デプスインタビューは何人に聞く?|AIで深さを保つ

「デプスインタビューをやることになったのですが、何人に聞けば足りるのかが決まりません」「5人でいいと言う人と、20人は必要だと言う人がいて、どちらの根拠も分からないままです」——調査を任された方から続けて出てくる言葉です。この人数には、実は目安として引かれている数字があります。定性調査の分野では、60件の面談を分析したところ12件目までに符号全体の92%が出そろっていたという2006年の報告があり、顧客の求めているものは20件から30件で90%から95%が明らかになるという1993年の報告もあります。ただ、人数は足りるかどうかを先に決める数字ではありません。本当は、新しい話が出なくなるまで聞き、その止まる位置が目的と対象の幅で動くという話です。この記事では、聞く前の設計、聞いている最中の手当て、記録の残し方を、場面ごとに整理します。
カメ先生デプスインタビューはね、人数を増やせば深さが増すと思われがちなんだ。でも実際に起きるのは、5人目あたりから同じ話が繰り返し出てきて、10人目には新しい発見がほとんど出なくなるということなんだよ。
カメ子増やしても新しい話が出てこなくなる、ということですか。
カメ先生そうなるね。だから人数の基準は、何人聞いたかではなく、新しい話が出なくなったかになる。ただし対象の幅を広く取れば止まる位置は後ろにずれるから、人数は目的と対象の幅で決まるんだ。
カメ子先に人数を決めるのではなく、どこで止まるかを見ながら決める、という順番なんですね。
- 人数は飽和で決める。目安は探索なら10人から15人、対象を絞った検証なら8人から12人
- 深さを決めるのは質問の並べ方と時間の割り振り。大きく聞いてから小さく掘る
- AIに任せるのは書き起こしと抜け漏れの点検まで。何が本音かの判定はさせず、要約と原文の対応を残す
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何人に聞けば足りるかは、人数の表からは決まらない
社内の議論は、たいてい数字の言い合いになります。5人で十分だという人と、20人は要るという人が、どちらも経験にもとづいて主張します。そして多くの場合、両方が正しい。使いやすさの検証で同じ操作の流れを見るなら5人で問題点の大半が出ますし、まだ何が起きているか分からない領域を探るなら10人台の後半まで新しい話が出続けます。違っているのは人数ではなく、聞こうとしている対象の幅です。
この違いを扱うための言葉が飽和です。飽和とは、新しく人を足しても新しい話が出てこなくなった状態を指します。実務では「3回連続ルール」と呼ばれる止め方が使われます。3人続けて新しい情報が出なければ、そこで打ち切るという運用です。数を決めてから聞くのではなく、聞きながら止まる位置を探す考え方です。
ただし、飽和だけを根拠に計画を立てると、社内の稟議も外部への発注も通りません。止まる位置が先に分からないので、費用も期間も書けないからです。だから実務では上限の人数と、止める条件の両方を書く形にします。たとえば上限は12人、3人続けて新しい話が出なければその時点で終了、と決めておく。こうすれば費用の上限が確定したうえで、無駄な回数を踏まずに済みます。
飽和の目安として使われている数字の出どころ
よく引かれる数字には出どころがあります。ひとつは2006年に公表された研究で、西アフリカで行われた60件の面談を分析したところ、12件目の時点で符号全体の92%が出現していたという結果です。もうひとつは1993年に公表された研究で、20件から30件の面談で顧客の求めているものの90%から95%が明らかになるとしています。
この2つは矛盾していません。見ている深さが違うだけです。段階を分けると、話の表面的なまとまりが見えてくる段階がおよそ9件、その背景まで理解できる段階がおよそ24件、そこから説明の枠組みを組み立てる段階が20件から30件以上、という目安が使われています。同じ調査でも、どこまで分かれば終わりとするかで必要な件数が3倍近く変わります。
