信用金庫の窓口の職員が、事務取扱要領と過去の本部への照会の記録を Vertex AI Search で検索し、手続の扱いと必要書類を、照会の回答がいまの要領の版に合うかを確かめたうえで根拠付きでそろえる
窓口でふだん扱わない手続を受けたとき、事務取扱要領と過去の本部への照会の記録を検索し、扱いと必要書類を引用付きでそろえます。照会の回答は、根拠の条がその後に改定されていないかを確かめてから出します。
- 生成AI
- Gemini
- AIサービス
- Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
- 連携・自動化
- Python
- 対象業界
- その他/金融
- 対象部門
- 総務
- 対象業務
- 情報検索
- 主な課題
- 判断に時間がかかる/属人化している/情報が見つからない
- AIで行う処理
- 検索(RAG)
- 主な効果
- 品質標準化/対応スピード向上/検索時間短縮
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- RAG・個別開発(大)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 窓口でお客様から手続の申し出を受け、事情を聞く
- 要領の目次から手続に当たりそうな編を探し、PDF を開いて条を読む
- 事務連絡の一覧を見て、その条が最近改定されていないかを確かめる
- 分からなければ、役席者や先輩に聞く。それでも分からなければ、本部の事務部に電話で照会する
- 本部の折り返しを待つあいだ、お客様に待ってもらうか、後日の来店を頼む
- 扱いと必要書類が分かったら、お客様に案内し、手続を進める。書類が足りなければ、そろえて再来店してもらう
- 本部に照会したものは、照会票を書いて事務部に送る
- 人窓口の職員が、窓口の画面で手続の種類を選び、事情を短く入れる。お客様の名前と口座番号は入れない
- 自動入力から数字の並びを伏せ、手続の種類から検索する要領の編を決める
- 自動Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドで、現行の版の要領の条だけから、扱いと必要書類を引用付きでまとめさせる
- 自動search メソッドで、同じ手続の過去の照会と本部の回答を一覧にする。新しい回答を上に出す
- 自動照会の回答ごとに、根拠の条が回答の後に改定されていれば「改定前の回答」、本部の個別の判断なら「個別の判断」と印を付ける
- 人窓口の職員が引用の原文を見て、扱いと必要書類を案内する。取引時確認や払い戻す相手の判断が要るものは役席者に回す
- 人見つからない、または印の付いた回答しか無いときは、画面の照会票の下書きを直して本部に照会する
- 【自動/人】 調べた手続、引用した条、案内したこと、本部への照会を記録に残す。本部の回答が来たら、事務部が根拠の条と版を付けて照会の記録に登録する
各工程の詳しい説明を読む
- 窓口でお客様から手続の申し出を受け、事情を聞く
- 要領の目次から手続に当たりそうな編を探し、PDF を開いて条を読む
- 事務連絡の一覧を見て、その条が最近改定されていないかを確かめる
- 分からなければ、役席者や先輩に聞く。それでも分からなければ、本部の事務部に電話で照会する
- 本部の折り返しを待つあいだ、お客様に待ってもらうか、後日の来店を頼む
- 扱いと必要書類が分かったら、お客様に案内し、手続を進める。書類が足りなければ、そろえて再来店してもらう
- 本部に照会したものは、照会票を書いて事務部に送る
(a)要領のどの条に書いてあるかが探せない。 2番で、「代理人の払戻し」は払戻しの編、取引時確認の編、代理人の届出の編にまたがります。目次の言葉とお客様の言葉が違うので、PDF の中を言葉で探しても当たりません。
(b)過去の照会の回答が店に届いていない。 4番で、同じ質問を別の店が先月本部にしていても、その回答は事務部の表計算のファイルにあり、店からは見えません。 本部の事務部は、同じ質問に月に何度も答えています。
(c)改定の前の扱いで案内してしまう。 3番を省くと、差し替える前の印刷や、先輩が覚えている前の扱いで案内することになります。必要書類が違えば、お客様にもう一度来てもらうことになります。
(d)個別の判断が前例として広まる。 先輩が「前に本部がいいと言った」と覚えているのは、事情があって本部がその件に限り認めた扱いのことがあります。 別のお客様に同じ扱いを約束すると、本部が後から断ることになります。
- 【人】 窓口の職員が、窓口の画面で手続の種類を選び、事情を短く入れる。お客様の名前と口座番号は入れない
