財務部がでんさいと手形の期日の一覧と口座の残高から、期日の資金の不足を判定し、入金予定の確かさを添えて担当に知らせる
毎朝、でんさいと手形の期日の一覧、口座ごとの残高、入金予定を読み込み、向こう10営業日の期日ごと・口座ごとに資金が足りるかを判定して、不足の見込みを財務の担当に知らせます。
- 生成AI
- ChatGPT/Claude
- 連携・自動化
- Make/n8n/Power Automate
- 対象業界
- 商社/建設/製造
- 対象部門
- 経理/財務
- 対象業務
- 内容確認・チェック/集計・分析
- 主な課題
- 判断に時間がかかる/期限・対応漏れが起きる/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 判定
- 主な効果
- 入力漏れ削減/判断支援/対応スピード向上
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 朝、担当が3つの銀行のインターネットバンキングで口座ごとの残高を確かめ、資金繰りの表に写す
- 各銀行のでんさいの画面で、向こう2週間の支払と受取の期日の一覧を見て、表に写す
- 会計システムと入金予定の表から、振込の入金予定と大口の支払を表に写す
- 期日ごと・口座ごとに、残高と入金と支払を足し引きする
- 入金予定のうち、遅れそうなものを営業のメモと連絡から探し、気になるものは営業に聞く
- 不足しそうな日があれば、振替や借入の相談を上席に上げる
- 人朝、担当が3つの銀行の画面から残高と期日の一覧のファイルを出力し、決まったフォルダに置く
- 自動決まった時刻にワークフローが動き、ファイルと入金予定の表と営業のメモを読む
- 自動Code ノードが期日の明細を口座と期日でそろえ、重複と期日の過ぎたものを外す
- 自動AIが入金予定の1件ずつについて、メモと連絡を基準に照らし、「確定」「見込み」「不確か」を判定する
- 自動Code ノードが、向こう10営業日の期日ごと・口座ごとに、確定だけの残高と見込みまでの残高を計算する
- 自動不足が出た日と口座について、Slack で担当に知らせる
- 人担当が判定と根拠を確かめ、不確かな入金は営業に確かめる
- 人不足の手当て(口座間の振替、借入、受取のでんさいの割引など)を上席と決めて実行する
各工程の詳しい説明を読む
- 朝、担当が3つの銀行のインターネットバンキングで口座ごとの残高を確かめ、資金繰りの表に写す
- 各銀行のでんさいの画面で、向こう2週間の支払と受取の期日の一覧を見て、表に写す
- 会計システムと入金予定の表から、振込の入金予定と大口の支払を表に写す
- 期日ごと・口座ごとに、残高と入金と支払を足し引きする
- 入金予定のうち、遅れそうなものを営業のメモと連絡から探し、気になるものは営業に聞く
- 不足しそうな日があれば、振替や借入の相談を上席に上げる
(a)写す作業が毎日ある。 3つの銀行の残高と期日の一覧を表に写すだけで、毎朝の時間の多くが消えます。写し間違いが1件あると、足りている日を不足と、不足の日を足りていると読みます。
(b)入金予定の確かさは担当の頭の中にある。 「この販売先はいつも期日どおり」「この案件は検収が遅れている」は、長く担当している人だけが知っています。担当が休んだ日は、予定日と金額だけで計算するしかありません。
(c)でんさいの支払は、期日に足りなければ取り返しがつかない。 でんさいネットの資料では、支払期日に口座間送金決済が行われなかった時点で支払履行遅滞となり、支払不能が生じた旨は支払期日の3銀行営業日後に通知されるとされています。6か月以内に2回目の支払不能が生じると、取引停止処分として貸出取引とでんさいの債務者としての利用が2年間停止されます。 不足に期日の前日に気づいても、打てる手は限られます。
(d)当日の受取を当てにしてしまう。 でんさいの受取は支払期日に入金されますが、でんさいネットの資料では、実際の入金時刻は支払企業の資金準備状況や金融機関ごとに異なるとされています。同じ日の受取で同じ日の支払をまかなう計算は、時刻の点で危うい計算です。
- 【人】 朝、担当が3つの銀行の画面から残高と期日の一覧のファイルを出力し、決まったフォルダに置く
- 【自動】 決まった時刻にワークフローが動き、ファイルと入金予定の表と営業のメモを読む
- 【自動】 Code ノードが期日の明細を口座と期日でそろえ、重複と期日の過ぎたものを外す
- 【自動】 AIが入金予定の1件ずつについて、メモと連絡を基準に照らし、「確定」「見込み」「不確か」を判定する
- 【自動】 Code ノードが、向こう10営業日の期日ごと・口座ごとに、確定だけの残高と見込みまでの残高を計算する
- 【自動】 不足が出た日と口座について、Slack で担当に知らせる
- 【人】 担当が判定と根拠を確かめ、不確かな入金は営業に確かめる
- 【人】 不足の手当て(口座間の振替、借入、受取のでんさいの割引など)を上席と決めて実行する
