれていない分だけ人数換算が過大になります。
覚えた仕事の引き継ぎ方が違う
人を1人分と数えられるのは、その1人が抜けたときに引き継げるからです。異動のときには引き継ぎ書を書き、担当の顧客を紹介し、判断に迷った事例を口頭で伝えます。時間はかかりますが、引き継げることが前提になっているから、計画の表の上で人は交換できる単位として扱えます。
AIが覚えたことは、そういう形で束ねられていません。指示文、参照させている資料の置き場所、例外のときの分岐、過去に直した細かい言い回し。これらが設定の中に分散していて、なぜその指示文なのかという理由はどこにも書かれていません。作った人が異動すると、触れる人がいなくなります。
結果として、AIを入れたのに属人化が消えない、という状態が起きます。属人化の対象が、担当者から設定した人に移っただけです。1人分と数えるなら、その1人分の引き継ぎ資料に当たるものを誰が持つのかを決める必要があります。多くの場合これは、後で述べる責任者を1人決めることと同じ意味になります。
- 指示文と参照先の一覧を、業務ごとに1枚にまとめて置く
- 変えた日付と、変えた理由を1行で残す(理由がないと、次の人が戻せない)
- 触ってよい人を2人以上にしておく。1人だと異動で止まる
- 止まったときに手作業へ戻す手順を、同じ1枚に書いておく
数える単位の候補は4つ。どれも壊れる
では何を単位に数えるか。実務で使われている候補は4つあり、どれにも壊れるところがあります。先に並べて比べます。
| 数える単位 | 測りやすさ | 壊れるところ |
|---|---|---|
| 処理件数 | 実績から取れるので測りやすい | 1件の重さがそろっていないと比較にならない。件数を稼ぐ使い方に流れる |
| 稼働時間 | 人件費の表と並べやすい | 待ち時間を含むため、実際の負荷と一致しない。止まっていた時間の扱いも決まらない |
| 削減工数 | 決裁の場でいちばん通りやすい | 削減前の工数が実測されていないと、見積もりの見積もりになる |
| 担当業務の本数 | 増えた減ったがそのまま数え直しになる | 1本の重さが業務ごとに違う。大きい1本と小さい1本が同じ扱いになる |
4つのうち、決裁で選ばれやすいのは削減工数ですが、いちばん壊れやすいのもこれです。理由は単純で、削減前の工数を実測している会社がほとんどないからです。実測がないと現場の申告値を基準にすることになり、申告値はたいてい少し多めに出ます。多めの値から引いた削減工数は、当然多めになります。
主に据えるなら、担当業務の本数を勧めます。壊れ方が見えやすいからです。請求書の入力、問い合わせの一次返信、議事録の要約、と並べれば、増えたか減ったかは誰でも数えられます。本数は数え直しやすく、数え直しが止まらないという点が、年に何度も表を直す仕事では効きます。
ただし本数だけでは投資の大きさが伝わりません。そこで本数を主、削減工数を従にして、2つ並べて書く形にします。本数は増減の管理に使い、削減工数は大きさの説明に使う。役割を分けておくと、片方の前提が崩れたときにもう片方が残り、議論が最初からやり直しになりません。
削減工数で説明する前に確かめる3つ
削減工数を使うなら、出す前に3つ確かめます。ひとつめは、削減前の工数が実測か申告かです。実測でないなら、資料にそう書きます。申告値に基づく概算と1行入れるだけで、後から数字が動いたときの説明がまったく違ってきます。書かずに出すと、動いた瞬間に数字全体の信用が落ちます。
ふたつめは、空いた時間が何に使われたかです。ここが抜けると、削減工数は費用の削減になりません。1人が月20時間浮いても、その20時間が別の仕事で埋まっただけなら、支払う人件費は1円も変わりません。費用が減るのは、人数が減るか、外注や残業が減ったときだけです。人数換算の資料では、この区別がよく飛ばされます。
みっつめは、監督にかかる時間が引かれているかです。出力の確認、差し戻し、例外の処理、指示文の手直し。導入して間もない時期は、これが削減分の3割から5割を食うことも珍しくありません。監督の時間を引いていない削減工数は、人数に直した時点で必ず過大になります。しかも過大になった分は、後から現場の残業として出てきます。
- 削減前の工数は実測か申告か。申告なら資料に明記する
- 空いた時間が別の仕事に回っただけなら、費用は減っていない
