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派遣のコーディネーターから出る「この業務・この期間で派遣してよいか」の質問に、業務取扱要領と社内の手順書を根拠に答え、判断の要るものを法務へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

コーディネーターから出る「この業務・この期間で派遣してよいか」の質問に、労働者派遣事業関係業務取扱要領と社内の手順書を検索し、該当箇所を引用して答えます。判断の要る案件は、理由を付けて法務へ回します。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
IT・SaaS/人材
対象部門
営業/法務
対象業務
内容確認・チェック/情報検索
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
判断支援/品質標準化/検索時間短縮
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
100h/月
AI導入後
40h/月
想定削減
60%
年間削減
720h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. コーディネーターが派遣先から案件を受け、業務の内容と期間を聞き取る
  2. 迷う案件は、社内の手順書のPDFを開いて探す
  3. 手順書で分からなければ、業務取扱要領のPDFを開いて探す
  4. それでも分からなければ、法務課にチャットで聞く
  5. 法務課が要領を探して答える。急ぎのものは電話で答える
  6. コーディネーターが派遣先へ回答し、案件を登録する
導入後(After)
  1. 人コーディネーターが相談のフォームに、業務の内容、派遣先の業種、雇用の期間(開始日・終了日)、派遣の期間、スタッフの属性(派遣先を離職して1年以内か、60歳以上か)を入れて質問する
  2. 自動中継プログラムが、入力の項目から回す条件(日雇派遣・適用除外業務・離職後1年以内など)を判定する
  3. 自動Vertex AI Search の answer メソッドが、現行の版の要領と手順書だけを検索し、該当箇所を引用して答える
  4. 自動回す条件に当たる、または答えが作られなかった質問は、法務課の待ち行列に入れる。答えと引用を添えて渡す
  5. 人回す条件に当たらない質問は、コーディネーターが引用を確かめて派遣先へ回答する
  6. 人法務課は、回ってきた質問だけを見て判断し、答えを記録する
各工程の詳しい説明を読む
  1. コーディネーターが派遣先から案件を受け、業務の内容と期間を聞き取る
  2. 迷う案件は、社内の手順書のPDFを開いて探す
  3. 手順書で分からなければ、業務取扱要領のPDFを開いて探す
  4. それでも分からなければ、法務課にチャットで聞く
  5. 法務課が要領を探して答える。急ぎのものは電話で答える
  6. コーディネーターが派遣先へ回答し、案件を登録する

(a)要領のどこにあるかが分からない。 「建設業務」は第2にありますが、現場事務所の事務がそれに当たるかの説明は、何ページも先です。 コーディネーターは2番目と3番目で時間を使い、結局4番目に行きます。

(b)法務課の2名に質問が集まる。 月400件の質問のうち、法務課が受ける件数は多く、2名の時間の多くが、要領の該当箇所を探して貼り付けることに使われています。 2名が会議の日は、案件の登録が止まります。

(c)版が改まっても、古い知識で答える。 要領は改正されるたびに差し替わりますが、コーディネーターのパソコンには、数年前に保存した版のPDFが残っています。 令和8年10月の改正のように指針の改正に合わせた修正が多い年は、古い版で調べた答えが外れます。

(d)答えが人によって違う。 同じ「2週間の応援」の質問に、ある支店では「日雇派遣になるので不可」、別の支店では「雇用の期間が31日以上なら可」と答えています。どちらが正しいかは、雇用の期間と派遣の期間を分けて聞かないと決まりません。

  1. 【人】 コーディネーターが相談のフォームに、業務の内容、派遣先の業種、雇用の期間(開始日・終了日)、派遣の期間、スタッフの属性(派遣先を離職して1年以内か、60歳以上か)を入れて質問する
  2. 【自動】 中継プログラムが、入力の項目から回す条件(日雇派遣・適用除外業務・離職後1年以内など)を判定する
  3. 【自動】 Vertex AI Search の answer メソッドが、現行の版の要領と手順書だけを検索し、該当箇所を引用して答える
  4. 【自動】 回す条件に当たる、または答えが作られなかった質問は、法務課の待ち行列に入れる。答えと引用を添えて渡す
  5. 【人】 回す条件に当たらない質問は、コーディネーターが引用を確かめて派遣先へ回答する
  6. 【人】 法務課は、回ってきた質問だけを見て判断し、答えを記録する

