海外の競合企業の決算説明会の英語の録音と文字起こしを日本語に訳し、売上の動き・見通し・投資の方針を経営企画の比較メモにまとめる
海外の競合や主要顧客が開く英語の決算説明会を、話者と時刻を付けて日本語に訳します。売上の動き・見通し・投資の方針・質疑の論点を英語の原文を添えて取り出し、前の四半期の比較メモと並べます。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude/Gemini
- 連携・自動化
- Google Apps Script/Python
- 対象業界
- IT・SaaS/その他/商社/製造
- 対象部門
- 経営企画
- 対象業務
- 比較検討/要約
- 主な課題
- データ分析に時間がかかる/人手が足りない/属人化している
- AIで行う処理
- 翻訳
- 主な効果
- 判断支援/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 半自動化
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 必須
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 予定表で今週の説明会を確かめ、IRのページから録音・資料・(あれば)文字起こしを取ってくる
- 録音を聞きながら、または文字起こしを読みながら、要点を英語でメモする
- 大事な部分を日本語に訳し、数字を資料と照らす
- 前の四半期の比較メモを開き、見通しと投資の方針が前回からどう変わったかを書き出す
- 比較メモを書き、比較表に売上と見通しの数字を写す
- 経営企画部長に比較メモを回す
- 人担当者が説明会の録音(音声ファイル)か公開された文字起こしを、IRのページから取って受付フォルダに入れる。資料のPDFも同じフォルダに入れる
- 自動毎朝8時にスクリプトが受付フォルダを確かめ、新しいファイルを見つける
- 自動音声は Gemini API の Files API に上げ、文字起こしはテキストのまま渡す
- 自動Gemini API が、話者と時刻を付けて英語を日本語に訳す(訳文の各段落に英語の原文を添える)
- 自動Gemini API が、訳と原文から、売上の動き・見通し・投資の方針・質疑の論点を取り出し、決めた形のJSONで返す
- 自動スクリプトが、取り出した数字が英語の原文に書かれているかを照らす
- 自動スクリプトが、前の四半期の比較メモのJSONを引き、項目ごとに前回と今回を並べる
- 自動比較メモの下書きと比較表の行の案を共有フォルダに置き、担当者に知らせる
- 人担当者が、数字と見通しの言い回しを時刻で原文に戻って確かめ、自社への示唆を書き足す
- 人経営企画部長に回す
各工程の詳しい説明を読む
- 予定表で今週の説明会を確かめ、IRのページから録音・資料・(あれば)文字起こしを取ってくる
- 録音を聞きながら、または文字起こしを読みながら、要点を英語でメモする
- 大事な部分を日本語に訳し、数字を資料と照らす
- 前の四半期の比較メモを開き、見通しと投資の方針が前回からどう変わったかを書き出す
- 比較メモを書き、比較表に売上と見通しの数字を写す
- 経営企画部長に比較メモを回す
(a)1回で半日かかる。 60分の説明会を聞き、聞き返し、訳して、メモにまとめると3時間です。月12回で36時間、聞き取れる2名の仕事の4分の1近くになります。 決算が集中する月は、説明会から1週間たっても比較メモが出ないことがあります。
(b)訳が担当者の解釈になる。 「We remain cautious on the second half」を「下期は慎重」と書く人もいれば、「下期は悪化の見通し」と書く人もいます。比較メモには訳だけが残り、元の言葉が残りません。 経営会議で「本当にそう言ったのか」と聞かれると、担当者が録音を聞き直します。
(c)前の四半期と比べていない回がある。 前回の比較メモを開く時間が無い月は、今回の内容だけを書いて終わります。相手が見通しを下げたのか、前回から同じことを言っているのかが、メモから読めません。
(d)質疑が落ちる。 説明の部分を訳したところで時間が尽き、後半の質疑はメモが薄くなります。 ところが、アナリストが突いた弱みや、経営陣が答えをはぐらかした論点は、質疑にしか出てきません。
- 【人】 担当者が説明会の録音(音声ファイル)か公開された文字起こしを、IRのページから取って受付フォルダに入れる。資料のPDFも同じフォルダに入れる
- 【自動】 毎朝8時にスクリプトが受付フォルダを確かめ、新しいファイルを見つける