- 確認・差し戻し・例外対応の時間を、削減分から引く
- 導入初月ではなく、3か月目以降の平均を使う
費目はどこに置くか。人件費には置けない
数え方の次は置き場所です。結論から書くと、人件費には置けません。人件費は雇用や委任の契約に対する対価を集める科目で、AIの利用料の支払先は提供している事業者です。人数に換算して説明することと、人件費という科目に入れることは、まったく別の話です。ここを混ぜると、決算の説明で必ず止まります。
では実務ではどこに置くか。税理士や税理士法人の解説では、月額や年額の利用料は継続的な役務の提供に対する対価なので原則は支払った期の経費とされ、通信費・支払手数料・ソフトウェア利用料・雑費のいずれで処理していても、継続して同じ科目を使っていれば実務上の問題になりにくいと説明されています。年払いでも、1年以内の短期前払費用に当たれば支払時に損金にできる扱いがあります。
分かれ目は、導入のときにかかる費用です。初期設定、自社の業務に合わせた改修、データの移し替え、個別の追加開発。これらは使える状態にするための費用として取得価額に入り、資産計上の検討対象になります。無形固定資産としてのソフトウェアの耐用年数は5年です。金額の目安は、10万円未満はその期に全額経費、10万円以上20万円未満は3年で均等に償却、20万円以上は減価償却資産という整理が示されています。
2021年6月に改められたソフトウェアの取得価額の取扱いでは、試作や検証の段階の費用も、将来の収益に結びつかないことが明らかな場合に限って取得価額から除ける、という考え方が示されています。裏を返せば、検証のつもりで払った費用も、そのまま本番に移れば資産に載りうるということです。社内の資料では、判定が済むまで「経費か資産かは確認中」と書いておき、最終的な扱いは顧問の税理士に確認する前提にします。
なお、この費用をどの部門にいくら負担させるかという配り方は、費目を決めた後の別の論点です。この記事ではどの科目に置くかまでを扱います。置き場所が決まらないうちに配り方の議論を始めると、科目が部門ごとにばらばらになり、翌期に合算できなくなります。
置き場所で、承認のルートと見直しの周期が変わる
費目を決めることは、承認のルートを決めることでもあります。人件費に近い枠に置けば要員計画と同じ承認の流れに乗り、見直しは年に1回です。システムの費用に置けば情報システムの予算の流れに乗り、見直しは契約の更新に合わせます。同じ金額でも、置き場所によって次に触れるのが1年後か3か月後かが変わります。
生成AIの提供側の仕様は、半年もすれば変わります。料金の体系が変わり、使える機能が増え、以前の指示文が同じようには効かなくなる。年に1回しか触らない場所に置くと、変化に追いつけません。かといって、要員計画そのものを四半期ごとに組み直すわけにもいきません。表の性格が違うからです。
現実的な分け方は、表を2枚にすることです。要員計画の表には担当業務の本数と責任者だけを書き、金額と契約の条件はシステムの予算の表に置く。本数が変わったときだけ要員計画を直し、金額は契約の周期で直す。2枚に分けておくと、片方の更新が遅れても、もう片方は現況を保てます。どちらが正なのかを決めておくことも忘れないようにします。
資産計上した場合は、もうひとつ注意が要ります。償却が5年残っている状態でその仕組みを使わなくなると、使っていないものの費用が帳簿に残り続けます。残っていると、乗り換えの判断が鈍ります。この鈍りを見込んで、資産に載せるのは自社向けの改修が大きいものだけに絞り、標準のまま使うものは経費で通す、という決め方をしている会社もあります。
1人分と数えるなら、人の氏名が要る
人数に換算する話でいちばん飛ばされやすいのが、責任の所在です。AIは責任を持てません。出力が間違っていたときに顧客へ説明するのも、社内で経緯を書くのも、次からどうするかを決めるのも人です。1人分として数えるなら、その1人分に対応する人の氏名が要ります。ここが空欄のまま表に載った数字は、誰も守りません。
監査法人系の助言会社が2026年5月に公表した整理では、AIエージェントを組織に迎える際の原則として、責任者が不在のまま働かせることを認めない、という考え方が示されています。同じ整理では、どのエージェントがどの業務を担い、どの権限を持ち、どこに接続しているかを台帳に登録して管理することが挙げられています。人の名簿に当たるものを作る、ということです。
