社内のAI利用調査が役に立たない原因|設問と読み方を直す

「全社にAIの利用アンケートを取ったが、経営に報告したら『それで、何をするの』と聞かれて終わった」「使っていると答えた人が6割もいたのに、配った道具の利用記録はほとんど動いていない」。AIの推進を任された担当者や情報システム部門から、こうした声を聞くことがあります。手間をかけて集めた回答から次の手が出てこないのは、担当者にとって苦しいところです。外の調査を見ると、帝国データバンクが2026年3月に1万312社から回答を得た調査では、生成AIを業務で活用している企業は34.5%でした。懸念や課題としては「情報の正確性」50.4%に次いで、「専門人材・ノウハウ不足」41.3%、「活用すべき業務範囲」40.0%が挙がっています。どの業務で使うかが決まっていない企業が多いのに、社内の調査が「使っているか」だけを聞いていては、その空白は埋まりません。社内調査が役に立たないのは、回答率が低いからではありません。本当は、次に決めたいことから逆算して設問を作り、分けて読む段取りが欠けているのです。この記事では、ある会社の推進担当の想定の例に沿って、社内のAI利用調査がつまずく原因と、設問と読み方の直し方を整理します。
カメ先生社内の利用調査は、使っている人の割合を出すだけなら簡単なんだ。でもその割合からは、どの業務に道具を配ればいいか、研修で何を教えればいいかは出てこない。
カメ子聞き方を変えれば、次の手が見えてくるものなんですか。
カメ先生業務と頻度と困りごとを聞いて、部署と職種で分けて読めば、打ち手の候補は見えてくる。ただし、自由記述の分類はAIに手伝わせても、打ち手を選ぶのは人だし、誰が答えたか分かる形では扱わない。
カメ子調査は結論を出す道具ではなく、打ち手を選ぶ材料を集める道具なんですね。
- 使っているかの二択、道具名だけの設問、答えにくい聞き方、回答者の偏りが、調査を役に立たなくする
- 調査の後に決めたいことを先に書き、業務・頻度・困りごと・配っていない道具を責めずに聞く
- 部署と職種で分けて読み、利用記録と部署単位で突き合わせ、研修・道具・規程に戻す
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外の調査が示す現在地と、社内調査のずれ
公的な調査や信頼できる民間の調査は、企業単位での現在地を教えてくれます。総務省の令和7年版情報通信白書によると、2024年度に生成AIを積極的に活用する、または活用する意向の日本企業は49.7%で、前年度の42.7%から増えました。先の帝国データバンクの2026年3月の調査では、活用している企業は大企業で46.5%、中小企業で32.4%、小規模企業で28.0%と、規模による差も出ています。
同じ調査では、活用している業務の上位は「文章の作成・要約・校正」45.1%、「情報収集」21.8%でした。悪影響として最も多かったのは「使いこなし格差の拡大」の18.8%です。つまり、会社として使い始めていても、社内では使う人と使わない人、使う業務と使わない業務の差が広がりつつある、というのが外から見える現在地です。
ここに社内調査の役目があります。外の調査は会社ごとの平均しか示せませんが、社内の調査は、自社のどの部署の、どの業務で、何が止まっているかを示せるはずです。ところが実際の社内調査は、外の調査と同じ「使っているか」を聞いて、全社の割合を出したところで終わってしまうことが多いのです。外の数字と比べて高い低いを言うだけなら、社内で調査をする意味は薄くなります。
つまずいた調査の姿:ある会社の例
ここからは、想定の例に沿って進めます。従業員300人ほどの会社で、半年前に全社員へ対話型のAIを配りました。推進を任されたのは情報システム部門の二人です。配って半年がたち、経営から「どれくらい使われているのか」と聞かれたので、全社にアンケートを取りました。