- 【自動】 音声は Gemini API の Files API に上げ、文字起こしはテキストのまま渡す
- 【自動】 Gemini API が、話者と時刻を付けて英語を日本語に訳す(訳文の各段落に英語の原文を添える)
- 【自動】 Gemini API が、訳と原文から、売上の動き・見通し・投資の方針・質疑の論点を取り出し、決めた形のJSONで返す
- 【自動】 スクリプトが、取り出した数字が英語の原文に書かれているかを照らす
- 【自動】 スクリプトが、前の四半期の比較メモのJSONを引き、項目ごとに前回と今回を並べる
- 【自動】 比較メモの下書きと比較表の行の案を共有フォルダに置き、担当者に知らせる
- 【人】 担当者が、数字と見通しの言い回しを時刻で原文に戻って確かめ、自社への示唆を書き足す
- 【人】 経営企画部長に回す
6番目の照合が、この設計の分かれ目です。 翻訳で一番起きる失敗は、数字の桁と単位の取り違えです。「$1.2 billion」が「1.2億ドル」になれば、経営会議の議論が10倍ずれます。訳した数字の横に英語の表記を残させ、その英語の表記が原文に本当にあるかをプログラムで見ます。
9番目で担当者が書くのは、自社への示唆です。 AIには書かせません。相手の発言を自社にどう読むかは、自社の受注や価格の事情を知っている人にしか書けないからです。
02今回想定するシステム構成
決算説明会の予定表(36社・四半期ごと) ▼ 担当者がIRのページから録音・文字起こし・資料を取り、受付フォルダへ ▼【トリガー】毎朝8時(新しいファイルがあれば動く) Python のスクリプト ├──▶ 音声:Files API に上げる(48時間で消える) ├──▶ 文字起こし:テキストのまま渡す ▼ Gemini API(Interactions) │ 1回目:話者・時刻つきの英日対訳(段落ごとに原文を添える) │ 2回目:比較メモの項目を取り出す(構造化出力) │ 売上の動き/見通し/投資の方針/質疑の論点 ▼ Python のスクリプト ├──▶ 訳した数字の英語の表記が原文にあるかを照らす ├──▶ 前の四半期の比較メモのJSONと並べる ▼ 比較メモの下書き(Word)と比較表の行の案 → 担当者に通知 ▼【担当者が時刻で原文に戻って確かめ、示唆を書き足す】 経営企画部長へ
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 処理 | Gemini API(音声の聞き取りと英日の対訳、比較メモの項目の取り出し) | Claude API、OpenAI API |
| 連携 | Python(受付フォルダの確認、Files API へのアップロード、数字の照合、前回との並べ替え) | Google Apps Script |
| 保管 | 共有フォルダ(録音・文字起こし・資料・比較メモ・JSON) | - |
新しく足すのは、Gemini API の利用と、受付フォルダを見るスクリプトだけです。 比較メモの様式と比較表は、いまのものを使います。
Gemini API を選ぶ理由は、音声をそのまま渡せることです。 公式のページでは、音声の文字起こしと翻訳、話者の聞き分けができるとされ、1回のプロンプトで最大9.5時間の音声を扱えます。文字起こしを公開していない会社の説明会でも、録音があれば同じ流れに乗せられます。
音声は Files API に上げて渡します。 公式のページでは、合計20MBを超えるリクエストには Files API を使うよう案内され、Files API は1ファイル2GBまで、プロジェクトあたり20GBまで、保存は48時間で、利用は無料とされています。60分の説明会の音声は20MBを超えることが多いので、Files API を標準の経路にします。
使うのは有料の枠です。 Gemini API の規約では、無料の枠では入力と出力が製品の改善に使われ、人が読むことがあるとされ、機密の情報や個人の情報を入れないよう書かれています。有料の枠ではプロンプトと応答を製品の改善に使わないとされています。決算説明会そのものは公開の情報ですが、比較メモの項目の決め方や前の四半期のメモは社内の情報なので、有料の枠で動かします。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
毎朝8時に、受付フォルダに新しいファイルがあるかを確かめて動かします。 説明会は米国の時間で開かれることが多く、日本では夜から早朝です。録音や文字起こしがIRのページに載るのは、説明会の当日から数日後と会社によって違うので、取れた日に担当者がフォルダに入れ、翌朝にまとめて処理します。