この整理は、迎え入れから終わりまでを6つの段階に分けています。業務の定義、採用、導入の準備、配置と管理、運用と改善、そして退職と廃止です。注目したいのは最後の段階で、接続の鍵を失効させ、データを削除するところまでが手順に含まれています。やめ方を先に決めておくのは、人の退職手続きと同じ発想です。
責任者は、作った人ではなくその業務の結果に責任を持つ人を置きます。情報システムの担当者を責任者にすると、出力の中身の良し悪しを判断できないので、形だけの責任者になります。請求書の入力を担わせているなら経理の課長、一次返信を担わせているなら問い合わせ窓口の責任者。要員計画の表に書くのは、この氏名です。
権限を4段階に分け、上げたときだけ数字を動かす
同じ整理では、AIエージェントの権限を、扱う危うさの度合いで4つの段階に分けています。情報を取ってくるだけの段階、文案を作る段階、推奨を出す段階、そして実際に操作して実行する段階です。進め方としては、最小の権限から始めて段階的に広げることが示されています。
この4段階は、要員計画の議論にそのまま使えます。情報を取るだけ、文案を作るだけの段階は、人の代わりというより道具に近く、人数に換算する意味がありません。数字を動かすのは、実行して操作する段階に上げたときだけと決めておきます。そう決めると、表を直す回数が年に数回に収まり、直すたびに理由が説明できるようになります。
段階を上げるときは、監督の工数が同時に増えることも書き添えます。実行まで任せるなら、実行後の確認、取り消しの手順、誤った実行が起きたときの連絡の流れが要ります。権限を1段上げるたびに、監督の時間を見積もり直す。この見積もりを省くと、削減の数字だけが先に大きくなり、増えた監督の時間は現場の残業に紛れます。
権限の範囲は、その責任者が本来持っている決裁の範囲を超えないようにします。課長が承認できない金額の処理を、課長が責任者のAIにさせてはいけません。当たり前に見えますが、接続の設定は情報システムが行うため、業務側の決裁権限と技術側の接続権限がずれていることは珍しくありません。台帳には、両方を並べて書いておきます。
任せてよい作業と、人が持つ決めを作業名で分ける
要員計画の資料づくりにAIを使うこと自体は、無理のない使い方です。ただし、任せる範囲を作業の名前で区切っておかないと、いつの間にか決めまで渡ることになります。ぼんやり「計画を作らせる」と頼むと、換算の係数まで勝手に置かれます。作業名で線を引きます。
- 各業務の実績件数と処理時間を集計し、月ごとの並びにする
- 前月との差分を洗い出し、変わった業務だけを一覧にする
- 計画表の記入漏れ・責任者が未記入の行を見つける
- 契約の更新月と金額の一覧を作る
- 稟議の資料の下書きを作る(数字は人が差し替える)
- この業務を何人分と見なすかを決めさせる
- 削減工数から人数に直すときの係数を決めさせる
- 費目をどの科目に置くかを決めさせる
- 数え直しが必要かどうかを判断させる
- 責任者を割り当てさせる
分け方の基準は単純です。元の記録に戻って検算できる作業は任せてよく、元の記録がない判断は人が持ちます。集計や差分には元の記録があるので、間違っていれば突き合わせれば分かります。何人分と見なすかには元の記録がなく、決めた人の判断しかありません。判断を渡すと、外れたときに直す手がかりが残りません。
任せる場合も、根拠を一緒に出させます。集計を頼むときは、対象にした期間、除外した行、合計の内訳を必ず添えさせる。数字だけを受け取らず、どの行から作ったかを見られる形にする。これは確認のためだけでなく、翌期に同じ方法でもう一度作るためにも要ります。方法が残っていない数字は、比較にも使えません。
そのうえで、人が確認する範囲を先に決めます。全部を見直すのは続きません。金額の大きい上位の行、前月から2割以上動いた行、責任者が変わった行の3つだけは必ず人が見る、という形にしておく。範囲を決めずに気になったら見るにすると、いちばん忙しい月から見なくなります。
数え直しの引き金と、周期
一度載せた数字は、放っておくと実態から離れます。離れ方は緩やかなので、気づいたときには2年前の前提で計算された数字が使われていた、ということが起きます。防ぐには周期と引き金の2つを決めます。周期は決めた日に必ず見直すもの、引き金は周期を待たずに見直すきっかけです。
