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税理士事務所が国税不服審判所の公表裁決事例を争点と判断の段落ごとに索引し、顧問先の論点に近い事例と判断の分かれ目を根拠付きの所内メモにまとめる

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

顧問先から税務の論点の相談を受けたときに、国税不服審判所の公表裁決事例から事実関係の近い事例を探します。判断を分けた事実と顧問先との違いを、裁決の段落を引用した所内メモにまとめます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
不動産/士業/製造/金融
対象部門
法務/経理
対象業務
情報検索/要約
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
判断支援/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
90h/月
AI導入後
27h/月
想定削減
70%
年間削減
756h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 顧問先の担当者が、相談の内容と事実関係を所内チャットで審理の担当に送る
  2. 審理の担当が、審判所のホームページの「公表裁決事例要旨」を、関係する税法の分類から開く
  3. 争点の見出しと要旨を読み、近そうな事例を数件選ぶ
  4. 選んだ事例の全文を開き、争点、当事者の主張、審判所の判断を読み分ける
  5. 判断の中で決め手になった事実を書き出し、顧問先の事実と比べる
  6. 所内メモにまとめ、顧問先の担当者に返す
導入後(After)
  1. 自動毎月1回、審判所のトピックスを確かめ、公表裁決事例の追加があれば新しい事例を取り込む
  2. 自動取り込んだ事例を、争点・主張・判断の段落に分け、税法・争点区分・裁決日・結果を付けて索引に入れる
  3. 人顧問先の担当者が、相談の事実関係と論点を所定の欄に書き、顧問先の名前を外して送る
  4. 自動論点の税法で絞り、事実関係の文章に近い判断の段落を探す
  5. 自動当たった段落を事例ごとにまとめ、生成AIに渡して、判断の分かれ目と顧問先との違いを引用付きで並べさせる
  6. 自動引用の箇所と元の裁決のURLを付けた所内メモの下書きを作る
  7. 人審理の担当が下書きを読み、引用の段落を元のページで確かめ、裁決の後の法令の改正を確かめる
  8. 人所内メモとして承認し、顧問先の担当者に返す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 顧問先の担当者が、相談の内容と事実関係を所内チャットで審理の担当に送る
  2. 審理の担当が、審判所のホームページの「公表裁決事例要旨」を、関係する税法の分類から開く
  3. 争点の見出しと要旨を読み、近そうな事例を数件選ぶ
  4. 選んだ事例の全文を開き、争点、当事者の主張、審判所の判断を読み分ける
  5. 判断の中で決め手になった事実を書き出し、顧問先の事実と比べる
  6. 所内メモにまとめ、顧問先の担当者に返す

(a)分類と言葉で探すと、多すぎるか0件になる。 要旨の分類は税法と争点の区分で、顧問先の事実の言葉とは一致しません。 「売上の一部を除外」で探す人もいれば、「集計表を作らせた」で探す人もいて、当たる事例が人によって違います。

(b)全文を読む時間が重い。 裁決書は「事案の概要」「関係法令」「基礎事実」「争点」「争点についての主張」「当審判所の判断」と続き、争点が複数ある裁決はそれだけ長くなります。判断の段落にたどり着くまでに、関係のない主張を読み続けます。

(c)判断の分かれ目が担当者の頭の中に残る。 5番目で書き出す「決め手の事実」が、メモに残る人と残らない人がいます。次に同じ論点が来たとき、残っていなければまた全文を読みます。