注意したいのは、これらが同じ質問を、同じ性質の相手に聞いた場合の数字だということです。対象を2つの層に分けるなら、それぞれで数えます。既存の利用者と、検討して選ばなかった人の両方に聞くなら、12人ではなく各層で8人ずつという設計になります。片方の層が3人しかいない状態で「合計12人聞いたから飽和した」と言うのは、数え方が間違っています。
この数字を、人数を削る根拠に使うのも危うい使い方です。12件で92%という結果は、その調査の枠組みで符号を付け直した分析の結果であって、どの領域でも成り立つ法則ではありません。社内で人数を減らす提案が出たときは、減らすと何が見えなくなるかを1行で書いてください。層を1つ落とすなら、その層については何も言えなくなる、という形です。落ちるものが書ければ、減らす判断は正しく下せます。
目的から人数を逆算する3つの当て方
飽和は止め方の考え方であって、計画の立て方ではありません。計画の段階では、目的から逆算する当て方を使います。実務でよく使われるのは3つです。まだ何が起きているか分からない探索なら10人から15人、説明の枠組みまで作るなら20人以上、仮説が既にあってそれを確かめる検証なら8人から12人。目的の種類が決まれば、人数の幅はほぼ自動で決まります。
もうひとつの当て方は、対象の多様性から組む方法です。聞きたい層の数に、1層あたり3人から8人を掛けます。層が3つあれば9人から24人。この式は、層を増やすと人数が跳ね上がることを見える形にしてくれます。層を4つに増やしたいという要望が出たときに、層を1つ足すと3人から8人分の費用と期間が増えると即答できます。
業界ごとの目安も、この2つの当て方の結果として並べ替えられます。下の表は調査の領域ごとに使われている人数の目安です。数字をそのまま採用するのではなく、自分の調査がどの行に近いかを見て、そこから対象の層の数で調整してください。
| 調査の領域 | 人数の目安 | その人数になる理由 |
|---|---|---|
| 使いやすさの検証(同じ操作の流れ) | 5人 | 問題点が重複して出るため早く飽和する |
| BtoBの特定業界の意思決定者 | 5人から8人 | 対象が絞られており前提が揃っている |
| 消費財の新商品の考え方の検証 | 13人から15人 | 生活の場面が人によって大きく違う |
| ブランドの受け取られ方の調査 | 12人から20人 | 言葉の受け取りに幅があり層も多い |
| 医療や健康の領域 | 15人から25人 | 症状と経過の個人差が大きい |
聞く相手をどう選び、どう集めるか
人数が決まっても、相手を間違えれば深さは出ません。条件を決めるときは属性だけで組まないでください。年齢や職種といった枠は必要ですが、それだけで選ぶと話が続かない相手が混ざります。実務で足すべき条件は2つあり、対象のテーマに実際の関心や経験があること、そして自分の言葉で理由や感情を説明できることです。
集める経路は、既存の顧客の一覧、調査会社の登録者、公募の3つが基本です。それぞれに偏りがあります。既存の顧客だけに聞くと、選ばなかった人がなぜ選ばなかったのかという、最も知りたい部分が構造的に落ちます。公募は関心の高い人に寄ります。調査会社の登録者は条件で絞れる反面、調査に慣れていて答え方が整っている人が混ざります。どれを使うかより、どの偏りが入るかを先に書いておくことが大事です。
謝礼は1時間で1万円から2万円程度が相場とされ、専門職や役職者にはそれ以上を設定します。謝礼を削ると、集まる人の性質が変わります。金額を下げて集まるのは、時間の融通が利く人と、謝礼の額が相対的に大きい人です。予算を削るなら、人数を減らして謝礼を維持するほうが、集まる人の偏りは小さくなります。
選ぶ段階で見落としやすいのが、事前の質問票の書き方です。条件を確かめる質問に「望ましい答え」が透けて見えると、その答えに寄せる人が集まります。たとえば熱心な利用者を探していることが読み取れる設問を並べると、実際は月に1回しか使っていない人が「よく使う」を選びます。条件の質問は、どの答えが通るか分からない形に組んでください。