2番目が、この設計の分かれ目です。 雇用の期間が30日以内か、業務が建設や警備に当たる言葉を含むかは、入力の項目から計算と照合で決まります。 AIの答えが「派遣できます」と読めても、条件に当たれば法務が見ます。

1番目で項目を分けて入れてもらうのは、第3章(d)の対策です。 「2週間の応援」という書き方では、雇用の期間と派遣の期間の区別がつきません。フォームで分けて聞けば、日雇派遣に当たるかを機械で判定できます。

02今回想定するシステム構成

構成図
業務取扱要領(章ごとのPDF・現行の版)/派遣元指針・派遣先指針/社内の手順書
   │  版・章・文書の種類をメタデータとして付ける
   ▼
Cloud Storage ── 文書とメタデータ(JSON Lines)
   ▼
Vertex AI Search(Agent Search)── レイアウト パーサーで読み取り・チャンク分割
   ▲
   │  answer メソッド(現行の版で絞り込み、引用つき)
中継プログラム(Cloud Run)
   ▲   ├──▶ 回す条件の判定(期間の計算・業務の区分・スタッフの属性)
   │   └──▶ 法務課の待ち行列(答え・引用・回した理由を添える)
相談のフォーム(業務・期間・スタッフの属性を分けて入力)
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、フォーム・検索・判定・待ち行列をつなぐ)Node.js で同じものを書く
保管Cloud Storage(文書とメタデータ)、BigQuery(質問・答え・法務の判断の記録)─

手順書と要領のPDFは、新しく足すものではありません。 足すのは、厚生労働省のページから現行の版の章ごとのPDFを取り、版・章・文書の種類を付けて取り込む作業です。

中心になるのは、Vertex AI Search の answer メソッドです。 Google の公式ページでは、Vertex AI Search は Agent Search へ改称中とされています。answer メソッドは検索と回答の生成を1回の呼び出しで行い、答えに引用(citations)と参照(references)を付けて返します。 参照には、根拠になったチャンクの本文と、文書の uri・title が入ります。

要領は、厚生労働省のページで章ごとのPDFと全体版のPDFが公開されています。 章ごとに取り込むと、答えの引用が「第2 適用除外業務等」のように章で示され、コーディネーターが原文を開きやすくなります。 全体版は取り込みません。同じ文が二重に引用されるからです。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

コーディネーターが相談のフォームを送ったときに動きます。 自由記述だけのチャットにせず、項目を分けたフォームにします。

項目入れ方使い道
業務の内容自由記述(派遣先から聞いたとおり)検索の質問文
派遣先の業種選択(建設、警備、医療機関、港湾、その他)回す条件
雇用の期間開始日と終了日日雇派遣の判定
派遣の期間開始日と終了日回答の参考
派遣先を離職して1年以内かはい/いいえ/分からない回す条件
60歳以上の定年退職者かはい/いいえ/分からない回す条件の例外の確認

「分からない」を選べるようにするのは、推測で「いいえ」を選ばせないためです。 分からないものは、分からないまま法務へ回します。

要領の版の更新も、別のきっかけで動かします。 厚生労働省の要領のページを月に一度確かめ、適用の版が変わっていたら、法務課が新しい版の取り込みを指示します。 版の切り替えは自動にしません。適用日の前後で答えを使い分ける必要があるからです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
業務取扱要領第1〜第15の章ごとのPDF(現行の版)厚生労働省のページ
改正の概要版ごとの主な改正箇所の一覧厚生労働省のページ
指針派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針、派遣先が講ずべき措置に関する指針など厚生労働省のページ
社内の手順書受けない業務の一覧、確認の手順、法務へ回す基準ファイルサーバー
メタデータ文書の種類、版(適用日)、章、現行かどうか新しく作る一覧
相談の内容フォームの各項目相談のフォーム

質を決めるのは、5行目のメタデータの「現行かどうか」です。 旧い版を同じデータストアに残しておくと、版の違う2つの記載が並んで引用されます。 現行の版だけを検索の対象にし、旧い版は別のデータストアに置きます。