(d)調べられる人が限られる。 裁決を読み慣れた職員は数名で、相談はその人に集まり、返事が遅れます。

  1. 【自動】 毎月1回、審判所のトピックスを確かめ、公表裁決事例の追加があれば新しい事例を取り込む
  2. 【自動】 取り込んだ事例を、争点・主張・判断の段落に分け、税法・争点区分・裁決日・結果を付けて索引に入れる
  3. 【人】 顧問先の担当者が、相談の事実関係と論点を所定の欄に書き、顧問先の名前を外して送る
  4. 【自動】 論点の税法で絞り、事実関係の文章に近い判断の段落を探す
  5. 【自動】 当たった段落を事例ごとにまとめ、生成AIに渡して、判断の分かれ目と顧問先との違いを引用付きで並べさせる
  6. 【自動】 引用の箇所と元の裁決のURLを付けた所内メモの下書きを作る
  7. 【人】 審理の担当が下書きを読み、引用の段落を元のページで確かめ、裁決の後の法令の改正を確かめる
  8. 【人】 所内メモとして承認し、顧問先の担当者に返す

7番目が、この設計の分かれ目です。 下書きは事例を並べたものであって、助言ではありません。審判所自身が、裁決の前提となった税制や税法が変わっている場合があると注意を書いています。裁決の日付と、その後の改正を確かめるのは人の仕事です。

3番目で顧問先の名前を外すのも、意図してのことです。 探すのに要るのは事実関係と論点だけで、顧問先が誰かは要りません。 名前は所内メモを承認するときに人が付けます。

02今回想定するシステム構成

構成図
国税不服審判所のホームページ(公表裁決事例・公表裁決事例要旨)
   ▼【トリガー】毎月1回、トピックスの「裁決事例の追加」を確かめる
AWS Lambda ── 新しい事例のページを取得し、段落に分ける
   ▼
Amazon OpenSearch Service(判断の段落の索引)
   ├─ 絞り込み:税法・争点区分・裁決日・結果
   ├─ 事実の近さ:more_like_this(Sudachi で分けた判断の段落)
   └─ 該当箇所:highlight(判断の段落の中の一致した文)
   ▲
   │【トリガー】担当者が相談の事実関係を送る
AWS Lambda ── 事例ごとに段落をまとめる
   ▼
Claude API ── 検索結果のブロックで渡し、引用付きで判断の分かれ目を並べる
   ▼
所内メモの下書き(引用の段落・裁決のURL・出典の記載)
役割想定する製品代替候補
検索基盤Amazon OpenSearch Service(Sudachi、more_like_this、highlight)Azure AI Search、Vertex AI Search(Agent Search)
生成AIClaude API(検索結果のブロックを引用付きで並べる)Gemini API、OpenAI API
連携AWS Lambda(取り込み、段落分け、検索、メモの組み立て)AWS Step Functions
保管Amazon S3(取得したページの写し、所内メモの下書き、検索の記録)―

判例のデータベースを置き換えるものではありません。 対象は審判所が公表した事例だけで、公表されるのは先例となるような裁決です。判決や公表されていない裁決は、別の手段で調べます。

公表裁決事例の範囲は、平成4年以降に発行した裁決事例集の全文と、平成22年1月から令和8年3月までの裁決事例の全文です。 平成22年分以降は冊子を作らず、ホームページへの掲載だけになっています。このページの記述が取り込みの範囲になります。

日本語の段落は、Sudachi で語に分けます。 Amazon OpenSearch Service の対応プラグインの一覧では、Sudachi Analysis が日本語向けに推奨とされています。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

取り込みと検索は、別々のきっかけで動かします。

取り込みは、毎月1回、審判所のトピックスを確かめることで起動します。審判所は四半期ごとに「〜までの裁決事例の追加等」というトピックスを出し、同じ日に「公表裁決事例要旨」と「公表裁決事例」に事例を追加し、裁決要旨検索システムにも要旨を追加します。 毎月見れば、追加から1か月以内に索引へ入ります。毎日見に行く必要はありません。