- 【自動】 入力から数字の並びを伏せ、手続の種類から検索する要領の編を決める
- 【自動】 Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドで、現行の版の要領の条だけから、扱いと必要書類を引用付きでまとめさせる
- 【自動】 search メソッドで、同じ手続の過去の照会と本部の回答を一覧にする。新しい回答を上に出す
- 【自動】 照会の回答ごとに、根拠の条が回答の後に改定されていれば「改定前の回答」、本部の個別の判断なら「個別の判断」と印を付ける
- 【人】 窓口の職員が引用の原文を見て、扱いと必要書類を案内する。取引時確認や払い戻す相手の判断が要るものは役席者に回す
- 【人】 見つからない、または印の付いた回答しか無いときは、画面の照会票の下書きを直して本部に照会する
- 【自動/人】 調べた手続、引用した条、案内したこと、本部への照会を記録に残す。本部の回答が来たら、事務部が根拠の条と版を付けて照会の記録に登録する
3番目と4番目を分けているのが、この設計の要です。 お客様に案内する扱いと必要書類は、現行の要領の条だけから作ります。過去の照会の回答は、職員が状況を見比べる材料として一覧で見るだけにし、答えの文には入れません。
5番目の印は、毎晩の処理で付けておきます。 検索のたびに比べるのではなく、事務連絡で改定された条の一覧と照会の記録の根拠の条を突き合わせ、照会の記録の側の項目を書き換えておきます。 検索のときは、その項目で並べ分けるだけです。
02今回想定するシステム構成
窓口の申し出(手続の種類・事情。名前と口座番号は入れない) ▼【トリガー】窓口の画面で送信 中継プログラム(Python。Cloud Run) │ 数字の並びを伏せる │ 手続の種類から編と、現行の版の条件を組み立てる ▼ Vertex AI Search(Agent Search) ├── answer メソッド ── 現行の要領の条から、扱いと必要書類(引用つき) └── search メソッド ── 同じ手続の過去の照会と本部の回答の一覧 │ データストア:事務取扱要領(条ごと)、照会の記録(1件1文書) ▼ 中継プログラム ── 引用の無い文を外す。照会の回答の印を表示 ▼ 窓口の画面(案内する扱い/引用した原文/過去の照会の一覧/照会票の下書き) ▼ 【窓口の職員が案内し、判断の要るものを役席者へ】 夜間の処理:事務連絡の改定の一覧 × 照会の記録の根拠の条 → 「改定前の回答」の印
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 検索基盤 | Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドと search メソッド | Azure AI Search、Amazon OpenSearch Service |
| 生成AI | Gemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル) | ― |
| 連携 | 中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、窓口の画面と検索、夜間の印付けをつなぐ) | Node.js で同じものを書く |
| 保管 | Cloud Storage(要領の条ごとの写し、照会の記録、メタデータ、調べた記録) | ― |
勘定系のシステムには、読みにも書きにもいきません。 この構成が扱うのは事務の規程と照会の記録だけで、お客様の口座や取引の情報は検索に入れません。 手続そのものは、いまどおり窓口の端末で行います。
土台は、Vertex AI Search の answer メソッドです。 公式ページでは、answer メソッドは検索の結果から回答を作り、回答の文ごとに出典を示す引用を付けられるとされています。結果を答えより先に見せたいときなどは、search メソッドと一緒に使うとされています。公式ページには、Vertex AI Search が Agent Search へ改称中である旨の記載があります。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
窓口の職員が、窓口の画面で手続の種類を選び、事情を入れて送信したことを起点にします。 手続の種類は「払戻し(代理人)」「相続の届出」「成年後見の届出」「氏名・住所の変更」「口座の開設(外国籍)」のような一覧から選びます。自由に書いた文だけで検索すると、お客様の言葉に引っぱられて、別の編の条が当たるからです。