社内の手順書には、要領の章と対応させる見出しを付けておきます。 「第2 適用除外業務等に関する社内の取扱い」のように書いてあれば、要領の引用と手順書の引用が並んだときに、どちらの話かが読めます。

Step3

データの取得方法を決める

要領と指針は、厚生労働省のページから章ごとのPDFを保存して Cloud Storage に置きます。 メタデータは JSON Lines で渡し、1行に id、structData、content(mimeType と uri)を持たせます。

{"id": "youryou-r0810-dai2", "structData": {"doc_type": "youryou", "version": "2026-10-01", "chapter": "第2 適用除外業務等", "is_current": true}, "content": {"mimeType": "application/pdf", "uri": "gs://bucket/youryou/r0810/dai2.pdf"}}
項目値の例使い道
doc_typeyouryou(要領)/guideline(指針)/internal(社内の手順書)答えの並べ方
version2026-10-01答えに版を添える
chapter第2 適用除外業務等引用の見出し
is_currenttrue検索の絞り込み(必須)

検索の呼び出しでは、searchSpec.searchParams.filter に現行の版だけを指定します。 絞り込みに使う項目は、スキーマで「インデックス可能」にします。公式ページでは、インデックス可能にしても絞り込みが保証されるわけではないとされているので、取り込んだ後に、旧い版が混ざらないことを試します。

読み取りはレイアウト パーサーで行います。 要領には表(期間制限の例外や様式の一覧)が多く、表を表として読めることが効きます。includeAncestorHeadings を有効にし、チャンクに章と節の見出しを付けます。 要領の途中のチャンクは「ただし、~の場合はこの限りでない」のような文だけになりがちで、見出しが無いと、何の例外かが分かりません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 現行の版の確認 … 要領のページで適用の版を確かめ、章ごとのPDFを保存します
  2. 全体版を除く … 全体版のPDFは取り込みません
  3. メタデータの付与 … 1ファイルずつ、文書の種類・版・章・現行かどうかを付けます
  4. 手順書の見出しの整理 … 要領の章と対応する見出しを付けます
  5. 旧い版の移動 … 版が改まったら、旧い版の is_current を false にし、別のデータストアに移します
  6. 期間の計算 … フォームの雇用の開始日と終了日から雇用の期間の日数を、派遣の開始日と終了日から派遣の期間の日数を計算し、2つの比も出します
  7. 回す条件の判定 … 第7章「AIに何をさせるのか」の表の条件を、入力の項目で判定します

6番目と7番目は、AIを呼ぶ前にプログラムで行います。 日数の数え方や業種の区分は、AIの答えに左右されない場所に置きます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、現行の版の要領と手順書から、質問の業務と期間に関係する記載を探し、引用つきで示すことです。 回す条件は、プログラムが先に判定します。

回す条件(プログラムで判定)要領の該当箇所(例)扱い
雇用の期間が30日以内第6の日雇労働者についての労働者派遣の禁止(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者)法務へ。例外に当たるかは法務が確かめる
派遣先の業種が建設、または業務の内容に工事・作業の言葉第2の建設業務法務へ
派遣先の業種が警備、または業務の内容に警備・誘導の言葉第2の警備業法第2条第1項各号に掲げる業務法務へ
派遣先が医療機関、または業務の内容に医療関係の資格の言葉第2のその他の業務(医療関係業務)法務へ
派遣先の業種が港湾第2の港湾運送業務法務へ
雇用の期間は31日以上だが、派遣の期間がごく短い第6の日雇派遣の禁止の範囲(社会通念上明らかに適当とはいえない労働契約)法務へ
派遣先を離職して1年以内が「はい」か「分からない」第6の離職した労働者についての労働者派遣の禁止法務へ
上のどれにも当たらない─答えと引用をコーディネーターへ

要領の第2は、適用除外業務として、港湾運送業務、建設業務、警備業法第2条第1項各号に掲げる業務、その他政令で定める業務を挙げています。 業務の一部に建設業務に当たるものが含まれている場合も違法な労働者派遣になると説明されています。だから「建設会社の現場事務所での事務」は、事務だから可と答えず、法務へ回します。

第6は、日雇派遣を原則禁止し、日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者の派遣を禁止の範囲としています。 労働契約の期間が31日以上であれば、労働者派遣契約の期間が30日以内でも対象にならない旨の説明があります。雇用の期間と派遣の期間をフォームで分けて聞くのは、このためです。