検索は、顧問先の担当者が相談の欄を送ったことを起点にします。所内チャットの文面を直接読むことはしません。チャットには顧問先の名前や数字が混ざるので、事実関係と論点を所定の欄に書き直してもらいます。 書き直すこと自体が、論点を整理する作業になります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
公表裁決事例の全文事案の概要、関係法令、基礎事実、争点、争点についての主張、当審判所の判断、結論審判所の「公表裁決事例」
裁決事例要旨税法の分類、争点区分の見出し、要旨、《ポイント》《参考判決・裁決》審判所の「公表裁決事例要旨」
事例の属性裁決日、裁決事例集の番号、関係税法、結果(棄却・一部取消しなど)、ページのURL目次と要旨のページから取り出す
相談の欄論点の税法、論点の一文、事実関係(顧問先の名前を外したもの)、期間顧問先の担当者の入力
所内メモの記録過去に承認した所内メモと、使った事例所内メモの置き場

質を決めるのは、相談の欄の事実関係の書き方です。 「売上を少なく申告した」だけでは、仮装の事例も単純な過誤の事例も同じように当たります。「誰が、何を見て、どの帳票を作ったか」まで書くと、判断の段落の言葉と重なります。 欄には書き方の例を置きます。

要旨の《ポイント》と《参考判決・裁決》は、別の項目に持たせます。 審判所は、内容に特徴がある事例や参考となる判決・裁決がある事例について、その特徴や判決等の情報を要旨に付記しています。 一覧の上で、この印のある事例を先に読めるようにします。

Step3

データの取得方法を決める

事例のページは、審判所のホームページから取得します。 公表裁決事例の目次は四半期ごとのページ(裁決事例集の番号ごと)に分かれ、そこから各事例の全文のページと要旨のページに辿れます。 取得するのは追加された四半期の目次と、その中の事例のページだけです。

利用の条件は、審判所の利用案内で確かめます。 著作権は特記の無い限り審判所に帰属し、権利表記の無いものは「公共データ利用規約(第1.0版)」に準拠した条件で利用できます。 出典は「出典:国税不服審判所ホームページ(当該ページのURL)」と書き、編集・加工したときはそのことを別に書き、国が作ったかのように見せてはいけないとされています。所内メモには、この形で出典を必ず入れます。

取るものどこから何に使うか
新しい事例の有無トピックスの「裁決事例の追加等」取り込みを動かすかどうか
事例の一覧四半期ごとの目次税法・争点区分・裁決日・要旨の見出し
全文各事例のページ段落に分けて索引に入れる
要旨要旨のページ《ポイント》《参考判決・裁決》の有無

取得の間隔は空けます。 1四半期の追加は数件なので、1ページごとに数秒の間を置いても数分で終わります。 審判所のサイトに負荷を掛ける取り方はしません。

判断の段落の中の該当箇所は、highlight で返させます。 OpenSearch の既定のハイライトは unified で、文に分けてそれぞれを文書のように扱い、BM25 で採点します。 断片の長さ fragment_size は既定で100文字、数 number_of_fragments は既定で5、order を score にすると関連の強い順に並びます。fragment_size を0にすると文を途中で切らずに返します。 引用は文の単位がよいので0にします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 段落に分ける … 全文を「事案の概要」「関係法令」「基礎事実」「争点」「争点についての主張」「当審判所の判断」「結論」の見出しで分けます
  2. 争点ごとに分ける … 「争点1」「争点2」と番号の付いた主張と判断を、争点の番号で対応させます
  3. 段落の種類を付ける … 判断の段落には judgment、主張の段落には claim_requester(請求人)・claim_office(原処分庁)を付けます
  4. 属性を付ける … 裁決日、関係税法、争点区分の見出し、結果、事例のURLを各段落に持たせます
  5. 相談の欄を整える … 金額・日付・固有名詞を「金額A」「日付B」に置き換え、顧問先が分かる情報を外します
  6. 重複の検知 … 同じURLの事例が既にあれば、取り込みません

2番目と3番目を軽く見ないでください。 主張の段落と判断の段落は、同じ言葉を多く使います。請求人は「単なる過誤である」と主張し、判断はそれを退けます。種類を付けずに探すと、主張の言葉に当たった事例が上に来ます。 検索は judgment の段落を中心にし、主張の段落は補助に使います。