ファイルを取ってくるのは担当者です。 IRのページの作りは会社ごとに違い、録音の再生だけで保存ができない会社や、利用条件で取り込みを断っている会社もあります。どの会社の何を取ってよいかは、担当者が利用条件を見て決めます(第13章)。スクリプトはIRのページを見に行きません。
ファイル名は「会社コード_決算期_四半期_種類」にそろえます。 例えば C07_FY2026_Q3_audio.mp3、C07_FY2026_Q3_transcript.txt、C07_FY2026_Q3_slides.pdf です。スクリプトはファイル名から会社と四半期を決め、前の四半期の比較メモを引きます。 名前がそろっていないファイルは処理せず、担当者に戻します。
処理が終わったファイルは処理済みフォルダへ移します。 移すのは比較メモの下書きができたときだけで、受付フォルダに残っている数が、そのまま未処理の数になります。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 説明会の音声 | 経営陣の説明と質疑の録音(MP3などの音声ファイル) | IRのページ(担当者が取る) |
| 公開された文字起こし | 会社が載せた説明会の英語の文字起こし(ある会社だけ) | 同上 |
| 説明資料 | 説明会で使われたスライドのPDF | 同上 |
| 前の四半期の比較メモ | 前回の項目ごとの英語の原文・訳・時刻(JSON) | 共有フォルダ |
| 会社の台帳 | 会社コード、正式名、決算期、報告の通貨、セグメントの名前、経営陣の名前と役職 | 共有フォルダの表 |
| 用語集 | 業界の用語と社内での訳し方(例:design win、book-to-bill、inventory digestion) | 同上 |
質を決めるのは、下の2つです。 会社の台帳に決算期と報告の通貨が無ければ、「Q1」がいつの四半期か、「$」がどの通貨かを取り違えます。用語集が無ければ、同じ「design win」が回ごとに「採用獲得」「デザインイン」「設計採用」と揺れ、 比較メモを並べて読めなくなります。
経営陣の名前と役職を台帳に持つのは、話者を当てるためです。 説明会では司会が「Now I'll turn it over to our CFO」と言って話者が替わります。音声から話者を聞き分けても、誰が話したかの名前は、台帳と司会の言葉で決めます。
データの取得方法を決める
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 音声 | 受付フォルダ → Files API に上げる | 1回目の聞き取りと対訳 |
| 文字起こし | 受付フォルダ → テキストのまま入力に入れる | 1回目の対訳(音声より優先) |
| 説明資料 | 受付フォルダのPDF | 数字の照合の補助 |
| 前回の比較メモ | 共有フォルダのJSON(会社コードと四半期で引く) | 前回との並べ替え |
| 台帳と用語集 | 共有フォルダの表 | 話者の名前、決算期、通貨、訳語の指定 |
音声と文字起こしの両方があるときは、文字起こしを使います。 会社が載せた文字起こしは、数字と固有名詞が会社の確かめた表記になっているからです。音声は文字起こしが無い会社の代わりで、音声から作った原文には「音声から聞き取り」という印を付け、担当者が確かめる範囲を広げます。
音声の扱いは公式のページに沿います。 音声は1秒あたり32トークンとして数えられ、16Kbpsに落とされ、複数のチャンネルは1つにまとめられるとされています。60分の説明会なら約11万5千トークンです。2つの音声を1つにまとめる必要はなく、説明会ごとに1回ずつ投げます。
Files API に上げたファイルは48時間で消え、上げた側からダウンロードすることもできません。 元の録音は受付フォルダ(処理後は処理済みフォルダ)に残しておき、やり直すときはもう一度上げます。
AIへ渡す前に整形する
- ファイル名の確認 … 会社コード・決算期・四半期・種類がそろっているかを見ます。そろっていなければ担当者に戻します
- 音声の形式の確認 … 公式のページで対応とされる形式(WAV、MP3、AAC、FLAC、M4A など)かを見ます。動画で取れたものは、音声だけを取り出します
- 大きさの確認 … 20MBを超えれば Files API に上げます。2GBを超えるものは、説明と質疑の区切りで分けます
- 文字起こしの整え … 会社の文字起こしにある免責の定型文(将来の見通しに関する注意書き)と、オペレーターの案内の部分に印を付け、訳の対象から外します
- 台帳から当てる情報を引く … 決算期、報告の通貨、セグメントの名前、経営陣の名前と役職、用語集を、その会社の分だけ取り出します