ただし、同じ箇所には続きがあります。 派遣の期間が1日しかないのに31日以上の労働契約を結ぶような、社会通念上明らかに適当とはいえない労働契約は、日雇派遣の禁止の適用を免れることを目的とした行為と解されるとされています。「雇用は31日以上だから可」とだけ答えると、この続きが抜けます。 表の6行目の条件は、雇用の期間に比べて派遣の日数が極端に少ないものを拾うためのもので、どこからを「極端に少ない」とするかの線は、法務課が決めます。

させないこと理由
「派遣できます」「派遣できません」と言い切る個別の案件の判断は、業務の実態を確かめて法務が行う
日雇派遣の例外に当たるかの判断業務の種類や労働者の条件の確認が要る
日数の計算プログラムが行う
旧い版の記載で答える検索の対象を現行の版に限る
要領と手順書が食い違うときにどちらかを選ぶ両方を示し、手順書が厳しい場合は手順書に従う旨を添える
Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの answerGenerationSpec.promptSpec.preamble に、次の指示を入れます。

あなたは人材派遣会社の法務課の補助です。コーディネーターからの
派遣の可否に関する質問に、検索された業務取扱要領・指針・社内の手順書の
記載だけを根拠に答えてください。

【答え方】
- 質問の業務と期間に関係する記載を、引用を付けて示してください。
- 要領の記載には、章の名前を添えてください。
- 社内の手順書に記載がある場合は、要領の記載の後に
  「社内の取扱い」として示してください。
- 要領と社内の手順書で扱いが違う場合は、両方を示し、
  「社内の手順書の扱いに従ってください」と書いてください。

【してはいけないこと】
- 「派遣できます」「派遣できません」「問題ありません」と言い切らないでください。
  答えの最後は「この記載に当たるかの判断が必要な場合は法務課へ」としてください。
- 日数を数えたり、期間を計算したりしないでください。
- 例外に当たるかどうかを判断しないでください。
  例外の記載があれば、その記載を示すだけにしてください。
- 検索された記載に無いことを、一般的な知識で補わないでください。
  見つからないときは「該当する記載が見つかりませんでした」とだけ答えてください。

「問題ありません」まで禁じているのは、言い切りの言い回しが1つではないからです。 「派遣できます」だけを禁じると、「特に制限はありません」「差し支えありません」と書きます。コーディネーターは、その一文を派遣先への回答にそのまま使います。

呼び出しの他の指定は、includeCitations と ignoreLowRelevantContent を有効にし、groundingSpec の filteringLevel を FILTERING_LEVEL_HIGH にします。 根拠づけの弱い答えを出さず、答えが出なかったものは法務へ回る件数として見えるようにします。

Step7

出力形式を固定する

answer メソッドの応答と、プログラムの判定を合わせて、次の形にします。

{
  "question_id": "",
  "form": {
    "job_description": "",
    "client_industry": "",
    "employment_days": 0,
    "left_client_within_1y": "yes | no | unknown"
  },
  "route_rules_hit": ["daily_dispatch", "construction", "security", "medical", "port", "ex_employee"],
  "answer_text": "",
  "skipped_reasons": [],
  "citations": [
    { "doc_type": "youryou | guideline | internal", "version": "", "chapter": "", "quote": "" }
  ],
  "route_to_legal": true,
  "legal_decision": ""
}

1つ目の理由は、route_rules_hit で回した理由を法務に渡せることです。 法務課は「なぜ自分のところに来たか」を最初に知りたいので、当たった条件を先頭に並べ、要領の該当箇所の引用を添えて渡します。

2つ目は、version で答えの版を必ず示せることです。 引用の referenceId から参照を引き、参照の文書のメタデータから版と章を取ります。答えの末尾には「令和8年10月1日適用版による」と必ず出します。

3つ目は、引用の位置の扱いです。 citations の startIndex と endIndex は、文字数ではなく UTF-8 のバイト数で返ります。答えの文に引用の印を差し込むときは、バイト列で切ってから文字に戻します。