4番目と5番目を分けているのが、この設計の分かれ目です。 AIが判定するのは入金の確かさだけで、足し引きは Code ノードが行います。 AIに残高の見込みまで書かせると、桁を落としたり、合計を丸めたりした数字が、そのまま「足りる」の根拠になります。
8番目は人だけで行います。 この構成は不足の見込みを知らせるまでで、資金を動かす操作には一切つなぎません。
02今回想定するシステム構成
銀行の画面から出力した残高・期日の一覧(3行分) 入金予定の表 / 営業のメモ・財務への連絡 ▼【トリガー】Schedule Trigger(毎朝8時半) n8n ├──▶ Read/Write Files from Disk ── 出力ファイルを読む ├──▶ Extract from File ── CSV・XLSX を行にする ▼ Code ノード ── 口座・期日でそろえる/重複の除外 ▼ Basic LLM Chain(Claude:Anthropic Chat Model) │ + Structured Output Parser │ 入金予定ごとの判定(確定/見込み/不確か)と根拠 ▼ Code ノード ── 期日ごと・口座ごとの残高(確定だけ/見込みまで) ▼ 【人が確認】Slack ── 不足の見込みと根拠を担当へ ▼ 担当と上席が手当てを決めて実行
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| ワークフロー | n8n(Schedule Trigger、Read/Write Files from Disk、Extract from File、Code、Basic LLM Chain、Structured Output Parser) | Make、Power Automate |
| 生成AI | Claude(n8n の Anthropic Chat Model ノード) | OpenAI API |
| 保管 | 社内のファイルサーバー(出力ファイル)、入金予定の表、判定の記録 | PostgreSQL |
| 通知 | Slack(n8n の Slack ノード) | Microsoft Teams |
新しく足すのは、社内のサーバーで動かす n8n だけです。 銀行の画面には、この構成からはつなぎません。残高と期日の一覧は、担当が画面から出力したファイルを使います。 出力できる項目と形式は銀行ごとに違うので、最初に3行それぞれで確かめます。
n8n を社内で動かすのは、口座の残高と取引先ごとの期日が、そのまま会社の資金の状態を表すからです。 ファイルは社内のファイルサーバーに置き、n8n からは読み取りだけで見ます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
起点は Schedule Trigger です。 毎朝8時半に動かします。担当が残高と期日の一覧を出力し終えた時刻に合わせ、その日の手当てを午前中に決められる時刻にします。
ワークフローのタイムゾーンを必ず設定します。 公式のページでは、ワークフローにタイムゾーンが無ければインスタンスのタイムゾーンを使い、自社で動かすインスタンスの既定は America/New York とされています。期日の計算の「今日」がずれると、今日の期日を明日のものとして数えます。
Schedule Trigger は、ワークフローを保存して公開しないと動きません。 公式のページにそう書かれています。
夕方にもう1回動かします。 午後に入った営業の連絡で、翌日以降の入金の確かさが変わることがあるからです。夕方の回は入金予定の判定と残高の計算だけをやり直し、朝の結果と変わった日と口座だけを知らせます。
ファイルの置き忘れに備えます。 3つの銀行のどれかのファイルが当日の日付でなければ、計算をせずに「出力が古い」と知らせて止まります。 前日の残高で計算すると、昨日の引落しが残高に入っていない数字で「足りる」と出ます。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 口座の残高 | 銀行、口座、当日朝の残高 | 各銀行の画面から出力したファイル |
| でんさいの期日の一覧 | 支払か受取か、期日、金額、相手先、記録番号、口座 | 各銀行のでんさいの画面から出力したファイル |
| 手形の期日の一覧 | 受取手形の期日、金額、振出人、取立の口座 | 手形の管理の表 |
| 振込の入金予定と大口の支払 | 予定日、金額、相手先、口座、担当の営業 | 入金予定の表、会計システムの出力 |
| 営業のメモと連絡 | 入金予定ごとの営業のメモ、財務への連絡のメールの本文 | 入金予定の表のメモ欄、財務の共有のメールボックスの出力 |
| 判定の基準の表 | 「確定」「見込み」「不確か」とする条件 | 自社で用意する表 |
| 口座ごとの決まり | 最低限残す残高、営業日のカレンダー | 自社で用意する表 |