聞くことを決める:質問を3段階に分けて並べる
聞く前に作るのがインタビューフローです。作るのは質問の一覧ではありません。質問の内容と、その順番と、各質問に割り当てる時間の3つを決めた表です。時間を書いていないものはフローとして機能しません。時間が書かれていないと、その場で聞きたいことに引っ張られて、最後の質問に5分も残らないという事故が起きます。
実務で効くのは、質問を3段階に分ける整理です。「必ず聞く」「できれば聞きたい」「余裕があれば聞きたい」。この分類を先にしておくと、時間が足りなくなったときに何を落とすかを現場で迷いません。逆に分類していないと、聞き手はすべて聞こうとして、どの質問も浅くなります。必ず聞く質問は、多くても5つまでに絞ってください。それ以上あると、深く掘る時間が残りません。
並べる順番は、答えやすいものから、答えにくいものへ。時間の流れがあるテーマなら、過去から現在へ向かう順に置きます。最初に「今の不満を教えてください」と聞くと、その場で作られた不満が出てきます。同じことを知りたいなら、使い始めた経緯から順に聞いていき、途中で起きた出来事として引き出すほうが、実際にあった話が出ます。
1回の長さと、時間の割り振り
1回あたりの長さは、60分から90分程度が平均的です。この幅の中で、どこに何分を置くかを先に決めます。流れは5段落で、目的の説明と同意の確認から始まり、話しやすくするための短い質問、本題、補足の確認、そして終わりの案内です。下に割り振りの目安を置きます。
何のための調査か、録音するか、どこまで社内で共有するかを伝えて確認を取ります。ここを省くと、後で使える範囲が分からなくなります。
答えに困らない質問で声を出してもらいます。普段の1日の流れなど、事実を並べるだけで答えられるものが向きます。
必ず聞く質問を軸に、大きく聞いて小さく掘る往復をします。ここに最も長い時間を置きます。
聞き漏らした点と、途中で出てきた気になる発言を戻って確かめます。言い換えの確認もここでまとめて行います。
お礼と、この後どう使うかを伝えます。追加で聞いてよいかもここで確認しておくと、後から助かります。
割り振りでよく崩れるのは2番目です。話しやすくする質問が盛り上がって20分を使い、本題が30分に圧縮される。この20分は深さに変換されません。話が合っただけで、聞きたいことには届いていないからです。時計を見る役を聞き手とは別に置くと、この崩れはほぼなくなります。
90分を超える設計は避けてください。相手の集中が落ちるのと同時に、聞き手の集中も落ちます。どうしても聞くことが多い場合は、1人に2回に分けて聞くほうが、1回を2時間にするより深く入ります。1回目の書き起こしを読んだうえで2回目に臨めるので、掘る箇所も絞れます。
最初の5分でやること:目的の説明と録音の同意
冒頭の5分は事務手続きではなく、後の深さを決める工程です。ここで伝えるべきことが漏れていると、記録の使い方が縛られます。面談の音声には個人情報が含まれるため、何のために使うかを明示し、安全に管理し、本人からの求めに応じる体制を持つことが前提になります。
特に落としやすいのが、生成AIに渡す可能性を先に伝えることです。書き起こしをAIに通すつもりなら、その場で言います。後から連絡して許可を取り直そうとすると、断られるか、返答が来ないまま記録が使えなくなります。外部の参加者が同席する場合は、事前の連絡の段階で録音の旨を知らせておきます。
- 最初に伝える:調査の目的と、どの範囲で使うか(社内のみか、資料に載せるか)
- 最初に伝える:録音するかどうか。録音しない場合はメモのみになると伝える
- 最初に伝える:書き起こしや要約に生成AIを使う可能性
- 最初に伝える:社名や氏名を出さない形で扱うこと
- 最初に確認する:答えたくない質問は飛ばしてよいこと。これを言うと、答えの精度が上がる
最後の項目は効きます。答えたくないものは飛ばしてよいと伝えると、相手は答えられない質問に対して、それらしい答えを作らなくなります。作られた答えは、後から見分けるのが最も難しい種類の情報です。入り口で1行伝えるだけで、その混入を減らせます。