コーディネーターに表示する答えの例です。

【回した理由】雇用の期間が14日(30日以内)のため、法務課へ回しました。
【関係する記載】
日雇労働者(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者)について、
労働者派遣は原則として禁止されています。
[業務取扱要領 第6 派遣元事業主の講ずべき措置等]
例外の記載があります。例外に当たるかは法務課が確かめます。
【社内の取扱い】短期の応援は、法務課の確認後に登録する。[社内手順書 3.2]
【版】令和8年10月1日適用版による

回した理由を先頭に出すのは、コーディネーターが派遣先に「確認中」と伝える根拠になるからです。 理由が分かれば、派遣先へ雇用の期間を延ばせるかを聞き返すなど、法務課の答えを待つ間にできることが見えます。

4つ目は、legal_decision に法務の判断を残せることです。 同じ型の質問が次に来たとき、法務課が過去の判断を引けます。ただし過去の判断は検索の対象に入れません。 個別の案件の判断が、要領の記載のように引用されることを避けるためです。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
相談のフォームフォームの送信を中継プログラムが受ける項目を分けた質問の受付
Vertex AI Searchanswer メソッド(servingConfigs/default_search:answer)現行の版で絞った検索と回答
法務課の待ち行列表または課題管理の仕組み回した質問・理由・答え・引用
BigQuery記録の書き込み質問・判定・答え・法務の判断
チャット通知答えをコーディネーターへ、回した質問を法務課へ

中継プログラムは、絞り込みと回す条件の判定を受け持つ唯一の場所です。 現行の版の絞り込みも、30日の判定も、ここで行います。ここを1か所にしておくと、版が改まったときや社内の基準が変わったときに、直す場所が1つで済みます。

Step9

人が確認する

回す条件に当たらない質問は、コーディネーターが引用を確かめて派遣先へ回答します。 答えの文をそのまま貼らず、引用された要領の箇所を開いて読みます。

  1. 版を確かめる … 答えの末尾の版が、現行の版か
  2. 引用を開く … 要領の章のPDFの該当箇所を読む
  3. 社内の取扱いを確かめる … 手順書の引用があれば、そちらに従う
  4. 迷ったら回す … 引用を読んでも当てはまるか分からないものは、法務課へ回すボタンで回す

法務課は、回ってきた質問だけを見ます。 判断を legal_decision に書き、コーディネーターへの答えは法務課の名前で出します。 回ってきた質問のうち、要領の記載だけで足りたものは、回す条件の見直しの材料にします。

Step10

例外に対処する

起きること対応
フォームの日付が欠けている送信を受け付けない。期間が無いと日雇派遣の判定ができない
NO_RELEVANT_CONTENT などが返る答えを表示せず法務課へ
要領の版が改まった直後法務課が新しい版を取り込むまで、答えの末尾に「新しい版の確認中」と出す
適用日の前後をまたぐ案件法務課へ回す。どちらの版で答えるかは法務が決める
手順書と要領で扱いが違う両方を示し、手順書に従う旨を出す
「分からない」が選ばれた法務課へ回す

3行目と4行目は、毎年どこかで起きます。 要領は改正があるたびに差し替わり、令和8年10月の改正のように指針の改正と同時に適用されることがあります。 版の切り替えを法務課の指示で行うのは、このためです。

Step11

記録を残す

  • 質問の日時、コーディネーター、フォームの各項目、計算した雇用の期間の日数
  • 回す条件の判定の結果(どの条件に当たったか)
  • answer メソッドの応答の全文と、検索の対象にした版
  • 法務課の判断と、その根拠にした要領の箇所
  • コーディネーターが派遣先へ回答した日時

2つ目の判定の結果は、回す条件を見直す材料になります。 回したのに要領の記載だけで足りた条件は、条件を狭められます。逆に、回さなかった質問から問題が出たら、その条件を足します。

04実装レベルの3段階

最小構成:要領と手順書をAIの画面に読み込ませて質問する / 該当箇所の探索
半自動化:上記+要領と手順書を版のメタデータ付きで Vertex AI Search に取り込み、法務課がコンソールで検索して答える / 法務課の探す時間
本格構成:上記+相談のフォームから回す条件を判定し、条件に当たらない質問にはコーディネーターへ直接答え、当たるものだけを法務課へ回す / 質問の受付から回し先までの全体