- 前回の比較メモを引く … 同じ会社の直前の四半期のJSONを引きます。無ければ「初回」とします
4番目の免責の定型文を外すのは、毎回同じ長い文を訳させないためです。 「This call contains forward-looking statements...」は毎回ほぼ同じで、訳しても比較メモに使うところがありません。 ただし、定型文の後に会社が特に付け足した注意(特定の訴訟や規制への言及)は外さず、印を付けて訳させます。
AIに処理させる
1回目にさせるのは、話者と時刻を付けた英日の対訳です。 段落ごとに、話者、開始の時刻(MM:SS)、英語の原文、日本語の訳を並べます。公式のページでは、音声の中の位置を MM:SS の形で指して扱えるとされています。
2回目にさせるのは、対訳から比較メモの項目を取り出すことです。
| 取り出すもの | 取り出し方 | 取り出せないときの扱い |
|---|---|---|
| 売上の動き | セグメント・地域ごとに、増減と理由として述べられた言葉を原文で引く | 「言及なし」 |
| 次の四半期の見通し | 数値の幅と、言い回し(cautious、strong など)を原文のまま引く | 見通しを出していなければ「見通しの開示なし」 |
| 通期の見通し | 前回から上げたか、据え置いたか、下げたかの言葉を引く | 変更の言葉が無ければ「変更の言及なし」 |
| 設備投資と研究開発 | 金額、時期、対象の地域や工場、分野を引く | 「言及なし」 |
| 質疑の論点 | 質問の要旨と、経営陣が答えた部分・答えなかった部分 | 答えがあいまいなら「回答があいまい」 |
| 自社に関わる語 | 台帳に登録した自社の製品分野・顧客・地域の名前が出た箇所 | 「該当なし」 |
右端の「言及なし」と「見通しの開示なし」を分けるのが大事です。 前回まで見通しを出していた会社が今回出さなかったなら、それ自体が大きな変化です。何も書かずに空欄にすると、「言わなかった」と「拾い漏れた」の区別がつきません。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 数字を円に換える・暦年の四半期に直す | 為替と決算期の読み替えは、比較表の側で決まった方法で行う |
| 「mid-single digits」などを数値に直す | 幅の取り方は人によって違う。言葉のまま残す |
| 前回と今回の変化の良し悪しを書く | 自社への読み方は担当者が書く |
| 自社への示唆を書く | 自社の事情を知らないAIが書くと、もっともらしい推測が残る |
| 資料の数字で発言の数字を直す | 言い間違いも含めて発言の記録。食い違いは印を付けて人に回す |
1行目と2行目がいちばん起きやすい失敗です。 頼まなくても、親切に「約150億円」と書き添えます。換算の基準日と為替の値をどれにするかは比較表の決まりで、訳の中で行うと回ごとにばらつきます。
指示内容を固定する
あなたは経営企画部の調査担当を手伝い、海外企業の決算説明会を
日本語に訳して、比較メモの項目を取り出す立場です。
渡した音声または文字起こし、会社の台帳、用語集、前の四半期の比較メモだけを
見てください。他の報道や一般の知識で補わないでください。
【1回目:対訳】
- 段落ごとに、話者、開始の時刻(MM:SS)、英語の原文、日本語の訳を出してください。
- 話者の名前と役職は、台帳と司会の紹介の言葉で決めてください。
決められなければ「話者不明」としてください。
- 用語集にある語は、用語集の訳語を使ってください。
- 数字は訳の中で、英語の表記をかっこで添えてください。
例:売上高は12億ドル($1.2 billion)
- 文字起こしが渡されたときは、その文言を原文としてそのまま使ってください。
音声から聞き取ったときは、source を "audio" にしてください。
【2回目:比較メモの項目】
- 売上の動き、次の四半期の見通し、通期の見通し、設備投資と研究開発、
質疑の論点、自社に関わる語を、決めた形で取り出してください。
- 各項目には、根拠の英語の原文と時刻を必ず付けてください。
- 前の四半期の比較メモに同じ項目があれば、前回の原文を並べ、
変化を「上げた/据え置いた/下げた/新たに言及/言及をやめた/判断できない」
から選んでください。迷ったときは「判断できない」を選んでください。
【厳守事項】
- 金額を円に換えないでください。暦年の四半期に直さないでください。
- 「mid-single digits」「low teens」などを数値に直さないでください。
訳は「1桁台半ば」「10%台前半」のように言葉のまま、原文を添えてください。