質を決めるのは、判定の基準の表です。 何をもって「確定」とするかを、財務部で先に決めて文にします。
| 判定 | 基準の例 |
|---|---|
| 確定 | 受取のでんさいで期日がその日。振込の場合は、入金済みの連絡が銀行から届いている |
| 見込み | 請求済みで、メモと連絡に遅れを示す記載が無い |
| 不確か | メモか連絡に「検収待ち」「分割」「相談中」「確認中」「遅れる」などの記載がある。または予定日が過去に2回以上ずれている |
受取手形は、基準の上では「見込み」として扱います。 残っている手形は少なくなりましたが、でんさいネットの資料では、2027年度初から電子交換所での手形・小切手の交換が廃止され、それ以降は電子交換所を介さない決済になるとされています。取立の流れが変わる時期の手形は、入金の日がこれまでどおりとは限らないので、取立の口座の銀行に入金の日を確かめるまで確定にしません。 振出人ごとに手形からでんさいへの切り替えの予定を聞いておくと、受取手形の行そのものが減っていきます。
受取のでんさいを「確定」にしても、当日の支払に当てるかは別に扱います。 第3章の(d)のとおり、入金の時刻は決まっていないので、同じ日の受取でしか足りない支払は「当日の受取待ち」として、確定だけで足りる場合と分けて知らせます。
データの取得方法を決める
ファイルは Read/Write Files from Disk で読みます。 File(s) Selector にはパスか glob のパターンを書けるので、フォルダの下の当日の日付のファイルをパターン1つで取ります。 公式のページでは、n8n 2.0 から読める場所の既定が ~/.n8n-files に絞られており、それ以外を読むには N8N_RESTRICT_FILE_ACCESS_TO をはっきり設定するとされています。ファイルサーバーの共有をマウントした場所を、この変数に指定します。
読み込んだファイルは Extract from File で行にします。 公式のページでは、Extract From CSV と Extract From XLSX の操作があります。銀行ごとに出力の形式が違うので、銀行ごとに枝を分けて読み、列の名前を同じものにそろえます。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 朝の残高 | 残高のファイル | 計算の出発点 |
| 期日の明細 | でんさいの期日のファイル、手形の管理の表 | 支払と受取 |
| 入金予定 | 入金予定の表 | 判定の対象 |
| メモと連絡 | メモ欄、メールの出力(相手先と金額で入金予定にひも付けたもの) | 判定の材料 |
メールは、入金予定にひも付けてから渡します。 相手先の名前と金額で、入金予定の行に連絡の本文を寄せます。ひも付けられなかった連絡は、AIに渡さずに担当へ「未ひも付け」として出します。 関係の無い連絡を渡すと、別の取引の「遅れる」を読んで不確かと判定します。
AIへ渡す前に整形する
- ファイルの日付の確認 … 3行分のファイルが当日の出力かを確かめます
- 列のそろえ … 銀行ごとの列を、口座・期日・金額・相手先・支払受取の区分にそろえます
- 金額のそろえ … 「1,234,567」「1234567円」を円の整数にそろえます
- 期日のそろえ … 期日が銀行の休業日に当たるものは、営業日のカレンダーで決済の日にそろえます
- 重複の除外 … 同じ記録番号のでんさいが2つのファイルに出たら1つにします
- 相手先の名前を記号に置き換える … AIに渡すのは、入金予定の番号、金額の桁の区分、予定日、メモと連絡の本文だけにします
4番目を省くと、期日の日付で計算した残高が実際とずれます。 休業日の期日は、計算の上では「その日」の支払でも、口座から動く日は別の日です。どの日にそろえるかは銀行の取扱いによるので、各行に確かめてカレンダーに書いておきます。
6番目で金額そのものを渡さないのは、AIに計算させないためです。 判定に要るのは「この入金を数えてよいか」で、金額ではありません。金額を渡すと、AIが頼まれていない足し算を始めます。
AIに処理させる
させるのは、入金予定の1件ずつについて、判定の基準の表に照らして「確定」「見込み」「不確か」を判定し、根拠にしたメモや連絡の文を写すことだけです。
| 見るもの | 判定の仕方 |
|---|---|
| 入金の種類 | 受取のでんさいで期日が来るものは基準の「確定」に当たるかを見る |
| 営業のメモ | 遅れ・分割・検収待ちなどの記載があるか |
| 財務への連絡 | 入金済み・振込の手続き済み・遅れの連絡があるか |
| 予定日の変更の回数 | 前処理が数えた回数が基準に当たるか |
基準に当たるかが文から決められないときは、「不確か」に倒します。 足りない側に倒すと、担当が営業に1本確かめる手間が増えるだけです。足りる側に倒すと、期日の朝に残高が足りないことが分かります。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 残高や不足額の計算 | Code ノードが行う |