Step5

AIに処理させる

検索は、二つの条件を組み合わせます。

条件探し方入れる値
税法・段落の種類term で絞り込み相談の税法、judgment
事実の近さ相談の事実関係を like に渡して more_like_this相談の事実関係の文章
争点の言葉争点の段落を match(補助)相談の論点の一文

more_like_this の既定値は、短い相談の文章に向いていません。 公式の既定では、入力の中で2回未満しか出ない語は無視され(min_term_freq が2)、5件未満の文書にしか出ない語も無視されます(min_doc_freq が5)。数行の事実関係ではほとんどの語が1回しか出ないので、min_term_freq を1に下げます。

検索の問い合わせは、たとえば次の形になります。

{
  "query": {
    "bool": {
      "filter": [
        { "term": { "tax_law": "国税通則法" } },
        { "term": { "section_type": "judgment" } }
      ],
      "should": [
        { "more_like_this": {
            "fields": ["text"],
            "like": ["{相談の事実関係}"],
            "min_term_freq": 1,
            "max_query_terms": 25 } },
        { "match": { "issue_text": "{相談の論点の一文}" } }
      ],
      "minimum_should_match": 1
    }
  },
  "highlight": {
    "fields": { "text": { "fragment_size": 0, "number_of_fragments": 5, "order": "score" } }
  }
}

税法と段落の種類は filter に置き、点数に混ぜません。 絞り込みは「当たるか当たらないか」だけを決め、近さの順は事実関係の文章と論点の言葉で決めます。 争点区分の見出しは絞り込みに使わず、一覧の表示に使います。区分の名前が相談の論点とずれていると、近い事例を落とすからです。

当たった段落は、事例ごとにまとめてから生成AIに渡します。 同じ事例の判断の段落が3つ当たったら、1つの事例として扱い、その事例の争点の段落も添えます。渡す事例は点数の上位5件までにします。数を増やすと、遠い事例の決め手まで並び、読む量が戻ってしまいます。

生成AIにさせるのは、当たった事例ごとに判断の分かれ目を並べることだけです。

させること中身
事案の要点誰が何をして、どの処分を受けたかを1〜2文で
争点相談の論点にあたる争点を、裁決の書き方のまま
決め手の事実判断の段落の中で、結論を導いた事実
顧問先との違い相談の事実関係と、決め手の事実の重なりと違い
確かめること顧問先に追加で聞くべき事実
させないこと理由
顧問先がどうなるかの結論当てはめの判断は税理士が行う
裁決の後の改正の判断改正の有無は人が条文で確かめる
引用の無い記述判断の段落に無い事実を作らないため
事例の順位付け近さの順は検索の点数で、重みは人が決める

最初の行が、この構成の線引きです。 「この事例と同じく仮装に当たる可能性が高い」と書かせると、読み手は事例を読まずに結論だけを使い始めます。 並べるのは事実までにします。

Step6

指示内容を固定する

あなたは税理士事務所の審理の担当で、顧問先の相談に近い
国税不服審判所の公表裁決事例を、所内メモのために整理する立場です。
渡した検索結果(裁決の段落)だけを根拠にしてください。

【相談の論点】{issue}
【相談の事実関係】{facts}
【検索結果】事例ごとに、争点の段落と判断の段落を渡します。

【やること】
事例ごとに次を書いてください。
1. 事案の要点(1〜2文)
2. 相談の論点にあたる争点(裁決の書き方のまま)
3. 審判所が結論を導いた決め手の事実(箇条書き)
4. 相談の事実関係と、3の事実の重なりと違い
5. 顧問先に追加で確かめるべき事実