- 述べられていない項目は「言及なし」、見通しを出していなければ
「見通しの開示なし」としてください。推測で埋めないでください。
- 発言と説明資料の数字が食い違っても、発言を直さないでください。
食い違いとして印を付けてください。
- 変化の良し悪しや、自社への示唆を書かないでください。
- アナリストの名前は出力しないでください。所属の会社名だけにしてください。
【会社の台帳】{company_profile}
【用語集】{glossary}
【前の四半期の比較メモ】{previous_memo}
「数字に英語の表記をかっこで添える」は、6番目の照合のための指示です。 添えられた「$1.2 billion」という文字列が原文にあるかは、プログラムで確かめられます。添えさせなければ、訳の数字が正しいかを人が1つずつ聞き直すことになります。
「迷ったときは判断できない」を入れているのは、変化の向きを取り違えると比較メモの意味が逆になるからです。 「通期の見通しは据え置き、ただし下限に寄る」を「据え置いた」とだけ書くと、経営会議は相手の弱気を読み落とします。
出力形式を固定する
2回目の出力は、構造化出力でJSONにします。 Gemini API の公式ページでは、Interactions の response_format に mime_type を application/json とし、schema にJSONスキーマを渡す形になっています。対応するのは JSON Schema の一部で、enum や required が使えます。
{
"company_code": "C07",
"fiscal_period": "FY2026 Q3",
"source": "transcript | audio",
"items": [
{
"category": "revenue | guidance_next_q | guidance_fy | capex_rd | qa | own_keyword",
"status": "mentioned | not_mentioned | not_disclosed",
"ja": "",
"quote_en": "",
"speaker": "",
"timestamp": "MM:SS",
"previous_quote_en": "",
"change": "raised | maintained | lowered | new | dropped | unclear",
"figures": [ { "ja": "12億ドル", "en": "$1.2 billion" } ]
}
],
"conflicts_with_slides": [ { "quote_en": "", "slide_page": 0, "note": "" } ]
}
1つ目の理由は、status と change を enum で縛れることです。 「言及なし」と「見通しの開示なし」が自由文で書かれると、比較表で数えられません。決めた値だけを返させれば、四半期をまたいで並べられます。
2つ目は、figures で数字だけを別に持てることです。 スクリプトは figures の en を原文の中で探し、見つからない数字に印を付けます。 音声から聞き取った回は原文も聞き取りなので、照合が通っても source が audio なら人が時刻で聞き直します。
3つ目は、前回と今回が同じ行にあることです。 previous_quote_en と quote_en を並べて読めば、相手が言い回しをどう変えたかを英語のまま比べられます。
公式のページは、構文として正しいJSONでも値が正しいとは限らないので、アプリ側で確かめるよう書いています。 6番目の照合は、その確かめの一つです。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 受付フォルダ | スクリプトが毎朝確かめる | 新しいファイルを見つける |
| Gemini API | Files API へのアップロードと Interactions の呼び出し | 対訳と比較メモの項目 |
| 前回の比較メモ | 共有フォルダのJSONを読む | 前の四半期の原文と変化 |
| 比較メモの下書き | Word のひな形に流し込む | 項目ごとの訳・原文・時刻・前回 |
| 比較表 | 行の案を別のシートに書く | 担当者が確かめてから本表に写す |
| 通知 | 担当者へのメール | 下書きの場所と、照合で印が付いた数 |
比較表の本表には書き込みません。 比較表は四半期をまたいで経営会議に出す表で、一度入った数字の誤りは何四半期も残ります。 スクリプトが書くのは「行の案」のシートまでで、本表に写すのは担当者です。
