名簿を他社と使うのは提供か共同か|同意の要否が変わる

共催のイベントで集めた申込者の名簿を、相手の会社にも渡したい。代理店に見込み客の一覧を共有したい。グループ会社と顧客の情報を共通で見たい。いずれも日常的な要望ですが、当たる枠組みが違えば同意の要否も変わります。取り違えたまま渡すと、同意のない第三者への提供になります。この記事では、3つの形の見分け方と、共同利用に必要な記載を実務の順に整理します。
カメ先生共催のイベントで集めた名簿を相手の会社に渡すとき、本人の同意は必要だと思いますか。
カメ子必要な気がしますが、実際には渡している例をよく見るので、要らない場合もあるのかと思っていました。
カメ先生先に条件を満たしていれば要りません。ただし、その条件は後から満たせないものです。
カメ子後からでは間に合わないなら、企画の段階で決めておく必要がありますね。
- 名簿を他社と使う形は、委託、共同利用、第三者提供の3つに分かれる
- 共同利用は、5つの事項を先に本人へ伝えておけば同意が要らない
- 第三者提供は原則として本人の同意が必要で、確認と記録の義務もある
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名簿を他社と使う場面
法人向けの事業では、名簿を他社と使う場面が頻繁に生じます。共催のイベント、代理店を通じた販売、グループ会社との顧客の共有、配信の代行、外部の会社に問い合わせの一次対応を任せる形。いずれも名簿が自社の外に出ます。
これらを一律に「他社に渡すから同意が必要」と考えると、実務が回らなくなります。配信を外部の道具で行うだけでも名簿は外に出ているため、そのたびに同意を取り直す運用は成り立ちません。
逆に、一律に「業務のためだから問題ない」と考えると、同意のない第三者への提供を繰り返すことになります。共催のイベントで名簿を相手に渡す形は、この誤りが起きやすい典型です。
必要なのは、場面ごとにどの枠組みに当たるかを見分けることです。枠組みが分かれば、必要な手当ても決まります。判断の順序を決めておけば、案件ごとに悩む必要はなくなります。
3つの形がある
名簿を外に出す形は、大きく3つに分かれます。第1に、自社の目的のために処理を任せる形。これが委託です。第2に、複数の会社が共通の目的で使う形。これが共同利用です。第3に、相手の目的のために渡す形。これが第三者への提供です。
見分ける鍵は「誰の目的か」です。自社の目的のためなら委託、共通の目的なら共同利用、相手の目的なら第三者への提供。この1点で、多くの場面は分けられます。
| 委託 | 共同利用 | 第三者への提供 | |
|---|---|---|---|
| 誰の目的か | 自社の目的 | 共通の目的 | 相手の目的 |
| 本人の同意 | 不要 | 不要(先に伝えていれば) | 原則として必要 |
| 先にすべきこと | 契約と監督の体制 | 5つの事項を伝える | 同意を得る |
| 記録の義務 | 特になし | 特になし | 確認と記録が必要 |
表の2行目を見ると、同意が要らない形が2つあることが分かります。ただし、どちらも「先に何かをしておく」ことが条件になっています。後から手当てできない構造なので、企画の段階で決める必要があります。
3行目の内容が、実務上の作業です。委託なら契約と監督の体制、共同利用なら5つの事項の周知、第三者への提供なら同意の取得。この作業を済ませていないなら、名簿を渡してはいけません。
委託とは何か
委託は、自社の利用の目的を達成するために必要な範囲で取り扱いを任せる形です。委託した相手は自社の手足として動く位置づけになり、独自の目的で名簿を使うことはできません。
典型的な例は、配信の代行、名簿の入力の代行、問い合わせの一次対応、分析の処理です。いずれも自社の目的のために外部の手を借りている形です。
委託した場合、自社には委託先を監督する義務が生じます。契約に必要な事項を定め、実際に状況を確かめる行為まで求められます。契約書に条項を入れただけでは、監督したことになりません。
重要な制約は、委託先が自社の目的の範囲を超えて使えないことです。配信の代行を任せた相手がその名簿を自社の営業に使えば、委託の範囲を超えた行為になります。契約で明確に禁じておく必要があります。
再委託の扱いも決めます。委託した相手がさらに別の会社に処理を任せる形です。許すかどうかを契約で定め、許す場合は再委託先についても同等の水準を求める条項を入れます。知らないうちに何段も先まで名簿が渡っている状態は避けたい形です。どこまで渡っているかを把握できるよう、再委託した場合は報告を求める条項も入れておきます。配信の道具や分析の仕組みでは、提供者がさらに別の基盤を使っていることが珍しくありません。