| 手当ての方法を決めること | 振替・借入・割引は担当と上席が決める |
| メモに無い事情を推し量ること | 「この販売先は大丈夫」と書かせない |
| 入金予定の日付や金額を直すこと | 予定は営業が直す |
| 取引先の信用を評価すること | 与信の判断は別の手順 |
指示内容を固定する
Basic LLM Chain の Chat Messages の System に次の文を入れます。
あなたは財務部で、入金予定を資金の計算に数えてよいかを判定する立場です。
渡された入金予定1件について、判定の基準に照らして判定してください。
【判定】
- confirmed ... 基準の「確定」に当たる
- likely ...... 基準の「見込み」に当たる
- uncertain ... 基準の「不確か」に当たる、または文から決められない
【厳守事項】
- 判定の根拠には、メモや連絡の文を一字一句そのまま quotes に写してください。
- 渡されたメモと連絡に書かれていないことを推測しないでください。
「過去に遅れが無いので大丈夫」「大口の取引先なので確実」などと
書かないでください。
- 迷ったときは uncertain にしてください。likely を選ばないでください。
- 金額の計算や、残高が足りるかどうかについて書かないでください。
- 振替・借入・割引などの手当てについて書かないでください。
- メモと連絡が食い違う場合(メモは「予定どおり」、連絡は「遅れる」など)は、
uncertain にし、食い違いを conflict に書いてください。
- 連絡が別の取引のことに見える場合は、その連絡を根拠に使わず、
notes に「別の取引の連絡の可能性」と書いてください。
【判定の基準】{criteria}
【入金予定】番号:{plan_id} 種類:{kind} 予定日:{due_date}
予定日の変更の回数:{reschedule_count}
【営業のメモ】{memo}
【財務への連絡】{messages}
「迷ったら uncertain」をいちばん強く書きます。 入金の判定は、外れたときの重さが左右で違います。不確かと判定した入金が予定どおり入れば、担当の確認が1本無駄になるだけです。 見込みと判定した入金が入らなければ、期日の支払が止まります。
「別の取引の連絡かもしれない」を書かせるのは、ひも付けの誤りに気づくためです。 相手先と金額でひも付けても、同じ相手先の別の請求の連絡が混ざることがあります。
出力形式を固定する
Require Specific Output Format をオンにして Structured Output Parser をつなぎ、次の形で受け取ります。
{
"plan_id": "AR-2026-10-3381",
"judgment": "confirmed | likely | uncertain",
"criteria_matched": "不確か:メモに「検収待ち」の記載",
"quotes": ["11/4 先方検収待ち。月内は難しいかもとのこと(営業)"],
"conflict": "",
"notes": ""
}
この後ろに、Code ノードが期日ごと・口座ごとに次を計算します。
| 項目 | 決め方 |
|---|---|
balance_confirmed | 朝の残高 + 確定の入金 - 期日の支払 - 最低限残す残高(前日までの繰越しを含む) |
balance_likely | 上記 + 見込みの入金 |
same_day_dependency | その日の確定の入金が、同じ日のでんさいの受取に頼っているか |
alert | balance_confirmed が負なら「要手当て」、balance_likely だけが正なら「見込み頼み」、same_day_dependency なら「当日の受取待ち」 |
1つ目の理由は、AIの判定と計算が混ざらないことです。 判定は入金予定の番号ごとに1行で残り、計算はその判定を入力にした規則で決まります。 判定の基準を変えても、計算の式は変わりません。
2つ目は、quotes で担当が根拠を一目で見られることです。 Slack の知らせに「なぜ不確かなのか」が営業のメモの文のまま載るので、担当は営業に何を聞けばよいかが分かります。
スキーマは $ref を使わずに書きます。 公式のページでは、Structured Output Parser の JSON Schema で参照($ref)を使えないとされています。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| ファイルサーバー | Read/Write Files from Disk(読み取りだけのマウント) | 残高と期日の一覧のファイル |
| 入金予定の表 | 表の読み取り | 入金予定とメモ |