人が確認する
この構成では、全件を担当者が確かめます。 比較メモは経営会議の材料になるからです。
- 照合で印が付いた数字を先に見る … 原文に英語の表記が見つからなかった数字を、時刻で戻って確かめます
- 見通しの言い回しを原文で読む …
guidance_next_qとguidance_fyのquote_enを英語のまま読み、訳が強すぎないか弱すぎないかを見ます - 変化の向きを確かめる …
changeが前回の原文と今回の原文から見て正しいかを見ます。unclearは担当者が決めます - 音声から聞き取った回は範囲を広げる … 数字と固有名詞を時刻で聞き直します
- 自社への示唆を書き足す … ここだけは最初から担当者が書きます
2番目を省かないでください。 訳の強弱は、数字よりも誤りに気づきにくい部分です。「慎重」と「悪化」の違いは、経営会議の判断を変えます。
目標は、1回あたり60分です。 聞き取りと訳がなくなり、確かめる場所が時刻と印で示されることで、見る場所が決まります。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 文字起こしも録音も公開されていない | この構成の対象から外し、資料と開示書類から担当者が書く |
| 録音の音質が悪く、聞き取れない箇所が多い | 聞き取れない箇所に印を付けさせ、source を audio にして人が聞き直す |
| 説明会が英語以外(中国語・ドイツ語など)で行われた | 原文の言語を記録させ、訳を出させる。原文の確認ができる人がいなければ、比較メモに「原文未確認」と書く |
| 話者が決められない | 「話者不明」のまま出し、担当者が台帳と照らして直す |
| 前の四半期の比較メモが無い | 「初回」とし、change を出さない |
| 会社が決算期を変えた | 台帳を直してから流す。前回との並べ替えは担当者が対応を決める |
| 発言と資料の数字が食い違う | conflicts_with_slides に出させ、担当者が会社の開示書類で確かめる |
| JSONが決めた形で返らない | 同じ入力で1回だけやり直し、だめなら担当者に知らせる |
| Files API に上げた後に48時間が過ぎた | ファイルが消えているので、もう一度上げてからやり直す |
上から3行目は、アジアの企業で起きます。 英語の同時通訳つきで開く会社もあり、通訳の英語を原文として扱うと、通訳の言い換えが「経営陣の言葉」として残ります。 通訳の音声か原語の音声かを、比較メモに書いておきます。
記録を残す
- 元の音声・文字起こし・資料と、取ってきた日とIRのページの場所
- 1回目の対訳と2回目のJSONの全文
- 照合で印が付いた数字と、担当者が確かめた結果
- 担当者が直した箇所 … どの訳を、どう変えたか
- 比較メモの最終版と、経営企画部長に回した日
- 会社ごとの「音声から聞き取り」の回数と、直した箇所の数
担当者が直した箇所は、用語集を育てる材料になります。 同じ語の訳を何度も直しているなら、その語を用語集に足せば次の回から直す手間が消えます。
2回目のJSONは、次の四半期の「前回の比較メモ」になります。 担当者が直した後の版を保存し、次の回はその版を引きます。 直す前の版を引くと、前回の誤りが今回の比較に入ります。
04実装レベルの3段階
本記事の想定は半自動化です。 1回180分が60分になるのは、聞き取りと訳と転記が無くなり、担当者が確かめる場所が印で示されるからです。 本格構成は、半自動化を2四半期回してからにします。 会社をまたいで並べるには、用語集と change の付け方が回ごとにぶれないことが前提です。ぶれたまま集計すると、業界の変化ではなく訳し方の揺れを数えることになります。
05工数削減シミュレーション
導入後 12件 × 60分 ÷ 60 = 12 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 海外の上場企業と競合し、または海外の上場企業を主要な顧客・仕入先に持ち、相手の四半期ごとの決算説明会の内容を経営会議の材料にしている製造業・IT企業・商社。追っている企業が数十社あり、決算期のずれで毎月どこかの説明会が開かれている場合。英語の説明会を聞き取れる担当者が限られ、要点をまとめる作業が特定の人に偏っている場合。前の四半期の見通しと今回の実績・見通しを並べて読む形にそろえたい場合。