設問は五つでした。「業務でAIを使っていますか(はい・いいえ)」「使っている道具を選んでください」「どれくらいの頻度で使っていますか」「満足度を5段階で教えてください」「要望があれば自由に書いてください」。記名式で、各部署の上長からメールで依頼し、回答率は4割、「使っている」は62%でした。
報告の場で、経営からは「62%は多いのか少ないのか」「残りの人はなぜ使わないのか」「次に何に予算を使えばよいのか」と聞かれ、どれにも答えられませんでした。設問が、報告を受けた人が知りたいことに一つもつながっていなかったのです。次の四つの節で、この調査のどこが原因だったかを分けて見ていきます。
振り返ると、配り方にも手がかりがありました。依頼のメールには「利用状況の把握のため」とだけ書かれ、結果をどう使うのかが書かれていませんでした。回答の期間は1週間で、月末の繁忙と重なった部署はほとんど答えていません。何のために聞き、答えるとどう役に立つのかが書かれていない依頼は、関心のある人にしか届かないのです。
原因1 使っているかの二択で終わる
「使っていますか」に「はい」と答えた62%には、一度だけ試した人から、毎日の業務に組み込んでいる人までが混ざっています。二択で聞くと、この幅がすべて一つの数字に畳まれてしまいます。62%が多いか少ないかを議論しても、その中身が分からなければ打ち手は決まりません。
「いいえ」の38%も同じです。使ってよい範囲が分からなくて控えている人、業務に使いどころが見つからない人、そもそも配られたことを知らない人では、打つ手がまったく違います。使っていない理由を分けずに数えると、規程を直すべきか、研修をすべきか、周知をすべきかが決まりません。
二択は答えやすく、回答率を上げるには都合が良い設問です。けれども、調査の目的が打ち手を選ぶことなら、使っている人を頻度で、使っていない人を理由で分けられる設問に置き換える必要があります。後の節で、その置き換え方を示します。二択の設問を残すなら、報告では割合を出す前に「一度でも使ったことがある人の割合で、使い方の深さは表していない」と注記しておき、数字だけが独り歩きしないようにします。
原因2 道具の名前を聞いて、業務を聞いていない
「使っている道具を選んでください」という設問は、一見すると大事そうに見えます。けれども、会社が配った道具の利用状況は、情報システム部門の管理画面や契約の台帳を見れば、ある程度は分かります。わざわざ全社員の時間を使って聞く価値があるのは、記録からは分からないこと、つまりどの業務で何のために使っているかのほうです。
道具の名前だけを聞くことには、別の問題もあります。表計算や文書作成、会議の道具の中にAIの機能が組み込まれるようになり、使っている本人がそれをAIの利用だと思っていないことがあります。逆に、検索の結果に出てきたAIの要約を読んだだけで「使っている」と答える人もいます。道具の名前の選択肢は、答える人によって受け取り方がばらばらになります。
もう一つ、道具の名前は変わります。製品名の変更や統合は珍しくなく、半年後に同じ調査を繰り返そうとすると選択肢を作り直すことになり、前回と比べられなくなります。業務の名前は、道具の名前より長く変わらないので、比べ続けるための軸としても業務を聞くほうが向いています。
原因3 正直に答えにくい設問になっている
マイクロソフトとリンクトインが2024年5月に公表した、31か国3万1千人を対象にした働き方の年次調査では、仕事でAIを使う人の78%が、会社から配られたものではない自分の道具を持ち込んでいると答えました。同じ調査で、仕事でAIを使う人の52%は、最も重要な仕事にAIを使っていることを認めたがらず、53%は重要な仕事に使うと自分が替えのきく存在に見えると心配していました。
この調査は海外を含むもので、そのまま自社に当てはめることはできませんが、AIの利用は、正直に答えにくい質問になりやすいことを示しています。例の会社の調査は記名式で、上長から依頼が届きました。会社が配っていない道具を使っていれば、規程違反を問われるかもしれないと考え、答えを控えるのは自然なことです。