大きく聞いてから、小さく掘る
深さは、質問の細かさから出るのではありません。順番から出ます。最初に置くのは、相手が一連の流れを語れる大きな質問です。「普段の朝の過ごし方について、起きてから家を出るまでを教えてください」のような形。相手が自分の順番で語る時間を作るのが目的です。
語られた流れの中に、掘る箇所が現れます。言いよどんだところ、順番が飛んだところ、理由を添えずに済ませたところ。そこに小さな質問を当てます。「さきほど、その後すぐに別の画面を開いたと言われましたが、そのとき何を確かめていたのですか」。掘る箇所は、聞き手が事前に決めるのではなく、相手の語りの中から拾います。
この順番を逆にすると、深さが出ません。最初から細かい質問を並べると、相手は聞かれたことにだけ答える姿勢になります。聞き手が想定していた範囲の外にある話は、出てこないまま終わります。デプスインタビューの価値は想定外の話が出てくることにあるので、順番を逆にすると手法そのものの意味が消えます。
大きな質問を作るときのコツは、期間を区切ることです。「普段どうしていますか」と聞くと答えが一般論になりますが、「直近で使ったときのことを、開いてから閉じるまで順に教えてください」と区切れば、実際にあった1回の話になります。区切り方は、1日の流れ、直近の1回、この半年で最も困ったとき、などをテーマに応じて使い分けます。区切りの無い質問は、大きいのではなく漠然としているだけです。
誘導しない聞き方:ここが最も崩れる
聞き手が最も崩しやすいのが、誘導です。そして誘導は悪意からは起きません。仮説に執着した状態で聞くと、確かめたい答えに向かう質問が自然に出てしまいます。だから対策は心構えではなく、質問の言い方をあらかじめ決めておくことになります。下は現場で出てしまう型です。
- 同意を求める形で聞く:「この機能は使いにくいですよね」。相手は否定しにくく、同意だけが集まる
- 選択肢を2つに絞って出す:「値段が理由ですか、それとも使い方が難しかったからですか」。3つ目の理由が消える
- 専門の言葉で聞く:相手は分からないと言いにくく、知っている前提で答えを作る
- 相手の言葉を聞き手の言葉に置き換えて繰り返す:置き換えた時点で意味が変わり、以降その意味で話が進む
- 沈黙を埋めるために例を出す:「たとえば時間が足りないとか」。出した例がそのまま答えになって返る
聞き手が話す割合も見てください。目安として、聞き手の発話は全体の2割を超えないようにします。書き起こしを作れば、この割合はすぐ測れます。3割を超えている回は、たいてい誘導が混ざっています。測れる数字なので、聞き手の癖を直す手がかりとして使えます。
言い換えの確認は必要ですが、やり方があります。聞き手の言葉に置き換えるのではなく、相手の言葉をそのまま使って確認する。「先ほど、面倒だと言われましたが、その面倒というのは、どういう手間のことですか」。こう聞けば、意味は相手の側から出てきます。聞き手が「つまり操作が複雑ということですね」とまとめてしまうと、その後の話はすべてその枠の中に収まります。
事実と解釈を分けて聞く
同じ1回の面談で得られる情報には、性質の違う2種類が混ざっています。実際に起きたこと(事実)と、それを相手がどう説明するか(解釈)です。この2つを混ぜて記録すると、後から区別できません。分ける方法は単純で、聞く順番を分けます。
先に聞くのは、いつ、何回、どうやって、誰と、という事実の側です。「最後に使ったのはいつですか」「その月は何回くらい開きましたか」。答えが数字や出来事で返るものを先に置きます。そのあとで「なぜ」に入ります。順番を逆にすると、事実の記憶が、先に語った理由に合わせて歪みます。理由を先に語った人は、その理由に合う出来事を思い出しやすくなります。
さらに、「なぜ」への答えは、その場で作られた説明であることが少なくありません。本人が嘘をついているのではなく、行動の理由を言葉にする作業をその場で行っているからです。だから解釈は解釈として記録し、事実の側と突き合わせて読みます。記録の欄を最初から2つに分けておくと、この区別が後まで残ります。