共同利用とは何か
共同利用は、特定の相手との間で共同して使う名簿をその相手に渡す形です。先に5つの事項を本人に伝えておけば、その相手は第三者に当たらないとされ、同意が不要になります。
委託との違いは、相手も自らの目的で使えることです。共同で定めた目的の範囲内であれば、相手が自社の判断で使えます。この点で、委託より柔軟な形です。
第三者への提供との違いは、同意が不要になることです。ただしそのためには、名簿を渡す前に5つの事項を本人が知りうる状態にしておく必要があります。後から公表しても、過去に渡した分は救われません。
グループ会社との共有や、継続的に協業する相手との共有にはこの形が適しています。一度整えておけば、以降は同意を取らずに共有できます。整備の手間に見合う場面は少なくありません。
第三者への提供とは何か
委託にも共同利用にも当たらない形で名簿を他社に渡すのが、第三者への提供です。この場合、あらかじめ本人の同意を得る必要があります。同意なく渡せば、法に反する提供になります。
同意の取り方には注意が要ります。「第三者に提供することがあります」という抽象的な記載では、何のために誰に渡すのかが分かりません。実務では、渡す相手と目的を示したうえで同意の意思を確かめる形が求められます。
加えて、第三者への提供には確認と記録の義務があります。渡す側は、いつ誰に何を渡したかを記録する。受け取る側は、相手がどう取得した名簿かを確認して記録する。この記録は一定期間の保存が求められます。
記録の義務があることを知らずに名簿を渡し合っている例は少なくありません。共催のイベントで名簿を交換する形は、双方に記録の義務が生じる第三者への提供に当たりうる形です。
見分け方の基準
実務での判断は3つの問いで進めます。第1に、相手は自社の指示に従って処理するだけか。そうなら委託です。第2に、相手も自らの判断で使うが、共通の目的の範囲内か。そうなら共同利用の候補です。
第3に、相手が自らの目的で自由に使うのか。そうなら第三者への提供です。共催のイベントで相手が自社の営業のために使うのであれば、共通の目的とは言いにくく、第三者への提供に近づきます。
判断が微妙な場面では、厳しい側に寄せるのが安全です。共同利用として扱うか第三者への提供として扱うかで迷うなら、同意を取っておけば、どちらであっても問題は生じません。
なお、判断の結果は記録に残します。「この案件は共同利用として扱う。理由はこう」という記録があれば、後から問われたときに説明できます。担当が変わったときにも判断が引き継がれます。
共同利用に必要な5つの記載
共同利用として扱うには、次の5つを先に本人へ伝えておく必要があります。第1に、共同して利用する旨。第2に、共同して利用される項目。第3に、共同して利用する者の範囲。第4に、利用する者の利用の目的。第5に、管理について責任を有する者です。
第2の項目は、具体的に書きます。「氏名、会社名、部署、役職、メールの宛先、電話の番号」といった形です。「お客様の情報」といった書き方では何が共有されるのか分かりません。
第3の範囲は、本人が判断できる程度に明確である必要があります。「当社のグループ会社」と書く場合は、どの会社が含まれるかを本人が確かめられる状態にしておく必要があります。一覧を掲げるか、確かめられる場所を示します。
第5の責任を有する者は、氏名または名称と住所、法人の場合は代表者の氏名まで示します。共同利用する会社のうち、どこが管理の責任を持つのかを1つ決めるという意味です。全社が責任者という書き方はできません。
「容易に知り得る状態」とは
5つの事項は、本人に通知するか、本人が容易に知りうる状態に置く必要があります。後者は、本人が特別な努力をせずに到達できる状態を指すと理解されています。
実務では、自社のサイトの情報の取り扱いに関する頁に記載する形が一般的です。ただし、何段階もたどらないと見つからない場所や、検索しなければ出てこない場所では容易に知りうる状態とは言いにくくなります。
申込の様式のすぐ近くに案内を置くのも有効です。「お預かりした情報は、共催の相手先と共同で利用します。詳しくはこちら」という形でその場で気づける導線を作ります。
なお、通知する形を選ぶ場合は、本人が実際に受け取る方法で伝える必要があります。申込の完了の画面に表示する、確認のメールに記載する。送っただけで終わらせず、伝わる形にしてください。
共同利用の落とし穴
最大の落とし穴は、範囲を後から広げられないことです。「当社とA社で共同利用します」と伝えて集めた名簿を、後からB社にも共有することはできません。範囲を変えるには、変更後の内容を改めて伝える必要があります。
しかも、共同して利用する者の範囲や管理の責任者を変更する場合には、あらかじめ本人に通知するか容易に知りうる状態に置く必要があるとされています。黙って追加するのは認められません。