事情を足して問い直すときは、同じ会話として続けます。 公式ページでは、前の問い合わせのセッションの ID を渡すと続きとして問えるとされています。「遺言書がある」「代理人は同居の家族」と足すと、条件に合う条に絞った答えが出るようにします。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 窓口の申し出 | 手続の種類、事情の文(名前・口座番号を入れない)、店の番号、職員の役職 | 窓口の画面 |
| 事務取扱要領 | 編・章・条ごとの文、条の版、施行日、廃止日 | データストア |
| 事務連絡 | 改定した条、新しい版、施行日 | 本部の共有フォルダ |
| 照会の記録 | 手続の種類、質問、本部の回答、回答した日、根拠にした条と版、個別の判断かどうか | データストア |
質を決めるのは、照会の記録の「根拠にした条と版」と「個別の判断かどうか」の2つです。 今後の回答は、事務部が回答を登録するときに必ず入れます。8年分の過去の記録は、新しいものから順に、事務部の経験者が付け直します。 付け直していない記録は「根拠不明」として扱い、答えの根拠にも、一覧の上の方にも出しません。
照会の記録からは、お客様の名前、口座番号、店の担当者の名前を外して入れます。 検索に要るのは手続の種類と事情と回答で、どのお客様の件だったかは要りません。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 要領 | 編の PDF を、条ごとの文書に分けて Cloud Storage へ写す | データストアの中身 |
| 照会の記録 | 事務部の表計算のファイルの書き出し。1件を1つの文書に | データストアの中身 |
| 事務連絡 | 改定した条と版の一覧 | 現行の版の判定と、照会の記録の印 |
| 答えと一覧 | answer メソッドと search メソッドの応答 | 窓口の画面 |
要領は、条ごとに1つの文書に分け、メタデータに編・条・版・施行日・廃止日を持たせます。 公式ページでは、非構造のデータのメタデータは JSON Lines(NDJSON)のファイルで、各行に id、structData(または jsonData)、Cloud Storage の文書を指す content の mimeType と uri を持たせるとされています。1つの条は、たとえば次の1行にします。
{"id": "yoryo-12-034-v7",
"structData": {"doc_kind": "rule", "procedure": "inherit",
"volume": "12 相続", "clause": "12-34", "rule_ver": "v7",
"effective_from": "2026-04-01", "effective_to": "9999-12-31",
"audience": "teller"},
"content": {"mimeType": "application/pdf", "uri": "gs://<bucket>/rule/12/12-34_v7.pdf"}}
照会の記録は doc_kind を inquiry にし、根拠の条(basis_clause)と版(basis_ver)、回答の状態(answer_state)を持たせます。 answer_state は current(根拠の条が現行のまま)、superseded(回答の後に根拠の条が改定された)、exception(個別の判断)、unknown(根拠不明)の4つです。公式ページでは、取り込めるファイルの上限は200MBで、一度に100,000ファイルまで取り込めるとされています。
要領の PDF は、データストアを作るときに文書の分割とレイアウトの解析を有効にします。 公式ページでは、レイアウトの解析は PDF の段落・表・見出しを検出するとされています。必要書類は表で書かれていることが多いので、表の説明を付ける設定も有効にします。 分割はデータストアを作ったあとに切り替えられず、見出しを各チャンクに付ける includeAncestorHeadings は既定で無効です。条の見出しが本文から離れないよう、作るときに有効にします。
AIへ渡す前に整形する
- 数字の並びを伏せる … 事情の文から、7桁以上の数字の並び(口座番号・電話番号)を
*に置き換えます - 名前の入力を止める … 画面に「名前は入れない」と出し、敬称の付いた語があれば送信の前に職員に確かめます
- 編の特定 … 手続の種類から、検索する編の候補を決めます(「払戻し(代理人)」なら払戻し・取引時確認・代理人の届出の編)
- 現行の版の条件 … 今日の日付で、施行日が今日以前で廃止日が今日より後の条に絞る条件を組み立てます
- 照会の記録の条件 … 同じ手続の種類で、