| Claude | Basic LLM Chain + Anthropic Chat Model + Structured Output Parser | 入金予定ごとの判定 |
| 規則 | Code ノード(JavaScript) | 列のそろえ、期日ごと・口座ごとの残高の計算 |
| Slack | Send and Wait for Response(Approval) | 不足の見込みの知らせと、担当の確認 |
不足の知らせは、Slack の Send and Wait for Response で送ります。 Response Type を Approval にし、Capture Who Responded をオンにして、誰が確かめたかを記録に残します。 Restrict Who Can Approve で、答えられる人を資金の担当に絞ります。
銀行の画面とでんさいの画面には、この構成から一切つなぎません。 振替や割引の申込みを自動にすると、判定の誤りがそのまま資金の移動になります。
人が確認する
- 「要手当て」を先に見る … 確定の入金だけで足りない日と口座です。その日のうちに手当てを決めます
- 「当日の受取待ち」を見る … 同じ日の受取で足りる計算の日です。手当てをするか、入金の時刻を待つかを決めます
- 「見込み頼み」の根拠を見る …
quotesを読み、営業に確かめます - 判定を覆したら記録する … どの入金予定を、どの判定に変えたかを残します
3番目で、営業に確かめた結果を入金予定の表のメモに書いてもらいます。 夕方の回でその文を読んで判定がやり直されるので、確かめた結果が次の計算に入ります。
「要手当て」が出た日は、上席への報告を同じ日のうちに済ませます。 知らせには、日付・口座・不足の見込み額・不足の原因になった支払の明細の上位と、確かさが低い入金の quotes を並べます。上席が知りたいのは「どの支払のために、いくら、いつまでに要るか」なので、その形のまま転送できるようにしておきます。
目標は、600件をならして1件1分です。 知らせの来ない日と口座は見る必要が無く、見るのは知らせの来たものと、不確かと判定された入金だけです。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| どれかの銀行のファイルが当日の出力でない | 計算をせずに「出力が古い」と知らせて止まる |
| 列の名前が変わっていて読めない | その銀行の枝を止め、担当へ知らせる。他の銀行の分だけで計算しない |
| 入金予定にメモも連絡も無い | 基準に当たるかで判定。決められなければ uncertain |
| メモと連絡が食い違う | uncertain にし、conflict に書く |
| 連絡が入金予定にひも付かない | AIに渡さず「未ひも付け」として担当へ |
| AIが応答しない | 判定の無い入金予定をすべて uncertain として計算する |
| 期日が休業日に当たる | 営業日のカレンダーで決済の日にそろえる |
| 支払を猶予する取り決めをした | でんさいネットの資料では、債権者が猶予しても事前に取引金融機関に届け出ないと支払不能となる。届出の有無を担当が確かめるまで、期日どおりの支払として数える |
2行目で「他の銀行の分だけで計算しない」のは、口座ごとの不足が見えなくなるからです。 1行分が欠けた計算は、その銀行の口座の支払を落としたまま「足りる」と出ます。
6行目で、AIが動かない日は全部を不確かに倒します。 判定が無いからといって見込みとして数えると、いちばん確かめが要る日に、いちばん楽観的な数字が出ます。
記録を残す
- その日に使った3行分のファイルの名前と、読み込んだ日時
- 入金予定ごとの判定(
judgment、quotes、conflict) - 期日ごと・口座ごとの計算の結果と、
alert - Slack での確認と、確認した人、時刻
- 担当が判定を覆した記録
- 実際に入金された日と、判定との突き合わせ
最後の行で、判定の当たり外れを月ごとに見ます。 「見込み」と判定して入らなかった入金、「不確か」と判定して予定どおり入った入金を数え、判定の基準の表を直します。 前者が多ければ基準が甘く、後者が多ければ営業のメモの書き方を見直す材料になります。
04実装レベルの3段階
半自動化で、1件3分が2分程度になります。 転記と足し引きはなくなりますが、入金予定の確かさは担当が営業のメモと連絡を探して確かめるしかありません。 本格構成で1分になり、この段階が本記事の想定です。 半自動化を先に1か月回します。 計算の結果を担当の表と並べて見比べ、列のそろえと休業日のそろえの誤りを先に直します。 計算が合っていないうちに判定を足すと、外れの原因がどちらにあるのか分かりません。
05工数削減シミュレーション