逆向きのゆがみもあります。推進の旗振り役である情報システム部門から、上長経由で依頼が来ると、「使っていない」と答えると怠けていると思われそうで、試しただけでも「はい」に丸をつける人が出ます。冒頭の「6割が使っているのに利用記録が動かない」ずれは、答えやすい方向に回答が寄ったことで説明できる部分があります。
原因4 答える人が偏っている
回答率4割ということは、6割の人は答えていません。任意の調査では、AIに関心のある人、すでに使っている人ほど答えやすく、関心の薄い人ほど答えません。その結果、回答者の中の「使っている」割合は、全社の実態より高めに出るのが普通です。
偏りは部署の間でも起きます。例の会社では、企画部門と営業部門の回答率が高く、製造や物流の現場、経理の回答率が低くなっていました。全社の割合を一つ出すと、よく答えた部署の姿が全社の姿として報告されてしまいます。パソコンに向かう時間の少ない職種では、メールでの依頼そのものが届きにくいことも考えておきます。
偏りを消すことはできませんが、見える形にすることはできます。部署ごとの回答率を必ず結果と並べて出し、回答率の低い部署の数字は参考にとどめる、と報告に書いておきます。回答率が特に低い部署には、朝礼や部署の会議の時間を5分もらって答えてもらうなど、答える場を用意するのが確実です。
直す前に、調査の後に決めたいことを書く
設問を直す前にやるべきことは、調査の結果を使って何を決めたいかを書き出すことです。例の会社では、経営とのやり取りを振り返り、決めたいことを三つに絞りました。どの業務に向けた道具や使い方を用意するか、研修で何を教えるか、規程のどこを分かりやすくするか、です。
- どの業務に道具や使い方を用意するか → 業務ごとの利用の頻度、使いたいのに使えていない業務
- 研修で何を教えるか → 使っていない理由、使ってみて困ったこと
- 規程のどこを分かりやすくするか → 入力してよい情報が分からない、の回答の多い部署と業務
- 配っている道具で足りているか → 会社が配っていない道具を使ったことがあるか、その理由
決めたいことに結びつかない設問は、削ります。例の会社の元の設問では、満足度の5段階がそれに当たりました。平均が3.4と出ても、何を直せばよいかは分からないからです。設問は10問前後、5分で答え終わる量に抑えると、回答率も保ちやすくなります。
もう一つ、同じ調査を半年後に繰り返すかどうかも、ここで決めておきます。繰り返すなら、設問の言い回しと選択肢は次回も変えない前提で作ります。変えると前回と比べられなくなるので、迷った設問は最初から入れないほうが安全です。
直した設問1 どの業務で、どの頻度で
二択の「使っていますか」は、業務ごとの頻度を聞く設問に置き換えます。選択肢の業務は、全社共通の一覧ではなく、部署ごとの業務の名前で作ります。営業なら「提案書の下書き」「商談の記録」「顧客への連絡文」、経理なら「請求書の確認」「社内からの問い合わせへの回答」のように、その部署の人が毎日使っている言葉で業務を並べるのがこつです。
頻度の選択肢は、「毎日」「週に数回」「月に数回」「試しただけ」「使ったことがない」の五つ程度にします。「よく使う」「ときどき」のような言葉は人によって幅が違うので避けます。また、「この1か月で」と期間を区切って聞くと、ずっと前に一度試しただけの記憶で答えることを防げます。
業務の一覧は、推進担当が一人で作るより、各部署の担当者に5分だけ見てもらうほうが確かです。一覧に無い業務のために「その他(業務名を書いてください)」の欄を一つ置いておくと、推進担当が知らなかった使い方が見つかることもあります。業務の数は部署ごとに5〜8個に抑え、答える負担が増えすぎないようにします。
直した設問2 何に困って止まっているか