目的についても同様です。「イベントの運営のため」として共同利用した名簿を、後から営業の連絡に使うのは当初に伝えた目的の範囲を超える行為です。目的は広めに、しかし具体的に書いておく設計が要ります。
もうひとつの落とし穴は、既存の名簿への遡及です。共同利用の記載を新たに整えても、それ以前に集めた名簿に自動的に及ぶわけではありません。既存の名簿については、別に手当てを検討する必要があります。改めて通知するか、新しく取得した分から適用するか。どちらにするかを決めて、名簿の中で区別できる形にしておいてください。
委託の落とし穴
委託でよく起きるのが、目的の範囲を超えた利用です。配信の道具を提供する会社が、預かった名簿を自社のサービスの改善に使う。契約の条項で明確に禁じていなければ、起きうる事態です。
道具を選ぶ段階で、利用の規約を確かめます。預けたデータを提供者がどう扱うのかが書かれています。自社のサービスの改善に使う旨が書かれている場合、委託の範囲を超えている可能性があります。
海外の提供者を使う場合は、移転の問題も重なります。国外に移転する場合には追加の対応が求められることがあります。道具を導入する前に、データの保存の場所を確かめてください。
- 共催のイベントの名簿を、事前に何も伝えずに相手の会社へ渡す
- 共同利用の記載を整える前に集めた名簿を、整えた後に共有する
- 共同利用する者の範囲を、本人に伝えずに後から追加する
- 委託先が自社の営業に名簿を使うことを、契約で禁じていない
- 第三者への提供に当たる形で名簿を渡しているのに、記録を残していない
この5つは、いずれも実務で頻繁に起きている形です。共通するのは、渡す前の手当てが済んでいないこと。渡してから直せるものは、ひとつもありません。
共催のイベントでの実務
共催のイベントは、最も判断が必要な場面です。申込を自社の様式で受け付け、相手にも名簿を渡す。この形は、事前の手当てなしには成り立ちません。
選べる道は2つあります。第1に、共同利用として扱い、申込の時点で5つの事項を伝える。第2に、第三者への提供として扱い、申込の様式で同意の欄を設ける。
実務では第2の道が扱いやすい場面が多くなります。共催の相手は毎回変わるため、共同利用の範囲を都度整えるのが煩雑です。申込の様式に「共催の相手先への情報の提供に同意する」欄を置く形なら、案件ごとに対応できます。
相手に渡すのか、渡すなら共同利用か第三者への提供かを、募集を始める前に決めます。
共同利用なら5つの事項、第三者への提供なら同意の欄を、申込の様式に組み込みます。
渡す項目、使ってよい目的、使える期間、終了後の扱いを書面で決めます。
いつ誰に何を渡したかを記録します。第三者への提供に当たる場合は義務でもあります。
3つ目の書面の取り決めは、法の要請という以上に実務上の必要があります。渡した名簿をいつまで使えるのか、終了後に消すのかを決めておかないと、後から確かめられません。
代理店やグループ会社との共有
継続的に共有する相手がいる場合は、共同利用の形を整える価値があります。一度5つの事項を伝えておけば、以降は案件ごとに同意を取る必要がなくなります。運用の負担が大きく下がります。
グループ会社との共有では、範囲の書き方が課題になります。会社が増えたり減ったりするため、個別に列挙すると変更のたびに周知が必要になります。一覧を掲げる場所を示す形が実務的です。
代理店との共有では、目的の書き方が課題になります。代理店が自らの営業に使うのであれば、共通の目的と言えるかを慎重に検討する必要があります。実質的に代理店の目的なら、第三者への提供に近づきます。
判断に迷う場合は、同意を取る形にしておくのが安全です。代理店経由の販売を前提にしている事業なら、申込の時点で「販売店への情報の提供」への同意を得ておく設計にすれば、後の判断で悩みません。
委託先の監督で求められること
委託した場合の監督は、契約と実際の確認の2つで構成されます。契約では、取り扱いの範囲、再委託の可否、安全の管理の内容、終了後の返却または消去を定めます。
実際の確認は、定期的に状況を報告してもらう形が一般的です。年に一度、安全の管理の状況を確かめる。報告を受けた記録を残しておけば、監督を行ったことを示せます。
再委託については、許すかどうかを決めておきます。許す場合は、再委託先についても同等の水準を求める条項を入れます。知らないうちに三次の委託先まで名簿が渡っている状態は避けたい形です。
- 契約書に条項を入れるだけでは監督したことにならない。実際に確認する行為が要る
- 再委託の可否を決め、許す場合は同等の水準を求める条項を入れる
- 終了時の返却または消去の方法と、その記録の受け取り方を決めておく