半自動化で、1件15分が10分程度になります。 法務課が探す時間は縮みますが、すべての質問が法務課を通る形は変わりません。本格構成で6分になり、この段階が本記事の想定です。 差が出るのは、回す条件に当たらない質問が、法務課を通らずに答えまで届くからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の段階で、法務課が「これは自分が見なくてよかった」と思う質問の型が分かります。それが回す条件の初期値になります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
30 名
月間件数
400 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
6 分
現在  400件 × 15分 ÷ 60 = 100 時間/月
導入後 400件 × 6分 ÷ 60 = 40 時間/月
月間削減時間
60h
削減率
60%
年間削減時間
720h
年間金額換算(時間単価2,800円)
202万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 支店が複数あり、派遣先から受けた案件が派遣してよいものかの確認を、コーディネーターが業務取扱要領を読むか法務の担当に聞いて行っている人材派遣会社。事務・製造・物流・ITなど職種が広く、適用除外業務の境目や日雇派遣の例外に当たる案件がときどき来る場合。社内の手順書がすでにある場合。
向いていない
  1. 派遣する職種が1〜2種類に限られ、可否に迷う案件がほとんど来ない場合。法務の担当がおらず、回した質問を受ける人がいない場合。なお、個別の案件を派遣してよいかの最終的な判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去3か月の法務課への質問から30問を選ぶ(建設・警備・短期の応援の質問を必ず入れる)
  2. 各質問について、法務課が当時答えた内容と根拠の箇所を並べる
  3. 厚生労働省のページから現行の版の要領の第2と第6のPDFを保存し、手順書とあわせて手元のAIサービスに読み込ませる
  4. 「この文書の記載だけを根拠に、関係する箇所を章の名前と引用で示してください。派遣できるかどうかを言い切らないでください。日数を計算しないでください」と指示し、30問を聞く
  5. 出てきた答えを、法務課の当時の答えと突き合わせる
出てきた内容判断
法務課と同じ箇所を引用したデータストアの構築に進む
「派遣できます」と言い切った指示の書き方で直る。言い切りの言い回しを全部禁じる
旧い版の知識で答えた読み込ませた版の確認が先。 版のメタデータを必ず付ける

30問のなかで、法務課の判断が要った質問を数えてください。 その割合が、本格構成で法務課に回る件数の見込みになります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
旧い版の記載が引用される現行の版だけを検索の対象にし、旧い版は別のデータストアに置く
全体版と章ごとのPDFが二重に引用される全体版は取り込まない
「派遣できます」と言い切る言い切りの言い回しを指示で禁じ、答えの最後を固定する
「2週間の応援」で日雇派遣の判定がぶれる雇用の期間と派遣の期間をフォームで分け、日数はプログラムで数える
「雇用は31日以上だから可」とだけ答える派遣の日数との比を出し、極端に短いものは法務へ回す
「現場事務所の事務」を事務だから可と答える業種と業務の言葉で回す条件を判定し、法務へ回す
例外の記載を、例外に当たると読んで答える例外の判断を禁じ、記載を示すだけにする
要領と手順書の扱いが食い違う両方を示し、手順書に従う旨を出す
何の例外か分からないチャンクが引用されるincludeAncestorHeadings で章と節の見出しを付ける
引用の位置がずれるstartIndex/endIndex は UTF-8 のバイト数。文字の位置に変換する
法務の過去の判断が要領のように引用される過去の判断は検索の対象に入れず、記録として別に引く

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 古い版の引用は、もっともらしいまま外れるので、引用を開いたコーディネーターにも気づかれません。 版のメタデータと絞り込みを、取り込みのたびに試してください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 業務取扱要領と指針(公開文書)、社内の手順書、そして相談のフォームに書かれる派遣先の名前、業務の内容、スタッフの属性(離職の有無、年齢の区分)です。

  1. 個別の案件の判断を機械に置かない … 派遣してよいかの最終的な判断は、業務の実態を確かめて法務課が行います。AIの答えは、根拠の箇所を探す道具です
  2. スタッフの個人情報をフォームに書かせない … 回す条件の判定に要るのは「離職して1年以内か」「60歳以上の定年退職者か」の区分だけです。氏名や生年月日は入れません
  3. 派遣先の情報の扱いを決める … フォームには派遣先の名前と業務の内容が入ります。記録の保存期間と、見られる人の範囲を決めます
  4. 版の切り替えを人が決める … 要領の改正は、適用日を境に答えを変える必要があります。切り替えを自動にせず、法務課の指示で行います
  5. 社内の手順書を正とする場面を明確にする … 要領で可能でも社内で受けない業務は、手順書の側が優先します。手順書の改定も、法務課の承認を経て取り込みます