answer_stateがunknown以外の記録に絞ります
4番目の廃止日は、空にせず 9999-12-31 を入れておきます。 公式ページでは、日付の項目は ISO 8601 の文字列で、<= や >= で比べられるとされています。空の項目は比べられないので、「まだ廃止されていない」を遠い日付で表します。
絞り込みの条件は、たとえば次のようになります(公式ページの書き方による)。
filter(案内する扱い):
doc_kind: ANY("rule")
AND procedure: ANY("proxy_withdraw", "kyc", "proxy_notice")
AND effective_from <= "2026-10-28" AND effective_to > "2026-10-28"
filter(過去の照会の一覧):
doc_kind: ANY("inquiry")
AND procedure: ANY("proxy_withdraw")
AND answer_state: ANY("current", "superseded", "exception")
公式ページでは、ANY は指定した値のどれかに完全に一致するときに真になり、AND・OR でつなげるとされています。絞り込みに使う項目は、スキーマの画面でインデックス可能にしておく必要があります。
一覧の側は、新しい回答を上に出します。 公式ページでは、日付の項目に FRESHNESS の型の上げ下げを掛けられ、7D や 30D のような期間の区切りで重みを変えられるとされています。回答した日(answered_at)に掛け、8年前の回答が先月の回答より上に来ないようにします。 そのうえで、中継プログラムが answer_state の順(current → exception → superseded)に並べ直します。
AIに処理させる
answer メソッドにさせるのは、現行の要領の条から、その手続の扱いと必要書類を、要領の言葉と順番のまま引用付きで短くまとめることです。 お客様の事情に当てはめた結論は出させません。
| 返させるもの | 中身 | 返せないときの扱い |
|---|---|---|
| 扱い | 受け付けてよい手続の範囲、受付の順序 | 見つからなければ「要領に記載なし」 |
| 必要書類 | 書類の名前、原本か写しか、有効期限の定め | 見つからなければ「必要書類の記載なし」 |
| 役席者の確認が要る旨 | 「役席者の承認を得る」などの記載 | 原文のまま引用する |
| 本部への照会を求める記載 | 「事務部に照会する」などの記載 | 原文のまま引用する |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| お客様の事情に当てはめて「受け付けられます」と書く | 判断は職員と役席者が行う |
| 過去の照会の回答を、扱いとして書く | 回答は版が古いか、個別の判断のことがある |
| 取引時確認が済んだかを書く | 確認の方法と結果は窓口と役席者が見る |
| 要領に無い書類を足す | 足した書類をお客様が用意してくることになる |
| 書類の有効期限を計算する | 期限の数え方は要領の原文で確かめる |
1行目がいちばん大事です。 「この場合は受け付けられますか」は、窓口でいちばん多く調べられることです。答えが「受け付けられます」と書くと、職員がそのままお客様に伝えてしまいます。 答えは要領の記載を引用するところまでにし、受け付けるかは職員と役席者が決めます。
指示内容を固定する
answer メソッドでは、回答の口調や詳しさをプロンプトの前置き(preamble)で指定できます。公式ページでは、前置きは回答の質に大きく影響しうるとされています。前置きを次のようにします。
あなたは信用金庫の営業店の窓口の職員のための、事務取扱要領の資料係です。
検索で見つかった事務取扱要領の条だけを根拠に、次の順で短く答えてください。
1. 扱い(受け付けてよい手続の範囲と、受付の順序)
2. 必要書類(書類の名前、原本か写しか、有効期限の定め)
3. 役席者の確認が要る旨の記載
4. 本部への照会を求める記載
守ること:
- 要領の言葉と順番のまま書いてください。言い換えないでください。
- お客様の事情に当てはめて、受け付けられる・受け付けられないと書かないでください。
- 要領に無い書類を足さないでください。「念のため」の書類も書かないでください。
- 書類の有効期限は、原文の書き方のまま写してください。日付を計算しないでください。
- 取引時確認が済んだかどうかは書かないでください。
- 見つからない項目は「記載なし」と書いてください。