【厳守事項】
- 検索結果に書かれていないことを書かないでください。
- 3の決め手の事実は、判断の段落から引いてください。
  請求人や原処分庁の主張の段落から引かないでください。
- 顧問先がどうなるか、処分が認められるかを書かないでください。
  「この事例では〜と判断された」までにしてください。
- 裁決の後に法令が変わったかどうかを書かないでください。
- 相談の事実関係に書かれていない事実を、補って比べないでください。
  分からないことは5の確かめる事実に回してください。
- 相談に近くない事例は、無理に関連付けず「関連が薄い」と書いてください。

「主張の段落から引かない」を明記しないと、請求人の言い分が決め手のように書かれます。 主張の段落は判断の段落と同じ言葉を使い、しかも分かりやすく書かれています。審判所が退けた主張を決め手として並べると、メモが逆の意味になります。

「法令が変わったかを書かない」を入れているのは、生成AIに改正の有無を判断させないためです。 渡しているのは裁決の段落だけで、その後の改正は検索結果に入っていません。書かせれば推測になります。

Step7

出力形式を固定する

生成AIへの指示は、検索結果のブロックで渡します。 公式のドキュメントでは、search_result のブロックに source・title・content を入れると、自社の文書を検索結果として引用付きで答えます。 source に事例のURL、title に裁決日と争点区分、content に段落を1つずつのテキストブロックで入れます。

引用はテキストブロックの単位で付きます。 返る引用には cited_text と、content の何番目から何番目かを示す start_block_index・end_block_index が入ります。段落を細かいブロックに分けておくほど、引用が細かくなります。 また、引用の設定はリクエストの中のすべての検索結果でそろえる必要があり、混ぜるとエラーになります。

所内メモの下書きは、引用を組み込んで次の形にします。

{
  "issue": "",
  "cases": [
    {
      "url": "",
      "decided_on": "",
      "tax_law": "",
      "issue_heading": "",
      "result": "",
      "has_point_note": true,
      "summary": "",
      "decisive_facts": [
        { "text": "", "cited_text": "", "block": [0, 1] }
      ],
      "overlap_with_client": "",
      "difference_from_client": "",
      "facts_to_confirm": []
    }
  ],
  "source_notice": "出典:国税不服審判所ホームページ(各事例のURL)を加工して作成"
}

1つ目の理由は、決め手の事実ごとに引用を持てることです。 decisive_facts の1行ごとに cited_text が付くので、審理の担当は引用の文を元のページで探すだけで確かめられます。

2つ目は、decided_on を事例ごとに持つことです。 承認のときに、裁決日より後の改正を確かめる対象がすぐ分かります。

3つ目は、source_notice を必ず入れることです。 所内メモは事例を要約し加工したものなので、利用規約の例に沿って加工したことを書きます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
審判所のホームページ公開ページの取得(毎月1回)トピックス、目次、全文、要旨
Amazon OpenSearch Service索引への登録と検索判断の段落の索引、絞り込みとハイライト
Claude APIAPI呼び出し検索結果のブロックで判断の分かれ目を並べる
相談の欄所内の画面論点と事実関係を受け取る
所内メモの置き場ファイルの保存承認したメモを論点の名前で保存する

顧問先の管理システムとはつなぎません。 顧問先の帳簿や申告書を検索基盤に入れる構成にはせず、担当者が書いた事実関係だけを使います。

承認した所内メモは、論点の名前で保存します。 顧問先の名前と日付のファイル名をやめ、税法と論点で探せるようにすると、次に同じ論点が来たときに前のメモが先に見つかります。

Step9

人が確認する

  1. 引用の確認 … 決め手の事実の引用を、事例の元のページで確かめます。判断の段落からの引用かを見ます
  2. 改正の確認 … 裁決日より後に、関係する条文や通達が変わっていないかを確かめます
  3. 顧問先の事実の確認 … 「確かめるべき事実」を顧問先の担当者に渡し、聞き取りを頼みます
  4. 承認 … 所内メモとして承認し、論点の名前で保存します