- 追っている海外企業が数社で、年に数回の説明会しかない場合。説明会の録音や文字起こしが公開されておらず、または公開元の利用条件で社内での翻訳や機械での処理が認められていない場合。有料の配信サービスの文字起こしを使っていて、その契約で外部のAIに渡すことが認められていない場合。なお、相手の発言から自社の戦略をどう変えるかの判断は経営企画と経営陣が行います。この構成は説明会の内容を訳して並べるもので、判断は代替しません。
07最小構成で試す方法
- 前の四半期と今回の四半期の両方で文字起こしが公開されている会社を3社選ぶ
- 3社の今回の文字起こしを、手元のAIサービスの画面に1社ずつ貼る
- 「段落ごとに話者・英語の原文・日本語の訳を並べてください。数字には英語の表記をかっこで添えてください。mid-single digits などは数値に直さないでください」と指示する
- 続けて、前回の文字起こしも貼り、「見通しと投資の方針について、前回と今回の原文を並べ、変化を上げた/据え置いた/下げたで示してください」と指示する
- 出てきたものを、当時の比較メモと突き合わせる
3社は必ず、当時の比較メモがある回にしてください。 担当者が書いた比較メモに無かった変化が出るか、訳の強弱が当時の担当者の書き方とずれていないかを見ます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時の比較メモに無かった変化が出た | スクリプトとJSONに進む |
| 数字が円に換えられた、幅が数値に直された | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| 話者がほとんど決められない | 台帳の経営陣の名前と役職が先 |
1行目が出ることは多いはずです。 質疑の後半は、人が時間切れで薄くしがちな部分で、AIは最後まで同じ密度で訳します。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 「billion」と「億」の桁を取り違える | 英語の表記をかっこで添えさせ、原文にあるかをプログラムで照らす |
| 頼んでいないのに円に換えられる | 指示で禁じ、figures に円の表記が無いかを後段で見る |
| 「mid-single digits」が「5%」になる | 言葉のまま訳させ、数値に直すことを禁じる |
| 「言及なし」と「見通しの開示なし」が混ざる | status を enum で縛る |
| 話者がずれる | 台帳に経営陣の名前と役職を持たせ、司会の紹介の言葉で決めさせる |
| 同じ語の訳が回ごとに揺れる | 用語集を持たせ、直した訳を次の四半期までに足す |
| 前回の比較メモが直す前の版になる | 担当者が直した後のJSONを保存し、次の回はそれを引く |
| Files API のファイルが消えている | 48時間で消える。元の録音を手元に残し、やり直すときは上げ直す |
| 無料の枠で動かしてしまう | 無料の枠は入力が製品の改善に使われる。有料の枠のキーだけを使う |
| AIに示唆まで書かせたくなる | 訳と並べ替えまで。 示唆は担当者が書く |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも、訳す途中で数字の意味を変えてしまう失敗です。人も同じ失敗をしますが、英語の表記を添えて原文と照らす決まりを入れれば、機械で見つけられる失敗に変わります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 海外企業が公開した決算説明会の音声・文字起こし・資料、社内で作った会社の台帳と用語集、前の四半期の比較メモです。相手の発言は公開の情報ですが、どの会社を追い、どう読んでいるかは自社の情報です。
- 公開元の利用条件を先に見る … IRのページの録音や文字起こしには、会社ごとに利用条件があります。社内での翻訳や機械での処理、保存が認められているかを、会社ごとに台帳に記録してから取り込みます。 有料の配信サービスの文字起こしは、その契約で外部のAIに渡せるかを確かめます
- 訳を社外に出さない … 比較メモと対訳は社内の検討用です。相手の発言の訳を社外の資料や営業の場で使わない決まりにします
- 有料の枠で動かす … Gemini API の規約では、無料の枠の入力と出力は製品の改善に使われ、人が読むことがあるとされています。有料の枠ではプロンプトと応答を製品の改善に使わないとされ、違反の検知のために限られた期間記録されるとされています
- 自社への示唆をAIに渡さない … 示唆は担当者が比較メモに書き足すもので、AIへの入力には入れません。 前回の比較メモのJSONも、示唆の欄を除いて渡します