- 条の番号と版を、各項目の末尾に括弧で書いてください。
- 検索結果に無いことを書かないでください。
「条の番号と版を末尾に書く」を入れるのは、職員が案内の前に原文を開くからです。 番号が見えれば、机の上の印刷の差し替えの漏れにも気づけます。
あわせて、answer メソッドの設定を次のようにします。
| 設定 | 値 | 理由 |
|---|---|---|
引用(includeCitations) | 有効 | 文ごとに出典を示させる。既定は無効 |
関連性の低い内容の無視(ignoreLowRelevantContent) | 有効 | 関係の薄い条から無理に答えさせない |
根拠の支持による絞り込み(groundingSpec の filteringLevel) | FILTERING_LEVEL_HIGH から試す | 支えの弱い答えを外す。未設定だと絞り込みが掛からない |
回答の言語(answerLanguageCode) | ja | 日本語で答えさせる |
絞り込み(filter) | 前処理で組み立てた案内する扱いの条件 | 現行の版の要領の条だけ |
公式ページでは、支持が基準に届かない答えは返されず、理由として LOW_GROUNDED_CONTENT が返るとされています。引用の位置は UTF-8 のバイト単位なので、日本語の答えに条の番号を差し込むときは文字の位置に直します。
出力形式を固定する
中継プログラムが、2つの呼び出しの応答を次の形にそろえて窓口の画面に渡します。
{
"lookup_id": "",
"branch_code": "",
"procedure": "",
"situation_text": "",
"answer_for_counter": "",
"skipped_reason": "",
"citations": [
{ "sentence": "", "doc_id": "", "clause": "", "rule_ver": "", "quote": "" }
],
"needs_officer": false,
"past_inquiries": [
{ "inquiry_id": "", "answered_at": "", "question": "", "answer": "",
"basis_clause": "", "basis_ver": "",
"answer_state": "current | superseded | exception" }
],
"inquiry_draft": "",
"session_id": ""
}
1つ目の理由は、answer_for_counter と past_inquiries を分けて持てることです。 お客様に案内する扱いと、過去の照会の回答が、画面の別の枠に出ます。 職員が過去の回答をいまの扱いとして読み上げる取り違えを、画面の作りで防ぎます。
2つ目は、answer_state で回答の印を出せることです。 superseded は灰色にして「回答の後に第12-34条が v6 から v7 に改定」と出し、exception は「個別の判断。前例にしない」と出します。消さずに見せるのは、本部への照会に前の回答を添えるためです。
3つ目は、needs_officer を答えと別に持てることです。 引用した条に「役席者の承認」の記載があるか、手続が相続・後見・取引時確認なら真にし、画面の上に「役席者に回す」を出します。
inquiry_draft は、答えが作られなかったときや、印の付いた回答しか無いときに埋めます。 手続の種類、事情、調べた条の番号、見つかった過去の回答の番号を並べた照会票の下書きです。事務部は、店がどこまで調べたかを読んで答えられます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 窓口の画面 | 中継プログラムの API | 申し出の受け取りと結果の表示 |
| Vertex AI Search | answer メソッドと search メソッドの API | 答え、引用、過去の照会の一覧 |
| Cloud Storage | 要領の条と照会の記録の写し | 引用した箇所の原文の表示 |
| 照会の記録 | 毎晩の書き出し | 新しい回答の追加と、印の付け直し |
| 事務連絡 | 改定の一覧の登録 | 現行の版と、照会の記録の印 |
照会票は、いまどおり事務部の受付に送ります。 画面の下書きを職員が直して送る形にし、送るかどうかは職員が決めます。 事務部は回答を照会の記録に登録するときに、根拠の条と版、個別の判断かどうかを入れます。この入力が、次の店の検索の質になります。