2番目を省かないでください。 公表裁決事例の案内には、裁決の前提となった税制、税法等が変更となっている場合があることに留意するよう書かれています。平成の初めの事例が、いまの条文で同じに読めるとは限りません。

承認の目安は、1件あたり22分です。 引用の確認に10分、改正の確認に8分、メモの手直しと承認に4分ほどを見込みます。引用は全部を開くのではなく、決め手の事実として並んだものだけを開きます。 開いた引用と直した箇所は記録に残し、同じ事例が次に使われたときの確認を軽くします。

Step10

例外に対処する

起きること対応
近い事例が1件も無い税法の絞り込みを外した結果と、争点区分の見出しの一覧を返す。無理に事例を並べない
争点の番号と判断の段落が対応しない判断の段落を事例全体に付け、一覧に「争点の対応なし」と出す
ページの構成が変わり段落に分けられないその事例は全文を1つの段落として入れ、取り込みの記録に印を付ける
取得に失敗した翌日にもう一度だけ取り直す。連続して取りに行かない
引用が主張の段落を指している下書きの該当行に印を付け、審理の担当に回す
相談の欄に顧問先の名前が残っている送信の前に名前の一覧と照らして止める
古い裁決で法令の名前が今と違う一覧に裁決日を大きく出し、改正の確認を求める

1行目は、出さないことが大事です。 近くない事例を並べると、読み手は「近い事例があった」と受け取ります。

Step11

記録を残す

  • 取得したページの写しと、取得した日時・URL
  • 段落の分け方の結果(どの見出しで分けたか、争点の対応)
  • 相談の欄の中身(顧問先の名前を外したもの)、検索の条件、返した段落
  • 生成AIの下書きと引用、審理の担当が直した箇所
  • 承認した所内メモと、使った事例のURL

取得したページの写しを残すのは、後でページが変わっても当時の文面を確かめるためです。 審判所は公表事例を法令の改廃や判決の結果を勘案して掲載しているとしており、文面が手直しされることがあります。

最後の行は、次の相談の入口になります。 同じ事例が何度も使われていれば、所内の判断の基準として整理しておく価値があります。

04実装レベルの3段階

最小構成:人が選んだ事例の判断の部分をAIの画面に貼り、決め手の事実を並べさせる / 判断の分かれ目の整理
半自動化:上記+公表事例を取り込んで段落に分け、税法と言葉で検索できるようにする / 事例の検索と段落の取り出し
本格構成:上記+相談の事実関係で判断の段落を探し、引用付きの所内メモの下書きまで出す / 調べものの全体と所内メモの下書き

最小構成では、事例を選ぶ時間が減りません。 選ぶのは人のままなので、確かめるための段階です。 半自動化で、1件90分が50分程度になります。 判断の段落に直接たどり着けるので全文を読む時間は減りますが、事実の比べ方とメモの書き起こしが手作業で残ります。本格構成で27分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で1か月回すと、段落に分けられない古い事例と、争点の対応が取れない事例が分かります。 そこを手で直してから下書きまで進むほうが、引用の誤りが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
8 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
90 分
1件あたり導入後時間
27 分
現在  60件 × 90分 ÷ 60 = 90 時間/月
導入後 60件 × 27分 ÷ 60 = 27 時間/月
月間削減時間
63h
削減率
70%
年間削減時間
756h
年間金額換算(時間単価5,000円)
378万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 法人・個人の顧問先を数百件持ち、重加算税・役員給与・寄附金・事業所得の判定・相続財産の評価のような、事実の認定で結論が分かれる論点の相談が毎月数十件ある税理士事務所。所内で裁決事例を調べられる人が限られ、調べ方や引き方が担当者によって違う場合。調べた結果を所内メモとして残しているが、後から同じ論点で探し直せていない場合。AWS を使っており、検索基盤を事務所で持てる場合。
向いていない
  1. 相談の大半が記帳や申告の手続きの質問で、裁決事例を引くほどの論点が月に数件しかない場合。判例・裁決のデータベースを契約していて、その検索と所内メモの仕組みがすでに回っている場合。顧問先の事実関係を外部のサービスに出せない取り決めがあり、匿名化の運用も組めない場合。なお、顧問先にどう助言するか、更正の請求や審査請求をするかの判断は税理士が行い、この構成はそれを代わりに行いません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の相談から5件を選び、そのとき使った事例と所内メモを用意する
  2. その5件の論点の税法について、審判所の「公表裁決事例」から近い時期の事例を10件ずつ選ぶ
  3. 手元のAIサービスの画面に、相談の事実関係(顧問先の名前を外したもの)と、事例の「争点」と「当審判所の判断」の部分を貼り付ける
  4. 「判断の段落の中から決め手の事実を引用付きで書き出し、相談の事実との重なりと違いを並べてください。主張の段落から引かないでください。結論は書かないでください」と指示する
  5. 当時の所内メモと比べる