委託先の一覧を持っておくことも大切です。どの会社にどういう名簿を預けているのか。一覧がなければ、監督すべき相手を把握できません。年に一度、一覧を見直す運用にしてください。
一覧には、会社名、預けている項目、件数の目安、契約の期間、そして担当の部署を書きます。担当の部署を書いておくと、確認を依頼する相手が分かります。情報システムが管理している道具と、マーケティングが独自に契約した道具が混ざっているのが実情です。部署をまたいで一覧を作ることが、最初の関門になります。
契約が終わった相手も一定期間は一覧に残します。終了後に消去されたことを確かめるまでは、まだ関係が続いている相手として扱う。消去の確認が済んだ時点で一覧から外し、その記録を残しておきます。終わったつもりで残っている名簿が、後から問題になることがあります。
2026年の改正で何が変わるか
2026年7月に公布された改正では、この法律として初めて課徴金の仕組みが導入されました。対象となる違反の類型には、本人の数が1,000人を超える違法な第三者への提供が含まれると整理されています。
つまり、共同利用のつもりで手続を踏んでいなかった、同意を得ずに名簿を渡していた、という状態が金銭的な措置の対象になりうるということです。名簿を扱う事業では1,000人はすぐに超える規模です。
施行は公布から2年以内の政令が定める日からとされています。この期間に、現在の共有の形をすべて点検しておく価値があります。どの案件がどの枠組みに当たるのかを一覧にする作業から始めます。
点検の観点は3つです。共同利用として扱っている案件について、5つの事項を実際に伝えているか。委託として扱っている案件が本当に自社の目的の範囲か。第三者への提供に当たる案件で、同意と記録が揃っているか。
様式と説明の文面を整える
判断の枠組みが決まったら、実際の作業は様式と文面の整備に落ちます。申込の様式、問い合わせの様式、資料の請求の様式。名簿が入ってくる入口のすべてを一覧にしてから手を入れます。
整えるのは3つです。第1に、利用の目的の記載。本人が想定できる程度に具体的に書きます。第2に、共同利用として扱う場合の5つの事項への導線。第3に、第三者への提供として扱う場合の同意の欄です。
同意の欄は、既定で選ばれた状態にしないでください。本人が自ら選ぶ形にする。既定で入っている状態では、同意の意思を確かめたと言いにくくなります。また、同意しなくても申込できる形にするかどうかも決めておきます。
文面は、法務の確認を通します。そのうえで、読んで分かる日本語になっているかを現場の目でも確かめます。法的に正確でも読めない文面は、伝えたことになりません。両方の観点を通してから公開してください。
整えた文面は版を管理します。いつからいつまでこの文面だったのか。後から「どの説明で同意を得たのか」を問われたときに、その時点の文面を示せる状態にしておく必要があります。上書き保存はしないでください。
よくある質問
名刺交換で得た情報も同じ扱いですか
個人に関する情報である以上、同じ枠組みで考えます。名刺で得た情報を他社に渡す場合も、委託、共同利用、第三者への提供のいずれかに当たります。「名刺だから自由に使える」という理解は誤りです。受け取った時点で伝えた利用の目的の範囲内で使う、という原則も同じように働きます。
共同利用の記載はどこに置けばよいですか
本人が容易に到達できる場所に置きます。自社のサイトの情報の取り扱いに関する頁に記載し、申込の様式のすぐ近くからその頁へ到達できる導線を置く形が実務的です。何段階もたどる必要がある場所や、検索しなければ見つからない場所は避けてください。
相手から渡された名簿を受け取るときは何が必要ですか
第三者への提供として受け取る場合、受け取る側にも確認と記録の義務があります。相手がどのように取得した名簿かを確認し、確認した内容を記録します。「相手が同意を得ているはずだ」という前提で受け取るのではなく、確認した事実を残してください。
まとめ
名簿を他社と使う形は、委託、共同利用、第三者への提供の3つに分かれ、見分ける鍵は「誰の目的か」です。自社の目的なら委託、共通の目的なら共同利用、相手の目的なら第三者への提供。共同利用は5つの事項を先に伝えておけば同意が不要になりますが、範囲を後から広げることはできません。第三者への提供では同意に加えて確認と記録の義務が生じます。そして2026年7月に公布された改正では、本人の数が1,000人を超える違法な第三者への提供が課徴金の対象となる類型に含まれました。施行までの期間に、現在の共有の形をすべて一覧にして点検してください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