夜間の処理は、事務連絡の改定の一覧を読み、照会の記録の basis_clause と突き合わせます。 根拠の条の現行の版が basis_ver より新しく、改定の施行日が回答した日より後なら、answer_state を superseded に書き換え、メタデータを差し替えて取り込み直します。
人が確認する
- 条の番号と版を見る … 画面に出た条の番号と版が、手続の種類に合っているかを見ます
- 役席者の印を見る … 印があれば、案内する前に役席者に回します
- 引用の原文を見て案内する … 必要書類は、要領の言葉のまま案内します
- 過去の回答の印を見る …
supersededとexceptionの回答を、いまの扱いとして伝えません - 見つからなければ照会する … 下書きを直して本部に照会し、お客様に折り返しの時期を伝えます
2番目を省かないでください。 相続・後見・代理人の払戻しは、誰に払い戻すかを誤ると取り戻せない手続です。 引用が正しくても、受け付けるかは役席者が事情を聞いて決めます。
目標は、1,200件をならして1件4分です。 条の番号を見て、原文を開いて、案内のメモを作る時間です。お客様を待たせる時間が、要領を探す時間から、原文を確かめる時間に変わります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 手続の種類が一覧に無い | 「その他」で送り、全部の編から探す。結果に関係なく照会票の下書きを出す |
| 答えが作られなかった(支持が低い) | 答えを出さず、過去の照会の一覧と照会票の下書きだけを出す |
| 現行の版の条が見つからない | 「要領に記載なし」と出し、本部への照会を促す |
過去の回答が superseded と exception だけ | 一覧には出すが、照会票の下書きを出す |
| 事情の文に名前が残っている | 送信の前に止め、名前を消してもらう |
| 改定の施行日の前後で扱いが分かれる | 施行日が今日以前の版だけで答え、翌日以降に施行の版があれば画面に出す |
| 取引時確認に関わる不審な点がある | 検索を待たず、役席者に知らせる。 画面には理由を書かない |
| 検索が応答しない | いまどおり要領の PDF を開き、役席者か本部に聞く |
6行目は、事務連絡が施行日より前に配られるために起きます。 施行を待つ版がある条は画面に「〇月〇日から改定」と出し、来月に手続を進めるお客様に伝えるかを職員が決めます。
7行目の「画面に理由を書かない」は、窓口の画面がお客様から見えることがあるからです。 疑わしい取引の届出に関わることは、窓口の画面にも検索の記録にも書かず、いまどおり役席者に口頭で知らせる流れに任せます。
記録を残す
- 申し出(手続の種類、事情の文、店の番号、職員、日時)
- 絞り込みの条件、answer メソッドと search メソッドの応答の全文、引用した条と版
- 案内したことと、役席者に回したかどうか
- 送った照会票と、本部の回答の照会の記録の番号
- 夜間の処理で
supersededに書き換えた照会の記録と、その理由になった改定
最後の行が、いまは残っていない記録です。 どの改定でどの回答が古くなったかを、事務部が追えます。
04実装レベルの3段階
半自動化で、1件10分が7分ほどになります。 要領を探す時間は減りますが、事務連絡で改定を確かめることと、過去の照会を役席者に聞く作業が残ります。本格構成で4分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を進める前に、照会の記録の根拠の条と版の付け方を決めてください。 決まっていないと、付ける人ごとに「個別の判断」の線引きがばらつき、前例として出てはいけない回答が一覧の上に来ます。
05工数削減シミュレーション
導入後 1,200件 × 4分 ÷ 60 = 80 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 営業店が20〜40店ほどあり、窓口でふだん扱わない手続を受けるたびに、事務取扱要領の冊子や PDF をめくり、分からなければ役席者や本部の事務部へ電話で聞いている信用金庫・信用組合・労働金庫・農協の信用事業。本部への照会と回答が照会票や表計算のファイルで数年分残っていて、同じ質問が別の店から何度も来ている場合。要領の改定を事務連絡で知らせており、改定の前の回答が店に残ってしまう場合。Google Cloud を使っている、または使い始められる場合。
