集めた名簿を別の用途に使う方法|利用目的を変えるときの条件

集めた名簿を別の用途に使う方法|利用目的を変えるときの条件

展示会で集めた名刺が数百枚。資料請求で集まった連絡先が数千件。この名簿を、別の製品の案内にも使いたい。採用の告知にも使いたい。そう考えたときに立ち止まるべきなのが、集めたときに伝えた利用目的です目的の外の使い方は、範囲を超えると違法になり得ます。この記事では、どこまでなら変えられるのか、変えるときに何が必要かを整理します。


カメ先生カメ先生

展示会で集めた名刺を、別の製品の案内に使いたいと相談を受けました。


カメ子カメ子

同じ会社が集めた名簿ですよね。自由に使えるものだと思っていました。


カメ先生カメ先生

集めるときに伝えた目的の範囲で使う決まりです。範囲を超えるなら手続きが要ります。


カメ子カメ子

手続きですか。何をどこまでやればよいのか整理したいです。


この記事のポイント
  • 利用目的は集めるときに特定する決まりで、後から自由には広げられない
  • 変えられるのは、本人が通常予期できる範囲までで、変えたら通知か公表が要る
  • その範囲を超えるなら、本人から改めて同意を得る必要がある

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目次

名簿を別のことに使いたくなる場面

法人向けの活動を続けていると、手元に連絡先が溜まります。展示会で交換した名刺、資料請求のときに入力された情報、セミナーの申込者の一覧。

溜まった名簿は、使いたくなります。新しい製品が出た。別の事業部が案内を送りたいと言ってきた。採用の応募を増やしたい。同じ会社が持っている名簿なのだから、使えるはずだと考えてしまいます

しかし、個人情報を集めるときには、何に使うのかを決めて伝える決まりになっています。伝えた目的の外で使うことは、原則としてできません

この決まりを知らないまま名簿を回すと、配信の相手から「なぜここに送ってくるのか」と問われます。説明できなければ、信用を失うだけでなく、法令の面でも問題になり得ます。

一方で、何もかも同意を取り直すのは現実的ではありません。数千件に個別の連絡をするのは、手間の面でも到達の面でも難しい。

だから、どこまでが変更で済み、どこからが同意の取り直しになるのか。その線引きを知っておくことが実務の要点になります。

利用目的は集めるときに決まっている

個人情報を取り扱うときは、何のために使うのかをできる限り具体的に決めることが求められます。この「できる限り」が曲者です。

「事業活動に用いるため」「サービスの向上のため」といった書き方では、具体的に特定したことになりません。本人が、自分の情報がどう扱われるかを想像できる程度の具体性が要ります。

反対に、細かく書きすぎると身動きが取れなくなります。「A製品の資料送付のため」とだけ書くと、B製品の案内はその目的の外になります

実務では、この2つの間で書き方を決めることになります。具体的でありながら、想定される使い方を含んでいる書き方。

集めるときの書き方が、後の自由度を決めます。名簿を集めてから悩むより、集める前に書き方を整えるほうが、はるかに手間が少ない。

既に集めてしまった名簿については、そのとき何と書いていたかを確かめるところから始めます。申込の頁の記録、名刺交換のときに渡した案内、取り扱いの方針の頁。

記録が残っていない場合は、当時の運用から推測するしかありません。その推測が甘いと、後から根拠を示せなくなります。推測に頼る名簿は、狭い目的で扱っておくのが安全です

どこまで変えられるのか

利用目的は、後から変えることができます。ただし、変えられる範囲には限りがあります。

法律では、変更前の目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えてはならないとされています。抽象的な表現なので、解釈の手がかりが要ります。

監督する側の説明では、この範囲は「変更後の目的が変更前の目的からみて、社会通念上、本人が通常予期し得る限度と客観的に認められる範囲」とされています。

要するに、「情報を渡した本人が、そういう使い方もされるだろうと予想できたかどうか」が判断の軸になります。

判断は、当初の目的とどの程度の関連性があるかを総合的に勘案して行われます。1つの物差しで機械的に決まるものではありません。

だからこそ、微妙な事案では専門家に確かめる必要があります。以下に挙げる例は、考え方を示すためのもので、個別の判断を保証するものではありません。

変えやすい例と変えにくい例

考え方を具体化するために、法人向けの現場でよくある場面を並べます。あくまで傾向であり、実際の判断は事案によります。

元の目的変えたい先関連性の考え方
自社製品の資料送付同じ分野の別製品の案内近い。本人が予期しやすい
セミナーの運営同種のセミナーの案内近い。同じ活動の延長として読める
問い合わせへの回答自社の新製品の案内やや遠い。回答のために渡した情報である
資料請求への対応採用の告知遠い。本人が予期しにくい
取引の連絡他社との共同の案内別の規律が関わる。提供の話になる