誤りが起きた場合のリスクは、派遣してはならない案件を受けてしまうことです。 適用除外業務への派遣は、派遣元にとっても派遣先にとっても重い問題になります。だから境目の案件は、AIの答えの出来にかかわらず法務へ回る設計にします。

10まず何から始めるか

1週目:現行の版を集め、メタデータを付ける

厚生労働省のページから、令和8年10月1日適用版の要領の章ごとのPDFと、改正の概要、指針を保存します。社内の手順書とあわせて、1ファイルずつ文書の種類・版・章を付けます。

2週目:30問で試す

法務課への過去の質問から30問を選び、手元のAIサービスで聞きます。言い切っていないか、旧い版の知識で答えていないかを最優先で見ます。

3週目:回す条件を法務課と決める

日雇派遣、適用除外業務、離職後1年以内の3つを出発点に、業種の選択肢と業務の言葉の辞書を作ります。 最初は広めに作ります。

4週目:データストアを作り、法務課が使う

現行の版だけを対象にしたデータストアを作り、法務課が自分で検索して答える半自動化で運用します。旧い版が混ざらないことを確かめます。

2か月目: 相談のフォームと中継プログラムを作り、回す条件の判定を足します。回した質問のうち、要領の記載だけで足りたものを毎週数えます。3か月目以降: コーディネーターへ直接答える範囲を広げ、1件15分が何分になったかを実測します。回す条件を一度見直し、法務課に回る質問が判断の要るものだけになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-12/最終更新:2026-10-13
確認した内容情報源確認日
労働者派遣事業関係業務取扱要領が令和8年10月1日適用版に改められ、章ごとのPDFと全体版のPDF、改正概要が公開されていること厚生労働省: 労働者派遣事業関係業務取扱要領2026-10-12
令和8年10月1日の改正で、行政書士法改正(R8.1.1施行)に伴う修正、派遣元指針・派遣先指針の改正に伴う修正、労働者派遣法施行規則の改正に伴う修正などが行われたこと厚生労働省: 改正概要(令和8年10月1日適用版)(PDF)2026-10-12
港湾運送業務、建設業務、警備業法第2条第1項各号に掲げる業務、その他政令で定める業務(医療関係業務など)が適用除外業務とされ、労働者派遣事業を行ってはならないこと。業務の一部に建設業務が含まれる場合も違法な労働者派遣となること厚生労働省: 業務取扱要領 第2 適用除外業務等(PDF)2026-10-12
日雇労働者(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者)についての労働者派遣が原則禁止され、労働契約の期間が31日以上であれば対象にならないが、社会通念上明らかに適当とはいえない労働契約は禁止の適用を免れることを目的とした行為と解されること。派遣先を離職した後1年を経過しない労働者(60歳以上の定年退職者を除く)を当該派遣先へ派遣することが禁止されること厚生労働省: 業務取扱要領 第6 派遣元事業主の講ずべき措置等(PDF)2026-10-12
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドで filter・promptSpec.preamble・includeCitations・ignoreLowRelevantContent・groundingSpec の filteringLevel を指定できること。citations の startIndex・endIndex が UTF-8 のバイト単位であること。answerSkippedReasons に NO_RELEVANT_CONTENT などが返ることGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-12
メタデータの項目で検索を絞り込めること。絞り込みに使う項目をスキーマでインデックス可能にする必要があり、それでも絞り込みが保証されるわけではないことGoogle Cloud: Filter custom search with metadata2026-10-12
レイアウト パーサーが PDF の段落・表・見出しを検出すること。includeAncestorHeadings で上位の見出しをチャンクに付けられることGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-12

個別の案件を派遣してよいかは、自社の法務と、必要に応じて都道府県労働局や専門家に確かめてください。 本記事は上の公開資料で確認できた範囲だけを扱っています。日雇派遣の例外となる業務や労働者の条件は、本記事では列挙していません。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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