導入後 600件 × 1分 ÷ 60 = 10 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- でんさいでの支払と受取が多く、期日が毎日のように来る商社・製造業・建設業の財務部。支払の口座が複数の銀行に分かれていて、期日ごとにどの口座にいくら要るかを担当が表で確かめている場合。入金予定の確かさを営業の連絡やメモから読み取って判断しており、その判断が担当に寄っている場合。
- でんさいと手形の期日が月に数件で、目で確かめれば足りる場合。資金が1つの口座に集まっていて、残高が期日の支払を常に大きく上回っている場合。期日の一覧や口座の残高を出力する手段が無い場合。なお、資金の手当て(振替・借入・割引)の実行は、この構成では代替できません。
07最小構成で試す方法
- 過去3か月の入金予定から30件を選ぶ(予定どおり入ったもの、遅れたもの、分割になったものを混ぜる)
- その30件について、当時の営業のメモと財務への連絡を集め、相手先の名前を消す
- 判定の基準の表を作り、手元のAIサービスの画面に基準とメモ・連絡を1件ずつ貼り付ける
- 「この入金予定を、基準に照らして確定・見込み・不確かのどれかに判定してください。根拠にした文をそのまま写してください。迷ったら不確かにしてください。金額や残高について書かないでください」と指示する
- 出てきた判定を、実際に入金された日と比べる
30件は必ずやってください。 ワークフローを組む前に、「メモと連絡から確かさが判定できるか」を確かめます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 遅れた入金の多くが「不確か」と出た | ファイルの読み込みと計算の準備に進む |
| メモに無い事情を書いた | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| 遅れた入金のメモに何も書かれていなかった | メモの書き方を営業と決めるのが先。 AIの問題ではない |
3行目が出たら、営業と財務の連絡の仕方を見直す時期です。 遅れを知っていた営業が、メモに書かずに口頭で伝えていたということで、この業務が担当の頭の中にあった理由そのものです。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 前日の残高で計算して「足りる」と出る | ファイルの日付を確かめ、古ければ止まる |
| 1行分が読めないまま計算が進む | 読めない銀行があれば全体を止める |
| 当日の受取で当日の支払をまかなう計算になる | 入金の時刻は決まっていない。「当日の受取待ち」として分ける |
| AIが足し算を始める | 金額を渡さない。計算は Code ノード |
| 「大口だから大丈夫」と判定する | メモに無い事情を書かせない。迷ったら不確か |
| 別の取引の連絡で不確かになる | ひも付けられない連絡は渡さない |
| 期日が休業日で計算がずれる | 営業日のカレンダーで決済の日にそろえる |
| 「今日」が半日ずれる | ワークフローのタイムゾーンを設定する。自社のインスタンスの既定は America/New York |
| ファイルサーバーが読めない | n8n 2.0 から読める場所の既定が ~/.n8n-files。変数とマウントを設定する |
| 猶予の取り決めで支払を外す | 届出が無ければ支払不能となる。 届出を確かめるまで支払として数える |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「足りる」と誤って出る失敗で、足りないと誤って出る失敗より、ずっと高くつきます。 計算の入力がそろっていないときは、計算をしないほうが安全です。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 口座ごとの残高、取引先ごとのでんさいと手形の期日と金額、入金予定、営業のメモと財務への連絡です。
- AIに渡すのは入金予定ごとのメモと連絡だけにする … 残高、期日の明細、金額は渡しません。相手先の名前は記号に置き換えます
- 銀行の画面にはつながない … ファイルは担当が出力し、n8n は読み取りだけで見ます。振替・割引・支払の操作の経路を持たせません
- n8n を社内で動かす … 残高と期日の一覧は、会社の資金の状態そのものです。ファイルを社外のサービスに置きません
- この構成は資金の手当ての判断を代替しません … 振替・借入・受取のでんさいの割引のどれを使うかは、担当と上席が決めます。判定は確かさの材料で、手当ての指示ではありません
- 支払不能の重さを運用の前提にする … でんさいネットの資料とFAQでは、6か月以内に2回の支払不能で、債務者としての利用と貸出取引が2年間停止されるとされています。計算の入力がそろわない日は、計算を止めて人が確かめる設計にします
- 営業のメモを評価に使わない … 判定の記録には、営業のメモの文がそのまま残ります。誰のメモが外れたかを数えるためではなく、メモの書き方をそろえるための記録です