表のいちばん下は、利用目的の変更とは別の話になります。他社に渡すことは、目的の変更ではなく提供の問題です。こちらは原則として本人の同意が必要になります。

上から3つ目のような中間の事案が、実務ではいちばん多い。問い合わせに答えるために教えてもらった連絡先を、その後の営業に使ってよいかは、当初の書き方に大きく左右されます

「お問い合わせへの回答および当社製品・サービスのご案内のため」と書いてあれば、そもそも変更の話にはなりません。最初から目的に含まれています。

変えたら通知か公表が要る

範囲内の変更であっても、黙って変えてよいわけではありません。変更した利用目的は、本人に通知するか、公表する必要があります。

通知は、本人に直接知らせることです。電子メール、郵送、画面での表示。相手が実際に知り得る方法である必要があります

公表は、広く一般に知らせることです。自社サイトの分かりやすい場所に掲載する方法が一般的に取られています。深い階層に置いて誰も見つけられない状態では、公表とは言いにくい

実務では、取り扱いの方針の頁を更新し、更新した旨を目立つ場所に出す形が多い。更新の日付を明記しておくと、いつからの扱いかが分かります。

配信を始める前に、この手続きを済ませます。送ってから公表するのでは、順番が逆です。

あわせて、配信の1通目に「なぜあなたに送っているのか」を書いておくと、問い合わせが減ります。法律の要件とは別に、実務として有効です。

範囲を超えるなら同意を取り直す

関連性の範囲を超える使い方をしたい場合は、本人から改めて同意を得る必要があります。この同意は、本人が内容を理解したうえで示すものである必要があります。

同意を取る方法に決まった形はありませんが、何に同意したのかを後から示せる形にしておきます。口頭だけの同意は、記録が残りません。

法人向けの実務では、配信の中で新しい目的を説明し、同意する場合だけ手続きしてもらう形が取られます。何もしなければ同意したものとみなす、という設計は避けたほうが安全です

同意を取り直すと、対象の件数は減ります。数千件のうち、応じるのは一部でしょう。しかし、残った相手は明確に関心を示した相手です。

件数が減ることを損だと考えると、無理な運用に傾きます。反応しない相手に送り続けても、配信の評判が下がるだけです。

なお、法令に基づく場合など、同意が不要とされる例外もあります。ただし販促の場面で当てはまることはまずありません。

同意を求める文面は、何に使うのかを具体的に書きます。「今後のご案内のため」では、何に同意したのか分かりません。後から示せる同意にするには、対象を明確にしておく必要があります