- アナリストの名前を出力しない … 質疑の論点は所属の会社名までにし、個人の名前は比較メモに残しません
- 経営会議の判断を自動で確定させない … 変化の向きは担当者が確かめ、相手の発言から自社の戦略をどう変えるかは経営企画と経営陣が決めます
4番目は、この構成の境界線です。 AIに渡すのは公開の情報と、訳し方の決まりだけにします。自社の受注の見通しや価格の方針を入力に入れないことで、外部のサービスに渡る情報の範囲がはっきりします。
誤りが起きた場合のリスクは、数字の桁や単位を取り違えることと、見通しの言い回しの強弱を取り違えることの2つです。 前者は英語の表記との照合で防ぎ、後者は担当者が原文で読むことで防ぎます。どちらも、訳の横に原文と時刻があるから確かめられます。
10まず何から始めるか
1週目:会社の台帳と用語集を作る
36社について、正式名、決算期、報告の通貨、セグメントの名前、経営陣の名前と役職を表にします。あわせて、IRのページの録音と文字起こしの利用条件を見て、取り込んでよいかを記録します。用語集は、過去の比較メモで訳し方が揺れていた語から30語ほどを並べます。
2週目:3社で試す
前回と今回の文字起こしが公開されている3社を選び、手元のAIサービスで対訳と前回との比較を出させます。当時の比較メモに無かった変化が出るか、数字が勝手に換算されていないかを最優先で見ます。
3週目:比較メモの項目と変化の値を決める
売上の動き、見通し、投資の方針、質疑の論点、自社に関わる語の6つの項目と、変化の6つの値を、経営企画部長と決めます。比較メモのひな形も、この項目の並びに直します。
4週目:スクリプトを組む
受付フォルダを見て Gemini API を呼び、対訳とJSONを出すところまで作ります。この時点では数字の照合だけを足し、前回との並べ替えはまだ入れません。
2か月目: 前回との並べ替えと比較メモの下書きを足し、36社のうちその月に説明会のある会社をすべて流します。3か月目以降: 1回180分が何分になったかを実測し、直した訳を用語集に足します。担当者が録音を聞き直さずに、比較メモの原文と時刻だけで経営会議の質問に答えられるようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
音声の文字起こしと翻訳、話者の聞き分けができること。対応する音声の形式(WAV、MP3、AIFF、AAC、OGG、FLAC など)。1回のプロンプトで最大9.5時間の音声を扱えること。音声が1秒あたり32トークンとして数えられ、16Kbpsに落とされ、複数のチャンネルが1つにまとめられること。リクエストの合計が20MBを超えるときは Files API を使うこと。音声の位置を MM:SS の形で指せること。例が Interactions(/v1beta/interactions)で書かれていること | Google AI for Developers: Audio understanding | 2026-10-12 |
構造化出力が Interactions の response_format(mime_type に application/json、schema にJSONスキーマ)で指定されること。JSON Schema の一部(enum、required、properties など)に対応すること。構文として正しいJSONでも値はアプリ側で確かめる必要があること | Google AI for Developers: Structured output | 2026-10-12 |
| Files API が1ファイル2GBまで、プロジェクトあたり20GBまで、保存が48時間で、利用が無料であること。上げたファイルはダウンロードできないこと | Google AI for Developers: Files API | 2026-10-12 |
| 無料の枠では入力と出力が製品の改善に使われ人が読むことがあり、機密や個人の情報を入れないよう書かれていること。有料の枠ではプロンプトと応答を製品の改善に使わず、違反の検知のために限られた期間記録されること | Google AI for Developers: Gemini API Additional Terms of Service | 2026-10-12 |
説明会の録音や文字起こしを社内で翻訳・保存してよいかは、公開元の利用条件と自社の法務の確認で決めてください。 本記事は公開されている製品の仕様で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
自社の業務に使えるAI活用候補を整理します
このユースケース(UC-1291)についてのご相談はこちらから。