- 営業店が数店で、窓口の職員が全員ベテランの場合。本部への照会の記録が残っておらず、要領も紙の冊子だけで版が分からない場合。内部の規程で、事務の規程や照会の記録を外部のクラウドに置けない場合。なお、取引時確認が済んだかの判断、疑わしい取引に当たるかの判断、相続や後見で誰に払い戻すかの判断は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 過去3か月の照会の記録から、よく来る手続を5種類選ぶ(相続、代理人の払戻し、成年後見、氏名の変更、外国籍の口座の開設など)
- その5種類の要領の編を条ごとに分け、版と施行日を付けて、Vertex AI Search のデータストアを作る
- 同じ5種類の過去の照会の記録から40件を選び、根拠の条と版、個別の判断かどうかを事務部の経験者が付けて取り込む(改定の前の回答と、個別の判断を必ず混ぜる)
- 40件の質問を問い合わせ文にし、answer メソッドを短いスクリプトで呼んで、答えと引用を見る
- 答えの扱いと必要書類が、いまの要領と合うかを事務部が突き合わせる
40件のうち、改定の前の回答の中身が答えに出た件数を最初に数えます。 1件でもあれば、絞り込みの条件と answer_state の付け方を直してから先へ進みます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| いまの要領どおりの扱いと必要書類が、条の番号付きで出た | 窓口の画面と夜間の印付けの連携に進む |
| 改定の前の扱いや、個別の判断が答えに出た | 絞り込みの条件と印の付け方を直す |
| 必要書類が表から拾えない | 表の説明の設定と、条の分け方を見直す |
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 改定の前の回答をいまの扱いとして案内する | 根拠の条と版を照会の記録に持たせ、夜ごとに印を付け直す |
| 個別の判断が前例として広まる | exception の印を付け、答えの根拠に使わない |
| 「受け付けられます」と答えに書かれる | 前置きで禁じ、役席者の印を別に出す |
| 要領に無い書類が答えに足される | 前置きで禁じ、引用の無い文を外す |
| 廃止日の無い条が絞り込みから落ちる | 廃止日を空にせず 9999-12-31 を入れる |
| 8年前の回答が一覧の上に来る | 回答した日に新しさの上げ下げを掛け、状態の順で並べ直す |
| 必要書類の表が検索に当たらない | 表の説明の設定を有効にし、条ごとに分ける |
| お客様の名前が検索に入る | 画面で止め、数字の並びを伏せる |
| 来月施行の改定を案内し損ねる | 施行を待つ版を画面に出す |
| 根拠不明の記録が多くて一覧が空になる | 直近2年分とよく来る手続から付け直す |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 事務取扱要領、事務連絡、照会の記録(お客様の事情を含む)、窓口の職員が入れた事情の文です。相続・後見・代理人の事情は、お客様の家族の状況が分かる情報になります。
- 取引時確認の判断を人に残す … 犯罪による収益の移転防止に関する法律の第4条は、特定事業者が特定取引を行うに際して、本人特定事項、取引を行う目的、職業や事業の内容などの確認を主務省令で定める方法で行うことを求めています。答えは要領の記載の引用にとどめ、確認が済んだかは窓口の職員と役席者が書類を見て決めます
- 疑わしい取引に関わることを画面と記録に出さない … 同じ法律の第8条第4項は、疑わしい取引の届出を行おうとすること又は行ったことを、顧客等やその関係者に漏らしてはならないとしています。届出の手順に関わる要領の編は、窓口の画面の検索の対象に入れず、別の場所で役席者だけが見ます
- 名前と口座番号を入れない … 画面で止め、照会の記録からも書き出しの段で消します
- データの置き場所を確かめる … 公式ページでは、データストアの場所は
globalのほかus、euのマルチリージョンで、日本のリージョンは載っていません。 内部の規程と外部委託の管理の決まりに照らして決めます - 見せる範囲を文書で分ける … 役席者だけに見せる編は、窓口の画面のデータストアに入れません。文書ごとの閲覧の制御を使うなら、公式の手順でデータストアを作るときに決める必要があります
- 答えをお客様に見せない … 窓口の画面は職員が見るもので、画面をお客様に向けたり、答えを印刷して渡したりしません
誤りが起きた場合のリスクは、改定の前の書類を案内してお客様に再来店を頼むことと、払い戻してはいけない相手に払い戻してしまうことの2つです。 前者は版の絞り込みと照会の記録の印で、後者は前置きの禁止と役席者の印、役席者の判断で防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:役席者に回す手続と、照会の記録に付ける項目を決める