同意を取る場面を、既存の接点に重ねるのも一案です。催しの申込のとき、資料を送るとき、更新の手続きのとき。改めて連絡するより、応じてもらいやすくなります。

同意を取り直す進め方

実際に同意を取り直すときの流れを整理します。順番を守ると、対象の取りこぼしが減ります。

STEP1
当初の利用目的を確かめる

いつ、どの経路で集めた名簿かを分けます。経路ごとに当初の目的が違うため、まとめて扱うと判断を誤ります。

STEP2
経路ごとに範囲内か範囲外かを判断する

新しい使い方が当初の目的から予期できる範囲かを検討します。微妙なものは範囲外として扱っておくほうが安全です。判断に迷う場合は専門家に確かめます。

STEP3
範囲内のものは通知または公表を済ませる

取り扱いの方針を更新し、変更を知らせます。更新の日付を明記します。この作業は配信の前に終わらせます。

STEP4
範囲外のものに案内を出す

当初の目的の範囲で送れる最後の1通として、新しい使い方を説明し、希望する人だけ手続きしてもらいます。説明は具体的に書きます。

STEP5
結果を記録に残す

誰がいつ同意したかを記録します。後から問われたときに示せる形にします。応じなかった相手は、新しい目的では使わない一覧に入れます。

4つ目の「最後の1通」という考え方が要点です。当初の目的の範囲でなら連絡できるので、その枠内で案内を出します

展示会で交換した名刺はどうか

展示会の名刺交換は、書面での説明が不十分になりやすい場面です。その場で利用目的を伝える機会が少ない。

実務では、ブースに掲示する、配る資料に書く、読み取りの端末の画面に表示する、といった方法が取られます。何も示さずに集めると、後で使える範囲が狭くなります

名刺には、会社名、部署、氏名、連絡先が書かれています。これらは個人に関する情報として扱う前提で考えます。法人の情報だから自由に使える、という理解は危うい

交換した相手にお礼の連絡をすることは、多くの場合、その場のやり取りから予期できる範囲に入るでしょう。問題は、その後の継続的な配信です。

継続して案内を送るなら、最初の連絡の中でその旨を伝え、不要なら止められる手段を示しておきます。これは配信に関する別の法令の要件とも重なります。

展示会ごとに、何をどう示したかを記録に残しておくと、後で範囲を判断するときに助かります。

既存の顧客の情報を使うとき

取引のある相手の連絡先は、取引を進めるために教えてもらったものです。そこから販促に使えるかは、当初の説明によります。

多くの会社は、取り扱いの方針に「当社の商品・サービスのご案内のため」といった項目を含めています。含まれていれば、変更の話にはなりません

含まれていない場合は、変更の手続きが要ります。取引の連絡と販促の案内は、本人から見て別のものだと受け取られる可能性があります。

実務でよく起きるのが、契約書に書かれた担当者の連絡先を配信の名簿に加えてしまう事故です。契約のために書かれた連絡先は、契約の履行のためのものです

担当者が替わったときの扱いも決めておきます。退職した担当者の連絡先を配信に残し続けると、届かないだけでなく、配信の評判にも影響します。

既存の顧客への配信は、新規への配信より反応がよく、解除も少ない。だからこそ、根拠を整えておく価値があります。

取引が終わった後の扱いも決めておきます。契約が切れた相手の連絡先を、いつまで配信に使うのか。保存の期間を決めていないと、いつまでも残り続けます。期間を決め、過ぎたものは配信の対象から外す。この運用があると、名簿は自然に健全になります。

他社に渡すのは別の規律

利用目的の変更と混同されやすいのが、第三者への提供です。これはまったく別の規律で扱われます。

自社の中で使う目的を変えることと、外部の会社に渡すことは、求められる手続きが違います。提供は原則として本人の同意が必要です。

共催の催しで名簿を分け合う、代理店に見込み客の一覧を渡す、分析のために外部に預ける。それぞれで、必要な手続きが違います

外部に預けて自社のために処理してもらう場合は、提供ではなく委託として整理されることがあります。この場合は同意が不要になる一方、委託先を監督する義務が生じます。

グループ会社との共有も、自動的に自由になるわけではありません。別の法人であれば、第三者にあたるのが原則です。

この論点は本記事の主題から外れますが、名簿の活用を考えるときには必ず並んで出てきます。個別の判断は事案によるため、顧問の弁護士に確かめてください。

経路ごとに名簿を分けて持つ

ここまでの判断は、すべて「いつ、どう集めたか」を起点にしています。この情報が失われている名簿は、そもそも判断ができません。

実務では、名簿を1つの表にまとめてしまいがちです。重複を消し、会社名で並べ替え、1件1行の一覧にする。この過程で、取得の経路と日付が落ちます

落ちてしまうと、その名簿全体を「いちばん狭い目的」で扱うしかなくなります。1件でも狭い経路が混ざっていれば、全体がその制約を受けます

防ぐには、取得の経路と日付を項目として持たせます。同じ人が複数の経路で登録している場合は、経路ごとの記録を残したまま名寄せします。

経路の分類は、細かすぎると運用できません。催しでの取得、資料請求、問い合わせ、取引の連絡。この程度の粒度で始めれば足ります。

分類を変えるときは、過去の分をどう扱うかを決めます。遡って付け直せない分は、「経路不明」として狭い目的で扱う。これも1つの整理です。

停止や削除を求められたとき

配信を始めると、止めてほしい、削除してほしい、という連絡が届きます。この対応の仕方も決めておきます。

配信の停止は、求められたら速やかに止めます。法令の要件である前に、続けても成果につながりません

止めるときは、配信の名簿から消すのではなく、送らない相手として記録に残します。消してしまうと、別の経路で再び登録されたときに送ってしまいます

削除の求めについては、応じるべき場合と、そうでない場合があります。取引の記録として保存が必要なものまで消せるわけではありません。

問い合わせを受ける窓口も決めておきます。配信の中に窓口を書き、届いた連絡を誰が処理するか。窓口が決まっていないと、対応が遅れます。

応じた記録も残します。いつ、誰から、何を求められ、どう対応したか。個別の判断は事案によるため、難しい求めは顧問の弁護士に確かめてください。

最初の書き方で後が決まる

ここまで見てきたとおり、後からの自由度は、集めるときの書き方で決まります。これから集める分については、書き方を整えておきます。

  • 何のために使うのかを、本人が想像できる程度に具体的に書く
  • 想定される使い方を、集める時点で列挙しておく
  • 経路ごとに書き分ける(申込の頁、名刺交換、問い合わせ)
  • 止めたいときの手段を、同じ場所に書く
  • 取り扱いの方針の頁に導き、詳しい内容はそこで示す
  • 書いた内容と実際の運用が一致しているかを定期的に確かめる