使っていない人にも、使っている人にも、困っていることを選択肢で聞きます。使っていない人の理由と、使っている人がつまずいた点は、どちらも研修や規程を直す手がかりになります。選択肢の例は次のとおりです。
- 使ってよい業務の範囲が分からない
- 入力してよい情報と、いけない情報の区別が分からない
- 出てきた答えが正しいかどうかの確かめ方が分からない
- 自分の業務での使い方が思いつかない
- 業務で使う画面とは別の画面を開くのが手間
- 試す時間が取れない
選択肢は、打ち手に結びつくように作ります。「範囲が分からない」「入力してよい情報が分からない」が多ければ規程の書き方、「確かめ方が分からない」「使い方が思いつかない」が多ければ研修、「画面が別で手間」が多ければ道具の選び方や置き場所、というように、選択肢ごとに戻す先が決まっている状態にしておきます。
複数選べる形にし、最後に「最も困っているものを一つ」と重ねて聞くと、よく選ばれる理由と、いちばん重い理由を分けて見られます。自由記述の欄は、この設問の後に一つだけ置き、「具体的にどの業務で、どう困ったか」を書いてもらいます。
直した設問3 会社が配っていない道具を責めずに聞く
配っていない道具の利用は、聞き方しだいで答えがまったく変わる設問です。聞くときは、責める調子を消し、答えた人が不利にならないことを先に書きます。たとえば「会社が配っている道具のほかに、業務で使ったことのあるAIの道具はありますか。この回答で個人が特定されたり、不利益を受けたりすることはありません。道具の選び直しの参考にします」と、目的を添えて聞きます。
道具の名前を聞くより、配っている道具では足りなかった点を聞くほうが役に立ちます。「長い資料を読み込めなかった」「画像を扱えなかった」「社外からつなげなかった」といった理由は、道具の選び直しや設定の見直しに直接つながります。許可していない利用を見つけ出して止めることは、この調査の目的にしません。見つけ方や許可制への移し方は、別の記事で扱っています。
- この設問を含む調査は、必ず無記名にする
- 部署は大きな単位で選ばせ、少人数の部署や役職の組み合わせで個人が分からないようにする
- 回答の集計を見られる人を推進担当に限り、上長には部署単位の集計だけを渡す
- 回答をもとに個人を調べたり、処分を検討したりしないことを、調査の依頼文にも書く
聞き方の言い回しは、配る前に数人に試してもらいます。例の会社では、部署の違う5人に下書きを答えてもらい、答えにくかった設問と、その理由を聞きました。「答えたくない」を選んだ人に理由を尋ねると、「部署を選ぶと自分だと分かる」という声が出たため、部署の選択肢を一段大きな単位にまとめ直しました。試しの回答は集計に入れず、言い回しを直すためだけに使います。
実務仕様:設問の例と集計の欄
ここまでの設問を、集計の欄と戻す先まで含めて一枚にまとめると、次のようになります。例の会社では、この表を調査の前に経営と部署の長に見せ、決めたいことと設問がつながっているかを確かめてから配りました。
| 設問 | 選択肢の例 | 集計の欄 | 戻す先 |
|---|---|---|---|
| 所属の部署と職種 | 大きな単位の部署・営業、事務、企画、技術、現場など | 回答率を部署ごとに出す | 結果の信頼度の注記 |
| 業務ごとの利用の頻度(この1か月) | 部署ごとの業務5〜8個に、毎日・週に数回・月に数回・試しただけ・使ったことがない | 部署と職種ごとの、業務別の頻度の分布 | 道具と使い方を用意する業務 |
| 困っていること(複数選択) | 範囲が分からない・入力してよい情報が分からない・確かめ方が分からない・使い方が思いつかない・画面が別で手間・時間が無い | 理由ごとの件数と、最も困っている理由 | 研修の中身、規程の書き方 |
| 使ってみて役に立った業務 | 業務の一覧から選ぶ、その他に業務名 | 部署を越えて多い業務 | 社内で広げる使い方の候補 |