沈黙を待つ、逸れたら戻す
聞いている最中の手当てで効くのは、沈黙の扱いです。相手が黙ったとき、多くの聞き手は3秒も待てずに次の質問を出します。ところが黙っている時間は、考えている時間です。ここで質問を足すと、考えていた内容は出てこないまま消えます。数えて待つと決めておくと、待てます。
話が逸れたときは、戻す言い方を用意しておきます。「さきほどの、月末に確認されているという話に戻りますが」。逸れた話を否定せずに、位置だけ戻す形です。逸れた内容も記録には残します。聞き手が用意していなかった話が、後から最も効くことがあるためです。
戻すべき逸れ方が1つあります。相手が一般論を語り始めたときです。「世の中的には」「みんな言っていますけど」といった主語で話が進んだら、自分の経験に戻してください。「ご自身の場合は、直近でそれが起きたのはいつですか」。一般論は、誰に聞いても同じ答えが返るので、人数を増やす意味がなくなります。
聞き手を2人にできるなら、役割を分けてください。1人が質問を出し、もう1人は記録と時間の管理に専念します。掘るべき箇所に気づいても、その場では割り込まずに書き留めておき、補足の確認の時間にまとめて渡す。割り込みが増えると相手の語りが途切れるので、気づいた側がすぐには聞かないという取り決めを先にしておきます。1人で行う場合は、時計を見える位置に置くだけでも崩れ方が変わります。
記録は3層で残す
記録をどう残すかで、後から使えるかが決まります。実務で必要なのは3層です。音声をそのまま文字にした逐語録、その場で取ったメモ、そして短い要約。3つとも別の役割があり、どれかを省くと後で困ります。
| 層 | 何を残すか | 後で効く場面 |
|---|---|---|
| 逐語録 | 相槌や言いよどみ、沈黙も含めて一言一句 | 引用の正しさを確かめる。言い方の揺れを読む |
| その場のメモ | 気づいたこと、表情や間、聞き漏らした点 | 次の回の質問を直す。解釈の出どころを残す |
| 短い要約 | その回で分かったことを数行 | 関係者に共有する。複数の回を並べて比べる |
逐語録の作成は、相槌や沈黙まで含めると60分の音声で4時間から6時間かかります。ここは書き起こしの委託や音声認識の道具で短縮できる部分です。ただし短縮した分を、そのまま次の面談に充ててはいけません。逐語録を読む時間を残してください。読まずに次に進むと、掘るべき箇所が分からないまま同じ質問を繰り返します。
3層は、相互に戻れる形にしておきます。要約の1行から、その根拠になった逐語録の位置に戻れるようにする。時刻や行の番号を添えるだけで足ります。要約から原文に戻れない記録は、半年後には使えなくなります。引用が正しいか確かめられず、社内で共有した1行が独り歩きします。
AIに任せてよい範囲と、任せてはいけない範囲
生成AIがこの作業で確かに効くのは3か所です。音声の書き起こし、質問の抜け漏れの点検、そして複数人の発言の突き合わせ。どれも量を扱う作業で、人がやると時間がかかるだけで判断が要らない部分です。抜け漏れの点検は、フローと逐語録を渡して「必ず聞くと決めた5つのうち、聞けていないものはどれか」と当てる使い方になります。
任せてはいけないのは、何が本音かの判定です。AIの要約は、繰り返し出てきた言い方に引かれます。結果として声の大きい意見だけが残り、1人しか言っていないが重要な話が落ちます。定性調査で価値があるのは後者のほうなので、この落ち方は手法の目的と正面から衝突します。要約は表面の言葉の整理にとどまり、どの角度から見るかという判断は入りません。
だから使い方を決めます。AIには要約と、その根拠になった原文の位置を必ず並べて出させる。位置が書けない要約は採用しません。これだけで、原文に無い話が混ざる余地が減ります。そして最終的にどの発言を重く見るかは人が決めます。