最小構成で確かめたいのは、検索ではなく整理の質です。 事例はまだ人が選びます。判断の段落を渡せば決め手の事実が取り出せるのかを、先に見ます。

出てきた内容判断
当時のメモと同じ決め手の事実が引用付きで出た索引と検索の仕組みに進む
主張の段落の言葉が決め手として出た指示の書き方と段落の種類分けで直る。構成は有効
相談の事実関係が薄く、比べられない相談の欄の書き方を決めるのが先。 AIの問題ではない

3行目が出ることは珍しくありません。 事実関係が薄いまま調べていたことが分かったなら、欄の書き方の例を作るだけで、いまの手作業の調べ方もよくなります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
主張の言葉に当たった事例が上に来る段落の種類を付け、judgment を中心に探す
請求人の主張が決め手として書かれる判断の段落からだけ引くよう指示し、引用の段落の種類で検知する
短い相談の文章で何も当たらないmin_term_freq を1に下げる
引用が段落まるごとになる段落を文の単位のブロックに分けて渡す
引用の設定を混ぜてエラーになるすべての検索結果で citations をそろえる
ハイライトが文の途中で切れるfragment_size を0にして文の単位で返す
古い事例をいまの条文で読む裁決日を事例ごとに持ち、承認で改正を確かめる
顧問先の名前が相談の欄に残る送信の前に名前の一覧と照らして止める
所内メモに出典が無いsource_notice を必ず入れ、加工したことも書く
取り込みで審判所のサイトに負荷を掛ける毎月1回、追加された四半期だけを間を置いて取る
結論まで書かせる「〜と判断された」までにし、助言は税理士が書く

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも、裁決書の中に正反対の立場の文章が同じ言葉で並んでいることから来ています。段落の種類を付けるかどうかで、メモが使えるかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 公開されている裁決事例と、顧問先の相談の事実関係です。相談の事実関係は、税理士の守秘義務の対象です。

  1. 顧問先が分かる情報を外す … 名前、金額、日付、所在地を置き換えてから検索と生成AIに渡します。探すのに要るのは事実の型で、顧問先が誰かは要りません
  2. 生成AIの入力を学習に使わせない契約を確かめる … 事務所として、APIの利用条件とデータの保持を確かめてから使います
  3. 出典と加工の記載を守る … 審判所の利用案内は公共データ利用規約(第1.0版)に準拠し、出典の記載と、加工したことの記載を求めています。 所内メモを顧問先に渡すときも同じ形で書きます
  4. 国が作ったように見せない … 要約した文章を、審判所の要旨のように見せる書き方をしません
  5. 助言の判断を代替させない … 下書きは事例の整理までです。顧問先への助言、更正の請求や審査請求をするかの判断は税理士が行います
  6. 改正の確認を省かない … 裁決の前提の税制が変わっていることがあると、審判所自身が注意しています