事務部と営業店の役席者で、窓口で案内してよい範囲と、必ず役席者に回す手続を決め、文書にします。あわせて、照会の記録に付ける根拠の条・版・個別の判断かどうかの書き方を決めます。
2週目:よく来る5種類の手続の編を条ごとに分ける
要領の5つの編を条ごとの PDF に分け、版と施行日と廃止日を付けます。廃止日の無い条には 9999-12-31 を入れます。
3週目:40件で試す
第8章の手順でデータストアを作り、40件の質問で答えと引用を確かめます。改定の前の回答と個別の判断が答えに出ていないかを最優先で見ます。
4週目:照会の記録の付け直しを始める
事務部の経験者が、直近2年分の照会の記録に根拠の条と版を付け始めます。今日からの新しい回答には、登録のときに必ず付けます。
2か月目: 要領の全編を取り込み、窓口の画面で使い始めます。3か月目以降: 過去の照会の一覧、夜間の印付け、照会票の下書きを足し、1件10分が何分になったかを実測します。異動してきたばかりの職員が、要領の言葉のまま必要書類を案内でき、古い回答と個別の判断を前例にせずに本部へ照会できるようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
answer メソッドが検索結果から回答を作り、文ごとの引用を付けられること(includeCitations の既定は無効)。セッションの ID を渡して続けて問えること。結果を先に見せたいときなどは search メソッドと一緒に使うこと。searchParams に filter と boostSpec を渡せること。filteringLevel の値と、届かない答えが LOW_GROUNDED_CONTENT で返されないこと。引用の位置が UTF-8 のバイト単位であること。前置き(preamble)が回答の質に大きく影響しうること。Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること | Google Cloud: Get answers and follow-ups | 2026-10-28 |
絞り込みに使う項目をインデックス可能にすること。ANY が完全一致であること。AND・OR でつなげること。日付の項目を ISO 8601 の文字列と比較の演算子で比べられること | Google Cloud: Filter search for structured or unstructured data | 2026-10-28 |
日付の項目に FRESHNESS の型の上げ下げを掛け、7D・30D のような期間で重みを変えられること。上げ下げの値が -1〜1 であること | Google Cloud: Boost search results | 2026-10-28 |
非構造のデータのメタデータが JSON Lines(NDJSON)で、各行に id・structData または jsonData・content の mimeType と uri を持つこと。ファイルの上限が200MB、一度に100,000ファイルまで取り込めること | Google Cloud: Prepare data for ingesting | 2026-10-28 |
レイアウトの解析が PDF の段落・表・見出しを検出し、表に説明を付ける設定があること。文書の分割をデータストアの作成後に切り替えられないこと。includeAncestorHeadings の既定が無効であること | Google Cloud: Parse and chunk documents | 2026-10-28 |
データストアの場所が global と、us・eu のマルチリージョンで、日本のリージョンの記載が無いこと | Google Cloud: Agent Search locations | 2026-10-28 |
| 特定事業者が特定取引に際して本人特定事項・取引を行う目的・職業や事業の内容などを確認すること(第4条第1項)。疑わしい取引の届出を行おうとすること又は行ったことを顧客等やその関係者に漏らしてはならないこと(第8条第4項) | e-Gov 法令API: 犯罪による収益の移転防止に関する法律 | 2026-10-28 |
受け付けるかどうか、取引時確認が済んだか、誰に払い戻すかは、自社の事務取扱要領と役席者・本部の判断で行ってください。 本記事は、上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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