引き金は5つに絞ると運用できます。使っている仕組みの提供側で仕様や料金の体系が変わったとき。担わせる業務が増えたか減ったとき。品質についての苦情が出たとき。責任者が異動したとき。契約の形が従量から定額に、あるいはその逆に変わったとき。このどれかが起きたら、周期を待たずに数え直すと決めておきます。
周期は2段階にします。四半期に1回は、担当業務の本数と責任者だけを見る軽い見直し。年に1回は、費目・契約・監督の工数・削減工数の実測まで含めた本見直し。軽い見直しを四半期に置くのは、引き金を見落としたときの受け皿にするためです。引き金は現場で起きるので、必ずいくつかは伝わってきません。
前回の一覧と突き合わせ、増えた業務・減った業務・止まっている業務に印を付ける。止まっている業務は、止まった日と理由まで書く。
導入初月は対象が絞られているため使わない。直近3か月の処理件数と、確認や差し戻しに使った時間を取る。
監督の時間を引いた後の値にする。空いた時間が別の仕事に回っただけの分は、費用の削減には数えない。
料金の体系が変わっていないか、資産計上した分の償却が残っていないか、更新月がいつかを見る。
異動がなかったか、権限の段階が上がっていないか、上がっているなら監督の工数を見積もり直したかを確認する。
変えた数字だけでなく、なぜ変えたかを残す。次の期に同じ議論を最初から繰り返さないための記録になる。
記録を残すところまでを手順に入れるのが要点です。数え直しは、毎回ゼロから議論すると必ず長引きます。前回なぜその数字にしたのかが1行あるだけで、会議にかかる時間が半分になります。逆にこの1行がないと、担当が変わった翌期に、同じ結論へもう一度たどり着くまで数か月かかります。
やってしまいがちな決め方
実際によく見る失敗の型を挙げます。どれも悪意はなく、むしろ急いで数字を出そうとした結果です。だからこそ、型として知っておかないと避けられません。
- 削減時間だけで説明する。時間が減っても支払いが減らなければ、投資の回収にはならない
- 導入初月の数字で年間を割る。初月は対象が絞られ、慣れた人だけが使っているので、いちばん良い数字が出る
- 提供している事業者の公表値をそのまま人数に直す。自社の業務の構成と件数の分布が違う
- 人数に直した後、その分の採用をすぐ止める。品質の問題が出てから採り直すには時間がかかる
- やめた後も表に載せ続ける。契約を止めた仕組みが、翌期の計画では働いていることになる
- 責任者の欄を部署名で埋める。部署は説明もできないし、判断もできない
2つめの初月の数字で年間を割る型は、特に起こりやすいものです。導入の直後は対象の業務を絞り、関心の高い担当者が丁寧に使います。3か月目には対象が広がり、慣れていない人も使い始め、例外的な入力が増えます。初月と3か月目では、同じ業務でも削減率が半分近くまで落ちることがあります。年間の計画に使うのは3か月目以降の平均です。
最後の部署名で埋める型も見落とされます。表の見た目は埋まるので、審査を通ってしまいます。しかし問題が起きたときに、部署名では誰も動きません。責任者の欄は、氏名でなければ埋めたことにしないという運用にしておくと、決められない業務が最初に見つかります。決められない業務は、たいてい人数換算もできない業務です。
3つめの公表値をそのまま使う型は、資料の説得力を上げるつもりで起きます。ただし公表値は、その事業者が測った条件での数字です。自社の件数の分布と例外の多さが違えば、同じ比率にはなりません。使うなら、自社での試行の数字と並べて、どちらの条件で測ったかを書き添えます。並べて置くだけで、読む側の受け取り方が変わります。
減らしてから採り直すことになる例
人数に直して採用を止めた後に何が起きたか。海外では、問い合わせ対応の人員を大きく減らした決済の事業者が、複雑な案件で品質が届かないことを認め、担当者の採り直しを始めた例が繰り返し引かれています。この例は解説記事が二次的に引用する形で流通しているため、件数や時期の細部までは断定できませんが、方向としては同じ報告が続いています。
調査会社の見方も同じ方向です。2026年3月に公開された記事では、2025年10月に実施された問い合わせ対応部門への調査を基に、AIを理由に人員を減らした企業の一部が2027年までに人を採り直すことになるという見通しが示されています。回答者は321名と紹介されています。減らすことは速く、戻すことは遅いという非対称が、ここに出ています。