誤りが起きた場合のリスクは、足りない日を足りると判定することと、足りる日を足りないと判定することの2つです。 前者は入力の欠けと楽観的な判定で起き、後者は判定が慎重すぎると起きます。後者は担当の確認が増えるだけなので、迷ったら後者に倒す設計にしています。
10まず何から始めるか
1週目:出力できるものを確かめる
3つの銀行の画面で、残高とでんさいの期日の一覧をどの項目・どの形式で出力できるかを確かめます。あわせて、休業日に当たる期日の扱いを各行に確かめ、営業日のカレンダーを作ります。
2週目:30件で試す
過去の入金予定から30件を選び、手元のAIサービスで判定させます。遅れた入金が「不確か」と出ているか、メモに無い事情を書いていないかを最優先で見ます。
3週目:判定の基準を決める
何を確定・見込み・不確かとするかを、財務部で文にします。 営業にも見せ、メモに何を書けば判定に効くかを伝えます。
4週目:読み込みと計算をつなぐ
n8n を社内のサーバーに置き、ファイルの読み込みと期日ごと・口座ごとの計算までを作ります。この時点では判定を入れず、担当の表と計算を並べて見比べます。
2か月目: 入金予定の判定を計算に入れ、Slack の知らせを始めます。3か月目以降: 夕方の回を足し、判定の当たり外れを月ごとに数えて基準の表を直します。「要手当て」の知らせが期日の数日前に出るようになり、担当が毎朝の表をつけなくなった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| 支払期日に口座間送金決済が行われなかった時点で支払履行遅滞となり、支払不能が生じた旨は支払期日の3銀行営業日後に通知されること。債権者が支払を猶予しても事前に取引金融機関に届け出ないと支払不能となること。6か月以内に2回目の支払不能で、貸出取引とでんさいの債務者としての利用が2年間停止されること。でんさいの受取は支払期日に入金されるが、実際の入金時刻は支払企業の資金準備状況や金融機関ごとに異なること。2027年度初から電子交換所での手形・小切手の交換が廃止され、でんさいの支払不能処分制度は継続すること | でんさいネット: 説明資料(一問一答Q&A編) | 2026-10-28 |
| 取引停止処分が、6か月以内に2回以上支払不能でんさいを生じさせた債務者に対し、債務者としての利用と参加金融機関との貸出取引を2年間禁止するものであること | でんさいネット: 取引停止処分とは何ですか | 2026-10-28 |
| Schedule Trigger は保存して公開しないと動かないこと。タイムゾーンの扱いと、自社で動かすインスタンスの既定が America/New York であること | n8n Docs: Schedule Trigger | 2026-10-28 |
Read/Write Files from Disk の glob のパターンと、n8n 2.0 から N8N_RESTRICT_FILE_ACCESS_TO の既定が ~/.n8n-files であること | n8n Docs: Read/Write Files from Disk | 2026-10-28 |
| Extract from File に Extract From CSV と Extract From XLSX の操作があること | n8n Docs: Extract from File | 2026-10-28 |
| Basic LLM Chain の Chat Messages に System があること。Require Specific Output Format で Structured Output Parser をつなげること | n8n Docs: Basic LLM Chain | 2026-10-28 |
Structured Output Parser の JSON Schema で $ref を使えないこと | n8n Docs: Structured Output Parser | 2026-10-28 |
| Anthropic Chat Model のノードで Claude を使えること | n8n Docs: Anthropic Chat Model | 2026-10-28 |
| Slack の Send and Wait for Response の Approval、Capture Who Responded、Restrict Who Can Approve | n8n Docs: Slack の承認 | 2026-10-28 |
休業日に当たる期日の扱いと、各銀行の画面から出力できる項目は、取引金融機関に確かめてください。 本記事は公式の資料で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
自社の業務に使えるAI活用候補を整理します
このユースケース(UC-2209)についてのご相談はこちらから。