2つ目が要点です。後から使いそうな用途を、集める時点で書いておけば変更の手続きは要りません

ただし、何にでも使えるような広い書き方は、具体的に特定したことにならない可能性があります。広く書けばよいという話ではありません

最後の項目も大切です。書いてある内容と実際の運用がずれていると、書いてあること自体が意味を失います。年に一度は突き合わせます。

やりがちな失敗

現場で見かける失敗を挙げます。どれも、悪意なく起きます。

  • 経路の違う名簿をまとめて1つの一覧にし、当初の目的が分からなくなる
  • 別の事業部から名簿を借りて、そのまま配信する
  • 採用の告知を、資料請求の名簿に送る
  • 取り扱いの方針を更新したが、更新したことを誰にも知らせない
  • 同意を取ったつもりだが、誰がいつ同意したか記録が残っていない
  • 退職した担当者の連絡先を、名簿に残したまま配信を続ける

1つ目が、もっとも根深い失敗です。経路の情報を失うと、範囲内かどうかを判断できなくなります。名簿には必ず取得の経路と日付を持たせます。

2つ目も多く起きます。同じ会社の中でも、集めた目的が違えば使える範囲が違います。借りる側が、元の目的を確かめずに使うと事故になります。

3つ目の採用の告知も、現場では起こりがちです。応募を増やしたいという事情は分かりますが、資料を請求した人が、採用の案内まで予期しているとは言いにくい。採用の発信は、採用の目的で集めた名簿に対して行います。手元にないなら、別の手段で届けます。

記録の残し方

判断の根拠を残しておくと、後から問われたときに説明できます。残すのは3種類です。

1つ目は、取得のときの記録。いつ、どの経路で、何と説明して集めたか。申込の頁は変わっていくので、そのときの画面を残しておきます

2つ目は、変更のときの記録。何をどう変えたか、いつ通知または公表したか。取り扱いの方針の頁の履歴を残す形が扱いやすい。

3つ目は、同意の記録。誰がいつ、何に対して同意したか。配信の仕組みの中に項目として持たせると、後で照合できます

これらは、何かが起きたときの備えです。起きなければ使いません。しかし起きたときには、あるかないかで結果が変わります。

  • 名簿には取得の経路と日付を必ず持たせる
  • 変更の通知または公表は、配信を始める前に済ませる
  • 個別の判断は事案によるため、顧問の弁護士に確かめる

よくある質問

法人の情報なら自由に使えますか

会社そのものの情報と、そこで働く個人の情報は分けて考えます。担当者の氏名や連絡先は、個人に関する情報として扱う前提で運用するのが安全です。

名刺は交換した以上、自由に使えるのでは

交換したことは、あらゆる使い方への同意を意味しません。その場のやり取りから予期できる範囲が出発点になります。

取り扱いの方針を書き換えれば済みますか

範囲内の変更なら、更新して知らせることで足ります。範囲を超える使い方は、方針を書き換えるだけでは足りません。

同意を取り直したら件数が減ります

減ります。ただし残るのは関心のある相手です。反応しない相手に送り続けるより、結果は良くなることが多い。

判断に迷ったらどうしますか

範囲外として扱い、同意を取り直す方向で考えます。そのうえで、個別の判断は事案によるため顧問の弁護士に確かめてください。

グループ会社の名簿は共有できますか

別の法人であれば、第三者にあたるのが原則です。共同で利用する形を取る方法もありますが、あらかじめ定めて知らせておく必要があります。後から始めることはできません。

配信を止めた相手は名簿から消しますか

消さずに、送らない相手として記録に残します。消してしまうと、別の経路で再び登録されたときに送ってしまいます。

まとめ

集めた名簿を別の用途に使えるかどうかは、集めたときに伝えた利用目的で決まります。目的は後から変えられますが、変えられるのは「本人が通常予期し得る限度と客観的に認められる範囲」までです。範囲内なら、変更した目的を通知するか公表すれば足ります。範囲を超えるなら、本人から改めて同意を得る必要があります。実務の要点は3つです。第一に、名簿に取得の経路と日付を持たせること。経路が分からなくなると、判断そのものができません。第二に、経路ごとに範囲内か範囲外かを分けて扱うこと。まとめて処理すると、必ずどこかで無理が出ます。第三に、これから集める分については想定される使い方を集める時点で書いておくこと。後から変更の手続きをするより、はるかに手間が少なくて済みます。他社に渡す場合は利用目的の話ではなく提供の規律になるため、別の検討が要ります。個別の判断は事案によるため、顧問の弁護士に確かめてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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