| 配っていない道具の利用 | ある・ない・答えたくない | 部署単位の割合のみ | 道具の選び直し |
| 配っている道具で足りなかった点 | 自由記述 | 束ねた理由の件数 | 設定の見直し、道具の追加の検討 |
| 業務でどう困ったか | 自由記述 | 束ねた困りごとの件数と代表の文 | 研修の事例、規程の具体例 |
「答えたくない」の選択肢を置くのは、無理に「ない」を選ばせないためです。「答えたくない」が多い部署は、それ自体が読み取るべき結果で、規程の伝わり方や部署の空気に原因があるかもしれません。集計の欄を先に決めておくと、回収した後に何を数えるかで迷わずに済みます。
表の設問は7つですが、業務ごとの頻度は部署ごとに5〜8個の業務を並べるので、答える側から見ると選ぶ箇所は20前後になります。例の会社では、試しに答えてもらった5人の所要時間を測り、いずれも5分以内に収まることを確かめてから配りました。自由記述の欄は二つまでにとどめ、空欄のままでも次へ進めるようにしておくと、途中でやめる人が減ります。
読み方1 部署と職種で分けて見る
回収した結果は、全社の割合から読み始めないようにします。最初に開くのは、部署と職種の組み合わせごとの、業務別の頻度の表です。例の会社の2回目の調査では、全社で見ると「週に数回以上」は3割ほどでしたが、営業の「提案書の下書き」では半数を超え、経理ではどの業務も1割に届きませんでした。全社の3割という数字は、どちらの姿も表していません。
分けて見ると、外の調査が指摘する「使いこなし格差」が、自社のどこで起きているかが見えてきます。使う部署と使わない部署の差が大きければ、使わない部署の業務に合った使い方を用意するのが先です。同じ部署の中で職種によって差があるなら、道具よりも業務の割り振りや時間の取り方に原因があるかもしれません。
分けるときに気をつけたいのは、回答者の人数が少ない区分です。回答が数人しか無い区分の割合は、一人の答えで大きく動きますし、誰が答えたか推し量れてしまいます。例の会社では、回答が5人未満の区分は数字を出さず、近い区分とまとめると決めました。この決まりは、調査の依頼文にも書いておくと、答える側の安心にもつながります。
2回目以降の調査では、前回との差を同じ区分で並べます。全社の割合が変わらなくても、ある部署で「試しただけ」が減って「週に数回」が増えていれば、その部署では使い方が定着し始めています。区分ごとの動きを見れば、前回の打ち手が効いたかどうかを確かめられるので、次の打ち手を選ぶ根拠にもなります。
読み方2 自由記述を束ね、利用記録と突き合わせる
自由記述は、数百件になると人が全部を読んで分けるのは大変です。ここはAIに分類の下書きを手伝わせてよい部分です。ただし、分類の軸は先に人が決めて渡し、AIには各記述がどの軸に当たるかと、そう判断した理由の一文を添えさせます。根拠の書かれていない分類は採らず、人が抜き取りで20件ほど読んで、分け方がずれていないかを確かめます。
AIに渡す前に、記述の中の個人名、部署名、取引先の名前、具体的な案件の名前は伏せます。無記名の調査でも、「私は経理で一人だけ〇〇を担当していて」のような書き方から個人が分かることがあるからです。分類の結果を部署の長に見せるときも、代表の文は言い回しを少し変えて、書いた人が分からない形にします。
もう一つの読み方は、会社が配った道具の利用記録との突き合わせです。部署ごとに、調査で「週に数回以上」と答えた割合と、記録上で同じ期間に使った人の割合を並べます。回答のほうが大きく上回る部署は、配っていない道具を使っているか、回答が答えやすい方向に寄っているかのどちらかです。突き合わせは必ず部署の単位で行い、個人の回答と個人の記録を結びつけないことが、無記名で聞いた約束を守る線です。利用記録からの利用率の数え方そのものは、別の記事で扱っています。
結果を研修・道具・規程に戻すシナリオ