人が確認する範囲も、作業を始める前に決めておきます。書き起こしの誤りの直しと固有名詞の確認は全件、要約は根拠の位置との照合を全件、発言の重み付けは人が全件。この線を紙に書いてから作業に入ると、途中で出てきた便利な出力に流されません。
音声と記録をAIに渡す前に決めること
渡す前の確認を飛ばすと、後から取り返せません。最初に見るのは、冒頭で得た同意の範囲に収まっているかです。録音の同意しか得ていない状態で、外部の道具に音声を上げるのは範囲の外に出ています。同意の文面に、書き起こしと要約に生成AIを使うことを入れておくのが最も簡単な解決です。
道具の側の設定も確認します。一般向けのクラウドの書き起こしには、営業上の秘密や個人を特定できる情報を入れないという社内の線を引き、入力した内容を学習に使わない設定を確かめる。これは調査に限らず社内の文書全般に共通する話ですが、面談の音声は声そのものと氏名と勤務先が同時に含まれるため、影響が大きい種類の記録です。
そして精度の話です。AIの書き起こしは、社名や商品名、業界特有の言い回しで誤ります。誤ったまま要約すると、誤りが結論まで運ばれます。固有名詞の一覧を先に作り、書き起こし後に機械的に突き合わせる工程を置いてください。一覧があれば、この確認は数分で終わります。
よくある質問
5人で足りると言われるのは、どんな場合ですか
同じ操作の流れを複数人に試してもらい、つまずく箇所を見つける調査です。この場合、問題点は人をまたいで重複して出るので早く飽和します。ただし比べる対象が複数あるときは、対象ごとに5人が必要です。5人という数字は、ひとつの流れに対する目安で、調査全体の目安ではありません。
人数を増やせないときは、どうしますか
層を絞ります。3層に各4人で12人を組むより、最も知りたい1層に6人を当てるほうが、その層については飽和に近づきます。人数が足りないまま層を広げると、どの層についても結論が出ません。広く浅くではなく、狭く深くに寄せるのが、少ない人数での正しい使い方です。
1人に2回聞くのは有効ですか
有効です。1回目の逐語録を読んでから2回目に臨めるので、掘る箇所を絞れます。特に90分で収まらないテーマでは、2回に分けたほうが深く入ります。ただし2回目は前回の内容を踏まえた質問になるため、他の人との比較がしにくくなります。全員に同じ回数を当てるかどうかは、先に決めてください。
聞いた内容の分析は、この流れに含まれますか
含まれません。別の作業です。この記事で扱ったのは、聞く前の設計と、聞いている最中の手当てと、記録の残し方までです。集めた発言をどう束ねて示唆を出すかは、記録が3層で揃っていることを前提にした次の工程になります。設計と分析を同じ会議で決めようとすると、どちらも浅くなります。
まとめ
何人に聞くかという問いには、数字だけの答えはありません。止め方は飽和で、3人続けて新しい話が出なければ打ち切る。計画は目的から逆算して、探索なら10人から15人、検証なら8人から12人、層の数に3人から8人を掛ける。この2つを組み合わせて、上限の人数と止める条件を両方書けば、費用を固定したまま無駄な回数を避けられます。
深さを作るのは人数ではなく、順番と時間です。質問は必ず聞く5つに絞り、大きく聞いてから相手の語りの中で掘る箇所を拾う。事実を先に、理由を後に聞く。沈黙は待ち、一般論に流れたら自分の経験に戻す。聞き手の発話は2割まで。どれも書き起こしを読めば測れることなので、回を重ねるごとに直せます。
記録は逐語録とメモと要約の3層で残し、要約から原文に戻れる形にしておきます。AIは書き起こしと抜け漏れの点検と発言の突き合わせで効きますが、要約は声の大きい意見に寄るので、何が本音かの判定はさせない。要約には根拠の位置を並べて出させ、どの発言を重く見るかは人が決める。渡す前の同意の範囲と固有名詞の確認まで手順に入れておけば、短縮した時間を深さに回せます。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
データ分析にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