国内はもう少し慎重な数字が出ています。2026年3月の報道によれば、AIへの投資を増やす、あるいは横ばいとする国内企業のうち、間接部門の人員削減を見込むのは1割台にとどまり、むしろAIの導入に伴って人を増やすとした企業のほうが多いという調査結果が伝えられています。国内では、AIの導入がそのまま人員の削減として計画されているわけではないということです。
大きな計画として報じられているものも、期間は長めです。大手銀行の持株会社が事務職の業務を10年かけて削減する計画、生命保険会社が問い合わせ窓口の担当者を2031年までに半分にする計画などが報じられています。いずれも年単位で少しずつ置き換える形で、来期の表を一気に書き換えるものではありません。人数換算は、今年の表を動かす道具としては動きが遅いのです。
要員計画に載せる前に決める項目
ここまでを、載せる前に決める項目の形にまとめます。この10個が埋まっていれば、要員計画の表に書いても半年後に説明できます。逆に埋まらない項目があるなら、その業務はまだ数える段階に来ていないと判断するのが安全です。数える前に決めるほうが、後から直すより手間が少なく済みます。
- 数える単位を決めたか(主は担当業務の本数、従は削減工数)
- 対象にする業務の一覧と本数を書き出したか
- 削減工数は3か月目以降の平均で、監督の時間を引いた値か
- 費目をどの科目に置くか決めたか(人件費には置かない)
- 経費で落とすか資産に載せるかの判定が済んでいるか
- 承認のルートと、見直しの周期を決めたか
- 責任者を氏名で書いたか(その業務の結果に責任を持つ人か)
- 権限は4段階のどこか。上げるときの手続きを決めたか
- 数え直しの引き金5つと、四半期と年次の周期を決めたか
- やめるときの手順(接続の失効・データの扱い)を書いたか
順番にも意味があります。責任者を先に決めると、残りの9個が決まりやすくなります。責任者が決まっていれば、対象の業務も、監督にかかる時間も、数え直しの引き金も、その人が答えられます。逆に単位や費目から決め始めると、決めた後で、これは誰の話だったかに戻ることになります。
埋めた結果をどこに書くかも決めます。要員計画の表に人の行と混ぜて書くのか、区画を分けるのか。混ぜて書くと、翌期に人事の担当者がそれを人として扱ってしまうことがあります。行の区分を分け、区分の名前を先に決めておくと、担当が変わっても取り違えが起きません。区分名は社内で通じる言葉にします。
まとめ
AIやAIエージェントを要員計画に載せること自体は、避ける必要はありません。ただし人数は、そのままでは使えない単位です。人は休むが止まらず、AIは止まるが休まない。繁忙期の伸び方も、品質の外れ方も、覚えた仕事の引き継ぎ方も違います。数える単位は、担当業務の本数を主、削減工数を従にして2つ並べる。削減工数を使うなら、実測か申告か、空いた時間が何に使われたか、監督の時間が引かれているかの3つを先に確かめます。費目は人件費には置けません。月額や年額の利用料は原則その期の経費で、導入時の改修や移し替えは取得価額に入り資産計上の検討対象になります。置き場所によって承認のルートと見直しの周期が変わるので、本数と責任者は要員計画の表に、金額と契約はシステムの予算の表に分けて置きます。
そして、1人分と数えるなら人の氏名が要ります。責任者は作った人ではなく、その業務の結果に責任を持つ人です。権限は、情報を取る・文案を作る・推奨を出す・実行するの4段階に分け、実行の段階に上げたときだけ表の数字を動かす。AIに任せてよいのは、元の記録に戻って検算できる集計と差分の洗い出しまでで、何人分と見なすかの決めと、外れたときの数え直しは人が持ちます。数え直しは四半期に軽く、年に1回は費目と契約まで含めて。引き金が引かれたら周期を待ちません。載せる前に決める10項目のうち、まずは責任者の欄を氏名で埋めてみてください。そこが埋まらない業務は、数字にする前に、決める人を決めるところから始まります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
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