例の会社の2回目の調査では、営業部門で「提案書の下書き」に週に数回以上使う人が多い一方、困っていることでは「入力してよい情報が分からない」が最も多く選ばれました。経理では「使ったことがない」が多く、理由は「自分の業務での使い方が思いつかない」が中心でした。推進担当は、この二つを次の手に分けて戻しました。
営業部門の困りごとに合わせ、規程の入力の決まりに「顧客名と金額を伏せた提案書の下書きは可」のような、営業の業務の言葉での例を足しました。規程の本文は変えず、例の欄を増やす形にします。
経理には一般的な研修ではなく、請求書の確認と社内の問い合わせへの回答の二つの業務に絞り、実際の画面で使い方を見せる30分の場を設けました。
配っていない道具の利用の理由で多かった「長い資料を読み込めない」を、情報システム部門が設定と契約の条件で確かめ、直せる点は直しました。
設問と選択肢を変えずに半年後に再調査し、営業の困りごとと経理の利用の頻度が動いたかを、同じ区分で比べます。
打ち手を選んだのは、推進担当と部署の長、経営です。調査の結果は候補を示しただけで、どの部署から手を付けるか、予算をどこに使うかは人が話し合って決めました。調査は打ち手を選ぶ材料で、打ち手そのものではありません。結果を報告するときも、「この結果から、次の三つを提案します」と候補の形で出し、決める場を別に設けると、経営からの「それで、何をするの」に答えられます。
AIに任せる範囲と、回答者を守る線
この調査でAIに任せてよいのは、自由記述の分類の下書きと、集計の表の下書きまでです。どちらも、人が決めた軸と定義に沿って大量の回答を並べ直す作業で、人がやると時間がかかる部分です。AIには必ず分類の理由を添えさせ、人が確認する範囲として、抜き取りの件数と、数字を出さない区分の決まりを先に決めておきます。
- 自由記述を個人名や部署名が残ったままAIに渡し、外部の道具に回答の中身を預けてしまう
- AIに「どの部署に問題があるか」を判断させ、その要約をそのまま経営に報告する
- 無記名で集めた回答を、書き方や時刻から個人に結びつけて、後から本人に確かめる
- 配っていない道具を使っていると答えた部署を名指しし、次の調査で誰も正直に答えなくなる
- 人数の少ない区分の割合をそのまま出し、誰の回答か推し量れる形で共有する
どれも、一度起きると次の調査の回答が集まらなくなる失敗です。AIに判断させないのは、どの部署のどこに問題があるかの判断と、打ち手の選択です。回答者が特定される形で扱わないことは、調査の依頼文に書いた約束として、推進担当が最後まで守ります。
回答の元の記録をいつまで持つかも決めておきます。例の会社では、集計と分類が終わった時点で自由記述の元の文は推進担当の手元だけに置き、次回の調査の集計が終わったら消す、と依頼文に書きました。残す期間と見られる人を先に書いておくと、答える側は安心して書け、推進担当も「前の回答を見せてほしい」という求めに線を引けます。
まとめ
社内のAI利用調査が役に立たないのは、使っているかの二択で終わる、道具の名前を聞いて業務を聞かない、正直に答えにくい聞き方になっている、答える人が偏っている、の四つが重なるからです。外の調査では、生成AIを活用している企業は3割台で、活用すべき業務範囲が課題に挙がり、使いこなしの格差も広がりつつあります。社内の調査の役目は、その差が自社のどの部署のどの業務で起きているかを示すことです。直すには、調査の後に決めたいことを先に書き、業務ごとの頻度、困っていること、配っていない道具とその理由を、無記名で責めずに聞きます。回収した結果は部署と職種で分けて読み、少人数の区分は数字を出さず、自由記述はAIに理由付きで分類の下書きをさせて人が抜き取りで確かめ、利用記録とは部署単位で突き合わせます。打ち手を選ぶのは人です。まずは今の調査票の設問を一つずつ見て、それぞれが研修・道具・規程のどれに戻るのかを書き出すところから始めてみてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