誤りが起きた場合のリスクは、主張と判断を取り違えて逆の意味のメモを作ることと、改正前の事例をいまの論点に当てはめることの2つです。 前者は段落の種類の付け方で、後者は承認の確認で防ぎます。どちらも人の確認を残す前提の設計です。

10まず何から始めるか

1週目:相談の欄の書き方を決める

論点の税法、論点の一文、事実関係、期間の4つの欄を決め、事実関係の書き方の例を3つ作ります。 「誰が、何を見て、どの帳票を作ったか」まで書く例にします。顧問先の名前を外す決まりもここで決めます。

2週目:5件で試す

先月の相談5件について、人が選んだ事例の判断の部分を手元のAIサービスに貼り、決め手の事実を並べさせます。当時の所内メモと比べ、主張の段落から引いていないかを最優先で見ます。

3週目:直近の事例を取り込む

審判所の公表裁決事例から、平成22年分以降の事例を取り込み、段落に分けます。争点の番号と判断の段落が対応しない事例を数え、分け方の例外を洗い出します。

4週目:検索をつなぐ

相談の欄から判断の段落を探し、ハイライト付きで一覧にするところまで作ります。この時点ではまだ下書きを作らず、当たる事例が当時の調べと合うかを見ます。

2か月目: 検索結果のブロックで生成AIに渡し、引用付きの下書きを出します。3か月目以降: 平成4年からの事例集の全文を足し、1件90分が何分になったかを実測します。承認した所内メモが論点の名前で探せるようになり、同じ論点を二度調べなくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-08/最終更新:2026-10-08
確認した内容情報源確認日
先例となるような裁決を公表していること。平成21年分(No.78)まで冊子を作り、平成22年分以降はホームページへの掲載のみであること。「公表裁決事例」が平成4年以降の裁決事例集の全文と平成22年1月から令和8年3月までの全文を紹介していること。裁決要旨の検索が平成8年7月1日から令和8年3月31日までの裁決を対象にしていること国税不服審判所: 公表裁決事例集等の紹介2026-10-08
公表裁決事例を法令の改廃、判決結果等を勘案して掲載していること。裁決の前提となった税制、税法等が変更となっている場合があることに留意するよう書かれていること国税不服審判所: 公表裁決事例2026-10-08
令和8年10月7日に令和8年1月から3月までの7事例を追加し、裁決要旨検索システムにも要旨を追加したこと。特徴のある事例に《ポイント》《参考判決・裁決》を付記していること国税不服審判所: 令和8年トピックス詳細2026-10-08
著作権が特記の無い限り審判所に帰属し、公共データ利用規約(第1.0版)に準拠した条件で利用できること。出典の記載方法と、編集・加工したときの記載、国が作成したかのような態様で公表・利用してはいけないこと国税不服審判所: 利用案内2026-10-08
Amazon OpenSearch Service の対応プラグインの一覧で、Sudachi Analysis が日本語向けに推奨されていることAmazon OpenSearch Service: Plugins by engine version2026-10-08
more_like_this が入力を分析して特徴的な語を選び、その語を含む文書を探すこと。like に自由な文章を渡せること。min_term_freq の既定が2、min_doc_freq の既定が5であることOpenSearch Documentation: More like this2026-10-08
既定のハイライトが unified で、文に分けて BM25 で採点すること。fragment_size の既定が100文字、number_of_fragments の既定が5、order を score にすると関連順になること。fragment_size を0にすると文を分けずに返すことOpenSearch Documentation: Highlight query matches2026-10-08
search_result のブロック(source・title・content)で自社の文書を引用付きで答えること。引用がテキストブロックの単位で付き、cited_text・start_block_index・end_block_index が返ること。引用の設定をすべての検索結果でそろえる必要があることClaude Docs: Search results2026-10-08

顧問先への助言と、審査請求などの手続きの判断は、税理士の責任で行ってください。 本記事は公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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